助けあい物語賞 優秀賞受賞作品 「ありのまま共に生きあおう」 たけ 取手市 竹 うち 内 まさ 雅 み 美 初期肺癌を手術した主人、術後定期検診は欠かさず受診。四年後、「鬱」を疑い検 診時に相談。肺癌で世界的に著名な主治医は「手術は完璧!見事!綺麗!100%転 移は無い。鬱?ナイナイ問題ない!」の自画自賛付診断。納得いかない私は同大学病 院内脳神経科を強引に受診。脳内に20個以上の腫瘍、 余命は5分から一ヶ月の診断。 即入院。入院後脊椎肝臓にも転移判明。部屋はホスピスのような二人部屋。先におら れた方は高名な出版社の会長さん。末期で既に覚悟しているご様子。舞上がっている 私に見かねたのかご夫婦で諸々アドバイス。高額な部屋代に耐えかね転院する迄優し くさりげない支援をいただいた。これが生まれて初めてのボランティア体験。 数年後、重複障害者施設で聾と自閉、知的の重度重複障害者の隣での作業時、優し い笑顔と眼差しで語りかけたつもりの私にその娘は大パニック。私は大ショック。自 信喪失。どうして良いか分からず、30センチ程の距離を置いて座り黙々と作業。そ の数日後母が倒れ急遽帰宅することになった。玄関で皆に見送られていると突然その 娘が前に出て来て「あなた好き・私」手話で語りかけてきた。息もつけない程の感動。 今思い出しても体が熱くなる。二度目のボランティア体験。 数年後、入院していた病室の隣のベットに癌センターから末期癌の方が転院してき た。既に覚悟しているご様子。家族に葬儀など指示したり高校生の男のお孫さんと楽 しそうに談笑していた。生きることに積極的で「私は絶対死なないの。最期まで生き きるの」 「夢があるの。大好きな植木に自分の足で立って水をやるの。沢山は無理ね、 2~3鉢かな」など語りその通り頑張っていた。ある時、私の見舞いに来たろう者の 帰り際、突然「待って。私に手話を教えて。生まれ変わったら手話を学びたい」と言 い、その日から枕元での手話講座がスタート。モルヒネを打つとぼーっとして勉強に ならないからとギリギリまで我慢し、激痛に耐えながらの壮絶な学習。枕元まで来て くれたろう者は、入口で彼女の名前を確認後入室し、 「○○さんね。手話通じた。 OK、上手」と。痛みに震えながら手話で自己紹介した彼女は一瞬にして満面喜びに 溢れ生命力に充ちた笑顔となり、三日後帰らぬ人となった。三度目のボランティア体 験。 死を受け入れながらも思いやりを忘れず平穏に積極的に生ききった方々、本能的な あたたかさと配慮を教えてくれた重度障害者。死にゆく人のため無償で枕元に通った ろう者。私のボランティア体験とは「教えて貰った、生きる力を貰った。 」の受動的 体験のみです。「ありのままの自分とあるがままの他人を認め、違いや差を受け止め 工夫して生き合うこと」を学んだ。お陰で嫌いだった人の良い面を見つけられるよう になり、感謝も知った。 ボランティアは「してあげる、してもらう」ではなく、自分に責任を持ち他を認め 互いに共に生き合うこと、ボランタリーです。
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