国分寺市は平成23年9月に定めた「保育サービスの整備・運営及び提供

平成28年・市議会第一回定例会
★日吉保育園民設民営化条例案
反対討論
日本共産党国分寺市議会議員
幸野おさむ
議案第96号・国分寺市立保育所設置条例の一部を改正する条例ついて、及び議案第11
1号・財産の無償譲渡についての議案について、両議案とも、日吉保育園の民設民営化に
関連する議案でありますので、一括して反対の立場で討論いたします。
両議案の中身については、国分寺市の公立保育園の一つである日吉保育園を今年の4月
1日から、国分寺市の歴史上、初めて民設の民営園に移管してしまうという議案でありま
す。
●はじめに
民営化は積み上げてきた安定性が崩れる
市の保育所を民営化することについては、根本的に大きなリスクがあることを、これま
で何度も指摘してきました。
民営化をすることにより、子ども達の保育を行っている保育士さんがすべて入れ替わっ
てしまうために、子ども達への、精神や情緒への影響が甚大であること、そして、これま
で積み上げてきた日吉保育園での保育の実践経験が完全には引き継がれず、少なからず保
育の安定性を失うこと、そして防災や防犯、地域との連携という点で長年に渡って積み上
げてきた信頼が失われてしまうこと、また移管した民営園が仮に、利益第一主義に走った
際に、保育士の処遇悪化や、保育所の設備や備品が削減され、ひいては子ども達の保育環
境にしわ寄せがきてしまうことなど。
総じて、公立保育園として長きにわたって営々と積み上げてきた、安心して預けられる
保育所が土台から不安定になってしまうことを指摘して、公立保育園の民営化に反対して
きましたが、このことに加えて、現時点においては、さらなる重大問題が発生しています。
本議案の反対討論ではそのことを中心に述べたいと思います。
●全体計画の矛盾、待機児童化解消されない中で民営化は待機児童解消に逆行
国分寺市は平成23年9月に定めた「保育サービスの整備・運営及び提供体制
に関する全体計画」によって公立保育園の民営化計画を定め、この計画に基づいて民営
化を行うと説明しています。
しかし当時、全体計画を定める際に行われた、市民説明会やパブリックコメントなどの
手続きの過程で、他のパブコメに比べても、前例にないほど、多数の「民営化に反対」す
る市民の声が、寄せられていたことも忘れてはならない事実であります。
そして私がここで強調したいことは、この全体計画が定めているのは、民営化の計画だ
けではないということであります。全体計画は3つの柱で構成され、その第一の柱が「待
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機児童を解消する」
、すなわち、待機児童を0にする、ということであります。そして第二
の柱が「公立保育園を順次民営化」していき最後は国分寺保育園のみ公営園で運営し、そ
の他の6園はすべて民営化するというものです。そして3つ目の柱が「期間型保育所シス
テム」を構築し、市内の保育の質を低下させずに維持・向上させる、というものです。
この全体計画の第一の柱である「待機児童の解消」という課題は、現在どうなっている
でしょうか。全体計画では平成26年度に待機児童が解消されているはずの目標になって
いましたが、実際には計画通りに認可保育所の増設を進めてきたにもかかわらず、残念な
がら、待機児童は解消されず、来年度の認可保育所の入所を申し込んだのに、入所できな
い児童は187名に上ることが先の文教子ども委員会で明らかになりました。
市はこの全体計画以後の待機児童解消策として、昨年の3月に「子ども子育て支援事業
計画」を定めました。しかし、これまで順調に誘致出来てきた民間の保育所が誘致出来ず
に、この計画の目標値である、来年度に250名の定員は確保出来ずに、173名の定員
確保にとどまっています。その結果として待機児童が187名生まれてしまっているので
す。
しかもこの待機児童187名はすべて、0歳1歳2歳となっているため、目標通り定員
を確保できたとしても待機児童はなくならないのであります。
すなわち、この間、市が認可保育所の誘致に関して大変なご努力をされてきたこと自体
は非常に評価できるものではありますが、残念ながら、全体計画の目標である待機児童の
解消には、全く至らないことが、明らかになっているのです。
なぜこれまで順調に誘致出来ていた保育所の誘致がしづらくなっているのでしょうか。
