「旧居留地ミュージアム構想」(413KB/PDF)

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街全体が美術館
●
「旧居留地ミュージアム構想」
企画書作成 :C.A.P.(芸術と計画会議)事務局
はじめに
旧居留地は、ビジネス街でありながら観光地でもあり、商業・文化の複合した機能
を持つ地域です。建築群、歩行空間、商業、文化施設において
“神戸らしさ”を演
出してきました。しかしながら今回の阪神大震災では、大きな被害を被ってしまい
ました。
そもそも居留地は、開港とともに外国人に与えられた通商・貿易のための拠点と
しての街です。それは当初から都市計画の整った街でした。この国際 的でハイカラ
な街の活況は、商業の街としてだけでなく、建築や生活文化などさまざまなジャンル
において、私たちの感性と知性を刺激し、イマジネーションを与えてくれました。
この“文化的・知的な刺激”としての居留地の特徴こそ、21世紀に伝えていくべき
“神戸らしさ”なのだと考えます。 そして、そうした特 徴を私たち自らの手で新たに
作り上げていくための 「旧居留地ミュージアム構想」 を提案します。
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街全体が美術館となる
《 旧居留地ミュージアムとは 》
美術館へ足を踏み入れると、気持のよい緊張感と知的な興奮を覚えると思います。
街全体が美術館となるために。
日常の生活空間では得られない、自分自身を高めることができる空間が、建物の
中 で は な く 旧 居 留 地 全 体 だ と し た ら ど う で し ょ う 。 街 の 中 心 に 美 術 館 を
1.“今”を発信する。
2.
芸術・文化を
街に点在させる。
3.
魅力的かつ洗練された
街並みを創る。 いだ く と こ ろ は 無 数 に あ り ま す 。 私 た ち の 言 う 旧 居 留 地 ミ ュ ージアムとは、
街に 美術館ではなく、
“ 街 全 体 が 美 術 館 ”と な る た め の プ ラ ン で す。
旧居留地ミュージアム
旧居留地ミュージアム構想を実現させるためには、
次の、3つのプランを具体化することが不可欠です。
“ 文化的・知的な刺激”
を発信。
1.“今”を発信するための芸術センターを設立する。
2. 芸術・文化を体感できる空間を街に点在させる。
3. 美術館として相応しい魅力的で、かつ洗練された街並みを創る。
人へ、都市へ、未来へ、
[ ]
街全体が美術館という発想から、3つの構想を発展させていくことによって
旧居留地らしい、知的刺激に満ちた新しい街づくりが可能となります。
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“今”の文化を発信する。
(仮称 )旧 居 留 地 芸 術 セ ン タ ー の 設 立
芸術センターの活動内容
●展覧会の企画運営
様々な形態の展覧会を企画・運営し新しい表現の可能性を追及します。
現代社 会 の 中 で は、様 々な か た ち の 新 し い 芸 術 文 化 が 生 み 出 さ れています。
それらは、世代や国境を越えた、共通の言葉となって知性を 刺 激しています。
旧 居 留 地 ミュージアムでは、既存の美術館では取り上げにくい 現 在 進 行形
の芸 術に焦点をあてます。これらの 芸 術 文 化(
“今”
の 文 化 )を 発 信することは、
現代の活きる街として、確かな存在を示すことになるでしょう。
又、それらの活動を紹介するインフォメーションとしての役割も果たします。
●国内外とのネットワーク
国内の美術館や芸術機関、大学とネットワークを結び、現代芸術に関する幅広い
情報や資料を収集すると共に、互いのアーティストの交換展や
シンポジウム、講演会を行います。
●市民参加型の芸術講座
広く、新しい芸術文化を浸透させるために、市民の参加できる
様々な芸術講座を設け、共に意識のレベルアップを図ります。
●芸術教育プログラム
ミュージアムの核となる
旧居留地芸術センター
の設立
旧居留地の 再 生と共に立ち上がる芸術文化を育てる
た め に、 営 利 を 目 的 と し な い 芸 術 研 究 機 関 を 含 ん だ
各種教育機関とのネットワーク化をはかり、アーティスト等による、
学生を対象としたプログラム(講座・校外見学など)を組み、
芸術に親しみ理解していく心を育てます。
柔軟かつ先鋭的な視野を持って運営させる、ミュージアム
の 核 と な る 芸 術 セン タ ー の 設 立 が 必 要 と 考 え ま す。
●機関誌などの発行
研究機関の活動や情報を、定期的にまとめたニュースレターや
プログラム等の編集、発行します。
