ピアノ曲による表現の豊かさを求めて

第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告 ① 小学校編
ピアノ曲による表現の豊かさを求めて
東京都世田谷区立松沢小学校教諭 大湊 勝弘
小学校高学年 Bグループ
教材:《子どもの領分》から『ゴリウォーグのケークウォーク』
ドビュッシー作曲 ピアノ: ジャック・ルビエ(2分44秒)
今年の『夏のセミナー』は昨年に比べ
たい」と子どもたちが欲するためには、
て受講料の負担が増し、また往復の交通
楽曲を通してどのような指導のねらいや
費の補助も厳しくなる中で、全国各地か
指導法が考えられるか、の1点に集約さ
ら意欲溢れる精鋭の先生方が集まり、セ
れるといえよう。(詳しくは本誌4月号、
ミナーのテーマ「音楽を愛好する心情を
徳田崇教諭執筆の本欄を参照されたい。
)
育てる鑑賞の指導」を踏まえての熱心な
さて、小・中2人の助言者による模擬
討議および発表が、例年に劣らず展開さ
提案授業を挟み、いよいよ長いグループ
れた。
研究が始まった。
毎年感じるのは、参加されたいずれの
Bグループの主教材は、ドビュッシー
先生方も音楽教育に対する情熱をもち、
作曲《子どもの領分》から『ゴリウォー
音楽的な感受性も豊かで鋭敏であること
グのケークウォーク』である。メンバー
である。そのような豊かな感性をはたら
にとってはあまりなじみのない曲であっ
かせる一方で、しかしこのセミナーでは、
たが、その出だしの印象的な旋律は誰も
これまで自分が培ってきた音楽的な価値
が一度は耳にしている名曲である。
観からの脱却もある意味では必要なので
はないかと考える。実際、音そのものに
対する素直で純粋な感性を研ぎ澄ませる
1 教材性
楽曲は、ケークウォークという黒人
音楽の踊りのリズムを用いて、人形(ゴ
3日間となった。
リウォーグ)がユーモラスに踊る姿を表
本セミナーの主管である渡邊學而先生
による
「音楽鑑賞指導の基本的な考え方」
わしたものである。
まず、楽曲の教材性を洗い出すことか
のレクチャーの趣旨は、1時間の音楽の
ら始めた。CDを繰り返し聴き、それぞ
授業を大切にして、「もっと音楽を聴き
れが感じたこと思うことを出し合い、教
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告① ◆◆――
(1)72
材性を列挙した。
その主な内容は以下の通りである。
○特徴的なリズムによる旋律
○テンポ(速−遅−速)の変化
○ダイナミックス(強−弱−強)の変化
○ストーリー(物語)性に富む
○ピアノの音色の追求
○形式(構成A−B−A)の感受
時間的にも短く、かつ曲が強弱や速さ
に、旋律の変化を感じ取らせてはどうか
などの話し合いから、場が大いに盛り上
がったりもした(メンバーが、研修会場
∼
B
近くのデパートに行って人形を買ってこ
よう! と張り切る場面も…。
)
また、旋律の特徴をとらえさせるため
に言葉をあてはめてリズム唱をしたりす
る、など、様々な意見が交わされた。
3 教材選択の理由
ねらいに迫るために大切な役割を果た
を視覚化できるという利点がある。具体
す。本事例では、同じピアノ曲である
的には、『愛のワルツ』を人形で踊らせ、
『愛のワルツ』
(ブラームス作曲)を用い
次に『ゴリウォーグのケークウォーク』
て比較聴取することとした。この曲はゆ
の変化に富み、リズムや旋律が特徴的な
昨年同様に、音源(演奏)については
ったりとした中にエレガントな風合いを
ことから、教材性は比較的スムーズに挙
助言者があらかじめ設定しておいた。同
醸し出しているところに特徴があり、主
げることができた。
じ楽曲でも様々な演奏を聴いた中で、ど
教材とは対照的な曲想をもっている。
2 指導のねらい
次に、それらをもとに指導のねらい
を考えた。
の演奏がいちばんよいかをじっくり吟味
し、最上の演奏を用いることとした。
事前の委員会でもいくつか聴いたり他
取らせる、などである。
しかし、人形を多用することで楽曲そ
のものから離れていくように感じられる
模擬授業では、この2曲を対比して聴
かせることとした。
に資料を求めたりした演奏は13通りとな
(8小節)を踊らせて、その対比を感じ
という意見も出されたため、最終的に人
形を使うことは避けることとした。
またABそれぞれの旋律を同じ重点で
5 具体的な指導の方向性
指導するのではなく、Bの旋律について
出だしの印象的な旋律とリズム(譜例
ったが、本演奏(ルビエ)が最も音質が
グループ研究も2日目を迎え、いよい
は多少軽くふれるようにすることで、学
A)、強弱の幅の広さと緩急の違いなど、
クリアーで自然な表現であり、旋律の明
よ授業の組み立てに入る。初めにどのよ
習内容にメリハリを付けるようにした。
曲想がかなり変化することから、この楽
快さも際だっていた。
うな指導の柱を組み立てればよいか、各
曲の大きな特徴 ①旋律の特徴と、②曲
このことはセミナーのメンバーも同様
な意見で、
曲想の変化を感じ取る」ことにそのねら
○全体的に音質がよく、明瞭な演奏であ
いを定めることとした。
旋律と曲想の変化をとらえさせるため
に、人形を使って、おもちゃ箱から出て
きたり踊ったりしてみたらどうか、など
られ、中間部の演奏も明瞭である。
との意見で一致した。
の部分と対比させるようにするため、そ
・導入部分の入り方の工夫、例えばクイ
4 関連教材
関連教材は主教材の印象を際だたせる
の動きに合わせて動く様(さま)をもと
ため、また比較聴取を通して一層題材の
の部分がきたら挙手をさせるなどが出さ
れた。
・主な旋律に親しむためにAの旋律を聴
このBの部分をどのようにとらえさせ
いて口ずさみ、Bの旋律(譜例B)と
るかという点が、グループではもっとも
の違いを感じ取らせる。
苦労した点である。Aはおどけた感じで、
・曲の構成を感じ取らせるために、人形
の意見も出された。そして、人形が旋律
Bは暗い、はずんだ感じなどが出された
が踊る様子から理解させる、
が、特に、AとBの「つながり」
(矢印)
などであった。
をどのように感じ取らせたらよいかな
人形を取り上げる手法には、イメージ
ど、課題も残された。
A(おどけ
た感じ)
A
はずんだ、なめらか、ゆっくりなど、A
ズ形式で入る。
る。
○速さは落ち着いた中にも軽快さが感じ
ねらいを絞っていく過程で、特徴的な
自でしばし思案の時間を取った。
出された柱は、
想の変化 を踏まえ、「特徴的な旋律と
なお、Bの曲想のとらえ方としては、
蚋
B(ゆっく
りと)
蚋 A(同じ)
∼
※つなぎの部分をどのようにとらえるか。
71(2)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告① ◆◆――
(3)70
最後に全曲を味わう場面では、1回目
→Aの場面では指でリズム打ちをする、
Bの場面では何もしないで聴く、という
流れで、2回目は、何もしないでじっく
盧 導入
・特徴的な旋律を感じ取らせやすくする
ために、対比する曲を提示する。
盪 展開(A−B−A)
①旋律の特徴をとらえる。
・Aの特徴的な旋律のリズムを提示し
たりリズム打ちをしたりして、意識
づけを図る。
・Aの旋律を口ずさんで、旋律をとら
える。
②旋律の変化を感じ取る。
り曲を味わうようにする、ということで
まとめた。
様々に出された意見を集約すると、次
のような流れになる。
・Aと比べながらBの旋律の違いを感
じ取る。
・曲想の特徴を音源を通して確認する。
③曲想の変化を感じ取る。
・A−B−Aの形式を曲想の変化から
とらえる。また身体表現で表わす。
(Aはリズム打ち、Bは体を揺らす)
蘯 まとめ
・ピアノの音色に親しみながら、曲全