その最大の理由は、保育所を運営する法人が保育所を思うように開設できないことにあ
ります。なぜ開設できないのでしょうか、それは保育所で働く保育士さんを雇うこと、す
なわち確保することが出来ないからであります。
なぜ確保できないのでしょうか。それは保育士さんの月額給料が、大切な子ども達の命
と健康を守るという重い責任が課せられているのに、他の職業に比べて平均10万円も低
いために、保育士を辞めてしまう、あるいは保育士に希望をもてないという状況が拡がっ
ているからです。
しかもその上に、待機児童の問題が、広く社会問題化する中で、特に都市部の自治体に
おいて、保育所の建設ラッシュが起きており、連動してどこの保育園についても、保育士
さんたちが大量に必要になっているからであります。
このことにより、ただでさえ不足していた保育士さんが更に不足するという事態を招き、
思うように保育所が開設できない、という状況になっているのであります。
これは12月の補正予算特別委員会の中で明らかにいたしましたが、昨年10月1日時
点での保育士の有効求人倍率は全国平均で1・93倍、東京都内では5.39倍になって
いるとのことです。つまり5.39人保育士の募集をかけても1人しか応募がない、とい
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う信じられない事態の保育士不足になっているのであります。
そうゆう中にあって、全体計画で定められた、二つ目の柱である、公立保育園の民営化
という問題が、一体どういう意味を持つのか、ということが問われてくるのであります。
社会的に保育士不足が深刻な問題になる中で、市が行っている、あるいはこれから行お
うとしている公立保育所の民営化という問題は、その不足している保育士さんを国分寺市
自らが放出させることに繋がってしまうのです。
平成25年度∼26年度にかけて、
「公設公営のひかり保育園の公設民営化」が行われま
した。私が請求した文教子ども委員会の資料によると、この民営化によって公立の保育士
さんが正規職員で10名、嘱託職員で10名、併せて、いわゆる常勤保育士として働いて
いただいていた方々20名が退職されたことが明らかになりました。その内、正規職員の
内訳では定年退職が3名、普通退職が4名、早期退職が2名、任期付き職員が任期満了で
1名、とのことです。職業選択が自由な社会の中で、退職される理由は様々あると思いま
すが、しかし民営化さえなければここまで退職されることはなかっただろうと推察されま
す。嘱託職員の保育士さんについても5年間の任期満了を迎えた方が10名退職されたと
のことですが、再度試験を受けてもらえば、さらなる更新が可能だったわけですから、こ
れだけの保育士さんを、今後も十分確保できた訳です。またこの度民営化される日吉保育
園についても14名の常勤保育士さんが退職される予定とのことも明らかになりました。
つまり結果的には、2園の民営化によって合計34名の保育士さんを放出させてしまう
という、大変な重大な損失ではないでしょうか。
このことは逆に考えれば、公立園を民営化せずに、公立園や公立の保育士さんを存続さ
せたうえで、今回民営化を担う法人、今回で言えば社会福祉法人村山苑さんに、新たに市
内の別の場所において、新たな保育園の開園をしてもらうことが出来れば、全体計画の第
一の柱である「待機児童の解消」目標にも、より一層近づけることが出来たのではないで
しょうか。
つまり、公立保育所を民営化するということは、全体計画の最大の柱である一つ目の柱
「待機児童の解消」に逆行することに繋がってしまっているのです。
こうした大きな矛盾があるにもかかわらず、来年度から日吉保育園、再来年度から本多
保育園、その次はもとまち保育園、新町保育園と、国分寺保育園以外、すべての公立保育
園の民営化を進めていくのは、絶対に許されるものではありません。直ちに中止すべきだ
と思います。
市は、全体計画を3つの柱とも進めなければならない、と言いますが、ここで改めて私
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が強調しておきたいことは、全体計画の3つの柱に対する行政責任で最も果たさなければ
ならないものは、第一の柱である「待機児童の解消」だということであります。なぜか。
これは児童福祉法に基づく法的責任だからであります。しかし第二の柱である「公立保育
