本道における 日本脳炎予防接種に関する報告書

本道における
日本脳炎予防接種に関する報告書
北海道感染症危機管理対策協議会感染症流行調査専門委員会
目次
1 日本脳炎予防接種の制度
(1) 制度改正の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
(2) 現行の予防接種による接種体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
① 定義
② 市町村長が行う予防接種
③ 予防接種を行う必要がないと認められる区域指定
④ 健康被害の救済措置
2 対象疾患の基本的知見
(1)対象疾患の特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
① 日本脳炎ウイルスについて
② 臨床症状等
③ 不顕性感染の割合
④ 鑑別を要する他の疾患
⑤ 検査法
⑥ 治療法
⑦ 予防法
(2)疫学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
① 諸外国の状況
② わが国の状況
3 予防接種の目的と導入により期待される効果
(1) 感染症対策としての観点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
① 抗体保有率の上昇による日本脳炎の予防
② 予防接種が導入されたことによる効果
(2) 医療経済学的な観点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
① 諸外国における日本脳炎ワクチンの費用対効果の検討結果
② 本道における接種費用
③ 国の公費助成
(3) 他都府県及び各国の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
① 他都府県の状況
② 韓国
③ 中国
④ その他の国々
⑤ WHO(世界保健機関)
4 ワクチン製剤の現状と安全性
(1) ワクチンの種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(2) 製剤としての特性、安全性、副作用、有効性、抗体持続時間、接種スケジュール(国
外のケース)
、キャッチアップの必要性等 ・・・・・・・・・・・・・・・ 16
① 特性
② 安全性・副反応
(ア)ワクチンの添付文書
(イ)予防接種後副反応報告制度
(ウ)予防接種後健康状況調査
(エ)急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
③ 有効性
④ 抗体持続時間
⑤ 接種スケジュール
⑥ キャッチアップの必要性
(3)本道で定期接種を行った場合の需要と供給の見込み ・・・・・・・・・・・・
5 その他流行に関連する事項
(1) 感染症流行予測調査によるブタ抗体保有状況 ・・・・・・・・・・・・・・
(2) 媒介蚊の生息状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 気温の経年変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 本道の修学旅行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(5) 本道の転出者・転入者数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6 本道における日本脳炎定期予防接種の取扱いについて
(1)これまでの取扱いについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)今後の取扱いについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30
32
36
39
41
44
46
46
はじめに
日本脳炎は、重篤な急性脳炎症状を呈し、発症した場合の致死率は 20 から 40%に上り、
生存者の 45 から 70%に、精神神経学的後遺症が残るウイルス性疾患である。我が国では、
昭和 41 年以前には年間 1,000 名を超える患者発生があったが、平成 4 年以降は毎年 10 名以
下の患者発生に留まっている。
日本脳炎ワクチンの定期予防接種は平成 7 年 4 月から開始されているが、他の定期接種
とは異なり予防接種法及び施行令に基づき都道府県知事が発生状況等を勘案し、予防接種
を行う必要がないと認められる区域を指定できることとされていることから、本道におい
ては、これまで、40 年以上、患者が発生していないことや原因となるウイルスの抗体を保
有するブタの数が極めて少ないことなどから、感染症流行調査専門委員会の意見を踏まえ、
知事が、北海道全域を予防接種を行う必要がない区域に指定してきている。
今般、地球温暖化に伴い本道においてもブタの抗体保有が認められていることや国内外
の人的交流も盛んになっていることなどを勘案し、医療関係者等から本道においても日本
脳炎ワクチンの定期接種化が必要との声が上がったことなどから、定期接種の安全性や必
要性などについてより幅広い見地から検討し、本道における日本脳炎予防接種に関する報
告書を取りまとめたところである。
国の「予防接種に関する基本的な計画」(平成 26 年)では、予防接種が疾病予防という
公衆衛生の観点、個人の健康保持の観点から、社会や国民に大きな享受をもたらした一方、
極めてまれではあるが、不可避的に生ずる予防接種の副反応による健康被害をもたらして
きた事実について十分に認識し、我が国の予防接種施策は国民の予防接種及びワクチンに
関する理解と認識を前提に「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」を基本的な
理念としているところである。
本道の予防接種施策を検討するに当たり、感染症そのものの発生及びまん延防止の効果、
副反応による健康被害のリスクについて、過去の疫学情報等を含めて、科学的根拠を基に比
較衡量が必要であり、日本脳炎予防接種に関するこれらの検討結果を報告書として取りま
とめたので、定期予防接種化に係る判断の一助としていただきたい。
平成27年3月
北海道感染症危機管理対策協議会
感染症流行調査専門委員会
委員長 堤
裕 幸
1 日本脳炎予防接種の制度
(1)制度改正の経緯
日本脳炎の予防接種は、昭和 29 年~昭和 41 年までは勧奨接種、昭和 42 年~昭和 50
年は特別対策として実施された。予防接種法の昭和 51 年の第十次改正において直接的な
集団予防効果はない予防接種が法に位置付けられ、ヒトからヒトへの感染がない日本脳
炎が対象疾病に加えられ、平常時臨時接種として実施されてきたが、平成 6 年の予防接
種法改正により、平成 7 年 4 月から定期接種として実施されるようになった。
(参考)平成 26 年 予防接種に関するQ&A集
一般社団法人日本ワクチン産業協会
(2)現行の予防接種による接種体制
①定義(予防接種法第 2 条関係)
法律において「予防接種」とは、疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予
防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種することを
いい、日本脳炎は、主に集団予防を目的として行われるA類疾病の一つに該当する。
②市町村長が行う予防接種(予防接種法第 5 条関係)
市町村長は、A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて、当該市町村の
区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し、保健所長の指示を受け期日又
は期間を指定して、予防接種を行わなければならない。日本脳炎の予防接種の対象者は、
予防接種法施行令第 1 条の 2 において、生後 6 月から生後 90 月に至るまでの間にある
者及び 9 歳以上 13 歳未満の者となっている。
③予防接種を行う必要がないと認められる区域指定(予防接種法第 5 条第 2 項関係)
都道府県知事は、第 5 条第 1 項に規定する疾病のうち政令で定めるものについて、
当該疾病の発生状況等を勘案して、当該都道府県の区域のうち当該疾病に係る予防接
種を行う必要がないと認められる区域を指定することができ、予防接種施行令第 2 条
において、法第 5 条第 2 項の政令で定める疾病は、日本脳炎のみとなっている。
第 2 項は、地域によって定期の予防接種を行わないことができる場合を定める規定
である。定期の予防接種は、海外又は国内における流行状況に照らして定期の予防接種
が疾病の発生及びまん延防止のために必要であることを含む諸条件を総合的に勘案し
て、稀に発生する副反応報告を合理化できる程度の政策的必要性を有すると判断され
る場合に政令で規定される。当該政令では、疾病の種類の単位で規定がされるところで
あり、その対象者について、地域を限って、例えば居住地域の要件を定めることも法制
上可能であるが、特に、本項では、政令で定める疾病について、都道府県知事が、地域
における当該疾病の発生状況等を勘案して、当該都道府県の区域のうち当該疾病にか
かる予防接種を行う必要がないと認められる場合に、予防接種を行わない区域を指定
-1-
することが可能であることを規定するものである。予防接種は、稀であるが副反応によ
る健康被害が不可避であることから、できる限り、きめ細やかに有効性、安全性等を勘
案して、法に基づく予防接種の政策的必要性を判断すべきであり、地域的な事情も十分
に斟酌して合理的な予防接種の制度施行が行わなければならないとしている。
④健康被害の救済措置(予防接種法第 15 条関係)
市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾
病にかかり、障害の状態になり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡
が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したと
きは、給付を行う。
法に基づく予防接種は社会防衛上行われる重要な予防的措置であり、関係者がいか
に注意を払っても極めて稀であるが不可避的に健康被害が起こりうるという医学的特
殊性があるにもかかわらずあえてこれを実施しなければならないということにかんが
み、予防接種により健康被害を受けた者に対して特別な配慮が必要であるので、国家補
償的観点から法的救済措置が設けられたものである。
(参考) 逐条解説 予防接種法
-2-
2 対象疾患の基本的知見
(1)対象疾患の特性
①日本脳炎ウイルスについて
日本脳炎は、フラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスに感染しておこる。このウイ
ルスは、伝播様式からアルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)とも分類される。日本
などの温帯では水田で発生するコガタアカイエカが媒介するが、熱帯ではその他数種類
の蚊が媒介することが知られている。ヒトからヒトへの感染はなく、増幅動物(ブタなど)
の体内でいったん増えて血液中に出てきたウイルスを、蚊が吸血し、その上でヒトを刺し
た時に感染する。ブタは、特にコガタアカイエカに好まれること、肥育期間が短いために
毎年感受性のある個体が多数供給されること、血液中のウイルス量が多いことなどから、
最適の増幅動物となっている。ヒトで血中に検出されるウイルスは一過性であり、量的に
も極めて少なく、自然界では終末の宿主である。
フラビウイルス属のなかでも、特に日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、セントルイ
ス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスは、ウイルスの抗原性において交叉性が高く、
これらは日本脳炎血清型群とよばれる。
②臨床症状等
日本脳炎の潜伏期は 6~16 日間とされる。
本症の定型的な病型は髄膜脳炎型であるが、
脊髄炎症状が顕著な脊髄炎型の症例もある。典型的な症例では、数日間の高い発熱(38~
40℃あるいはそれ以上)
、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などで発病する。小児では、腹痛、下
痢を伴うことも多い。これらに引き続き急激に、項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識
障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋硬直、脳神経症状、不随意運動、
振戦、麻痺、病的反射などが現れる。感覚障害は稀であり、麻痺は上肢で起こることが多
い。脊髄障害や球麻痺症状も報告されている。痙攣は小児では多いが、成人では 10%以
下である。
検査所見では、末梢血白血球の軽度の上昇がみられる。急性期には尿路系症状がよくみ
られ、無菌性膿尿、顕微鏡的血尿、蛋白尿などを伴うことがある。髄液圧は上昇し、髄液
細胞数は初期には多核球優位、その後リンパ球優位となり 10~500 程度に上昇すること
が多い。1,000 以上になることは稀である。蛋白は 50~100mg/dl程度の軽度の上昇
がみられる。
死亡率は 20~40%で、幼少児や老人では死亡のリスクは高い。精神神経学的後遺症は、
パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害など、生存者の 45~70
%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多い。
③不顕性感染の割合
感染しても症状が現れずに経過する不顕性感染のケースは多く、感染しても日本脳炎
を発病するのは 100~1,000 人に 1 人程度となっている。
④鑑別を要する他の疾患
-3-
ウエストナイル熱が、突然の発熱、頭痛で発病し、さらにウエストナイル脳炎は、意識
障害、痙攣等の症状を生じることから、日本脳炎と似ており、診断の際は、特異的IgM、
中和抗体とも日本脳炎ウイルスに対するよりも高値であることを確認する必要がある。
⑤検査法
日本脳炎ワクチン未接種者や不完全接種者で夏季に発生した脳炎患者の場合には、必
ず日本脳炎を考慮する必要がある。
日本脳炎が疑われた場合は、血清の抗体価を調べる。赤血球凝集抑制(HI)試験、補体
結合(CF)試験、ELISA 法、中和試験などがある。HI、CF 抗体で確定診断する場合、
