第12章 分子間力・液体と固体

2015/9/28
【相互作用】
分子間力=分子間相互作用
力=相互作用
第12章 分子間力・液体と固体
一般に力というものは単独の物体を
考えた場合には存在しない。
力は二つ(以上)の物体間に作用する
ので、力といった場合は必ず相互作
用を意味する。
1
【相互作用】
粒子間に相互作用が働いているから
こそ、気体が液体、そして固体に凝
集する。
理想気体はどんなに圧力をかけても、
温度を下げても液化しない。それは
相互作用が無いから。
種々のタンパク質が固有の構造をと
ることができるのも、粒子間に相互
作用があるから。
2
3
教科書 p.332
【相互作用】
流体(気体+液体)と固体:流体は自
分の力でその形体を維持できない。
4種類の力:
万有引力
電磁気力
強い相互作用
弱い相互作用
気体と凝集体(液体+固体):凝集体
は粒子間相互作用が無視できない。
凝縮状態(p.332)→ 凝集状態
凝縮:気体が液体になること(p.353)
4
化学では基本的に電気力(静電相互
作用)のみ考えればよい。
5
【静電相互作用】
【静電相互作用】
静止している二つの電荷の間に働く
引力や斥力を静電気力、あるいは
クーロン力という。
静止している二つの小さな帯電体の
電荷(これを点電荷という)の間で
働く静電気力の大きさF は、点電荷
間の距離 r の2乗に反比例し、二つ
の点電荷q1、q2の積に比例する。
F =q1 q2 /(4πε0 r2)
これをクーロンの法則という。
7
【相互作用】
化学は原子・分子のレベルで現象を
考察する。
それらは空間で孤立している一個の
粒子ではなく、集団の中で相互作用
する粒子である。
化学現象を原子・分子のレベルから
理解するとき、粒子間にどの様な相
互作用が働いているかを知ることは
大変重要である。
8
6
【静電相互作用】
F =q1 q2 /(4πε0 r2)
ここで、ε0 は真空の誘電率である。
例えば水中に存在する陽イオンと陰
イオンの間に働く力を考える場合は、
ε0の代わりに水の誘電率を使わなけ
ればいけない。
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1
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【静電相互作用】
一般に誘電率 ε の媒質中に存在する電
荷間に働く静電気力は
F =q1 q2 /(4πε r2)
である。
つまり、媒質が異なると電荷量や距離
が同じでも、クーロン力が異なる。
10
【静電相互作用】
例として、塩の水への溶解を考えよう。
水の誘電率が大きいため、イオン間の
静電相互作用が結晶状態のときよりも
弱くなり、その結果水中では容易にイ
オンを引き離すことができる。
18℃における水の比誘電率(真空の誘
電率との比)は81である=水の中では
真空中よりも電荷間の力が1/81にも弱
くなる。
11
【静電相互作用】
実際の電荷、例えばイオン、はある
有限の大きさを持っている。
イオン半径が小さく、電荷の大きい
イオンほど、電荷密度が高くなるの
で、強い静電相互作用を示す。
電磁気学によれば、半径 r の帯電し
た球(電荷q)の表面での電場は q/r2
に比例する。
12
【静電相互作用】
12.2 分子間力
【ファンデルワールス力】
イオン結晶の融点や沸点の傾向を定
性的に、クーロンの法則に基づいて
イオンの大きさから説明できる。粒
子間相互作用が強いほど、融点や沸
点が高くなると予想される。
教科書 p.333
「分子間力又はファンデルワールス
力という」(高校化学参考書)
化合物
融点/℃
沸点/℃
イオン結晶の融点と沸点
NaF NaCl NaBr NaI KF RbF MgO CaO BaO
993 801 747 651 860 775 2826 2572 1918
1704 1413 1390 1300 1505 1408 3600 2850 2000
13
【ファンデルワールス力】
p.333
ファンデルワールス力は
双極子-双極子相互作用
双極子-誘起双極子相互作用
分散力
という3種類の力の総称である。
分子間力は引力と同時に反発力も働
く。(p.338参照)
(反発力についてはこの講義では取り扱
わない)
分子内力(一般には使われない)
→ 化学結合力
p.334
気体や液体中では、引力的にも反発
的にも働く。
平均として引力的に働く。
ファンデルワールス力は分子間力の
引力成分の一つである。
15
イオン-双極子相互作用
Na+(0.95Å)電子10個
p.334
F-(1.36Å)
Cs+(1.69Å)電子54個 I-(2.16Å)
陽イオンは同じ電子数を持つ陰イオ
ンより小さい(核の電荷が大きいか
ら)。
ファンデルワールス力は引力として
働く。
16
ファンデルワールス力=分子間力で
はない。
14
双極子-双極子相互作用
p.333
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【再録:静電相互作用】
分散力
実際の電荷、例えばイオン、はある
有限の大きさを持っている。
原子や無極性分子も瞬間的には双極
子モーメントを持っている。
イオン半径が小さく、電荷の大きい
イオンほど、電荷密度が高くなるの
で、強い静電相互作用を示す。
その瞬間的な双極子はその近くの原
子や分子に瞬間的に双極子モーメン
トを誘起する。
電磁気学によれば、半径 r の帯電し
た球(電荷q)の表面での電場は q/r2
に比例する。
この瞬間的な双極子モーメント間の
相互作用は引力として働き、分散力
という。
19
p.335
20
【分子間力】
【高分子における分子間力】
22
化学式 名称
沸点 / ℃ (燃料)形態
CH4 メタン -164
C2H6 エタン
-89
C3H8 プロパン -42
0
C4H10 ブタン
C5H12 ペンタン
36
C6H14 ヘキサン
69
C7H16 ヘプタン
98
C8H18 オクタン 126
C9H20 ノナン
151
174
C10H22 デカン
天然ガス
21
【分極の応用例:有機電子論】
鎖状アルカンの性質
炭化水素の重合体(=鎖状高分子)
には強い分子間力が働いて固体にな
るので、プラスチックや繊維に用い
られるようになった。
p.336
分散力
ファンデルワールス力は
双極子-双極子相互作用
双極子-誘起双極子相互作用
分散力
という3種類の力の総称である。
分散力の特徴:
◎ 他の二つの力と比較しても、同
程度かそれ以上の大きさである。
◎ 全ての化学種の間で働く。
常温の形態
気体
ライターオイル
石油
液体
〃
〃
〃
〃
パラフィン(ロウソク~C28)
23
C17H36以上はろう状の固体
(目標)電気陰性度と電子の動きによる官能
基の反応性を説明できる。(有機電子論)
有機電子論:古典的に静電気力に注
目する。
結合の分極や分子内の電子密度の分
布に基づいて、ある程度の有機化合
物の反応機構を説明し、また、反応
性も予想することができる。
24
【有機電子論】
H+のような正の電荷を帯びた試薬は、
分子内の部部的に負に帯電した部分
δ-に引かれる。
【有機電子論】
OH-のような負に帯電した試薬は分
子内の部分的に正に帯電した部分δ
+に引かれる。
電子供与基:電子を与える原子団
このような試薬を求電子試薬と呼び、
求電子試薬が攻撃すると表現する。
このような試薬を求核試薬と呼び、
求核試薬が攻撃すると表現する。
分子内に電子吸引基や電子供与基が存
在すると、分子内に部分的に正や負に
帯電した部分が生じる。
このような機構の反応を求電子反応
という。
このような機構の反応を求核反応と
いう。
【有機電子論】
分極を考えるときには、電気陰性度が
目安となる。
電子吸引基:電子を引き付ける原子団
25
26
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化学実験 有機
【有機電子論】
【有機電子論】
初めに求核試薬が攻撃するか、求電
子試薬が攻撃するかは、反応の条件
によって異なる。
電子吸引基
ニトロベンゼンのニトロ基 NO2、
ニトロソ基 NO、カルボキシ基 COOH
カルボニル基 CO、ニトリル基 NO2-
酸性条件下ならば、まず求電子試薬
であるH+が、塩基性条件下ならば求
核試薬であるOH-(あるいはRO-や
NH2-など)が、分子を攻撃すると考
える。
電子供与基
アニリンのアミノ基 NH2、
フェノールの 水酸基 OH
28
【有機電子論】
カルボニル
炭素をアニ
リンの窒素
原子あるい
はサリチル
酸の水酸基
の酸素原子
が攻撃する。
29
【有機電子論】
リボソームにおけるペプ
チド結合の形成
→
求
核
試
薬
カルボニル
基の二重結
合には、C
とOの電気
陰性度の違
いから極性
が生じ、そ
の炭素原子
が部分的に
正に帯電し
ている。
【生体内の水素結合】
求核試薬
↓
水素結合はタンパク質や核酸の高次構
造の安定性を生む大きな要因である。
アミノ基(求核試薬)
がカルボニル炭素を求
核攻撃する。
RNAが触媒として働く
(リボザイム)
DNAが正しく写し取られる理由は塩
基間の特異的な水素結合様式にある。
求核試薬→
31
30
33
32
【生体内の水素結合】
【生体内の水素結合】
12.3 液体の性質
生体内では至る所水素結合が使われて
いる。
その結合エネルギーは構造を維持する
には十分であるが、必要に応じて解離
しやすくもあるという性質が、生体に
うまく利用されている。
液体はその凝集力によって次のよう
に分類することができる(括弧内は
凝集力)。
水素結合は使い勝手のよい分子間相互
作用である。
34
分子の熱運動エネルギー ~ 4 kJ mol-1
(300 K)
水素結合エネルギー 10 ~ 30 kJ mol-1
化学結合エネルギー ~ 1000 kJ mol-1
35
a イオン性液体 (イオン結合)
b 液体金属 (金属結合)
c 分子性液体 (ファンデルワールス力)
身の回りの液体のほとんどが分子性
液体である。
36
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分子性液体が示す性質の多くは、分
子間相互作用に起因している。
ここでは、液体の性質として、表面
張力と粘性をとりあげる。
教科書 p.340
凝集力とは、凝集状態(液体・固
体)において構成粒子間に働く引力
をいう。
【親水性・
疎水性】
ステアリン酸は
代表的な脂肪酸。
毛細管現象で凝集力、接着力という
言葉は一般に用いられない。
接着剤:adhesive同種異種に係わら
ず用いられる。
37
【親水性・疎水性】
水溶液中の分子間相互作用として重
要である。
生体分子は水溶液中に存在すると考
えてよいので、親水・疎水の概念は
重要である。
38
【親水性・疎水性】
【親水性・疎水性】
溶媒に溶質を溶解させたとき、溶液
の表面張力が純溶媒のそれよりも減
少するとき、その溶質は界面活性物
質(界面活性剤)と呼ばれる。
一つの分子の中に親水基と疎水基を
持つことを、両親媒性があるという。
界面活性分子は、極性のある部分
(親水基)と、極性のない部分(疎
水基あるいは親油基)から成る。
40
【親水性・疎水性】
脂肪酸は両親媒性分子である。
ほ乳類は、飽和脂肪酸と炭化水素基
の二重結合が一つの不飽和脂肪酸は
体内で合成できるが、その他の不飽
和脂肪酸は体内では合成できないの
で食物から摂取しなければならない。
これらは必須脂肪酸と呼ばれる。
43
39
41
このような分子は両親媒性分子と呼
ばれ、水の内部よりも表面にいる方
が安定で、その結果表面に集まり膜
を作る性質を持つ。
さらに、水中でミセル、リポソーム
(脂質二分子膜)等の構造物を作る。
42
【親水性・疎水性】
【親水性・疎水性】
飽和脂肪酸:
ステアリン酸 C17H35-COOH
脂質は単純脂質と複合脂質に分類さ
れる。
不飽和脂肪酸:
オレイン酸 C17H33-COOH
(二重結合一つ)
リノール酸 C17H31-COOH
(二重結合二つ)
単純脂質の代表はグリセリンと脂肪
酸のエステルである油脂。
44
複合脂質にはリン脂質、糖脂質など
がある。
リン脂質も両親媒性分子。
45
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グリセリン CH2O-H
CHO-H
CH2O-H
脂肪酸 RCOOH
グリセリンの脂肪酸エステルが油脂
CH2O-COR
CHO-COR′
CH2O-COR″
【生体膜】
【生体膜】
生体膜は脂質(特にリン脂質分子)
とタンパク質の集合体から成る。
二重層のそれぞれのリン脂質分子は、
膜の表面に位置する親水基と膜の中
央に伸び出す2本の長い疎水基から成
る。
両親媒性分子であるリン脂質は、二
重層(脂質二重層と呼ばれる)を形
成している。
脂肪酸とリン酸がエステル結合したものが
CH2O-COR′
リン脂質
CHO-COR″
+
46
CH2O-(PO4) R
疎水基どうしは膜の中で互いに向き
合って分子間相互作用によって脂質
二重層を保持している。
47
48
【生体膜】
【一酸化窒素 NO】
【一酸化窒素 NO】
生体膜は化学結合のような強い結合
ではなく、弱い分子間相互作用に
よって分子が集合したものである。
CH2O-NO2 ニトログリセリンは
CHO-NO2 狭心症の発作を押さえる。
CH2O-NO2
一酸化窒素NOは、生体内ではアミノ
酸の一つであるアルギニンを原料に
合成されている。
このため膜には流動性があり、膜内
部での分子の移動、膜を通した低分
子の移動が可能なのである。
ニトログリセリンが一酸化窒素NOを
放出して、血管拡張を引き起こしてい
