Ⅱ 岩国市の生物 9 軟体動物 (1)貝 類 1)概 況 瀬戸内海は暖流の影響を受けることが、比較的 に少なく、暖海性 の貝類は甚だ少ない。しかしながら 岩国付近は、有用貝類 の内2枚 貝のアサリ、オニアサヅは十数年前から大変少なくなリアサリは毎年漁業 協同組合 が何醇ヽ 放流するものの、尾津沖から通津美ケ浦に一部 が定着している。しかし、大きく育つ までには至つていない。この他 に近年マテガイは少量ではあるが通津美ヶ浦から由宇町神代にかけて生 息が確認されている。巻き貝についても生育している貝の種類 がかなり少なくなり、個体数も激減 してい る状況である。各地区についての詳細は後に述べるが生,息 環境はやはり年 々悪くなり、個体数も種類も へつている。以下、ここ十数年 の科学センターの貝クラブにおいての貝類 の採集状況を元に、最近 の調 査を加えて報告させて頂く。 2)陸 産貝類 ①城 山周辺 城 山は十分に保護された広葉樹林で多くの椎 が茂つており、貝類にとつては好生息地である。特に護 勧神 から御庄にかけての石灰岩 の分布 が貝類の生息に適した状況作り出している。冬季や乾燥した時 期 は冬眠や仮眠に入るので採集や観察は梅雨の時期がよい。 採集箇所としてはキセル 貝の仲間は権 の古木 の穴や根本付近をさがすと良い。比較的たやすく見つ けられるものはナミギセル 、アジキガイ、まれにハリマギセルなどが菖蒲池から吉香家の墓所までで見ら れる。 またチクヤケマイマイはお堀の周りの石垣 の中でまたセトウチマイマイ、イズモマイマイもここから菖蒲 池の上までで見つけることが出来る。この他、まれにコベンマイマイ、ウスカワマイマイも見られる。 ヤマグルマ、アツブタガイ、ャマタニシなどはこの周辺 の車むらや紅葉谷のユースホステルまでの薮で 比較的容易に観察することが出来るものの年によつては少ない年もある。 とても綺麗で崇高な感じのするサンインマイマイは紅葉谷 の紅葉の幹やアオキ、アジサイなどの葉につ いているのを見ることが出来る。 この他、城 山の山頂 にかけての登山道 の両側に採集できる箇所が何力所かあるが,ま むしも生息して いるので十分に注意して観察するようにしたい。しかし近年は公園の清掃 が行き届いて、採集できる個体 数はかなり減つている。カフモトギセル (河 本 1956)こ こ十数年 の採集会では、現在 のところ確認されてい ない。 ②錦川水系 錦川水系の数力所を監察したので報告 しておく。2010年 11月 現在、錦町の猿飛 の岩から河山、小 郷、柱野、御 庄川 、多 田、川西、楠木、今津)│1中 流域にはカワニナが生息しているのが確認 できたもの の、川底には茶色の褐藻類 がヘ ドロ状 についているとこ ろが殆どである。これより上流域 の錦町から須 々万へ 向 かう途 中の清流域までも同様 に茶色に覆 われているの が,い 配だ。今回観察 した小郷付近の写真 (図 1)で はあ るが、やはり,II底 には茶色 のヘ ドロ状 のものが付着 して いた。小郷 の観察箇所では褐 藻類 と思われる苔が付着 している。 マシジミは錦帯橋付近 では確認 できなかったが、楠 図1月 ヽ 郷付近の観察箇所川底 の褐藻類 木 の堤と今津川 の堤防付近で辛うじて確認 できたもの の個体数はかなり減 つている。以前は大正橋 の下で多 数 のマシジミを確認 していたので、生息状況 の変化 は 不思議である。尾津沖の蓮 田に惹かれている用水にはマシジミが比較的多数確認 できる。