単一血清ではそれぞれ 1:640、1:32 以上の抗体価であることが必要である。急性期と
回復期のペア血清で抗体価が4倍以上上昇していれば、感染はほぼ確実となる。海外渡航
歴がなく、IgM 捕捉 ELISA で特異的抗体 IgM 抗体が陽性であれば、ほぼ確実といえる。
HI 試験は CF 試験よりも感度は高いが、海外で感染した可能性のある場合には、その地
域で流行している他のフラビウイルス、例えばデングウイルスと交叉反応があるので注
意が必要である。交叉反応が低く特異性の高い方法として中和試験があるが、検査に日数
を要する。抗体が上昇する前に死亡した症例では、臨床診断に頼らざるを得ない。剖検あ
るいは鼻腔からの脳底穿刺により脳材料が得られた場合は、ウイルス分離、ウイルス抗原
の検出、あるいは RT-PCR 法によるウイルス RNA の検出により、確実な診断となる。血
液や髄液からのウイルスの検出は非常に難しい。
⑥治療法
特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。高熱と痙攣の管理が重要である。脳浮
腫は重要な因子であるが、大量ステロイド療法は一時的に症状を改善することはあって
も、予後、死亡率、後遺症などを改善することはないと言われている。
日本脳炎は症状が現れた時点ですでにウイルスが脳内に達し、脳細胞を破壊している
ため、将来ウイルスに効果的な薬剤が開発されたとしても、一度破壊された脳細胞の修復
は困難であろう。日本脳炎の予後を 30 年前と比較しても、死亡例は減少したが全治例は
約 3 分の 1 とほとんど変化していないことから、治療の難しさが明らかである。したが
って、日本脳炎は予防が最も大切な疾患である。
⑦予防法
予防の中心は蚊の対策と予防接種である。日本脳炎の不活化ワクチンが予防に有効な
ことはすでに証明されている。実際、近年の日本脳炎確定患者の解析より、ほとんどの日
本脳炎患者は予防接種を受けていなかったことが判明している。
通常の定期予防接種スケジュールは次のとおり。
〇第 1 期(3 回)
初回接種(2 回)
:生後 6 ヶ月以上 90 ヶ月未満(標準として 3 歳)
追加接種(1 回)
:初回接種後おおむね 1 年後(標準として 4 歳)
〇第 2 期(1 回)
:9 歳以上 13 歳未満(標準として 9 歳)
-4-
(2)疫学
①諸外国の状況
海外では、日本脳炎ウイルスは熱帯・亜熱帯アジア地域に広く常在しており、現在でも
地域によっては大流行が見られる等、多数の患者・死亡者が報告されている。2011 年 10
月の WHO(世界保健機関)の報告によると、世界で毎年約 6 万 8 千人の日本脳炎患者が
発生し、最大で 2 万 400 人が死亡していると推計されている。
②わが国の状況
国内における最近の患者の年齢層を見てみると、平成 17 年から 25 年にかけての報告
の中で 52 名のうち、20 歳未満が 7 名(13.4%)、20 歳代から 50 歳代が、13 名(25%)
60 歳代から 80 歳代が 32 名(61.5%)と高齢者の占める割合が高い。
また、患者が発生した自治体別に見ると、平成 11 年から 25 年にかけての報告の中で、
85 名のうち、九州・沖縄地方が、36 名(42.3%)と最も多く、以下中国・四国地方が、
30 名(35.3%)近畿地方が 10 名(11.8%)
、中部地方 6 名(7%)
、関東地方 3 名(3.5%)
と続く。また、北海道・東北地方については、患者の発生はない。西日本においての患者
数が 9 割近くと圧倒的に占めるが、九州地方の場合、福岡県で 13 名、熊本県で 11 名と
患者数が多い半面、宮崎県、鹿児島県では、この 15 年間報告がなく、四国地方において
も、高知県が6名に対し、香川県は報告なしと、同じ西日本でも、県によってばらつきが
見られる。したがって、この 15 年間 25 都府県において、患者が発生し、22 道県につい
ては、患者の報告がなかったことになる。
死亡数であるが、日本脳炎に発症した方の 20~40%の方が死に至るといわれているが、
平成 11 年から 25 年にかけての国内の日本脳炎の患者数 85 名のうち、死亡報告がなされ
たのは 5 名(5.9%)であった。
-5-
3 予防接種の目的と導入により期待される効果
(1)感染症対策としての観点
①抗体保有率の上昇による日本脳炎の予防
平成 25 年のわが国の年齢別日本脳炎抗体保有状況(図 1)を見ると、2 歳未満の抗体
保有率は低いが、標準的な接種期間とされている 3 歳から急激に抗体保有率の上昇が見
られ、20 代まで 80~90%で推移している。ところが、30 代以降は急激に保有率が低下
し、40~50 代は約 30~40%にとどまっている。保有率の低い世代に患者が多く発生して
いる(図 2)ことから、抗体保有率を上昇させることが、日本脳炎を予防する感染症対策
となる。
年齢/年齢群別の日本脳炎抗毒素保有状況
の年度比較2008~2013年
2013
2012
2011
2010
2009
2008
100%
90%
80%
抗
毒
素
保
有
率
(
%
)
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0-5M
6-11M
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
50-54
55-59
60-64
65-69
70-
0%
年齢/年齢群(歳)
【図1】
~2013 年度感染症流行予測調査より~
-6-
年齢/年齢群別の日本脳炎抗体保有状況と患者数の
関係
(2005~2013年の年齢/年齢群別患者発生状況)
0-5M
6-11M
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
50-54
55-59
60-64
65-69
70-
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
【図2】
~予防接種に関する Q&A 集 一般社団法人日本ワクチン産業協会より
②予防接種が導入されたことによる効果
日本脳炎患者数は 1950 年代には小児を中心に年間数千人であった。1965 年には千人
以下になったが、1966 年には 2000 人を超えたことから、1967 年から 76 年に特別対策
として小児のみならず高齢者を含む成人に積極的にワクチン接種が行われた。結果、患者
は急速に減少し、
1980 年代は年間数十人、
1992 年以降は 2007 年を除き一桁台になった。
このような経緯から日本脳炎ワクチンの予防接種は、効果的な感染症対策と考えられ
る。
(参考)国立感染症研究所感染症情報センター 病原微生物検出情報
1999 年 8 月
(2)医療経済学的な観点
①諸外国における日本脳炎ワクチンの費用対効果の検討結果
上海における日本脳炎ワクチンを接種した場合の費用対効果の検討(Ding et al2003)
によると、日本脳炎ワクチンを接種しない場合に比べ、不活化ワクチン又は弱毒化ワクチ
ンを接種した方が費用を節約できるとの結論(表1)となっており、日本脳炎が風土病と
なっているアジアの発展途上国では、日本脳炎ワクチンは経済的に正当なものとなりう
るとされている。
-7-
【表1】 上海での日本脳炎定期予防接種の費用対効果(Cost-effectiveness of routine
immunization to control Japanese encephalitis in Shanghai, China Ding et al.,
Bulletin of the World Health Organization 2003, 81(5))を改編
ワクチンなし
不活化ワクチン
(/10 万人)
弱毒化ワクチン
発生事例数
488 人
68 人
61 人
死亡者数
122 人
17 人
15 人
接種プログラム費用
-
265,894US$
114,175US$
副反応治療費用
-
622 US$
34 US$
急性期日本脳炎治療費用
483,672 US$
77,441US$
69,920 US$
日本脳炎後遺症治療費用
254,643 US$
46,112 US$
41,730 US$
合計費用
738,315 US$
390,069 US$
225,859 US$
②本道における接種費用
厚生労働省が総務省に対する平成 24 年度地方交付税要求時に用いた接種単価では日
本脳炎の1回当たりの単価は 6,942 円とされている。総務省行政評価局が平成 24 年度
に定期の予防接種を行った場合の費用の試算は次(表2)のとおりとなっている。
【表2】 平成 24 年度に本道において日本脳炎の定期予防接種を行った場合の試算(平
成 26 年8月 22 日付け総評相第 184 号総務省行政評価局長通知「北海道
における日本脳炎に係る定期の予防接種を実施することについての検討(あっ
せん)
」より)
接種年齢
接種回数
1期初回(3歳)
2回
40,000 人
6,942 円
555,360 千円
1期追加(4歳)
1回
40,000 人
6,942 円
277,680 千円
2期(9歳)
1回
43,000 人
6,942 円
298,506 千円
4回
123,000 人
計
接種人口(道内) 接種単価
-
接種費用
1,131,546 千円
(注)1「接種人口(道内)」は「総務省人口推計(平成 23 年 10 月)」に基づき算定
2接種率は100%で試算
③国の公費助成
日本脳炎の定期予防接種費用については、現在定期接種を行っていない道内の市町
村にあっても交付税の算定から除外されていないため、北海道知事が区域指定を行わず
定期接種が行われることとなっても、交付税額の変更はない。
-8-
(3)他都府県及び各国の状況
①他都府県の状況
日本脳炎は、平成 7 年 4 月から定期接種として実施されるようになったが、当時、日
本脳炎の予防接種を区域指定していた都道府県は、本道の他に、青森県、秋田県であっ
た。その後、平成 8 年度に秋田県が区域指定を解除した。また、青森県は平成 7 年度から
10 年度にかけて、区域指定していたが、平成 11 年度から区域指定を解除した。理由とし
ては、秋田県、青森県とも同様で、未接種者が感染可能性の高い地域へ移動した際の危険
性を考慮して実施する運びとなっている。なお、両県内で発生した最後の日本脳炎患者は、
秋田県が昭和 53 年、青森県が昭和 60 年に報告されている。
都府県の予防接種率であるが、平成 23 年度の国立感染症研究所の感染症流行調査予測
報告書によると、調査対象となった都府県を比較すると、日本脳炎ワクチン接種歴につい
ていずれかが「有」であった者は合計 1,062 名であり、接種歴不明者を除外した接種率は
全体で 69.6%であった。
(参考:1985~1994 年度 30.9%~43.5%、1996 年度 44.4%、
2000 年度 68.4%、2004 年度 84.2%、2006 年度 57.3%、2007 年度 65.3%、2008 年度
65.8%、2009 年度 62.4%、2010 年度 65.0%)
。特に西日本と東日本で特徴的な傾向は認
められず、宮城県(59.8%)が唯一 60%を下回った。続いて熊本県 60.0%、富山県 60.5%、
愛媛県 61.8%、三重県 66.7%、東京都 70.8%であった。山口県は 81.3%、大阪府は 90.2%
と 80%を超えた。
(表3)
【表3】
予防接種歴別都道府県別日本脳炎感受性調査数
The number of examinees for Japanese encephalitis susceptibility investigation by vaccination
history and prefecture
予防接種歴
有
都道府県 合計
Ⅰ期のみ
無
その
3回未満 3回
A
合計
(3)
B
2364 464
C
不明
Ⅰ期3回未満
Ⅰ期3回
I(UK)
I(<3)+Ⅱ
I(3)+Ⅱ
D
E
F
他
Ⅰ
I(<3)
Ⅱ期以上
その
接種
率
(%)
他
G
H
166
163
28
104
182
419
838
69.6
宮城
183
66
26
17
2
11
11
31
19
59.8
東京
374
84
40
52
5
12
36
59
86
70.8
富山
299
73
24
13
2
6
20
47
114
60.5
愛知
198
0
0
0
0
0
0
0
198
0.0
-9-
三重
296
68
16
24
2
29
23
42
92
66.7
大阪
359
18
6
22
3
8
36
91
175
90.2
山口
198
37
17
14
2
19
44
65
0
81.3
愛媛
259
68
28
16
7
11
8
40
81
61.8
熊本
198
50
9
5
5
8
4
44
73
60.0
接種率(%)=(B+C+D+E+F+G)/(A+B+C+D+E+F+G)*100
*Ⅰ:Primary vaccination series[Ⅰ(<3):1 dose or 2 doses,Ⅰ(3):3doses,Ⅰ(UK):unknown
doses or more than 4 doses ]
Ⅱ:Booster vaccination
平成23年度 感染症流行調査予測報告書より
予防接種歴別抗体保有状況の結果より、ワクチン未接種者では 9.9%と約 10 人に 1 人
の割合で日本脳炎ウイルスに対する中和抗体を保有していた。小児から若年層では、5~
9 歳群 70 名中 3 名(4.3%)
、10~14 歳群 22 名中 3 名(13.6%)15~19 歳群 23 名中 7
名(30.4%)および 20~29 歳群 14 名中 7 名(50.0%)が抗体を保有していた(表4)
。
0 歳~19 歳の予防接種歴別・抗体価別抗体保有状況において、ワクチン接種群(特にⅠ
期 3 回およびⅠ期 3 回+Ⅱ期接種群)では、中和抗体保有率がワクチン未接種群より顕
著に高く、効率的に防御抗体が付与されていることが認められた。しかし、追加接種を受
けていない(Ⅰ期 3 回未満)場合は 3 回以上の接種群に比べ中和抗体価が低い傾向であ
った。
(図3)
【表4】
予防接種歴別日本脳炎中和抗体保有状況
Age group distribution of Japanese encephalizing(NT)antibody titer
by vaccination history
中和抗体価
予防接種歴/年齢群(歳)
NT antibody titer
Vaccination history
合計
/Age group(years)
Total
<10
10 20 40
80
160 320
/ / /
/
/
19 39 79 159
319
/ G.M.T.
G.M.T.