る。
NOは神経伝達物質として働く。
不飽和脂肪酸は膜の流動性を高め、
コレステロールはそれを低下させる。
49
【一酸化窒素 NO】
NOは血管拡張機能を持っている。
血管弛緩の情報伝達物質としての役
割を果たしている。
1998年ノーベル医学賞「循環器系に
おける信号伝達物質としての一酸化
窒素の発見」
小さな分子なので、細胞の間を素早
く拡散することができる。
50
51
【参考:FMD検査】
【分子間相互作用のまとめ】
腕を締め、締めを解いた後の血管拡張を超
音波で診る内皮機能検査=動脈硬化検査。
粒子集団の中で相互作用する粒子
正常な内皮細胞は、締めを緩めた後に血管
拡張物質である一酸化窒素を放出する。
このNOがどれだけ放出されたかは、どれ
だけ血管が拡張したかを見ることになる。
クーロンの法則、電荷、距離、誘
電率、イオン半径
ファンデルワールス力・水素結合
極性・電気陰性度、有機電子論
水溶液中:親水、疎水
バイアグラ
52
53
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【相変化】
相変化 phase change
相転移 phase transition
p.359
液体-蒸気平衡
p.352
蒸気圧
気相から固相への転移を凝結とはいわ
ない。昇華をこの意味でも使うことが
ある。凝華という用語あるが一般的に
使われていない。
凝結:①凝縮と同義②コロイド粒子が
集まって沈殿する現象。凝斥ともいう。
気化 vaporization:
蒸発 evaporation
・・・液体の表面から気化
沸騰 boiling
・・・液体の内部からも気化
55
【融点測定】
P.354の文章の修正:
異なる温度で液体の蒸気圧を測定し、
lnPを1/Tに対してプロットすると、
ほぼ直線になる。これを直線で近似
すると=∆Hvapは温度に依存しない
とすると、その傾き-∆Hvap/Rからモ
ル蒸発エンタルピー∆Hvapを決定す
ることができる。
56
57
12.7 状態図
【水の特異な性質】
《化学実験・有機3:融点の測定》
状態図、相図
液相の密度が固相のそれより大きい。
融点測定は簡便な物質の同定法であ
る。
固相-気相、固相-液相、液相-気相
平衡曲線のうち、
圧力をかけると融点が下がる。
アセトアニリドの融点
液相-気相平衡曲線には終点がある。
水素結合に起因している。
これらは他の物質と逆の傾向である。
これを臨界点という。
58
59
60
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第14章 化学反応速度論
化学反応 の三つの視点
第8週から第15週 化学反応
◎熱力学的視点:マクロな視点
第14章 化学反応速度論(速度論的視点)
◎量子化学的視点(反応の電子論)
:ミクロな視点
(有機電子論:非量子論)
第15章 化学平衡(熱力学的視点)
◎速度論的視点(反応速度論)
第16章 酸と塩基(三つの視点)
第17章 酸塩基平衡と溶解平衡
(三つの視点)
第19章 酸化還元反応と電気化学
(三つの視点)
1
2
【注意】
【注意】
N2+3H2 → 2NH3
(1)
(1/2)N2+(3/2)H2 → NH3
(2)
同じ化学反応を扱っているにもかか
わらず、反応式の書き方によって反
応速度が変わってしまう。
反応速度1=-∆[N2]/∆t ∝ k1
反応速度1はN2が1 mol、反応速度2は
1/2 mol減少する時間なので、
反応速度1=(1/2)反応速度2は当然の
結果である。
反応速度2=-2∆[N2]/∆t ∝ k2
反応速度1=(1/2)反応速度2
3
【注意】
速度定数がk1=(1/2)k2となるのも、
反応速度1=(1/2)反応速度2の結果で
ある。
反応速度あるいは反応速度定数を示
す際には、必ず化学反応式を示す必
要があることが分かる。
速度定数:k1=(1/2)k2
《化学実験・無機3:
比色分析:銅の定量》
○電磁波を利用した化学分析
光電比色計、光電分光光度計
○ランバート-ベールの法則
吸光度∝濃度
7
【参考:スペクトル】
【参考:スペクトル】
原子、分子等が吸収、放出する電磁波の
強度を、電磁波の振動数や波長に対して
記録したものをスペクトルという。
原子・分子のエネルギー状態はそれぞれ異
なるので、スペクトルを観測することによ
り、原子・分子の情報が得られる。
原子・分子はエネルギーが量子化されて
いるため、連続的に電磁波の吸収・放出
は起きないで、とびとびのスペクトルが
得られる。
種々のスペクトルがあり、今回のスペクト
ルは電子スペクトル(紫外可視スペクト
ル)と呼ばれる。
8
振動スペクトル(赤外スペクトル)
回転スペクトル(マイクロ波スペクトル)
9
1
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【参考:スペクトル】
【参考:スペクトル】
【参考:スペクトル】
スペクトルは原子や分子のエネルギー状
態や運動状態を知るための手がかりとな
るため、化学の研究に欠かせない実験手
段である。
スペクトルの利点の一つは、測定する対
象が必ずしも手元にある必要がない、す
なわち遠隔測定が可能であるということ
である。
さらに、試料の分析手段としても能力が
高いので、化学の分野だけではなく、物
理学、生物学、医学、工学分野において
も重要な測定方法である。
これは測定対象を非破壊的に測定できる、
試料を処理せずそのままの状態で測定で
きる、ということでもある。
例えば、工場の煙突からでる煙を、そこ
から数十~数百m離れた地点から測定
(煙から放出される赤外線を測定)する
ことにより、そこに含まれている化学物
質を同定することができる。
10
【参考:スペクトル】
血中酸素濃度:パルスオキシメーター
酸素と結合していない還元型ヘモグロビ
ンと、結合している酸化型ヘモグロビン
で、赤外線の吸収波長が異なるので、酸
化型と還元型のヘモグロビンの比から酸
素濃度を決定することが出来る。
結合状態の違いが赤外線の吸収波長の違
いに反映される。
13
放射壊変の速度論(21.3)
p.607
原子核の壊変過程(放射壊変、放射
性崩壊)はすべて一次反応である。
原子核反応の速度定数は、温度や圧
力等の外部条件の変化に影響されな
い。
放射性同位体による年代測定が可能
となる。
16
天体のスペクトル:太陽からの光を分光
器にかけると、多数のスペクトルが現れ
る。これによって、太陽表面や地球大気
中の成分を知ることが出来る。
11
1次反応、2次反応の例は多いが、3
次反応の例は非常に少なく、3次以
上の速度式を与える例はほとんどな
い。
反応の次数は正数とは限らない。
(720 Kにおける)気相中でのアセト
アルデヒドの分解反応
CH3CHO → CH4+CO
v=k[CH3CHO]3/2
は3/2次反応である。
12
14.3 反応物の濃度と時間の関係
(目標)一次反応、二次反応等の反応
速度や速度式を説明できる。
【再掲】
1次反応、2次反応の例は多いが、3次反応
の例は非常に少なく、3次以上の速度式を
与える例はほとんどない。反応の次数は
正数とは限らない。 気相中でのアセトア
ルデヒドの分解反応は3/2次反応である。
14
p.607
放射壊変による年代決定
自然界には三つの炭素同位体(12C、
13C、14C)が存在する。
14Cだけが放射性同位体。
半減期5730年で14Nに放射壊変する。
6
14C
15
7
14Nは宇宙線の作用で 14Cに変わる。
6
14
1
14
1
7 N +0 n → 6 C +1 H
14Cの生成消滅が釣り合って、大気
中の14Cの占める割合は一定。
6
→ 714N+-10β (β崩壊)
14C
7
14N
(一次反応)
狭義の放射線:α線(ヘリウム原子
核)、β線(電子)、γ線(電磁波)
17
18
2
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p.p.607~608
14C年代測定法
化学反応速度論の衝突理論
反応速度の単位=mol L-1 s-1
生きた植物中の14C/12C比は大気中と
同じ。
速度定数の単位
死ぬと炭素の供給が止まるので、14C
の放射性崩壊により14C/12C比は減少
する。
一次反応=s-1
反応速度∝衝突数/単位時間
ゼロ次反応=mol L-1 s-1
全ての衝突が反応を引き起こすわけ
ではない。
反応が起こるために必要な最小限の
運動エネルギーが存在する。
二次反応=mol-1 L s-1
試料中の14C濃度の情報から年代を推
定することができる。
19
【マクスウェルの速度分布則】
《化学実験・物理1:
反応速度:時計反応》
アレニウスの式 濃度効果と温度効果
教科書 第5章 p.134
マクスウェルの速度分布則
気体分子の速さvは均一ではなく、あ
る広がりを持って分布している。
p.p.403~404
20
【マクスウェルの速度分布則】
速さvの分子数
∝(m/T)3/2 v2 exp[-(1/2)mv2/kT]
分子数極大の速さ=(2RT/M)1/2
m:分子1個の質量、T:絶対温度、
(1/2)mv2:分子1個の運動エネルギー、
k:ボルツマン定数、R:気体定数、
(R=NA×k) M:分子量
22
21
【マクスウェルの速度分布則】
速さがvの分子の割合
∝exp[-(1/2)mv2 /kT]
運動エネルギー
反応速度∝exp[-Ea/RT] R=NA×k
[-Ea/RT]は運動エネルギーが活性化
エネルギーEaを越える衝突の割合。
Eaは反応が起こるために必要な最小
の運動エネルギー(p.404)
23
24
【参考】
【参考】
【参考】
水素とヨウ素の気相反応
水素が臭素と反応するときには、全く異
なる経路を通る。
反応機構は以下のように考えられている。
開始:Br2 → 2Br・
成長:Br・+H2 → HBr+H・
H・+Br2 → HBr+Br・
抑制:H・+HBr → H2+Br・
停止:2Br・ → Br2
H2(g)+I2(g)
2HI(g)
は2次反応であることが確かめられた。
H2(g)+Br2(g)
2HBr(g)
反応速度式は複雑な式
反応速度=k[H2][I2]
この結果は、反応機構が反応式と同じ素
反応からなることを示している。
反応速度= k[H2][Br2]3/2
[Br2]+k'[HBr]
Br・が再生されるので、反応が繰り返さ
れる。この様な反応を連鎖反応という。
で表される。
25
26
27
3
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14.6 触媒
《化学実験・物理2:酸素のモル体積》
KClO3の熱分解・・・MnO2触媒
H2O2の分解・・・ヨウ化物イオン、
鉄イオンFe3+、 MnO2
NO+CO+Hydrocarbon → N2+CO2+H2O
NO+NH3+O2 → N2+H2O
車の排気口につける触媒コンバーターで
は、上記の反応により自動車の排気ガス
に含まれるNOx、CO、炭化水素が同時に
除去され、三元触媒法と呼ばれている。
上記の反応により、工場や発電所の
ボイラーからの排気ガス中のNOxを
除去する。触媒としてはV2O5、WO3、
TiO2系のものが使用されている。
すなわち、窒素酸化物→窒素(還元)と、
一酸化炭素→二酸化炭素(酸化)、燃え
きらなかった炭化水素の完全燃焼(酸
化)を進める。
触媒としてはPtやRhが用いられている。
28
29
【復習:有機電子論】
均一触媒
有機電子論:古典的に静電気力に注
目する。
水素イオンH+がある分子に近づくと、
結合の分極や分子内の電子密度の分
布に基づいて、ある程度の有機化合
物の反応機構を説明し、また、反応
性も予想することができる。
その結果、分子内に電子密度の低い
部分が生じる。
そのプラスの電荷に分子内の一部の
電子がひきつけられる。
そこに、求核試薬が近づけば、反応
が起こりやすくなる。
31
デンプンもセルロースもグルコース
から成る高分子である。
グルコースのつながり方が異なるだけ。
高等動物にはセルラーゼが無いので、
セルロースは消化されない。
p.416
32
固体触媒の日用品への応用例
無臭の魚焼き器
無臭の石油ストーブ
30
p.416
均一触媒
例:エステル化
CH3COOH+C2H5OH →
CH3COOC2H5+H2O
濃硫酸を加えると反応が促進する。
水素イオンがカルボニル酸素原子に配
位し、カルボニル基をより電気的に陽
性にすることにより、求核試薬(エタ
ノール)がカルボニル基へ付加する反
応を触媒する。
33
【参考:タカジアスターゼ】
【参考:タカジアスターゼ】
アミラーゼ(ジアスターゼ)はデンプン
を分解してマルトース(麦芽糖)にする。
高峰譲吉は麹菌からより強力な分解作用
をもつ酵素の分離に成功した。
大根やサツマイモに含まれている。
それを、タカジアスターゼと名付けた。
加熱すると甘くなるのはアミラーゼの働
きによる。
胃腸薬として製品化し、世界中で大ヒッ
トした。
日本では、1899年に現在の第一三共(株)
を創設して販売した。
デンプンはα-アミラーゼの作用で消化
される。
このような選択性を基質特異性という。
34
35
36
4
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酵素触媒反応の特徴(図14.28)
1. 酵素初濃度[E]0が同じで基質濃度
[S]が小さければ、反応速度は[S]に
比例する。
2. [E]0が同じで[S]が大きければ、
反応速度は[S]とは無関係に、最大
速度Vmaxに達する。
図14.28の曲線は直角双曲線の式に
よって表される。
v=
a[S]
b+[S]
この式で表される速度式を双曲線型
