福岡・佐賀県内1の食料品製造業の現状と今後の展望

2016 年 2 月 15 日
日本銀行福岡支店
Bank of Japan Fukuoka Branch
金融経済トピックス
福岡・佐賀県内1の食料品製造業の現状と今後の展望
当資料は当店ホームページに掲載しています
<内容に関するお問い合わせ先>
1
http://www3.boj.or.jp/fukuoka/
日本銀行福岡支店営業課 Tel:092-725-5513
日本銀行福岡支店の管轄エリアは、福岡県(除く北九州市、行橋市、豊前市、京都郡、築上郡)および
佐賀県。
<要旨>
 福岡県および佐賀県は、農水産物の調達環境や物流環境に恵まれていることを背景に、
加工食品メーカー等の食料品製造業の集積が進んでおり、雇用面も含め地域経済にとっ
て重要な地場産業に位置付けられる。
 近年、人口減少等を背景とした国内需要の縮小が進む中、福岡・佐賀県の食料品製造業
者の業況は不冴えな状況にあったが、最近は持ち直しに転じている。
 この背景としては、①雇用・所得環境や消費者マインドの改善、②少子高齢化・世帯構
造の変化等による「中食2」需要の拡大、③食に対する安心・安全意識や健康志向の高
まり、④為替円安等に伴う国産シフトや海外需要の高まり等があり、こうしたもとで、
国内加工食品への需要が高まっていることが指摘できる。

こうした業況の改善を背景に企業の支出行動にも前向きな変化が生じてきており、一部
ではこれまでは控えていた能力増強投資に踏み切る動きや、労働力確保を企図した賃上
げを行う動きもみられている。
(はじめに)

福岡・佐賀県では、県内製造業に占める食料品製造業の割合が高く、農業等の関連産業
への波及や雇用創出面も含め、地域経済にとって重要な地場産業に位置付けられる。食
料品製造業は分野が多岐に亘るためその全体像の把握は困難を伴うが、本稿では、統計
や企業ヒアリングから、当地における食料品製造業の現状と課題につき考察する。
1.食料品製造業の位置付け

福岡県、佐賀県ともに、県内製造業に占める食料品製造業の割合が全国と比較して高い。
鉱工業生産指数の業種別ウエイトをみると、食料品は福岡県が輸送機械に次ぐ2番目
(17.2%)、佐賀県が1番目(22.8%)と、両県ともに地域の主要産業に位置付けられ
る(図表1)。また、福岡県は、食料品製造業の事業所数が全国第5位、出荷額も第 10
位と、全国的なプレゼンスも高い(図表2、3)。

このように、福岡・佐賀県において食料品製造業が盛んな背景として、①九州地区の農
業産出額の高さ、②福岡・佐賀県の物流環境の良さ、が要因として考えられる。
すなわち、九州地区は、関東・東山地区に次ぐ農業産出額を誇り(図表4)、企業から
も、「九州は農業が盛んで原材料の調達が容易である」といった声が聞かれている。
その中で、福岡・佐賀県は九州における交通の要衝にあり、各地の産品の集積地になっ
ているほか、アジアへの近さを背景に輸出品の製造拠点にもなりやすい。
2
中食(なかしょく)とは、惣菜やコンビニ弁当等家庭外で調理された食品を、購入して持ち帰る、ある
いは配達を受ける等によって家庭内で食べる食事の形態。
1
2.食料品製造業の最近の業況

福岡・佐賀県における食料品製造業の生産動向(鉱工業生産指数)をみると、近年は両
県ともに国内市場の縮小等を背景に緩やかな減少傾向が続き、13 年半ば以降は全国や九
州と比べても大きめの減少となった。もっとも、足もとは、増加している全国や九州と
の乖離は依然大きいものの、個人消費の持ち直しを受けて、福岡県が反転増加し、佐賀
県も下げ止まっており、徐々に上向きつつある(図表5)。
―― 全国や九州の需要動向を統計データで確認すると、九州の家計における食料品支
出額は 14 年 4 月の消費増税後に落ち込んだ後で回復し、最近はさらに拡大してい
る(図表6)。また、全国ベースでは、外食市場が景気回復等を反映して 12 年以降
持ち直しているほか、単身・高齢者世帯の増加等を反映して「中食」(料理品小売
業)市場は近年拡大ペースが加速している(図表7)。

