Microsoft Office の落日

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別冊
Microsoft Office の落日
新興勢力 vs. 従来型ベンダー
圧倒的なインストールベースを誇る Microsoft Office の地位は、果たして盤石なのか。
捨て身の戦術でシェア獲得に乗り出した Google、Microsoft Office を閉め出したイタリア
政府の動きは、Microsoft Office にどのような影響を及ぼすのだろうか。
目次
Office 2016 の出ばなをくじいた Microsoft の失敗
Microsoft の収益源になると見られている Office 2016。クラウドベースのコラボレーション機能
を前面に押し出すが、いきなりある失敗を犯した。同社はこの汚名を返上できるのか?
Office 365 打倒に燃える Google のなりふり構わぬ「無償」作戦
敵は世界で最も導入されているクラウドアプリ「Office 365」
。Office 365 をこの座から引きずり
下ろすため、Google が大胆な戦略を発表。
「Google Apps for Work」へ移行する企業は増えるの
か?
「プロプラはダメ」イタリア国防省の LibreOffice 採用でオープンソース利用が加速
イタリア国防省が、15 万台の PC で Microsoft Office から LibreOffice へのリプレースを決定。プ
ロプライエタリ製品の利用を事実上禁じる法律によって、公共機関のオープンソース利用が拡大し
ている。
「別冊 Computer Weekly」は、これまでに公開したコンテンツを特定のテーマにまとめて再編集したものです。
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日
Office 2016 の出ばなをくじいた
Microsoft の失敗
Microsoft の収益源になると見られている Office 2016。クラウドベースのコラボレーション機能を前
面に押し出すが、いきなりある失敗を犯した。同社はこの汚名を返上できるのか?
(初出:Computer Weekly 日本語版 2015 年 11 月 18 日号)
Cliff Saran
米 Microsoft の「Office 2016」は、同社がソフ
Computer Weekly のインタビューに応じて、次
トウェアメーカーとして大きく方針転換したこ
のように語っていた。
「現在われわれは方向転換
とを示す製品だ。
「Windows 10」は、2016 年 7
を図っている。これまでは機能をたくさん提供
月までという条件で既存バージョンのユーザー
してきたが、今後はユーザーが使いたい機能を、
に無償アップグレードを提供しているので、
必要なときにタイムリーに提供するところに力
Office 2016 が Microsoft にとって大きな収入源
を入れる」
となる。
Microsoft は、
(多くの批判を集めた過去があっ
Microsoft の 2014 年度決算報告によると、
ても)なお新機能追加の意義をユーザーに訴え
Office はコンシューマーからの収益が 2 億 4300
る課題に直面している。また同時に、他社製品
万ドル(8%)減少したという。この原因として
との戦いもある。例えば米 Google のエンタープ
同社は、顧客が「Office 365」に移行した上に、
ライズ製品である「Google for Work」やオープ
コンシューマー向け PC 市場の軟調が続いてい
ンソースの Office スイート「LibreOffice」が挙
ることも影響したと分析している。一方、コン
げられる。
シューマー向け Office 365 の収益は 3 億 1600
万ドルの増収。サブスクリプションへの移行が
そのまま反映された形になったと、Microsoft は
報告書に記載している。同社の報告書には「当
社は 2014 年会計年度末の時点で、500 万人超の
利用者を獲得した」という記述もある。
議論の余地はあるが、これらの競合製品の機
能は Microsoft Office ほどは充実していない。た
だ、その程度で十分間に合うと考えるユーザー
もいる。
コラボレーション機能の改善
他方、Office の最新リリースに盛り込まれた
サブスクリプションモデルに移行したので、
バージョンアップ時に新機能をアピールする必
要性は以前よりも少なくなった。加えて、Office
製品はアップデートのたびに機能が追加され続
け、もはやユーザーが望んでもいない機能まで
プリインストールイメージに盛り込まれた「ブ
ロートウェア」(肥大化したソフトウェア)に
なっているという批判が高まっていた。
2014 年、Microsoft の Office 担当ゼネラルマ
ネジャー、ジュリア・ホワイト氏は本誌
新機能の 1 つに、
「Office 365 Planner」がある。
Microsoft の説明によると、これはチームでの共
同作業を支援するもので、新しいプランの立案、
タスクの管理と役割分担、タスク期日の設定や
ステータスの更新を視覚的なダッシュボードや
メールで通知できるという。このプランナー機
能は現在、Office 365 で First Release オプショ
ンを選択している顧客にプレビュー版が提供さ
れている。製品版のリリースは 2016 年第 1 四半
期の予定だ。
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 1
Microsoft はさらに、
「OneDrive for Business」
にも改良を加えた。最新版は 2015 年 9 月末に
