製品標準書 間葉系幹細胞

製品標準書
間葉系幹細胞
重症低ホスファターゼ症治療用
(CPC-A1’’)
目次
1.用語集‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
2.類別、一般名称、型式‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
3.製造承認番号‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
4.製造許可年月日‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
5.製品の設計、図面、仕様、または成分、分量‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
5-1.化学構造
5-2.分子式
5-3.質量
5-4.一般特性
5-5.生物活性
5-6.不純物
6.構成部品等、製造物質の仕様または成分、分量‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
6-1.製造に使用される原材料
6-2.生物起源の原材料の管理
7.培地等の仕様または成分、分量‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4
8.製造方法、製造手順、製造装置、設備、器具ならびに製造環境‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7
8-1.製造方法(フローチャート)
8-2.工程操作手順
8-3.バッチ及びスケール
9.表示内容、包装形態‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20
10.構成部品、製造用物質、中間製品、製品の試験検査方法、試験検査手順、合否判定
基準、試験検査に用いる装置、設備、器具、および試験検査環境‥‥‥‥‥‥‥‥20
10-1.規格および試験法
10-2.規格及び試験方法の妥当性
11.製品の有効期限または使用期限(その根拠)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22
12.記録とその様式‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
1.用語集
α-MEM ・・・Minimum Essential Medium, Alpha Medium
PBS・・・Phosphate Buffered Saline
FBS・・・Fetal Bovine Serum(牛胎児血清)
感染症マイナス・・・HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B 型肝炎ウイルス)
、
HCV(C 型肝炎ウイルス)
、HTLV(成人 T 細胞白血病ウイルス)
検査結果陰性
2.類別、一般名称、型式
1)INN 該当なし
2)化学名 該当なし
3)会社又は研究所コード
島根大学
独立行政法人 産業技術総合研究所 健康工学研究部門
組織・再生工学研究グループ
4)一般名称(JAN)
一般名称
(日本名)間葉系幹細胞
(英名) Mesenchymal stem cells
化学名又は本質
(日本名)間葉系幹細胞
(英名) Mesenchymal stem cells
5)CAS 登録番号
該当する CAS 番号なし
3.製造承認番号
未申請
4.製造許可年月日
未申請
5.製品の設計、図面、仕様または成分、分量
5-1.化学構造 間葉系幹細胞の集団であり、化学構造での表現は適さない。
5-2.分子式
間葉系幹細胞の集団であり、分子式での表現は適さない。
5-3.質量
間葉系幹細胞を PBS に懸濁したものであり、総質量は一定ではない。
5-4.一般特性
致死型の低ホスファターゼ症患者を救命することを目的とし、経静脈的に全身投与
される間葉系幹細胞である。移植することにより、呼吸状態の改善および骨形成の
改善が期待される。
5-4-1.性状
PBS に懸濁した間葉系幹細胞である。
5-4-2.構造
同種骨髄由来の間葉系幹細胞
細胞数:患者体重(kg)×106 個/kg 以上(目標値)
細胞生存率 80%以上
表面マーカー陽性細胞の割合:CD34 が 10%以下、CD45 が 20%以下か
つ CD13、CD90 が各 80%以上(参考値)
5-5.生物活性
経静脈的に全身投与することにより、呼吸状態の改善および骨形成の改善が期待
される。
5-6.不純物
5-6-1.目的物質由来不純物
細胞由来の代謝物が分泌されるが、ここでは不純物として扱わないこととする。
5-6-2.工程由来不純物
細菌、真菌、エンドトキシン、マイコプラズマなどは検出されない。FBS、抗生物
質、細胞剥離剤の残留物は PBS での洗浄工程により極めて微量となる。なお、動
物由来の物質は、ヘパリンおよび FBS である。FBS は牛海綿状脳症の発生してい
ない地域原産で、放射線照射処理されたものを使用する。
6.構成部品等、製造物質の仕様または成分、分量
6-1.製造に使用される原材料
間葉系幹細胞の原材料は、受入時に検収検証が行われたものを使用する。表 6-1-1
に、各原材料の使用される工程及びそのグレードを示す。
表 6-1-1
原材料
使用される工程
グレード
PBS
骨髄採取工程、細胞培養工程
供給元規格*1
ヘパリンナトリウム注射液
骨髄採取工程
日本薬局方
α-MEM 培地
FBS 培地調製工程
供給元規格*2
抗生剤