速度式という。
37
この機構によれば、生成物の生成速
度vは次式で与えられる。
v = k2[E]0[S]
KM+[S]
KM= k-1+k1
k2
[E]0:酵素初濃度 [S]:基質濃度
v=
a[S]
b+[S]
38
1. [S]≪KMのとき、vは[S]に比例す
る。
v=(k2/KM)[E]0[S]
2. [S]≫KMのとき、vは[S]と無関係
で、最大値に達する。 Vmax=k2[E]0
41
定義式:KM= k-1+k1
k2
Vmax:最大速度
速度がVmaxの半分に等しいとき、
Vmax= Vmax[S] あるいは KM=[S]
2
KM+[S]
43
v = Vmax[S]
KM+[S]
これは双曲線型速度式である。
多くの消化酵素(加水分解酵素)で
測定結果とよく合う。
(目標)ミカエリス-メンテンの式
が説明できる。
42
KMが小さいことは[S]が低濃度でv
が半飽和に達することなので、酵
素は基質に対し親和力が強い。
ミカエリス定数 KM
KM:ミカエリス定数
39
ミカエリス-メンテンの式
v = k2[E]0[S]
KM+[S]
40
ミカエリス-メンテンの式は二つの
パラメータを持つ。
ミカエリスとメンテンは双曲線型速
度式を説明するための機構を提案し
た(1913年)。
KMはVmaxの半分の値を与える基質濃
度[S]に等しい。
44
KMが大きいと、[S]が高くないと
反応が促進しないので、酵素は基
質に対して低親和性である。
KMは基質親和性の目安となる。
45
5
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最大速度Vmax
Vmax= k2[E]0
(酵素が十分に基質で飽和しているとき成立)
Vmaxは酵素初濃度[E]0に依存する
([E]0が高いほど速くなる)が、基質
濃度[S]には依存しない。
もし[E]0が既知なら、Vmaxの値からk2
の値を決定できる。
k2は代謝回転数(ターンオーバー
数)と呼ばれ、酵素が十分に基質で
飽和しているときの、単位時間あた
りに生成物へ転換される基質分子の
数である。
酵素の触媒活性はこの代謝回転数で
測られる。
例えば、炭酸脱水酵素は1秒間に60
万個の基質分子に作用する。
46
47
【酵素阻害】
動物の呼吸を司る酵素シトクロムcオ
キシダーゼは、シアン化物イオン
CN- で強く阻害されるので、
シアン化物は有毒物質。
糖尿病は血液中のグルコース(ブドウ
糖)濃度が高い。
毒や薬とは別に、正常な代謝にも阻
害は深く関与し、代謝調節を行う。
生体内の特定物質が酵素を阻害した
り、逆に活性化する例は多い。
マルトースがマルターゼの作用でグル
コースに分解されて始めて吸収される。
49
【酵素阻害】
デンプンはアミラーゼにより二糖のマ
ルトース(麦芽糖)まで分解される。
50
【酵素阻害】
酵素阻害:酵素触媒反応は、生成物の
形成をじゃまする分子(阻害剤)に
よって阻害される。
抗生物質の多くはバクテリアやウイル
スなどの病原菌の酵素を阻害するもの
(病原菌にとっては毒)。
ペニシリンは、細菌細胞壁ペプチドグ
リカンの合成に関わる酵素を阻害する。
48
【酵素阻害】
マルターゼ阻害剤は糖尿病の薬になる。
グルコースの構造によく似たある化合
物は、マルターゼの活性部位に結合し
マルターゼから離れにくい性質があり、
マルターゼ阻害剤として作用する。
現代では、分子レベルで医薬品を設計
する。
51
【参考:酵素の利用例】
バイオリアクター:酵素の触媒作用を利
用した反応装置
アルコール飲料や甘味料などの食品、ビ
タミンやホルモンのような医薬品の生産
に利用されている。
洗濯用洗剤に酵素を配合する。
タンパク質分解酵素プロテアーゼ、
脂質分解酵素リパーゼ、
デンプン分解酵素アミラーゼ
52
6
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第15章 化学平衡
【注意:化学平衡定数】
【ヘモグロビンの化学平衡】
熱力学的に化学平衡を導くことはこの
講義の範囲を超えるので、次のように
まとめておく。
ヘモグロビン(p.637):酸素分子を
輸送するタンパク質
『溶液中の化学平衡を考える場合、濃
度とは溶媒に溶けた比較的少量の溶質
の量を表すものだから、反応式中の溶
媒や固体物質は濃度を考えないので、
化学平衡定数の式の中に含めない。』
ヘム基(p.594)
ヘモグロビンHbと酸素分子O2(g)の
化学平衡を考える。
7
【注意:化学平衡定数】
教科書p.425、p.426、p.428、p.448
化学平衡定数は、質量作用の法則か
ら導かれるものではなく、熱力学関
係式に基づいて導かれるものである。
【再録・注意14章】
N2+3H2 → 2NH3
(1)
(1/2)N2+(3/2)H2 → NH3
(2)
反応速度1=-∆[N2]/∆t∝k1
反応速度2=-2∆[N2]/∆t∝k2
反応速度1=(1/2)反応速度2
速度定数:k1=(1/2)k2
【ヘモグロビンの化学平衡】
身体中の酸素の輸送
Hb+O2(g)
Hb(O2)
Hb(O2)+O2(g)
Hb(O2)2
Hb(O2)2+O2(g)
Hb(O2)3
Hb(O2)3+O2(g)
Hb(O2)4
高地では息苦しい。高山病
高地では酸素の分圧が下がり、平衡が
左に移動する。
→ヘモグロビンの飽和度が下がる。
8
【注意:化学平衡定数】
熱力学的にきちんと平衡定数を定義
すれば、p.425、p.426、p.428、p.448
の反応式の平衡定数はKcでしかない。
Kc’などというものは出てこない。
Kc’は平衡定数ではない。
固体の濃度という訳の分からないも
のも出てこない。
【再録・注意14章】
反応速度あるいは反応速度定数を示
す際には必ず化学反応式を示す必要
があることが分かる。
p.p.429~430
K の表記と反応式
2. 反応式の書き方によって、平衡定数
の値は変化する。
1
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第16章 酸と塩基
1
【注意】
p.447
(1) HCl+H2O
(2) HCl
H3
O++Cl-
【酸と塩基の定義について】
アレニウスはそれまで一つの化合物
と考えられていた電解質、例えばHCl
とかNaCl、に解離(電離)という概
念(イオンという概念)をはじめて
導入した(1887年)。
この解離の概念に基づいて、「酸は
水溶液中で水素イオンと陰イオンに
解離し、塩基は水酸化物イオンと陽
イオンに解離する物質」と定義した。
酸塩基はブレンステッドの定義に基づ
いて考えられるべきで、アレニウスの
定義は無視すべきである。便宜的に使
い分けるとか、狭義、広義の定義とい
うことではない。
例題16.1
【濃度と活量】
2
NH3(aq)+HF(aq)
NH4+(aq)+F-(aq)
H++Cl-
(1)を略して(2)と書くこともあるが、
注意が必要である。
考え方の復習
【濃度と活量】
p.p.449~450
活量とは、エンタルピー効果(粒子
間相互作用)を考慮した‘濃度’。
aJ=γJ[J] γは活量係数
一般に、濃度が高いほど、粒子間相
互作用が働くので、濃度[J]と活量aJ
のずれは大きい。
低濃度では両者の違いは僅か。
7
3
p.p.449~450
自由エネルギー G=H-TS
理想溶液とはエントロピー効果(数
の効果、濃度)のみでその性質が説
明できる系。
練習問題
p.447
言い換えれば、エンタルピー効果=
粒子間相互作用の効果を無視できる
系。
共役酸塩基対という概念からも、水
溶液中ではH+ではなくH3O+という
化学種が存在すると考えるべき。
4
【酸と塩基の定義について】
この定義は不完全であり、弱塩基であ
るアンモニアや有機アミンなどの塩基
性を説明することができない。水溶液
に限定されている。
5
p.p.449~450
【濃度と活量】
水溶液中に他のイオンが共存しても、
任意の化合物の溶解度積は温度によっ
て決まる一定の値を取るが、
その化合物の溶解度は増加する。
これを異種イオン効果という。
溶解度積は正しくは活量の積で書かれ
る。
8
6
p.p.449~450
【濃度と活量】
q+
p
pq
Ksp = a(M ) a(A )
=γ(Mq+)pγ(Ap-)q[Mq+]p[Ap-]q/c○p+q
異種イオン効果により溶解度が増加
するため、濃度[Mq+]、[Ap-]は増加
するが、活量係数γ(Mq+)、γ(Ap-)が減
少するので、活量a(Mq+)、 a(Ap-)の
積Kspは一定のまま。
9
1
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【参考:酸性雨】
普通の雨水は大気中のCO2が溶けていて、
次のようにごく一部が水と反応してH+を
生じて酸性を示すが、それよりも酸性が
強いpH=5.6以下の雨を酸性雨という。
CO2+H2O → H++HCO3-
例題16.7
HF(aq)+NO2-(aq)
ところで、
HNO2(aq)+F-(aq)
練習問題
CH3COOH(aq)+HCOO-(aq)
CH3COO-(aq)+HCOOH(aq)
考え方の復習
10
「pH=5の希塩酸を水で10倍に希釈
した塩酸のpHはいくらか?希釈した
塩酸を更に10倍に希釈した塩酸のpH
はいくらか?さらにもう一度10倍に
希釈した塩酸のpHはくらか?」
もし、答えがpH=6、7、8だとする
と、希塩酸を希釈していくと塩基性
になってしまう?
11
16.8 分子構造と酸の強さ
ハロゲン化水素酸
【参考:ハロゲンを含むオキソ酸】
ある分子がH+を放出する傾向は、そ
水溶液中のハロゲン化水素はハロゲ
ン化水素酸という。
次亜塩素酸 HClO:不安定で、強い酸化力
を持つため、漂白・殺菌などに利用され
ている。
の分子がいる環境に依存する。
HF(フッ化水素)→ フッ化水素酸
(フッ酸)
気相中か液相中か、
水溶液中かそれ以外の溶媒中か。
HCl(塩化水素)→ 塩酸
ここでは水溶液中の場合を考える。
HBr(臭化水素)→ 臭化水素酸
13
【参考:ハロゲンを含むオキソ酸】
HI(ヨウ化水素)→ ヨウ化水素酸
次亜塩素酸ナトリウム NaClO:殺菌・漂
白剤となる。
さらし粉 CaCl(ClO)・H2O:水に溶けて次
亜塩素酸イオンClO-を生じ、酸化・漂
白・殺菌作用を示す。
14
15
【参考:混ぜるな危険】
【参考:混ぜるな危険】
酸化力:HClO>HClO2>HClO3>HClO4
塩素系洗剤に酸性洗剤を加えると塩素ガ
スが発生する。
酸性洗剤の主成分である塩酸とNaClOが
反応すると、
亜塩素酸ナトリウム NaClO2:水道水の殺
菌に用いられる。
塩素系洗剤の多くには次亜塩素酸ナトリ
ウムNaClOが含まれている。
塩素酸カリウム KClO3:酸化力が強く、
マッチや火薬(花火)の原料に用いられ
る。
《化学実験・物理2:酸素のモル体積》
KClO3の熱分解
次亜塩素酸イオンClO-は酸化力が強く、
殺菌・漂白に使われている。
酸性度:HClO<HClO2<HClO3<HClO4
NaClO+HCl → HClO+NaCl
強酸の塩NaClと弱酸HClOが出来る。(塩
酸でなくとも、次亜塩素酸HClOよりも強
い酸ならこの反応は起こる)
16
2
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【参考:混ぜるな危険】
このHClOは非常に不安定な物質で、塩
酸と反応して
HClO+HCl → H2O+Cl2(g)
例題16.12
(a) HClO, HBrO, HIO
(b) HNO3, HNO2
【弱酸-弱塩基の塩の加水分解】 p.475
酢酸アンモニウムCH3COONH4は酢酸
とアンモニアの塩である。
この溶液のpHは酢酸の共役塩基であ
るCH3COO-とNH3の共役酸である
NH4+の解離定数の大きさに依存する。
練習問題
HBrO3, HBrO4
塩素ガスを発生する。
この反応は反応速度が速く、急激に塩素
ガスが発生する。
考え方の復習
(a) H2TeO3, H2SO3, H2SeO3,
CH3COO-+H2O
NH4+ +H2O
CH3COOH+OH- Kb
NH3+H3O+
20
p.476
【参考:炭酸水素ナトリウム
(NaHCO3)】
一般には重曹と呼ばれ、和菓子のふくら
し粉に使われる。
弱アルカリ性なので、脂肪酸のような酸
性の汚れを取るのに役立つ。
【参考:炭酸水素ナトリウム】
p.476
炭酸水素ナトリウムは加熱すると分解し
て二酸化炭素を発生する。
2NaHCO3 → Na2CO3+H2O+CO2
塩基性の炭酸ナトリウムNa2CO3が発生す
るので問題。
Ka
21
【参考:炭酸水素ナトリウム】
p.476
ベーキングパウダーにはある種の酸
(焼きミョウバン、リン酸水素カルシ
ウム)が混ぜられている。
発泡性入浴剤には炭酸より強い酸(コ
ハク酸やフマル酸)が含まれている。
炭酸水素ナトリウムと酸が反応しても二
酸化炭素が発生する。
発泡性入浴剤に使われている。
NaHCO3+HCl → NaCl+H2O+CO2
22
【再掲:酸性雨】
p.477
普通の雨水は大気中のCO2が溶けていて、
次のようにごく一部が水と反応してH+を
生じて酸性を示すが、それよりも酸性が
強いpH=5.6以下の雨を酸性雨という。
CO2+H2O → H++HCO3-
25
【参考:酸性雨】
【再掲:有機電子論】
化石燃料には不純物として硫黄が含まれ
ているため、燃焼させるとSO2が発生す
る。
有機電子論(第12章分極の応用例)
また、燃焼の際に空気中の窒素が酸素と
反応してNO2も発生する。
これらは酸性酸化物であり、空気中で酸
素などと反応して雨水に溶け込んで、硫
