意識障害でもできる!作業を使う実践 発表者氏名1)藤本 一博 所属 1)湘南 OT 交流会 2)丸山 祥 2)湘北 OT 研究会 【はじめに】 今回意識障害の A 氏に対し,機能改善や廃用の防止という基本的な介入に留まらず,作 業を探索し,覚醒を上げ,介助量軽減の実践を行った.その際人間作業モデル(MOHO) の評価法を利用したところ,微細な作業に対する興味が把握可能となり,A 氏のわずかな反 応を捉え,そこからの介入で質的に大きな成果が得られたため,ここに報告する. 【事例紹介】 A 氏は脳梗塞により意識障害を呈した 50 代男性である.Japan Coma Scale(JCS)は 30 であり,機能的自立度評価法(FIM)も 19 点であった.失語があり覚醒を上げた状態でもコ ミュニケーションは難しい.四肢に麻痺は認めないが,廃用により筋力低下や可動域制限 を認めるものの,なんとか道具の使用が可能な能力が残存していた. 【経過】 MOHO の意志質問紙(VQ)を利用し,触覚や聴覚に働きかける当院 OT 室の作業物品を 多数提示し評価した.その結果, 「的があるもの」 「片手で握れるもの」 「立位活動(介助) 」 を提示した際に覚醒し,物品を操作する反応が,わずかだが得られることが分かった.そ のためカンファレンスでこの OT 評価を提示し,その反応を強化するように全部門に伝達し た.結果,PT では介助立位で,おもちゃのバットでストラックアウトを付く作業,OT で は,窓のカギを操作したり,ドアノブに触れる体験を提供した.病棟では,ベッドの手の 届く範囲に風鈴を付けることで,時々触れては音を鳴らすなどの場面が増えていた. 【結果】 開始 2 か月で JCS は 10 に改善し,FIM も移乗関連項目で協力動作が得られ,コミュニ ケーション項目にも,うなづきなどの向上が見られた為,23 点まで向上した.家族に反応 することが多くなるなど変化がみられたため,意思疎通が少しできるようになり,家族と の関係に変化が得られた.機能面や介助量での点数的変化は少ないが,家族の気持ちの変 化という質的な点では大きく,A 氏と家族との距離を縮めた. 【考察】 今回意識障害の A 氏に対し,機能改善や廃用の防止という基本的な介入に留まらず,微 細に示される興味関心に焦点をあてた点に大きな意義があり,その結果,家族関係まで効 果が及ぶなど大きな成果をもたらした.今回の事例を通して,作業療法士が作業を使う効 果の大きさと重要性を再認識したと同時に,困難と思われる症状にも作業は有効であると 学ぶことができた.
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