公開され、Windows と「Mac OS」の両プラッ
トフォームに対応するクライアントが追加さ
れた。今回のリリースの狙いは、同期の信頼
性の向上、1 ユーザー当たりのファイルサイズ
と総ボリュームの制限の緩和、Web ユーザー
インタフェースの刷新、その他 IT 管理者や開
発者向け機能の追加だ。
ま た 、 最 新 版 の Office に は 、「 Word 」
「PowerPoint」
「OneNote」に共同編集機能が
加わった。Word にはリアルタイム入力機能が
加わり、あるファイルを誰かが編集すると、
同時にそのファイルにアクセスしている他の
ユーザーは、ファイルの変更をリアルタイム
で見ることができる。
さ ら に 、 Word 、 PowerPoint 、「 Excel 」
訳 注 :原 文 は「 data
loss prevention 」 。
一般に「情報漏えい防
止」機能と訳されるが、
ここでは Microsoft の
TechNet の 表 記 に
従った。
「Outlook」にはデータ損失防止機能(訳注)
が組み込まれた。この他にも、IT 管理者向け
にコンテンツオーサリングと文書共有ポリ
シーの管理ツールも提供していると Microsoft
は説明する。
Office 2016 OneNote(上)と Excel(下)
そして大組織向けには、多要素認証とエン
タープライズレベルのデータ保護を新たにサ
ポートする予定だ。組織内での安全なコンテン
ツ共有を実現する機能で、提供開始時期は
Windows 10 ベースの Office モバイルアプリ
ケーションが 2015 年末、デスクトップ版アプリ
ケーションは 2016 年初頭の予定。
生産性に対する公約
「今の Office は、現在のモダ
ンな働き方、コラボレーショ
同社 CEO のサトヤ・ナデラ氏は次のように語
る。「人々の働き方は近年劇的に変わっている。
そこで Microsoft は、生産性とビジネスプロセス
の再発明に注力し、モバイルファースト、クラ
ン、チームワークのためにデザ
インされた、アプリとサービス
の結合体だ」
ウドファーストを目指してきた。われわれが大
きく一歩を踏み出した、最新のイノベーション
が Office の変革だ。これまではいわば、個々の
生産性支援アプリの寄せ集めだった。
今の Office
は、現在のモダンな働き方、コラボレーション、
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 2
チームワークのためにデザインされた、アプリ
とサービスの結合体だ」
同氏は続けて、コラボレーションの円滑化と、
働き方自体の改善に Office 2016 が貢献するこ
とを願っていると付け加えた。ナデラ氏は同社
のブログに Office 2016 に関する記事を寄稿し、
その中で次のように表明した。
「われわれの野望
は、生産性を発明し直すことだ。これにはビジ
ネスプロセスの再発明も含まれる」
Office 2016 には確かに、新しいポータビリ
ティ体験を提供したいというナデラ氏の野望が
反映されている。その思いがうかがえる機能強
化の一例は、ユーザーがどこにいても、やりか
けた作業の続きに取り掛かれることだ。これは
「Office Online」サービス、Office Mobile アプ
リ、Office 2016 デスクトップアプリケーション
で実現できる。
Microsoft の Office 担当副社長、カーク・ケー
ニヒスバウアー氏は次のように話す。
「われわれ
は長年の付き合いがあるさまざまな立場の顧客
から話を聞き、共同編集とコラボレーションの
分野を充実させることにコミットした。そして
Office 365 Groups in Outlook(上)と Delve People
View(下)
手始めに Word 2016 のコラボレーション機能を
実現した。2015 年末までに、
『Office 365 Groups』
にインサイトとリソースアナリティクスの製品
『Office Delve』を追加する。Office Delve は新
世代の、個人の活動に対するアナリティクスを
実現する製品だ。組織の範囲や影響力、個人の
活動の時間配分やネットワークを新しい視点か
ら見ることができるので、個人、チーム、組織
全体の作業効率を高めるのに役立つ」
信頼性がなければむしろリスク
Office 2016 は、クラウドベースのコラボレー
ションを支援することを目指している。
Microsoft が直面している課題は、Office 2016 の
目玉であるコラボレーション機能には、厳しい
実務に耐える信頼性があると IT リーダーたちに
納得させることだ。その安心感を与えることが
できなければ、共同編集、Skype と他アプリケー
ションの統合、その他クラウドベースのコラボ
レーションサービスが製品に入っていても、リ
ところで CIO にとって、2015 年 9 月 21 日に
スクが高そうに感じられる。新機能を歓迎する
発生した「Skype」停止のニュースは、Microsoft
人があまりいないのでは、Microsoft Office を使
のクラウドサービスの信頼性を揺るがす出来事
い続ける意義がますます薄くなる。
だった(Skype は「Microsoft Azure」上で稼働
している)
。
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 3
Office 365 打倒に燃える Google の
なりふり構わぬ「無償」作戦
敵は世界で最も導入されているクラウドアプリ「Office 365」。Office 365 をこの座から引きずり下ろ
すため、Google が大胆な戦略を発表。「Google Apps for Work」へ移行する企業は増えるのか?