(Log2)
無 Non-vaccinee
Total
464
418
9
7
5
10
8
7
56.3
5.8
0-4
268
266
0
0
1
1
0
0
56.6
5.8
5-9
70
67
0
1
0
0
1
1
104.0
6.7
10-14
22
19
0
0
0
0
1
2
254.0
8.0
15-19
23
16
1
1
2
2
0
1
48.8
5.6
- 10 -
20-29
14
7
1
0
0
3
1
2
97.5
6.6
30-39
19
12
1
2
1
1
2
0
44.2
5.5
40-49
13
8
2
1
0
1
1
0
31.7
5.0
50-59
12
10
0
1
1
0
0
0
28.3
4.8
60-
23
13
4
1
0
2
2
1
40.7
5.3
29 18 18 31
16
22
32
77.1
6.3
有 Ⅰ期3回未満
Vaccinee[Ⅰ(<3)]
Total
166
0-4
68
11
7
8
9
6
11
16
93.7
6.6
5-9
59
9
9
7 13
8
6
7
55.5
5.8
10-14
22
1
1
2
6
1
4
7
105.1
6.7
15-19
7
1
0
1
2
1
0
2
80.0
6.3
20-29
5
3
0
0
1
0
1
0
80.0
6.3
30-39
2
2
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
40-49
1
0
1
0
0
0
0
0
17.0
4.1
50-59
2
2
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
60-
0
0
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
13 11 10 16
15
31
67
155.9
7.3
有 Ⅰ期3回
Vaccinee[Ⅰ(3)]
Total
163
0-4
8
2
0
0
0
2
1
3
267.5
8.1
5-9
77
3
1
3
7
5
18
40
227.0
7.8
10-14
40
4
3
6
6
4
6
11
92.5
6.5
15-19
27
1
3
0
2
2
6
13
169.1
7.4
20-29
6
0
2
1
1
2
0
0
35.8
5.2
30-39
4
2
2
0
0
0
0
0
10.0
3.3
40-49
1
1
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
50-59
0
0
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
60-
0
0
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
Total
182
12
4 18 11
24
27
86
153.5
7.3
0-4
1
0
0
0
1
320.0
8.3
有 Ⅰ期3回+Ⅱ期
Vaccinee[Ⅰ(3)+Ⅱ]
- 11 -
0
0
0
5-9
5
0
0
0
0
3
0
2
146.2
7.2
10-14
55
1
0
4
3
2
11
34
207.1
7.7
15-19
61
4
2
5
3
9
8
30
158.7
7.3
20-29
45
1
1
4
3
9
8
19
144.0
7.2
30-39
10
4
1
3
1
1
0
0
27.4
4.8
40-49
4
1
0
2
1
0
0
0
25.2
4.7
50-59
1
1
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
60-
0
0
0
0
0
0
0
0
0.0
0.0
*Ⅰ:Primary vaccination series [Ⅰ(<3):1dose or 2 doses, Ⅰ(3):3 doses]
Ⅱ:Booster vaccination
平成23年度 感染症流行調査予測報告書より
予防接種歴別・抗体価別日本脳炎中和抗
体保有状況(0~19歳)2011年
予防接種歴なし
予防接種歴Ⅰ期
予防接種歴Ⅰ期
3回未満
3回
予防接種歴Ⅰ期3回+Ⅱ期
≧1:40
≧1:80
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
0.0%
≧1:10
【図3】
≧1:20
≧1:160 ≧1:320
平成23年度感染症流行調査予測報告書より
②韓国
韓国の日本脳炎ワクチンの定期接種の時期は、不活化ワクチンの場合、3 回接種で、1
回目は生後 12-23 ヶ月。2 回目は 1 回目の 7-30 日後。3 回目は 2 回目から 6 ヶ月以上の
間隔で翌年接種。後は 6 歳、12 歳で 1 回ずつ接種で計 5 回となっている。生ワクチンの
場合は任意接種となるが生後 12-23 ヶ月で 1 回目、12 ヶ月以上の間隔で 2 回目の 2 回接
種を行っている。韓国では、1982 年に患者発生が約 10 倍に急増した(1,197 人)経験が
あり、1988 年のオリンピック開催に向けて日本脳炎ワクチンを大規模に接種した結果、
患者は激減し、10 名以下で推移していった。その後、2010 年、2014 年に日本脳炎注意
報を発令している。
- 12 -
(参考)横浜市衛生研究所調べ
国立感染症研究所「日本脳炎とは」
平成 26 年予防接種に関する Q&A 集(一般社団法人日本ワクチン産業
協会)
③中国
中国は、年間の患者数の報告が最も多く、年間 2~3 万人といわれている。ワクチン接
種を勧めた結果、患者数は次第に減少したものの、2003 年、中国南部で多くの日本脳炎
患者の発生と死亡が報告されている。なお、過去数年間で、中国で製造された SA14-142 という弱毒生ワクチンが常在国で最も広く使用されたワクチンとなっている。
(参考)平成 26 年予防接種に関する Q&A 集(一般社団法人日本ワクチン産業
協会)
2014 年 3 月
WHO 日本脳炎について(ファクトシート)
④その他の国々
その他のアジアの国々では、ベトナム、タイ、ネパールおよびインドでは現在でもしば
しば数千人規模の流行が認められる。
また、1995 年から 1998 年にかけては、それまで報告がなかったオーストラリア北部
バドゥ島、パプアニューギニア、ヨーク岬半島でも患者が発生して予防対策が急務となっ
ている。オーストラリア大陸の 70km 北、トレス海峡にあるバドゥ島(人口 780 人)で
3 名が日本脳炎と診断された。患者は 1995 年 3~4 月に発病し、2 名が死亡。3 例とも HI
試験により日本脳炎ウイルス IgM 抗体上昇が認められた。無症状の島民 2 人の血清から
分離したフラビウイルスはモノクローナル抗体を用いた IFA で日本脳炎に一致した。
EIA
による島民 212 人のフラビウイルス抗体調査では 59 人が IgG 陽性,22 人が IgM 陽性だ
った。より特異的なテストにより IgM 陽性血清の大部分は日本脳炎陽性と判明。タイ軍
医科学研究所で行った PCR 法により 2 例が日本脳炎と確認された。トレス海峡諸島の住
民,動物およびオーストラリア大陸最北部の定点のブタ,ニワトリ,野鳥の血清学的サー
ベイランスが行われ,バドゥ島で検査されたブタ 12 頭全部とウマ 10 頭中 9 頭が日本脳
炎抗体陽性だった。バドゥ島はオーストラリア大陸への生きた動物の移動が禁じられて
いる検疫区域である。本症例はオーストラリアで日本脳炎が発生した最初の報告であり,
生物地理界の東洋区とオーストラリア区を分けるウォーレス線の南で初めてこのウイル
スを証明するものと考えられる。
(参考)国立感染症研究所感染症情報センター 病原微生物検出情報
1995 年 7 月
- 13 -
⑤WHO
WHOは南東アジア地域と西太平洋地域の 24 か国で日本脳炎が常在し、30 億人以上
に感染するリスクがあるとしており、日本脳炎の患者に対する抗ウイルス薬による治療
はなく、患者の症状を軽減し、安定させるための支持療法が行われるとしている。したが
って、日本脳炎が公衆衛生上の問題として認識されているすべての地域における日本脳
炎ワクチンの予防接種とサーベイランスと報告体系の強化を含む強力な予防及び制御活
動を推奨している。
- 14 -
4.ワクチン製剤の現状と安全性
(1)ワクチンの種類
平成 21 年 6 月 2 日から接種が始まった乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは、平成 21 年
6 月に販売が開始された製品名「ジェービック V」
(一般財団法人阪大微生物病研究会/
武田薬品工業株式会社)及び平成 23 年 4 月に販売が開始されたエンセバック(一般財
団法人化学及血清療法研究所/アステラス製薬株式会社)の 2 つである。
なお、従来用いられていた日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルス(北京株)を増殖
させたマウス脳乳剤を高度精製しホルマリン等で不活化したワクチンであったが、平成
17 年 5 月 30 日の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨の差し控えにより、接種者が大きく減
少したこと、また、マウス脳由来成分の混入を完全に否定することができないことから
国内での生産が中止され、平成 22 年 3 月 9 日以降、国内で使用できるマウス脳由来の
ワクチンはなくなった。
(参考) 平成 26 年予防接種に関するQ&A 一般社団法人日本ワクチン産業協会
- 15 -
(2)製剤としての特性、安全性、副作用、有効性、抗体持続時間、接種スケジュール(国
外のケース)
、キャッチアップの必要性等
①特性
現在日本で使用されている乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルス(北京
株)をベロ細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)で増殖させ、得られたウイルス
をホルマリンで不活化した後、限外濾過やショ糖密度勾配遠心等で精製し、安定剤を加え、
凍結乾燥したものである。添付の溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mLで溶解した後、接
種する。
②安全性・副反応
(ア)ワクチンの添付文書
現在、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは平成 21 年 6 月に販売を開始したジェービック
Vと平成 23 年 4 月に販売を開始したエンセバックがある。それぞれの添付文書に掲載
されている副反応は表5のとおりである。
(イ)予防接種後副反応報告制度
予防接種法で、病院若しくは診療所の開設者又は医師は、定期の予防接種又は臨時の予
防接種を受けた者が、厚生労働大臣が定める症状を呈していることを知ったときは、独立
行政法人医薬品医療機器総合機構に報告することが義務づけられている。
この報告の内容については、予防接種を実施した市町村等に情報提供されるほか、個人
情報に十分配慮した上で、公開の場で検討することとされている。
副反応の報告内容については、厚生労働省の予防接種後副反応・健康状況調査検討会に
おいて予防接種後副反応報告書集計報告書として報告、検討されている。
(表 6)
現在の乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンのみが使用された期間のうち平成 22 年度から
23 年度までの集計では、ワクチン接種者延べ人数は 10,148,734 人で副反応の報告総数
は 294 件、100 万接種当たりの発生数は 28.97 件であった。うち、重篤とされたものは
報告がなく、入院したものが 40 件、後遺症が報告されたものは 1 件で、それぞれ 100 万
接種あたりの発生数は0件、3.94 件、0.10 件であった。
この値を従来のマウス脳由来日本脳炎ワクチンのみが使用されていた平成 15 年度から
20 年度までの集計と比較すると、副反応 100 万接種あたり発生数 19.84 件よりも増加し
たが一方、重篤とされたもの、入院したもの、後遺症が報告されたもの、それぞれ 100 万
接種あたりの発生数 0.09 件、3.99 件、1.02 件に比べ減少している。
また、平成 25 年 7 月 1 日から平成 26 年 2 月 28 日までに報告された副反応の発生状
況(表 7)は定期接種又は任意接種として実施されている他のワクチンと比較して特に高
い状況は認められていない。
- 16 -
【表 5】 乾細胞培養日本脳炎ワクチンの副反応(ジェービックV添付文書(第 11 版)及
びエンセバック添付文書(第 6 版)を改編)
ジェービックV
承認時までの
臨床試験
生後6月以上90月未満の
小児
副反応が認められた例
発熱
咳嗽
鼻漏
注射部位紅斑
第1期初回接種症例
使用成績調査
123例
49例(39.8%)
-(18.7%)
-(11.4%)
-( 9.8%)
-( 8.9%)
3,161例
副反応が認められた例
注射部位紅斑
発熱
注射部位腫脹
注射部位疼痛
注射部位そう痒感
咳嗽
鼻漏
第1期追加接種症例
945例
344例(36.4%)
238例(25.2%)
143例(15.1%)
126例(13.3%)
注射部位そう痒感
55例( 5.8%)
発熱
頭痛
倦怠感
第2期接種(第1期同剤接種)
症例
21例( 2.2%)
10例( 1.1%)
10例( 1.1%)
163例
84例(51.5%)
-(21.5%)
-(16.6%)
-( 8.0%)
-( 6.7%)
-( 6.7%)
-( 5.5%)
3,071例
副反応が認められた例
528例(17.2%)
注射部位紅斑
-( 8.6%)
発熱
-( 8.2%)
注射部位腫脹
-( 3.6%)
鼻漏
-( 1.2%)
頭痛
-( 1.1%)
咳嗽
-( 1.0%)
第1期追加接種症例
1,349例
副反応が認められた例
156例(11.6%)
注射部位紅斑
-( 6.6%)
注射部位腫脹
-( 3.6%)
発熱
-( 1.9%)
第1期追加接種(第1期
771例
初回同剤接種)症例
副反応が認められた例
97例(12.6%)
注射部位紅斑
-( 6.7%)
注射部位腫脹
-( 4.0%)
発熱
-( 2.1%)
7例(31.8%) マウス脳由来ワクチン接種)症例
副反応が認められた例
3例(13.6%)
3例(13.6%)
注射部位紅斑
1例( 4.5%)
注射部位腫脹
1例( 4.5%)
注射部位硬結
1例( 4.5%)
注射部位疼痛
22例
26例( 8.9%)
-( 5.5%)
-( 3.4%)
-( 1.0%)
-( 1.0%)
第1期追加接種(第1期初回
注射部位紅斑
注射部位疼痛
注射部位そう痒感
注射部位腫脹
頭痛
第2期接種(第1期マウス脳由来
ワクチン接種)症例
第1期初回接種症例
919例(29.1%)
526例(16.6%)
188例( 5.9%)
163例( 5.2%)
142例( 4.5%)
120例( 3.8%)
49例( 1.6%)
37例( 1.2%)
副反応が認められた例
注射部位紅斑
注射部位腫脹
注射部位疼痛
副反応が認められた例
特定使用
成績調査
エンセバック
生後6月以上90月未満の
小児
副反応が認められた例
発熱
注射部位紅斑
咳嗽
注射部位腫脹
鼻漏
発疹
396例
第2期接種(第1期マウス脳由来
ワクチン接種)症例
副反応が認められた例
153例(38.6%)
注射部位疼痛
72例(18.2%)
注射部位紅斑
65例(16.4%)
注射部位腫脹
46例(11.6%)
注射部位そう痒感
14例( 3.5%)
頭痛
10例( 2.5%)
倦怠感
10例( 2.5%)
発熱
8例( 2.0%)
口内炎
4例( 1.0%)
第2期接種(第1期接種
271例
未完了)症例
副反応が認められた例
96例(35.4%)
注射部位紅斑
64例(23.6%)
注射部位疼痛
47例(17.3%)
注射部位腫脹
38例(14.0%)
注射部位そう痒感
10例( 3.7%)
倦怠感
7例( 2.6%)
頭痛
4例( 1.5%)
副反応が認められた例
注射部位紅斑
注射部位腫脹
注射部位疼痛
注射部位そう痒感
291例
399例
41例(10.3%)
-( 6.3%)
-( 3.5%)
-( 1.8%)
-( 1.3%)
(ウ)予防接種後健康状況調査
予防接種後健康状況調査は、有効かつより安全な予防接種の実施に資することを目的
として、厚生労働省健康局結核感染症課が、都道府県、市町村、公益社団法人日本医師会、