FBS 培地調製工程
日本薬局方
細胞剥離剤(TrypLE Select)
細胞培養工程
供給元規格*3
同種骨髄
細胞培養工程
感染症マイナス
FBS
FBS 培地調製工程
供給元規格*4
* 1
浸透圧 280-315 mOsm/kg、pH7.3-7.5、無菌試験陰性
但し、エンドトキシン濃度はグループ内規格で 0.5 EU/mL 未満
* 2
浸透圧 280-330 mOsm/kg、pH7.0-7.4、毒性検査適合、無菌試験陰性
但し、エンドトキシン濃度はグループ内規格で 0.5 EU/mL 未満
* 3
浸透圧 280-300 mOsm/kg、pH7.0-7.4、活性 0.2rPu/mL 以上、
in-vitro バイオアッセイ適合、無菌試験陰性
但し、エンドトキシン濃度はグループ内規格で 0.5 EU/mL 未満
* 4
牛海綿状脳症の発生していない地域原産で、放射線照射処理されたもの、
ウイルス試験陰性、マイコプラズマ試験陰性、無菌試験陰性
但し、エンドトキシン濃度はグループ内規格で 2 EU/mL 未満、間葉系幹細胞培養
および骨分化培養に適していることが確認できたもの
6-2.生物起源の原材料の管理
間葉系幹細胞の製造に用いられる原材料のうち、ヒトまたは動物に由来するもの
を表 6-2-1 に示す。
表 6-2-1 ヒト又は動物由来の原材料
原材料
由来
使用される工程
FBS
ウシ
FBS 培地調製工程
ヘパリン注射液
ブタ
骨髄採取工程
FBS は牛海綿状脳症の発生していない地域原産で、放射線照射処理されたものを
使用する。
ヘパリンは日本薬局方のものを採用し、品質の安全性を確保する。
7.培地等の仕様または成分、分量
間葉系幹細胞の製造に使用される培地の組成について表 7-1 に示す。
表 7-1 間葉系幹細胞の製造に使用される培地の組成
名称
添加物
濃度
α-MEM 培地
85%
抗生剤
20 μg/mL
FBS
15%
培養液
成分表
成分
最終濃度(mg/L)
Amino Acids
α-MEM 培地
Glycine
42.5
L-Alanine
21.25
L-Arginine
89.25
L-Asparagine-H2O
42.5
L-Aspartic acid
25.5
L-Cysteine hydrochloride-H2O
85
L-Cystine 2HCl
26.35
L-Glutamic Acid
63.75
L-Glutamine
248.2
L-Histidine
26.35
L-Isoleucine
44.54
L-Leucine
44.2
L-Lysine
62.05
L-Methionine
12.75
L-Phenylalanine
27.2
L-Proline
34
L-Serine
21.25
L-Threonine
40.8
L-Tryptophan
8.5
L-Tyrosine disodium salt
44.2
L-Valine
39.1
Vitamins
Ascorbic Acid
42.5
Biotin
0.085
Choline chloride
0.85
D-Calcium pantothenate
0.85
Folic Acid
0.85
Niacinamide
0.85
Pyridoxal hydrochloride
0.85
Riboflavin
0.085
Thiamine hydrochloride
0.85
Vitamin B12
1.156
i-Inositol
1.7
Inorganic Salts
Calcium Chloride (CaCl2) (anhyd.)
170
Magnesium Sulfate (MgSO4) (anhyd.)
83.0195
Potassium Chloride (KCl)
340
Sodium Bicarbonate (NaHCO3)
1870
Sodium Chloride (NaCl)
5780
Sodium
Phosphate
monobasic
(NaH2PO4-H2O)
119
Ribonucleosides
Adenosine
8.5
Cytidine
8.5
Guanosine
8.5
Uridine
8.5
Deoxyribonucleosides
2'Deoxyadenosine
8.5
2'Deoxycytidine HCl
9.35
2'Deoxyguanosine
8.5
Thymidine
8.5
Other Components
D-Glucose (Dextrose)
850
Lipoic Acid
0.17
Sodium Pyruvate
93.5
成分
抗生剤
最終濃度(mg/L)
硫酸ゲンタマイシン(PBS に
20
て希釈)
成分
FBS
牛胎児血清
最終濃度(%)
15
8.製造方法、製造手順、製造装置、設備、器具ならびに製造環境
8-1.製造方法(フローチャート)
製造方法を以下のフローチャートに示す。
なお、骨髄採取工程が行われるのは相手先医療機関であり、グループ外の工程と
なるため品質マネジメントシステム対象外として参考情報とする。
依頼受付工程
目的:製品受領者からの培養依頼受付
操作管理項目:患者の選定
以下の基準をすべて満たす者
・ 本治療が妥当と判断された者であること
(妥当性の判断は医療機関が行う)
・ インフォームドコンセントを受け、この研究に
同意した者であること
・ 感染症検査マイナスであること
患者 ID(医療機関内 ID)
病院と当グループとのやりとりは、患者実名では
なく、病院側が付与した ID(患者 ID)で行う
症例 ID(グループ内 ID)を付与
当グループ内では症例 ID を用いる
搬送容器発送工程