体を味わう。
・曲名および作曲家を知らせる。
講
師
・
助
言
者
の
先
生
方
と
共
に
。
B
班
後
列
左
か
ら
二
人
目
、
大
湊
教
諭
5年生の子どもたち”もみんな張り切っ
て授業に参加してくれた。
協議では助言者および講師の先生か
ら、楽しく取り組むことができた、曲想
の変化のみならず構成にねらいの視点が
6 模擬授業
だいたのではないかと考える。
おわりに
最後になるが、B班の先生方の活躍を
紹介してまとめとしたい。
あったのではないか、Bの部分の「どん
思いのこもったたくさんの意見を要領
Bの後に続く音楽を想像させる。「次
な感じ?」との発問は客観性に欠けるた
よくまとめ、全体の進行をしていただい
ころで、セミナー最大の難関(?)の模
はどんな音楽が続くのかな?」
と発問し、
め再考を、などが出され、特に「曲想の
た上田正子先生(糸魚川市立糸魚川小学
擬授業のリハーサルに移る。これまで何
再びAの旋律が奏でられていくことに気
変化」と「構成」の意味の違いに関し、
校)、発問の仕方や工夫など、授業を成
回も楽曲を聴き、練りに練った指導の流
づくようにする。
ねらいの方向性や絞り方、また指導法の
功に導くため必死に食らいついて取り組
構築について吟味する必要を感じた。
んでいただいた戸澤悦子先生(熊谷市立
さて、指導の内容と流れが固まったと
れが構築されたが、このリハーサルでそ
講師の小原光一先生からは、全体の講
熊谷西小学校)、西おりえ先生(人吉市
れが雲散霧消することもたびたびであ
ここでは、予想される反応をいろいろ
る。授業は、2人の先生(戸澤、西の両
と挙げ、対処の方法を考えるようにした。
評の後Bグループについて、関連教材を
立人吉西小学校)、ユニークな発想と、
氏)で、前半と後半に分けて行なうこと
また途中で流れを止めたり訂正したりし
どこまで提示するのか(盛り上がりの手
難しい機器操作をスムーズにこなしてい
とした。
て発問を確かめるようにしたが、始めの
前で曲を止めたことについて)、また、
ただいた高倉弘光先生(筑波大学附属小
・導入では、
うちはBの部分が曖昧になってしまった
歌ったりリズム打ちをしたりする際の合
学校)、パソコンに向かい時系列に沿っ
(冒頭2小節の旋律のリズム譜を提示
という反省を生かし、どのようにしたら
図の仕方など、細かい点についてご指導
て丁寧に記録をとっていただいた廣瀬和
して)そのリズム打ち(ゆっくりから速
Bの部分をはっきりと提示できるか、検
をいただいた。
子先生(千葉市立おゆみ野南小学校)、
く)を通して、またリズムのパターンを
討を重ねた。
(※詳細は指導案参照)
渡邊學而先生からは、まとめとして、
たくさんの内容をコンパクトにまとめ、
楽曲の背景について知ること、ねらいの
経過報告を担当していただいた千田恵理
焦点化(一つのねらいで一つの授業)、
子先生(横浜市立瀬谷第二小学校)の総
さて発表では、いくつかの課題も残っ
鑑賞の評価(全員が到達できる達成目標
力で、本セミナーのグループ研修が無事
たが、前日遅くまで協力して取り組んだ
を立てる)、音楽を何回も聴くこと、そ
に終了したことを感謝するとともに、皆
成果が現れ、2人の授業者の連係プレー
して音楽が楽しくなる授業を展開してい
さんの各地区における益々のご活躍を期
違いや変化を感じ取らせる。
が実って比較的スムーズに流れていった
ただきたい、とのお話があり、今後の授
待するものである。
・まとめでは、
のではないかと考える。“音鑑小学校の
業に役立つ鑑賞指導の道筋を示していた
歌ったりピアノの旋律に合わせて口ずさ
7 グループ発表と講評
んだりして、十分にAの旋律に親しむよ
うにする。
・中間部では、
Bの旋律に変わったら挙手し、Aとの
69
(4)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
(第29回「夏のセミナー」助言者)
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告① ◆◆――
(5)68
第29回音鑑「夏のセミナー」
第5学年指導展開例 B班
②曲想の変化を感じ取らせる。
○教材 『ゴリウォークのケークウォーク』ドビュッシー作曲
○指導のねらい 特徴的な旋律と曲想の変化を感じ取らせる。
○いま聴いたふしのまとまりをAとします。この後
は、曲の感じが変わっていきますが、どんな感じ
に変わっていくのか、聴いてみましょう。
指導内容と発問
予想される子どもの反応
・次の部分になったら先生がここに○を書きますか
① Aの主な旋律に親しませる。
らよく聴きましょう。
○今日は、はじめにゆったりとした気持ちで曲を聴
※A―Bをおさえる。
(板書)
・曲の感じの変化に気をつけなが
ら聴く。
〈CD―ABA一部〉
速 遅
きますが、どんな感じの曲か想像しながら聴いて
みましょう。
・体をゆらしながら聴く。
・Bはどんな感じに変わりましたか。
・暗い感じになったよ。
・どんな感じがしましたか。
・ゆったりした感じでした。
・いま発表できなかった人も同じでしたか。
・不思議、あやしい。
・どんな楽器でしたか。
・ピアノです。
・それでは、Bのところだけをもう一度聴いてみま
・ゆったりになったよ。
〈CDブラームス作曲 愛のワルツ〉
・みんなのよく知ってるピアノでしたね。
す。「不思議だな」「あやしい」「暗い」と思った
・音がのびていたよ。
○もう1曲ピアノ曲を聴きます。はじめに聴いた曲
ところで手を挙げて下さい。何回手を挙げてもか
・静かだったよ。
と比べながら聴いてみましょう。
まいません。では聴いてみましょう。〈CD―B
□〉
〈CD―A
□〉
・はじめの曲と比べてどんな感じの曲でしたか。
・楽しい感じ。弾んだ感じ。
・はげしい
③曲想を味わわせる。
・速くて走っている。
・BのあとはAのふしがもどってくるのかな。それ
・元気な感じ
・強い音
○もう一度曲の感じについて実際の音を聴きながら
〈CD―A
□一部〉
確かめてみましょう。
ともBのふしが続いていくのかな。Bの途中から
聴いてみましょう。
〈CD―B
□―A
□〉
・分かりましたか。
・簡単。Aです。
・この曲は、弾んだ感じのAから、ゆっくりであや
・Aで終わっていました。
しい感じのB、そして、Aに曲がかわっていって
○このような曲の感じがするのは、この曲にひみつ
います。
があるからです。
※リズムカードを提示する。
・楽しそうにリズム打ちをする。
・このリズムを打ってみましょう。
・手拍子やボディパーカッション
(遅→速)
・ピアノのメロディーに合わせて打ってみましょ
をする。
う。
・このリズムを使ったメロディーを歌ってみます。
・次は、曲の始めのAから、最後のAまで通して聴
いてみたいと思います。Aの部分はさっきやった
リズムで音が鳴らない手拍子や膝打ちをしてみま
しょう。Bでは曲に合わせて、体を揺らしてみま
・Aの部分だけ音を立てないで手
しょう。またAにもどったら膝打ちしてみましょ
拍子やボディパーカッションを
う。
・では、ピアノにあわせて歌ってみましょう。タラ
リズムを打ちながら、聴いてもいいですよ。
〈CD―A
□〉
67(6)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
する。
・Bは静かに体を揺らして聴く。
・メロディーを口ずさむ。
・最後はピアノの音に耳を傾けてじっくり聴いてみ
ッタラッタや他のリズム唱など自由です。
・3回目は、CDにあわせて歌ってみましょう。
〈CD全曲〉
・手拍子やボディパーカッション
などをしながら楽しく聴く。
ましょう。
〈CD全曲〉
・この曲は、ドビュッシー作曲の『ゴリウォーグの
ケークウォーク』でした。