各地域の医師会及び予防接種実施医療機関の協力を得て実施している調査である。
調査対象は予防接種法に基づき実施される定期の予防接種を受けた者としている。
本調査は、選定された予防接種実施機関が、定期予防接種を受けた対象者又は保護者に
予防接種後健康状況調査票を配付し、一定期間経過後、対象者又は保護者は調査票を記入
した後、実施機関あて郵送し、厚生労働省健康局結核感染症課が結果の集計を行うもので
ある。日本脳炎については接種後 28 日間の観察を行う。
現在の乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが使用されている平成 22 年度及び 23 年度で
は、接種をした者のうち 10.9%が体調に何らかの異常を呈している。主な異常は、発熱、
局所反応、発疹、蕁麻疹などであった。この調査結果は、予防接種後副反応報告制度と同
- 17 -
様に、予防接種後副反応・健康状況調査検討会において報告、検討されている。(表 8)
この状況を従来のマウス脳由来日本脳炎ワクチンが使用されていた平成 18 年度から
20 年度の調査結果と比較すると、接種をした者のうち 10.5%が体調に何らかの異常を呈
し、主な異常は、発熱、局所反応、蕁麻疹、発疹などであり、特に変化は認められない。
【表 6】 予防接種後副反応報告制度による日本脳炎ワクチン副反応報告数(平成 15 年度
~平成 20 年度、平成 22 年度及び平成 23 年度予防接種後副反応報告書を改編)
<マウス脳由来日本脳炎ワクチン>
平成15年度~平成20年度
発生リスク
10,785,515
(接種者100万人毎の発生数:件)
報告数
報告数
(件)
死亡 重篤 入院 後遺症 (件)
死亡
重篤
入院
後遺症
即時性全身反応
43
0
1
8
0
3.99
0
0.09
0.74
0
アナフィラキシー
15
0
0
4
0
1.39
0
0
0.37
0
全身蕁麻疹
28
0
1
4
0
2.60
0
0.09
0.37
0
脳炎、脳症
18
0
0
10
3
1.67
0
0
0.93
0.28
ADEM※(疑い含む)
13
0
0 不明 不明
1.21
0
0 不明
不明
けいれん
20
0
0
6
2
1.85
0
0
0.56
0.19
運動障害
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
その他の神経障害
13
0
0
4
1
1.21
0
0
0.37
0.09
局所の異常腫脹(肘を越える)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
全身の発疹
14
0
0
4
0
1.30
0
0
0.37
0
39℃以上の発熱
48
0
0
2
3
4.45
0
0
0.19
0.28
その他の異常反応
19
0
0
5
1
1.76
0
0
0.46
0.09
基準外報告
39
0
0
4
1
3.62
0
0
0.37
0.09
局所反応(発赤腫脹等)
5
0
0
1
0
0.46
0
0
0.09
0
全身反応(発熱等)
27
0
0
3
1
2.50
0
0
0.28
0.09
その他
7
0
0
0
0
0.65
0
0
0
0
総数
214
0
1
43
11
19.84
0.00
0.09
3.99
1.02
ワクチン接種者延べ人数(人)
<乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン>
ワクチン接種者延べ人数(人)
即時性全身反応
アナフィラキシー
全身蕁麻疹
脳炎、脳症
ADEM※(疑い含む)
けいれん
運動障害
その他の神経障害
局所の異常腫脹(肘を越える)
全身の発疹
39℃以上の発熱
その他の異常反応
基準外報告
局所反応(発赤腫脹等)
全身反応(発熱等)
その他
総数
平成22年度~平成23年度
発生リスク
10,148,734
(接種者100万人毎の発生数:件)
報告数
報告数
(件) 死亡
重篤
入院
後遺症
(件) 死亡
重篤
入院
後遺症
14
0
0
3
0
1.38
0
0
0.30
0
3
0
0
2
0
0.30
0
0
0.20
0
11
0
0
1
0
1.08
0
0
0.10
0
12
0
0
11
0
1.18
0
0
1.08
0
不明
0
0 不明
0 不明
0
0 不明
0
25
0
0
8
0
2.46
0
0
0.79
0
5
0
0
2
0
0
0
0
0
0
9
0
0
3
0
0.89
0
0
0.30
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
1.97
0
0
0
0
129
0
0
7
1
12.71
0
0
0.69
0.10
26
0
0
4
0
2.56
0
0
0.39
0
54
0
0
2
0
5.32
0
0
0.20
0
18
0
0
0
0
1.77
0
0
0
0
25
0
0
1
0
2.46
0
0
0.10
0
11
0
0
1
0
1.08
0
0
0
0
294
0
0
40
1
28.97
0.00
0
3.94
0.10
- 18 -
【表 7】 ワクチン別副反応報告数(第 9 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反
応検討部会、平成 26 年度第 2 回薬事・食品衛生審議会医薬食品等安全対策部会
安全対策調査会資料を改編)
各ワクチン副反応報告状況(平成25年7月1日~平成26年2月28日の報告分まで:報告日での集計)
上段:報告数 下段:発生頻度
接種可能延べ人数 報告数
重篤
回復/軽快 未回復
後遺症
死亡
不明
35
12
7
2
1
1
1
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン
531,692
0.0066% 0.0023% 0.0013% 0.0004% 0.0002% 0.0002% 0.0002%
13
2
2
0
0
0
0
沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド
1,140,511
0.0011% 0.0002% 0.0002% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000%
0
0
0
0
0
0
0
ジフテリアトキソイド
209
0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000%
1
0
0
0
0
0
0
沈降破傷風トキソイド
354,626
0.0003% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000% 0.0000%
14
8
7
1
0
0
0
不活化ポリオワクチン
851,556
0.0016% 0.0009% 0.0008% 0.0001% 0.0000% 0.0000% 0.0000%
47
21
16
2
0
3
0
混合不活化ポリオワクチン
2,012,646
0.0023% 0.0010% 0.0008% 0.0001% 0.0000% 0.0001% 0.0000%
62
26
22
2
0
2
0
小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)
1,269,652
0.0049% 0.0020% 0.0017% 0.0002% 0.0000% 0.0002% 0.0000%
33
17
10
2
0
3
2
小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)※
1,750,399
0.0019% 0.0010% 0.0006% 0.0001% 0.0000% 0.0002% 0.0001%
77
43
34
2
0
6
1
Hibワクチン
2,926,304
0.0026% 0.0015% 0.0012% 0.0001% 0.0000% 0.0002% 0.0000%
110
26
12
10
1
1
2
乾燥BCGワクチン
644,657
0.0171% 0.0040% 0.0019% 0.0016% 0.0002% 0.0002% 0.0003%
71
24
18
3
0
1
2
日本脳炎ワクチン
2,601,407
0.0027% 0.0009% 0.0007% 0.0001% 0.0000% 0.00004% 0.0001%
13
5
4
0
0
1
0
組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)
1,897,186
0.0007% 0.0003% 0.0002% 0.0000% 0.0000% 0.0001% 0.0000%
18
13
11
1
0
1
0
経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン
429,326
0.0042% 0.0030% 0.0026% 0.0002% 0.0000% 0.0002% 0.0000%
※小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)にあっては、平成25年10月28日から平成26年2月28日までの報告分
【表 8】予防接種後健康状況調査(予防接種後副反応・健康状況調査検討会「健康状況調
査集計報告書」を改編)
マウス脳由来日本脳炎ワクチン(平成18年度から平成20年度まで)
1期初回1回目
1期初回2回目
1期追加
対象者数
1,480
972
871
異常発生者数
164
11.1%
112
11.5%
83
9.5%
発熱
120
8.1%
67
6.9%
54
6.2%
37.5℃以上~38.5℃未満
50
3.4%
24
2.5%
14
1.6%
38.5℃以上
70
4.7%
43
4.4%
40
4.6%
局所反応
30
2.0%
36
3.7%
22
2.5%
けいれん
1
0.1%
0.0%
0.0%
37.5℃未満
0.0%
0.0%
0.0%
37.5℃以上
1
0.1%
0.0%
0.0%
蕁麻疹
14
0.9%
8
0.8%
7
0.8%
発疹
12
0.8%
8
0.8%
3
0.3%
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン( 平成22年度及び平成23年度)
1期初回1回目
1期初回2回目
対象者数
3,807
3,083
異常発生者数
498
13.1%
334
10.8%
発熱
391
10.3%
238
7.7%
37.5℃以上~38.5℃未満
183
4.8%
92
3.0%
38.5℃以上
208
5.5%
146
4.7%
局所反応
88
2.3%
75
2.4%
けいれん
3
0.1%
2
0.1%
37.5℃未満
0.0%
1
0.0%
37.5℃以上
3
0.1%
1
0.0%
蕁麻疹
28
0.7%
25
0.8%
発疹
40
1.1%
17
0.6%
- 19 -
1期追加
1,839
164
120
47
73
41
9
7
8.9%
6.5%
2.6%
4.0%
2.2%
0.0%
0.0%
0.0%
0.5%
0.4%
2期
526
44
17
6
11
23
5
2
2期
1,808
150
55
28
27
80
1
1
9
12
8.4%
3.2%
1.1%
2.1%
4.4%
0.0%
0.0%
0.0%
1.0%
0.4%
8.3%
3.0%
1.5%
1.5%
4.4%
0.1%
0.0%
0.1%
0.5%
0.7%
計
3,849
403
258
94
164
111
1
1
34
25
計
10,537
1,146
804
350
454
284
6
5
71
76
10.5%
6.7%
2.4%
4.3%
2.9%
0.0%
0.0%
0.0%
0.9%
0.6%
10.9%
7.6%
3.3%
4.3%
2.7%
0.1%
0.0%
0.0%
0.7%
0.7%
(エ)急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
平成 17 年 5 月 26 日付けで日本脳炎ワクチンの使用と重症の ADEM との因果関係を
厚生労働大臣が認定したことから、平成 17 年 5 月 30 日付けで厚生労働省健康局結核感
染症課長からマウス脳由来日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨の差し控えの勧告がなされ
た。
ADEM は原因がはっきりしない特発性の場合も多いが、ウイルス感染後あるいはワク
チン接種を契機に生じる場合がある。ADEM は自己免疫的な機序により急性に中枢神経
系に散在性に脱髄と炎症を来すものである。ワクチン接種後の場合は、通常、接種後数日
から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害等の症状があらわれる。ステロイド剤
などの治療により多くの患者は後遺症を残すことなく回復するが、運動障害や脳波異常
などの神経系の後遺症が残る場合があると言われている。
ADEM は文献では様々な感染症に対する予防接種で生じると記載されているが、現在、
日本で使用中のワクチンの中で ADEM との関連性が考えられているのは、日本脳炎ワク
チンのほか、インフルエンザワクチン、B 型肝炎ワクチンがある。ワクチン接種した人の
ADEM 発症頻度は、1000 万回のワクチン接種に対して 1~3.5 人と推定されている。後
遺症を残さない軽症例も含めると、一過性の急性脱髄病変は 10 万回の接種で 1 回以下で
あるとの推計がある。
平成 21 年 5 月まで使用されていたマウス脳由来の日本脳炎ワクチンの接種後には、70
~200 万回の接種に 1 回程度、ADEMが報告されることがあると考えられていた。
現在使用されている乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンについては、平成 24 年 9 月まで
に、のべ 1445 万回程度接種されていると推計されている。接種後にADEMを発症し
たとする予防接種後副反応報告と薬事法に基づく報告は乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン
が使用され始めた平成 21 年 6 月から平成 24 年 9 月までに合計 11 例報告されており、
131 万回の接種に 1 回程度のADEMが報告される計算になる。
平成 24 年 10 月 31 日と 12 月 13 日の二回にわたる「日本脳炎に関する小委員会」で
の専門家による評価の結果、ADEMの報告については、紛れ込み事例が含まれている可
能性があること、その報告頻度は国際的に報告されている頻度と比較して異常とは言え
ないこと等を踏まえ、日本脳炎の定期接種としての扱いはこれまでと同様とし、直ちに接
種を中止する必要はないと判断された。ADEMとして報告された症例や発生頻度の更
なる評価については、今後も継続して行われる予定とされている。
③有効性
日本脳炎ウイルスは、感染後、局所のリンパ組織で増殖した後、ウイルス血症を起こし、
血液・脳関門を通って中枢神経系に運ばれると、日本脳炎を発症すると考えられている。
あらかじめ乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの接種により、日本脳炎ウイルスに対する能
- 20 -
動免役、特に中和抗体による液性免疫が獲得されていると、感染したウイルスの増殖は抑
制され、発症が阻止される。
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンは第 1 期予防接種スケジュールに準じた臨床試験が行
われており、接種後抗体価の上昇がみられる。(表 9)
【表 9】 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの臨床成績(ジェービックV添付文書(第 11 版)
及びエンセバック添付文書(第 6 版)より抜粋)
ジェービックV
エンセバック
接種後平均
抗体陽転率 中和抗体価
(log10)
初回2回接種
99.2%
2.4±0.5
100.0%
3.8±0.3
治験
3回接種
接種後平均
抗体陽転率 中和抗体価
(log10)
承認時ま 2回接種
での臨床
試験
3回接種
接種前平均 接種後平均
中和抗体価 中和抗体価
(log10)
(log10)
製造販売 第2期
(第1期はマウス脳
後
由来ワクチン)
第2期
(第1期はジェービッ
クV)
2.575
100.0%
3.866
接種前平均 接種後平均