目的:骨髄採取用容器の発送
操作管理項目:骨髄採取用ヘパリン濃度 10 unit/mL(終濃度)
骨髄採取チューブ発送本数 4~6 本
機器:専用搬送容器
骨髄採取工程:医療機関
目的:間葉系幹細胞の存在する同種骨髄の採取、搬送
手技:麻酔
骨髄針による骨髄穿取
操作管理項目:骨髄採取量
10~50 mL
骨髄保管温度 10~30℃
骨髄保管時間 採取後 12 時間以内
機器:専用搬送容器
受入工程
目的:同種骨髄を受け取る
操作管理項目:骨髄受入場所 居室
工程内管理:骨髄受入検査 患者 ID 確認、汚損なし、保管温度・
時間規定以内:10~30℃、採取後 12 時間以内
以下の工程より CPC 細胞調製室内で操作
FBS 培地調製工程
ステップ1
目的:FBS を解凍する
操作管理項目:解凍後 FBS 保管温度、使用期限
5℃±1℃、該当症例搬出まで
参考品(FBS)
機器:薬用保冷庫
ステップ2
目的:培地を調製する
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5 μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
FBS 濃度
15%
抗生剤濃度 20 μg/mL(終濃度)
培地保管温度、使用期限
5℃±1℃、該当症例搬出まで
工程内管理:無菌試験(FBS 培地) 陰性
エンドトキシン試験(FBS 培地) 陰性
機器:安全キャビネット
薬用保冷庫
細胞培養工程(1次)
ステップ1
目的:骨髄の播種
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
遠心分離機回転数、温度、総遠心時間
900±50 rpm、4℃、10 分以上
骨髄播種量
採取チューブ 1 本分を 75cm2 フラスコ 2 本に播種
フラスコ当たり培地量 15mL
インキュベータ炭酸ガス濃度 5%±1%
インキュベータ温度 37℃±0.5℃
インキュベータ湿度 95%以上
工程内管理:無菌試験(骨髄) 陰性
機器:安全キャビネット
遠心分離機
インキュベータ
ステップ2
目的:間葉系幹細胞の増殖
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5 μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
フラスコ当たり培地量 10~13mL
インキュベータ炭酸ガス濃度 5%±1%
インキュベータ温度 37℃±0.5℃
インキュベータ湿度 95%以上
細胞密度(コンフルエントの程度) 50~80%
機器:安全キャビネット
インキュベータ
ステップ3
目的:間葉系幹細胞の回収
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
細胞剥離剤反応時間 15 分以内
遠心分離機回転数、温度、遠心時間
900±50 rpm、4℃、5 分
工程内管理:無菌試験(培養上清) 陰性
性能評価試験 参考データ
表面抗原解析 参考データ
機器:安全キャビネット
遠心分離機
NucleoCounter
細胞培養工程(2次)
ステップ1
目的:間葉系幹細胞のフラスコへの播種
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5 μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
細胞播種密度 5×105 cells/75cm2
フラスコ当たり培地量 10~13mL/75cm2
インキュベータ炭酸ガス濃度 5%±1%
インキュベータ温度 37℃±0.5℃
インキュベータ湿度 95%以上
機器:安全キャビネット
インキュベータ
ステップ2
目的:間葉系幹細胞の増殖
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5 μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
フラスコ当たり培地量 10~13mL/75cm2
インキュベータ炭酸ガス濃度 5%±1%
インキュベータ温度 37℃±0.5℃
インキュベータ湿度 95%以上
総培養期間 1 ヶ月以内
工程内管理(最終培地交換時)
:無菌試験(培養上清) 陰性
マイコプラズマ否定試験(培養上
清、培養細胞) 陰性
機器:安全キャビネット
インキュベータ
ステップ3
目的:間葉系幹細胞の回収
手技:無菌操作
操作管理項目:安全キャビネット内の微粒子(0.5 μm 以上)数
100 以下
安全キャビネットのクリーンナップ
細胞剥離剤反応時間 15 分以内
遠心分離機回転数、温度、遠心時間
900±50 rpm、4℃、5 分
細胞回収量 患者体重(kg)×106 個以上(目標値)
参考品(細胞、FBS 培地、搬出時細胞を懸濁した
PBS)
工程内管理:手指付着菌試験 陰性
無菌試験(培養上清、細胞浮遊液) 陰性
エンドトキシン試験(細胞浮遊液) 陰性
細胞生存率 80%以上
性能評価試験 参考データ
表面抗原解析 参考データ
機器:安全キャビネット
遠心分離機
NucleoCounter
細胞回収量が目標に達しない場合細胞培養工程(2次)を繰り返す。ただし、総培養期
間は 1 ヵ月以内とし、4次培養までとする。
搬出工程
目的:間葉系幹細胞の搬出
操作管理項目:患者 ID への変換
包装
工程内管理:搬出判定 適
機器:専用搬送容器
以下の工程より居室で操作
受渡工程
目的:間葉系幹細胞の受け渡し
操作管理項目:受渡品内容説明・確認
品質試験成績説明
