問題児たちにチートが 紛れ混んだそうです よ?【リメイク版】 夜叉猫 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ ﹄ 突然の﹃死﹄の訪れ⋮⋮それは新しい﹃生﹄との出会いでもあった。 ﹄ │││││﹃俺が死んだのは神様のミス⋮⋮ │││││﹃お詫びに︻転生︼⋮⋮ ? しかも、神様のはからいで最強のバグキャラに生まれ変わるという事で⋮⋮ 少年は新たな人生をどう歩むのでしょうか⋮⋮ ? ?? 少年は神様から告げられた衝撃の事実を受け入れ、再び生を受けることとなる。 ? 目 次 ∼ ? ∼ ∼HENTAI降臨だそうですよ │││││││││││││││ ∼ 挑 戦 と 決 闘 だ そ う で す よ ∼ │ ∼ │││ ∼再開の時だそうですよ ∼神様だそうですよ ∼ コ ミ ュ ニ テ ィ だ そ う で す よ ∼ボーイズトークだそうですよ ∼ ∼ 89 161 144 114 ∼ p r o l o g u e o n e ∼ ∼ ? ∼ │││││││││││││ ︼ ∼世界の果てを訪れるそうですよ │││││││││││││││ ∼ ? 1 23 ∼ p r o l o g u e t w o ウサギが呼びました ∼ │││││││││││││ ︻YES ∼箱庭にやって来たそうですよ ! ? ? ? ! ∼ 説 明 を 受 け る そ う で す よ ? 179 211 ? ? 54 34 74 │ ∼ prologue one ∼ │││││前後左右、永遠に続くかと錯覚する程に真っ白な空間⋮⋮。 ﹂ 俺が重たい目を開くとそれが広がっていた。 何処ここ⋮⋮ ? ⋮⋮一番あり得る現実的な考えだ。 コレなら今の自分の現状を説明することができる。 コレは俺の見ている夢で別に不思議なことではない。 │││││ひとつ。 俺は目を瞑りふぅ、と息を吐く。そして予想できる仮説をいくつかたてる。 こんな時こそ慌てず、冷静な思考が必要だ。 ﹁⋮⋮こんな時こそ冷静にならないと⋮⋮﹂ 辺りを見回してみるものの、その白い世界には俺以外見当たらない。 ﹁⋮⋮あれ ? 1 │││││ひとつ。 コレは現実世界で、俺は拉致・監禁された。 コレも無いことは無い考えだが、俺を拉致したとしても犯人にメリットがないうえに この白い空間の説明がつかないためほとんど無いと考えていいだろう。 │││││ひとつ。 コレはあまりに飛躍し過ぎているのだが⋮⋮ 俺は既に死んでおり、ここは天国もしくは地獄である。 │││││ひとつ。 超常現象よりあり得ないが⋮⋮ 二次創作でよくある︻神様転生︼のための場所⋮⋮という荒唐無稽な仮説。 自分のたてた仮説を吟味した結果、そのような思考に至る。 ﹁⋮⋮やっぱりコレは夢なのかなぁ⋮⋮﹂ ∼ prologue one ∼ 2 │││││俺が唸りながら考えていると、突然背後から何かを叩きつけたような音が ﹂ 聞こえてくる。 ﹁⋮⋮ん ﹂ ?? ﹁申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁあっっっっ ﹂ 空間を震わせるほど音の波が広がるのをみるとついつい遠い目をしてしまう。 声の爆弾が炸裂した。 !!!!! しばしの無言の時を経て、俺は声を掛けようと少女に近づくと⋮⋮ 俺はあまりのことに眼を擦り二度見をしてしまった。 ⋮⋮えっ │││││土下座をした幼い少女がいた。 怪訝に思った俺が背後を振り返って見ると│││││ ?? ﹁⋮⋮えっ ? 3 ﹁え、えっと⋮⋮取り敢えず⋮⋮話を聞かせてくれないかな 何はともあれ、彼女から話を聞くべきだろう。 彼女なら何か知っているはずだ。 │││││何も無い所から現れたんだから。 少女は頭をあげて、申し訳なさそうな表情を浮かべた。 ﹂ ﹂ 俺の目がおかしくなってしまった訳でなければ、彼女は│││││ ? 聞いたことない名前だね⋮⋮﹂ ?? ﹂ ? 俺は少女の発言を自らの中で反復させ、そして目を見開く。 ﹁神によって創られた空間か⋮⋮ん、神⋮⋮ ﹁︻神の間︼とは、その名の通り神によって創られた空間のことを指します⋮⋮﹂ 俺が眉をひそめ、首を傾げれば、少女は俺の疑問を解決させるべく口を開く。 ﹁︻神の間︼⋮⋮ ﹁⋮⋮此処は︻神の間︼⋮⋮﹂ その質問をすると少女は泣きそうな表情をし、ゆっくりと話を始めた。 ﹁ひとまず基本的な質問から⋮⋮此処は一体何処なのかな ? ﹁は、はい⋮⋮すみません⋮⋮﹂ ∼ prologue one ∼ 4 ﹁神が創ったということは⋮⋮キミの正体はまさか⋮⋮ 少女をじっと見つめて、言葉を待つ。 ﹂ ? ﹂ ! ﹁│││││︻神の間︼に、人間が入る条件は⋮⋮ ﹂ │││││どうか俺の考えすぎであって欲しい。そんな思いをのせながら⋮⋮。 俺はもう既に予想がついていたのだが、聞かずにはいれなかった。 ? 俺は、激しく脈打つ心臓を目の前に錯覚しながら口を開いた。 ﹁はい。なんですか ﹁⋮⋮じゃぁ、神様。もう一つ質問をさせて欲しい﹂ 少女は泣きそうになりながらも笑った。 │││││所詮は名ばかりですが⋮⋮。 私は│││││︻神︼と呼ばれる存在です⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮はい。あなたの考えてる通りです。 5 ﹁│││││人間が︻神の間︼に入る条件はその者の︻死︼。 ⋮⋮魂となった存在をここに召喚するこのです⋮⋮﹂ その後は続けない。 ﹁じゃぁ、俺は⋮⋮﹂ 言ってしまえば悲しくなるから、そして│││││ ﹁は、はい⋮⋮あなた⋮⋮は⋮⋮死んで⋮⋮しまい⋮ました⋮⋮っ﹂ │││││少女が⋮⋮神様が泣きながら伝えようとしてくれたから。 2人の間に沈黙が続く⋮⋮。 ? ﹁そ、それは⋮⋮﹂ 突然の俺の問いに、少女はビクンと体を震わせた。 ﹁⋮⋮ちなみになんで俺は死んだのかな⋮⋮ ﹂ 天を掴むような話だが⋮⋮一概に嘘だと拒絶することは出来ない。 突然の自分の︻死︼。 虚無感が俺を襲う。 ﹁⋮⋮そっかぁ⋮⋮﹂ ∼ prologue one ∼ 6 ﹁それは⋮⋮ ﹂ ⋮⋮それはどういう意味かな ﹁キミの⋮⋮ミス⋮⋮ ? ﹂ 少女はせっかく止まった涙を再び目に溜めながらそう言った。 ﹁わ、私の⋮⋮ミスです⋮⋮﹂ 俺は震える少女から視線を外さず、じっと見つめる。 ? ﹂ ? ます⋮⋮﹂ ﹁︻大罪人︼の棚に置かれた︻生命の書︼には遅かれ早かれ︻死︼に至る書き込みをされ ﹁私が⋮⋮間違えて︻大罪人︼の棚に置いてしまったんです⋮⋮﹂ 小さくコクリと頷いた少女。 ﹁⋮⋮はい﹂ ﹁まさか⋮⋮俺の︻生命の書︼を⋮⋮ し、その人の行いによって中に書かれることが変わるんです⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮人間には、 ︻生命の書︼というものが必ずあります。︻生命の書︼は、我々神が管理 しかし、自分が体験するとそんなわけないと思ってしまう。 俺だって︻神様転生︼系の小説を読んでいたのだから。 正直この展開を予想していなかった訳ではない。 ? 7 ﹁⋮⋮私がミスに気づいた時には⋮⋮もう手遅れになっていました⋮⋮﹂ ﹁許して貰えるとは思っていませ﹁良いよ。許してあげる﹂⋮⋮っぇえっ その様子に可愛らしさを感じてしまう。 ﹂ ﹂ 少女は涙を溜めた眼を大きく開いて変な声をあげながら驚愕の表情を浮かべた。 ??!! わ、私が⋮⋮私が貴方を⋮⋮殺してしまったのにっ ﹁もし、死ななかったら面白く生きれたかもしれない﹂ ﹁もし、死ななかったら幸せを知れたかもしれない﹂ ﹂ 俺が喋る度に少女の雰囲気は暗く重いものとなる。 ﹁もし、死ななかったら楽しみを見つけられたかもしれない﹂ ﹁│││││でもね⋮⋮ ? !!! ﹁だから、許してあげるって言ってるの﹂ ﹁な、なんでですかっ ? その姿は拒絶を恐がる小さな子供のようだった。 身を強ばらせる少女。 ﹂ 少女は身を乗り出し、至近距離で俺に聞いて来る。 ?! ﹁⋮⋮別に君が少しも憎くない訳じゃないよ ∼ prologue one ∼ 8 少女は俺の顔をじっと見詰める。 ﹂ ﹂ ﹂ キザったらしい物言いをしたのは分かっているが後悔はしていない。 ﹁俺が死ななかったら、君との出会いっていう奇跡が起きなかったんだよ ﹁だから許してあげる。 出会いっていうものは尊いものだしね │││││だから泣かないで 俺は少女に明るい笑顔を向けた。 少女は泣きながらも笑顔を浮かべてくれた。 ﹁ぁぅ⋮⋮あり⋮⋮がとう⋮⋮ございますぅ⋮⋮っ ? その笑顔は俺の瞳を捕らえて離さなかった。 │││││閑話休題。 ﹁所で俺はどうなるんだい ! ? ふとした疑問を抱いた俺は、さっそく少女に聞いてみる。 ? ﹂ ? 9 ﹁そのことですが⋮⋮実は貴方は死ぬ予定ではなかったので⋮⋮天国に空きが無いんで す⋮⋮﹂ ﹂ │││││地獄なんてもっての他ですしね。 ﹁じゃあ俺はどうすれば良いの 此処で君と仲睦まじく過ごせば良いのかな 俺が冗談めかしく少女に向かって言った。 正直それも悪くないとは思っている。 ﹁ふぇっ 彼女となら楽しく会話をすることができそうだ。 ? ? それが良いですねっ ⋮⋮た、確かにそれもありですね⋮⋮ │││││いや !! ﹁お、お∼い 神様ちゃ∼ん ﹂ ? わ、私は何を⋮⋮っ ?! ﹁えへへ∼♪駄目ですよぅ∼♪ ? ﹂ 見るからに桃色空間にトリップしている様子は少なくとも神様には到底見えない。 頬を紅く染めてクネクネとしている少女。 彼なら私を優しく包んでくれそうですし⋮⋮﹂ ! ?! ⋮⋮はっ ?! ∼ prologue one ∼ 10 ようやく戻ってきた様子の神様ちゃん。 ﹂ ﹂ 桃色空間での出来事はそんなに楽しかったのかな⋮⋮ ﹁お帰り神様ちゃん。 イイ感じにトリップしてたね ﹁お、お恥ずかしい⋮⋮﹂ ﹁ふふふ⋮⋮。 俺はこれからどうすれば良いの ?? もし良ければ別の世界に︻転生︼しませんか さて、神様ちゃん ﹁は、はいっ ? ﹂ ??? ﹁本当ですかっ 良かったぁ∼⋮⋮﹂ そんな楽しそうなこと、断る道理はない。 それで、︻転生︼の件だけど喜んで受けるよ﹂ ﹁いや、なんでもないよ。 少女は俺の呟きに可愛く首をコテンと横にかしげていた。 ﹁ ﹂ 一番ありえないであろう仮説がまさかの本当に起こってしまった。 ﹁⋮⋮まさかの4つ目だったか⋮⋮﹂ ? ? 少女は元気に明るくそういった。 ! ? 11 ! 私だって成長したらもっとスタイルが良いんですよ 俺からの返事に︵小さな︶胸をなでおろしていた少女︵幼女︶。 ﹁⋮⋮失礼なっ ﹂ ! それから少女は何も無い虚空から、一枚の紙をその手に出現させた。 ﹁まったくもぅ⋮⋮当たり前ですよっ﹂ 神様なのだから当然と言えば当然な能力である。 キミは心の中を読めるんだね⋮⋮﹂ ﹁ふふふ⋮⋮ごめんね。 少女は頬大きくを膨らませて私怒ってますという雰囲気を出している。 !! ﹂ ? ﹁これで契約終了です⋮⋮。さて、次は︻転生︼の話をしましょう♪﹂ すると、その紙は光を放ち始め俺と彼女に半分づつ入ってゆく。 俺はそういうと、何の疑問も持たずにサインを記入する。 ﹁⋮⋮分かったよ。だけど無理は駄目だよ 幼い見た目の中にクールな雰囲気というギャップに魅力を感じる。 真剣な表情を浮かべながらも優しい笑みを向ける少女。 これから貴方は私が護ります﹂ 貴方のことは私が背負わないといけませんから⋮⋮。 ﹁│││││ここにサインをして下さい。 ∼ prologue one ∼ 12 少女は機嫌を良くしながら笑った。 ﹂ 私頑張りますからっ ﹁う∼ん⋮⋮俺は何処に転生するのかな ﹁転生先は何処でも大丈夫ですよっ ﹂ ! ちゃうからね﹂ ﹁そっか∼⋮⋮じゃあ、特権 とか能力はくれるのかな それによって転生場所変わっ ? い。 ﹂ ﹂ ﹁勿論ですよっ♪私こうみえてかなり偉いんですよ げちゃいますっ ﹁じゃあ、能力の制限とかはどれくらいかな ! ? ﹁制限なんてありませんよ ﹂ │││││などと、そう思っていた時期が私にもありました。 いくら彼女が偉いと言っても限度というものがあるだろう。 ? ! 能力のひとつやふたつパパッとあ 理想としてはその世界で死なない位の強さ、少なくとも逃げられるだけの力は欲し ? 少女はガッツポーズをしながら俺に向けてやる気をアピールしてきた。 ! ? 13 ﹂ ⋮⋮と、本来ならそう言いた キョトンとした顔で当然ですと言わんばかりの態度を取る少女。 ﹁ち、ちなみに俺はいくつ能力を貰えるの ? このような優遇は許されるのだろうか⋮⋮。 ﹂ 腕を組んで胸を張った少女⋮⋮。 ﹁えっへん。私偉いんですよ ⋮⋮うん、偉さが微塵も感じないのは仕方がないよね ぶってるようにしか見えないのも事実だった。 ﹂ 小さな子が背伸びして大人 制限の無いあらゆる能力の中から10個もの数が選択可能⋮⋮。 ﹁うんそれ超チートだよね﹂ 俺は頬が引き攣るのを感じながら口を開く。 何処か残念そうに肩を落とす少女。 0個までですね⋮⋮﹂ いですけど⋮⋮貴方の魂を傷つけたくないので、私が外から与えることの出来るのは1 ﹁そうですね⋮⋮貴方にならいくつでもあげちゃいます !! ? ! ﹁じゃ、じゃあ、俺が転生した場合の基本スペックを教えてくれないかな ? ∼ prologue one ∼ 14 ﹂ ﹁はいっ♪貴方が転生した場合、身体能力だけでもその世界最強級、気や魔力、霊力など のモノが尽きることは無いでしょう﹂ 少女は良い笑顔でサラッと言ってくれた。 ﹁ちょ、ちょっと待とうか⋮⋮ もうその時点で能力要らないんじゃないのかな⋮⋮ ﹁だ、駄目ですよ 貴方には無双してもらわないと またも少女がサラッと凄いことを言ってくれた。 ﹂ !!! お、俺ってそんな最強バグキャラになるのかい⋮⋮ ﹁えっ⋮⋮ ? 少女は俺に向けて笑顔を振りまく。 ﹂ ﹁│││││それではそろそろ能力を決めましょうか♪﹂ それに、彼女の善意からなのだから⋮⋮ここは有り難く頂くべきだね⋮⋮。 ⋮⋮まぁ、弱いより強いに越したことはないだろう⋮⋮。 ﹁はいっ♪私からのお詫びですから♪﹂ ? !! 定砲台と化し、近接戦闘ともなれば圧倒という理不尽な真似が出来てしまう⋮⋮。 身体能力だけで世界最強級⋮⋮魔力などの限度がないと言われれば遠距離からは固 ? ? 15 愛らしい笑顔に自然と俺の頬も解けた。 ﹁分かったよ。 ちょっと時間をくれるかな そこから俺は瞑想を始めた。 │││││1時間は経っただろうか 俺は何とか纏まった考えを少女に貰った紙に書き出してふぅ、と息を吐いた。 ? これから先ずっと付き合うモノだし、自分に合う能力を考えたいからね⋮⋮﹂ ? ﹁はいっ♪何ですか 私気になります ﹂ ﹁遠慮無しに書いてしまったけど⋮⋮大丈夫かな ! ﹂ 制限がない、と言われたため何の遠慮もなしに書いてしまった事に後悔を覚えなが ? ? 俺の呟きに少女は興味津々という具合に近づいてきた。 ﹁よし⋮⋮やっと決まったね⋮⋮﹂ ∼ prologue one ∼ 16 ら、紙を少女に渡す。 ﹁なになに ︻能力を創る能力︼ ︻完全記憶能力︼ ︻存在する世界全ての知識︼ ︻武術の才能︼ 5つしかありませんよ ︻修行の場︼ あれ ? ﹁そうですか 場所が欲しいという意味ですか 例えば異空間だったり⋮⋮﹂ ﹂ ?? あ、それとひとつ聞きたいんですけど、この︻修行の場︼と言うのは修行するための ?? そもそも5つしかではなく5つもだと思うのは俺だけなのだろうか⋮⋮。 5つしかないのが不思議だという表情の少女に俺はそう言う。 れど⋮⋮﹂ ﹁︻能力を創る能力︼というのが許可された時点でもう殆ど願うことはないと思うんだけ ?? ? 17 ﹂ ﹁そういう訳じゃなくて、君からもらう能力をしっかりと使いこなせるようになってか ら転生したいんだ。 ⋮⋮そういう意味で︻修行の場︼なんだけど⋮⋮駄目かな 貰うだけで使いこなせるとは思っていない。 だからこそ、慣れるというのが必要なんだ。 ﹁いえいえ むしろそういう所は私にとってポイント高いですっ ? ⋮⋮。 ﹂ まずは5つ⋮⋮いえ、4つの能力をあなたにさずけましょう ﹁﹃まず﹄ しょう♪﹂ まだ後5つ分ありますから、それはもし欲しくなった時のために保留にしておきま ﹁えぇ♪ ﹂ ⋮⋮神様から直接見てもらえるのなら、もし仮に暴走してしまったとしても安心だね 少女は機嫌が良さそうにそう言った。 では、能力をあなたにさずけた後、私自ら修行を付けてあげますね♪﹂ ! ! ! ? ! ﹁それでは ∼ prologue one ∼ 18 ⋮⋮まさかの後取りが許可されてしまった⋮⋮。 ﹂ 自分がかなり優遇されているのを感じながらも、それを可能にする彼女の力に苦笑い が浮かぶ。 ﹁ともかく│││││いきますよ ﹁⋮⋮ひとつ疑問なんだが⋮⋮君は一体どれほど凄いんだい⋮⋮ ﹂ ﹁お祖父さんの名前って何なのかな ? │││││凄いことを。 ﹂ すると、少女は、またもや言った。 ﹂ 好奇心の揺さぶられることを聞いてしまっては質問しないわけにはいかない。 ? ⋮⋮あまり凄く無いですよ ﹁う ∼ ん ⋮⋮ 私 は お 祖 父 様 よ り 凄 い と 言 わ れ て、お 祖 父 様 の 名 前 を 継 い だ ん で す け ど る。 これほどまでの事が出来る彼女が神様の中でどれほど凄いのか、そこが気になり始め ? す♪﹂ ﹁これが、私の創った能力の種です。これを貴方に入れれば貴方に能力がさずけられま 少女はニコリと笑って俺の前に光る4つの光の玉を差し出した。 ? 19 ﹂ ﹁│││││北欧神話の主神にして戦争と死を司る神、︻オーディン︼です。 そして、私は︻二代目オーディン︼ですよ ﹁⋮⋮主神オーディン。 そして⋮⋮二代目オーディン﹂ 俺は遠い目で少女││オーディンを見た。 その光は俺の身体に入り、そして広がる⋮⋮。 オーディンは俺に向かって先程の4つの光を渡した。 なるほど、主神だと言うのならこれまでの出来事もおかしくはない⋮⋮のだろう。 にこにこ笑う彼女が二代目のオーディン⋮⋮。 ? │││││とても暖かく⋮⋮そして、優しい光だ⋮⋮。 ⋮⋮はい。どういたしまして⋮⋮﹂ ! 俺の言葉に驚いた様子のオーディンだったが、その表情はすぐに暖かい笑えと変えら ﹁⋮⋮ 自然と御礼の言葉が漏れた。 ﹁ありがとうオーディン﹂ ∼ prologue one ∼ 20 れた。 │││││閑話休題。 能力もさずけたことですし ﹁さて あなたの望んだ修行をしましょう そうしてもらえるとありがたい﹂ ﹁そうだね。 ⋮⋮。 ! のない広い平原になった。 ﹂ そう言ったオーディンは指をぱちん、と鳴らす。すると、周りの風景が一変し遮蔽物 ﹁まずは場所を変えましょう ﹂ こ れ か ら 彼 女 に 修 行 し て も ら う の だ か ら、恥 ず か し く な い 様 に 強 く な ら な い と ね やる気満々と言った様子のオーディン。 ! ! ! 21 ﹁これは⋮⋮凄いね﹂ ﹂ ﹁修行と言っても能力を使いこなせるようになるのが目的ですからね。 どんなに荒らしても良いような場所が適切でしょう ﹁確かにそうだね﹂ 俺が頷いて答えると、少女は微笑んだ。 ﹂ ! ﹁│││││さぁ、修行スタートです ∼ prologue one ∼ 22 ? ∼ prologue two ∼ Side 三人称 │││││修行を開始しておよそ10年。 しかしその10年という時間が全て修行に使われていたかと問われれば│││││ それは否だ。 ・ ・ ・ 何せ少年は、3年も過ぎた辺りから能力を使いこなせるようになっていたのだから。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本来なら修行はしなくていいはずだが、少年は使いこなせるようになった事を意図的 に隠していた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そしてオーディンもまた、少年が能力を使いこなせるようになったというのを隠して ・ ・ ・ ・ ・ いることを、気付かないフリをしていた。 ﹂ ?? オーディンと呼ばれた少女は少年に向かって優しい笑みを向ける。 ﹁何ですか ﹁│││││ねぇ、オーディン﹂ 23 ﹁俺はそろそろ行こうかなって思ってる﹂ ﹁えっ⋮⋮﹂ 少年の言葉に何処か悲しそうな表情を浮かべる少女。 ﹁能力も使いこなせるようになったしね﹂ ・ ・ ﹂ 呟くようにそう言った少女は、悲しそうな表情を消し、笑顔を浮かべる。 ﹁⋮⋮そ、そう⋮⋮ですか⋮⋮﹂ ﹁で、では ・ そろそろあなたを転生させる事にしましょう がったのは10年ぶりの真っ白な空間。 そう言って立ち上がった少女は、あの時と同じく、指を鳴らす。そして少年の前に広 ! ! ﹂﹂ ! 沈黙の後、2人の言葉が重なる。 ﹁﹁あ、あの 来ない。そう言ったじれったさがその場を満たしていた。 互いに何かを言いたい。そう言った様子は見えるものの、なかなか言い出すことが出 2人を沈黙が襲う。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ∼ prologue two ∼ 24 ﹂ ﹁お、オーディンから先にどうぞ あなたから先に ﹂ ? ﹂ ? 驚いた様子の少女。 ﹁⋮⋮気付いてたんですか⋮⋮ ﹂ それに⋮⋮オーディンって言うのは本当の名前じゃないんだよね⋮⋮ ? だから、確証は無かったけどそうなんだろうって思ってた﹂ 俺がオーディンと呼ぶ度にほんの少しだけ、表情が悲しげになるんだ。 ﹁気付いたのは3年を過ぎた辺りだけどね ? ﹂ ﹁オーディンが頑なに俺のことを﹃あなた﹄って呼ぼうとしてたのは気付いてた。 少年はその様子に何か理由があるのは薄々気がついていたという表情を浮かべた。 言い淀む少女。 ﹁そ、それは⋮⋮﹂ ﹁俺たち、10年も一緒に居たのにさ│││││互いの﹃本当の名前﹄知らないよね 先に折れたのは少年の方だった。 ﹁⋮⋮じゃぁ、俺から言わせてもらうね 互いに相手の言いたいことを先に聞きたいらしく、遠慮のしあいが続く。 ﹁い、いえ ! 何故バレたのかが分からないという表情を浮かべていた。 ? ﹂ ? ! 25 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮理由、聞いてもいい ﹂ に、言葉が纏まらないのだろう。 ﹁⋮⋮じゃぁ、一つだけ教えて すると、先程までは悩んでいた少女が顔を上げて大きな声で言う。 苦笑い気味の表情を浮かべる少年は心配そうにそう聞いた。 ? ? │││││俺のこと、嫌いかい ﹂ 少女は時折顔を上げて口を開こうとするが、声が出ない。何かを躊躇っているよう 無言で俯く少女に少年は尋ねる。 ? ⋮⋮あ、ありません﹂ ! 強くなったから ・ ・ │││││違う。 