当地の食料品製造業の業況感をみると、需要増や高付加価値品へのシフトを反映して、
改善方向にあることがうかがわれる。
──
日銀短観3から食料品製造業の業況判断D.I.をみると、全国は 9、九州・沖縄は
16、福岡支店管内(福岡県+佐賀県-北九州地区)は 10 となっており、このとこ
ろ改善傾向がうかがわれる(図表8)。一方、収益面(経常利益)については、全
国や九州・沖縄が足もと改善しているのに対し、福岡支店管内は悪化している(図
表9)。
3.最近の需要面の変化と供給側の対応

こうした業況回復の背景として、様々な観点から国内加工食品への需要が高まっている
ことが指摘できる。具体的には、①雇用・所得環境や消費者マインドの改善、②少子高
齢化・世帯構造の変化等による「中食」需要の拡大、③食に対する安心・安全意識や健
康志向の高まり、④為替円安等に伴う国産シフトや海外需要の高まり等が挙げられる。

また製造業者サイドでも、上述の需要サイドの変化に対応した商品開発や事業展開を積
極化し、生産増加に繋がっている面もあると考えられる。こうした一連の動きを整理す
ると以下のとおり。
①雇用・所得環境や消費者マインドの改善

雇用・所得環境の改善により個人消費は緩やかに持ち直しており、企業は為替円安等に
よるコスト増を転嫁しやすい状況にある。企業からは、「値上げは消費者に概ね受け入
れられ、値上げ後も売上が大きく落ち込むことはない」といった指摘が聞かれている(図
表 10)。

「多少高くても美味しい商品を求める」プチ贅沢志向等、高品質・高価格帯の食材・食
品に対する消費者選好が強まっているほか、外食の頻度や支出額を増やす動きもみられ
3
日銀短観は抽出調査であるため、サンプルの制約により食料品製造業のような分野が多岐に亘る業種の
全体像を正確に反映していない可能性もあるが、大きな傾向を判断するには有用と思われる。
2
ている。こうした消費者ニーズの変化に対応し、企業サイドでも高級・上質な商品ライ
ンナップを開発・拡充する動きが広がっている(図表 11)。
――
農水産物において、高級志向の高まりからブランド米やブランド牛の人気が高ま
っているのと同様の傾向。
②少子高齢化・世帯構造の変化等による「中食」需要の拡大

単身世帯の増加や少子高齢化、女性の社会進出や共働き世帯の増加等の構造変化を背景
に、所謂“個食化”や“中食化”が進展する中、
「調理に手間の掛からない商品」や、
「内
容量を減らした食べ切りタイプの商品」の需要が高まっており、企業側もそれらに対応
した商品の開発や拡充を進めている(図表 12)。
③食に対する安心・安全意識や健康志向の高まり

近年、国内外で食品絡みの事件が多発していることを受け、食の安心・安全に対する関
心が高まっている(図表 13)。こうした中、国産原材料への切り替えや、農薬使用量を
減らした商品を開発することで売上を伸ばす先がみられている(図表 14)
。
―― 消費者アンケートの結果をみても、食品の購入や外食する際に国産かどうかを
「気にかける」傾向が強まっており、国産商品に対しては「割高でも選ぶ」動きが
広がる等、良い物については支出を惜しまない姿がうかがわれる(図表 15、16)。
④為替円安等に伴う国産シフトや海外需要の高まり

為替円安により国内産と外国産の内外価格差が縮小する中、消費者や小売店が外国産よ
り国産(地元産)を志向する動きがみられているほか、世界的な和食ブームの高まりも
あって、食料品製造業者の海外進出等も増加している(図表 17)。
――
貿易統計による食料品(加工食料品だけでなく生鮮食料品<農水産物>も含む)
の輸出額も増加傾向にある(図表 18)。
4.企業の支出行動の変化

上述した業況改善を背景に、一部ではあるが、①能力増強投資に踏み切る先や②賃上げ
を実施する先がみられ始めている。
①能力増強投資…消費者ニーズに合わせた商品や海外向けに関しては、先行き十分な需要が
見込めるとの声も聞かれ、新工場建設やライン増設により生産体制を強化する動きが広が
りつつある(図表 19)。
②賃上げ…収益改善等を受けて、久方振りのベアや昇進・昇格を実施する先が一部でみられ
ているほか、操業度の高まりを背景にパート社員の獲得や離職防止を企図した時給アップ
を行う先も散見される(図表 20)。
3
5.今後の課題
(1)農業分野との連携

