新学術創成研究機構 革新的統合バイオ研究コア セルバイオノミクス

新学術創成研究機構
革新的統合バイオ研究コア
セルバイオノミクスユニットセミナー
「神経修飾に関わる単一ペプチドニューロンにおける
ペプチド輸送〜開口放出〜回路修飾過程を可視化する」
阿部
秀樹
先生
名古屋大学大学院生命農学研究科水圏動物学研究分野
日時:平成
28 年 3 月 2 日(水)16:00〜17:00
場所:金沢大学角間キャンパス自然科学本館(講義棟)
3 階 301 講義室
内外の環境変化に適応して様々な行動を制御している、神経系を構成する個々のニューロンは、
他からの入力を統合して活動電位を発生すると神経終末から神経伝達物質を放出して情報を次の
細胞へ伝えている(神経伝達)。神経系には更に内外の変化に応じて緩徐かつ持続的に神経伝達
効率やニューロンの電気的興奮性を調節するしくみ(神経修飾)が存在し、その多くは脳内に存
在する多様なペプチドニューロンによって担われている。神経修飾ペプチドはニューロンの興奮
に応じてどこからどのように放出され、その結果どのように標的神経回路を修飾するのだろう
か?この疑問を明らかにしたいのだが一般にペプチドニューロンは脳内で散在しており、またシ
ナプス電流として計測可能な神経伝達と異なりペプチド受容体はGPCRであるため、単一ニューロ
ンからのペプチド放出を直接測定することはこれまで極めて困難であった。
魚類において最も発達している性行動の動機付けや配偶者選択に関わる終神経(TN)-ゴナドトロ
ピン放出ホルモン(GnRH3)産生ニューロンとよばれるペプチドニューロンは、脳内で明瞭な細
胞塊を形成している。演者はこのTN-GnRH3ニューロンの形態的特徴を生かしてペプチドニュー
ロンの細胞生理学的研究のモデルとし、脳内情報処理機構の中でペプチド神経修飾が占めるアル
ゴリズムの全貌を明らかにすることを目指して研究を進めている。本セミナーでは演者らが近年
作出したTN-GnRH3ニューロンの形態・発火特性を生体外で平面上に再構成させた分散培
養 系 と 、 単 一 細 胞 エ レ ク ト ロ ポ レ ー シ ョ ン 法 に よ っ て 培 養TN-GnRH3ニ ュ ー ロ ン に 導
入・発現させた開口放出センサータンパク質等のライブセルイメージング系を用いることで
得 ら れ つ つ あ る 知 見 を紹 介 す る 。 こ の 実 験 系ほ か を 用 い る こ と で 単一 ペ プ チ ド ニ ュ ー ロ
ン か ら の ペプチド開口放出と放出されたペプチドによる傍分泌的神経回路修飾についてどこま
で明らかにすることが出来るか、その可能性と限界について議論したい。
連絡先: 理工学域・自然システム学系・生物学コース 木矢 剛智
TEL:076-264-6248, E-mail:[email protected]