この他、この 153 Ⅱ 岩国市 の生物 用水路ではマルタニシ、ジャンボタニシ (ス クミリンゴガイ)、 ヒラマキミズマイマイ、カワニナ 、ドブシジミ等を 見ることが出来る。 他 に、川 西 の遊水池 (河 原 にある池 図 2)で ヌマガイ殻長 14cm(図 3)が 採集できた。ここにはこの他 に大型 の貝としてタガイも生息 している。 2)H西 の遊水 地 図 2)II西 図 3)II西 のヌマガイ(ド ブガイ) 2010年 11月 この後 、錦川 は門前川 と今津川 に分 かれていく。少 し下流 の楠 木 の堰堤 ではカワニナとマシジミを見る ことが 出来る。しかし、ここに至 るまでの愛宕橋 から楠木 まで の本流 には殆 どカワニナ の 姿 は見られなか つた。 ここ数 年 は、今津川 の堰堤や 大正橋付近では以前 は多数 のマシジミが観 察 できたが 、今 回は一つ も 生貝が見 つ からなか つた。さらに今津川 を河 日まで 下 つてみると、スガイやウミニナ 、ヘ ナタヅ、マガキ、タ マキビ等が辛うじて生 ,急 しているものの 、種類や個体数 は多くない。 一 方 、楠 木 から門前川 を下 つてみると、河 日付近ではスガイ、ウミニナ 、イシダタミ、イボニシ、コシダカ ガンガラ、カニモ リガイ等小型 の貝類 が比 較 的多く生息しているのが確認 できた。以前 は一 度 に数 え切 れないほどの種類 が確認 できたが今 回は十数種であつた。 地元 の漁師さんの話 では大型 のオオ ノガイ、ミルクイ、アカガイ等 の 貝類 は殆ど捕れなくなったものの 、 アカニシ、マテガイ、アサリなどが、現在 でも少 しは採れるそうである。また、他 の 貝類 を食 べ て生きてい る、ツメタガイもぼつ ぽつ 見 つかると言う事から、当然それらの餌 となる貝類も生息していると思われる。 ③ 平田川 平田川 の河 口では、ウミニナ 、マガキ、タマキビは見られるものの、川底は綺麗な状態ではなく種類は 少ない。 ④麻里布川 麻里布川では麻里布 中学校付近で、カフニナとマシジミが確認できているがこの他の貝類は確認でき ていない。また周辺の河川は生活排水が混じつて水質 は良くないので、あまり多くの種類は望めない。 ⑤本郷川 本郷周辺、でもカフニナ、モノアラガイが金子らが確認できている。 4】 ヒF日 地 区の小瀬 図4北 小瀬川 )││ 門地区 図5カ ワシンジュガイ発見場 図4か ら6岩 国市教育委員会美和支所提供 154 図 6カ ワシンジュガイ Ⅱ 岩国市の生物 ⑥ 小瀬川 上流のカワシンジュガイについて、今回蛇喰から弥栄オー トキャンプ場まで探してみたが確できていな い。(図 6)に ある 2003年 に大三郎で確認されたものが最後であろう。このカワシンジュガイは 日本 の南限 とされているが、もしかすると世界の南限力お しれないので、引き続き観察を続けたい。 ②美和周辺 美和町の親水広場ではモノアラガイとサカマキガイ、カワニナなどが見られる。しかし一般 の周辺河川 ではカフニナだけ確認された。 美和町のエントモノチスの化石は美和ダムの工事現場で多量に発見されたもので,工 事関係者 の協 力で、市内の学校に無料で配布された。 この他、玖珂層郡で発見された、アンモナイトの化石は殻長約 50cmも ある大型のものの一部で現在、 科学センター に実物が保 管されてある。発見当初、随分話題 になり周辺をかなり掘つて調査してみたが、 他 には発見できなかったようだ。もし群生していたり、殻 が集 まっているところであればいくつか発見でき ると思われるので、そうでなく単体であったようだ。