(初出:Computer Weekly 日本語版 2015 年 12 月 2 日号)
Caroline Donnelly
米 Google は、
「Google Apps for Work」
(以下、
Google Apps)に乗り換える企業に対し、現在使
用している他社 Office スイートの契約が切れる
まで Google Apps を無償提供すると発表した。
同社は、米 Microsoft「Office 365」、米 IBM
「Lotus」
、米 Zoho「Zoho」のユーザーが Google
Apps に乗り換えるならば、現製品のエンタープ
ライズ契約(EA)期間中は Google Apps の使用
料金を免除するとブログに投稿した。さらに、
Google Apps の導入に掛かる費用の一部も助成
するという。
「現在の EA が終了したら、トラブルの原因
になることのないシンプルな契約を提示する。
多くの企業にとってはコストの削減になる」と
Google Apps のグローバル販売責任者、リッ
チ・ラオ氏は話す。
前述のブログには「基本的な EA を締結して
いて、現在のスイートに固執しない企業であれ
ば、Google Apps に乗り換えることで最大 70%
のコスト削減(当社推定)が可能だ」と記され
ている。
Google が本誌 Computer Weekly に行った補
足説明によると、このキャンペーンは現在、米
国の顧客のみが対象だが、今後世界規模で展開
していく計画だという。
この取り組みが、エンタープライズ市場の
シェア拡大を目指す Google が仕掛けた勝負で
するのは Microsoft と Office 365 だ。
米 Bitglass が最近行った調査によれば、Office
365 はビジネスコミュニティーの推奨 Office ス
イートになりつつあるという。現在、Office 365
を導入する企業は約 25%、Google Apps は
22.8%だ。
Bitglass の報告書と同時期の 2015 年 8 月に発
表された、米 Okta による顧客調査でも、世界で
最も導入されているクラウドベースアプリケー
ションは Office 365 であることが示されている。
この報告書は、エンタープライズ企業 2500
社のクラウド使用状況をまとめたもので、以下
はこの報告書からの引用だ。
「サトヤ・ナデラ氏
を CEO に迎えてから、Microsoft はクラウドの
活用に力を入れている。顧客には、Office 365
の導入と同時に電子メールを Microsoft クラウ
ドに移行するよう働きかけている」
「データを見ると、この取り組みが成果を上
げ、Office 365 は着実にユーザー数を増やして
いる。ユーザー数は Google Apps を上回り、最
も使われている電子メールアプリケーションに
なった」
「幾つか例外はあるものの、これがネットワー
クの全体的傾向だ。引き続き Google の電子メー
ルアプリケーションを選択しているのは、中小
企業や特定地域(主にアジア太平洋地域)の企
業である」と同報告書は付け加えている。
あることは間違いない。同社が主なライバルと
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 4
「プロプラはダメ」
イタリア国防省の LibreOffice 採用で
オープンソース利用が加速
イタリア国防省が、15 万台の PC で Microsoft Office から LibreOffice へのリプレースを決定。プロ
プライエタリ製品の利用を事実上禁じる法律によって、公共機関のオープンソース利用が拡大して
いる。(初出:Computer Weekly 日本語版 2015 年 12 月 16 日号)
Piero Macri
イタリア国防省は、使用している 15 万台の
イタリアの政府機関が調達方針を変更したこ
PC に搭載する Office スイートを「Microsoft
とで、他の組織にもこれが波及する可能性があ
Office」から「LibreOffice」にリプレースする。
る。例えばイタリア政府の一機関「Agenzia per
LibreOffice の導入例としては、ヨーロッパで 2
l'Italia digitale」
(AGID:政府機関デジタル化局)
番目に大きい規模となる。
は、他省庁も同様のオープン化戦略に追随する
このリプレースはイタリアで LibreOffice を推
ことを期待している。