主 な 活 動 内 容
ここでは、国内外問わず他の芸術機関や美術館、大学との
ネットワークにより集めた情報や資料を基に企画運営
を行います。また、それらの機関とのタイアップによる
企画 やシンポジウムを 開催 すると共に、互いの 意見や
展覧会・レクチャーなどのさまざまな企画立案と実行。
考え方を交換できる 現 代 芸 術 の 拠 点 としての役割を
果します。
-3-
芸術・文化を街に点在させる
街のなかに巡回できる複数のスペースを配置
例えば美術館の各部屋が、旧居留地全体に点在した 状 態 をイメージしてみて
点在するスペースでは、芸術センターが企画する
様々な催しが行われます。
<展覧会>
現代美術等の企画展及び、国内外の芸術機関との交換展。
下さい。人々は探索しながらその街に分散した展示空間を訪れます。そして
展 示 室 か ら 展 示 室 へ と 至 る 通 路 が 、こ こ で は す べ て の 街 並 み と なります。
<ライブアート>
音楽・演劇・舞踊・パフォーマンス等の発表。
オフィスで働く人々や、ショッピングに訪れる人が、街 の景 観 や 緑 を楽しみ、
休息しながら展示空間へと至るのです。その点在する空間は、様々な新しい
<上映会>
映画、ビデオ、スライドなどの上映。
芸 術 と の 出 会 い の 場 で あ る と と も に 、 人 と 人 と の 交 流 を 通 じ た新しい創造
<レクチャー>
の 場 と な り ま す。
様々な企画や展覧会にそった講演会。
<ディスカッション>
魅力的な空間の活用
旧 居 留 地 内には、幸い に 震 災 をまぬがれた 魅力的な
アーティスト、研究者、一般市民の参加による研究会。
空 間 が 残 されています。 これから新しくつくられる
空間も含めて、その 魅 力 を十分に引き出しながら活用
<リソースセンター>
インターネットなどによる、国内外の資料の収集・提供。
していきます。様々な芸術とそこで出会うことによって、
人々は、 隠された街の魅力に気がつくことでしょう。
<ワークショップ>
市民対象としたアーティストによる公開制作及び指導。
<アーティスト・イン・レジデンス>
人々の交流の場となる
芸術空間の配置
旧 居 留 地 内 の各所に、芸術と文化の発 表・交 流 の場
となる「 専用スペース」を数ケ所確保し点在させます。
また、企画に応じて、ビル の ロビーや 空 きスペース、
公共空間、ストリートなどの「 流動的なスペース」も
積極的に利用していきます。
アーティストの滞在ならびに現地制作。
<ミュージアムショップ>
良質な芸術・美術書を中心にカタログ・CD・ビデオ、
オリジナルグッズ等の販売。
<カフェ>
市民やアーティストの語らいの場となり、
展覧会等のオープニングパーティーも行います。
<特長の異なった専用スペースとして>
1.天井高のある、ゆったりとしたスペース
2.外光の入る、明るく開放的なスペース
3.地下室等の、暗転可能なスペース
4.屋上や公開空地等の、オープンエアスペース 等、
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[活動イメージ図]
旧居留地芸術センターが核となり
様々な企画を運営していきます。
ライブアート
レクチャー
播
磨
町
大丸
展 覧 会
三N
宮T
電T
話
局
明
石
町
市神
民戸
生
協
京
町
浪
花
町
市
役
所
第
二
庁
舎
江
戸
町
保三
険宮
事
務
所
ワークショップ
東 町
神戸港
郵便局
西
町
播
磨
町
明
石
町
浪
花
町
KDD
京
町
旧居留地
市立博物館
芸術センター
N T T 神戸支社
日
本
銀
行
神
戸
支
店
江
戸
町
伊
藤
町
アーティスト・イン
・
レジデンス
東
町
・施設の企画運営 ・可能性の追及
・芸術文化の浸透 ・芸術教育
・機関誌の発行
ディスカッション
海岸通
農業会館
神戸地方合同庁舎
カフェ
NTT
神戸ネットワーク
センター
上 映 会
ミュージアムショップ
兵庫食料事務所
リソースセンター
国内外とのネットワーク
美術館
大学
芸術機関
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魅力的かつ洗練された街並み
美術 館 に ふ さ わ し い 景 観 と 魅 力 の 充 実
街全体が美術館というコンセプトのもとに、ビジネス街しての旧居留地には、
そ れ に 相 応 し い 環 境 や 、 建 物 、 歩 行 空 間 、 美 し い 景 観 が 必 要 と 考 え ま す。
例えば 、経 済 効 率 だ け が 目 的 の 施 設 や、表 面 的 な 観光目的の建物が建たな
美術館としての
魅力の充実
経済や文化の情報交換 や 交流 を 深 めてゆくため、又、
