日本における出身国別の乳児(1 歳未満)死亡率と死産率 出身国別乳児死亡率(出生1000対)-3年区切り 人 25 25 米国 21.8 フィリピン 14.1 タイ 20 15 10 9.0 5 5.3 5.1 4.6 4.4 4.2 ブラジル 3.0 2.5 中国 2.4 韓国・朝鮮 2.3 ペルー 日本 0 92~94 95~97 98~00 01~03 04~06 07~09 10~12 年 厚生労働省「人口動態統計」をもとに作成 出身国別死産率(出産1000対)-3年区切り 胎 500 501 フィリピン 400 300 315 タイ 200 100 85 76 59 36 ペルー 78 73 米国 58韓国・朝鮮 43 中国 28 日本 25 ブラジル 22 0 92~94 95~97 98~00 01~03 04~06 07~09 10~12 年 厚生労働省「人口動態統計」をもとに作成 厚労省の「日本における人口動態」にもとづき、以下のように乳児死亡率と死産率(3 年ごとの平均)を算出しました。 各集団の乳児死亡率(出生 1000 対)=各集団の乳児死亡数÷各集団の出生件数×1000 各集団の死産率(出産 1000 対)=各集団の死産数÷(各集団の死産件数+出生件数)×1000 外国籍の乳児死亡率と死産率は、1990 年代ではたかい値をしめしていました。しかし、 1990 年後半以降、その率はへってきています。乳児死亡率では、出身国別間の差はほとん どなくなっています。 注目に値するのは、1995 年以降フィリピン国籍とタイ国籍で急激な低下がみられること です。これは、1994 年までの乳児死亡や死産は母親の国籍としてかぞえられていましたが、 1995 年からは父親が日本人であれば、外国籍の母親からうまれた子どもは日本国籍にいれ られるようになったからです。それまでは、外国籍の母親と子どもは日本国籍としてかぞ えられていませんでした。この変更によって、見かけ上、その率がひくくなったのです。 1990 年代初期のフィリピンやタイ出身者は、彼/彼女らは最初のころの移民あるいは非 正規滞在者として来日しました。当時、情報が不足し、独自の団体はまだ形成されず、日 本人による支援もすくなかったです。高額医療費を心配し、医療機関へのつながりもほと んどありませんでした。言葉の壁もあつかったです。非正規滞在者は、とりわけ病院から 入管への通報されるのをおそれていました。 死産率がきわめてたかいのは、おそらくのぞまない妊娠、つまり人工妊娠中絶なのでし ょう。これらの国籍出身の職業に、性産業にたずさわっている女性がおおいです。それが、 たかい死産率の理由のひとつとして推測されます。ほかに離婚や生活苦なども理由にあげ られるでしょう。 フィリピンとタイ出身者の乳児死亡率と死産率の推移をみると、あきらかに連動してい ます。家庭環境・労働環境・不安定な法的地位・医療情報不足などが子どもを死においや っています。 現在ではフィリピン人コミュニティも形成され、フィリピンやタイの大使館も積極的に はたらきかけています。支援団体もおおくなり、情報もゆきわたり、医療機関も以前とく らべ、診療拒否はなくなってきました。 現在乳児死亡率は低下しているものの、それは上記要因がなくなったからではありませ ん。生活環境が改善されたこと、そして医療関係者や支援者の努力によって医療情報の共 有がなされたことがおおきいです。社会的な医療制度はいまだ整備されず、負の要因はつ づいています。 とくに在留資格のない家族では、法的地位の不安定さが医療への道をとざしています。 2012 年に導入された在留カード制度前でさえ、非正規滞在者/難民申請者の子どもは、乳 児検診や予防接種からしめだされていました。在留カード制度に移行した現在、さらに医 療からの排除がつよまっています。実際に、母子健康手帳をもらえない妊婦さんもいまし た。 日本は、途上国に母子健康手帳を積極的に「輸出」しています。いっぽうで、足元の途 上国出身者である、在留資格のない非正規滞在者/難民申請者にたいして、母子健康手帳 交付禁止の措置をとり、彼女たちを排除しようとしています。 あきらかに矛盾した行動なのですが、それを読み解くには、母子健康手帳がどうしてつ くられたのか、その「出生の秘密」をさぐる必要があります。調査報告のページの「非正 規滞在者/難民申請者の母子保健調査報告」に「出生の秘密」があきらかにされています。
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