酸や硝酸になり酸性雨の原因の中心に
なっている。
26
求電子試薬が分子内のマイナスに帯
電した部分を攻撃する=求電子反応
求核試薬が分子内のプラスに帯電し
た部分を攻撃する=求核反応
27
3
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化学実験 有機
カルボニル
基の二重結
合には、C
とOの電気
陰性度の違
いから極性
が生じ、そ
の炭素原子
が部分的に
正に帯電し
ている。
【有機電子論とルイス酸塩基】
カルボニル
炭素をアニ
リンの窒素
原子あるい →
求
はサリチル 核
試
酸の水酸基 薬
の酸素原子
が攻撃する。
求核試薬はルイス塩基であり、また
求核試薬が攻撃目標にする相手の物
質は、ルイス酸である。
求電子試薬はルイス酸であり、また
求電子薬が攻撃目標にする相手の物
質は、ルイス塩基である。
ルイス酸は電子対受容体
ルイス塩基は電子対供与体
求核試薬→
28
29
30
4
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第17章 酸塩基平衡と溶解平衡
(目標)
17.2 緩衝液
・生体における溶液中の電離平衡を
概説できる。
弱酸とその共役塩基
・電離平衡、緩衝作用と溶解度積を
説明できる。
弱塩基とその共役酸
CH3COOH
CH3COO-+H+
CH3COONa → CH3COO-+Na+
CH3COO-+H2O CH3COOH+OH1
《化学実験・無機1:水道水の硬度
:キレート滴定》
NH3/NH4Cl緩衝液
NH3 + H3O+ → NH4+ + H2O
NH4+ + OH- → NH3 + H2O
滴定で用いたEDTA試薬は酸性
(HOOC-H2C)2-N-CH2-CH2-N-(CH2-COOH)2
2
【 生体における緩衝作用】
体重70 kgの成人では、およそ0.1
molのH+と15 molのCO2が一日の代
謝で作り出される。
健康な人の血液は、中性に近い、
とても弱いアルカリ性(pH=7.37~
7.43の範囲)に保たれている。
4
5
3
【 生体における緩衝作用】
血液では炭酸水素イオン/炭酸
(HCO3-/H2CO3)緩衝系がpHを調整
している。
H++HCO3- H2CO3 CO2+H2O
H+濃度が上がると、 HCO3-がH+と反
応して炭酸を生じ、炭酸はCO2とH2O
になり、CO2は肺から排出される。
OH-濃度が上がると、炭酸が解離し、
H+がOH-と反応する。
6
【参考】
【 生体における緩衝作用】
細胞内ではリン酸系(HPO42-/H2PO4)緩衝液がpHを約6.86に保っている。
《化学実験・分析3:定量分析:
食酢中の酢酸の定量》
酢酸(弱酸)-NaOH(強塩基)滴定
ハロゲン化銀は感光性があり、写真用感
光材料として用いられるが、ハロゲン化
銀中で臭化銀が一番感光性がある。
例題17.3参照
pH7.4ではH2PO4-が約1/3、HPO42-が
約2/3
指示薬としてフェノールフタレイン
を使用した。
《化学実験・分析2:定性分析:
未知試料の分析》
AgCl沈殿の確認、日光で白色沈殿が
紫色に変色する。
酸性の尿ではほとんどH2PO4尿のpH=4.5~7.5
7
8
9
1
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《化学実験・無機2:
複塩と錯塩の合成》
《化学実験・分析1:
金属イオンの性質》
問3 錯塩[Cu(H2O)4]SO4・H2Oはア
ンモニア水にはよく溶けるが、水
には溶けず、淡青色の沈殿に変化
する。どの様な現象が起きている
だろうか、答えよ。
硝酸銀水溶液に6M塩酸を加える →
AgClの沈殿
そこに、6Mアンモニア水を加える
→ 沈殿が溶解し、[Ag(NH3)2]2+が生
成する
10
【王水】
NOClとCl2は酸化力が非常に強く、金
や白金を酸化してAu3+やPt4+にするこ
とができる。
しかし、それだけでは溶液にはならな
い。
ここで必要となるのは塩化物イオンに
よる錯イオン形成である。
Au+4HCl+3HNO3
→ H[AuCl4]+3NO2+3H2O
【王水】
王水は硝酸と塩酸の割合が1:3の混合
物で、金や白金ですら溶かすことが
できる。
王水では
HNO3+3HCl → Cl2+NOCl+2H2O
という反応によって、塩化ニトロシ
ルNOClと塩素Cl2ができる。
11
【王水】
遊離のAu3+やPt4+がほんの僅かでもで
きると、塩化物イオンがあるために
どんどん[AuCl4]-や[PtCl6]2-などの
錯イオンが生成してしまい、平衡が
移動して溶液ができることになる。
このとき溶液の中には遊離のAu3+や
Pt4+が溶けているわけではない。
13
12
【炎色反応】
熱エネルギーによって原子内の電子
はよりエネルギーの高い準位に移動
する。
そこは不安定な状態なので、10-10秒
という短い時間しか居られず、再び
元のエネルギー準位へ戻ってしまう。
このとき電磁波を放出する。
14
15
【炎色反応】
【溶解度の熱力学的考察】
エネルギーの高い状態はいくつもある
のでいろいろな波長の電磁波が放出さ
れるが、それらの電磁波の中に可視光
線が含まれていると、炎色反応が観測
される。
∆G、∆H、∆Sは溶解に伴う自由エネ
ルギー変化、エンタルピー変化、エ
ントロピー変化である。
ルシャトリエの原理から発熱的であ
れば、温度の上昇とともに溶解度が
減少すると予想される。
∆H、∆Sはあまり温度変化しない。
しかし、発熱∆H<0でも、∆S>0で
あれば、温度の上昇とともに、溶解
度が増大する。
原子のエネルギーが量子化されていて、
その電子状態(エネルギー準位の間
隔)が各原子によって異なるので、各
原子に特有の色を示す。
16
【溶解度の熱力学的考察】
∆G=∆H-T∆S(定温・定圧)
∆G=∆H-T∆S(定温・定圧)
∆Gは温度変化する。特に∆Sの値が
大きいと大きく温度変化する。
17
18
2
2015/9/28
【溶解度の熱力学的考察】
∆Sが負の値の場合、∆Gの値は温度の
上昇とともに増大する。
∆Sが負の値である物質の溶解度は、
温度の上昇とともに減少する。
mol-1
∆G/kJ
Na2SO4 +1.8
mol-1
∆H/kJ
-2.43
K-1
mol-1
∆S/J
-14.2
【溶解度の熱力学的考察 2】
∆Sが負の値の場合、∆Gの値は温度の
上昇とともに増大するので、
∆Sが負の値である物質の溶解度は、
温度の上昇とともに減少する。
気体が水に溶解すると、水中では気
体分子は自由に動けなくなるので、
気体の溶解に伴い必ず大きなエント
ロピー減少が起こる。
19
【溶解度の熱力学的考察 2】
気体のエントロピーは温度の上昇と
ともに大きくなるので、
気体が水に溶解すると、そのエント
ロピー変化の程度は温度が高いほど
大きく減少する。
気体の溶解度は例外なく温度の上昇
とともに減少する。
20
21
【ヘンリーの法則】
13.6 束一的性質
【理想溶液】
生体系は第一近似として、溶液系と
見なせる。水溶液、脂質溶液・・・
(目標)理想希薄溶液に関するラ
ウールの法則、ヘンリーの法則、束
一的性質を熱力学から概説できる。
理想溶液とは、ラウールの法則が全
組成範囲で成立する溶液である。
急激に大きな圧力変化を受けると、
溶液に溶けている気体が、炭酸飲料
水の発砲のように、泡となって出て
くるので、それが傷みを引き起こす。
理想溶液、理想希薄溶液
ラウールの法則
束一的性質
最悪の場合は潜水病で致命傷をおう
こともある。
22
分子論的にいえば、同じ成分間の相
互作用と異なる成分間の相互作用が
同じで(=各成分の感じるポテン
シャルが同じで)、各成分分子の大
きさや形が同じ系が理想溶液である。
23
24
【理想溶液】
【束一的性質】
【束一的性質】
言い換えれば、全組成範囲にわたり
混合・溶解がエントロピー効果のみ
によって起こるものが理想溶液であ
る。 ∆H =0
束一的性質が成立する条件は二つあ
る。
前者の条件は溶液が理想的であると
見なせること、したがって溶質を混
合したときエンタルピーは変化せず、
エントロピー効果のみによって混合、
溶解が起こると見なせることを意味
している。
一つは希薄溶液であること、
もう一つは溶質成分は液相にのみ存
在すること
∆G=∆H-T∆S
理想溶液と理想気体を比較しなさい。
25
である。
26
27
3
2015/9/28
【束一的性質】
【束一的性質】
二番目の条件により溶質成分が存在す
ることによるエントロピーの増大が液
相にのみ起こるため(気相、固相には溶質成
つまり、束一的性質は本質的にエン
トロピー効果によるものである。
分が存在しないので、そこでは混合によるエントロ
ピーの増大が起きない)、液相が気相や固相
よりも安定化し、純溶媒の時よりも広
い温度・圧力範囲で液相として存在す
ることができるようになる。
混合エントロピー
浸透圧
28
エントロピー効果なので、溶液の種
類に依存せず共通して成立し、粒子
の数に比例するのである。
これはエントロピーの特性である。
29
“蒸気圧降下が起こるのは、液体の表
面にも溶質分子が存在し、水分子が蒸
発する液面の面積が減少し、液体の表
面から蒸発する水分子の数が減少する
からである”、という記述がある。
これは水と溶質分子の相互作用(=エ
ンタルピー効果)についてはいっさい
の考慮がなく、単に数の問題(エント
ロピー効果のみ)と見なしていること
が分かる。
30
p.p.380~381
浸透現象は、生体系で重要な働きを
している。
生体系は溶液系であり、細胞の内外
で溶質の濃度差があるので、浸透圧
が生じている。
輸血や点滴のために血管に注入する
溶液は血液と等張でなければならな
い。
31
4
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【熱力学の復習】
第18章 熱力学
(1) 熱力学で使われる言葉・概念
【熱力学の復習】
標準状態
宇宙、外界、系(宇宙=外界+系)
○で表記する。P =105 Pa
系:孤立系、閉鎖系、開放系
標準状態は温度の指定はない。
○
圧力が105 Paの状態を標準状態とする
(IUPAC推奨)。ただし、1気圧の状
態を標準状態とする考え方もある。
熱平衡状態、非平衡状態
IUPAC:国際純正・応用化学連合
1
【熱力学の復習】
状態量(状態関数)・・・
温度T、圧力P、体積V、熱容量C
内部エネルギーU、エンタルピーH、
状態量と熱 q・仕事 w の違いを理解す
る。
熱と仕事は状態量ではなく、エネル
ギーの移動形態である。
2
【熱力学の復習】
(2) 熱力学第一法則
【熱力学の復習】
(3) エンタルピーH=U+PV
∆U =q+w (閉鎖系)
内部エネルギー変化∆U、熱 q、仕事 w
内部エネルギーとエンタルピーを使
い分ける。
(4) 標準生成エンタルピー ∆Hf
標準反応エンタルピー ∆Hrxn
○
○
注意:
∆ r H 、∆ f H :IUPAC推奨
○
体積一定のとき内部エネルギー
圧力一定のときエンタルピー
熱と仕事の符号に気を付ける。
系に熱が流れる、系に仕事がなされる
時を正にとり、系から熱が流れ、系が
仕事をするとき負にとる。
4
【熱力学の復習】
(目標)内部エネルギー、エンタル
ピー、エントロピー、自由エネル
ギーを説明できる。
7
定圧条件での反応熱は反応エンタル
ピーと呼ぶ。
5
6
18.1 熱力学の三つの法則
18.3 エントロピー
熱力学の枠組みは日常経験を前提とし
て組み立てられている。
経験則、現象論
自発的過程は宇宙のエントロピーが
増大する過程である。
熱力学第一法則:エネルギー保存則
○
3
熱力学第二法則:自発過程の不可逆性
熱力学第三法則
8
p.515
これを熱力学第二法則(エントロ
ピー増大則)と呼ぶ。
エントロピーはミクロな(原子・分
子の)レベルの乱雑さ、無秩序さを
表す 巨視的な量(状態量)である。
9
1
2015/9/28
p.515:「ある系のエネルギーが、そ
の系がとり得る様々なエネルギー状態
の間にどの程度広がっているか、ある
いは分布しているかの尺度」
「分布が大きくなれば、エントロピー
も大きくなる。」→ より広く分布す
るということは、より無秩序になると
いうこと。
p.516上から6行目:外界のエントロ
ピーは増大する。
微視的状態とエントロピー
p.517
ボルツマンの原理:S = k lnW (18.1)
統計力学的エントロピー
W:微視的状態の数
統計力学:ミクロなレベルの力学法
則と確率論の結合によって、統計的
または平均的法則としてマクロな物
理法則を演繹する理論的方法。
10
【参考】気体はなぜ拡散するのか?
11
【参考】
これまでの考察で、自発過程ではエント
ロピーが増大することが分かった。
では、なぜエントロピーは増大するのだ
ろうか?
それは原子や分子が熱運動をしているか
ら、である。
これを気体の拡散と固体の融解(相転
移)を例に考えてみよう。
12
【参考】
【参考】
原子や分子は不規則な運動-熱運動-を
している。(高校化学参考書)
本当は衝突によって運動方向を変えるけ
れど、衝突を直接考慮しないで、分子は
ある頻度で確率的に運動方向を変えると
考える。
分子運動は決して本質的に不規則ではな
い。
しかし、多数の分子が存在すると、分子
は互いに衝突を繰り返すため、その運動
に惑星の運動のような規則性は見いだせ
ない。
ある瞬間にある場所にいる分子が、次の
瞬間そこからある方向にある確率に従っ
て移動すると考える。
これを確率モデルと呼ぶことにする。
14
13
15
【参考】
【参考】
【参考】
物質の状態をコンピューターでシミュレ
ーションする方法:
気体はなぜ拡散するのか?