新しい人の流れを生むために、以下のような施設や機
能を充実させる必要があると考えます 。
いように街として規制を設け、街並みにふさわしいデザインを考え、さらに
必要かつ魅力的な施設や企業を積極的に誘致し、協力を求めることによって、
旧居 留 地 は 、 街 の 散 策 そ の も の を も 文 化 的 刺 激 と し て 取 り 込 ん だ 新 し い
芸術・文 化 の ミ ュ ー ジ ア ム ゾ ー ン と な り ま す 。
●旧居留地にふさわしい新たなシンボルづくり
旧居留地の位置的、精神的中心であるオリエンタル・ホテル跡地に
新しいシンボルとなる施設を誘致します。
・旧居留地の応接室としての役割をはたす
美術館にふさわしい
景観づくり
旧居留地の街並みには、展示室から展示室へと至る通路
格調ある良質なホテル。
としての役割をもっています。街のすべてが美術館とい
・ミラノのガレリアを基本コンセプトとした
う発想のもとに、景観を大切にしたデザインコントロール
パサージュの建設、そこには、レストランや花屋、
が必要と考えます。
画材屋といった様々なショップが集まります。 等、
●歩行空間を魅力ある快適なものにします。
●旧居留地内に外国の各種施設を誘致。
歩行空間の演出物である敷石・ベンチ・街灯・街路樹の
外国領事館、国際的機関等を誘致します。
質を向上すると共に、より美的なものにします。
さらにそこに勤める人々が利用する施設を街の中に設定。自然で
リラックスしたコミュニケーション空間を創ることによって、
かつての居留地のように、様々な文化的刺激を与え続けることが
●サインなどに規制を設けます。
できます。
サインの色や大きさなどを厳しく制限していきます。
又、屋外広告等も街並みにふさわしい一定の基準を設けるべきと
考えます。
●旧居留地活性化のキーとなる国際価格の設定
外国施設の誘致は、イメージや公的な働きかけでは
実現できるものではありません。そこでは、便利さや環境そして
●建築物のデザインコントロール
新たに建設されるビル等の建築物を、旧居留地の景観に
相応しい物にするために呼びかけていきます。
コストのバランスがとれてはじめて可能となります。
世界的に見て割高感のない価格設定ができるよう、
新しい街づくりシステムを開発する必要があると考えます。
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● Image ●
景観イメージ
播
磨
町
大丸
三N
宮T
電
話T
局
明
石
町
市神
民戸
生
協
京
町
浪
花
町
市
役
所
第
二
庁
舎
江
戸
町
保三
険宮
事
務
所
東 町
様々な小さなショップやオフィスが集まる
パサージュ
神戸港
郵便局
西
町
明
石
町
播
磨
町
浪
花
町
KDD
京
町
N T T 神戸支社
日
本
銀
行
神
戸
支
店
江
戸
町
伊
藤
町
東
町
市立博物館
●旧居留地にふさわしい新たなシンボルづくり
旧居留地の応接間の役割を持つ
農業会館
海岸通
神戸地方合同庁舎
NTT
神戸ネットワーク
センター
ホテル
兵庫食料事務所
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こ う し た 文 化 ・ 芸 術 の 施 設 計 画 は 、 都 市 の 中 心 に 位 置 し 、 人 々 の 集まる
場 所 で こ そ 意 味 を 持 ちます。人々がそこで働き、買い物をし、散策する街
と し て の 旧 居 留 地 は 、人々に根付いた文化を生み出すにふさわしい街だと
言えるでしょう。私たち C. A. P. は、震災により大きな被害を被った旧居留地の
魅力ある景観の復興と経済のさらなる発展、国際的な新しい文化の構築を願い、
ここに「旧居留地ミュージアム構想」を提案いたします。
<おわりに>
この度の震災で、人間本来の美しさや人情の温かさを知ると同時に
形あるものへの価値観を再認識させられました。このことは、私達ひとりひとりが
公平に分担し、教訓として胸にしっかりと刻み込まねばならないことだと考えます。
神戸の復興が一日も早く来ることを願うとともに、
人にとって本当に価値あるものを、皆さんと共に考えていきたいと思います。
C.A.P. 事務局
〒650 神戸市中央区江戸町100 高砂ビル413. TOMO ' S 内
Tel/Fax:078 [331] 0592
アシスタント事務局
〒659 芦屋市松ノ内町3-14 チェリービュウ芦屋川410
DIAMOND INC.
Tel:0797 [38] 7449 Fax:0797 [38] 7330
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