アンモナイトは死後、気体が殻の 中に閉じ込められて ― 〒 図 7エ ントモノチスの化 石発 見現場 図 8ア ンモナイト発 見現場 浮遊することがある。しかし、そう遠くない所 にいたことは 間違 いない。2年 間 にわたり周辺 の堆積層 の岩 石を広 域 にわたり、かなり調 査したが化石 は発 見できなかつた。 ここか ら続 いている地層 を阿品まで下 つて、阿 品層 を地域 の所有者 の協力 を得て調査する機 会があつ たが 、木 片 の化 石 と樹脂 の化 石 状 のもの (お そらく琥珀 と思 われる)が 有 ったが 、貝 の化 石 は発 見 できな か つた。 ③ 島 田川周辺 周東 町を流れる、島 田川 水 系は玖珂 の欽 明路あたりの笹 見川 支流 から、確 認 しながら、下 つてみた。 源 流域 と思われる用水 池では貝類 は確認 できなかつた。野 日付近の用水 路 でカワニナ 、モ ノアラガイを 確 認 できたが本 流では貝類 は確認 できなか つた。この後 、さらに,││を 下つていつたが 、や はり本流 ではカ ワニナの確 認 が困難 なくらい少なくその他 の貝類も確認 できない。さらに下つた、島田川も同様 で本流に は貝類 はいるもの と思われるが、まばらに見 つ かる程度 である。しかしながら、柳 井 田の用水路 では多数 のカワニナや マシジミそしてヒラマキミズマイマイを確 認 で きた。同じように、周東 町下須 )│1周 辺 の用水路 にはカワニナが多数 生息しておリマシジミも混じつているのが確認 できた。 3)海 産 の 貝類 藤 生から通津美 ヶ浦 にかけての海 浜 につい ては 、かつてはアサリをはじめ、ユ ウシオガイ、クチ バ ガイ 等 の 2枚 貝や ムシロガイ、アラムシロガイ、ヒメムシロガイ、ウミニナ等 が容 易 に採集・観 察できた場所であ るが最 近では殆 ど補れなくなった。 先 に、門前河 日の所 で述 べ たが通津 美 ヶ浦 でマテガイ、マツヤマワスレガイ、バ カガイ、アサリを数個 採集 したのが最後 であつた。 由宇 町 の「みなとオアシスゆう」の東側 の磯 とその周 りの海 浜 で今年 と去年 の採集会 でイタボガキマガ キ、サル ノカシラガイ、コベ ル トフネガイ、コウダカアオガイ、マツバ ガイ、カラマツガイ、スガイ、コシダカガ Ⅱ 岩国市の生物 ンガラガイ、クロスジムシロガイ、チグサガイ、ホトトギス等わずかなスペースでかなりの種類と個体を見つ けることが出来た。河川 の影響の少ない場所であるが、砂浜にわき水 が幾箇所か見られるので、栄養 が そこから補給されているようである。 バ カガイ、 一時期はマツヤマフスレガイ、 マテガイの生貝が採取できる貴重な場 由宇町 の神代浜は、 所であつたが、近年マンヤマワスレガイの生貝が数個採集 できたのみである。しかし代わりに近年はハボ ウキが多数生息しており、採集会に参加した子ども達は喜んでたくさん採つていた。 以前はここにもユウシオガイやヒメシラトリガイなど綺麗な貝が採集できたが最近生貝はみていない。 4)そ の他 の場所 この他、市内各地区の港を見てみるとマガキは一時のようにびっしりと岩についているものの、ムラサキ イガイの姿が殆ど見当たらない。以前は港や潮通しの良い場所には必ずびつしりとムラサキイガイの団塊 を見ることが出来たのに何か異変を感じる。また港の中は以前は小さな貝類の集合場所であつたが現在 は限られた生物 の種類だけがおり、その数も少ないようである。 