機器:専用搬送容器
8-2.工程操作手順
8-2-1. 依頼受付工程
・製品受領者からの培養依頼は症例依頼書(様式 CPC-B1-03-1)によって受け付け
る。グループ長は下記の条件を確認し、各責任者と協議の上で受入の可否を決定
する。受入が決定した症例は症例登録用紙(様式 CPC-B1-03-2)に登録し、概要
を症例概要(様式 CPC-B1-03-3)に記載する。(症例の受付に関する手順書参照)
患者確認条件
1.間葉系幹細胞の適用が妥当と判断された者であること
(妥当性の判断は製品受領者が行う)
2.インフォームドコンセントを受けこの研究に同意した者であること
3.感染症検査マイナスであること
(2.は同意書の写し、3.は感染症検査結果の写しを送付してもらう)
・管理責任者は患者 ID に対応した症例 ID を付与する。製品受領者と当グループと
のやりとりは患者 ID を使用し、当グループ内では症例 ID を使用する。
(製造番号
及びロット構成に関する手順書参照)
8-2-2. 搬送容器発送工程
・製造管理責任者は下記の物品を梱包し、骨髄採取日前日までに確実に依頼元へ届
くように発送する。
<内容>
担当医宛送付状
専用搬送容器
「容器内容物」
チューブラック
骨髄採取用チューブ(へパリン/PBS)
ヘパリンナトリウム注射液
データロガー(温度記録計)入りチューブ
モニター用温度計
保冷剤
(8-2-3. 骨髄採取工程:病院)
8-2-4. 受入工程
・製品受領者により運ばれてきた骨髄をグループ長もしくは管理責任者が受け取
る。患者 ID、数量、状態などを確認する。
・製造管理責任者は搬送中の温度が 10℃~30℃に保たれていたか、骨髄採取から
12 時間以内に CPC 細胞調製室へ搬入できるか確認する。
・受入工程が終了した骨髄は CPC へ搬送する。
以下の工程より CPC 細胞調製室内で操作
8-2-5. FBS 培地調製工程
ステップ1:FBS の解凍
・サプライ室の薬用保冷庫で冷凍保存されている FBS を必要量取り出す。
・細胞調製室の薬用保冷庫に FBS を移し、4℃で1晩解凍する。
・参考品として FBS を保管する。
ステップ2:FBS 培地の調製
・硫酸ゲンタマイシン(40 mg/mL)1 mL を PBS 7 mL で希釈し、5 mg/mL の濃度に
調製する。
・α-MEM 500 mL に FBS 88 mL と希釈した硫酸ゲンタマイシン 2.4 mL を添加する。
・ボトルトップフィルター 150mL 0.22 μm で濾過する。
・同様の手順で必要本数調製する。
・調製後の FBS 培地から 50 mL ファルコンチューブに 15 mL(複数本のボトルから
等量ずつ)採取、品質管理部門に渡し、無菌試験およびエンドトキシン試験を行
う。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関する手順書、無
菌試験に関する手順書、エンドトキシン試験に関する手順書参照)
8-2-6. 細胞培養工程(1次)
ステップ1:骨髄の播種
・50 mL ファルコンチューブに骨髄液をプールする。この時、5 mL ピペットで 1 本
ずつ骨髄液量を測定しながらプールしていき、総和を記録する。
・新しいアシストチューブに骨髄液を等分に分注する。この時、総和の等分にはせ
ず、確実に必要本数分採取できる液量を設定する(例えば、骨髄液の総和が 31.5 mL
で、5 等分する場合は 5.25 mL であるが、5.1 mL 程度に設定する)
。
・骨髄液の入っていたアシストチューブは捨てずに 6 mL の PBS を添加、品質管理
部門に渡し、無菌試験を行う。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロッ
ト構成に関する手順書、無菌試験に関する手順書参照)
・4℃にて 900 rpm、10 分間、遠心分離を行う。ただし、分離が悪ければ追加する。
・下層から赤血球層、有核細胞層(buffy coat)、血漿に分離されていることを確認す
る。
・アスピレーティングピペットにて注意深く血漿を吸引する。(チューブ 1 本あたり
赤血球層、有核細胞層で約 2~3 mL となる)
・50 mL ファルコンチューブに残った赤血球層と有核細胞層(buffy coat)をプール
する。
・75cm2 フラスコあたりの分注量(骨髄+培地)が 15 mL となるように、FBS 培地
を骨髄液の入った 50 mL ファルコンチューブに追加する。ただし、フラスコ数が
4 本以上となる場合、予め 10 mL 程度の FBS 培地を使用するフラスコに分注して
おく。FBS 培地追加量はフラスコ 1 本あたりの分注量を考えて算出する。
・フラスコに製造番号を記載する。
(製造番号及びロット構成に関する手順書参照)
・フラスコに骨髄を播種する。
・インキュベータにフラスコを収納し、培養する。
ステップ2:間葉系幹細胞の増殖
・目視にて凝固、血餅塊の有無、血球の残り具合などの観察を行う。
・培地を吸引する。初回(Day 2 or 3)に血餅形成が観察される場合、製造管理責任
者と協議の上、培地交換の手技等を確認する。
・培地をできるだけゆっくり注ぐ。FBS 培地量は基本的に 13 mL/flask とする。培地
量不足の問題が生じる恐れがある場合、製造管理責任者と協議の上、10 mL/flask
とするなど調整する。フラスコの口に培地が付いた場合は、アスピレーティング
ピペットにて培地を吸引する。
・×40、×100 の位相差顕微鏡像をデジタルカメラで撮影し、スマートメディアに JPEG
