原油価格低下に苦しむエクアドル

No.17
2016 年 2 月 19 日
原油価格低下に苦しむエクアドル
公益財団法人 国際通貨研究所
経済調査部 上席研究員 森川 央
エクアドルは石油が輸出の 5 割を占め、政府の歳入も 3 割を石油に頼っている。原油
価格低下は大きな痛手となっているが、ついに危機的状況になってきた。
同国のコレア大統領はまだ北海ブレント価格が 50 ドル/バレル前後であった昨年 8
月のインタビューで、エクアドルの原油は 30 ドル/バレルの収入をもたらしているが
生産コストは 39 ドル/バレルと高く採算割れであることを認めていた。
その後北海ブレントは下落し、現在では 30 ドル前後となっている。品質の差により
エクアドル産原油は 20 ドル前後で取引されている可能性が高い。実際、通関統計の原
油輸出金額と数量から逆算すると 12 月の単価は 26.84 ドル/バレルになっている。9 月
は 40.11 ドルであった。程度の差はあれ赤字であることは間違いないだろう。
もっとも油田は規模や立地によってコストは千差万別である。当然ながら採算の悪い
油田から閉鎖していくことになる。図 1 はエクアドルの稼働リグ数を示している。驚く
べきことに、現在同国で稼働しているリグはたったの1基である。
図 1. エクアドルの稼働リグ数
30
(台数)
30
25
25
20
20
15
15
10
10
5
5
0
2001
2006
2011
2015
(資料)トムソン・ロイター
1
(台数)
0
2013
2014
2015
2016
エクアドルの石油輸出は 2014 年 130 億ドルであったが、2015 年は 64 億ドルに減少
した。10-12 月期は 11 億ドルで年率に換算すると 44 億ドルでしかない。同国の石油産
業は大打撃を受けている。
その結果、輸出全体も 14 年の 257 億ドルから 184 億ドル(15 年)に減少した。今後
について考えると同国の非石油輸出は約 120 億ドルで、これに 44 億ドルを加えた 160
億ドル強が自然体の輸出能力である。それに対し 2015 年の輸入は 215 億ドルで、計算
上の貿易赤字は 55 億ドルになる。ところが、15 年末の外貨準備高は 25 億ドルでしか
ない。そして、政府の対外借入は 15 年末 201 億ドルで、年間の利払い額は 41 億ドルで
ある。もはや同国の資金繰りは綱渡りの段階すら超えているようだ。
限界的な資源国はエクアドルだけではない。既に同じ南米の資源国スリナムが IMF
に金融支援要請を行ったばかりだが、資源国の経済には引き続き注意が必要である。
図 2. エクアドルの対外取引、外貨準備高
(億ドル)
80
(億ドル)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
輸出
70
輸入
60
原油輸出
50
40
30
20
10
0
2005
2007
2009
2011
2013
2015
貿易収支
外貨準備
2005
(資料)トムソン・ロイター
2007
2009
2011
2013
2015
(資料)トムソン・ロイター
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