Economic Indicators 定例経済指標レポート テーマ:消費者物価(全国16年1月、東京都区部2月) ~先行きは下振れの可能性大~ 発表日:2016年2月26日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 担当 主席エコノミスト 新家 義貴 TEL:03-5221-4528 (単位:%) 全国 東京都区部 食料(酒類除 総合 生鮮除く総合 く)及びエネル 石油製品 ギー除く総合 前年比 15 16 前年比 前年比 前年比 食料(酒類除 生鮮食品を除 総合 く食料 前年比 生鮮除く総合 く)及びエネル 石油製品 ギー除く総合 前年比 前年比 前年比 前年比 生鮮食品を除 く食料 前年比 1月 2.4 2.2 2.1 ▲ 8.5 3.9 2.3 2.2 1.7 ▲ 11.8 3.6 2月 2.2 2.0 2.0 ▲ 12.7 3.9 2.3 2.2 1.7 ▲ 14.7 3.5 3月 2.3 2.2 2.1 ▲ 10.3 3.8 2.3 2.2 1.7 ▲ 12.3 3.5 4月 0.6 0.3 0.4 ▲ 13.4 1.5 0.7 0.4 0.0 ▲ 15.3 1.1 5月 0.5 0.1 0.4 ▲ 13.5 1.6 0.5 0.2 0.1 ▲ 15.4 1.2 6月 0.4 0.1 0.6 ▲ 12.9 1.7 0.3 0.1 0.2 ▲ 13.0 1.6 7月 0.2 0.0 0.6 ▲ 13.6 1.6 0.1 ▲ 0.1 0.3 ▲ 14.8 1.4 8月 0.2 ▲ 0.1 0.8 ▲ 15.5 1.8 0.1 ▲ 0.1 0.4 ▲ 17.0 1.4 9月 0.0 ▲ 0.1 0.9 ▲ 16.9 1.9 ▲ 0.1 ▲ 0.2 0.6 ▲ 19.2 1.4 10月 0.3 ▲ 0.1 0.7 ▲ 17.1 2.2 0.1 ▲ 0.2 0.4 ▲ 18.8 1.9 11月 0.3 0.1 0.9 ▲ 15.9 2.3 0.1 0.0 0.6 ▲ 18.0 1.7 12月 0.2 0.1 0.8 ▲ 15.9 2.3 0.1 0.1 0.6 ▲ 17.0 2.2 1月 0.0 0.0 0.7 ▲ 14.8 2.1 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.4 ▲ 16.2 1.9 0.1 ▲ 0.1 0.5 ▲ 15.3 2.0 2月 - - - - - (出所)総務省統計局「消費者物価指数」 ○米国型コアで伸び鈍化 2016 年1月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比横ばいと、前月の+0.1%から伸びが鈍化し、 市場予想通りの結果となった。エネルギー価格のマイナス幅は縮小したものの、米国型コアと食料品価格が ともに鈍化したことが押し下げ要因となり、全体では伸びが鈍化する形である。 米国型コアは前年比+0.7%と、前月の+0.8%からやや鈍化した。鈍化は2ヶ月連続。季節調整値でも前 月比▲0.1%と弱めである。前年比の内訳では、テレビ等の耐久消費財で伸びの鈍化が目立ったほか、外国パ ック旅行も押し下げ要因になった。後述の東京都区部と同様に、全国でも米国型コアに頭打ち感が出ている。 エネルギー価格は前年比▲10.7%と、前月の▲11.0%からマイナス幅がやや縮小した(前年比寄与度:12 月▲1.05%Pt → ▲0.99%Pt)。電気代のマイナス寄与は拡大したが、石油製品のマイナス寄与縮小の影響 が大きく、エネルギー全体ではマイナス寄与縮小となった。石油製品は前月比▲5.6%と、原油価格下落を受 けてガソリン、灯油を中心に大幅に値下がりしたが、昨年1月には前月比▲6.9%とそれ以上の急落となって いたため、前年比の裏が出る格好でマイナス幅が縮小している。 食料品(生鮮食品除く)は 15 年 12 月の前年比+2.3%から 16 年1月は+2.1%へプラス幅が縮小した(前 年比寄与度では 12 月が+0.52%Pt、1月が+0.48%Pt)。伸び鈍化は 15 年7月以来6ヶ月ぶりのことであ る。食料品はこれまで着実に伸びを高めてきたが、1月はその動きが一服する形。単月の動きでありまだな んともいえないが、これまでみられた、円安に伴う原料価格上昇分を価格転嫁する動きに陰りが見え始めた 可能性もあるだろう。 なお、「除く生鮮食品・エネルギー」では1月は前年比+1.1%と、12 月の+1.3%から伸びが 0.2%Pt 縮 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 小したとみられる。 ○ 東京都区部は前月から持ち直すも、均してみれば頭打ち感 2016 年2月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比▲0.1%と前月から変わらず、2ヶ月 連続のマイナスとなった。事前の市場予想(▲0.2%)をやや上回っている。エネルギーのマイナス寄与拡大 を、米国型コアと食料品価格の伸び率拡大が相殺した形である。 米国型コアは前年比+0.5%と、1月の+0.4%から伸び率がやや拡大した。季節調整値でも前月比+0.2% と3ヶ月ぶりのプラスである。1月は前年比の伸びが 0.2%Pt(12 月+0.6%→1月+0.4%)縮小し、米国 型コアの鈍化が始まったかとも思わせたが、今月はなんとか踏みとどまった。もっとも、米国型コアは、15 年9月に前年比+0.6%まで上昇したが、その後は前年比で+0.4%~+0.6%の狭いレンジでの推移となって いる(全国では前年比+0.7%~+0.9%のレンジ内の動き)。季節調整値でも、昨年秋以降は均してみれば 概ね横ばい圏の動きである。まだはっきりと鈍化トレンドに入ったわけではないが、米国型コアに頭打ち感 が出ていることは否めない。景気低迷や円安効果の減衰などが影響している可能性があるだろう。先行き警 戒が必要だ。 食料品(生鮮食品除く)は前年比+2.0%と、1月の前年比+1.9%から伸び率がやや拡大した。1月は大 きめの鈍化となっていたが、2月はやや持ち直している。ただ、基調としてみれば、円安に伴う原材料価格 上昇を理由とした値上げの動きには歯止めがかかりつつあるとみられる。足元で進んだ円高もあいまって、 今後は伸び率が鈍化していく可能性が高いだろう。 エネルギー価格は前年比▲13.5%と、前月の▲12.3%からマイナス幅が拡大した。石油製品は前年の裏が 出たことからマイナス幅が縮小した一方、電気代・ガス代で過去の燃料価格下落の影響からマイナス幅が 拡大したことの影響が大きかった。 なお、「除く生鮮食品・エネルギー」では前年比+1.0%になったとみられる。1月は+0.8%と、12 月の +1.0%から伸びが縮小していたが、その縮小分を取り戻す形である。 ○ 先行きは下振れの公算大 先行きについてもCPIは低調な推移になりそうだ。まず、エネルギー価格については下振れが予想され る。数ヶ月前までは、15 年末以降にはエネルギー価格において前年の裏が出ることでCPIコアの伸びが高 まっていくとの見方が多かったが、原油価格の急落により、そうした見通しの実現は不可能になった。さら に、このところの急速な円高が、エネルギー価格のさらなる下押しに繋がるだろう。 日本銀行は、生鮮食品とエネルギーを除いたCPI(日銀版コアコアCPI)が足元で前年比+1%を越 えていることをもって、「物価の基調は着実に改善」と判断しているが、この状況は続かないだろう。これ まで日銀版コアコアCPIを押し上げてきた大きな要因が、円安による輸入価格の上昇であるためだ。食料 品や耐久消費財、身の回り品などの値上がりは、円安によるコスト増によるものが大きく、好調な需要を受 けて値上げを実施しているというわけではない。そのため、円高によって輸入価格が下落すれば、こうした 品目の価格上昇圧力は減衰する可能性が高い。 以上から、先行きのCPIコアは下振れの公算が大きい。3月頃にマイナスに転化し、その後もマイナス 圏での推移が続く可能性が高いだろう。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 (%) 4.5 全国・消費者物価コア前年比 食料品 たばこ 傷害保険料 石油製品 電気代・都市ガス 高校授業料 その他 CPIコア 3.5 2.5 1.5 東京都区部・消費者物価コア前年比 (%) 3 食料品 たばこ 傷害保険料 石油製品 電気代・都市ガス 高校授業料 その他 CPIコア 2.5 2 1.5 1 0.5 0.5 0 -0.5 -0.5 -1 -1.5 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 12 13 14 15 -1.5 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 16 12 13 14 15 米国型コア(季調値) 102 101.5 全国 101 東京都区部 100.5 100 99.5 99 98.5 98 97.5 97 09 10 11 12 13 14 15 16 (出所)総務省統計局「消費者物価指数」 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 16
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