地域活性化や農業再生の流れの中で、農業分野への異業種参入や、食料品原料の国産シ
フト、6次産業化といった農業と製造業を結びつける方向の新しい動きがみられている。
食料品製造業者と農業生産者が連携した高付加価値品の開発等が進み、行政の地域活性
化の施策とも一体となってさらに広がっていくことが期待される(図表 21)。
(2)輸出の強化

メイド・イン・ジャパンの製品に対する国際的なニーズは高まっており、アジアに近接
する当地では、アジア向け輸出をさらに進めていく余地がある。TPP に対しては、「安
い輸入原材料の増加によるコスト削減や、外国産との品質差別化が図れるビジネスチャ
ンス」と前向きに捉える声と、「安価な外国産品の流入増加が国内加工業者等の生産を
圧迫する懸念」を訴える声の両方があるが(図表 22)、いずれにせよ輸出の強化は重要
な課題であり、アジア諸国の嗜好調査やハラル対応4等、今後に向けた検討が期待され
る。
(おわりに)

福岡・佐賀県は、陸運の鳥栖、海運の博多港、空運の福岡空港といった物流拠点があり、
九州の豊かな農産物を原料として、福岡市をはじめとする九州各地や全国、さらには海
外に食料品を供給するのに絶好の製造拠点である。