それは気体分子が不規則な熱運動をする
から。
分子が不規則に運動するということは、
ある瞬間にある場所にいた分子が次の瞬
間にある方向に移る確率はどの方向につ
いても等しいということである。
これを確率モデルで説明してみよう。
しきりをとる前には分子は箱の中の左側
にのみ存在する。
分子動力学法:運動方程式に従って分子
の運動をシミュレートする。
モンテカルロ法:確率的に分子を動かし
シミュレートする。
しきり(束縛)を取り除くと、どうなる
だろうか?
両者の計算結果は基本的に一致する。
16
17
18
2
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【参考】
【参考】
【参考】
簡単のために、分子は右と左にしか動け
ないとする。
そして、右に動く確率も左に動く確率も
等しいとする。
それに対して、右に動く分子は他の分子
が無いので、右方向にどんどん進むこと
ができる。
一度このような分布になると、右に進む
分子も左に進む分子も等しく存在するの
で、均一な分布を維持し続けることにな
る。これが熱平衡状態である。
右に動く分子も左に動く分子もあるが、
左に動く分子はすぐ他の分子と衝突して
しまい左方向にはなかなか進むことがで
きない。
結果として、分子全体は徐々に右側に分
布するようになり、最終的には箱の中全
体に分子が均一に分布するようになる。
19
一旦熱平衡状態になった気体は、二度と
拡散する前の状態に戻らない。これを拡
散は不可逆過程であると表現する。
21
20
【参考】
【参考】
【参考】
確率モデルによって、
気体はなぜ拡散するのか?(まとめ)
固体はなぜ融解するのか?
気体がなぜ拡散するのか、
気体分子が不規則な熱運動をするから
しきり(束縛)を取り除くと、分子は自由
に熱運動できるので、気体は広く分布する
ようになる=拡散する。
温度を上げて固体を液体にするためには
、加熱しなければいけないので、液体状
態の方が固体状態よりエネルギーが高い
はずである。
これを熱力学では、第二法則に基づいて、
エントロピーが増大するから気体は拡散す
る、と説明する。
それなのになぜ融解が起こるのだろう?
拡散がなぜ不可逆過程なのか、
を説明することができた。
22
23
24
【参考】
【参考】
【参考】
液体になるということは、エネルギー的
により不安定な状態になることだが、な
ぜ固体の状態に踏みとどまることができ
ないのか?
なぜなら、エネルギー的に考えれば、任
意の温度において結晶状態が一番エネル
ギーの低い状態だから。
それにも係わらず、なぜ融解するのだろ
う?
温度が上昇しても融けず、非常に熱い固
体(例えば100℃の氷)になってもいいの
ではないか?
25
結晶状態はポテンシャルエネルギーVの
一番低い状態であり、
全粒子のエネルギーU=全粒子の運動エ
ネルギー+全粒子間のV
なので、任意の温度においてUの一番低
い状態は結晶状態である。
26
温度の上昇に伴い、ポテンシャルエネル
ギーより運動エネルギーが大きくなると
、束縛にうち勝って、粒子は自由に熱運
動をし、その結果、結晶構造がバラバラ
になる=融解する。
27
3
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【参考】
【参考】
【参考】
固体はなぜ融解するのか?(まとめ)
物質は原子や分子から構成されている。
熱力学ではこれをエントロピーという概
念を使って法則化する。
粒子が不規則な熱運動をするから。
粒子間の束縛にうち勝って、粒子が不規
則な熱運動をするので、固体はバラバラ
になる=融解する。
これを熱力学では、第二法則に基づいて
、エントロピーが増大するから融解する
、と説明する。
28
【宇宙のエントロピー】
系のエントロピー ∆S が減少しても、
宇宙のエントロピー ∆ Suniv が増大し
ていれば、その過程は自発的に起こ
る。
∆Suniv=∆S+∆Ssurr
その原子や分子は熱運動をしている。
束縛条件が変化すると、原子や分子はよ
り自由に動き回る → 原子や分子はより無
秩序になる。
これは全く一般的な現象である。
ミクロなレベルでより無秩序な状態に変
化する過程は、自然な過程、自発的な過
程である。
エントロピー:ミクロな(原子や分子
の)レベルの乱雑さ、無秩序さを表す状
態関数。
熱力学第二法則:宇宙のエントロピーが
増大する方向に自発的に変化する。
30
29
系のエントロピー変化
p.521
aA+bB → cC+dD
標準反応エンタルピー ∆Hrxn
標準生成エンタルピー ∆Hf
○
○
標準反応エントロピー ∆Srxn
標準エントロピー ∆S
(18.6) (18.7)
○
【注意】
温度T、標準状態(圧力1 bar)の下で
熱平衡状態にあるAとBが別々に存在
している状態から、同温同圧下で熱
平衡状態にあるCとDが別々に存在し
ている状態までのエンタルピー変化
(、エントロピー変化)。
○
例:液体→固体(凝固)∆S<0
31
【熱とエントロピー】
液体→固体(凝固)
∆S<0だが、∆Suniv>0
32
【熱とエントロピー】
熱に伴ってエントロピーは変化する。
凝固では ∆H<0(発熱)なので、熱
が系から外界へ流れ、外界のエントロ
ピー ∆Ssurr が増大し、
その結果、宇宙のエントロピーが増大
する。
∆Suniv=∆S+∆Ssurr
教科書p.164「反応が1 atmで行われた
ときの反応エンタルピー」←間違い
34
系に熱が流れると、系のエントロ
ピーは増大する。
33
【温度とエントロピー】
p.524
熱のエントロピー効果は温度が低い
ほど顕著になる。
∆Ssurr=-∆H/T (定温、定圧) (18・8)
系から熱が出ていくと、系のエント
ロピーは減少する。
熱のエントロピー効果は温度が低い
ほど顕著になる。
35
36
4
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【参考:熱力学的エントロピー】
∆S=qrev/T
定温
∆S:系のエントロピー変化、qrev:可逆
過程で系に出入りした熱、T:系の温度
∆Ssurr=qsurr/Tsurr
-q=qsurr
定温
【例題18.5】p.532
∆Ssurr=qsurr/Tsurr (定温)
ベンゼンの融解エントロピー
統計力学的エントロピー:S = k lnW
p.526
∆Suniv=∆S+∆Ssurr (一般的)
ここに、式(18.8)∆Ssurr=-∆H/T(定
温、定圧)を代入する。
∆Suniv=∆S-∆H/T(定温、定圧)
両辺に-Tをかける
-T∆Suniv=∆H-T∆S(定温、定圧)
40
p.527
ベンゼンの蒸発エントロピー
=-∆H/T(Tsurr=T)
∆Svap=87.8 J K-1 mol-1
∆Ssurr=-∆H/T(定温、定圧)(18・8)
37
p.526
∆Sfus=39.1 J K-1 mol-1
=-q/Tsurr (qsurr=-q)
=-∆H/Tsurr(定圧q=∆H)
∆Ssurr:外界のエントロピー変化、qsurr:
外界に出入りした熱(可逆過程とは限定
しない)、Tsurr:外界の温度
18.5 ギブズ自由エネルギー
【参考:式(18・8)の導出】
∆Sfus < ∆Svap
38
p.p.526~527
ここで、
G ≡ H-TS
(18.9)
で定義される自由エネルギー G とい
う状態量を導入する。
温度一定での自由エネルギー変化 ∆G
は
∆G=∆H-∆(TS) (定圧)
=∆H-T∆S-S∆T
∆G=∆H-T∆S (定温・定圧)
となる。
39
∆G=∆H-T∆S (定温)
p.527
-T∆Suniv=∆H-T∆S (定温、定圧)
この2式を比較して、以下の関係を得
る。
∆G=-T∆Suniv (定温、定圧)
この関係から、宇宙のエントロピーが
増大すると、系の自由エネルギーが減
少する、ことが分かる。
(18.10)
41
42
【∆Hと∆Sの符号】
【参考】
∆G=∆H-T∆S
断基準を宇宙のエントロピーの代わ
一般に、∆Hと∆Sは同符号をとるこ
とが多い。例:融解-凝固
りに系の状態関数である自由エネル
吸熱反応(∆H>0)∆S>0
ギーを使う。
発熱反応(∆H<0)∆S<0
∆Gは-T∆S 項があるので、大きく温度
変化する。
変化が自発的に起こるかどうかの判
∆Hと∆Sはあまり温度変化しない。
吸熱反応(∆H>0)∆S>0
高温になる程∆Gに負の寄与をする。
43
44
発熱反応(∆H<0)∆S<0
高温になる程∆Gに正の寄与をする。
45
5
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【参考】
教科書p.529
教科書p.529
ルシャトリエの原理:
普通∆は二つの値の差を表すが、ここ
では∆はGのξ に関する勾配(導関
数)を表している。
∆G >0でも、∆G<0なら、反応は
進行する。
吸熱反応は温度を上昇させると、
反応が進行する。
発熱反応は温度を上昇させると、
反応が起こりづらくなる。
∆G=(∂G/∂ξ)P, T
∆Hと∆Sが同符号の時、ルシャトリエの
原理と一致することが分かる。
つまり、∆Gは反応の進行に伴う、系
の自由エネルギー変化である。
46
p.529
温度と化学反応
∆G=∆H-T∆S
∆Hと∆Sはあまり温度変化しない。
∆Gは-T∆S 項があるので、
大きく温度変化する。
∆Sが正の反応は、温度を上昇させる
ほど反応が起こりやすくなる。
∆Sが負の反応は、温度を上昇させる
ほど反応が起こりづらくなる。
49
ξ:反応進行度
47
p.530
【再掲】
∆G >0でも、∆G<0なら、反応は
進行する。
○
∆G は標準状態にある生成物が標準
状態にある反応物になるときの自由
エネルギー変化。
○
∆Gは反応の進行に伴う、系(反応
系+生成系)の自由エネルギー変化
である。 ∆G=(∂G/∂ξ)P, T
50
○
∆G は標準状態にある生成物が標準
状態にある反応物になるときの自由
エネルギー変化。
○
∆Gは反応の進行に伴う、系(反応
系+生成系)の自由エネルギー変化
である。 ∆G=(∂G/∂ξ)P, T
48
【相転移とギブズ自由エネルギー 】
一般に任意の温度と圧力の下では、物
質はGが一番低い状態(相)にある。
これを安定相と呼ぶ。
系の温度や圧力を変えたとき、ある温
度あるいは圧力以上(あるいは以下)
で別の相のGの方が低くなれば、その
相が現れる。
これが相転移である。
51
【相転移とギブズ自由エネルギー 】
【相転移とギブズ自由エネルギー 】
【再掲】
ここでは、温度変化に伴う相転移に
ついて考えてみよう。
HもSもあまり温度変化しないが、Gは
-TSの項があるので、大きく温度依存
する。
温度が上昇するとGは減少する。
∆G=∆H-T∆S
このとき、 Gの温度変化も固相<液相
<気相の順に大きくなる。
・相転移 ∆S=∆H/T・・・T は正の値な
ので、∆Hと∆Sは同符号をとる。
その結果、次の図のような温度変化が
現れる。
54
任意の物質の固相、液相、気相のH
とSの大きさを比較すると、両者とも
一般に固相<液相<気相の順になる。
52
53
一般に、∆Hと∆Sは同符号をとることが
多い。
・CaCO3の分解反応
6
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【エントロピーと自由エネルギー】
宇宙のエントロピー:系のエントロ
ピー S が減少しても、外界のエントロ
ピー Ssurrが増大し、差し引き宇宙のエ
ントロピー Suniv が増大していれば、
その過程は自発的に起こる。
【エントロピーと自由エネルギー】
∆Suniv=∆S+∆ Ssurr
宇宙のエントロピーの代わりに系の自
由エネルギーを使う。
∆G=-T∆Suniv (定温、定圧)
∆Suniv=∆S+∆ Ssurr
【エントロピーと自由エネルギー】
系の自由エネルギー:系のエントロ
ピー S が減少しても、系のエンタル
ピー H が減少し、差し引き系の自由
エネルギー G が減少すれば、その過
程は自発的に起こる。
∆G=∆H-T∆S
55
【エントロピーと自由エネルギー】
系に注目して、
凝固はエンタルピー効果(∆H<0)
で起こり、
融解はエントロピー効果(∆S>0)
で起こる、
と表現する。
56
57
【再掲】
【タンパク質構造の熱力学的考察】
相転移とギブス自由エネルギー G
天然状態のタンパク質の高次構造は
自由エネルギー G が最小の状態をと
る。
一般に任意の温度と圧力の下では、
物質はGが一番低い状態(相)にある。
これを安定相と呼ぶ。
相転移 ⇔ 熱変性
どちらの過程も宇宙のエントロピー
は増大している。
58
任意の温度と圧力の下では、物質は
自由エネルギー G が一番低い状態
(安定相)にある。
59
60
【疎水性相互作用(疎水結合)】
【疎水性相互作用(疎水結合)】
【疎水性相互作用(疎水結合)】
タンパク質の構造形成に重要な働き
をする分子間あるいは分子内相互作
用の一つが疎水性相互作用である。
疎水性相互作用はエントロピー効果
による見かけ上の相互作用。
水溶液中では働くが、真空中では存
在しない。
疎水性分子の周りの水分子は、それ
どうしで集まり構造形成が促進され、
疎水性分子の周りに氷のような秩序
性の高い構造を持った水層(これを
包接かごと呼ぶ)を形成する。
従って、系のエントロピーが大きく
減少する。
油のように水に溶けずらい物質を疎
水性物質という。
疎水性・親水性(12章 分子間力)
61
疎水性物質が水に溶けるとき、溶解
の自由エネルギー変化は ∆G > 0 で
ある。
なぜ G が増大するのか?