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告① ◆◆――
(7)66
収録のDVDを準備した。
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告 ② 中学校編
いつもの夏ゼミのように、
まずは聴く。
まずCD、ついでDVDと聴いてみたが、
「ソナタ形式」
という言葉は
使わなくても 東京都足立区立第十中学校教諭 松田真紀子
DVDではどうしても映像に注意を奪わ
れてしまうので、再度スコアを見ながら
CDを聴いた。
3.教材性を考える
研修で学びたい内容などについて皆さん
3回の聴取の後、先生方に意見をいた
に話していただいた。来年度、再来年度
だいたところ、次のような内容が出され
中学校 Cグループ
に全日音研の大会で授業を予定されてい
た。
教材:交響曲第40番ト短調から第1楽章 モーツァルト作曲
る方や、文科省の発表を手伝っておられ
ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー
教材性
る方、長期研修中や、指導室に所属され
・規則的なリズムやテンポ
ている方というように、皆さん豊富な経
・旋律のくり返し
験を積まれている方たちだ。鑑賞の授業
・短調と長調の推移 ・細やかな転調
・動機の使い方
教材の選択について
導普及部会」でも教材として研究したこ
での評価や第2観点の「感受」にかかわ
・冒頭のヴィオラの演奏
中学校グループではここ数年、『ハン
とがあった。何回聴いても美しい。でも、
る評価について研修したいという意見も
・形式や曲の構成
ガリー狂詩曲』(リスト、昨年度)をは
それは指導のねらいとはなり得ない。
たくさんあった。評価については本ゼミ
じめ、
『春の祭典』
(ストラヴィンスキー)
、
「日本の太鼓」、舞台音楽としての『白鳥
「美しい」とは主観の世界のことである
からだ。本ゼミの基本的な考え方である、
の中心的内容とは少し離れているので、
研修の途中で触れていこうと思った。
教材性は、指導のねらいに関わる。該
当学年や題材によっても扱い方は違って
の湖』(チャイコフスキー)、アンサンブ
「生徒が誰でも感じ取れる客観的なねら
ル曲としての『カノン』
(パッヘルベル)
、
い」を設定しなければならない。なかな
2.教材曲との出会い
ねらいを決め、ふさわしい学年を決める
かやりがいのある教材だと感じていた。
昨年度からこのセミナーでは、教材曲
ことにした。また、教材のねらいから考
ア街道の松』などを教材として扱ってき
7月29日、これから始まる3日間のゼ
と音源を予め担当助言者が会合を開いて
えることは「主題による題材構成」に反
た。が、そろそろ原点に立ち返って、古
ミで、どのような学習展開が作れるだろ
決めて本番に臨んでいる。教材や指導案
するものではない。例えば曲の構成をね
典派の曲もよいだろうと思った。描写が
うか、参加された先生方に満足感をもっ
の研究の時間が十分に取れるのでありが
らいにすると、同じねらいの歌唱曲など
あったり、曲想がしばしば変化する曲で
てもらえるだろうか‥‥。いつものよう
たい。
と組み合わせて大きな題材を設定すれば
はなく、いわゆる絶対音楽に挑戦するこ
な期待と不安な気持ちをもって、研修会
Cグループで曲と音源を提示したの
とは、多くのクラシック音楽の基礎をな
場であるパイオニア研修センター(二子
は、グループ研究が始まってから約20分
す諸要素を学ぶにはよい機会である。
玉川)の40番の靴箱からスリッパを取っ
経過した16時30分であった。受講生の先
4.教材曲をさらに知ろう
た。再びここで靴に履き替えるのは2日
生方からは少しため息も聞こえたよう
おおよその流れが見えてきたところ
後なのだ。
だ。音源は、夏ゼミ主管の渡邊学而先生
『カルミナブラーナ』(オルフ)、『アッピ
以前の共通教材にはベートーヴェンの
第5番の交響曲が使われていたから、今
回は今まであまり取り上げられなかった
モーツァルトに焦点を当てた(同じ視点
ではないが、今回の夏ゼミでは2グルー
Ⅰ.研究の流れ
1.Cグループの結成?
くるが、今回はとりあえず、この教材の
のお薦めもあったリッカルド・ムーティ
指揮、ウィーン・フィルハーモニーのC
D。演奏時間は約8分であるが、丁寧な
基調提案の後、中研修室に集合。メン
曲作りがなされている。これはスタジオ
モーツァルトの交響曲で最も有名な第40
バーの自己紹介では、これまでの鑑賞授
録音であるが、もし映像が必要な指導の
番は、わたしの参加している音鑑の「指
業や本ゼミへの参加経験の有無、今回の
流れになるときは、同じ演奏者のライブ
プがモーツァルトを扱うことになった)
。
55(1)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
よいからだ。
で、グループの役割を決めた。
班長:高嶋みどり先生(敦賀市立東浦中)
記録:森角由希子先生(さいたま市立本太中)
板書:熊谷典子先生(長野県松本教育事務所)
渡邊基子先生(茂原市立南中)
機器:坂本佳子先生(水俣市立水俣第二中)
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
(2)54
授業者には、夏ゼミ参加3回目の佐藤真
根拠や作曲者についての興味も尽きない
実子先生(広島市立安佐中)が立候補し
が、今回は「構成」に視点を当てること
てくださった。坂本先生は夜にならない
にした。
と到着されない予定なので、それまでの
機器操作は渡邊先生の担当。
5.ねらいを最終的に絞る
曲の仕組みをねらいにするに当たっ
て、それぞれの部分を計時した。
「しばしば主題そのものの構成部分であ
る点で主題と区別される」「動機は古典
・ 曲の始め∼第2主題が出るまで:1分
・ 提示部全体:2分
派のソナタ形式において著しい役割を占
め、交響曲などの楽章もこれがいわば細
胞となって紡ぎ出されている」(原文の
・ 展開部全体:1分15秒
熊谷先生の提案により、教材曲の内容
夕食を兼ねた楽しい懇親会を経て現実
や背景を学習することになったので、音
に戻った20時40分、グループ研究を再開
楽之友社版のスコアの解説や『名曲解説
した。曲の構成について学習するなら中
(……ウ∼ン、すごく計算し尽くされ
全集』の記述を紹介した。
学2年生を対象にするとよいが、それま
ている。私が前回扱った『アイネ・クラ
イネ・ナハトムジーク』も同様だった。)
・ 再現部の開始∼第2主題まで:1分15秒
まま:諸井三郎・渡鏡子解説)と書かれ
ていたのを、森角先生が見つけてきた。
ありがたいことに、この交響曲が例とし
て挙がっている。
「ソナタ形式において、ハイドン、モ
での学習では二部形式・三部形式(AB
ーツァルト、ベートーヴェンはいずれも
A)、フーガや旋律の「追いかけ」、リト
その特長において各種の形式の完成に資
ルネロ形式、楽想の反復などが取り上げ
以上の論議にふまえて、各自「指導の
した。たとえばハイドンは弦楽四重奏曲
られているはずである。ただし、この曲
流れ」を考えてくることを宿題にして、
においてその形式を完成し、モーツァル
でソナタ形式を直接学習するのは難しい
1日目のグループ研究は終了した。「構
トは交響曲と協奏曲を、ベートーヴェン
であろうという意見が出た。今回は、事
成のどのような内容を中心に指導する
はピアノ奏鳴曲(初期の作品)の形式を
前にソナタ形式は別の曲で学習している
か」を各自決めて、指導の流れを作るの
完成したとしばしばいわれ∼」(友社版
という設定でも、関連教材を用いても可
である。他の人に相談せずに考えること
2.どのような導入の方法をする?