形式で保存する。主担当者はモニタリング室コンピュータ内の症例フォルダにオ
リジナル画像を保存し、PowerPoint で当日の観察画像をまとめる。
・細胞増殖の状態、細胞集団の状態を適宜製造管理責任者に伝え、継代の時期など
を含めた培養スケジュールを再検討する。
2~3 回/週、細胞が増殖するまで上記手順を繰り返す。
ステップ3:間葉系幹細胞の回収
・サプライ室より細胞剥離剤 を持ち出す(2 mL/flask として必要分を計算する)
。
・×40、×100 の位相差顕微鏡像をデジタルカメラで撮影し、スマートメディアに JPEG
形式で保存する。主担当者はモニタリング室コンピュータ内の症例フォルダにオ
リジナル画像を保存し、PowerPoint で当日の観察画像をまとめる。
・50 mL ファルコンチューブに培養上清を合計 10 mL 採取、品質管理部門に渡し、
無菌試験を行なう。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関
する手順書、無菌試験に関する手順書参照)
・残りの培養上清を吸引する。
・PBS にて洗浄する。
・細胞剥離剤を添加し(2 mL/flask)、インキュベータで 3 分間静置する(最大 15 分
まで延長可能)
。
・FBS 培地(3 mL/flask)で反応停止させ、ピペッティングにて数回懸濁する。
・50 mL ファルコンチューブに回収後、フラスコ内に残っている細胞を FBS 培地で
回収する。
・細胞浮遊液をマイクロチューブ 2 本に 100 μL ずつ採取する。
・ヌクレオカウンターにて死細胞数、全細胞数を計測し、生細胞数を計算する。
・4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引する。
・5×105 cells/mL に再懸濁し、細胞浮遊液を調製する。
・フラスコへの継代に必要な細胞浮遊液(75 cm2 フラスコのとき;5×105 cells/flask、
225cm2 フラスコのとき;1.5×106 cells/flask)をチューブにとる。
8-2-7. 細胞培養工程(2次)
ステップ1:間葉系幹細胞のフラスコへの播種
・75 cm2(もしくは 225cm2)フラスコに製造番号を記載する。
(製造番号及びロッ
ト構成に関する手順書参照)
・フラスコあたりの分注量を培養スケジュールに準じて決定し(Total 13mL/75cm2
が標準)
、フラスコ継代用細胞浮遊液チューブに FBS 培地を加える。ただし、培
地量が多い場合、予め適当量の FBS 培地を使用するフラスコに分注しておく。FBS
培地追加量はフラスコ 1 本あたりの分注量を考えて算出する。
・フラスコに細胞浮遊液を播種する。
・マイコプラズマ否定試験用に細胞浮遊液 0.4mL を FBS 培地 4mL に加え、6well プ
レートへ 2mL (1×105 cells)/well で播種する。
・インキュベータにフラスコおよび 6well プレートを収納し、培養する。
・表面抗原解析・性能評価試験用細胞浮遊液 4~5 mL(液量は凍結保存用細胞浮遊
液の液量が 0.5mL の整数倍になるように調整する)をとり、性能評価試験を行う。
残りの細胞浮遊液は品質管理部門に渡し、表面抗原解析を行う。
(サンプリングに
関する手順書、製造番号及びロット構成に関する手順書参照)
(表面抗原解析及び性能評価試験は参考データのため省略してもよい)
・残りの細胞浮遊液は 4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引し、サプラ
イ室より取り出しておいた TC プロテクターを用いて凍結保存する。
ステップ2:間葉系幹細胞の増殖
・培地を吸引する。
・培地を注ぐ。FBS 培地量は基本的に 13mL/75cm2 とする。培地量不足の問題が生
じる恐れがある場合、製造管理責任者と協議の上、適宜調整する。フラスコの口
に培地が付いた場合は、アスピレーティングピペットにて培地を吸引する。マイ
コプラズマ否定試験用プレートの FBS 培地量は 2mL/well とする。
・×40、×100 の位相差顕微鏡像をデジタルカメラで撮影し、スマートメディアに JPEG
形式で保存する。主担当者はモニタリング室コンピュータ内の症例フォルダにオ
リジナル画像を保存し、PowerPoint で当日の観察画像をまとめる。
・細胞増殖の状態、細胞集団の状態を適宜製造管理責任者に伝え、継代の時期など
を含めた培養スケジュールを再検討する。
2~3 回/週、細胞が増殖するまで上記手順を繰り返す。
(最終培地交換時)
・培地を吸引する前に培養上清および培地交換後の培養上清を 50mL ファルコン
チューブに 20 mL(複数本のフラスコから等量ずつ)採取し、マイコプラズマ否
定試験用プレートとともに品質管理部門に渡し、無菌試験およびマイコプラズマ
否定試験を行う。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関す
る手順書、無菌試験に関する手順書、マイコプラズマ否定試験に関する手順書参
照)
ステップ3:間葉系幹細胞の回収
・サプライ室より細胞剥離剤 を持ち出す。
・×40、×100 の位相差顕微鏡像をデジタルカメラで撮影し、スマートメディアに JPEG
形式で保存する。主担当者はモニタリング室コンピュータ内の症例フォルダにオ
リジナル画像を保存し、PowerPoint で当日の観察画像をまとめる。
・50 mL ファルコンチューブに培養上清を合計 10 mL 採取、品質管理部門に渡し、