以下に、この地域に生,ほ していたもしくは今も採集できると思われる貝の 目録を以下にあげた。 5)日 録 軟体動物 門 腹足網 前鯉 亜網 原始腹 足 目 ミ ミ ガ イ 科 スカ シ ガ イ科 ンタノハ ガ イ科 ユキノカサガイ科 ニシキクズガイ科 フル ヤ ガ イ科 ジュウテンサザエ科 アマオブネガイ科 原始紐舌 目 ヤ マ タニ シ 科 アズ キガ イ科 タ ニ シ 科 リン ゴ ガ イ 科 新紐舌 目 オ ニノツノガイ科 ウ ミニ ナ 科 フ トヘ ナ タヅ科 カ フ ニ ナ 科 ミミ ズ ガ イ 科 タマ キ ビガ イ科 156 クロアフビ、トコブシ スノキレガイ、オトメガサガイ、オオツカテンガイガイ、テンガイガイ、スカシガイ △ツタノハ ガイ、ヨメガカサガイ、マツバ ガイ クノアシガイ、ヒメコザラガイ、ツボミガイ、ヨウダカアオガイ、クサイロアオガイ、 カモガイ、△ユキノカサガイ アシヤガイ、エ ビスガイ、イシダタミガイ、ハ ナチグサガイ、チグサガイ、クボガイ、 クマノコガイ、コシダカガンガラ、イボキサゴ アシヤガマガイ サザエ 、スガイ、△サンショクガイ アマオブネガイ、アマガイ、イシマキガイ ヤマタニシ、ヤマクル マガイ、アツブタガイ アズキガイ オオタニシ、マル タニシ クスミリンゴガイ カニモリガイ、△コオ ロギガイ ウミニナ 、ホノウミニナ フトヘ ナタリ、ヘ ナタリ、カフアイガイ カワニナ ミミズガイ タマキビガイ、アラレタマキビガイ、マル ウズラタマキビガイ I チ ャツ ボ 科 ノ デ ボ ラ科 カンバガサガイ科 岩国市 の生物 チャツボ シドロガイ ム カ デ ガ ィ科 シマメノウフネガイ、アフブネガイ ムカデガイ、オオヘビガイ タ カ ラガ イ科 タ マ ガ イ 科 メダカラガイ、チャイロキヌタガイ、ハツユψ カラガイ、△ハナマルユ拶 カラガイ ー ツメタガイ、エゾタマガイ、アダムズタマガイ、ネコガイ イトカケガイ科 ネジガイ、△ナガイトカケガイ、△ヒメネジガイ、オダマキガイ 新腹足目 ア ッキ ガ イ 科 エ ゾ バ イ 科 チツメンボラ、アカニシ、イボニシ、レイシガイ、カゴメガイ バイ、△オガイ、インニナ、ミガキボラ、ミクリガイ、トウイトガイ、アラムシロガイ、 フ トコ ロガ イ科 ヒメムシロガイ、クロスジムシロガイ、キヌボラ、ハナムシロガイ、アラレガイ、 ムシロガイ、ヨナガニシ、ナガニシ、ツノマタナガニシt△ テングニシ ムシエビガイ、マンムシガイ、ムギガイ、ボサンガイ、フトコロガイ ガ クフ ボ フ 科 マ クラガ イ 科 ・ コ ロモ ガ イ 科 スジボラ、イトマキヒタチオビガイ △マクラガイ ヨンゴウボラ、コロモガイ クダ マ キガイ 科 ヒメシャジクガイ 異偲亜網 兵旋 目 トウガ タガ イ科 リ ゴウナ 、クチキレガイ ナツメガイ ロ タ マ ゴ ガ イ科 ブドウガイ 理舌 目 ユ ヅヤ ガ イ 科 ユジヤガイ 原始有肺 目 ヨウダカカラマツガイ科 オ カ ミミガ イ科 カラマツガイ、キクノハナガイ 朔 ノミミミツ 野 隠肺 目 サカマ キガイ科 モ ノアラガイ科 サカマキガイ △ヒメモノアラガイ、モノアラガイ ヒラマ キガイ科 ヒラマキミズマイマイ、インドヒラマキガイ 柄眼 目 キ セ ル ガ イ科 ンマイマイ科 ナンア ド オナジマイマイ科 シツオレキセルガイ、カフモトキセルガイ、ナミキセルガイ コベノマイマイ チクヤケマイマイ、オナジマイマイ、ウスカフマイマイ、イズモマイマイ、 サンインマイマイ、セトウチマイマイ 