ただ、食料品生産の伸びはこのところ全国に水をあけられている。多様な消費者ニーズ
を捉えれば高付加価値品が受け入れられる昨今の状況を活かし、農業との連携や輸出の
強化を通じて、食料品の製造・供給拠点としての役割を高めていくことが期待される。
以
4
イスラム法上で食べることが許されている食材を用いて調理した商品を提供すること。
4
上
(図表1)鉱工業生産指数ウエイト(上位5業種、2010 年、%)
福岡県
佐賀県
全国
1
輸送機械
31.1
食料品
22.8
輸送機械
19.1
2
食料品
17.2
化学
14.6
化学
12.7
3
はん用・生産用機械
7.7
輸送機械
12.4
一般機械
12.7
4
鉄鋼業
7.7
一般機械
8.0
電子部品・デバイス
8.1
5
化学
6.3
金属製品
6.8
電気機械器具
6.6
(注)全国における食料品ウエイトは6番目(6.1%)。
(資料)福岡県「鉱工業指数」
、佐賀県「鉱工業指数」
経済産業省「鉱工業指数」
(図表2)食料品製造業の事業所数(県別、2013 年、()内は順位)
(事業所数)
2,500
(1)
2,000
(2)
1,500
(3)
(4)
(5)
1,000
1,929
1,504
1,290
1,251
500
1,016
(40)
310
佐賀県
福岡県
静岡県
愛知県
兵庫県
北海道
0
(資料)経済産業省「工業統計調査」
(図表3)食料品製造業出荷額(県別、2013 年、()内は順位)
(兆円)
2.5
2.0
(1)
(2)
1.5
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
1.0
(8)
(9)
(10)
1.9 1.5 1.5 1.5 1.4 1.3 0.5
1.2 1.1 1.1 0.9 (22)
0.3 佐賀県
福岡県
静岡県
5
大阪府
(資料)経済産業省「工業統計調査」
茨城県
千葉県
神奈川県
兵庫県
埼玉県
愛知県
北海道
0.0
(図表4)農業産出額(地域別、2014 年)
(兆円)
2.5
2.0
1.5
1.0
1.9 1.7 1.2 0.5
1.1 0.7 0.4 中国
0.4 四国
0.4 北陸
0.4 近畿
東海
北海道
東北
九州
関東・
東山
0.0
(注)地域区分は農林水産省「農林業センサス」による。関東・東山地区は、
関東 7 県に長野県と山梨県の 2 県を加えた地域を指す。
(資料)農林水産省「生産農業所得統計」
(図表5)食料品工業の鉱工業生産指数の推移
(季節調整値、2010 年=100、後方3か月移動平均)
110
105
100
95
福岡県
90
佐賀県
九州
85
全国
80
9/1 4
7
10 10/1 4
7
10 11/1 4
7
10 12/1 4
7 10 13/1 4
7
10 14/1 4
7
10 15/1 4
(資料)福岡県「鉱工業指数」
、佐賀県「鉱工業指数」
九州経済産業局「鉱工業指数」
、経済産業省「鉱工業指数」
6
7
10 (月)
(図表6)食料品支出額(季節調整値、2010 年=100)
110
九州
全国
105
100
95
90
10/1 4
7
10 11/1 4
7
10 12/1 4
7
10 13/1 4
7
10 14/1 4
7
10 15/1 4
7
10 (月)
(注)季節調整値は X-12-ARIMA を用いて日本銀行福岡支店で算出。
(資料)総務省「家計調査」
(図表7)外食産業市場規模の推移(全国、2000 年=100)
130
125
外食産業
120
料理品小売業
115
110
105
100
95
90
85
80
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14 (年)
(注)料理品小売業は持ち帰り弁当店や惣菜店を指す。
(資料)一般社団法人 日本フードサービス協会「外食産業市場規模推計の推移」
7
(図表8)日銀短観における食料品製造業の業況判断 D.I.
20
(「良い」-「悪い」、回答社数構成比、%ポイント)
福岡支店管内
16
九州・沖縄
全国
10
10
9
0
▲ 10
▲ 20
10/3
11/3
12/3
13/3
14/3
(月)
15/3
(注)直近は 15/12 月実績
(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄『企業短期経済観測調査』
」
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」
(図表9)日銀短観における食料品製造業の売上・収益動向
▽売上高
▽経常利益
(前年度比、%)
12年度
13年度
14年度
15年度
12年度
(計画)
福岡支店管内
▲ 0.6
5.1
0.2
5.8
福岡支店管内
九州・沖縄
▲ 1.3
4.2
▲ 0.7
2.3
0.3
3.2
0.7
2.9
全国
(前年度比、%)
13年度
14年度
15年度
(計画)
147.4
1.3
▲ 10.7
▲ 19.1
九州・沖縄
7.5
▲ 4.1
▲ 13.8
2.9
全国
1.2
4.1
▲ 1.1
16.1
(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄『企業短期経済観測調査』
」
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」
(図表 10)個人消費の持ち直しを受けた値上げの進展に関する企業の声
コストプッシュ型
業種
具体的な声
食料品
原料の小麦の値上がりや業界の動向を総合的に勘案して、久方振りにコ
スト上昇分の一部を価格に転嫁した。値上げ後も売上が落ち込むことは
なく、消費者は値上げに対して寛容になりつつあると感じている。
高付加価値化