無菌試験を行なう。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関
する手順書、無菌試験に関する手順書参照)
・残りの培養上清を吸引する。
・PBS にて洗浄する。
・細胞剥離剤を添加し(2 mL/75cm2flask, 5 mL/225cm2flask)、インキュベータで 3 分
間静置する(最大 15 分まで延長可能)
。
・FBS 培地(細胞剥離剤の 1.5 倍量)で反応停止させ、ピペッティングにて数回懸
濁する。
・50 mL ファルコンチューブに回収後、フラスコ内に残っている細胞を FBS 培地で
回収する。
・4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引する。
・50 mL の PBS に細胞を懸濁する。
・4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引する。
(洗浄 1 回目)
・細胞浮遊液をマイクロチューブ 2 本に 100 μL ずつ採取する。
・ヌクレオカウンターにて死細胞数、全細胞数を計測し、生細胞数を計算する。
・移植に必要な量(患者体重(kg)×106 個以上)の細胞が確保できているか、生存率
が 80%以上であるか確認する。
『細胞回収量が目標に達した場合』
・4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引する。
(洗浄 2 回目)
・5×105~5×106cells/mL になるように PBS に再懸濁し、細胞浮遊液を調製する。
・表面抗原解析・性能評価試験用(2×106 cells)および凍結保存用の細胞浮遊液(5
をそれぞれ 15 mL ファルコンチューブに採取する。
もしくは 2.5×105cells の整数倍)
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関する手順書参照)
(表面抗原解析及び性能評価試験は参考データのため省略してもよい)
・50 mL ファルコンチューブに残った移植用細胞を 4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分
離後、上清を吸引する。
(洗浄 3 回目)
・新しく開封した PBS 10 mL で再懸濁する。
以下の工程より安全キャビネット内で 2 人で作業をする。
・1人が新しい滅菌手袋を手袋の上から装着し、完全清潔操作者となる。
・完全清潔操作者は、滅菌シーツを無菌的に受け取り広げる。
・完全清潔操作者は、新しく開封したアシストチューブを無菌的に受け取る。
・完全清潔操作者が持ったアシストチューブに、もう一人の担当者がピペットエイ
ドで細胞浮遊液を注入する。
・完全清潔操作者は細胞浮遊液の入ったアシストチューブのフタが完全にしまって
いることを確認し、もう一人の担当者が差し出した 50 mL ファルコンチューブに
入れる。
・完全清潔操作者は手指の付着菌試験が終了するまでそのまま待機する。
・もう一人の担当者は 50 mL ファルコンチューブのフタをしめ、二重包装する。
・細胞の入った 50 mL ファルコンチューブに症例 ID と細胞数を付与し、細胞調製
室外へ搬出する(製造番号及びロット構成に関する手順書)
。
・もう一人の担当者が付着菌試験用培地1枚を完全清潔操作者の両手のひら、指(左
右それぞれ3ヶ所)に押し付ける。
(付着菌試験に関する手順書参照)
以下の工程より通常の作業に戻る。
・50 mL ファルコンチューブに残った細胞浮遊液に搬出用細胞の懸濁に使用した
PBS を 10mL 入れ、品質管理部門に渡し、無菌試験およびエンドトキシン試験を
行なう。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関する手順書、
無菌試験に関する手順書、エンドトキシン試験に関する手順書参照)
・参考品として、余った FBS 培地 1 mL 、移植用間葉系幹細胞の懸濁に用いた PBS
1 mL をクライオチューブに採取する。
・別に取り分けていた表面抗原解析・性能評価試験用細胞浮遊液に PBS を加えて
5×105 cells/mL とする。
・この細胞浮遊液 4 mL を品質管理部門に渡し、表面抗原解析、性能評価試験を行
う。
(サンプリングに関する手順書、製造番号及びロット構成に関する手順書参照)
・凍結保存用の細胞浮遊液を 4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離し、上清を吸引後、
サプライ室より取り出しておいた TC プロテクターで懸濁し、5×105 cells/mL にす
る。
・クライオバイアルチューブに 1mL もしくは 0.5mL ずつ分注して凍結保存する。そ
のうち 1 本は参考品とする。
(参考品の採取及び保管管理に関する手順書、製造番
号及びロット構成に関する手順書参照)
『細胞回収量が目標に達しない場合』
・4℃にて 900 rpm、5 分間遠心分離後、上清を吸引する。
・5×105 cells/mL に FBS 培地で再懸濁し、細胞浮遊液を調製する。
・8-2-7. 細胞培養工程(2次)のステップ1から繰り返す
ただし、総培養期間は 1 ヵ月以内とし、4次培養までとする。
8-2-8. 搬出工程
・エントランスにて移植用細胞の入った 50 mL ファルコンチューブに付与された症
例 ID を患者 ID に変換する。搬出に用いる専用搬送容器にも患者 ID を付与する。
(包装に関する手順書参照)
・専用搬送容器内へ梱包する。
(包装に関する手順書参照)
「容器内容物」
