思想家集団安倍政権はどこへ行くのか

思想家集団安倍政権はどこへ行くのか
独島総合研究所編
平和国家日本
8月15日は事実上、太平洋戦争の終わった日である。1945年8月15日、ポツダム宣
言を受け入れて連合国によって占領された日本は、国際極東軍事裁判(いわゆる、東
京裁判)の判決を受け入れるという条件で、1952年4月に独立を回復した。その時日
本は、国際犯罪を犯したA級戦犯などに対する判決結果を全て受け入れ、日本が侵略
国家だったことを認めた。そして新たに定めた日本国憲法に基づいて戦争を放棄し、
軍隊を保有しないことを基底とする平和国家に生まれ変わった。
安倍政権の暴走
その後の日本の行路には様々な紆余曲折があったが、日本は健全な民主主義国家
として発展してきた。ところが2012年末に第2次安倍内閣が発足した後の日本は、太
平洋戦争後に発展させてきた普遍的価値観をほとんど捨てて、太平洋戦争以前の精
神状態に国家を回帰させようと暴走し始めた。
安倍政権の下で、日本の極右派の主張だったものがいつの間にか日本政府の主張
に化けてしまった。1592年に豊臣秀吉が起こした朝鮮侵略は、まるで倭寇が突然に
日本の武士政権自体となってしまったような事件だった。一部の極右派の主張が日
本政府の危険な信念となって、韓国と中国に対立するという側面で、現在の状況は
秀吉の朝鮮侵略の時と一脈相通じる。
安倍政権の最終目的
安倍首相は、国連傘下の国際刑事裁判所の定めた「侵略の定義」があるにもかか
わらず、「侵略の定義」はまだ決まっていないと虚偽の主張を躊躇せずに主張し、
戦犯たちを神と崇拝する靖国神社を、米国の無名戦士の墓であるアーリントン国立
墓地と同じだと言い張る。安倍首相は、慰安婦強制動員はなかったという主張を曲
げておらず、河野談話が日韓間の政治的妥協の産物という歪曲した検証結果を誘導
した。
このような安倍政権の言動の目的は、ただただ憲法改正と正式軍隊復活にある。
日本は侵略国家ではなく運が悪くて敗北した国家であるため、再び正式に軍隊を備
えて米国とともに戦争を遂行するならば常に勝利するので、それを通じて根本的に
日本人の劣等感を克服することができる、日本が「小さな米国」として認められる
ようになるというような考え方を日本に定着させるところに、安倍政権の第1目的が
ある。だから彼らは、危険な暴走を止めようとはしない。正式軍隊だけ作ってしま
えば、日本国民はいつか結局、安倍政権に感謝するだろうと彼らは信じている。
安倍首相の計算
ドイツは今もユダヤ人たちに対する補償を続けており、過去のナチス・ドイツの
悪行に対しては深い謝罪と反省を機会のある度に表明する。しかし安倍政権は、太
平洋戦争がアジア解放戦争だったというような自分たちだけの主張に陶酔しており、
侵略国家だったことを絶対に認めない。慰安婦に対する強制性を否定し、領土問題
に対してはすべて日本の領土だと固執する。軍隊だけ作ってしまえば、すべてが日
本に有利になると信じる日本の右派たちは、外国から妄言だと批判される主張自体
が日本国内的には国民教育だとして妄言を慎む考え方自体を持っていない。安倍政
権は中国・韓国などと意見が対立しても、米国が最後には日本の主張を支持して必ず
中韓両国の主張を克服することができるという見通しを持っている。
安倍首相の信念の源
戦死者のみを靖国神社の神として祀り、国民たちが戦争をしようとする士気を高
めて戦争を続けて遂行しようと決心した1945年以前の日本精神に、国民全体を回帰
させるということが安倍政権の目標であり、自民党はこれを裏付けるように首相や
閣僚たちの靖国神社参拝を保障する憲法改正案を作成した。慰安婦強制動員の否定、
国家責任者たちの靖国神社参拝、領土に対する挑戦的な姿勢、侵略歴史の否定など、
安倍政権のすべての言動の最終目標は憲法改正を通じた正式軍隊を復活させるとこ
ろにある。安倍首相は、母方の祖父でありA級戦犯だった岸信介元首相の信念を継承
した人物である。岸信介の信念とは、日本を米国の同盟国にする国にするところに
あった。そのため1960年に岸首相(当時)は、日米安保条約期間の延長に命をかけ、
反対する30万人のデモ隊が日本の国会を包囲し、岸首相は刺客によって重傷を負っ
たが、彼は信念を貫徹して日米安保条約延長に成功した。
それを岸本首相の近くで見守っていた幼い安倍晋三が成長して、外祖父の信念を
受け入れて危険な暴走を敢えて行っている。安倍政権は政治家たちの集団というよ
り思想家たちの集団なので、自分たちの主張を信奉だけして妥協することを知らな
い。この危険な集団が正式軍隊という武器を持つようになれば、自分たちの思想の
正当性を主張して、危険な挑発へと進む可能性がある。安倍政権は、60年以上変わ
らなかった集団的自衛権の行使に関する日本国憲法の解釈を、一瞬にして変更して
しまった独裁的集団であることを忘れてはならない。
理想主義政権の限界
しかし自分たちの思想通りに疾走する安倍政権が、今でも国連の安保理理事国に
進出しようという希望を持っているというニュースに接する時、いかなる手段を用
いてでも欲しいものは全て自分のものにしようとする聞き分けのない子供のような
姿が思い浮かぶ。安保理理事国である中国の承認がない限り、日本は決して安保理
理事国になれないにも拘わらず、安倍政権は中国に対する挑戦を止めない。そして、
安保理理事国進出を主張している。これも信念だけあれば不可能なものはないとい
う思想家集団の安倍政権であるために可能な思考から出た結論である。
ソ連崩壊により純粋な共産主義国家は、地球上から消えた。共産主義のように定
まった世界観を統治理念とする場合、それを理想主義(Idealism)という。理想主義
政権は変化する現実を消化しにくいため、時間の問題で崩壊する運命にある。安倍
政権も思想家集団であるだけに、彼らが追求する理想世界がある。つまり根本的に
理想主義を掲げる安倍政権には限界があるとしか考えられないのである。
その限界点にいつ到達するかが、今後の日本の課題といえる。日本に好況をもた
らしたアベノミクスも、米国が金利引き上げを保留しているために、現在やっと持
ちこたえているだけである。米国は金利引き上げ保留は、来年(2015年)の春までで
限界という話をしている。
外部からの力
安倍政権は思想家集団であるだけに、政権内部から変化をもたらす力は弱い。そ
の場合、変化を主導する力は政権の外部から来るしかない。そのような政権外部か
らの力が何になるかについては、まだ正確に予想することは難しい。その力は日本
の国民たちから来るかも知れないし、外国から来く可能性もある。あるいは自然の
力かも知れないし、予測し難い事件である可能性も無いとは言えない。とにかく変
化が起きれば、柔軟性のない塊は崩壊するしかない。もちろんそのような外部の力
によって安倍政権が強制的に変化せざるを得ない状況になるより、自ら自覚して自
ら変化することが望ましい。世界の知識人たちは、現在の安倍政権が変化の道に行
けるように、外部から多くの刺激を加えるべきだろう。