スコアから、田辺秀雄解説、原文のまま)。
である、また曲の一部を使用することも
によって、各人のよい勉強になるだろう。
いつものように、教材曲をすぐに使う
また、この交響曲が注目を集めている理
可である、ということを確認した。
坂本先生も到着して、グループの先生方
か他の関連教材を持ってくるかについて
がこれまでの研究を詳しく説明してあげ
話し合った。これは楽想の「反復・変化」
ていた。
をとらえさせるために聴取する部分にも
由を『名曲解説全集』では「彼の交響曲
ソナタ形式を事前に学習する設定で、
の中でたった2曲しかない短調の作品」
モーツァルトの『ピアノ・ソナタ ハ長
であり「陰鬱で悲劇的な諸契機(W.リ
調KV.545』から第1楽章を聴いてみた。
ューティ)を描くために彼が好んだト短
確かに分かりやすい。この段階で、ソナ
調」であることと、「最も苦悩に満ちた
タ形式の理解のためには『40番』以外の
音程(A.ホイス)とされる短2度を全
曲の方がふさわしいのでは、という考え
曲にわたって使用し」ていること(礒山
雅解説)などが挙げられていた。
最初に私から、作曲は1788年、フラン
ス革命の前年、作曲者がそろそろウィー
動機
部分動機
(譜例入ります)
就寝12時(2日目の0時)30分。
この説に則って、動機は2小節目の3
拍までとした。
関わることなので、授業の展開の場面で
使用する部分の選択と同時進行してい
Ⅱ.指導案作成にむけて
く。
昨夜の宿題が長引いて、グループの話
導入では教材曲を使おうと考えている
にとらわれがちである。しかし今回は、
し合いは9時45分から始まった。ソナタ
先生が4名であった。多数決というわけ
この教材曲でソナタ形式のどのような内
形式そのものを扱うより、動機の反復や
ではないが、教材曲の冒頭を使うことに
容が学習できるか、を追究する方向で、
変化を感じ取ったりする学習の流れを作
なった。
ということを確認した。
った先生方が多かったので、動機を中心
に置くことにした。ここで自動的に、音
「ではどのような方法で動機をつかま
ンで大きな仕事が得られなくなった時
またソナタ形式の学習が、生徒にとっ
期、また第39番、41番の交響曲と続けて
てどのような意味をもつのか、という疑
短い期間で作曲されたことを紹介した。
問も出た。現在演奏される多くの交響曲
その他、モーツァルト自身が楽器編成を
や協奏曲などの基本の組み立てがソナタ
1.動機とは?
変えた第2版を作り、今日ではそれが多
形式によっているため、知識として必要
まず、この点の共通認識が必要である。
く演奏されていることなど(第2主題の
である、形式を理解する過程が楽しい、
平凡社の『音楽大事典』では「楽曲を構
を付けてリズム唱をして‥‥タラ
オーボエをクラリネットに変更)
。
理解できて納得できる学習の流れを作る
成する最小の有機的な単位」と規定され
ラン、タララン、タララーアン、
必要がある、とは、佐藤先生の意見だっ
ている。「さまざまな変化を伴って反復
それから曲を聴いて拡大スコアで
た。
され、楽曲を展開させる働きを持つ」
この旋律を探そう。
以上のような知識を得て、ねらいを絞
っていった。この曲の癒し系と言われる
53(3)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
源はCDを使用することになった。
せる?」と、次に論議は進むのである。
(本当に1ステップずつ丁寧に話し合え
ることはすばらしい。)
第1案:リズム打ちをして、スラー
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
(4)52
第2案:9小節目までを何回も聴い
て主題を覚える。そうしたら、リ
ズム唱はいらないかな。
第3案:何回も出てくる旋律に注目
2回目:変化している様子
旋律がどのように変化していくか?」と
ていた方がよいと考える先生方が多かっ
3回目:以上の確認
ストレートに表現してみた。また、この
た。何回かその部分だけのシミュレーシ
④反復・変化の様子に注目しながら
学習を2年生になった時のソナタ形式の
ョンをくり返してみると、最後の聴取を
第1楽章全体を通して聴かせる。
学習へつなげるため、今回は1年生で取
する前に曲や作曲者名を話すと、旋律の
り上げることにした。
聴き取りが中断されてしまうような感じ
して第1主題部を聴かせる。
意見を出しながらすぐ実行。できるだ
け音から「動機」をとらえられるように
したい。どれもピタリと来るものがない
ため、先の展開場面の選定へと進んだ。
これはすぐ決まった。
反復・変化の宝庫でもあるソナタ形式
この流れに沿って、具体的な指導内容
2回目のシミュレーションの前に、作
と発問、予想される生徒の反応などを考
業に入った。指導案の原稿手直しとワー
え、指導案作りに励んだ。
クシート作りを佐藤先生と森角先生が、
最終チェックをして、やはりひどい
経過報告を高嶋先生が、
楽譜や学習目標、
“午前様”になってしまった。受講生の
Ⅲ.シミュレーションと大きな転換 曲名・作曲者名等のクラッシュカードを
16時50分から1回目のシミュレーショ
渡邊先生と熊谷先生が、授業の流れに沿
ンを始めた。授業時間は約25分、なかな
った音源作りを坂本先生が、それぞれ分
かよい。
がした。涙をのんで(?)授業の最後に
曲名と作曲者名を伝えることにした。
先生方、すみません。
Ⅳ.発表と講評
担してティームワークの力を発揮した。
本番では2番目の発表である。今年度
部においては、種々の主題から引き出さ
指導の流れを一つずつ話し合っていく
まだ未完成な部分はあったが、夕食後
は中学校が1グループ、全部で3グルー
れた動機の取り扱いに関心の多くが向け
と、最初の‘動機’で躓いた。みんなで
20時近くなってから2回目のシミュレー
プなので、発表や協議時間に余裕がある
「タララン、タララン、タララーアン」
ションが始まった。今回の手直しは発問
が、いつものことながら前のグループの
と口ずさむと、何か物足りない。次の
を中心に行なった。指導案が少しずつ書
発表中は緊張する。
「タララン、タララン、タラランラン」
き直されていく。最初に27小節目まで聴
われわれの模擬授業が始まった。佐藤
と、決定
まで歌いたくなるのだ。やはり一つの旋
かせるので、取り上げる旋律を「よく出
先生が穏やかな調子で発問を続ける。坂
記念すべき、第2日目の14時10分。
律として途中で切ることは、気持ちに合
てくる旋律」と名付けて進めていた。し
本先生が丁寧に音を流す。他のグループ
の“展開部”。「とくにソナタ形式の展開
られた」(前掲『音楽大事典』より)
指導のねらい
動機の反復や変化を感じ取らせる
わない。そこで、動機ではなく4小節分
かし、「よく出てくる旋律」では、この
の先生方が生徒になっているため旋律の
3.指導の流れを煮詰める
の旋律の反復・変化を扱うことに変更し
授業の中心になる旋律のとらえ方があい
覚えもよく、反応もよい。いろいろ出て
これまでの話し合いをふまえると、も
たが、さて「何と名付けよう?」という
まいになってしまうと考え、最初に聴か
くる意見を熊谷先生と渡邊先生がまとめ
う、ほとんどの流れはできあがっている
ことになった。的確な名称が思い浮かば
せる部分を10小節目までとした。27小節
て板書していく。授業の様子を記録する
(助言者の打ち合わせの集まりでも、
「今
ない。黒板にその部分の旋律を貼ると、
目までは、旋律が理解できたかどうかの
森角先生と見守る班長の高嶋先生。夏ゼ
年の中学校部会は早く寝ます」と宣言し
生徒にも分からせることができるのでは
確認に使用することになる。いろいろな
ミの最後のまとめにふさわしい緊張感の
た)。
ないか、と考え、クラッシュカードを作
発問が、このように変えることによって、
ある集中した時間となった。
ることにした(午前中の助言者打ち合わ
作りやすくなった感じがする。
指導の流れ
①動機をとらえさせる。
せの席で、Cグループの学習のねらいを
1カ所ハッとしたところがあった。授
作業は続いた。ここで結構難航し、先
業の展開に入ったところで、「さっき出
報告した時、渡邊学而先生が「動機ね…」
が危うくなってしまった。ある程度の目
てきた旋律は出てくるでしょうか?」と
b:1∼27小節目(32")
と意味あり気におっしゃったのは、この
処を立てた23時15分から3回目のシミュ
発問したとき、生徒の側に「全く同じ?