進する団体「LibreItalia Association」が 2015 年
この方針転換は、プロプライエタリなソフト
9 月に発表したもので、2016 年末までに完了さ
ウェアへの依存からの脱却だけでなく、データ
せる計画だ。これに伴い、同省の文書の標準
を今後 ODF 形式で蓄積していくことも意味す
フォーマットも「Open Document Format」
(ODF)
るものだ。
に変更されるという発表があった。
LibreItalia Association は、政府職員に対して
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 5
LibreOffice の操作方法の研修を実施し、職員が
「移行プロトコルは LibreOffice をベースとし
オープンソースソフトウェアを使い始めるため
てまとめたものだが、特定の製品に関係なく、
の最大の障壁の克服を支援する。米 Microsoft
あらゆる移行プロジェクトに応用できる」と同
製品に親しんできた政府職員は、現在直面して
氏は説明する。
いる変化を受け入れなければならない。
LibreOffice は Microsoft Office よりも
望ましい選択肢
イタリア国防省は、オープンソースの Office
「相互運用性の問題は解決で
きるが、今まで長年続けてきた
やり方を変えることの心理的
な抵抗を克服するのは、なかな
か厄介だ」
スイートへの切り替えを表明したイタリア初の
中央官庁となった。だがイタリアには既に、州
政府、県庁、市役所などの地方行政機関で以下
のような導入実績が存在する。
・エミリア=ロマーニャ州政府:PC 3500 台
・ペルージャ県庁:PC 1200 台
・クレモナ市役所:PC 500 台
・マチェラータ市役所:PC 500 台
・トレント市役所:PC 4000 台
・ボルツァーノ市役所:PC 6000 台
オープンソースソフトウェア採用の
壁を克服
「例によって、最大の課題は変化に対する抵
抗感だ。
職員は皆 Microsoft Office に慣れている。
長年使い続けていると、ほとんど中毒のように
なるからだ」と語るのは、LibreOffice を支持す
る非営利団体「The Document Foundation」
(TDF)
の共同設立者であるイタロ・ヴィニョーリ氏だ。
「
(リプレースの)障壁は技術的なものではな
く、心理的なものだ。相互運用性の問題は解決
できるが、今まで長年続けてきたやり方を変え
ることの心理的な抵抗を克服するのは、なかな
か厄介だ」
・ボローニャ市役所:PC 3000 台
「あと 5 年もすれば、各機能を突き合わせた
比較の結果、LibreOffice は Microsoft Office の有
力な競合製品と認められるようになり、移行の
成功事例も数多く生まれるだろう」とヴィ
ニョーリ氏は語る。
世界各国で専門職に就く人々1300 人から寄
せられた回答をまとめた調査リポート「Future
of open source survey 2015」
(オープンソース
の将来に関する調査 2015 年版)によると、最
も高価値なオープンソースプロジェクト 7 件の
リストの中に、LibreOffice も挙げられていると
いう。
結局重要なのはコミュニケーションで、組織
内と対外的な行動の両方が必要だとヴィニョー
リ氏は話す。TDF は「移行プロトコル」をまと
めて公開している。これは、プロプライエタリ
なソフトウェアからフリーソフトウェアへの切
り替えを希望する組織が実施するべき手順のガ
イダンスとなるものだ。
LibreOffice を採用したことで、国防省は 2012
年 6 月 22 日付の法令 22 号に準拠することに
なった。この法令はイタリアの公共機関がプロ
プライエタリなソフトウェアをリプレースして
フリーソフトウェアやオープンソースソフト
ウェアを利用するための枠組みを示したものだ。
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 6
イタリア政府は商用ソフトウェアよりも
フリーソフトウェアを優先
2014 年、イタリア政府は調達法に関する最終
命令を発行した。国内の行政機関は全て既存ソ
フトウェアの再利用またはフリーソフトウェア
の利用を優先し、それでカバーできないものに
ついてのみプロプライエタリなソフトウェアを
購入という原則に従わなければならない。この
える。
「行政機関およびその関連団体は、ソフト