62
メタンハイドレート
63
7
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【疎水性相互作用(疎水結合)】
【疎水性相互作用(疎水結合)】
この構造形成によってエネルギー的
には幾分安定化される(∆H<0)が、
エントロピーが大きく減少する(∆S
<0) 。すなわち、
T∆S < ∆H < 0、 ∆G > 0
∆H / kJ
となる。
∆G / kJ mol-1
メタン
mol-1
-12.76
エタン
-16.665
∆S / J K-1 mol-1 -130.5 -140.6
26.4
【疎水性相互作用(疎水結合)】
疎水性物質が水に溶けないで、水中
で集合して安定化することを、一種
の結合形成と見なして疎水結合(あ
るいは疎水性相互作用)という。
25.5
注:∆Hと∆Sは同符号をとることが
多い。
64
65
66
【疎水性相互作用(疎水結合)】
【タンパク質構造の熱力学的考察】
【タンパク質構造の熱力学的考察】
しかし、疎水性分子間あるいは分子
内に直接働く引力(分散力)によっ
て集まるわけではない。
天然状態のタンパク質の高次構造は
G が最小の状態をとる。
水溶液中の高分子鎖は、無極性の基
を(溶媒に直接触れない)分子内に、
極性の基を分子表面に置くように折
り畳まれている。
エントロピー減少を少なくするため
に水相から疎水性分子が排除される
ため、結果としてあたかも疎水性分
子どうしが相互作用して集まる様に
見えるだけ。
タンパク質の高次構造は、一次構造
すなわちアミノ酸配列によって決ま
る。
一次構造によって決まる G 最小の構
造をとる。
67
68
【タンパク質の折り畳み】
【タンパク質の折り畳み】
天然状態では、個々のタンパク質は
たった一つの高次構造(G 最小構
造)しかとらないのに対して、変性
したタンパク質は多くの構造をとる
可能性がある。
条件を元に戻すと、完全に変性した
タンパク質が、アミノ酸配列という
一次元情報から、自発的に天然状態
タンパク質がとる唯一の三次元高次
構造(G 最小構造)へ、数秒以下の
短時間に折り畳まれる。
これをタンパク質の折り畳み
(フォールディング)という。
70
無極性の疎水性アミノ酸がタンパク
質の内側に寄り集まるのは、主とし
て疎水性相互作用による。
71
69
【タンパク質の折り畳み】
変性した状態は G の高い状態。
天然状態の高次構造は G が最小の状
態。
タンパク質の折り畳みは、G の高い
状態から G が最小状態への自発的過
程。
72
8
2015/9/28
【参考】
18.6 自由エネルギーと化学平衡
【復習】
分子レベルでこのタンパク質のフォール
ディングが研究されている。
鉄を空気中に放置すると、やがてさびる
(=酸化される)、という変化は自発的
に起こる。
熱力学第二法則:
宇宙のエントロピーが増大する方向
に自発的に変化する。
しかし、さびた鉄の錆が徐々になくなり
(=還元される)、やがてぴかぴかの鉄
になる、という反応は自発的には起こら
ない。
宇宙のエントロピーの代わりに系の
自由エネルギー G を自発変化の方向
の指標とする。G=H-TS
なぜ、鉄の酸化が自発的に起こり、酸化
鉄(錆)の還元は自発的に起こらないのか。
系のエンタルピーH 、系のエントロ
ピーSに注目する。
【再掲】
∆G○>0でも、∆G<0なら、反応は
進行する。
化学反応が進行中
分子内の部分どうしに働く力は分かって
も、種々の相互作用が働いているので、
どういう順に力が働いて鎖が折り畳まれ
るのかは、よく分かっていない。
理論的研究、コンピューターによるシ
ミュレーションなどが行われている。
73
【再掲】
系に注目して、
凝固はエンタルピー効果(∆H<0)
で起こり、
融解はエントロピー効果(∆S>0)
で起こる、
と表現する。
どちらの過程も宇宙のエントロピー
は増大している。
76
【混合エントロピー】
p.533
図18.9(a):∆G <0なのに、なぜ反
応は100%進行しないのか?
○
図18.9(b):∆G >0なのに、なぜ反
応が進むのか?
○
74
∆G○は標準状態にある生成物が標準
状態にある反応物になるときの自由
エネルギー変化。
∆Gは反応の進行に伴う、系(反応
系+生成系)の自由エネルギー変化
である。 ∆G=(∂G/∂ξ)P, T
77
【混合エントロピー】
p.533
2 成分以上の異種粒子が混ざり合う
と、無秩序さが増大するので、エン
トロピーは増大する。
∆G(ξ)=∆G +RT lnQ(ξ)
ξ:反応の進行度
∆G(ξ)=(∂G/∂ξ)P, T
○
p.p.532~533
(18・13)
↓ 化学平衡状態では
∆G =0、Q=K
○
∆G =RT lnK
○
(18・14)
(目標)標準ギブスエネルギー変化
と平衡定数との関係を説明できる。
78
【混合エントロピー】
p.533
100%反応が進行するよりも、僅か
でも生成物が残っている方が、
反応が全く進行しないより、僅かで
も反応物が生成する方が、
混合エントロピー効果により、系の
エントロピーが増大し、その結果系
の自由エネルギーは減少する。
それは混合エントロピー効果のため。
79
75
80
81
9
2015/9/28
【混合エントロピー】
《化学実験・有機3:融点の測定》
融点測定は簡便な物質の同定法である
が、融点が同じ物質を区別することは
できない。
未知の物質と同じ融点を示す既知の物
質があれば、それらの混合物の融点を
測定すること(混融試験)によって、
未知物質が既知物質と同じかどうかが
分かる。
【混合エントロピー】
18.7 生体系における熱力学
混合エントロピー効果により、混合
物の融点は純物質のときより必ず下
がる。
(目標)生命現象におけるエネルギー
変化に対しても熱力学法則が適用でき
ることを概説できる。
融点を測定することにより純物質の
純度をある程度見積もることもでき
る。
代謝(metabolism)
生物が外界から物質を取り入れ、細
胞・組織内の化学反応によって、その
物質を様々な別の物質に変化させるこ
と。生化学の中心テーマの一つ。
82
83
【代謝】
教科書p.536
同化:合成反応
(例:タンパク質の合成)吸熱反応
多くの生物化学的な反応は正の∆G
をもっている。
異化:分解反応(例:呼吸)発熱反応
共役反応:∆G >0の反応を、∆G <
0の反応と組み合わせて(カップル
させて)進行させる。
エネルギー代謝:代謝に伴うエネル
ギーの出入りや変換
○
○
○
∆G <0の反応としては、ATPの加水
分解反応が使われる。
84
【生化学的表記】
通常表記:
ATP4-+H2O → ADP3-+H++HPO42生化学的表記:
ATP+H2O → ADP+ H++ Pi
ATPとPiは、反応中に含まれるあら
ゆる形のATPとリン酸を表している。
○
85
86
【生物学的標準状態】
ATP4-+H2O → ADP3-+H++HPO42∆G○' =-31 kJ mol-1
温度310 K、pH=7
【呼吸】
空気中でのグルコースの完全燃焼
C6H12O6(s)+6O2(g)
→ 6CO2(g)+6H2O(l)
生物学的標準状態:pH=7の中性溶液
熱力学的標準状態:pH=0
(水素イオン濃度1 M)
呼吸:解糖系、クエン酸回路、電子
伝達系(末端呼吸鎖)
生物学的標準状態の標準反応自由エネ
ルギー:∆G○'
88
C6H12O6+38H++38ADP3-+
38HPO42-+6O2
→ 38ATP4-+6CO2+44H2O
89
ATP:ATP4-、HATP3-、H2ATP2Pi:PO43-、HPO42-、H2PO4-
87
教科書p.537
アラニン+グリシン
→ アラニルグリシン+H2O
∆G○' =17.2 kJ mol-1
90
10
2015/9/28
【タンパク質の生合成】
【タンパク質の生合成】
【なぜATPなのか?】
タンパク質の生合成は共役反応で起
こり、ペプチド結合1個当たりATP分
子3個を使う。
例えば、ペプチド結合を150個ほどし
か持たないミオグロビンですら、結
合形成に450個のATP分子が必要なの
で、ミオグロビン1 mol作るのに、グ
ルコース分子が12 molも必要。
pH7におけるリン酸化合物の加水分解の標準ギブズエネルギー
生合成:生細胞内で物質が合成され
ること。
基礎代謝の消費カロリーが大きい。
91
【なぜATPなのか?】
ATPの∆G○' が中間的な値を持つから。
∆G○' の値がより負に大きな値だと
したら、ATPの合成により大きなエ
ネルギーが必要となるだろう。
逆に、∆G○' の値がより負に小さな
値だとしたら、共役反応にはあまり
使えないだろう。
94
92
リン酸
∆G○' / kJ mol-1
ホスホエノールビルピン酸 -61.9
アセチルリン酸
-43.1
ホスホクレアチン
-43.1
ピロリン酸
-33.5
ATP
-30.5
グルコース1-リン酸
-20.9
グルコース6-リン酸
-13.8
ギリセロール1-リン酸
-9.2
93
【熱力学の有効性と限界】
【熱力学の有効性と限界】
熱力学自体は巨視的な現象論なので、
生命科学のような複雑な系にも適用
できる。
熱力学ではある変化が起こりうるか
否かは分かるが、その変化が実際に
どの程度の速さで起こるかは全く分
からない。速度論
しかし、ミクロのレベルから解釈す
ることは熱力学の範疇ではない。
95
96
11
2015/9/28
第19章 酸化還元反応と電気化学
【酸化還元の定義】
【酸化還元の定義】
酸化・還元は電子の授受によって定
義されるが、次のような反応は酸化
か還元か必ずしもはっきりしない。
それは生成物における化学結合は基
本的に共有結合なので、反応の過程
における電子の移行が必ずしも明ら
かでないからである。
2H2+O2 → 2H2O
2CO+O2 → 2CO2
1
2
【酸化還元の定義】
【酸化還元の定義】
酸化還元反応を電子の完全な移動だ
けでなく部分的な移動までを含むよ
うに解釈すれば、共有結合性物質の
関与する反応にまで酸化還元反応の
概念を拡張することができるように
なる。
「酸化は電子を失うこと、あるいは
失わないまでも酸化数の増大を指し、
還元は電子を得ること、あるいは得
ないまでも酸化数の減少を指す。」
【酸化還元の定義】
2H2+O2 → 2H2O
0
0
+1 -2
水素は酸化され、酸素は還元された。
5
【酸化還元の定義】
【酸化還元電位・標準電極電位】
(注意)
酸化数とは原子の酸化状態の定性的
な指標にすぎないのであって、実際
の電荷分布を定量的に表していると
は考えてはならない。
物質の酸化力、還元力の強さは
酸化還元電位(単に還元電位と呼ば
れることもある)で表される。
7
酸化数
これが現在広く認められている酸化
還元反応の概念であり、この解釈を
容易に誤りなく進めるために、酸化
数の概念が導入された。
4
酸化状態:任意の酸化数を持った原
子の状態のこと
3
6
【酸化還元電位・標準電極電位】
参考:電位のイメージ
電位 電位差=電圧 電位の高い所か
ら低い所へ電流(電子)が流れる。
気圧 気圧差 気圧の高い所から低い
所へ風(気体分子)が流れる。
8
Zn2+(aq)+2e- → Zn(s)
Cu2+(aq)+2e- → Cu(s)
酸化体
-0.76 V
+0.34 V
還元体 酸化還元電位
酸化還元電位は還元半反応を基準と
する。
酸化還元電位は還元半反応に伴う電
位の変化 を表している。
Zn(s)→ Zn2+(aq)+2e-
酸化半反応
9
1
2015/9/28
【酸化還元電位・標準電極電位】
【酸化還元電位・標準電極電位】
酸化還元電位が高い
→ 還元反応が起こりやすい
電子は電位の低い方から高い方へ流
れる(電流は電位の高い方から低い
方へ流れる)。
酸化還元電位が低い
→ 酸化反応が起こりやすい
Cu2+(aq)+2e- → Cu(s) +0.34 V
Zn2+(aq)+2e- → Zn(s) -0.76 V
Cu2+(aq)+2e- → Cu(s) +0.34 V
Cu2+よりCuの方が電位が高いので、
反応が右に進み、酸化還元電位は上
昇する。
10
11
【酸化還元電位・標準電極電位】
電位が低い
→ 電子の自由エネルギーが高い
電位が高い
→ 電子の自由エネルギーが低い
電子が集まると電位が下がる。
正の電荷が集まると電位が上がる。
電子は電位の低い方から高い方へ流れ
る。
12
【酸化還元電位・標準電極電位】
【酸化還元電位・標準電極電位】
【酸化還元電位・標準電極電位】
電子は電位の低い方から高い方へ流れ
る。
標準電極電位の低い順に並べると、
イオン化傾向と一致する。
=自由エネルギーの高い方から低い方
へ移動する。
標準電極電位が低い
酸化還元電位が高い
→還元反応が起こりやすい
→カソード(正極)になりやすい
=自由エネルギーが減少する。
∆G<0(自発過程)
酸化還元電位は標準電極電位として測
定される。
→ 酸化反応が起こりやすい
→ 還元体がイオンになりやすい
還元半反応 酸化体+電子 → 還元体
13
14
【参考:マグネシウム】
19.4 酸化還元反応の熱力学
マグネシウムは酸化還元電位が低い(-
2.37 V)=還元力が強い。
1 Vとは+1 Cの電荷を運ぶのに1 Jの
仕事が必要であるような2点間の電位
差である。
二酸化炭素中に点火した金属マグネシウ
ムを入れると、白い光を出しながら激し
く燃える。
酸化還元電位が低い
→酸化反応が起こりやすい
→アノード(負極)になりやすい
例題19.2、例題19.3
15
電池反応でn molの電子が電位差
Ecell(>0)の電極間を移動したときに
電池のする仕事は、w=-nFEcellであ
る。
反応の自由エネルギー変化∆Gは、そ
の反応から取り出しうる最大の仕事
量wmaxに等しい。
1 J=1 C×1 V
CO2+2Mg → C+2MgO
Mg → Mg2++2e17
∆G = wmax
=-nFEcell
(19.2)
18
2
2015/9/28
【呼吸】
【呼吸】
【復習】
(目標)生命現象におけるエネルギー
変化に対しても熱力学法則が適用でき
ることを概説できる。
呼吸をまとめると、以下のような反応
式で表される。
生物学的標準状態:pH=7の中性溶液
好気性の生物はグルコースを酸素に
よって完全に酸化し、そのとき放出さ
れるエネルギーを利用して生存してい
る。
この酸化分解過程を呼吸という。
∆G〇' =-2879 kJ mol-1
C6H12O6(s)+6O2(g)
→ 6CO2(g)+6H2O(l)
19
熱力学的標準状態:pH=0
(水素イオン濃度1 M)
生物学的標準状態の標準反応自由エ
ネルギー:∆G○'
20
21
【呼吸】
【呼吸】
【呼吸】
呼吸の酸化半反応:
C6H12O6(s)+6H2O(l)
→ 6CO2(g)+24H+(aq)+24e-
生体ではグルコースが直接酸素に
よって酸化されるわけではない。
生体内の酸化還元反応では、基質と
の電子の授受に直接関わる電子受容
体ないし供与体が必要不可欠である。
呼吸の還元半反応:
6O2(g)+24H+(aq)+24e- → 12H2O(l)
24個の電子がグルコースから酸素へ移
動している。
22
【呼吸】
C6H12O6(s)+10NAD++2FAD+4ADP
+4Pi+2H2O
→ 6CO2(g)+10NADH+2FADH2
+4ATP+6H+
NAD+(酸化型)、NADH(還元型)およ
びFAD(酸化型)、FADH2(還元型)は
酸化還元反応の補因子(補酵素)。
25
呼吸は、解糖系、TCA回路(クエン
酸回路)、電子伝達系から成る。
解糖系とクエン酸回路において、
NAD+やFADという補酵素によって酸
化されグルコースはCO2となる。
これが酸化還元酵素反応の特徴であ
る。
この電子受容体/供与体を補酵素
(あるいは補因子)という。
23
【呼吸】
電子を受け取った補酵素NADH
(FADH2)は強い還元力を持ち、ミ
トコンドリアにおける電子伝達系に
おいてO2は還元されH2Oになる。
NADH+H++(1/2)O2 → NAD++H2O
∆G〇' =-219 kJ mol-1
(FADH2+(1/2)O2 → FAD+H2O
∆G〇' =-142 kJ mol-1 )
26
24
電子伝達系における電子の移動
1. NADH → 補酵素Q
H++NADH+Q → NAD++QH2
2. FADH2 → Q
FADH2+Q → FAD+QH2
3. QH2 → シトクロムc
QH2+2Fe3+(cytc) → Q+2Fe2+(cytc)+2H+
4. シトクロムc →O2
2Fe2+(cytc)+2H++(1/2)O2
→ 2Fe3+(cytc)+H2O
27
3
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【呼吸】
1【呼吸】
.