c:1∼9小節目(10")
ことだったのだ)。特別参加の講師、福
レーションとなった。最後に論議になっ
似ているもの?」のような疑問の表情が
井昭史先生にも、主題や動機の定義など
た内容は、曲名の知らせ方である。この
見えたのである。この部分はシミュレー
についてお話しいただいた。
学習の流れに直接曲名は関係ないが、こ
ションの段階でも、いろいろ論議を重ね
聴く部分 a:1∼43小節目(53")
bが適当な長さで分かりやすい。
②口ずさんで歌い、27小節目までで
次に話題になったことは、展開部で変
のように有名な曲なので知らせる予定だ
た。何回もシミュレーションをするうち
化を聴き取らせるための発問である。こ
った。最後にまとめの感想を書かせると
に、私たちも慣れてしまって気づかなく
る。
こは授業の中でいちばん重要な部分だ。
き、モーツァルトについても生徒が触れ
なっていたのである。確かにこの曲の展
1回目:反復していること
いくつかみんなで出し合いながら「この
てくれることを願って、作曲者が分かっ
開部には、最初の旋律と全く同じものは
動機を確認する。
③展開部で、動機の変化を聴き取らせ
51
(5)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
(6)50
2回しか聞こえない。他はすべて変化し
であったか、と福井先生・渡邊先生から
学習活動では、旋律が変化したかどうか
傾向が強いことは十分承知していた。何
たものである。この発問の仕方は万全で
指摘を受けた。学習するという面が強く、
ということも生徒から引き出したい答え
度も論議を重ねたが、古典派のいわゆる
はなかった。しかし、佐藤先生は特に動
モーツァルトの曲をまた聴きたいという
であったので、言い方によっては誘導尋
絶対音楽を教材にすると、このような展
揺したようすもなく「そう、似たような
興味につながるだろうか‥‥と言われる
問のようになってしまう。発問に大変悩
開になりがちである。むしろある意味で
ものも聴いてください」と対応された。
のは多少辛いところである。ワークシー
んだ場面である。
は、知的好奇心を充足される楽しさはあ
トについて「中学校の先生はよく使いま
ふだん何気なく使っている言い回し
ると思う。しかし、さらに多くの生徒が
話し合いの過程と問題になった点をうま
すね」と評され、これも辛い。また中心
が、シミュレーションをして生徒の立場
授業に楽しさを感じ、将来的にもその曲
くまとめて報告していただいた。
次は高嶋先生からの経過報告である。
に扱う旋律については「動機」などの言
に立ってみると、適切でなかったと気づ
や音楽そのものに興味や関心をもち続け
研究協議を経てそれぞれの講師の先生
葉にとらわれず、ねらいに迫れる部分を
く。こちらの意図を正確に伝え、的確な
られるような授業の展開を追求しなけれ
方から講評があった。粟飯原喜男先生は
取り上げること、今回の場合は「主な旋
学習活動ができるようにと考えると、過
ばならないだろう。
「旋律が‘出てくる’という言い方では
律」とするのが妥当であると、渡邊先生
剰な説明をしてしまう。適切な発問を考
小原光一先生が総評で言われたよう
からご指導いただいた。
えることは指導案の中で最も重要な事柄
に、「聴きたいという意欲がもてる導入」
であると、夏ゼミを経験するたびに感じ
であるかどうか。すべての鑑賞が終わっ
ている。
たとき「また、この曲や同じ作曲者の曲
なく、‘聞こえてくる’と言う方が適切
である」と注意してくださった。確かに
指導案にまで‘出てくる’という表現を
Ⅴ.今後の課題
使っている。研修中もずっとグループに
いつものことながら、発問の吟味が必
第二は、小学校の先生方からもよく指
同席した長谷川要子先生からは、授業時
要である。生徒に展開部の中で提示した
摘を受けることだが、ワークシートの使
数が少ない中、学習活動や内容が吟味さ
旋律の現れ方を聴き取らせるとき、「同
用についてである。書きながら聴くと十
れなければならないとの感想であった。
じ旋律」ではなく「同じような旋律」と
分な聴取はできない。文章で表現すると
授業目標は達成できたが、魅力ある授業
した方が混乱は少なかったと思う。この
いう点で、国語力に左右される面がある。
中
学
校
C
班
の
先
生
方
、
ご
く
ろ
う
さ
ま
で
し
た
。
49
(7)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
が聴きたい」と生徒が思うような指導の
流れはとても大切なことである。
Ⅵ.おわりに(校種別反省会)
今回は1グループだけの校種別反省会
そもそも、鑑賞の授業はいつも書かなけ
となったが、受講生の先生方からは次の
ればいけないとなると、生徒に負担がか
ような意見が出た。
かる。多くの反対意見は以上のような内
一つの曲をこれだけ聴き込める貴重な
容であるが、現在の評定の出し方を考え
3日間であった。生徒も同じであるが、
ると、正直な話、中学校ではワークシー
曲を何度も聴いて好きになることは多い
トは欠かせない評価材料である。余り長
ので、なるべく多く聴く回数があるとよ
くない曲では、1回目の聴取のときは書
いことがわかった。また、発問の大切さ
いても一言程度にし、終了後に少し時間
やねらいの焦点化、発問への答えを音で
をとり、2回目はメモを取りながら聴か
確認することの必要性などが再確認でき
せるようにしたい。
た。今までの共通教材以外の教材を学習
メモ内容はできるだけポイントを絞っ
する機会がもてたし、小学校の様子もわ
て書き易くし、あまり長い記述を求めな
かり、小中連携の研究の役に立った。鑑
ければ、国語力によって差はつかない。
賞の授業は大切だと思いながら、うまく
使い方を工夫すれば、生徒にとっても自
取り組めなかったが、いろいろな曲の取
分の意見のまとめや学習の記録として意
っかかりのポイントが分かったように思
味のあるワークシートとなる。
う。
授業が終わったとき、生徒が楽しかっ
たと感じる授業の流れを作ることが3番
ほぼ1泊3日の研修会、お疲れさまで
した。
(第29回「夏のセミナー」助言者)
目の課題である。今回の内容に分析的な
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
(8)48
◎第29回音鑑「夏のセミナー」
中学校第1学年指導展開例 C班
・どのようなところが違っているか、もう一度聴い
○教材 『交響曲第40番ト短調 KV.550』から第1楽章(モーツァルト作曲)
○指導のねらい 主な旋律の反復や変化を聴き取らせる。
てみましょう。
・気づいた違いを、後でワークシートに記入しても
○展開例 らいます。
〈展開部〉
・違っていた点をワークシートに記入しましょう。
指導内容と発問
予想される子どもの反応
(ワークシート配布、書く時間をとる。
)
・では、発表してください。
①主な旋律をつかませる
に注意して聴きましょう。とても短いので耳をす
・音の強弱の違い
ましてよく聴きましょう。
〈1∼10小節目まで〉
・高さの違い(階段のように低くなっていくなど)
・短くて戸惑っている。
・短かったので、もう一度聴きましょう。
・演奏楽器の違い(楽器による音色の違い)
・雰囲気や感じの違い(明るさ、暗さ)
〈1∼10小節目まで〉
・はじめに聴いたような旋律が切れ目なく何度も現れた
・わかりましたか? こういう旋律でしたね。
(黒板に旋律を貼り、教師が歌う)
・発表する。
(項目別に出てきた意見を板書する)
○今日は管弦楽の音楽を聴きます。曲の最初の旋律
・最初の旋律が分かりましたか。
・思い出して書いている。
・納得している。
○いろいろ意見が出てきました。よく聴けました。
最初に聴いた旋律がこんなに変化していたんです
ね。その変化の様子をもう一度聴いて確認しまし
ょう。
・一緒に歌って、このメロディーを覚えましょう。
・タララン、タララン∼
(何回か繰り返す)
・旋律の聴こえる部分で肯くなど。
・最初の旋律が後の方にも聞こえてきましたね。
・聞こえるところで肯いたり、首
を傾げたりする。
〈展開部〉
・たくさんありました。
・そうですね。たくさん聞こえましたね。たくさん
あったと思う人は手を挙げてください。
○何回も聞こえた旋律は、みなこれ(黒板のカード
を指さして)と同じでしたか。
47(9)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
たら、新しい発見もあわせて感想を書いてくださ
〈第1楽章全体〉
・周りの様子を見ながら挙手。
・似ているけど少し違うのもあり
ました。
・覚えた旋律が聞こえると肯いた
りする。
・感想を書きましょう。
○では、この曲の先の部分を聴いてみましょう。さ
・どのくらい聞こえてきましたか。
ということも含めて、聴きましょう。聴き終わっ
い。
②主な旋律が変化する様子をとらえさせる
か。
○今までは部分的に聴きましたが、最後に全体を通
部分でも、この旋律がどのように聞こえてくるか
板の楽譜をさす)が後の方でも聞こえてくるのを
っき覚えたような旋律は聞こえてくるでしょう
③主な旋律の反復と変化について理解させる