移植用細胞入 50 mL ファルコンチューブ
チューブラック
データロガー(温度記録計)入りチューブ
モニター用温度計
保冷剤
*隙間がある場合は緩衝材として滅菌済みペーパータオル等を入れる。
・管理責任者は症例依頼書、品質試験成績書、製造記録を確認し、搬出の可否判定
を行う。搬出可と判断した場合、管理責任者は製品を搬出する。
(搬出判定に関す
る手順書参照)
8-2-9. 受渡工程
・グループ長あるいは管理責任者が製品受領者へ受け渡しを行う。
<内容>
間葉系幹細胞が入った専用搬送容器
搬出通知書
品質試験成績書
・製品受領者へ通知書を提示し、受渡品の内容を説明する。
(通知書及び受領書の発
行に関する手順書参照)
・製品受領者へ品質試験成績を説明する。
・製品受領者に受領書へ確認のサインをしてもらう。
(通知書及び受領書の発行に関
する手順書参照)
8-3.バッチ及びスケール
ナンバリングシステム及びスケールに関しては、表 8-3-1 のとおり。
表 8-3-1
ナンバリングシステム及びスケール
工程
製造番号
バッチおよびスケール
受入工程
専用搬送容器:患者 ID
骨髄 13mL チューブ 2〜6 本
細胞培養工程(1 次)
症例 ID+フラスコ番号
細胞 75cm2 フラスコ 4~12 本
細胞培養工程(2 次)
症例 ID+フラスコ番号
細胞 75 もしくは 225m2 フラスコ 1~15 本
搬出、受渡工程
最終製品:症例 ID+患者 ID
間葉系幹細胞 1 本
専用搬送容器:患者 ID
(アシストチューブ、50 mL ファルコン
チューブの二重包装)
9.表示内容、包装形態
間葉系幹細胞:アシストチューブ、50 mL ファルコンチューブの二重包装。
50 mL ファルコンチューブに症例 ID および患者 ID が記載されている。
10.構成部品、製造用物質、中間製品、製品の試験検査方法、試験検査手順、合否判定
基準、試験検査に用いる装置、設備、器具、および試験検査環境
10-1.規格および試験法
中間体
試験項目名
試験方法
規格値/適否の判定
無菌試験
FBS 培 地 、骨髄 、培 養上 清を
陰性
BacT/ALERT にて 7 日間培養
エンドトキシ
ン試験
最終製品
FBS 培 地 をゲル 化法 にて 測定
陰性
(外注)
性能評価試験
14 日間骨分化培養
判定に使用しない
表面抗原解析
フローサイトメトリーにて測定
判定に使用しない
無菌試験
培地上清を BacT/ALERT および
陰性
平板培地にて 2~4日間培養
マイコプラズ
培養上清および培養細胞 DNA
マ否定試験
を PCR 法にて測定
細胞数
NucleoCounter にて測定
陰性
患者体重(kg)×106 個
以上
生存率
NucleoCounter にて生細胞の割合
80%以上
を測定
搬出後判明
性能評価試験
14 日間骨分化培養
判定に使用しない
参考データ
表面抗原解析
フローサイトメトリーにて測定
判定に使用しない
無菌試験
・培地上清を BacT/ALERT およ
陰性
び平板培地にて 7 日間培養
・ 最 終 製 品 お よ び培 地 上 清 を
BacT/ALERT にて 7 日間培養
エンドトキシ
ン試験
最終製品をゲル化法にて測定
(外注)
陰性
10-1-1. 無菌試験
BacT/ALERT により微生物が増殖時に産生する炭酸ガス濃度の上昇をモニタリン
グすることで、無菌性を確認する。最終製品搬出前試験では寒天平板表面塗布法
も併用し、コロニーの出現がないことを確認する。
10-1-2. エンドトキシン試験
ゲル化法によりエンドトキシン濃度を測定し、0.5 EU/mL 未満であることを確認
する。
(外部委託)
10-1-3. マイコプラズマ否定試験
マイコプラズマ特異的な塩基配列が PCR 法により増幅されないことにより、マイ
コプラズマが存在しない(検出限界以下)ことを確認する。
10-1-4. 細胞数
細胞剥離後、NucleoCounter にて細胞数を測定する。細胞数が患者体重(kg)×106
個以上確保できていることを確認する。
10-1-5. 生存率
細胞剥離後、NucleoCounter にて生細胞の割合が 80%以上であることを確認する。
10-1-6. 表面抗原解析
フローサイトメトリーにて表面抗原の陽性率を測定する。なお結果は参考データ
として取り扱い、試験を省略することもある。
10-1-7. 性能評価試験
14 日間骨分化培養を行い、カルセインの蛍光強度測定および ALP 活性測定により、
骨形成能の評価を行う。なお結果は参考データとして取り扱い、試験を省略する
こともある。
10-2.規格及び試験方法の妥当性
以下に示す文書や論文、過去の研究結果を参考にし、規格及び試験方法を設定し
た。
10-2-1. 無菌試験
第 15 改正日本薬局方;一般試験法;無菌試験法に記載されている方法にメンブラ
ンフィルター法がある。間葉系幹細胞は、微生物の判定を短時間で行う必要があ
る。そこで、メンブランフィルター法に比べ、より迅速に判定が可能な
BacT/ALERT を用いる試験方法を採用した。また、最終製品搬出前試験では寒天
平板表面塗布法も併用する。
10-2-2. エンドトキシン試験
第 16 改正日本薬局方;一般試験法;エンドトキシン試験法;ゲル化法に基づいた
試験方法を採用した。
日本薬局方における「生理食塩水」のエンドトキシン濃度は 0.5 EU/mL 未満であ
るため、0.5 EU/mL 未満を規格値として設定した。
10-2-3. マイコプラズマ否定試験
第 16 改正日本薬局方;参考情報;バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来