この10年間一緒に居たけどさ、凄く、楽しかった。 ﹁│││││ねぇ、神様。 その表情は心なしか赤く染まって見える。 少年は自らに何かを言い聞かせるように頷くと、しっかりと少女を見つめた。 ﹁そっか⋮⋮良かった⋮⋮﹂ ﹁そ、そんなこと ∼ prologue two ∼ 26 ? ﹁っっ ﹂ そんな少女に向かって少年は片手を伸ばす。 ﹂ │││││違う。 │││││違う。 能力を使いこなせるようになったから 心置きなく過ごせたから 違う。全部違うんだ。 俺はただ│││││﹂ 少年は柔らかに微笑む。 ? ﹁│││││神様と一緒にいれたからたのしかったんだよ ? 少女はその言葉に顔を真っ赤に染めた。 !!? ? 27 ﹁│││││大好き。 俺は神様が大好きだよ 少年の、突然の告白。 ﹂ ﹂ 少女の瞳から、1粒、また1粒と涙が流れた。 ? ま、まさか⋮⋮そんなに嫌だったのかい⋮⋮ ど、どうしたんだい ?! る。 ﹁ちっ、ちがう⋮⋮です⋮⋮っ。 ! ⋮⋮う、うれし、くてぇ⋮⋮。 ﹂ だめ、だって⋮⋮おもって⋮⋮たから⋮⋮っ ﹁嬉し⋮⋮かった⋮⋮ ? ﹂ のだろう、少女の美しい白髪を優しく撫でて何とか泣き止んでもらおうと四苦八苦す 悲しそうに表情を歪める少年だったがボロボロと大粒の涙を零す少女に心が痛んだ ? !? ﹁っ ∼ prologue two ∼ 28 ﹂ 少年はその言葉にぽかんと、間抜けな表情を浮かべた。 ﹂ 少女は泣きながらも美しく笑った。 ﹁はい⋮⋮っ ﹁│││││私も、あなたが大好きです⋮⋮っ 少女が泣き止んだ頃には、2人の距離は近づいていた。 少女があまりにも綺麗に泣いているから、少年は思わずその横で笑った。 ! ! 29 ﹁ねぇ、神様。 よづる これからもずっと一緒ですよ │││││閑話休題。 大好きです﹂ 2人は互いに顔を近づけて、やがて│││││唇を重ねた。 ? ﹂ ! 今更だけど自己紹介しようよ﹂ 顔を赤く染める少女を愛おしげに見つめる少年。 ﹁そうですね⋮⋮これからは⋮⋮その⋮⋮こ、恋人ですしね⋮⋮っ し ら ぬ い 2人は向かい合って10年越しの自己紹介をする。 大好きだよ﹂ ﹁俺は﹃不知火 夜鶴﹄。ただの人間だ。 これから末永く宜しくね ? ﹁私は﹃オーミ﹄。ただの神です。 ∼ prologue two ∼ 30 晴れてこ、恋人になれたわけですし ﹁さて 此処は明るく行きましょう ﹂ ﹁大切なことですからねっ 忘れないで下さいっ 以後、気をつけるよ﹂ ﹁ごめんごめん。 そう言い合う2人は笑っていた。 ﹂ ﹁さて、まずは夜鶴が転生したい世界を教えてくれますか ﹁分かったよ。 ﹂ ? ﹁了解しました。 な ﹂ じゃぁ、 ︻問題児たちが異世界から来るそうですよ ︼の世界に転生させてもらえるか ? ! ! 告白という出来事で、夜鶴は他のことを何処かに置いてきてしまっていたようだ。 ﹁そう言えば俺は転生するんだったね⋮⋮すっかり忘れていたよ﹂ 私もやっと悔いもなく送り出せます ! ! ! ! 31 ? ひとつ相談何ですけど⋮⋮﹂ ⋮⋮あ、そうでした あの⋮⋮夜鶴 ! オーミ﹂ 恥ずかしそうに提案するオーミ。 ﹁そ、その⋮⋮夜鶴の能力に私を召喚するってモノを⋮⋮付けてもいいですか⋮⋮ ﹁なんだい オーミはモジモジとしながら言う。 ? ﹁本当ですか むしろこちらから頼みたいくらいだよ﹂ ﹁勿論、良いよ。 て口を開いた。 ﹂ 夜鶴は初めはきょとんとした表情を浮かべていたものの、すぐに暖かな笑みに変わっ ?? ? ﹂ よ、よかったぁ∼⋮⋮これであちらの世界に転生しても会いに行くことができますっ ! ﹁これで準備完了ですね♪ ﹂ そして、早速と言わんばかりに光の玉を作り出し、それを夜鶴の胸に押し込んだ。 嬉しそうに笑うオーミ。 ! それでは早速転生の準備に取り掛かります ! ∼ prologue two ∼ 32 そう言ったオーミは瞳を閉じて両手を夜鶴に向けた。 すると、その両手には暖かな光が宿り、そしてそれは夜鶴の方へ移ってゆく。 それが準備だったのかオーミは瞳を開けて口を開く。 ﹁先程の能力、絶対に使ってくださいね⋮⋮ 呼んでくれないと拗ねちゃいますから﹂ ﹁ふふふ⋮⋮分かってるよ﹂ オーミ﹂ そう言って、夜鶴はオーミを抱き寄せた。 ﹁それじゃぁ、行ってくるね │││││その姿を消し、転生を果たした。 そして夜鶴は移ってきた光と完全に一体化し│││││ ﹁はい。行ってらっしゃいです。夜鶴﹂ ? ? 33 ︻YES ウサギが呼びました ∼箱庭にやって来たそうですよ Side 夜鶴 俺がこの世界に転生してから17年。 とだろう。 これはオーミなりの配慮というものだろうか むしろ修行をつつがなく行うことができた。 をしたので問題は大してなかった。 ︼ ∼ まぁ、何にせよ、俺は︻身体を変化させる能力︼を創り出して成長し、ひとり暮らし ? そんなことよりもまず話すべきは、この世界において俺には親がいなかったというこ 勿論いくつかの能力も創ったし、それを使いこなすための修行もした。 その間にも色々なことがあった。 ! ? ! ﹁んん∼⋮⋮それにしても⋮⋮暇だねぇ⋮⋮﹂ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 34 りょうぎ しき そんな俺も能力を使わずにやっとここまで成長することが出来た。 しかし俺の容姿が︻空の境界︼に出てくる︻両儀 式︼になっているとわかった時は かなり驚いた。 ⋮⋮最近では女性に間違われるのが少々面倒になってきている。 │││││ある御嬢様な少女は、部屋の中で⋮⋮ │││││ある快楽主義な少年は、川辺で⋮⋮ 夜鶴が静かに眠りについたその時、まさに原作が始まろうとしていた。 Side 三人称 Side Out 俺は、寝転がるベットの上で早く原作が始まることを願いながら眠りについた。 ﹁原作の開始はいつになる事やら⋮⋮﹂ 35 │││││ある動物が友人な少女は、猫から⋮⋮ さかまき い ざ よ い 自分宛の不思議な手紙を手に入れていた。 あすか ﹃逆廻 十六夜 殿へ﹄ くどう か す か べ よう ﹃久遠 飛鳥 殿へ﹄ 我らの︻箱庭︼に来られたし﹄│││││ 己の家族を、 友人を、財産を、世界の全てを捨て、 その才能を試すことを望むならば、 │││││﹃悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。 │││││迷いなくその手紙を開封したのだ。 三者三様の反応を浮かべたが、結局とった行動は皆同じ。 ﹃春日部 耀 殿へ﹄ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 36 ﹂ そして、勿論夜鶴の元へもその手紙は届いていた。 ﹁これは そう言いながら夜鶴は手紙を開封したのだった。 ⋮⋮そうか⋮⋮やっと始まるんだね⋮⋮うん、凄く楽しみだ﹂ ! ﹃不知火 夜鶴 殿へ﹄ 何かと思いそれを手に取ってみると⋮⋮ 胸に何かが落ちてきたという感覚で眠りから醒めた夜鶴。 ﹁⋮⋮ん⋮⋮ ? 37 ﹂﹁きゃっ ﹂ ﹂﹁ふふふふふ ?! ?! ﹂﹁にゃっ !? !? ﹂ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side Out これから、夜鶴のお話が始まって行く。 彼ら4人と1匹の目の前に広がっていたのは│││││完全無欠に異世界だった。 少しばかりの悲鳴、そして笑い声が木霊する。 ﹁えっ ! ﹁わっ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 38 Side 夜鶴 辺りの風景はまるっと切り替わり、見たことのないような風景が広がっていた。 今の時代コンクリートジャングルの多い町中でこれだけの自然を見たことのある者 がどれだけいるだろうか。 青々と生い茂る草木に静かに流れる小川。 その向こうには栄えているであろう近未来的な街が存在している。 好奇心を揺さぶられる光景に両手放しで喜びたいのだが、今はこの状況を何とかしよ うかな⋮⋮。 ﹂ │││││何せ俺たちは上空4000mからのパラシュート無しスカイダイビング をしているのだから。 ﹁これは⋮⋮なかなか⋮⋮っ 湖には4つの大きな水柱と1つの小さな水柱がたてられた。 そして、一瞬の内に着水。 目にも止まらぬと表すべきか、結構なスピードで落下していく俺。 ! 39 湖から濡れた洋服に苦戦しながら、自力であがった俺たちは、というか問題児たちは、 ﹂ まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて ﹂ 口々に文句を言い始める。 ﹁し、信じられないわ ﹁右に同じだクソッタレ。 場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。 石の中に呼び出された方がまだ親切だ﹂ ﹂ ﹁石の中じゃ動けないでしょ﹂ ﹁俺は問題ない﹂ ﹁そう、身勝手ね﹂ ﹁さあな。 あの落下の最中にそこまで見たという事実に少々の驚きを感じる。 まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか ? ﹃俺超問題児 たところかな ﹄ってオーラと﹃超御嬢様 ? !! ! ﹄ってオーラに﹃無関心﹄ってオーラと言っ 3人が3人とも問題児オーラを迸らせる勢いだ。 それにしても⋮⋮間近で見るとこれまた性格が捻じ曲がっているのが分かる。 ? ! ﹁此処.........どこだろう ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 40 !! ﹂ 私は︻久遠 飛 服から水を絞り終えたのか、金髪の少年が髪をかきあげ俺たちの方を向いて喋り始め た。 ﹁まず間違いはないだろうが⋮オマエらにもあの変な手紙が ﹁えぇ、そうよ。だけどまずその︻オマエ︼って呼び方やめてくださる 鳥︼よ﹂ に視線を向けた。 ﹁そちらの猫を抱えている貴女は ﹁⋮⋮︻春日部 耀︼。以下同文﹂ ﹂ ﹂ ? 金髪の少年│││││逆廻くんはそういうと、俺の方を見た。 ﹁ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様﹂ ﹁そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君﹂ 切な態度で接してくれよなお嬢様 粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適 ﹁高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な︻逆廻 十六夜︼です。 初対面にしては散々な言われように言われてもいない俺の顔に苦笑いが浮かぶ。 ? ? ﹁そう、よろしく春日部さん。そこの野蛮で凶暴そうな貴方は ﹂ 飛鳥と名乗った少女は金髪の少年ににそういうと、今度は座って猫を拭いている少女 ? ? 41 ﹁んで、そこの和服のアンタは ﹂ 俺は、︻不知火 夜鶴︼。 久遠さんが俺を見て尋ねて来る。 ﹁⋮⋮失礼だけど、不知火さんは女性 それとも男性 ? 俺は、にこりと柔らかに笑ってそういった。 何処にでもいるただの人間だよ﹂ ﹁俺か ? ﹂ ﹂ 何も言わずに女性だと思われるよりかは遥かにマシだろう。 やっぱりこの見た目だと性別の判断に悩むんだね⋮⋮。 ? ? ? 本当に性格捻じ曲がってるなぁ⋮⋮。 最後の最後に毒を吐いた久遠さん。 ﹁貴方と一緒だなんて傷ついたわ﹂ ﹁ヤハハ。俺も女だと思ってたぜ﹂ 私はてっきり女性だと思っていたわ﹂ ﹁ご、ごめんなさい。 ⋮⋮そんな事だろうとは思っていたよ⋮⋮。 それを聞いた3人は、例外なく驚きの表情を浮かべた。 ﹁久遠さん。俺は、男だよ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 42 心からケラケラと笑う逆廻十六夜。 傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。 我関せず無関心を装う春日部耀。 そんな3人を観察する不知火夜鶴。 物陰から見ているであろう黒ウサギはそう捉えているはずだ。 その時何処からか、重いため息が聞こえた気がした。 少なくとも俺は客観的に見て想像できそうにない。 六夜たちが協力する姿なんて想像出来ないだろうし。 なんせ、自分たちが召喚した助っ人だというのに、短い間しか見ていないだろうが、十 黒ウサギも大変なんだろうなぁ⋮⋮。 しかも不本意ながら俺まで問題児判定されてるような感じの。 心の声が聞こえた気がする。 ⋮⋮なんだろう。 ︵うわぁ⋮⋮何だか問題児ばっかりみたいですねぇ⋮⋮︶ 43 │││││しばらくして逆廻くんが苛立たしげに喋り始めた。 ﹁⋮⋮で、呼びたされたのはいいけどなんで誰もいねえんだよ この状況だと普通、誰か説明する奴ぐらい現れるんじゃねえのか ﹁そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの﹂ ﹁⋮⋮。 ﹁まぁ、仕方がないんじゃないかな ﹂ ﹂ ⋮⋮この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど⋮⋮﹂ ? ? こうなったらそこに隠れている奴にでも話を聞くか ? ﹁│││││仕方がねえな⋮⋮。 ﹂ 黒ウサギだって今の3人の苛立たしげな雰囲気を感じて焦ってるんだろうし⋮⋮ ? ﹂ 逆廻くんがわざとらしく、誰にでも聞こえるような大きめな声でそういった。 ﹁なんだ貴方も気づいていたの ? ﹁当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ ? ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 44 春日部と夜鶴も気づいていたんだろ ﹁⋮⋮風上に立たれたら嫌でもわかる﹂ ﹁長年の経験上ね⋮⋮﹂ ﹁へぇ⋮⋮おもしれぇなお前⋮⋮﹂ 目の笑っていない逆廻くん。 ﹂ まさかとは思うが、ターゲットにされてしまったのだろうか ? ﹁や、やだなぁ御四人様。 そんなら狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ ⋮⋮ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。 ﹂ ? ﹁あっは、取りつくシマもないですね♪﹂ ﹁⋮⋮強く生きてね﹂ ﹁お断りします﹂ ﹁却下﹂ ﹁断る﹂ 嬉しいでございますョ そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便にお話を聞いていただけたら ? そんななか気配の主│││││黒ウサギがビクビクしながら出てくる。 ? 45 バンザーイ、と降参のポーズを取る黒ウサギ。 しかし、黒ウサギの目は俺たちを値踏みするかのようにしていたのを俺は見逃さな かった。 そんな中で春日部さんは黒ウサギに近づいて行き、その頭についているウサギ耳を ﹂ ロックオンすると│││││鷲掴みし、力一杯引っ張った。 ﹁えい﹂ ﹁フギャ ﹂ !? ﹁自由にも程があります ﹂ 黒ウサギは今度は俺に視線を向けると必死の表情で言った。 ! ﹁│││││好奇心の為せる業﹂ 黒ウサギは自らの耳を護るように手をあげると春日部さんに問い掛けた。 引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を ! 気の抜けたようなしかし、切実な黒ウサギの悲鳴があがった。 !? ﹁ちょ、ちょっとお待ちを ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 46 ﹁どうか⋮⋮どうかお助け下さい ﹂ ⋮⋮俺が最後の希望というものだったのだろうか ﹁へえ このウサ耳って本物なのか ﹂ そんな黒ウサギに追い討ちをかけるかの如く、逆廻くんたちが動き始めた。 ? 俺は初めに言ったように、その言葉を返すと黒ウサギの顔は悲しみで染まった。 ﹁⋮⋮強く生きて⋮⋮﹂ !! ? ﹂ ﹁⋮⋮皆ほどほどにね∼⋮⋮ ﹂ そんな叫び⋮⋮いや、悲鳴が辺りを木霊した。 ﹁フギャァァァァァァッッ !!!?? 十六夜は右。飛鳥は左のウサギ耳を掴むと左右同時に引っ張った。 ﹁⋮⋮⋮。じゃあ私も﹂ ? ﹁│││││あ、あり得ない。あり得ないのですよ⋮⋮。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ? 47 まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは⋮⋮。 学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス⋮⋮﹂ 半ば本気の涙を瞳に浮かべる黒ウサギに同情する者は誰一人として居なかった。 ﹁いいからさっさと進めろ﹂ ⋮⋮まぁ、俺を除いてだけどね⋮⋮ ⋮⋮よ、ようこそ、︻箱庭の世界︼へっ 言いm﹁さっさと言え﹂ ? のだろうか⋮⋮。 あの3人が彼女の話を﹃聞くだけ聞こう﹄という程度には耳を傾けているだけマシな ?? ﹁そうです ﹂ ? ﹂ ! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではござ いません ! のでございます。 その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵な ! ﹁ギフトゲーム 加資格をプレゼントさせて頂こうかと召喚いたしました 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる︻ギフトゲーム︼への参 ! ﹁それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 48 ︻ギフトゲーム︼はその︻恩恵︼を用いて競い合うためのゲーム。 ﹂ そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活でき る為に作られたステージなのでございますよ ﹁まず、初歩的な質問からしていい 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多と 貴方の言う︻我々︼とは貴女を含めた誰かなの ﹁Yes ﹂ 久遠さんはその説明に対して質問するために手をあげていた。 大げさに両手を広げ、俺たちに説明していく黒ウサギ。 ! ある︻コミュニティ︼に属していただきます♪﹂ ! ﹂ ? ムもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。 ﹁様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲー ﹁⋮⋮⋮︻主催者︼って誰 というとってもシンプルな構造となっております﹂ そして︻ギフトゲーム︼の勝者はゲームの︻主催者︼が提示した賞品をゲットできる ﹁属していただきますっ !!! 逆廻くんはコンマ数秒で拒否の言葉を口にした。 ﹁嫌だね﹂ ? ? 49 特徴として、前者は自由参加が多いですが︻主催者︼が修羅神仏なだけあって凶悪か つ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。 しかし、見返りは大きいです。 ︻主催者︼次第ですが、新たな︻恩恵︼を手にすることも夢ではありません。 後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれら ﹂ は︻主催者︼のコミュニティに寄贈されるシステムです﹂ ﹁後者は結構俗物ね⋮⋮チップには何を るのであしからず﹂ 黒ウサギはその笑みのなかに黒さを混ぜる。 これは俺たちを怖がらせようとしているのだろうか ﹁どうぞどうぞ♪﹂ ﹁ゲームはどうやったら始められるの ﹂ ? ﹂ 久遠さんはその持ち前の挑発的な声音で黒ウサギに質問をする。 もしそうならあまりにもお粗末過ぎるというのが俺の感想である。 ? とも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然ご自身の才能も失われ ﹁それも様々ですね。金品、土地、利権、 名誉、人間、⋮⋮そしてギフトを賭け合うこ ? ﹁そう。なら最後に一つだけ質問させてもらってもいいかしら ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 50 ? ﹁コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK です ださいな﹂ ﹂ 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加して行ってく ! なかなか鋭いですね。 ? ︻ギフトゲーム︼の本質は全く逆 一方の勝者だけが全てを手にす ! !! つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話で しかし、︻主催者︼は全て自己責任でゲームを開催しております。 ﹁ごもっとも。 ﹁そう。なかなか野蛮ね﹂ ことも可能ということですね﹂ 店頭に置かれている賞品も、店側が提示したゲームやクリアすればタダで手に入れる るシステムです。 ⋮⋮が、しかし 我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。 しかし、それは八割正解、二割間違いです。 ﹁ふふん 案外鋭い久遠さんの問いに黒ウサギは感心したかのような声をあげてまた喋り出す。 ﹁⋮⋮⋮つまり︻ギフトゲーム︼はこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら ? 51 ございます﹂ そう告げると黒ウサギは一枚の封書を取り出した。 義務がございます。 ﹁さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える ⋮⋮が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。 新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない⋮⋮。 ﹂ ﹂ それともゲームそのものですか ﹂ ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが⋮⋮⋮よろし いですか ルールですか 今まで清聴していた逆廻くんが黒ウサギに向かって真剣な顔で話しかけた。 ﹁⋮⋮どんな質問でしょうか ? ﹁そんなのはどうでもいい。あぁ、どうでもいいんだ。 ? 俺が聞きたいことはただ一つだけ。 ? ? ? ﹁│││││待てよ、俺がまだ質問してないだろ ∼箱庭にやって来たそうですよ?∼ 52 │││││この世界は面白いか ﹂ 逆廻くんの言葉に俺を含む全員が黒ウサギを見つめ、次の言葉に耳を傾けた。 ? 俺は小さく呟いた。 ﹁⋮⋮ワクワクしてきたよ﹂ この世界で、どんな楽しいことに出会えるのだろうか│││││。 黒ウサギは目を輝かせ楽しそうにそして嬉しそうに自信満々で答えた。 箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪﹂ 戯。 ﹁│││││Yes。︻ギフトゲーム︼は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊 53 ∼世界の果てを訪れるそうですよ Side 夜鶴 ∼ 黒ウサギは迷惑を掛けてなんぼだろ ﹂ ﹁う∼ん⋮⋮黒ウサギに迷惑が掛かっちゃうけど魅力的な誘いだなぁ⋮⋮﹂ ﹁なぁ夜鶴。今から世界の果てに行こうと思ってるんだけど一緒に行かねぇか ﹂ 黒ウサギたちと共にコミュニティへ向かう途中で、俺は十六夜に声を掛けられた。 ? ? 黒ウサギはいつか過労で倒れる気がするのは俺だけなのだろうか⋮⋮。 ⋮⋮逆廻くん⋮⋮それは身も蓋もないよ⋮⋮。 ﹁なら、行こうぜ ! うかな﹂ やっぱりそうこなくっちゃな ﹂ !! いや⋮⋮むしろ跳びだしたというまである。 逆廻くんはそう言うと、俺の和服の袖を掴み、その直後に突然走りだした。 ﹁よし来た !! ? ﹁う∼ん⋮⋮まぁ、逆廻くんの言うことはともかく、世界の果てには興味があるから行こ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 54 Side Out ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 三人称 十六夜と夜鶴が世界の果てに向かってしばらくたった頃。 残った飛鳥と耀、黒ウサギは都市の外壁まで辿り着いていた。 ﹂ 入り口には、一人の少年が座っており、それを見た黒ウサギは耳をピンとたてて走り 寄って行った。 新しい方を連れて参りましたよ∼ ! こちらの御四人様⋮⋮が⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹁お帰り黒ウサギ。そちらの女性二人が ﹁はい あれ ? 私の記憶に間違いが無ければもうお二方いませんでしたっけ ? ? 体を固めた。 ﹁⋮⋮⋮え⋮⋮ ? クルリと後ろを振り向いた黒ウサギはそこにいるはずの存在が見当たらず、カチンと ! ? たと言わんばかりに声を掛ける。 近づいて来る黒ウサギに笑顔を向ける少年は後ろにいる二人を見ると、待っていまし ﹁ジン坊っちゃ∼ん !! 55 ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から︻俺問題児 ︼っ てオーラ を放っている殿方と、見た目は女性で、和服の似合っていたとても真面目そうで黒ウサ ! ﹂ ﹄と言って駆け出して行ったわ。あっ ギを励ましてくれたまさに︻大和撫子︼な殿方が⋮⋮﹂ ﹁あぁ⋮⋮十六夜君と不知火さんのこと 彼らなら﹃ちょっと世界の果てを見てくるぜ ちの方に。 まぁ、不知火さんは十六夜君に引き摺られていたけど⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ 飛鳥はそう言い、遥か遠くに見える断崖絶壁を指差した。 ﹁だって﹃止めてくれるなよ﹄と言われたもの﹂ ﹁ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですかっ 実は面倒くさかっただけでしょう皆様方 !? !? ﹁⋮⋮﹃黒ウサギには言うなよ﹄と言われたから﹂ ﹁嘘です、絶対嘘です ﹁﹁うん﹂﹂ ! 世界の果てには野放しにされている幻獣が⋮⋮﹂ ジンと呼ばれた少年が話を聞くと蒼白になって叫ぶ。 ﹂ ﹁た、大変です ﹁幻獣 ? ! ! ? ﹁な、なんで止めてくれなかったんですかっ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 56 ! ﹂ ﹂ ⋮⋮斬新 ﹂ ﹂ 申し訳ありませんが、御二方のご案内をお願いしても宜しいでしょうか ﹁分かったよ。黒ウサギはどうするの ﹂ !! 皆さんはゆっくりと素敵な箱庭ライフを御堪能ございませっ ﹁一刻ほどで戻ります 黒ウサギは壁に亀裂が入るほどの力で跳びだして行く。 ﹂ !!! ! ﹂ 跳び上がった黒ウサギは外壁の傍にあった門柱に水平に張り付き、飛鳥たちを見た。 そう言った黒ウサギの水色の綺麗な長髪は桃色に染まり、ウサギ耳をピンと立てた。 まで後悔させてやりますのでっ ⋮⋮事のついでに︻箱庭の貴族︼と謳われるこの黒ウサギを馬鹿にしたことを骨の髄 ﹁│││││問題児様方をを捕まえに参ります ! ? ? ﹁ハァ⋮⋮ジン坊ちゃん。 ジンは彼らの身を案じているのか、ことの重大さを必死に伝えようと声を張った。 ? ﹂ ﹁は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉 で、出くわせば最後⋮⋮とても人間では太刀 打ち出来ません ﹁⋮⋮ゲーム参加前にゲームオーバー ﹁あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバーなの ! ﹁冗談を言っている場合ではありませんっ !!! ? ? 57 その速度は圧巻の一言。 一瞬で飛鳥たちの視界から消えてしまう程だった。 ﹁⋮⋮箱庭の兎は⋮⋮随分早く跳べるのね⋮⋮。素直に感心するわ⋮⋮﹂ ﹁黒ウサギは箱庭の創始者の眷属。 力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。 彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが⋮⋮﹂ 黒ウサギの跳んで行った方角を心配そうな様子で見詰めるジン。 そんなジンに飛鳥は明るめの声で話し掛けた。 はい エスコートは貴方がしてくださるのかしら ﹁え⋮⋮あっ ! ﹂ ﹂ ? ﹁久遠飛鳥よ。そして、そこで猫を抱えているのが﹂ ジンはその歳の割には幼さを感じさせない丁寧な口調で自己紹介をした。 所でお二方の名前をうかがっても宜しいでしょうか⋮⋮ 齢十一になったばかりの若輩ですが宜しくお願いします。 僕はコミュニティのリーダーをしている︻ジン=ラッセル︼です。 ! ? しょう。 ﹁⋮⋮黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしま ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 58 ﹁⋮⋮春日部耀﹂ まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ﹂ ﹁⋮⋮さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。 今の速度はせいぜい新幹線の運行速度程度。 ﹂ 飛鳥はそう言うと、ジン、耀を連れて箱庭の町中に入って行った。 