製造業者 原材料価格の上昇を受けて主力製品を中心に出荷価格を引き上げた。各
社とも安値を是正しようと粘り強く交渉を続けた結果、値上げに踏み切
ることができた。
食料品
原材料を外国産から国産に切り替えたことを受け、商品の値上げを実施
製造業者 したが、売上は堅調に推移している。
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
8
(図表 11)消費者の高級・上質志向に対応した取組み
業種
具体的な声
高級料亭監修の商品ラインナップを拡充したところ、消費者から好評を得てお
り、今後も高付加価値商品の開発・展開に注力する方針。
食料品
製造業者
十数年前より高付加価値品に絞った商品展開を行ってきたが、最近の高くても
美味しい商品を選好する消費者の動きを受けて、売上が増加している。
新たな顧客層の獲得を企図して高価格帯商品の販売を試験的に開始したとこ
ろ、一部消費者の間では既存商品の代わりに購入する動きもみられており、消
費者の購買意欲の高まりを実感している。
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
(図表 12)少子高齢化・世帯構造の変化を受けた取組み
業種
手間の掛からない商品開発
食料品
製造業者
具体的な声
多少値段が高くても“手間が掛からない商品”を求める動きが広がって
いると感じている。レンジで加熱するだけで調理が可能な“レンジアッ
プ商品”の売行きが好調で、今後も成長が見込める加工食品の強化を進
める方針。
少子高齢化、核家族化を受けて冷凍食品の製造販売を開始した。高齢者
をメインターゲットにしており、価格は高めながら、安心・安全・高品
質であることから販売は好調。
内容量を見直した商品開発
単身世帯の増加や少子高齢化を背景とした個食化を受け、商品サイズや
内容量を減らした商品の売上が増加している。比較的高額でも一度に食
べきれるサイズの商品の売行きが好調であり、こうした商品を新たに開
発し販売を進めている。
食料品 シニア向け食べ切りタイプの冷凍食品需要が増加している。人口減少に
より市場が縮小しても高齢化が進む中においては、実用性の高い冷凍食
製造業者
品の需要はそれほど減少しないと考えており、既存商品の小分けタイプ
の販売を進める方針。
単身世帯の中食需要の取り込みを企図し、素材に拘った大型の総菜商品
を開発・販売した結果、想定以上の売れ行きで業績が拡大傾向にある。
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
9
(図表 13)近年の食料品の安全に関わる主な事件
年 日本国内
海外
3月:中国で処理された人体に悪影響とされる薬
品を使用した豚肉の日本国内への流通懸念
2011年
10月:大手ホテル等でメニューの虚偽表示・偽装 5月:中国でネズミ肉等を羊肉と偽装して販売す
表示が相次いで発覚
る業者が摘発
2013年
12月:冷凍食品に農薬混入
7月:ファストフード店向けなどの加工肉において
消費期限の過ぎた肉の使用が発覚
2014年 12月:カップ焼きそばに虫混入
(資料)報道情報より日本銀行福岡支店作成
(図表 14)食に対する安心・安全意識や健康志向の高まりを受けた取組み
業種
具体的な声
食料品
食に対する安心・安全への関心の高まりから、一切農薬を使用せずに栽培を
行っている当社製品の人気も高まっており、原材料を国産野菜に切り替えた
商品の売上が増加している。
消費者の要望に応え九州産原料を使用した商品を販売したところ、“国産=
安全”といった消費者心理と合致し売上好調。
製造業者
業界全体で国産原料に拘った商品の開発が進んでいるほか、健康志向の高ま
りに着目して開発したダイエット専用商品の売上は好調に推移している。
健康志向の高まりに応じて、農薬の散布回数や化学肥料の使用量を県基準の
半分以下とした新製品を発売したところ、健康志向の高まりを受けて販売好
調。
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
(図表 15)食の志向調査(国産かどうか気にかけるか)
【食料品を購入するとき】
気にかける
100%
気にかけない
2.6 4.1 21.9 80%
3.3 3.6 26.9 23.2 気にかける
3.0 2.0 17.4 18.1 100%
3.8 4.4 18.1 【外食するとき】
食料品は購入しない
19.3 18.9 60%
74.1 70.6 73.2 8.3
8.7
66.7 64.3 25.1
27.1
7
13/1
外食しない
8.8
8.5
52.2 52.5 35.6
39.1
39.1
7
15/1
11.2
9.3
9.4
54.8 55.5 55.0 34.1
35.3
7
14/1
80%
60%
40%
8.8
気にかけない
77.5 77.5 77.4 79.6 58.3 40%
80.0 20%
20%
0%
32.9
0%
12/1
7
13/1
7
14/1
7
15/1
7 (月)
(資料)日本政策金融公庫「食の志向調査」
10
12/1
7 (月)
(図表 16)国産商品に対する価格許容度
割高でも国産を選ぶ
同等の価格なら国産品を選ぶ
国産品へのこだわりはない
100%
15.9
16.7
15.2
32.1
30.5
11.7
24.4
24.4
61.6 64.0 64.1 7
15/1
12.5
14.4
25.0
25.7
24.2
61.3 61.7 7
14/1
80%
25.5
11.8
13.9
60%
40%
58.6 20%
51.2 54.4 7
13/1
0%
12/1
7 (月)
(資料)日本政策金融公庫「食の志向調査」
(図表 17)為替円安等に伴う国産シフトや海外展開事例
業種
具体的な声
国産シフト
円安等による
