Untitled - 日本看護協会

まえがき
日本人のがんの罹患率は年々上昇し、今や約 2 人に 1 人が生涯でがんになる時代です。わが国では
平成 19 年 4 月に「がん対策基本法」が施行されました。これは、がん対策を総合的かつ計画的に推
進するための法律で、がん対策に関して国、 地方公共団体、 医療保険者、 国民及び医師などの責務を
明確にしています。がん対策基本法に基づき策定されている第 2 期がん対策推進基本計画の中では、
「がん医療に携わる専門的な医療従事者の育成」や「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」な
どが重点的に取り組むべき課題として掲げられており、がん治療の多様化とそれに伴う看護業務の多
様化により、がん看護へのニーズが高まっています。
このような背景を受け、日本看護協会では平成 25 年度から厚生労働省の委託で「がん医療に携わ
る看護研修事業」(以下、本事業)を実施し、がん患者さんに診断時から緩和ケアを提供するために、
一定の水準を保持した多くの看護師の育成を目指した事業を展開してまいりました。事業の実施にお
いては、日本看護協会が事務局となり「がん医療に携わる看護研修事業特別委員会」を組織し、長年
にわたってがん看護にご尽力されてきた小松浩子委員長をはじめとする委員の皆様より多大なるご支
援・協力を得ながらの推進となりました。
本事業の内容は主に 2 つあり、ひとつはがん医療に携わる看護師向けの教材として『看護師に対す
る緩和ケア教育テキスト』を作成し、緩和医療に関して情報を広く周知させていくことです。もうひ
とつは、がん看護専門看護師やがん看護分野の認定看護師を対象に、一般の看護師を「緩和ケアリン
クナース」に育成するための『
「看護師に対する緩和ケア教育」の指導者研修』(以下、指導者研修)を
実施することです。指導者研修を通してがん看護専門看護師およびがん看護分野の認定看護師の方々
には、緩和ケアリンクナースを育成するための知識や技術を身につけていただき、所属施設内で一般
の看護師の方々を対象に教育を実施することで、現場の緩和ケアを変えていくことをねらいとしまし
た。
平成 25 年度に事業を開始してから平成 27 年度までの 3 カ年で、指導者研修は延べ 13 回開催され、
研修修了者は 1,622 名に及びます。また、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」の中心的役
割を果たすがん診療連携拠点病院においては、平成 27 年度時点の 401 施設のうち 385 施設から受講者
を輩出しており、受講率は 96% になります。3 カ年の間に、『看護師に対する緩和ケア教育テキスト』
の改訂やテキストの活用方法などを示した『看護師に対する緩和ケア教育指導マニュアル』の作成な
ども行われ、研修修了者の方々の教育実施を支援するための方策をとってまいりました。
その成果もあり、事業の一環として平成 26 年度から研修修了者の方々を対象とした教育活動に関
する調査を実施した結果、緩和ケアリンクナース育成のための教育が着実に広まっていることが確認
されています。今回の報告書の中では、その中から先駆的に教育活動を展開されている研修修了者の
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施設へのヒアリング結果も掲載しています。指導者研修を修了後、所属施設内でどのように教育実施
のための承認を得たのか、所属施設の特性に合わせてどのような教育プログラムを作成して実施した
のか、育成した緩和ケアリンクナースはどのような活動を行っているのかなどが具体的に書かれてい
ます。この内容を報告書に掲載して共有することで、教育活動で悩まれている研修修了者の方々への
参考となり、今後教育が更に普及していく足がかりとなれば幸いです。そして、教育の成果として
「がんと診断された時からの緩和ケア」が推進され、がん患者さんへの看護ケアの更なる向上に結び
つくことを期待いたします。
最後に、本事業にご協力いただきました、全国のがん診療連携拠点病院をはじめとする施設の方々、
がん医療に携わる看護研修事業特別委員会の委員の方々など関係者の皆様に、心より御礼申し上げま
す。
平成 28 年 2 月
公益社団法人日本看護協会
常任理事 川本利恵子
なお、本報告書は公益社団法人日本看護協会の公式ホームページにも掲載しております。
http://www.nurse.or.jp/nursing/education/ganiryo/index.html
(ホーム>生涯学習支援>がん医療に携わる看護研修事業)
ぜひ多くの皆様に本事業の成果をご覧いただけますと幸甚に存じます。
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