187 Ⅱ 岩国市の生物 二枚貝網 翼形亜網 フネガイ ロ フ ネ ガ イ 科 シヨロエ ガイ科 ベ ンケイガイ科 オオシラスナガイ科 イガイロ イ ガ イ 科 ハ ボウキガイ科 ウグイスガイロ ウダイスガイ科 イタヤ ガ イ科 ウミギクガイ科 ナミマガシフガイ科 ミノガ イ 科 イタボ ガ キ 科 フネガイ、コベルトフネガイ、エガイ、カリガネエガイ、アカガイ、サルボウガイ、 ハイガイ、ミミエガイ、 . シヨロエガイ タマキガイ "ス ナガイ ムラサキイガイ、イガイ、ムラサキインコガイ、とバリガイ、本トトギスガイ、 △イシマテガイ ハボウキガイ、タイラギ ・ アコヤガイ ヒオウギガイ、アズマニシキガイ、イタヤガイ クミギクガイ、チッボタンガイ ナミマガシフガイ ハネガイ マガキ、ケガキ、イタボガキ 古異歯亜網 インガイロ カフシンジュガイ科 イ シ ガ イ科 △カフシンジュガイ イシガイ、ニセマツカサガイ、ドプガイ 異歯亜網 マルスダレガイロ キタザル ガイ科 トヤ マ ガ イ科 . ザ ル ガ イ科 バ カガ イ科 サルノカ イ "ガ ト ヤマガイ、フミガイ ザルガイ、マダラチゴトリガイ、イシカゲガイ、トリガイ バカガイ、チゴバカガイ、オオトリガイ、ミルクイガイ チドヅマスオガイ科 マ テ ガ イ 科 クチバ ガイ マテガイ フジ″ ヽナガイ科 ニ ッコ ウガ イ科 ナミノコガイ ベ ニガイ、モモ/ハ ナガイ、ユ ウシオガイ、イチョウ サギガイ シオサザナミガイ科 キヌタアゲマキガイ科 フナガタガイ科 シ ジ ミ 科 マ メ シ ジ ミ科 マルスダレガイ科 158 r "ト リガイ、ヒメシラトリガイ、 オチバガイ、フジナミガイ、インシジミ キスタアゲマキガイ ウネナントマヤガイ ヤマトシジミ、マシジミ ドプシジミ "オ ガイ、マツヤマワスレガイ、ツテムラサキガイ、△カガミガイ、 △マルヒナガイ、オキシジミ、アサリ、スダレガイ、アケガイ、オエアサリ I 岩国市の生物 オオノガイロ オ オ ノガ イ 科 キヌマトイガイ科 ヒオ ガ イ 科 オオノガイ ナミガイ カモメガイ 異靭帯亜網 ウミタケガイモドキロ オ キ ナ ガ イ科 ノトオリガイ 引用文献 山 口県教育委員会 概説 山 口県の貝類 (199o 奥谷喬司,2000, 日本近海産貝類 図鑑 ,■ 73p,東 海大学出版会 (東 京) 159 Ⅱ 岩国市 の生物 (2)頭 足類 ここでは軟体動物中の有用頭足類 (イ カ、 タコ)に ついてのみ記述す る。岩国市の沿岸域、即 ち、麻里布新港地先か ら由宇町地先 (ち さき)ま での間 15Km、 及び柱島群島の うち人が住む島は 柱島、黒島、端島で、本土沖 20か ら 30Kmで 水揚げ される水産上有用な漁獲物 として「コ ウイカ」 や 「マダ コ」は特に重要な魚種品 日とい える。2008年 の瀬戸 内海全体 のタ コ漁獲量は約 116,00 トンで、全国の 4分 の 1の 水揚げ量である。因み に山口県東部海域 (周 防大島町、和木町、岩国 市、柳井市地先海面)で は、同年 の漁獲量は、イカ類 98t、 タ コ類 294tで ある (中 国四国農政局、 2008)。 1)イ カ 生物学的特色】 【 市内沿岸地先で漁獲 され るイカは主 として コ ウイカであ り、他 にカ ミナ リイカ、 ミミイカなど が併せ漁獲 されてい る。沖合水深約 30mの 生息域 か ら産卵のため水深 10か ら 20mの 海域に移動 し て くる習性がある。 