中和抗体価 中和抗体価
(log10)
(log10)
第1期追加免疫
(初回2回はマウス
脳由来ワクチン)
100.0%
第2期
2.0±0.5
3.8±0.5
臨床研究
2.6±0.5
3.7±0.3
3.1±0.4
3.9±0.3
(第1期はマウス
脳由来ワクチン)
2.37±0.42
3.65±0.23
2.68±0.38
3.84±0.34
第2期
(第1期はエンセ
バック)
④ 抗体持続時間
厚生労働省健康局結核感染症課で実施している感染症流行予測調査のひとつである日
本脳炎の感受性調査として、一時点における社会集団の免疫力保有の程度について、年齢、
地域等別の分布が調査されている。
平成 24 年度日本脳炎感受性調査の結果(図 4)によると、接種回数が多くなるほど抗
体保有率は高く、高い抗体価を持つ人の割合が増えている。
マウスの感染実験の成績から、血中に 10 倍以上の中和抗体価があると、発症が阻止さ
れるものと考えられているが、平成 24 年度感染症流行予測調査日本脳炎感受性調査の結
果(図 4)によると、日本脳炎定期予防接種を満度(4 回)またはそれ以上接種した者で
も、10~14 歳から 10 倍未満の抗体価の者が出現し、15~19 歳、20 歳以上と 10 倍未満
の中和抗体価である者が増える傾向にある。免疫の維持には 5~10 年毎の追加接種が有
効といわれている。
また、製剤の種類による免疫の維持の相違について、第 1 期の接種で、マウス脳由来
日本脳炎ワクチンよりエンセバックを使用した方が第 1 期追加接種後及び第 2 期接種前
において高い抗体価を得る傾向にある。
(表 10)
- 21 -
【図 4】日本脳炎ワクチン接種歴別の年齢/年齢群別日本脳炎抗体保有状況(平成 24 年
度感染症流行予測調査結果)(国立感染症研究所ホームページより)
- 22 -
【表 10】第 1 期追加接種後から第 2 期接種後までの抗体価の推移(第 2 期はエンセバッ
クを使用)
(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(エンセバック皮下注用)第 2 期接
種における安全性、有効性に関する臨床研究 岡田ら 2009 一部改編)
第1期で使用したワクチン
エンセバック
マウス脳由来ワクチン
第1期追加接種後幾何平
均抗体価n(log10)
第1期追加接種後幾何平
均抗体価n真数変換値
第2期接種前幾何平均抗
体価n(log10)
第2期接種前幾何平均抗
体価n真数変換値
第2期接種後幾何平均抗
体価n(log10)
第2期接種後幾何平均抗
体価n真数変換値
3.91±0.26
3.75±0.41
8209.9
5571.5
2.68±0.38
2.30±0.41
476.5
199.6
3.84±0.34
3.67±0.24
6906.8
4694.6
⑤接種スケジュール
わが国では日本脳炎の定期予防接種は、次のスケジュールで実施されている。(図 5~
7)
【図 5】 平成 21 年 10 月 2 日生まれ以降の者
1.対象者
1 期:生後 6 月から生後 90 月に至るまでの間にある者
2 期:9 歳以上 13 歳未満の者
2.接種スケジュール
1 期:初回接種については 3 歳に達した時から 4 歳に達するまでの期間を標準的な接種
期間として 6 日以上、標準的には 6 日から 28 日までの間隔をおいて 2 回、追加接種
については、初回接種終了後 6 月以上、標準的にはおおむね 1 年を経過した時期に、
4 歳に達した時から 5 歳に達するまでの期間を標準的な接種期間として 1 回接種。
2 期:9 歳に達した時から 10 歳に達するまでの期間を標準的な接種期間として 1 回接種。
<スケジュール>
1 期初回
(3 歳)
1 期初回
(3 歳)
6日以上
1 期追加
(4 歳)
6ヵ月以上
標準的には概ね1年
標準的には6日~28日
- 23 -
2期
(9 歳)
現在、予防接種法施行令附則4、予防接種実施規則附則第四条及び第五条において、日本脳炎
の予防接種に係る特例が定められており、北海道で定期予防接種を行う際にも適用される。
【図6】 平成 19 年 4 月 2 日~平成 21 年 10 月 1 日生まれの者
1.対象者
1期:生後 6 月から 90 月に至るまでの間又は 9 歳以上 13 歳未満にある者
2期:9歳以上13歳未満にある者
2.接種スケジュール
(1)過去に接種歴のない者
1 期:6 日以上、標準的には 6 日から 28 日までの間隔をおいて 2 回、追加接種につい
ては 2 回接種後 6 月以上、標準的にはおおむね 1 年を経過した時期に 1 回接種。
2 期:9 歳以上 13 歳未満の者に対し、1 期接種終了後、6 日以上の間隔をおいて接種。
<スケジュール>
・9歳以上13歳未満
1 期初回
1 期初回
6日以上。標準的には
1 期追加
2期
6 日以上。概ね5年の間隔を
あけることが望ましい。
6ヵ月以上。標準的
には概ね1年。
6日~28日。
・生後90月までに1回接種できる者
1 期初回
1 期初回
生後90月
2期
1 期追加
9歳
6日以上
6日以上
・生後90月までに2回接種できる者
1 期初回
1 期初回
2期
1 期追加
生後90月
9歳
6日以上
6日以上
(2)過去に接種歴のある者(具体の接種間隔は接種医と相談)
6 日以上の間隔をおいて残りの回数を接種。
- 24 -
【図7】 平成 8 年 4 月 2 日~平成 19 年 4 月 1 日生まれの者
1.対象者
20 歳未満の者
2.スケジュール
(1)過去に接種歴のない者
1 期:初回接種として 6 日以上、標準的には 6 日から 28 日までの間隔をおいて 2 回、
追加接種については初回接種後 6 月以上、標準的にはおおむね 1 年を経過した時
期に 1 回接種。
2 期:9 歳以上の者に対して第 1 期接種終了後、6 日以上の間隔をおいて 1 回接種。
<スケジュール>
1 期初回
1 期初回
6日以上。標準的には
1 期追加
6ヵ月以上。標準的
には概ね1年。
2期
6 日以上。概ね5年の間隔を
あけることが望ましい。
6日~28日。
(2)過去に接種歴のある者(具体の接種間隔は接種医と相談)
6 日以上の間隔をおいて残りの回数を接種。
⑥キャッチアップの必要性
平成 17 年 5 月 30 日厚生労働省健康局結核感染症課長通知により日本脳炎定期予防接種
の積極的勧奨が差し控えられ、その後、平成 22 年 4 月から順次積極的勧奨が再開された。
この積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した者に対する積極的勧奨の実施の進め
方について、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会(以下
「小委員会」という。
)において検討が行われた。
これに対して、道では日本脳炎定期予防接種を実施していなかったことから積極的勧奨
の差し控えを行っていないが、定期予防接種を行う際には道でも特例が適用されるため、小
委員会による議論を踏まえ道内市町村において接種を優先すべき対象について検討する必
要がある。小委員会により示された基本的な考え方①から③それぞれに対して、本専門委員
会としての考え方を次にまとめた。
- 25 -
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部
道内市町村において接種を優先すべき対象
会日本脳炎に関する小委員会「日本脳炎
についての考え方
に関する小委員会第 3 次中間報告」
(平成
22 年 10 月 6 日)より抜粋
① 1 期接種を受けていない者は、これま
で予防接種を受けておらず、最も感
1 期接種(1 期追加を含む)を 2 期接種より
優先すべき。
受性が高い集団であることから、1 期
接種(1 期追加を含む)の積極的勧奨
を 2 期接種の積極的勧奨より優先さ
せる。
② 1 期(又は 2 期)接種のうちでは、予
1 期、2 期それぞれの接種のうちで、標準的
防接種実施要領において標準的な接
な接種期間に定められている接種年齢に達
種期間に定められている接種年齢に
した者を他の年齢の対象者よりも優先すべ
達した者への積極的勧奨を、過去に
き。
接種機会を逃した者への積極的勧奨
よりも優先させる。
③ 積極的勧奨の差し控えにより接種機
国において、特例接種の対象者よりも標準
会を逃した者への積極的勧奨のうち
的な接種期間の対象者への勧奨を優先させ
では、より長期にわたって接種機会
ていることを考慮するとともに、道で区域
を逃してきた、より年齢の高い者へ
指定解除した場合には、特例接種の対象者
の勧奨を優先させる。
以外にも定期接種を受けられる期間が短い
者が存在するため、特例接種の対象者とと
もに、これらの対象者に対する正確な情報
提供が必要である。
市町村が予防接種法第 8 条に基づき定期接種の対象者に対して予防接種の勧奨を行う際
には、各年度において接種を優先すべき対象者について次のとおり配慮したうえで市町村
の実情に応じて実施する。
なお、過去に他都府県で定期接種を受けた者または任意接種を受けた者については、市町
村が個別の接種歴を把握することが困難な場合が多いと考えられるため、転出入を含めた
個別の状況を接種医が総合的に判断して適切に接種を行うことが必要である。
- 26 -
(1) 3 歳以上 4 歳未満の間に 1 期初回の接種を受ける者への接種を最も優先させ
る。
(2) 1 期追加接種については、4 歳以上 5 歳未満の者で、過去に 1 期に相当する接種
を 2 回終了後概ね 1 年の間隔をあけて接種する者を優先させる。個別に接種歴
を把握した場合のほか、市町村が定期接種を開始した場合はその 1 年後から当
該年齢層への 1 期追加接種を優先させる。
(3) 1 期の定期接種を受けられる期間の短い者については、
(1)
(2)に次いで優先
的に 1 期の接種を受けられるよう正確な情報提供を行う。(周知の状況に応じて
2 年目以降は新規の者のみとすることも可能。)
対象年度
当該年度に達する年
内容
齢
定期接種開始
6 歳、7 歳に達する者
1 期接種が受けられる期間が生後 90
から 3 年間
のうち平成 21 年 10
か月未満までであること。
(*1)
月 2 日以降生まれ
2 期接種が受けられる期間が 9 歳以
上 13 歳未満であり、1 期完了後 5 年
以上の間隔をあけて接種することが
望ましいこと。
~当分面の間
18 歳、19 歳、20 歳
定期接種(1 期、2 期)が受けられる
(*2)
に達する者
期間が 20 歳未満までであること。
平成 31 年~
11 歳、12 歳に達する
定期接種(1 期、2 期)が受けられる
平成 32 年
者(*3)
期間が 13 歳未満までであること。
(*2)
*1
定期接種開始後4年経過すると、既に(1)
(2)により優先的に1期接
種を完了する機会があった者が6歳、7歳に達することになる。
*2 予防接種実施規則附則第 4 条、第 5 条が改正(廃止)される場合には前倒
しを検討する必要が生ずる。
*3 13 歳に達する者については、平成 31 年度の該当者は 20 歳未満まで特例対
象であることから本表から除いた。
(4) 2 期接種については、9 歳以上 10 歳未満の者で、過去に 1 期に相当する接種を
完了し 5 年以上の間隔をあけて接種する者を優先させる。個別に接種歴を把握
した場合のほか、市町村が定期接種を開始した場合はその 6 年後から当該年齢
層への 2 期接種を優先させる。
* 図 8 に各年度における具体の接種等について例示。
- 27 -
(参考)重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性散在性脳脊髄炎(平成 23 年 3 月)厚生労働
省)
平成 26 年予防接種に関するQ&A(一般社団法人日本ワクチン産業協会)
- 28 -
達する年齢 <対象とする接種>
*留意点
凡例
生年月日
平成28年度
破線角丸は前年度の状況に応じて実施するもの
記載内容は角丸と同様
平成29年度
平成30年度
平成31年度
3歳 <1期初回>
*最優先
H28.4.2~H29.4.1
3歳 <1期初回>
*最優先
H27.4.2~H28.4.1
H25.4.2~H26.4.1
H24.4.2~H25.4.1
接
種
ス
ケ
ジ
ュ
ー
ル
図
5
に
基
づ
く
3歳 <1期初回>
*最優先
3歳 <1期初回>
*最優先
2期
平成32年度
1期・2期
平成33年度以降
4歳 <1期追加>
*1期初回相当の接種を
受けた者であれば優先
6歳 <1期>
*正確な情報提供
H21.10.2~H22.4.1
7歳 <1期>
*正確な情報提供
4歳 <1期追加>
9歳~13歳未満 <2期>
*接種間隔は接種医と相談
7歳 <1期>
*正確な情報提供
7歳 <1期>
*正確な情報提供
9歳~13歳未満 <2期>
*接種間隔は接種医と相談
9歳~13歳未満 <2期>
*接種間隔は接種医と相談
9歳 <2期>
*1期相当の接種を完了
した者であれば優先
H21.4.1~H21.10.1
図
6
に
基
づ
く
11歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
11歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
9歳 <2期>
*1期相当の接種を完了
した者であれば優先
12歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
12歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
9歳 <2期>
*1期相当の接種を完了
した者であれば優先
H19.4.2~H20.4.1
4歳 <1期追加>
6歳 <1期>
*正確な情報提供
6歳 <1期>
*正確な情報提供
H22.4.2~H23.4.1
4歳 <1期追加>
4歳 <1期追加>
H23.4.2~H24.4.1
H20.4.2~H21.4.1
1期
3歳 <1期初回>
*最優先
H29.4.2~H30.4.1
H26.4.2~H27.4.1
定期接種可能な期間
H18.4.2~H19.4.1
H17.4.2~H18.4.1
H16.4.2~H17.4.1
18歳に達する年度に、1期・2期
に関する正確な情報提供
H17.4.2~H18.4.1
H16.4.2~H17.4.1
H15.4.2~H16.4.1
H14.4.2~H15.4.1
18歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
19歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
18歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
19歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
20歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
18歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
19歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
20歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
20歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
H13.4.2~H14.4.1
H12.4.2~H13.4.1
図
7
に
基
づ
く
H11.4.2~H12.4.1
H10.4.2~H11.4.1
18歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
19歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
H9.4.2~H10.4.1
19歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
20歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
H8.4.2~H9.4.1
20歳 <1期・2期>
*正確な情報提供
【図 8】接種を優先すべき対象についての考え方に基づく各年度の接種について
-29-
(3)本道で定期接種を行った場合の需要と供給の見込み
