AR 技術を用いた世界遺産橋野高炉跡観光及び学習支援システム World Heritage Tourism and Learning Support System Using Augmented Reality Technology 情報環境デザイン学講座 0312012152 村上 琢哉 指導教員:柴田義孝 橋本浩二 1. はじめに ルサーバとなっている.橋野高炉跡内でも各地 2015 年 7 月 5 日に岩手県釜石市橋野町の橋 点に応じて提示する情報が異なることや順路 野鉄鉱山・高炉跡(以下,橋野高炉跡)を含む,8 案内を行うことを考慮するため,各地点に設置 県 23 資産が「明治日本の産業革命遺産」とし されたビーコンから発信される ID により提供 て世界文化遺産に登録された[1].これらの遺 するコンテンツの識別が可能となる.また,観 産について学習することにより日本近代産業 光客と各地点との大まかな距離をビーコンか 化の理解に繋がるとされており,中でも岩手県 ら発せられる電波強度を測定することで簡単 釜石市では橋野高炉跡を近代産業製鉄業の学 な順路案内を行うことが可能となっている. 習の一環として見学を促すと同時に三陸沿岸 の観光スポットとして期待している[2]. 一方で橋野高炉跡が抱える現状の課題とし て,実物として残っている遺産が少ないため, 当時の鉄生産過程や建造物のイメージが困難 であることや,現地での順路案内が計画段階で あること,そして他の関連施設との相互連携が 図 1.システム概要図 なされておらず近代産業全体の理解をするた めの学習効果が十分でないことが挙げられる. 2.2. システムアーキテクチャ そこで本研究では,「明治日本の産業革命遺 本システムのアーキテクチャは図 2 で示す 産」の中でも橋野高炉跡に焦点を当て,遺跡場 ように構成される.スマート端末本体は,各サ 所に配置された Bluetooth ビーコン(以下ビー ーバやビーコンとの接続を行うため,Beacon コン)をトリガーとして観光客はスマート端末 Connector , Build Connector , Contents を用いて AR(Augmented Reality)技術により Server Connector の 3 つのモジュールと各コ 現地の背景に影響を与えることなく高精度な ンテンツ表示を行うための AR Viewer,Map コンテンツや 3D オブジェクトの可視化が出 Viewer から構成される.遺産情報サーバには 来,かつ適切に遺跡内を案内誘導することによ 「明治日本の産業革命遺産」として登録された って効果的な学習支援及び観光促進を可能に 全ての遺産のリストが格納されており,ユーザ するシステムの提案を行う. が選択した遺産についての情報の ID のリスト 2. をスマート端末内へ送信する.また,Beacon システム概要 2.1. システム構成 Connector により,ビーコン ID の受信・識別 本システムの構成は図 1 で示すように,橋野 を行い,上記の ID のリストを基に,遺産情報 高炉跡に訪れた観光客が利用するスマート端 サーバへ対応するコンテンツの要求を行う. 末,現地に設置するビーコン,コンテンツを格 納・提供するための遺産情報サーバ及びローカ のラップトップ PC を用いた.利用者のスマー ト端末として Nexus7 2013(OS:Android4.4.3) である.本プロトタイプ構成において,スマー ト端末でビーコン ID を受信し,ID を基にロ ーカルサーバへコンテンツの要求を行い,対応 するコンテンツの受信および表示を行う.本プ 図 2.システムアーキテクチャ 3. システム機能 3.1. マップ表示機能 ロトタイプにおいては,橋野高炉跡に特化して いるため,橋野高炉跡に関する情報を格納する ローカルサーバのみを使用した. ビーコンから受信した ID を基にユーザの大 まかな現在地の把握し現在地の提示を行う.ま た,マップ画像には,実際に現地で使用されて いるイラストの地図を用いている.従来の電子 地図と比較し正確な位置表示を行うことは出 図 4.プロトタイプ構成図 来ないが,狭域な橋野高炉跡において視覚的に 分かりやすいマップの表示が可能となってい 5. る. 3.2. まとめ 本研究では,橋野高炉跡に特化した「明治日 AR 表示機能 本の産業革命遺産」への観光・学習支援システ AR 表示画面を図 3 に示す.マップ表示機能 ムを提案した.ビーコンや AR 表示機能による と同様にビーコンから受信した ID を基に地点 高炉跡の可視化を行うことで橋野高炉跡が現 と対応するコンテンツの AR 表示を行う.表示 状抱える実物として残っているものが少ない するコンテンツとして,建造物の 3D オブジェ という課題を解決した. クトを想定している.AR 表示には,スマート 今後の課題として,現状 AR 表示を行うコン 端末に搭載されているセンサを利用し,遺産を テンツとして 3D オブジェクトを採用してい 見ている方向と 3D オブジェクトを合わせた るが,スマート端末での表示動作が重くなる問 コンテンツの提供を行う.また,ユーザが見て 題が挙げられる.また,他の遺産との関連付け いる地点と関連する情報を選択可能となって の方法やコンテンツの提供方法について考慮 おり,各々に応じた情報の提供を行う. していく必要がある. 参考文献 1) UNESCO World Heritage Centre World Heritage Committee announces 2016 meeting in Istanbul, 24 new sites inscribed in Bonn http://whc.unesco.org/en/news/1318/ 図 3.AR 表示画面 4. プロトタイプ構成 本研究のプロトタイプ構成図を図 4 に示す. 2) 国史跡橋野高炉跡整備基本計画書 http://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei _joho/public/boshu_kekka/detail/__icsFil ローカルサーバとして Intel(R) Pentium(R) es/afieldfile/2015/03/19/20140630-09061 CPU B950 プロセッサ,メモリは 4GB メモリ 7.pdf
© Copyright 2024 ExpyDoc