加工食品において国産品・九州産品の人気が高まっているが、背景には
小売業者 ①安心・安全志向や、②高付加価値志向に加え、③為替円安によって輸
入品と国産品の価格差が縮小した点があると考えられる。
世界的な日本食ブームを背景に台湾向け商品の引き合いが強まる中、東
南アジアへの進出を目指して準備を進めている。
海外進出
宣伝強化と観光客の口コミ効果が相まって、韓国国内で高いシェアを獲
得しており、ここ数年は前年比2桁増を続けていることから、今後も韓
国向けの売り込みに注力する方針。
食料品 国内需要が減退する中、海外需要を今後の業績拡大のエンジンに位置付
製造業者 けている。特に中国においてメイド・イン・ジャパンの健康食品に注目
が集まっており、現地で好評を得ている当社製品の販路拡大に注力する
方針。
業容拡大のために輸出に注力しているが、アメリカでは和食ブームが到
来しており、今後も市場の拡大が期待できることから、特に PR 活動に力
を入れている。
農産物の輸出
日本産の農産物は海外でも品質面で高い評価を受けており、果物を中心
に人気が高い。シーズンを通した安定供給を企図して、全国各地から農
産物の調達を行うなど、品揃えを充実させたこともあり、輸出額は年々
増加している。
卸売業者
青果の鮮度を長時間保つ新技術を用いて、従前は空輸に頼っていた葉物
野菜について船送に切り替えることでコストを大幅に抑えることに成
功。輸出先での販売価格を引き下げたことから販路が中間層に拡大して
いるほか、今後は香港やタイに販路を拡大する方針。
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
11
(図表 18)食料品輸出(九州経済圏)
【輸出額推移】
(億円)
900
40
【前年比】
(%)
800
九州経済圏
30
700
600
全国
20
500
10
400
771 300
200
380 420 11
12
499 0
567 ▲ 10
100
0
▲ 20
13
14
15
11
(年)
12
13
14
(注)九州経済圏は、九州・沖縄に山口県を含むベース。
(資料)門司税関「九州経済圏 貿易速報」
、財務省「貿易統計」
(図表 19)能力増強投資に踏み切った企業の声
業種
具体的な声
人口動態が変化する中、今後も成長が見込める加工食品に注力していく方針に
あり、加工食品の製造ラインの増設を行っている。
冷凍食品などの調理に手間の掛からない加工食品の需要が急増しており、一部
生産が追い付いていない状態。先行きも需要は堅調に推移する見通しであるこ
製造業者 とから、能力増強を企図して新工場を建設した。
海外でメイド・イン・ジャパン製品の需要が増加していることを受けて、現地
生産を中止し国内に専用ラインを稼働開始予定。今後は、国内からの輸出を強
化するかたちで、米国やアジア圏を中心に販売網を広げていく。
食料品
(資料)日本銀行福岡支店ヒアリング情報
12
15 (年)
(図表 20)賃上げを実施した企業の声
業種
正社員
食料品
具体的な声
ベアの実施は見送っているものの、過年度の増収増益を受け、数年振り
に昇進・昇格を行ったほか、誕生日祝い金の支給を開始。
従業員還元の強化を進める方針の一環として、最低賃金に関わらず、同一
製造業者 労働同一賃金であるべきとの考えから、これまで最低賃金を反映して地域
毎に異なっていた賃金設定を高い方に合わせるかたちでベアを実施。
パート社員
食料品
過年度の増収増益や稼働率の高まりを背景に、パート職員の獲得や離職
防止を企図して時給を+20 円引き上げ。
製造業者 海外向け商品の増産に向けてパートを中心に募集を行ったが、思うよう
に応募者が伸びず、最終的には時給を大幅に上げて漸く定員を確保した。
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(図表 21)連携強化などによる成功例
農業法人
業種
具体的な声
企業と
直接取引
売上の維持・拡大を企図した①農家の法人化や、別分野での知識を活か
業界団体 して②異業種からの農業参入が増加しており、農業生産者の経営体制の
強化や生産性の上昇がみられている。
食に対する安全・安心志向の高まりを受けて、これまで使用していた外
食料品 国産野菜から国産野菜に切り替えて製造を行っている。これまで商品化
製造業者 できなかった野菜を中心に安く仕入れているため、当社と農家の両方に
とっても有益な取引となっている。
県内ではラーメンのために品種改良した「ラー麦」の生産を行っているが、
海外でのとんこつラーメン人気やインバウンド需要の増加もあり、生産量
地方自治体
が増加している。この間、行政や業界団体が一体となった PR や生産面で
の支援が行われている。
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自治体等の支援
(図表 22)TPP に対する受け止め方
業種
具体的な声
プラス面
マイナス面
TPPについては、輸入している一部の原材料の価格が下落し、コスト
の低減に繋がるのではないかと期待している。
需要の一部が外国産に流れたり、国内企業間での競争が厳しくなることは
あっても、品質面で外国産と差別化できれば売上の増加に繋がると考えて
食料品
おり、ビジネスチャンスだと捉えている。
製造業者 輸入価格が下落する商品がある一方、一部原材料の輸入価格の変動を計
りかねているため、全体として不透明感が強い。
麺類などに関しては、安い外国産が大量に流入することで、国内製粉業
者や加工業者に大きな影響を与える可能性が高い。
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以
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上