所の民営化」というものは法的責任ではありません。そして、何よりも市民から望まれて
いることは、
「民営化」ではなく、
「待機児童を解消する」ことであります。
私たちは、改めて求めます。保育サービスにおいて、市民に対する最も果たさなければ
ならない市の責任として、市民の願いである待機児童を解消することにこそ、最大限の力
を注ぐこと、そしてそのためには公立保育園の民営化を取りやめ、新しい園の開設にこそ
力を入れるべきだと強く求めておきます。
●コスト削減も全体計画通りにはなってない。むしろコスト増に。
また、全体計画では、民営化によって 1 園あたり年間 8300 万円のコストが削減されると
の説明がなされてきました。しかし、これについても議論の中で、その論拠は破たんして
いることがハッキリしてきました。コストの削減について、実際にはどうだったかという
と、ひかり保育園の民営化では、ひかり保育園単体で約 5800 万円削減されたとの資料が提
出されました。この資料だけを見ても、確かに児童数の定員が 17 名増加していることはあ
るにせよ、計画通り 8,300 万円の削減には至っておりません。また、この資料に含まれて
いる東京都からの補助金・子育て推進交付金 3400 万円については過去の資料においては算
定されておりませんでした。この違いを確認したところ、現時点では、算定して計算すべ
きかどうかもわからない、という事態であります。つまりコスト削減額自体の正当性が問
われているのであります。
しかも私がここで強調したいことは、委員会の質疑を通じて、仮に、ひかり保育園単体
で 5800 万円のコスト削減効果があったとしても、すべての公立の保育所のコスト比較で比
較してみると、逆にコストが上がっていることが明らかになりました。というのも、ひか
り保育園の民営化によって、公営園の保育士さんたちは、先ほど紹介したように退職され
た方もいらっしゃいますが、退職されずに他の園に異動された方もいるからであります。
ひかり保育園では27名の常勤保育士さんが働いていましたが、民営化によって公立保育
所全体で退職された方は20名、残りの7名の方は他の保育所で+アルファとして働かれ
ている状況です。その分を加味すると、実はコスト削減にはならず、市の計算式に照らし
た計算によっても、コストはほとんど変わらない、という状況であります。
さらに言えば、これは 12 月の補正予算特別委員会で明らかになりましたが、子ども子育
て新制度によって、民営園の保育所運営費の公定価格が当初予算に比べ16.5%も上が
ったことにより、民営化によるコスト削減額はその分更に減少する事態になっています。
この分を加味すれば、現時点でのコストはかなり増加していることに加えて、今後のコス
ト削減メリットも著しく減少する問題であります。
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私たちは、保育士さんをきちんと確保して、子ども達のための保育の質を担保するため
にも、保育士さんの処遇は早急に引き上げるべきで、コスト削減は行うべきではないとい
う立場ではありますが、市が定めた全体計画の立場に照らしても、民営化によるコスト削
減についても道理が無いことを明らかに致しました。
こうした問題も含めて日吉保育園の民設民営化をはじめ、今後の本多保育園やもとまち
保育園、新町保育園の民営化は、直ちに中止して待機児童の解消にこそ力を入れるよう強
く求めて、両議案に対する反対討論と致します。
※●日吉保育園のガイドラインとの関係
今年4月から日吉保育園の運営が(社会福祉法人)村山苑に移管されるにあたって、保
護者の方を交えて策定した民営化ガイドラインの遵守期間が、4月1日までとなっていた
問題について、市議会・文教子ども委員会において、4月1日以降も確実に担保される仕
組みを作ることも求め、市は新たに村山苑と締結した「覚書」の中で、4月1日以降もお
互いに遵守することが確認されました。
委員会では、職員配置の問題や障害児保育の問題、そして栄養士さんの確保や子ども達
のアレルギー対策の強化、地域への子育て支援事業にかかわること等、具体的に質疑を通
じて、ガイドラインが順守されているかどうかについても確認いたしました。
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