ウェアの選定について適切な手続きに従ったか
どうかの確認を AGID に依頼できる。法令に違
反する決定をしていた場合、裁判所がそれを失
効させることができる。裁判所の命令を無視し
た場合は、公務員が個人として法的責任を問わ
れる可能性がある」
新しい命令には強制力があり、少なくとも論理
上は、命令に定められた手続きに従わないとい
う決定は無効となる。
「イタリアの行政機関でフリーソフトウェア
やオープンソースソフトウェアを利用すること
についての議論を続けてきたが、どうやら満足
「今やプロプライエタリなソ
フトウェアを使う方がむしろ
例外となりつつある」
できる結論に達したようだ」と、オープンソー
スソフトウェア推進派であるイタリアの弁護士、
グリエルモ・トロイアーノ氏は語る。
「行政機関
においてはフリーソフトウェアの利用を原則と
すると、イタリア政府は決断した」
「行政機関には、フリーソフトウェアまたは
オープンソースソフトウェアについて、一定条
件の下にソフトウェアを取得する権利がある。
前述の AGID が公開した文書では、各行政機
関が利用するソフトウェアを決定する際に、従
わなければならない手続きが明らかにされてい
る。行政機関は適切なフリーソフトウェアを探
これは間違いない」とトロイアーノ氏は語る。
この条件は、パッケージソフトウェアとカスタ
ムソフトウェアの両方に当てはまると、同氏は
付け加える。
すか、公共機関が開発したソフトウェアを選択
しなければならない。その結果、目的に適した
弁解の余地はない。米国の Free Software
ものが見つからなかった場合に限り、商用ソフ
Foundation(フリーソフトウェア財団)の姉妹
トウェアの購入を検討することができる。
団体である Free Software Foundation Europe で
総務を務め、ガイドライン策定の際に評議委員
「これでイタリアの行政機関は(事実上)
、フ
リーソフトウェアまたはオープンソースソフト
ウェアを優先して利用することが義務付けられ
た」とトロイアーノ氏は説明する。
ただし、フリーソフトウェアやオープンソー
スソフトウェアを選択する場合でも、比較評価
会に参加したカルロ・ピアーナ氏は、公共機関
はいかなる目的においても、フリーウェアか既
存ソフトウェアの再利用を選択しなければなら
ないと主張する。
「今やフリーソフトウェアや再利用が『新た
な標準』で、プロプライエタリなソフトウェア
は実施しなければならない。AGID が進めるべき
を使う方がむしろ例外となりつつある。今のと
タスクの 1 つとして、各機関がソフトウェアを
ころ、EU 内で最も先進的な施策だろう。この分
取得する際に、その選択を正当化するための基
準を制定するべきだとトロイアーノ氏は付け加
野でイタリアから、世界に先駆けた施策を実現
できて満足している」と同氏は締めくくった。
別冊 Computer Weekly Microsoft Office の落日 7
Computer Weekly 日本語版
バックナンバー
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Computer Weekly 日本語版
2 月 17 日号:ストレージ
アーキテクチャ二番勝負
今、どんなストレージを選ぶべきか?
オールフラッシュとハイ
ブリッドフラッシュを徹底的に比較した企業が選んだストレージ
は?
NAS とオブジェクトストレージ、選択のポイントとは?
他に、AI 研究の現状やゼロクライアントの成功事例、最高技術責
任者に聞く IT 部門の在り方をお届けする。
Computer Weekly 日本語版
2 月 3 日号:今どきの SEO
再入門
特集は、今どきの SEO 事情解説と、使える Web 診断・分析サー
ビスの紹介。さらに、話題のランサムウェア防御法を伝授する。
他に、Hadoop 導入事例、Airbus が HP との長期 IT 契約を解除し
て他ベンダーを探した理由などの記事をお届けする。
Computer Weekly 日本語版
1 月 20 日号:映画『ゼロ・
グラビティ』制作の舞台裏
映画『ゼロ・グラビティ』の映像特殊効果はどのように作られた
のか?
制作会社の CTO が膨大なレンダリングを実現した苦労
を明かす。他に、
『Star Wars』のキャラクターを使ったプログラ
ミング教育、スナップショットの技術解説などをお届けする。
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