して聴いてみましょう。今まで聴いていなかった
○それでは、もう少し先まで聴いて、この旋律(黒
確認してみましょう。 〈1∼27小節目まで〉
〈展開部〉
・感想を書く。
○全体を通して、最初に覚えた旋律が繰り返された
り、いろいろ変化したりしていることが分かりま
したね。このように作曲家は短い旋律をもとに、
さまざまな工夫をして曲を作ります。
○今日聴いた曲は、モーツァルト作曲、交響曲第40
番の第1楽章でした。
・曲名を書いておきましょう。
ワークシート→
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
(10)46
●音鑑の出版図書のご案内
ワークシート
◎音楽鑑賞教育の実践に明確な指針を与える名著の復刻再販
♪鑑賞プリント
1年 組( )番 氏名(
)
子どもの可能性を引き出す
○はじめに覚えた旋律との違いを記入しよう。
音楽鑑賞の指導法
自分
の
渡邊學而 著
意見
(財)音楽鑑賞教育振興会発行 定価1,000円 送料240円
友達
の
この『子どもの可能性を引き出す 音楽鑑賞の指導法』は、1987年に出版され、
1994年の第3刷以降、長い間入手困難になっていましたが、初版の出版元である㈱
音楽之友社のご好意により、ほぼもとのままの装丁で譛音楽鑑賞教育振興会の出版
物として再発行される運びとなりました。
本書は、当財団が設立以来提唱してきた「音楽鑑賞指導の基本的な考え方」の基
礎を作った著者による、日本で殆ど唯一の、音楽鑑賞教育・鑑賞指導に関する明確
な方法論を打ち出した書物というべきものです。昨年度から財団の研究事業主管を
務めて下さっている著者の主張を、もっと根本から学びたい、あるいは、「夏のセ
ミナー」等で引き合いに出される本書を自分でも1冊持っていたい、という声が、
財団の研究委員の間で次第に大きくなったことから本書の意義が再認識され、もう
一度鑑賞教育の原点にたち帰るという意味で、再版の可能性を㈱音楽之友社に打診
したところ快く引き受けていただくことができた結果、この名著が再び陽の目を見
ることになりました。
意見
○今日の学習をふり返って、分かったことや感じたことをまとめよう。
○今日聴いた曲の作曲者名と曲名
(
)
作曲
よく「教師自身が感動しないで、何で子供たちに音楽のもつ感動を伝えるこ
とができるか」という言葉を聞く。確かにそれは重要なことであるには違いな
いのだが、それでは自分で感動したものをどのようにして子供たちに教えるの
か、あるいはそれでは教師自身で感動しない音楽は教えられないのではないか、
という疑問が湧いてくる。こうした論も、じつは個人の音楽鑑賞と音楽鑑賞教
育とを同次元で考え、混同しているところからくるものだと私には思えてなら
ない。
それではいったい学校における音楽鑑賞教育は、どのように考えたらよいの
であろうか。
(本書26ページから)
「夏のセミナー」に参加された方や、これから参加しようかと考えてくださって
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(12)
平成17年度音鑑「夏のセミナー」研究報告 ③ 小学校編
らグループ研究開始である。メンバー紹
介の後、いよいよ、今回課題とする教材
曲と演奏、対象学年を発表する。
歌劇の序曲もおもしろいゾ
をすることになっている有馬美和先生
(福岡県福岡市立舞松原小学校)
、機器操
・ 教材曲:モーツァルト作曲、歌劇
《フィガロの結婚》序曲 筑波大学附属小学校教諭 中島 寿
校)と、秋に教育センターで鑑賞の授業
作は、現在、大学院で勉強中の河崎秋彦
先生(茨城県水戸市立新荘小学校)。記
・ 演奏:アカデミー室内管弦楽団
録と経過報告は、米山照美先生(新潟県
・ 中学年 三条市立一ノ木戸小学校)。指導案作成
◇聴く(1回目)
は、夏ゼミ参加2度目の長谷川真澄先生。
まずは、どんな演奏かを聴いてみなけ
れば始まらない。一度、通して聴いてみ
3.教材性を考える
小学校 Aグループ
る。純粋に鑑賞してみるところからのス
教材:歌劇《フィガロの結婚》序曲 モーツァルト作曲
タートだ。といっても、これからこの曲
の教材性を洗い出そうということにな
で授業を組み立てなければならないこと
り、再度、聴いてみる。この時、学習指
はわかっているので、グループのメンバ
導要領の中に書かれていることを頭にお
ーは、何が「ねらい」になるかを考えな
いて考えた方がよいかという質問があ
ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団
とにかく、何度も聴き、この曲(演奏)
今年の夏ゼミは、小学校2グループ
の表現など、演奏の特徴が顕著なものを
がら聴いていたに違いない。その証拠に、
り、「こだわる必要はなし」ということ
(Aグループ、Bグループ)
、中学校1グ
教材とすることによって、ねらいも決め
聴き終わってから、複雑な表情になって
で進めていった。
やすかったわけである。
いた。「中学年には、難しい」という声
ループ(Cグループ)で研究および発表
以降、曲を1回聴くごとに出た意見を
を行なった。BとCのグループについて
それに対して、今回のように、演奏も
は、本誌の既刊で報告されたので、残る
特定されていては、ねらいを決めるのに
この曲、歌うような旋律が出てくるわ
でいったか、または振り出しにもどって
のは、我がAグループのみとなった。
も聞こえてきた。
書き出すことで、研究がどのように進ん
ひと苦労するはずである。いささか、意
けでもなく、行進曲風でもない。形式感
いったのかを、しっかりと記録を取って
さて、これまでのグループの報告にも
地悪のようだが、ここが、今回のグルー
がはっきり聴き取れるというわけでもな
下さった米山先生のメモを頼りに、時間
あるように、今回のグループ研究は、す
プ研究いちばんの課題であったといって
く、とくに特徴的な楽器が活躍するわけ
の流れ通りに書き出してみる。紙幅の都
でに決められた(指導助言者が事前の検
もよいだろう。
でもない。演奏としては、強弱などメリ
合で、省略した部分もあるのでご了承い
ハリがあり、テンポも余計な揺れがなく、
ただきたい。
討会で検討し、その上で決めた)楽曲で
Aグループの教材として選んだ曲は、
ねらいを絞り、授業案を考えていくとい
モーツァルト作曲、歌劇《フィガロの結
う形で進められた。さらに、曲だけでな
婚》序曲である。おそらく、これまでに
く、その演奏も特定されているところか
教材曲として扱われていないであろう曲
らのスタートである。すなわち、楽曲だ
だ。音楽を専門としている者は、聴いた
けが決まっていて、その曲のいろいろな
ことがあるだろうが、大人でも、それほ
さて、今後の進行のためにも、この時
演奏を聴き比べながら、ねらいを考えて
ど馴染のある曲ではない。この曲をどん
点で役割分担を決めることにした。まず
いくという過程は、基本的にはないわけ
な切り口で調理すれば、子どもたちがお
は、グループのまとめ役である班長さん
である。
いしいといって食べるのだろうか。なか
を決める。これは、音鑑・夏ゼミ参加2
いて感じたことをフリーに発表。
なか調理のしがいのある材料だと思う。
度目の大塚恵先生(千葉県白井市立池の
・忙しい感じ ・華やか ・強弱
上小学校)にお願いすることになった。
・速度 ・明暗→明るい 元気
班長さんには司会進行もお願いした。授
・終止形→終わりがかっこいい
業者は、横浜市の授業研を控えた斎藤千
・始まる予感 ・オーケストラ
佐先生(神奈川県横浜市立瀬谷第二小学
・2分の2拍子 ・プレスト ・反復
このことは、たくさんの演奏を聴き比
べるための時間の短縮にはなるが、特定
の演奏からねらいを抽出するというの
は、けっこう厄介な面もある。そもそも、
強弱や特定の楽器の目立つ度合い、曲想
51(2)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
Ⅰ.研究の流れ
1.教材曲の発表と鑑賞
第1日は、基調提案の後、午後4時か
推進力がある。
◇聴く(2回目)
「さて、どうしたものか。」
2回目の聴取で、出てきた意見は、
2.役割分担
・くりかえし ・転調 ・速さ
・曲想の変化(はっきりしない)
といったことである。
この後、メンバー個々がこの演奏につ
平成17年度音鑑「夏のセミナー」研究報告③ ◆◆――
(3)50
◇聴く(3回目)
上記のことに注意して聴く。
◇聴く(4回目)
・幕が始まる前に演奏する曲
◇聴く(9回目)
・視点を変えて、別な曲も聴いてみよ
めあて
て出された意見は、再考の際、大いに役
「曲を特徴づけている要素から劇の様
子を想像して聴く」
う。
子どもたちがわかりやすいねらいを、も
『ディベルティメント』
、歌劇《ドン・
ここまで、かなり細かく、レポート形
・結婚式が始まる前
ジョバンニ》序曲、ドイツ舞曲(以上モ
式で書いてきたが、実は、この過程で話
◇聴く(5回目)
ーツァルト)、カノン(パッヘルベル)、
し合われている内容が、研究として大変
歌劇《さまよえるオランダ人》序曲(ワ
意味をもつと考えたからである。
終了後、無言。
・子どもだったら、何を感じるだろう?