E○'=+0.42 V,
∆G〇'=-81 kJ
mol-1
2. E○'=+0.015 V, ∆G〇'=-2.9 kJ mol-1
3. E○'=+0.15 V, ∆G〇'=-30 kJ mol-1
4. E○'=+0.815 V, ∆G〇'=-109 kJmol-1
この電子移動に伴う自由エネルギーを
使って(この酸化還元反応に共役し
て)、H+をミトコンドリアの内膜か
ら内膜と外膜の膜空腔に汲み上げる
(プロトンポンプ)。
膜空腔と内膜のプロトン濃度勾配が出
きる=エネルギーが蓄えられる。
28
【呼吸】
このエネルギーを使ってプロトンATP
アーゼという酵素がATPを作る。
解糖系とクエン酸回路において、4
molのATPが合成される。
電子伝達系におけるATPの合成を酸化
的リン酸化という。この過程で34
molのATPが合成される。
29
【呼吸】
1 molのグルコースから計38 molの
ATPが合成される。
電池の起電力E
E=E○-(0.0257 V/n)lnQ
1 molのグルコースによって供給され
る2879 kJのうち、30 kJがATP 1 mol
に抽出されるので、38×30=1140 kJ
(40%)が貯蔵されることになる。
反応が進行すると、Qが増大し、起電
力Eが低下する。
E=E○-(RT/nF)lnQ
(19.8)
Q=1のとき、E=E○(標準起電力)
化学平衡状態に到達すると、起電力E
はゼロになる。
0=E○-(0.0257 V/n)lnK
31
30
(19.7)
ネルンストの式を使って、酸化還元
反応の反応物と生成物の濃度が分か
れば、起電力を見積もる事が出来る。
(例題19.6)
逆に、電池の起電力Eが分かれば、
その反応の反応種の濃度を見積もる
ことができる。(例題19.7)
32
33
pHメーターはガラス薄膜の両側に水
素イオン濃度の異なる電解質溶液が
あるとき、その二液間に生じる電位
差が二液の水素イオン濃度差に関係
することを利用して、溶液のpHを測
定するものである。
濃淡電池
【膜電位】
プラスの電荷が集まれば電位が上昇し、
マイナスの電荷が集まれば電位が下が
る。
電位の低い方から高い方へ電子が移動
する。
膜を介したイオン濃度の差により生
じた電位を膜電位という。
イオン濃度の違いが電位差を生む。
濃度の濃いZn2+=電位が相対的に高い
ミトコンドリア内膜の膜電位を例に
考えてみよう。
濃度の薄いZn2+=電位が相対的に低い
34
Zn2+ (aq)+2e- → Zn(s)
35
36
4
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【膜電位】
【膜電位】
【膜電位】
生体膜は一つの側からもう一方の側へ
の物質の移動を選択的に制御している。
しかし、電子伝達系では酸化還元反
応に共役してプロトンの能動輸送が
起こる。
神経細胞に(電気的、化学的もしく
は機械的な)刺激が加わると、膜電
位に活動電位と呼ばれる瞬間的な変
化が発生する。
ある化学種が濃度の高い方から低い方
へ移動する現象は自発過程であり、受
動輸送という。
その逆は能動輸送といい、一般にATP
の加水分解と共役することによって起
こる。
H+、Na+、K+、Cl-などのイオンは、
ある特定のイオンだけを通すイオン
ポンプという膜タンパク質を使って、
それぞれ能動輸送される。
37
【膜電位】
Na+イオン濃度は細胞外が細胞内の10
倍もある。
これはNa+イオンポンプによって絶え
ず、Na+イオンが細胞内から外へ汲み
出されているからである。
これが神経細胞に沿って次々に伝播
される。
38
39
【膜電位】
【膜電位】
しかし、刺激を受けると、細胞膜の
一部が一時的にNa+イオンを透過しや
すくなり、普段は-70 mV程度の膜電
位が約35 mVまで上昇し、急速に元に
戻る。
心臓の筋肉細胞では、大きな活動電
位がそれぞれの心拍の間に発生する。
心電図はこの活動電位を観測してい
る。
これが活動電位である。
40
【参考:鉄】
鉄は酸素との反応性が高い。
スチールウール(鉄を線状にしたもの)
は空気中で燃焼する。
使い捨てカイロは粉末状の鉄が酸素と反
応し発熱する。
脱酸素剤には鉄粉を入れたものがある。
さびは反応速度が遅い。
スチールウール、鉄粉は反応速度が速い。
← 表面積が大きいから。
41
42
【参考:アルミニウム】
【参考:アルミニウム】
アルミニウムは鉄以上に酸素との反応性
が高い。
教科書p.565 不動態化
しかし鉄のようにさびないのはなぜか。
アルミニウムは酸素に触れるとすぐに酸
化アルミニウムAl2O3というさびを作る。
アルマイト加工
アルミ鍋ややかん、あるいはアルミサッ
シなどでは酸化皮膜(Al2O3)を作る処理
が施されている。
しかし、酸化アルミニウムの薄い皮膜は
透明なので、金属光沢が失われない。
5
2015/9/28
【参考:アルミニウム】
19.8 電気分解
酸化アルミニウムの結晶からなる鉱物を
コランダム(鋼玉)という。
電極の名称
cathode(カソード)
還元反応が起こる電極
anode(アノード)
酸化反応が起こる電極
コランダムは無色透明の結晶。
宝石のルビーやサファイアは酸化アルミ
ニウムの結晶に不純物として微量の金属
イオンが含まれたもの。
ルビーはCr3+、サファイアはFe2+とTi4+が
含まれている。
電池
cathode 正極
anode 負極
電気分解
陰極
陽極
47
6
2015/9/28
22.2 合成有機高分子
第22章 有機高分子化学
p.627
【天然高分子】
合成繊維、合成樹脂、合成ゴム
多糖類:グルコース等の単糖類を単
量体とする
有機化学反応
付加反応、縮合反応
タンパク質:アミノ酸を単量体とす
るポリペプチド
高分子合成反応(重合反応)
付加重合、縮合重合
ラジカル重合反応
核酸:ヌクレオチドを単量体とする
ポリヌクレオチド
1
2
天然ゴム:イソプレンを単量体とす
るポリイソプレン
3
【生体高分子】
天然ゴム以外の天然高分子を生体高分
子と呼ぶ。
【生体高分子】
【生体高分子】その他の多糖類
デンプン(アミロース、アミロペク
チン):1,4-α結合、アミラーゼ
糖類(炭水化物)
デンプン、セルロース、グリコーゲ
ンはグルコースを単量体とする多糖類
D-グルコース(ブドウ糖)
1位の-OHが環の下に向くのを α、上
に向くのを β という。
セルロース:1,4-β結合、セルラーゼ
グルコマンナン:グルコースとマン
ノースが縮合重合した多糖類。こん
にゃくに含まれる。
4
【生体高分子】
(目標)
・単糖類、二糖類、グリセロールと
脂肪酸の種類と性質を説明できる。
・脂質の基本的な構造と機能を説明
できる。
・高分子の立体構造を説明できる。
7
セルロースは植物の細胞壁の主成分、
綿や麻、紙やパルプ
ペクチン:ガラクツロン酸(ガラク
トースの誘導体)を単量体とする。
ゼリーやジャムに含まれる。
グリコーゲンは動物体内に蓄えられ
る多糖類。
キチン、ヒアルロン酸、コンドロイ
チン
グリコーゲン:1,4-α結合
5
【タンパク質の機能分類】
機能
例
生体構成
コラーゲン、ケラチン
運動
アクチン、ミオシン
貯蔵・輸送 グルテン、アルブミン
ホルモン
インスリン
免疫
グロブリン
酵素
ペプシン、アミラーゼ
蛍光
GFP、ルシフェリン
(GFP:緑色蛍光タンパク質)
8
6
【アミノ酸の性質】
個々のタンパク質の個性はアミノ酸
配列で決まる。
タンパク質はポリペプチドであり、
主鎖の構造はどれも同じである。
アミノ酸の側鎖の特徴は、タンパク
質の機能や性質を考える上で重要で
ある。
(1)疎水性・親水性 (2)イオン化 (3)
水素結合
9
1
2015/9/28
【アミノ酸の性質】
親水性アミノ酸
【アミノ酸の性質】
(1) 疎水性・親水性
水素結合を作らない疎水性の炭化水
素側鎖は、タンパク質分子中では互
いに水溶媒を避けて集合し、タンパ
ク分子の中心を形成しようとする。
逆に、疎水性側鎖が表面にくるタン
パクは水に溶けず、生体膜に埋め込
まれて膜タンパクに成ろうとする。
10
【アミノ酸の性質:イオン化】
酸性アミノ酸
グルタミン酸 (等電点3.22) とアスパ
ラギン酸 (2.77) の側鎖は中性付近で
陰イオンになる。
塩基性アミノ酸
リシン (9.74) 、アルギニン (10.76) 、
ヒスチジンは陽イオンになる。
中性でイオン化する側鎖も強い親水
性を示す。
13
【アミノ酸の性質】
トレオニン、セリン、アスパラギン、
グルタミン
グルタミン酸、アスパラギン酸、
リシン、アルギニン、ヒスチジン
疎水性アミノ酸
イソロイシン、バリン、ロイシン、
アラニン、
フェニルアラニン、システイン、
メチオニン
11
【再録:アミノ酸の性質】
親水性アミノ酸
等電点は正負の電荷が等しくなると
きのpH。
中性が等電点より高いpHなら、中性
はそのアミノ酸にとって塩基性なの
で、H+を放出して陰イオンになる。
陰イオンはCOO-、陽イオンはNH3+
12
【アミノ酸の性質】
トレオニン、セリン、アスパラギン、
グルタミン
グルタミン酸、アスパラギン酸、
リシン、アルギニン、ヒスチジン
疎水性アミノ酸
イソロイシン、バリン、ロイシン、
アラニン、
フェニルアラニン、システイン、
メチオニン
(2) イオン化
アミノ酸は両性イオン
(3) 水素結合
非共有電子対をもつO、N、Sは水素結
合を作り、また金属イオンに配位する。
O:セリン、トレオニン、チロシン
N:アスパラギン、グルタミン
S:システィン、メチオニン
ペプチド主鎖も水素結合に関与する。
14
15
【アミノ酸の性質:グリシン】
【アミノ酸の性質:グリシン】
【アミノ酸の性質:グリシン】
グリシンは、コラーゲンの構成成分
や神経伝達物質として知られており、
体内のあらゆるところに存在してい
る。プラセボとして使われている。
遊離グリシンに睡眠改善効果があるこ
とが最近分かった。
体内時計によって深部体温が下がると、
眠りが誘発される。深部体温を下げる
ためには、いったん体の表面の血流を
増やす必要がある。
プラセボ:生理作用のない物質で作られ
た薬。医薬品の真の効果を試験するため
に、比較対照として投与する。
16
脳の特定部位に働き、体の表面血流を
増加させて、深部体温を下げる働きが
ある。
深部体温とは、内臓など体の内部の温
度。日中に高まり、夜に低下するとい
う概日リズムを持っている。体内時計
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体内時計の中枢となる脳の視床下部の
視交叉上核(SCN)に存在するNMDA
受容体に作用する。
サプリメントとして市販されている。
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【参考:アミノ酸】
【参考:アミノ酸】
【参考:アミノ酸】
グリシン、アラニンなどは甘味、
バリン、ロイシンなどは苦味、
アスパラギン酸やグルタミン酸は酸味と
うま味がある。
トマトが熟すにつれ、グルタミン酸の量
が増え、うま味が増していく。
1908年、池田菊苗は昆布だしのおいしさ
の正体がグルタミン酸( L-グルタミン酸
ナトリウム)であることを発見、その味
をうま味と名付けた。
昆布などに含まれるグルタミン酸、鰹節
などに含まれるイノシン酸などがうま味
物質として有名。
アスパルテーム(人工甘味料):L-アス
パラギン酸とL-フェニルアラニン(のメ
チルエステル)がペプチド結合したもの。
うま味は、甘味・苦味・酸味・塩味とな
らぶ、基本の味の一つと現在では認識さ
れている。
発酵食品はアミノ酸の宝庫
発酵によって大豆、魚、乳などのタンパ
ク質がアミノ酸に分解され、うま味を与
えている。
みそ・しょうゆ・チーズ
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【分子構造と生理作用】
【分子構造と生理作用】
熟成肉は熟成によって赤身部分のアミノ
酸が増え、肉質が柔らかくなり、うま味
が増している。
グルタミン酸ナトリウムのうま味は
L-体だけに認められ、D-体は全くう
ま味を示さない。
それは味を感じる舌の味蕾の上の受
容器との空間的な関係が両異性体で
違うからである。
刺身も新鮮すぎるとかえって味が良くな
いと言われることがある。
魚はしめてから12から24時間経った頃に
アミノ酸が増え、うま味がピークになる。
両異性体の平面構造は全く同じであ
るのに、なぜそのような顕著な生理
作用の違いを示すのであろうか。
【参考:熟成】
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その受容器もL-アミノ酸から成るタ
ンパク質で出来ているので、
鍵と鍵穴の関係のようにL-グルタミ
ン酸ナトリウムは受け容れるが、
D-体は適合しないという立体的な相
互関係が存在するからである。
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【ペプチドの生理活性】