人口動態調査を参考に、今後の年間出生数を一定と仮定すると、平成 28 年度に日本脳炎
の定期接種を受けることが可能な年齢層の人口は、特例接種対象者を含めて約 89 万 7 千人
と推計される。
(表 11)対象者全員が 4 回の定期接種を単年度で受けるものとすると、ワク
チンの必要数は延べ 358 万 8 千人分となる。これは、平成 25 年の乾燥細胞培養日本脳炎ワ
クチンの国内生産実績である 403 万 9 千人分の約 89%に相当し、接種可能な全ての人に接
種を勧めることは、全国的な供給不足を招くことが懸念される。なお、この場合の接種費用
は、接種単価 6,942 円で試算すると 249 億 789 万 6000 円となる。
一方、接種を優先すべき対象者についての考え方を踏まえ、最も優先すべき 3 歳になる
者の 90%が 1 期初回接種を受け、道内への転入者も考慮し、4 歳になる者、9 歳になる者の
5%がそれぞれ 1 期追加接種、2 期接種を受け、さらに、6 歳、7 歳(10 月 2 日生まれ以降)
になる者、18~20 歳になる者の 50%が初年度に 1 期初回接種 2 回を受けると仮定すると、
他の年齢層が全く接種しないとして、ワクチンは延べ 27 万 7 千人分が必要となる。この場
合の接種費用は、19 億 2293 万 4000 円となる。
これらのことから、本道において定期接種を開始する場合には、各年度に優先すべき対象
者が接種を受けることにより対象年齢層が順次免疫を獲得できるよう、市町村は、医療関係
者、保護者等の理解、協力を得ながら円滑に接種を進め、道は必要に応じて厚生労働省とワ
クチン供給に関する連携・調整を図ることが大切である。本委員会としても、当分の間、各
年度における接種者の状況、接種率等を把握するとともに、国の動向も注視しながら、必要
に応じて情報提供や技術的助言を行うことが望ましい。
(参考)平成 26 年ワクチンの基礎 ワクチン類の製造から流通まで(一般社団法人日本
ワクチン産業協会)
北海道における日本脳炎に係る定期の予防接種を実施することについての検討
(あっせん)平成 26 年 8 月 22 日付け総評相第 184 号総務省行政評価局長通知)
- 30 -
【表 11】 定期接種(特例接種含む)対象者数
平成27年度
生年月日
- 31 -
平成4年4月2日~平成5年4月1日
平成5年4月2日~平成6年4月1日
平成6年4月2日~平成7年4月1日
平成7年4月2日~平成8年4月1日
平成8年4月2日~平成9年4月1日
平成9年4月2日~平成10年4月1日
平成10年4月2日~平成11年4月1日
平成11年4月2日~平成12年4月1日
平成12年4月2日~平成13年4月1日
平成13年4月2日~平成14年4月1日
平成14年4月2日~平成15年4月1日
平成15年4月2日~平成16年4月1日
平成16年4月2日~平成17年4月1日
平成17年4月2日~平成18年4月1日
平成18年4月2日~平成19年4月1日
平成19年4月2日~平成20年4月1日
平成20年4月2日~平成21年4月1日
平成21年4月2日~平成21年10月1日
平成21年10月2日~平成22年4月1日
平成22年4月2日~平成23年4月1日
平成23年4月2日~平成24年4月1日
平成24年4月2日~平成25年4月1日
平成25年4月2日~平成26年4月1日
平成26年4月2日~平成27年4月1日
平成27年4月2日~平成28年4月1日
平成28年4月2日~平成29年4月1日
平成29年4月2日~平成30年4月1日
年齢または
月齢
22~23
21~22
20~21
19~20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
9~10
8~9
7~8
6~7
5~6
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
0~1
平成28年度
平成29年度
平成30年度
平成31年度
平成32年度
平成33年度
平成34年度
平成35年度
平成36年度
平成37年度
平成38年度
区域指定解除
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
9~10
8
9
7~8
7~8
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
~7歳6ヶ月未満
0
~6ヶ月
北海道
(4市含む)
1,206,340
52,684
1,195,035
50,907
1,235,553
52,251
1,183,716
49,601
1,203,313
49,656
1,194,510
48,988
1,202,743
48,645
1,184,302
46,745
1,178,829
46,341
1,171,081
46,359
1,144,492
45,758
1,124,755
44,983
1,099,477
43,256
1,064,003
41,563
1,091,323
42,181
1,092,319
41,294
1,085,384
40,873
539,597
20,128
530,093
19,917
1,067,299
40,038
1,047,945
39,225
1,030,249
38,291
38,291
38,291
38,291
38,291
38,291
全国
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
9~10
8
9
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
0~1
出生者数(4月~3月)人
口動態調査より
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
9~10
8
9
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
0~1
6ヶ月~
~6ヶ月
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12~13
11~12
10~11
9~10
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
6ヶ月~
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
0~1
接種対象外
定期接種対象
特例接種(予防接種施行令附則4など)
特例接種(予防接種実施規則附則第4条、第5条など)
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12
13
11~12
10~11
10~11
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
5~6
4~5
3~4
2~3
1~2
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12
13
11~12
11~12
10~11
9~10
8
9
29~30
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
12
13
12
13
11~12
10~11
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
5~6
4~5
3~4
2~3
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
5~6
4~5
3~4
30~31
29~30
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
13~14
13~14
12
13
11~12
10~11
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
:平成24年4月~平成25年3月までの出生者数と同じと仮定したもの
5~6
4~5
31~32
30~31
29~30
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
14~15
14~15
13~14
12
13
11~12
10~11
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
5~6
32~33
31~32
30~31
29~30
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
15~16
15~16
14~15
13~14
12
13
11~12
10~11
9~10
8
9
~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~ ~7歳6ヶ月 7歳6ヶ月~
33~34
32~33
31~32
30~31
29~30
28~29
27~28
26~27
25~26
24~25
23~24
22~23
21~22
20~21
19
20
18~19
17~18
16~17
16~17
15~16
14~15
13~14
12
13
11~12
10~11
9~10
8
9
5 その他流行に関連する事項
(1) 感染症流行予測調査によるブタ抗体保有状況
厚生労働省は、集団免疫の現況把握、病原体の検索等の調査を行い、各種疫学資料と併せ
て検討し、予防接種事業の効果的な運用を図り、さらに、長期的視野に立ち総合的に疾病の
流行を予測することを目的として、毎年度感染症流行予測調査を実施している。
本事業は、厚生労働省健康局結核感染症課が国立感染症研究所、都道府県、都道府県地方
衛生研究所等の協力を得て実施しているもので、ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎等の感
受性調査及び感染源調査が含まれる。この感染症流行予測調査の一環として、ブタの日本脳
炎ウイルス抗体保有状況を調査する感染源調査が実施されており、道は本調査に協力し、調
査を実施している。
ブタはヒトよりも日本脳炎ウイルスに対する感受性が高く、また、その約 8 割が食用ブ
タであるため生後 6~8 か月でと殺される。このため前年の日本脳炎流行期に感染を受けて
いない免疫のない若いブタが毎年日本脳炎ウイルスに感染し、わが国における日本脳炎ウ
イルスの主たる増幅動物となっている。ブタの飼育は全都道府県に亘って行われているの
で、ブタにおける感染状況がその地域の日本脳炎ウイルス蔓延可能性の指標となる。
この調査では、ブタの血清中の日本脳炎ウイルスに対する HI 抗体価を測定し、1:10 以
上の HI 抗体価を示すものを HI 抗体価陽性とし、1:40 以上の HI 抗体価を示した血清に
ついては、これが最近の感染による抗体であるか否かの判定のため、2-メルカプトエタノ
ール(2-ME)感受性抗体(IgM 抗体)の測定を行っている。ただし、北海道、東北地方
の各県では、HI 抗体を検出した場合は、1:10 以上の HI 抗体価抗体価の場合であっても 2
-ME 感受性抗体の測定を実施している。抗体調査を実施したブタのうち 1:10 以上の HI
抗体価陽性率が 50%を越え、かつ、2-ME 感受性抗体が検出された地域が日本脳炎に対し
て注意を促す地域とされている。
全国の調査結果(図 9)では、中部、関西、中国、四国、九州地方で HI 抗体陽性である
ブタの割合が高く、北海道及び東北地方ではその割合が低い傾向がある。
北海道は、感染症流行予測調査に昭和 43 年度から実施協力している。平成 26 年度は道
独自に検査するブタを 140 頭に増やして実施した。
昭和 60 年に 20 頭陽性、うち 11 頭が 2-ME 処理陽性となった後、2-ME 処理陽性を
示すブタが現れない期間があったが、平成 16 年以降、HI 抗体陽性を示すブタは 0~1 頭と
少ないものの、2-ME 陽性が検出されており、日本脳炎ウイルスやウイルスを媒介するコ
ガタアカイエカの存在可能性とともに検査年次における最近の感染が示唆される。(表 12)
また、昭和 59 年及び昭和 60 年に本道において日本脳炎によるブタの死流産の流行が認
められたと報告されている。この時の調査で札幌付近の地域で日本脳炎ウイルスが地域的
に集中して分布し、越冬する能力があることが示されている。
- 32 -
平成24年(2012年)
平成25年(2013年)
平成23年(2011年)
平成22年(2010年)
平成21年(2009年)
平成20年(2008年)
【図 9】感染症流行予測調査による全国のブタ日本脳炎抗体保有率(国立感染症研究所ホー
ムページより)
- 33 -
【表 12】 感染症流行予測調査による北海道のブタ日本脳炎抗体保有状況
1968年 1969年 1970年
昭和43年 昭和44年 昭和45年
699
697
696
1
1
4
698
696
692
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
実施頭数
HI抗体価陽性
HI抗体価陰性(10倍未満)
2ME処理陽性
2ME処理擬陽性
2ME処理陰性
2ME処理未実施
2ME処理不明
1971年 1972年 1973年 1974年 1975年 1976年 1977年 1978年 1979年 1980年
昭和46年 昭和47年 昭和48年 昭和49年 昭和50年 昭和51年 昭和52年 昭和53年 昭和54年 昭和55年
実施頭数
685
640
346
292
188
167
167
143
167
168
HI抗体価陽性
1
1
1
3
3
3
0
0
0
2
HI抗体価陰性(10倍未満)
684
639
345
289
185
164
167
143
167
166
2ME処理陽性
1
3
2ME処理擬陽性
2ME処理陰性
1
1
3
3
2ME処理未実施
2ME処理不明
2
1981年 1982年 1983年 1984年 1985年 1986年 1987年 1988年 1989年 1990年
昭和56年 昭和57年 昭和58年 昭和59年 昭和60年 昭和61年 昭和62年 昭和63年 平成元年 平成2年
実施頭数
140
140
140
140
140
140
140
140
140
140
HI抗体価陽性
0
0
0
0
20
0
2
0
0
0
HI抗体価陰性(10倍未満)
140
140
140
140
120
140
138
140
140
140
2ME処理陽性
11
2ME処理擬陽性
2ME処理陰性
9
2ME処理未実施
2ME処理不明
2
1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年
平成3年 平成4年 平成5年 平成6年 平成7年 平成8年 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年
実施頭数
140
140
140
140
100
100
100
100
100
100
HI抗体価陽性
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
HI抗体価陰性(10倍未満)
140
140
140
140
100
99
100
100
100
99
2ME処理陽性
2ME処理擬陽性
2ME処理陰性
1
2ME処理未実施
1
2ME処理不明
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年
実施頭数
100
100
100
110
80
70
70
70
70
70
HI抗体価陽性
0
0
0
1
1
1
0
1
1
0
HI抗体価陰性(10倍未満)
100
100
100
109
79
69
70
69
69
70
2ME処理陽性
1
1
1
1
1
2ME処理擬陽性
2ME処理陰性
2ME処理未実施
2ME処理不明
2011年 2012年 2013年 2014年
平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
実施頭数
70
70
70
140
HI抗体価陽性
0
1
0
0
HI抗体価陰性(10倍未満)
70
69
70
140
2ME処理陽性
2ME処理擬陽性
1
2ME処理陰性
2ME処理未実施
2ME処理不明
- 34 -
(参考)平成 23 年度感染症流行予測調査報告書(平成 26 年 3 月厚生労働省健康局結核感
染症課・国立感染症研究所感染症疫学センター)
Ikuo Takashima, Takutoshi Watanabe, Naoto Ouchi,and Nobuo Hashimoto (1988).