ーグナー)、歌劇《椿姫》第1幕序曲と
と考えて聴いた。曲想の変化。物語の
間奏曲、その他
音楽。
*これらのCDは、何らかの意味で主教
・いちばんの特徴は?
立った。頭を切り替え、客観的な比較で、
う一度考えてみようということになっ
た。
そこで出てきたのが、「強弱」と「速
さ」である。『フィガロ』がスピード感
がある速いテンポの曲なので、遅いテン
Ⅱ.指導案作成に向けて
ポの曲を関連曲として探そう。『フィガ
1.揺れ動く「ねらい」の設定
ロ』が「強い」(この言葉には、みんな
少々違和感があったが、「元気」という
材と関連させられるのではないかと思
2日目は、ねらいを決め、指導の流れ
スピード感、終わりがかっこいい、指
い、助言者の方で用意してあったもの
を考え、指導案を完成させ、シミュレー
と、また主観という言葉がまとわりつく)
揮したくなる、ゆっくりした曲と比較
である。「何らかの」というのは、例
ションまでこぎつけなければならない。
曲なので、「弱い」曲を探そうというこ
*この時点で、「楽器」と「形式」につ
えば、テンポの比較、曲想の比較、拍
まる1日あるとはいえ、例年、どんでん
とになった。
子の比較、明暗の比較、歌劇の序曲な
返しがあり、ねらいも決まり、流れも決
ど、主教材と対比させてねらいに迫る
まりかけたころに行き詰まり、ねらいか
「速さや強さに気をつけて聴かせ、曲の
のに、使いやすいであろうというもの
らもう一度考え直さなければならないと
気分を感じ取らせる」ということになっ
◇聴く(7回目)
である。このことについては、この時
いうこともある。
た。
・曲想の変化をめあてにしてはどうか。
点で、グループにその理由を話してい
いては、教材性からはずされた。
◇聴く(6回目)
「強弱の変化」では、どうか。
→大人が聴いても、曲の変化がよくわ
からない。
・4分13秒は、長いと感じた。
昨夜、音楽的要素から劇の音楽という
ここで、やっと指導の流れを考える段
ことに流れをもっていこうということで
階になったわけである。ここまで決まれ
◇聴く(10回目、11回目)
終わったので、2日目は、これを具体的
ば、あとはスムーズに進む、と安心する
・マリナー以外の演奏でこの『序曲』を
にしていくことから始まった。
のはまだ早いのだが、取りあえずは一段
ない。
・スピード感 →テンポ
聴いてみたい。それによって、マリナ
・絵を使って曲想の変化を理解させられ
ーの演奏の特徴やよさを知りたい。
ないか。「忙しく働いている、のんび
り昼寝」のように →視覚ではなく、
耳で比べさせたい。
・関連曲を用いて、「明暗」について聴
き比べたら?
→明暗は客観性がない。
・客観性から言うと、
①強弱(フォルテ、ピアノ)
②同じ音形が繰り返される
4.ねらいの設定に向けて
◇聴く(8回目)
これによって、「ねらい」は一転し、
話し合いの中から、次のようなねらい
ー・ブレイク。
と方法が提案された。
実際は、これからが大変なのだ。ねら
エーリッヒ・クライバー指揮 4分8秒 速く感じた、立体的
アーノンクール指揮
4分18秒
・「劇の音楽に親しもう」というところ
ではどうか。楽曲を特徴づけている要
曲を特徴づけている要素から、劇の様
子を想像して聴く
ここまでのところが、1日目である。
いは決まっても、流れを考えていくうち
に、どうにも先に進まなくなることも
2つの曲を比較して
「楽しい劇の曲は、
多々ある。
すっきりした頭で、いざ、研究再開。
どちらでしょう」と問う。
・比較する曲 『オーゼの死』など
――
ところが、この後は、意外にも順調に
素から、劇の様子を想像して聴く。
・二つのもので比較。
落。ここで、頭を休めるためにコーヒ
『フィガロ』(明るい、楽しい)に対し
進み、おおまかな全体の流れは、すんな
て暗い、悲しいなど、対象的な曲で比較
りと決まってしまった。こうなれば、あ
させる。――
とは、何度もシミュレーションをしなが
しかし、これに対して、「明るい、暗
ら、発問など、細かいところをつめてい
・回数を重ねて聴いていると、曲想より
なぜか、最後に、次のようなめあてで
い」などは主観的なこと、などの指摘に
けばよい。大きくは、次の二つの段階で
も、テンポや楽器、強弱が聞こえてき
考えてみようということに落ち着いてし
より、あえなく沈没。また、振り出しに
活動を組むことにした。
た。
まった。
戻ってしまった。ただ、昨日何度も聴い
49(4)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
午後11時25分終了。
①2曲(《フィガロ》序曲と『オーゼ
平成17年度音鑑「夏のセミナー」研究報告③ ◆◆――
(5)48
の死』)を聴き比べ、速さの違いに気づ
た。すべての準備は、この日のうち、つ
だいた。夏ゼミ実行委員長の小原光一先
いただき、和やかなうちにも、しっかり
かせる。
まり、午前0時になる前に終えることが
生からは、全体講評の時にAグループに
とした研究となりました。授業者の斎藤
②曲の気分を感じ取らせる。
できた。こんなに早く準備を完了したの
ついて、「答えを音楽で流すのはよい」
先生、本番でも落ち着いた授業をされ、
*細かい流れについては、最終的に、
は、私にとってはじめてである。最悪の
「速さの相違を、指揮で体感させるとい
アドリブも入れるという余裕、すばらし
指導案にあるように、たいへんシン
ときは、朝方まで準備して、1時間くら
うのはよい」「聴取の観点が、わかりや
い。授業研、頑張ってください。有馬先
プルなものになった。
い仮眠、即、研究発表の模擬授業、とい
すい」「授業を全員のものとする一体感、
生の板書用のイラスト
(下の写真にあり)
う年もあったくらいだ。ともかく、普通
声かけがよい」「4年生には曲が長いか
など、あっという間に素敵なものができ
に睡眠が取れたことは、喜ばしい。
なと思ったが、はじめの部分、終わりの
ていて、みんなで驚いていました。秋の
部分という仕掛けがよかったので、最後
鑑賞の授業は、いかがでしたか? 米山
2.模擬授業のリハーサル
いよいよ、最終段階である。リハーサ
ルは、本番どおりに進めなくてはならな
Ⅲ.発表と講評
まで聴ける」といった感想をいただいた。
先生の記録、助かりました。おかげでこ
いので、必要なところで必要な音をすぐ
Aグループの発表は3つのグループの
そして全体的なこととして、「できるだ
の報告が書けました。経過報告も何度も
に出せるように準備をしておかなければ
うち、いちばん最後であった。つまり、
けシンプルに組み立てていく」「聴くこ
リハーサルしておられましたね。
ならない。曲のどの部分を聴かせ、どの
午後からである。さっさと終わらせてし