コウイカの産卵期は概ね 4月 から 6月 頃にか けて行われ、8月 以降には親イ カの漁獲は見 られなくなる。 一方、カ ミナ リイカは産卵期は同 じだが、当市沿岸沖合域 に生息 し てお り、周年、小型定置網 (ま す網 )、 や釣糸などにかか り、取 り揚げ られ ることがある。いずれ に してもこれ らのイカについては産卵習性を利用 し、岩国市 では通称イカ の 「タイ コ網」漁 と呼 称 され、漁獲水揚げされてい るが、その漁期は 4月 か ら 7月 で ある。 コウイカ (コ ウイカ科 , r" S∞i39Jσガ94の 体形など :外 套長 (頭 部 にみ える)約 ■i♂ (写 真 1) 17 clll、 (8本 )、 触腕 (2本 )を 10本 有 し長 さは、約 8 触手 cm。 体 の 中に石灰質 でイカの骨 と称す る舟形 の 甲をも つてい るこ とか らこの名 がある。体色変更能力を有 す る (保 護色 の役 目)。 逃 亡時は、直腸 か らス ミを 出す。成長 した雄 の外套膜背面には無数 の横縞 があ 図 1タ イ コ網 (流 れ の緩 い場所、金属 と 化学繊維 の既成品)藤 生港にて撮影 る。 生息分布など :本 州中部以南に分布。東 シナ海で多 く漁獲 され る。水深 10mか ら 100mの 海底に生息す る底生動物であるが、たいがい浅い海 (潮 間帯含む) にい る場合が多い とされてい る。 このよ うな場所 で ブ ドウ状 の卵を産む。別名 ス ミイカ。食性 は、肉食 性 (カ ニ、魚など)。 産卵期は、早春か ら初夏で、寿 命 は 1∼ 2年 である。 160 図 2タ イ コ網 (流 れ の速 い場所用、竹製) 藤 生港にて撮影 Ⅱ 岩国市の生物 漁法 :4月 上 旬 か らの漁期 に入 ると市 内藤 生 、黒磯 、通津 、由宇 の水深約 20mの 遠浅海岸域 では 、 幹縄 (み きなわ )に 対 して 30m間 隔 に 1本 の枝縄 を延 ば し、それ ぞれ の先端 に 「タイ コ網」 が 取 り付 け、沈設 され る (図 1、 2)。 幹縄 1本 に対 し約 20個 の 「タイ コ網」がセ ッ トされ、水 深約 20m の海底 に一 直線 状 に投入沈設 され 、5日 か ら 7日 に一 度 の頻度 で 「タイ コ網 」 を引き上 げ、イカ の水揚 げ操業 を行 うので あ る。 4月 か ら 5月 頃 の水揚 げ コ ウイカ は 700か ら 800g/杯 の大型 の コ ウイカ であ るが、補獲 数 は少 数 である。 そ の後 、300か ら 400g/杯 の コ ウイ カが 目立 ち始 める と ともにカ ミナ リイカ も同様 に 「タイ コ網」 に入 り始 める。 一 方 、 この網 の設置位置 もそれぞれイ カ の成長 に対応 させ 、沿岸 か ら沖合 い深部 に移行 させ て行 うので あ る。 この網 の維持・ 管理 は 、 近年 では竹 で な く、金属 フ レー ム に化 学繊維網 を組 み合 わせ た既成 の 「タイ コ網」 が 普及 してい る。 2)タ コ、マ ダコ (マ ダ コ科 ,鯰 ι9pryFュu■ttis)(写 真 2) 生物学的特色】 【 体形など :体 長 60∼ 100 cm(胴 と腕 の割合 が 1:3)、 皮 膚 の色素細胞 による体色変更機能を有す る (擬 態、岩、 海藻様)、 底生動物である。体表各腕 には、大小 のいばが あ り、網 目状に暗色の筋 がある。各腕 の長 さは等 しく、 70∼ 80個 ず つ 2列 に並ぶ 吸盤 を有す る。 