コミュニケーションをとりたい【Sさんの事例】 〔PDFファイル_144KB〕

Sさんの事例 1
コミュニケーションをとりたい
S さんのプロフィール
1、対象者
S・Mさん(2寮)
歳
2、日常生活及びコミュニケーションの状態
<日常生活>
生活能力に関しては、準備や手渡し等を援助してあげれば、自分で出来る。
独語が多く、しゃべり始めるとなかなかやまず、手拍子して歌が始まったりもす
る。居室で 1 人でしゃべっていたり、靴下の脱ぎ履きを繰り返していたりと、同じ
行動を繰り返し続けて時間が過ぎていくことが多い。何かを楽しむと言うことはほ
とんど無い。また、不安定になると水のみが激しくなり、体の不調にも注意が必要
となる。
<コミュニケーション>
人と関係性をもつということがほとんどなく、独語や繰り返し行動など、1 人の
世界に入ってしまうことが多い。
声掛けによる指示は通る。
Sさんへの支援
1、個別支援計画から
個別支援計画の<生活全般の解決すべき課題(ニーズ)>の中から、療育として
取り上げられることを全体の目標とした。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
・情緒の安定を図り、充実した寮生活が送れるようにする。
・日中活動時間に充実を図る。
2、療育 B での取り組み
目標
① 時間内安定して活動場所に居ることが出来る。
② 独語の軽減の手がかりを捜す。
Sさんの事例 2
活動内容
めやす
時間
9:30
活動内容
集合
支援内容・備考
車椅子にて参加する。
歩行
10:10
課題
10:45
終了
活動場所
療育B班
渡り廊下
自由にリラックスして過ごせるよう支援する。 療育B班
終了し、寮へズックを履いて歩いて帰る。
療育B班
11:00
3、活動状況
【4月~7月】
活移動場所に落ち着いていることが出来ずに寮との行き来を繰り返す日が多い。
寮に戻って水を飲んで帰ってきている様子。また、お喋りが続く日も多く、動作法
を行ってみるが、おしゃべりに関する良い方法は見つからず。
課題についてはペグ刺しを行う。エンドレスで続く。
歩行は好んでおり、声掛けに即応じています。歩行に行くとお喋りがやむ時もあ
れば、歩行中しゃべり通しで戻ってきてもそのまま続く日もあるといった具合で、
歩行とお喋りとの関連性もあまり無いようである。
4月15日 金曜日は音楽への参加の予定であるが、体育館から自主的に帰っ
てくる。時間中、何度も寮へ戻り洗面所で水のみが見られる。ひ
も通しの課題については時間をかけ行う。
6月16日
歩行中もお喋りが止まらず。戻ってからも廊下と外のいすを使っ
てお話を続けている。
【8月~11月】
寮へ戻ることは相変わらずであるが、寮へ戻ってもきちんと活動場所へ戻って来
るのでよしとしていたが、水のみは余りよくないとのことで、寮へ戻るのを止める
ようにした。そのためか、徐々に戻る回数は減ってきたようであった。
お喋りに関しても変わらず、多い日もあれば、表情が険しく全くしゃべらない日
もあるといった状態が続いている。
課題はペグで掌に跡が付くということで折り紙おりに変更する。
歩行時には、いつも一緒に歩いている人のところに自ら手をつなぎにいくなどの
Sさんの事例 3
自主的な行為が見られている。
8月 8日 歩行時音声表出はきれいにストップ。
「Sさん」
「はい」の問いか
けには、
「はい」が小さな声で帰ってくる。
8月31日 本日独語とても多かった。歩行から帰っても止まることが無い。
課題の折り紙に集中して弱まる。
10月19日 朝の会で、Kさんと名前を読んだ時点で、Kさんの手を取りに行
って歩行に出発している。話し始め、終了のスイッチが肩から首
の面にあるようである。
【12月~2月】
お喋りが多いときと全く無い時と週によって顕著に現れてきているようである。
また、お喋りの手がかりについては「口蓋の開閉動作」が有効的と思われるが、ま
だ手探り状態である。
12月12日 独語が止まらない1日。いろいろなお話が続く。
12月27日 寮生活の中でも high 状態は続いているようである。食事もかき
込み状態。朝、部屋に入ると同時にお喋りが止まらない。
寝かせの状態の口蓋の開閉動作。開きの限度いっぱいの誘導で発
音がなくなり口型のみになる。肩ゆるめで終了する。
2月 6日 途中より歌い始めたので、室内のソファーに移動してもらう。
10分程でおさまり、元の場所に戻る。
4、考察及び課題
最初の頃は活動場所と寮との行き来がとても多く、しかしそのまま寮に居ることは
なくきちんと戻って来ることが出来ていたので、本人の思いに任せていたところがあ
る。しかし、寮で水をたくさん飲んでいると言うこともあり、ある程度強制的に、戻
ることを止めたところ、徐々に減少してき、 トイレ以外に寮へ戻ることはほとんど
なくなってきた。
本人お思いに任せることは良いが、そのことは、逆に何でも許されることにもなっ
てしまい、規制がきかなくなってしまうことにもなりかねない。自分でコントロール
が出来ない人については、思いに任せるということは難しく、いくらか強制的な援助
も必要であるようである。
午前中の約2時間安定して部屋にいることを目標としてきたが、独語が続くことも
多々あり、いつでも落ち着いた時間を過ごすことが出来る援助方法を見つけ出すまで
にはいたらなかった。独語については、口蓋動作が有効的かもしれないという手がか
Sさんの事例 4
りがつかめた段階である。
また、お喋りがあるときが本人にとってよい状態なのか、悪い状態なのか根本的な
ことももっと探ってみる必要があるのでは無いかとも思われ、このケースに関しては、
もっともっと細やかな援助方法や日ごろの観察が今後の課題となると思われる。