医薬品の製造に用いる細胞基材に対するマイコプラズマ否定試験にある「ポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)による検出法」に準じた方法を試験方法として採用した。
10-2-4. 細胞数
臨床研究は現在進行中であり、治療効果が認められる細胞数は未確定である。よっ
て細胞数の当面の規格として 1.0×106 cells/kg と設定した。
10-2-5. 生存率
下記研究の結果、NucleoCounter により計測される生細胞が 80%以上あれば分化可
能である(骨基質を産生する)ことが明らかとなった。よって、80%以上を生存
率の規格として設定した。
Kaori Muraki, Motohiro Hirose, Noriko Kotobuki, Yoichi Kato, Hiroko Machida,
Yoshinori Takakura, and Hajime Ohgushi; Assessment of Viability and Osteogenic Ability
of Human Mesenchymal Stem Cells after being Stored in Suspension for Clinical
Transplantation. Tissue Engineering, 12, 1711-1719 (2006)
Noriko Kotobuki, Motohiro Hirose, Hiroko Machida, Yoichi Kato, Kaori Muraki,
Yoshinori Takakura, and Hajime Ohgushi; Viability and Osteogenic Potential of
Cryopreserved Human Bone Marrow Derived Mesenchymal Cells. Tissue Engineering, 11,
663-673 (2005)
11.製品の有効期限または使用期限(その根拠)
下記研究において、細胞を PBS に懸濁後、4℃、25℃(室温)
、37℃で 24 時間放
置したところ、それぞれ 81%、70%、62%の細胞生存率を示した。さらに 4℃で
24 時間放置した細胞は骨分化培養において放置していないものと同等の骨形成能
を示した。本知見を参考にし,室温にて搬送する製品の移植手術の期限は受け渡
し後 12 時間以内とした。
Kaori Muraki, Motohiro Hirose, Noriko Kotobuki, Yoichi Kato, Hiroko Machida,
Yoshinori Takakura, and Hajime Ohgushi; Assessment of Viability and Osteogenic Ability
of Human Mesenchymal Stem Cells after being Stored in Suspension for Clinical
Transplantation. Tissue Engineering, 12, 1711-1719 (2006)
12.記録とその様式
製造指図記録書:間葉系幹細胞(様式 CPC-A1’’-1)
試液の調製と管理に関する手順書
(CPC-A1-01)
1、目的
本 CPC における試液調製に際して、その注意点および保管方法の手順を記載し、試
液の品質の安定と同時に、交叉汚染の防止を図るものである。
2、適用範囲
本 CPC において調製され、症例間で共通に用いられる試液に適用する。
3、責任体制
本手順書は、製造管理責任者が指名した者が作成し、管理責任者が承認する。
4、遵守事項
品質マニュアル、製品標準書の記載を守り、品質の安定と交叉汚染の防止を図る。
5、調製と管理
・ 試液の調製は製造管理責任者が指名した者が行う。
・ 各試液の調製・使用記録書に基づき調製し、記録する。ラベルに記載する内容
は「製造番号及びロット構成に関する手順書」に従う。
・ 試液の調製および保管は、調製室にて行う。
・ 各試液は、品質管理部門における試験検査で陰性と判定され、製造管理責任者
が使用を認めたものについて使用することができる。
・ Heparin/PBS の調製に関しては清潔操作が確実に行われたことを確認するため、
手指の付着菌試験をおこなう。
・ 使用者は、使用記録欄に必要事項を記入する
・ 調製試液の使用期限は、調製後6ヵ月もしくは調製前試液の使用期限のうち早
い方とする。
6、記録とその様式
TrypLE Select 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-1)
TC プロテクター調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-2)
Heparin/PBS 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-3)
β-Glycerophosphate 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-4)
Vitamin C phosphate 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-5)
Dexamethasone 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-6)
FBS 調製・使用記録書(様式 CPC-A1-01-7)