Ecological studies of Japanese encephalitis virus in hokkaido:
Interepidemic outbreaks of swine abortion and evidence for the virus To
Ovwrwinter locally. Am. J. Trop. Med. Hyg.,38(2), 1988, pp.420-427(87-214)
- 35 -
(2)媒介蚊の生息状況等
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを媒介する蚊が日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸
血し、その後ヒトを刺すことにより起こる。日本では主にコガタアカイエカが日本脳炎ウ
イルスを媒介するといわれる。また、Takashima&Rosen の実験によれば、ヤマトヤブカ、
キンイロヤブカ、アカイエカにも日本脳炎ウイルスの感受性があり、更にはヤマトヤブカ
では日本脳炎ウイルスをマウスに感染させうることが確認されている。
コガタアカイエカは、北海道立衛生研究所が近年実施した都市部を中心とした人刺咬
性蚊類相の調査(表 13)では道内では生息が確認されていないが、1960 年代までは道内
の広い地域で生息が確認されている。
また、道内に生息しているヤマトヤブカは、日本脳炎ウイルスを混じた血液や日本脳炎
ウイルス血症を起こしたヒヨコから吸血した後、乳飲みマウスに日本脳炎ウイルスを感
染させる能力を有すること及び雌成虫からその子に日本脳炎ウイルスを垂直伝播させる
能力を有することがわかっている。
【表 13】都市部における蚊相(北海道立衛生研究所平成 23 年~平成 25 年度一般研究「都
市部を中心としたヒト刺咬性蚊類相の調査」より)
蚊の種類と構成比(%)
札幌市北区
札幌市西区
札幌市中央区
釧路
七飯
合計
ヤマトヤブカ*
23.0
67.1
51.4
35.4
5.9
28.5
キンイロヤブカ*
68.8
11.8
9.2
13.4
アカイエカ*
3.5
16.5
15.5
6.7
ハマダライエカ
3.8
4.7
9.9
シロカタヤブカ*
0.1
12.0
シナハマダラカ類*
0.8
1.4
キンパラナガハシカ*
54.6
11.8
5.5
82.4
4.6
1.0
0.5
0.8
0.7
ヤマトハボシカ
0.1
19.1
2.2
セスジヤブカ属の一種*
3.8
0.4
セスジヤブカ*
0.5
0.1
19.1
2.2
アカエゾヤブカ*
1.0
0.1
コガタキンイロヤブカ*
0.5
0.1
エゾヤブカ*
採集個体数(個体)
1376
85
142
209
17
1829
蚊トラップによる定点採集で得られた 1829 個体の中にコガタアカイエカは含まれていなかった(なお、
個体数の少ない種類の採集を主な目的としたボウフラ調査や灯火採集でも採れなかった)
*を付した種はヒト刺咬性種
- 36 -
平成 26 年、北海道立衛生研究所、岩見沢保健所、深川保健所の協力により、コガタア
カイエカが発生する水田が多くある地域の蚊の捕獲分類調査が行われた(表 14)
。調査の
結果、コガタアカイエカの生息は確認されなかった。また、今回の調査でもヤマトヤブカ
の生息は確認された。同年、北海道立衛生研究所が、本道に生息する蚊の日本脳炎ウイル
ス保有状況調査を実施したが、本道に生息する蚊からは日本脳炎ウイルスは検出されな
かった。
(表 15)
各種病原体の人及び家畜への伝播を正しく評価するために、野外蚊集団内の病原体保
有状況や、現在の流行株に対する情報の蓄積が必要であるとの観点から行われた調査の
一環として、コガタアカイエカの海外からの移動とその後の国内各地への移動と分散を
評価することを目的として、新潟県佐潟周辺の豚舎におけるコガタアカイエカの捕集成
績に関し詳細な気象解析を実施した研究によると、コガタアカイエカが長時間飛翔可能
であるとの過去の報告や気象条件から、国内外から新潟県佐潟に飛来侵入した可能性が
指摘されている。
【表 14】水田の多い地域における蚊相(北海道立衛生研究所平成 26 年調査)
蚊の種類と構成比(%)
岩見沢市
深川市
シナハマダラカ類
18.3
67.1
アカイエカ
36.6
1.5
ハマダライエカ
43.0
31.4
ヤマトヤブカ
1.1
0.0
キンイロヤブカ
1.1
0.0
採集個体数
93
331
【表 15】本道の蚊の日本脳炎ウイルス保有状況(北海道立衛生研究所平成 26 年調査)
- 37 -
種類
採集場所
札幌市西区
ヤマトヤブカ
札幌市北区
八雲町熊石
キンイロヤブカ
チシマヤブカ
トカチヤブカ
キタヤブカ
エゾヤブカ
アカイエカ
ハマダライエカ
紋別市沼の上
札幌市北区
富良野市布部
由仁町川端
天塩町中更岸
紋別市沼の上
札幌市北区
札幌市北区
合計
ステージ
幼虫
蛹
成虫
幼虫
蛹
成虫
幼虫
成虫
成虫
蛹
蛹
成虫
成虫
成虫
個体数
プール数
100
6
20
2
43
4
72
4
29
2
7
1
16
2
70
7
16
2
33
2
80
4
10
1
9
1
12
2
517個体
40プール
日脳PCR結果
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
陰性
方法
1.種類・ステージごとにそれぞれ成虫10個体, 幼虫・蛹20個体を最大としてプール
2.プールごとにIsogen IIでRNAを抽出
3.日本脳炎ウイルスE遺伝子領域を標的としたプライマーペア(JEen37s-first, JEen329c-first)にてRT-PCR
4.その内側にアニーリングする別のプライマーペア(JEen98s-second, JEen301c-second)にてNested PCR
5.電気泳動にて標的サイズの増幅産物の有無をもってPCR結果とした
文献:Kuwayama, M. et al. 2005. Japanese Encephalitis Virus in Meningitis Patients,
Japan. Emerging Infectious Diseases, www.cdc.gov/eid, Vol. 11, No. 3
(参考)Ikuo Takashima and Leon Rosen,(1989). Horizontal and vertical transmission
of encephalitis virus by Aedes japonicas(diptera:culicidae) J. Med.
Entomol. 26(5):454-458
上村清 (1968). 日本における衛生上重要な蚊の分布と生態 衛生動物 vol. 19
No.1
田中淳・井川穣・齊藤哲也・山内健生・渡辺護・澤邉京子(2013). 気象解析に基づ
く日本脳炎ウイルス媒介蚊コガタアカイエカの移動と分散に関する研究 厚生労
働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)
(H24-新興-一般-007)平成 24
年度分担研究報告書
- 38 -
(3)気温の経年変化
地球温暖化による媒介動物の生息域、活動の拡大に伴う動物媒介性感染症の増加が懸
念されている。日本脳炎は、温暖化により媒介蚊の生息域が拡大し、蚊の活動が盛んにな
れば日本脳炎の発生域が拡大し、患者数が増加することが懸念される感染症のひとつで
ある。
(環境省「地球温暖化と感染症」より)また、日本において将来予測される感染症
への地球温暖化影響の一つとして、日本脳炎媒介蚊の日本脳炎の本道への発生拡大が懸
念されている。
約 100 年間の本道の平均気温の変化は図 10 のとおりである。札幌観測地点では都市化
の影響により特に平均気温の上昇が大きい。都市化などによる環境の変化が比較的少な
いとされる網走、根室、寿都観測地点でも平均気温の上昇が見られる。
<網走>
℃
14
12
12
10
10
8
8
6
6
2
0
0
1890
1897
1904
1911
1918
1925
1932
1939
1946
1953
1960
1967
1974
1981
1988
1995
2002
2009
2
-2
<寿都>
℃
14
1880
1887
1894
1901
1908
1915
1922
1929
1936
1943
1950
1957
1964
1971
1978
1985
1992
1999
2006
2013
4
4
<札幌>
16
14
12
10
8
6
4
2
0
12
10
8
6
4
2
1885
1892
1899
1906
1913
1920
1927
1934
1941
1948
1955
1962
1969
1976
1983
1990
1997
2004
2011
0
1886
1893
1900
1907
1914
1921
1928
1935
1942
1949
1956
1963
1970
1977
1984
1991
1998
2005
2012
℃
<根室>
【図 10】本道の平均気温の変化(気象庁ホームページより)
気象庁の地球温暖化予測情報第 8 巻(平成 25 年)によると、21 世紀末には 20 世紀末
と比較して、年平均気温は各地で 3℃程度の上昇がみられるが、北日本の上昇は 3℃を越
えるとされている。オホーツク海の海氷が減少することを反映して、春と冬にオホーツク
海で大きな気温上昇が見られ、その影響を受け、本道の一部で特に大きな上昇を示すと予
測されている。
(図 11)
- 39 -
平均気温 最高気温 最低気温
【図 11】21 世紀末の気温の予想(20 世紀末と比較)
(気象庁地球温暖化予測情報第 8 巻よ
り)
(参考)倉根一郎
(2009). 感染症への地球温暖化影響 Airies:279-283
- 40 -
(4)本道の修学旅行
道民が日本脳炎ウイルスに感染する機会として、道内に生息する媒介蚊による感染の
ほか、道外での感染の機会が考えられる。蚊が媒介する感染症であるデング熱については
平成 26 年に 60 年以上発生がなかった国内感染による流行がみられ、国内外の人の移動
に伴い、これまでとは異なる新たな感染症の発生状況が懸念されている。道内に居住する
住民が、東京方面への旅行の際にデング熱に感染した事例も発生しており、同様に日本脳
炎の定期予防接種を本道で行うか検討するためには、道外での感染の機会について考慮
することが必要である。
日本脳炎定期予防接種については、2 期まで接種が完了していれば、中学卒業の頃まで
は追加接種は不要とされるが、成人になるとワクチンによる抗体価は低下し、発症防御効
果のある抗体価を十分に持続するためには、4~5 年毎の接種が推奨されている。
日本脳炎定期予防接種により日本脳炎の発症阻止が期待できる年代の者が、道外の地
域に赴く機会として修学旅行がある。
公益財団法人全国修学旅行研究協会によると、調査対象となった本道の高校のうち、平
成 18~24 年度に日本脳炎患者の発生がある海外の地域への修学旅行を行ったのは 4.4~
10.6%であり(図 12)、その修学旅行に参加した高校生徒は 1.9~5.8%となっている。
(図
13)また、本道の公立高校の生徒で、平成 17~24 年度に西日本への修学旅行に参加した
のは 67.7~76.4%である。
(図 14)本道の高校生のうち 7~8 割が日本脳炎患者の発生が
ある海外の地域または西日本への修学旅行に参加している。
70
10.6%
60
50
12.0%
9.8%
10.3%
10.0%
24
20
40
8.8%
22
4.4%
30
20
10.0%
8.4%
15
18
17
8.0%
6.0%
4.0%
35
32
33
10
9
26
30
26
22年度
23年度
24年度
2.0%
14
0
0.0%
18年度
19年度
20年度
21年度
日本脳炎のリスクがない地域への修学旅行を実施した高校数
日本脳炎のリスクがある地域への修学旅行を実施した高校数
日本脳炎のリスクがある地域への修学旅行を実施した高校の割合
(リスクがある地域への修学旅行実施高校数÷調査対象高校数)
【図 12】海外への修学旅行を実施した道内の高校数(公益財団法人全国修学旅行研究
会ホームページより)
- 41 -
6,000
5,000
4,000
5.5%
1,987
3,000
2,000
1,000
3,048
5.5%
5.6%
1,405
1,460
2,781
2,807
7.0%
5.8%
4.7%
1.9%
1,003
772
6.0%
4.9%
5.0%
4.0%
872
1,185
2,745
2,249
2,208
22年度
23年度
24年度
3.0%
2.0%
1.0%
942
0
18年度
19年度
20年度
0.0%
21年度
日本脳炎のリスクがない地域への海外修学旅行に参加した高校生徒数
日本脳炎のリスクがある地域への海外修学旅行に参加した高校生徒数
日本脳炎のリスクがある地域への修学旅行に参加した高校生徒割合
(リスクがある地域への修学旅行参加生徒数÷調査対象高校生徒数)
【図 13】海外への就学旅行に参加した道内の高校生徒数(公益社団法人全国修学旅行
研究会ホームページより)
道内公立高校生の西日本修学旅行者数
60000
76.2%
50000
41696
40000
30000
20000
76.4%
34700
29100
75.1%
78.0%
75.8%
50858
43161
76.0%
40035
35900
74.0%
72.0%
71.9%
68.6% 27212
68.4%
70.0%
68.0%
67.7%
66.0%
10000
64.0%
0
62.0%
17
18
19
20
21
22
23
24
【図 14】道内公立高校生の西日本への修学旅行者数(公益社団法人全国修学旅行研究
会ホームページより)
本道の公立中学校の生徒は、平成 18~22 年度までは、ほとんど(96.2~97.5%)が東
北地方への修学旅行に参加しており、西日本への修学旅行の参加者はごく少数(0.3~
0.6%)であったが、東日本大震災後は、平成 23 年度は 60.5%、平成 24 年度は 10.5%の
生徒が日本脳炎患者の発生がある西日本への修学旅行に参加している。(図 15)
- 42 -
道内公立中学生の西日本修学旅行者数
2360
2500
70.0%
60.0%
2000
60.5%
1500
1503
50.0%
40.0%
30.0%
1000
20.0%
500
0
208
0.6%
100
18
19
0.3%
200
0.6%
200
20
21
200
0.5%
10.5%
0.5%
22
23
10.0%
0.0%
24
【図 15】道内公立中学生の西日本への修学旅行者数(公益社団法人全国修学旅行研究
会ホームページより)
(参考)平成 26 年予防接種に関するQ&A集(一般社団法人日本ワクチン産業協会)
- 43 -
(5)本道の転出者・転入者数
本道から他都府県へ転出する者及び他都府県から本道へ転入する者の数は、住民基本
台帳人口移動報告によると図 16 及び図 17 のとおりである。本道から転出する者は、昭
和 45 年の道民の 12.2%となり、ピークとなっているが、このうち、日本脳炎患者の発生
がある関東以西に転出した者は昭和 45 年の道民の 10.9%である。平成 17~21 年に本道