とが楽しいから聴く、という子どもを育
部分でフェイドアウトするかなど、何度
まいたい気持ちは、どのグループも同じ
てていくように」とのお話があった。
も授業を流す中で決めていった。
そして、
だったはず。午前中に終わってしまった
頻繁にCDを入れ替えなくてよいように
グループは、おいしい昼食となったであ
と、河崎先生が、必要な部分だけを授業
ろうが、わがグループは、のども通らな
の流れ通りに1枚のCD−Rに入れる作
かったのではないだろうか? わかりやすいものになりました。河崎先
おわりに
生、機械にお強いですね。CD−R編集、
Aグループの先生方、3日間の熱い研
修お疲れさまでした。
さて、いよいよ、本番、全体的にはリ
班長で司会進行してくださった大塚先
わりの部分など、フレーズなどを気にし
ハーサル通りに進んでいったのだが、途
生。柔軟で、しかもテキパキと進行して
ながらのデリケートな作業を黙々とやっ
中授業者が気を利かせすぎて、台本には
てくださった。
ない活動(発問)を入れてしまった。こ
のことについては、しっかりと、講評の
確認し、時間短縮のためあらかじめ作っ
ときにチーフ助言者、粟飯原喜男先生か
た紙を貼って示すように工夫していっ
ら「よけいな発問は、いらない」とご指
た。この作業は、有馬先生が、いつ作っ
摘を受けた。特別講師の福井昭史先生か
たのだろうと思うくらいスピーディに、
らは、「速さと強さの比較活動はよい。
センスあるものを、用意してくださった。
また、それを指揮をして確認するのはよ
これらの準備のおかげで、斎藤先生を授
い。」「気分を感じ取らせるところまでい
業者とするリハーサルは予定通り進んで
かなくてもよいのではないか」というご
いった。リハーサルの後、授業者のしゃ
意見をいただいた。主管の渡邊学而先生
べりが早すぎる、大事な発問は、もっと
からは、「速い」というのがどういうこ
大げさに子どもの注意をひくように強調
となのか、「強い」というのがどういう
したり、表情をつけたりしたほうがよい、
ことなのかを、別の曲を使って、はっき
などの意見が出された。これらの点を直
りと示しておく必要がある、とのご示唆
しながら次の日の本番に備えた。
をいただいた。また、部分的に聴かせる
また、このリハーサルと同時に経過報
ところは、同じ箇所であれば、同じ長さ
告原稿や指導案をまとめる作業にはいっ
で聴かせたほうがよいとのご指導をいた
47
(6)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
おかげで助かりました。
みなさんのご活躍をお祈りいたしてお
業をしてくださった。曲の出だしや、終
リハーサルをしながら、必要な板書を
長谷川先生は、なんといっても、その
パワーですね。指導案作成、無駄がなく、
ります。ありがとうございました。
(第29回「夏のセミナー」助言者)
A
班
の
先
生
方
、
ご
く
ろ
う
さ
ま
で
し
た
。
平成17年度音鑑「夏のセミナー」研究報告③ ◆◆――
(7)46
◎第29回音鑑「夏のセミナー」
小学校第4学年指導展開例 A班
強いのか、AとBの曲を比べて聴いてください。
○教材 歌劇『フィガロの結婚』序曲(モーツァルト作曲)
○指導のねらい 速さや強さに気をつけて聴かせ、曲の気分を感じ取らせる。
○展開例 まず、Aを聴きましょう。
〈A:3'31"∼最後の手前まで〉
(Aの掲示物を指す)
つぎは、Bの曲を聴いてみましょう。
〈B:3'18"∼最後まで〉
(Bの掲示物を指す)
指導内容と発問
予想される子どもの反応
○どちらが強かったですか。Aが強いと思った人は
①2曲を聴き比べ、速さと強さの違いに気づかせる
手を挙げてください。Bが強いと思った人は手を
○これから二つの曲を聴きます。どちらが速いか、
挙げてください。
・ほとんどの子どもがBに挙手を
する。
AとBの曲を比べて聴きましょう。
○それでは、強い方を音で確かめてみましょう。
指揮をしたい人はしながら聴いていいですよ。
では、Aの曲を聴いてみましょう。
〈A『オーゼの死』 0'00"∼1'30"まで〉
・じっくり聴いている。
〈B:3'18"∼最後まで〉
(教師も指揮の動作をする)
・明るい表情になって、身体を揺
②曲の気分を感じ取らせる
・指揮をしながら聴く子もいる。
次は、Bの曲です。今の曲より速いか遅いか、よ
く聴いてくださいね。
〈B『フィガロの結婚』 0'00"∼0'50"まで〉
らしながら聴いている。
○速さも強さも正解だったBの曲を、はじめと最後
○どちらの曲が速かったですか。Aが速いと思った
だけ聴きました。
人は手を挙げてください。
Bが速いと思った人は手を挙げてください。
○では、正解を音で聴いて確かめてみましょう。
〈B 0'00"∼0'31"まで〉
・「Bの曲!」などといいながら挙
手をする。
・「やっぱりBだ!」
まだ、聴いていない部分があります。では、初め
からその部分を聴いてみましょう。
〈
『フィガロの結婚』序曲 0'00"∼1'58"まで〉
(曲に合わせて、掲示物の「はじめ」と「おわり」
の間を指す)
○それでは、今度は本当にBの方が速いのか、指揮
・教師の指すところを見ながら聴
いている。
者になったつもりで、指揮をして確かめてみまし
○はじめて聴いたところがわかりましたか。
ょう。
(教師、指揮の動作をする)
では、今度は全部通して聴いてみましょう。
では、Aの曲から聴いてみましょう。
〈A 0'00"∼0'47"まで〉
・教師を見ながら指揮をする。
また、指揮をしても目をつぶって聴いてもいいで
この速さでしたね(動作で違いを表わす)
。
すよ。
では次は、Bの曲をみんなで確かめてみましょう。
あとで、どんな感じの曲だったかきくので、よく
〈B 0'00"∼0'33"まで)
Bのほうが速いのが指揮をすることでよくわかり
聴いてください。
・身体を揺らしたり、指揮をしな
〈
『フィガロの結婚』序曲 全曲〉
がら聴いていたり、目をつぶった
りして聴いている子どももいる。
ましたね。
先生も見ていてみんなが感じているのがわかりま
した。
○では、どんな感じの曲だったか教えてください。
(同じ意見の子は挙手で確認する。
)
・「明るい曲でした。
」
・「楽しい曲でした。
」
○先ほどはAとBの初めの部分を聴きましたが、こ
んどは同じ曲の最後の部分を聴きます。どちらが
45(8)――◆◆ 音楽鑑賞指導の研究と実践
いろいろ出ましたね。今日はモーツァルトが作曲
・「忙しそうな曲でした。
」
した《フィガロの結婚》序曲を聴きました。
第29回音鑑「夏のセミナー」研究報告② ◆◆――
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