博士(医学)の学位論文提出要項 乙∴類

授与機関名
順天堂大学
学位記番号
乙第 2308 号
Risk factors associated with increased left ventricular mass index in chronic kidney disease
patients evaluated using echocardiography
(保存期腎不全患者における心臓超音波検査を用いた左室肥大に関する危険因子につい
ての検討)
松本
真弓(まつもと
まゆみ)
博士(医学)
論文内容の要旨
左室肥大(LVH)は進行した慢性腎臓病(CKD)患者に高率に発症し、致死的心血管イベ
ントを引き起こす危険因子であるという報告がある。これまで様々な因子が LVH に関連す
ると報告されてきたが、心臓超音波検査所見と検査施行時の臨床検査値との関連性を検討し
た報告はいまだない。そこで本論文は、保存期腎不全患者の LVH の進行を予防するための
治療戦略をたてることを目的とし、心臓超音波検査所見と検査施行時の臨床検査値との関連
性を検討した。
対象は 2001 年から 2009 年までの 9 年間に、順天堂大学腎臓内科で心臓超音波検査を施行
した保存期腎不全入院患者 930 症例(男性 610 例:女性 320 例、CKD ステージ1~5; 透
析・移植患者を除く)である。心臓超音波検査を施行した際の年齢や血圧などの身体所見、
血液生化学・尿検査所見、心筋重量指数(LVMI)を含む心臓超音波検査所見を後ろ向きに
横断観察した。その結果、単変量解析では、年齢、収縮期血圧、尿蛋白量、血清クレアチニ
ン値、血清リン値は LVMI に対し有意な正の相関を示し、血清アルブミン値およびヘモグロ
ビン値は有意な負の相関を示した。また CKD ステージの進行とともに、LVMI は有意に高
値を示した。重回帰分析からは、収縮期血圧とヘモグロビン値が LVMI の独立した危険因子
であった。平均収縮期血圧 は、LVH 有群で有意に高値であった。また平均ヘモグロビン値
は、LVH 有群で有意に低値であった。糖尿病の有る群と無い群とで分けて比較検討すると
糖尿病の有る群で有意に LVMI が高値を示し、糖尿病と LVH が相関していることも示さ
れた。
これらの結果から、CKD 患者において CKD ステージの進行とともに LVMI は著明に増
加したが、LVMI の増加を抑制するためには、その危険因子である高血圧と貧血のさらなる
厳格な治療を行うことが重要であることが示された。