から転出した者の数は平成 17 年の道民の 6.2%であり、このうち関東以西に転出した者
は平成 17 年の道民の 5.5%である。他都府県から本道へ転入する者は、昭和 46~昭和 50
年に昭和 50 年の道民の 8.0%となり、ピークとなっている。また、平成 18~22 年に本道
に転入した者は平成 22 年の道民の 4.6%である。
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
東北地方
関東地方
中部地方
近畿地方
中国地方
四国地方
九州・沖縄
総計
(各 5 年間に本道から他都府県に転出した者の数が各 5 年間の始めの年の道民の数(国勢調査より)に占める割合
【図 16】 本道から道外へ転出した者の割合(住民基本台帳人口移動報告より)
10%
8%
6%
4%
2%
0%
東北地方
中国地方
関東地方
四国地方
中部地方
九州・沖縄地方
近畿地方
総計
(各 5 年間に他地方から本道に転入した者の数が各 5 年の最後の年の道民の数(国勢調査より)に占める割合)
【図 17】道外から本道に転入した者の割合(住民基本台帳人口移動報告より)
- 44 -
国勢調査によると年齢毎の本道の転出入者は図 18 及び図 19 のとおりである。本道か
ら他都府県へ転出する者の割合は、20~24 歳、25~29 歳が高く、次いで 30~34 歳が高
くなっている。平成 17 年当時、日本脳炎定期予防接種対象の年齢が含まれる 0~14 歳で
本道に居住していた者のうち 5 年後の平成 22 年の国勢調査実施時に道外に転出していた
者の割合は 3.4%、また日本脳炎患者の発生がある関東以西に転出していた者の割合は
3.0%である。
他都府県から本道へ転入する者の割合は 20~24 歳、25~29 歳が高く、次いで 30~34
歳が高くなっている。
16.00%
14.00%
12.00%
10.00%
8.00%
6.00%
4.00%
2.00%
平成2年
平成12年
85歳以上
80~84歳
75~79歳
70~74歳
65~69歳
60~64歳
55~59歳
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
20~24歳
15~19歳
10~14歳
5~9歳
0.00%
平成22年
平成 2 年は昭和 60 年、平成 12 年は平成 7 年、平成 22 年は平成 17 年の各年齢クラス別本道人口に占める割合
平成2年
平成12年
85歳以上
80~84歳
75~79歳
70~74歳
65~69歳
60~64歳
55~59歳
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
20~24歳
15~19歳
5~9歳
9.00%
8.00%
7.00%
6.00%
5.00%
4.00%
3.00%
2.00%
1.00%
0.00%
10~14歳
【図 18】他都府県に常住する者で 5 年前に本道に常住していた者の割合(年齢区分別)
(国勢調査より)
平成22年
各年齢クラス別道内人口に占める割合
【図 19】本道に常住する者のうち 5 年前には他都府県に常住していた者の割合(年齢区
分別)
(国勢調査より)
- 45 -
6 本道における日本脳炎定期予防接種の取扱いについて
(1) これまでの取扱いについて
平成 7 年に日本脳炎が定期予防接種として開始されてから、北海道知事は予防防接種法
及び予防接種法施行令に基づき道全域を日本脳炎に係る予防接種を行う必要がないと認め
られる区域として指定してきた。道は知事の区域指定の判断にあたって、北海道感染症危
機管理対策協議会及び感染症流行調査専門委員会を設けて専門家の意見を聴取している。
北海道感染症危機管理対策協議会及び感染症流行調査専門委員会では、道内で日本脳炎
患者の発生がないこと、流行予測調査でブタの日本脳炎抗体保有率が低く、大きな変化が
見られないことを理由に区域指定を継続するべきとの見解を出し、道がこれを参考として
区域指定を継続してきた。
平成 25 年度、北海道議会において本道における日本脳炎定期予防接種の取扱いについ
て議論され、区域指定継続の可否について検討を行うよう意見があったことなどか
ら、道ではより幅広い見地を得るため、北海道感染症流行調査専門委員会の委員を増やし、
平成 26 年 2 月及び 7 月に委員会を開催した。委員会では、委員から、
「発症したら重篤で
あることを考えると、予防する方法として予防接種が有効ならばするべき」
、
「社会的な人の
移動が相当数あり、本道の方も感染するリスクがある」などの意見が述べられ、委員会で本
道における定期接種化に関する考え方を報告書として取りまとめて道へ提出することとし
た。
また、総務省に対し、道外から道内へ転入した者から、国内全ての市町村で日本脳炎の予
防接種を無料で実施してほしいとの申出があり、この申出について行政苦情救済推進会議
において検討された結果、平成 26 年 8 月 22 日、厚生労働省健康局長あて、予防接種法第
5 条第 2 項の規定に基づき予防接種法施行令第 2 条において日本脳炎を規定していること
の是非について、厚生科学審議会において調査審議することが適当である旨のあっせんが
なされた。これを受け、厚生労働省では厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会及び当該
分科会予防接種基本方針部会において審議が行われた。審議の結果、部会では、予防接種の
必要性の判断は、地域の実情において各自治体の責任で行われるべきであり、予防接種法の
規定自体については、現在の状況においては見直す必要はないとされたが、委員からは都道
府県域を越えた異動が頻繁に行われる現在、予防接種の必要性については、接種すべきとい
う意見が多く出され、最終的には知事の判断であるとされた。また、分科会でも部会と同様
の結論とする旨総括された。
(2) 今後の取扱いについて
これまで述べたとおり、感染症流行予測調査で僅かではあるが日本脳炎抗体を保有する
ブタが存在すること、新潟県佐潟周辺で行われた蚊の捕獲調査で国内外から飛来侵入した
可能性が指摘されていることなどコガタアカイエカが長時間飛翔可能との報告、温暖化に
より日本脳炎媒介蚊の生息域が拡大する懸念があることから、今後、道内でも日本脳炎に感
- 46 -
染する可能性は高まるものと考えられる。
また、定期予防接種を受けることにより日本脳炎の発症阻止が期待できる年代である中
学生、高校生が修学旅行で患者が発生している西日本や外国に行っていること及び北海道
から他都府県に転出する者が一定程度いることから、道民が道外で日本脳炎に感染する可
能性も指摘される。
このように道民が道内外で日本脳炎に感染し発症する可能性がある中、日本で使用され
るワクチンはマウス脳由来ワクチンから乾燥細胞培養ワクチンに切り替わり安全性が高
まっており、他のワクチンと比較しても死亡や重篤等の発生頻度は特に高いと言えず、本道
で日本脳炎の定期予防接種を行った場合に発生する副反応は、他の疾病の定期予防接種に
より発生する副反応と比べ、発生頻度は大きく違わないことが予想される。
過去に麻しん・おたふくかぜ・風しん混合(MMR)ワクチンのおたふくかぜ成分による
無菌性髄膜炎の発生頻度等が社会的に大きな問題となり、国民の予防接種に対する懸念は
解消されず、国内のワクチンの開発が停滞するとともに、定期の予防接種の対象疾病の追加
がほとんど行われない状況が続き、その結果、WHOが推奨しているワクチンの一部が法の
対象となっておらず、他の先進諸国と比べて我が国では公的に接種するワクチンの数が少
ない等、いわゆる「ワクチン・ギャップ」が生じてきたことを踏まえ、今後の予防接種に関
する中長期的なビジョンを示す、
「予防接種に関する基本的な計画」が平成 26 年 3 月 28 日
告示された。この計画の中で、予防接種は、疾病予防という公衆衛生の観点及び個人の健康
保持の観点から、社会及び国民に大きな利益をもたらしてきた一方、極めてまれではあるが
不可避的に生ずる予防接種の副反応による健康被害をもたらしてきたことについての十分
な認識を踏まえ、国民の予防接種及びワクチンに関する理解と認識を前提として、我が国の
予防接種施策の基本的な理念は「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」とされ、
また、被接種者及びその保護者は、予防接種による感染症予防の効果及び副反応のリスクの
双方に関する正しい知識を持った上で自らの意志で接種することについて、十分に認識し、
理解する必要があるとされている。
日本脳炎は発症すると死亡率が高く、症状が現れた時点で既に脳細胞を破壊しており、治
癒しても精神神経学的後遺症が残り、予後は 30 年前と比較して、死亡例は減少したが全治
例が約 3 分の 1 と過去からほとんど変化していないことから、治療の難しさが明らかであ
り、予防が最も大切な疾患である。道内で患者が発生してからでは手遅れである。我が国の
「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」との予防接種施策の基本的な理念に則
り、今後の本道における日本脳炎の発生及び道民の日本脳炎の発症を予防するため、本道に
おいてもできるだけ早期に日本脳炎定期予防接種を行うべきであると考える。
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北海道感染症危機管理対策協議会設置要綱
(目的)第1条 緊急時における感染症の予防対策及び感染症の流行に係る情報を収集・分析し、協
議を行うため、北海道感染症危機管理対策協議会(以下「協議会」という。
)を設置する。
(協議事項)第2条 協議会は、次の事項を協議するものとする。
(1)感染症危機管理についての企画・立案に関すること。
(2)感染症の流行に係る情報収集・提供に関すること。
(3)感染症予防対策に関すること。
(4)その他必要な事項。
(協議会委員)第3条 協議会の委員は、次に掲げる者の中から知事が委嘱又は任命する。
(1)学識経験者
(2)医療関係者
(3)関係行政機関及び団体の職員
(4)その他必要と認める者
2 委員の任期は3年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠委員の任期は前任者の残任期
間とする。
(会長、副会長)第4条 協議会に会長及び副会長を置く。
2 会長及び副会長は委員が互選した者を持って充てる。
3 会長は協議会を代表し、会務を総理する。
4 副会長は会長を補佐し、会長に事故ある時は、副会長がその職務を代理する。
(会議の招集)第5条 協議会は、必要の都度、会長が招集する。
2 協議会は、過半数の委員が出席しなければ、会議を開くことができない。ただし、やむを得ない理
由がある場合があるときは、この限りではない。
(専門委員会)第6条 この協議会に、感染症流行調査専門委員会を置く。
2 前項の専門委員会の他に、会長が必要と認めた事項について協議する専門委員会を置くこ
とができる。
3 専門委員会の委員は、第3条の協議会の委員をもって充てる。ただし、専門的な事項に関し、必
要な場合は、会長の指名に基づき、知事が委嘱又は任命する。
(事務局)第7条 この協議会の事務局は、北海道保健福祉部健康安全局地域保健課内に置く。
(その他)
第8条 本協議会は、平成26年4月1日から起算して2年を経過するごとに、社会経済情勢の変化や
開催実績等を勘案し、協議会の常設の必要性や効率的な開催方法の見直し等について検討を加え、
その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(会長への委任)
第9条 この要綱に定めるものの他、協議会の運営に関し必要な事項は、会長が協議会に諮って定め
る。
附 則
この要綱は、平成10年12月25日から施行する。
この要綱は、平成15年 8月27日から施行する。
この要綱は、平成18年 5月16日から施行する。
この要綱は、平成19年 3月29日から施行する。
この要綱は、平成21年
この要綱は、平成22年
この要綱は、平成24年
この要綱は、平成26年
4月17日から施行する。
4月19日から施行する。
4月20日から施行する。
4月 1日から施行する。
感染症流行調査専門委員会運営要領
(目 的)
第1条 感染症の発生状況に関する情報を収集し、分析し、及び調査し、又はこれに基づいて感染症の
流行予防のための情報の提供、助言をするために、北海道感染症危機管理対策協議会設置要綱第6
条に基づいて設置する感染症流行調査専門委員会(以下「専門委員会」という。
)の運営に関し、必
要な事項を定める。
(協議事項)第2条 専門委員会は次の事項について協議する。
(1)感染症の流行調査に関すること。
(2)感染症予防のための情報提供及び予防接種に関すること。
(3)その他必要な事項。
(委 員)
第3条 委員の任期は3年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠委員の任期は前任者の残任
期間とする。
(委員長)第4条 専門委員会に委員長を置く。
2 委員長は、委員が互選した者を持って充てる。
3 委員長は、専門委員会を代表し、会務を総理する。
4 委員長に事故ある時は、あらかじめ委員長が指名する委員がその職務を代理する。
(会 議)
第5条 専門委員会は、必要の都度、委員長が招集する。
2 専門委員会は、過半数の委員が出席しなければ、会議を開くことができない。ただし、やむを得な
い理由がある場合があるときは、この限りではない。
(事 務)
第6条 この専門委員会の事務は、北海道保健福祉部健康安全局地域保健課が行う。
(その他)
第7条 本委員会は、平成26年4月1日から起算して2年を経過するごとに、社会経済情勢の変化や
開催実績等を勘案し、委員会の常設の必要性や効率的な開催方法の見直し等について検討を加え、
その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附 則
この要領は、平成10年12月25日から施行する。
この要領は、平成15年 8月27日から施行する。
この要領は、平成18年 5月16日から施行する。
この要領は、平成19年 3月29日から施行する。
この要領は、平成21年 4月17日から施行する。
この要領は、平成22年 4月19日から施行する。
この要領は、平成24年 4月20日から施行する。
この要綱は、平成26年 4月 1日から施行する。
編集委員
(北海道感染症危機管理対策協議会感染症流行調査専門委員会)
委員長
堤 裕幸 (札幌医科大学 教授)
委 員
東 寛
委 員
岡野 素彦(北海道立衛生研究所 所長)
委 員
杉澤 孝久(旭川市保健所 所長)
委 員
髙橋 聡 (札幌医科大学 准教授)
委 員
田森 啓介(札幌市保健福祉局保健所 医療担当部長)
委 員
築島 恵理(北海道保健福祉部健康安全局地域保健課 医療参事)
委 員
三戸 和昭(一般社団法人北海道医師会 常任理事)
委 員
宮田 淳 (札幌市立衛生研究所 所長)
委 員
山本 長史(北海道帯広保健所 所長)
(旭川医科大学 教授)
事務局
北海道保健福祉部健康安全局地域保健課