生息分布など :本 州北部以南か ら日本海に見 られ る。浅 図 3タ コンボ (素 焼 き製 ) 藤生港にて撮影 海岩礁域 の外洋 に面 した海域 に生息分布 してい る。食性 は、肉食性 (カ ニ、貝類)で 、産卵は、水温 15℃ 以上 、 藤 の花状 の卵塊 (数 万∼十数万個)、 lヵ 月で孵化 し、メ スは死亡す る。 漁法 :岩 国市沿岸域 の藤 生地区か ら通津 、由宇地先、さ らに沖合 いの柱 島群島周辺地先において、昼間は岩礁暗 部な どに身を潜 めてい るタコの夜行習性を利用 し、往時 より行われ ている「タコツボ漁」の漁獲対象は「マ ダ ヨ」 図 4タ コツボ (プ ラスチ ック製) 藤 生港にて撮影 であるが、一般的には本種をタコ と呼称 してい るのであ る (図 3、 4)。 この タ コ ツボ は 日径 約 10cm、 深 さ 30cm、 底部 に約 2cmの 大があ る中型 ものが多 く、 1本 の幹縄 に 40か ら 50個 の タ コツボ を、 枝縄様 に分岐接続 させ 、 水深約 10mの 海底 に沈設す る (図 3、 4)。 一 方 、幹縄 の起部 、終部 には 目印付 きの 浮子 (ふ し)を それぞれ取 り付 け、約 7日 に一 度 くらいの割合 で沈設 の ツボ を引き上 げ、漁獲す る漁法 であ る。柱 島、岩 国漁協 関係者 の話 では 、 幹縄 1本 の 引 き上 げに よ り約 5匹 の タ コが水 揚 げ され る との こ とで ある。最近 のプ ラ ス チ ック製 タ コツボ (図 4)は 軽 いの で 、使用す る際 には上 を入れ て重 くす る。素焼 き製 は い場所 で使 いや す い よ うで、それ ぞれ に使 い 分 けて い る。 (図 3)流 れ の速 Ⅱ 岩国市の生物 本文作成 にあた り柱 島・岩 国漁協 関係者 のみ な さまに ご協力 い ただ い た こ とを感謝 い た します 。 (単 位 中国四国農政局山 口農政事務所『山口農林水産続計年報 J t) 水 産 動 物 類 類 ウ ニ 類 タ コ類 イ カ類 計 9 5 3 1 ︲ 3 9 2 2 3 2 2 5 1 6 6 6 5 8 引 一 引 6 9 市 町 瀬 戸内海 区 平成 18年 エ カ 次 ビ ニ 年 2104 20 6805 1 525 周 防大島 町 2147 1 岩 国市 281 7 34 45 柳 井市 164 7 電3 98 上 関町 458 2 31 48 平生町 553 14 1471 一 5 一 5 3 4 6 6 〇 6 3 7 3 8 3 一 0 0 6 1 一 一 7 7 1 2 6 写真2 タ ヨ (撮 影者 :内 田喜隆) 参考文献 中国四国農政局、 2008,山 口県統計年鑑、56市 町 魚種別漁獲量 (海 区別 ). 青木淳一 ほか 51 名、1992,自 然大博物館 , 807pt 1 0 4 1 9 9 2 3 3 5 8 7 3 3 6 1 1 1 7 3 1 5 1 4 3 9 3 7 写真 1 イカ (撮 影者 :内 田喜隆 ) 7 6 3 1 5 6 1 9 8 7 7 6 4 1 0 田布 施 町 光市 下松市 周南市 防府 市 山 口市 宇部 市 山陽小野 田市 下関市 ︲ 5 和木町 7227 7262 3 3 2 2 19 小学館 (東 京).
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