【ペプチドの生理活性】
【ペプチドの生理活性】
生理活性物質とはビタミン、ホルモ
ン、補酵素、抗生物質などのように
微量で生物の営む生命現象に関与し
影響を与える物質である。
タンパク質を作る個々のアミノ酸は
(L-グルタミン酸ナトリウムのよう
に呈味性を示すものはあっても、)
それほど強烈な生理活性を示さない。
ペプチドは
TRHなどのペプチドホルモンや、
エンケファリンなどの神経ペプチド、
キノコ毒などの毒素ペプチド、
血圧や血糖を調節するペプチド、
あるいは酵素の作用を阻害するペプ
チドなど
実に多種多様で多彩な活性を示す。
ところがアミノ酸が複数一定の順序
で連結してペプチドを作ると、強い
生理活性を示す場合が多く知られて
いる。
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【ペプチドの生理活性】
これらペプチドがいずれも通常のア
ミノ酸を素材にして、その並び方の
違いだけで、それぞれ特有な生体に
とって重要な活性を発現している。
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【参考:タンパク質結晶学】
【ペプチドの生理活性】
TRHという物質は脳の中の視床下部に
存在していて、甲状腺刺激ホルモンの
分泌を促す作用がある。その構造はグ
ルタミン酸とヒスチジン、プロリンか
ら成る。
これらアミノ酸個々は特別な生理活性
を示さないが、それらから成るTRHは
pgという微量で甲状腺刺激ホルモン放
出活性が出てくる。
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HodgkinらによるビタミンB12の構造決定
(1964年ノーベル化学賞)が行われた。
インシュリンのX線写真は1935年にとら
れたが、Hodgkinらによって解析に成功
したのは1969年。
生理活性の発現に対する分子の幾何異
性の重要性が示唆されている。
フェロモン等はいずれも二重結合を含
んでいる。
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【幾何異性と生理活性】
【幾何異性と生理活性】
1950年代にKendrewらによる初めてのタ
ンパク質結晶ミオグロビンの構造解析(
1962年ノーベル化学賞)、
【タンパク質の性質】
(目標)タンパク質の基本的な構造と
機能を説明できる。
タンパク質の性質を理解する上で、そ
の構造を知ることが必須である。
タンパク質の特異性は、化学的な組成
と構造に由来している。(p.633)
構造生物学:生体分子の機能、相互作
用様式を分子の立体構造の観点から解
明する学問分野。
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例えば、エチレンの水素原子二個をカ
ルボキシル基で置き換えた化合物には、
フマル酸(トランス型)およびマレイ
ン酸(シス型)の幾何異性体が知られ
ているが、
前者が生体内で重要な中間代謝物質と
しての役割を果たしているのに対して、
後者は酵素の働きを妨げる有害な作用
を示す。
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【幾何異性と生理活性】
【タンパク質の構造】
【タンパク質の構造】
もろもろの花の特有の香りは、それ
ぞれ固有の成分のアルケン類のしわ
ざである。
実際のタンパク質では、らせん構造を
とったポリペプチドの鎖が所々折れ曲
がって球状タンパク質の構造をとった
り、何本ものポリペプチド鎖が束に
なった繊維状タンパク質の構造をとっ
たりする。
球状タンパク質は、親水基を外側に向
けて球状になっているため、水に溶け
やすい。
球状タンパク質は、生命の維持・制御
の役割を果たしている。
全ての酵素や数多くのホルモンは球状
タンパク質である。
二重結合のない飽和炭化水素のアル
カンにはこのような芳香を示すもの
はない。
二重結合によって分子構造が固定さ
れて、嗅覚の受容器に適合する形を
与えやすいことが関係している。
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タンパク質は球状と繊維状の2種類に
分けられる。
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例として、インスリン、卵の中のアル
ブミン、ヘモグロビンがある。
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【タンパク質の構造】
タンパク質は球状と繊維状の2種類に
分けられる。
【タンパク質の構造】
タンパク質はαへリックスとβ構造の
両方をいろいろな割合で含んでいる。
繊維状タンパク質は、一般には水に
溶けない。
繊維状タンパク質は動物組織を作っ
ており、
例として、毛髪、爪などに存在する
ケラチン、腱や皮膚にあるコラーゲ
ンがあげられる。
球状タンパク質
ミオグロビン、ヘモグロビンは75%
以上のαへリックス構造含む。
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【抗ガン剤】
p.595
シスプラチンなどの白金製剤は、遺伝
子に橋を架けるように結合し、遺伝子
がほどけないようにしてガン細胞が分
裂できなくする。
この他に、遺伝子に損傷を与えるアル
キル化剤、遺伝子合成を妨げる代謝拮
抗薬など様々な種類がある。
繊維状タンパク質
ケラチン(羊毛・毛髪)、コラーゲ
ン、フィブロイン(絹)
【天然繊維】
綿、麻:セルロースから成る。
絹:タンパク質繊維。
フィブロイン(ほぼβ構造)
羊毛:タンパク質繊維。
ケラチン(αへリックスを含む。
これが羊毛の弾力性の原因と
されている。)
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【抗ガン剤】
【生物無機化学】
これらの抗ガン剤は正常な細胞の分裂
も邪魔するので一般的に毒性が高い。
生命の維持にとって、Mn, Fe, Co, Cu,
Zn, Moは必要不可欠である。また、健
康体を保つためには、F, Si, V, Cr, Se,
Br, Snも欠かすことができない。
ガン細胞に比べ、通常の細胞は分裂頻
度が低いので、その分影響が少ないが、
毛髪や粘膜など細胞分裂の盛んなとこ
ろはダメージを受けやすい。
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こうした事情は全ての生物にとって普
遍的であり、これらは合わせて必須元
素と呼ばれている。
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【生物無機化学】
【生物無機化学】
【生物無機化学】
Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Mo, V, Cr,などの遷
移金属は、金属イオンあるいは金属錯
体の状態で、様々な組織中において見
いだされる。
天然に存在する錯体の代表的なものは、
ヘモグロビンやクロロフィルである。
この酵素だけが、自然界でN≡N三重結
合の強い結合を切る力を持っている。
窒素固定微生物(根粒菌、光合成細菌
など)は窒素の還元酵素を含み、空気
中の窒素を還元してアンモニアに変化
させる反応を触媒する。
この酵素はMoとFeの錯体で、これら
の金属にはSが配位しており、その構
造は複雑である。
特に、天然に何万種類も存在するタン
パク質の場合、その約30%は金属を含
んでいる。
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【生物無機化学】
【生物無機化学】
【生物無機化学】
必須元素に限らず、遷移金属をはじめ
あらゆる金属元素を対象に、それらの
生体内における役割を具体的に明らか
にする学問分野を生物無機化学という。
12章で紹介した一酸化窒素NO。
神経伝達物質、血管拡張作用
ZnOは収れん作用を持ち、止血、鎮痛、
防腐などの効果があり、医薬品あるい
は化粧品などの原料となる。
最近では、これまで得られた知見をも
とに、医薬やデバイス開発等への応用
も盛んに研究されている。
教科書 p.352 酸化亜鉛ZnO
白色顔料(絵具の材料)として、近年
では透明導電材料として注目されてい
る物質である。
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【生物無機化学】
ミョウバンAlK(SO4)2・12H2Oは炎症を
鎮める目的で口内炎に用いるほか、肌
の引きしめや制汗効果を期待して化粧
品にも配合される。
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赤血球の主成分であるヘモグロビン分
子は141個のアミノ酸が連結したα鎖2
本と146個のアミノ酸が連結したβ鎖2
本から成り立っている。
鎌状赤血球のヘモグロビンを正常ヘモ
グロビンと比較すると、α鎖には全く
異常がなく、β鎖の中でただ一カ所に
異常がある(正常ではグルタミン酸で
あるところがバリンに置き換わってい
る)だけなのである。
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【タンパク質の構造】
教科書p.637
天然状態のタンパク質の高次構造は、
分子間力全体によって決まる、言い換
えれば、一次構造すなわちアミノ酸配
列によって決まる。(p.635)
鎌状赤血球症(遺伝病)
ビスマスの化合物は腸粘膜のタンパク
質と結合して被膜を作る。これにより
炎症を起こした粘膜への刺激を和らげ
るため、整腸剤として利用される。
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収れん作用とは、タンパク質を変性さ
せることにより組織や血管を縮める作
用である。収れん作用を持つ物質には
止血、鎮痛、防腐などの効果がある。
球形であるべき赤血球が鎌状になるた
めに、赤血球どうしが絡み合って血管
内で詰まるために悪性貧血を起こす。
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つまり、β鎖の一次構造における僅
かの違いがヘモグロビン分子ひいて
は赤血球全体の形(空間構造)に重
大な影響与えてしまう。
この例からも分かるように、タンパ
ク質がその正常な機能を発揮するた
めに(言い換えれば、その高次構造
を決定するために)は、その一次構
造が重要な役割を果たしている。
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タンパク質はある程度柔軟性がある
→ 高次構造が変化しやすい
→ 高次構造が分子間力によって決
まっているから。
一次構造・・・化学結合
高次構造・・・分子間力
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分子間力は、タンパク質の構造を維持
する程度には強いが、化学結合力ほど
には強くないので、高分子の構造は僅
かに変化しうる。
極端な例は変性。
化学結合は結合力が強いので、変性状
態でも、一次構造は変わらない。
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教科書p.638
22.4 核酸
アロステリック効果:ある基質が結合
したときに起こる分子の配置の調整に
よって、つぎの基質分子の結合しやす
さに影響を与えること。
(目標)
・塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチ
ドの種類と性質を説明できる。
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【RNAの構造】
DNAは二重らせん構造をとり、RNA
は一本鎖の構造をとる。
【RNAの構造】
RNAはリボースの2位炭素に酸化さ
れやすいヒドロキシ基がある。
tRNAは分子量2~3万と他のRNAより
ずっと小さい。
これが原因で化学反応を起こしやす
いので、DNAと比較すると、RNAは
不安定である。
1本のポリヌクレオチド鎖が折れ曲
がってループを作り、根本で相補塩
基対による部分二重らせん構造、ヘ
アピン構造を形成する。
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・核酸の構造と機能を説明できる。
例として、酸素分子とFe2+-ポルフィ
リン錯体(ヘム基)の結合をみてみよ
う。
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RNAはその役割を果たした後には分
解しやすい化学構造をとっていると
いえる。
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