Side Out ﹂ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 夜鶴 何かな逆廻くん ﹁そういえば夜鶴﹂ ﹁うん ? ﹁俺結構な速さで走ってるんだが⋮⋮なんで着いて来れるんだ ? これくらいなら楽に出すことができる。 ? 59 ﹂ これは俺の持ち前の身体能力で走ってるだけだよ﹂ 確か本気の十六夜は第三宇宙に相当するスピードが出せるんだったはずだ。 ﹁これかい ギフト さっきも言ったけどこれはただの身体能力だよ。 ﹁そ、そうか⋮⋮ちなみにそれが夜鶴の︻恩恵︼なのか ﹁違うよ ? ? みを浮かべた。 逆廻くんは納得いかないというような顔をしたが、前を向くとその口を吊り上げて笑 ﹁まぁ、そうなんだが⋮⋮﹂ 逆廻くんだってこのスピードで走ってるじゃないか﹂ ? ﹁うわぁ⋮⋮﹂ しばらく走っていた森が拓け、そこに広がっていたのは│││││ ﹁そうみたいだね⋮⋮水の音が聞こえる⋮⋮﹂ ﹁夜鶴。どうやら着いたみたいだぞ﹂ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 60 ﹁こりゃスゲェ⋮⋮﹂ │││││息を呑むような美しい滝だった。 遥か高くから流れ落ちる水は、濁りなど知らないかのような透明感がある。 辺りを囲う草木には、一層の青々しさが感じられ、まるで美しい宝石を見ているよう だった。 確か名前を︻トリトニスの大滝︼と言った筈だ。 ﹃GUGYAAAAAAAOoooo ﹄ ﹃何故人間の小僧と小娘がこんな所にいる﹄ これがこの世界の神格持ちの生物⋮⋮。 その巨大さは、人などと比べるのもおこがましい程。 現れたのは│││││大蛇。 !!!!!! そんな中、滝壺の方から大きな音をたてながらナニカが姿を現した。 俺たち二人はこの壮大なそして美しい景色に心を奪われていた。 ﹁あぁ⋮⋮俺もここまで凄いとは思って無かったぜ⋮⋮﹂ ﹁逆廻くん⋮⋮これは来て良かったよ⋮⋮﹂ 61 ﹂ 蛇神は威圧を籠めた声で俺たちに問いを投げ掛けた。 ﹁へぇ∼この蛇喋るんだな⋮⋮流石は︻箱庭︼ってか 逆廻くんは蛇神に対しておちゃらけたように喋る。 ﹁⋮⋮相手は一応神様だよ逆廻くん。 ﹄ ⋮⋮少しは敬意を⋮⋮いや、払うまで強くはないんだろうけどね⋮⋮ 直に見て、そして感じる。 この蛇神は全くと言っていいほど強くない、と⋮⋮。 中々言うな夜鶴。 そんな俺の言葉に逆廻くんは楽しそうに笑う。 ﹃貴様等ァァァァァア ﹁テメェだよ蛇神︵笑︶﹂ ﹁キミにだよ蛇さん﹂ 間をあけることなく、俺たち二人はハモリながらそういった。 ﹃良いだろう⋮⋮貴様等が誰に喧嘩を売ったのかを解らせてやろう ﹄ !!!!! ﹂ ? ? 誰にものを言っているのか分かっておるのかァァァァァア !!! まぁ、事実だから仕方ねぇけどな﹂ !! 貴様等には我の試練によってその身の程を教えてやる !! !!!! ﹁ヤハハ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 62 ﹁⋮⋮ハッ テメェごときが俺等に試練だと 寝言は寝て言えよ爬虫類。 ⋮⋮むしろテメェが俺等を試せるのか試したい位だぜ ? ﹃もう良いわ 小僧 貴様から身の程を教えてやる !! ﹄ ﹂ 安い挑発ではあるがこの蛇神程度ならば乗ってくるだろう。 逆廻くんは蛇神を挑発するかのようにその言葉を発した。 ? !! !! この様子だと俺は見学だね⋮⋮。 !!! あんだけの大口たたいておいてテメェはその程度なのかよ ﹃│││││がぁぁぁぁぁぁあッッッ ﹁お い お い ど う し た ぁ っ ﹂ ? ﹄ 怒りを顕にそう言った瞬間両者はぶつかりあった。 案の定、挑発に乗った蛇神。 !!! 63 ! ﹄ !!! ﹂ 舐めるなよ小僧ォォォオ そう来なくっちゃなぁぁぁっ ﹃グゥッ⋮⋮ ﹁ハッ !!!!! あまりにも手応えが無かったからな⋮⋮﹂ なぁ、夜鶴よ。 その﹃逆廻くん﹄ってのやめてくんねぇか 見たところ同い年くらいだろうし、十六夜って呼び捨てでいいぜ ? 俺がにこりと微笑めば、逆廻くん⋮⋮いや、十六夜もにかっと笑った。 ⋮⋮逆廻くんがそういうなら、これからは十六夜って呼ばせてもらうよ﹂ なかなかいいと思ってたんだけどね⋮⋮。 ﹂ 苗字でくん付けは気味が悪ぃ。 逆廻くんは首をコキリと鳴らしながらそういった。 ﹁そうか ﹁逆廻くん、結構派手にやったね⋮⋮﹂ ﹁ふぅ∼⋮⋮﹂ 蛇神は派手な音をたてながら滝壺に叩きつけられた。 !!! ! ズガァァァァァァァン !! ﹁そうかい ? ? ? ﹁そうだ。 ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 64 と、その時。 ﹁│││││確か⋮⋮この辺りの筈⋮⋮﹂ さきほど聞いたばかりの声が聞こえてくる。 背後の森の方を見てみれば髪の色を桃色に変えた黒ウサギが現れた。 ﹁あ⋮⋮黒ウサギ﹂ ⋮⋮おぉ黒ウサギじゃん。どうしたんだよその頭。イメチェンか ? ﹁あ、貴方方は∼∼∼∼∼∼っ ﹂ !? まぁ、そんなに怒るなって﹂ !! ﹂ 十六夜はいつも通りケロッとしていて反省してないみたいだけど、俺はやはり罪悪感 んだ⋮⋮﹂ ﹁ゴメンね黒ウサギ⋮⋮迷惑をかけるのは、分かってたんだけどこの風景が観たかった ﹁誰の、せいだと、思ってるんですか ﹂ 世界の果てまで来てるんですよ、っと。 ﹁ヤハハ。 一体全体何処まで来てるんですかっ !!!! 黒ウサギは此方を見つめると肩を震わせながらキッと睨み、大声をあげた。 ﹁ん ? 65 が湧いていた。 ﹁⋮⋮しっかし黒ウサギ。 お前いい足持ってんな。 幾分か遊んでたとはいえ、この短時間で俺等に追いつくとは思わなかったぞ なんたって黒ウサギは︻箱庭の貴族︼と謳われる優秀な貴種です。 ﹁むっ、それは当然です。 その黒ウサギが││││﹂ 黒ウサギは眉をしかめて首を傾げた。 ﹂ ? おそらく貴種である黒ウサギが半刻以上もの時間、追いつけなかったのを疑問に思っ ﹂ ? たのだろう。 あ、いえ⋮⋮ ? ﹁水神 アレの事か ? ﹂ ⋮⋮ほんの数秒後には頭を悩ませることになるだろうけどね⋮⋮。 ホッと胸をなでおろした黒ウサギ。 森の幻獣たちから、水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ⋮⋮﹂ ⋮⋮そ、それより十六夜さんと夜鶴さんが無事でよかったですよ⋮⋮ ﹁⋮⋮え ﹁黒ウサギどうかしたの ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 66 ? ﹄ 十六夜は先程滝壺に叩きつけられたダメージを回復し、怒りの叫びをあげながら滝壺 小僧ォォォオ から勢いよく飛び出してきた蛇神を指差した。 ⋮⋮って、どうやったらこんなにも怒らせられるんですか十六夜さん ﹂ ?!!! ﹃まだだ⋮⋮まだ試練は終わって無いぞ ﹁じゃ、蛇神 !!!! ﹃付け上がるなよ小僧 我はこの程度では倒れはせんぞ ﹄ !!!! 十六夜さん、下がって ﹂ まぁ、所詮悪足掻き程度のものってところだね⋮⋮。 ﹁ !!! ・ ・ ・ ・ ・ 下がんのはテメェの方だろうが。 ﹁何を言ってんだよ黒ウサギ。 ・ !! !? これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手ぇ出せばお前から先に潰すぞ ﹂ それは豪雨、津波、渦潮⋮⋮様々な天災の混じり合ったかのようなモノだった。 た。 蛇神はそう叫ぶと辺りの水を巻き込み、巨大な、そして激しい水流の竜巻を作り出し !! まっ、今んとこは不合格。ただのデカイ爬虫類って認識だな﹂ よ。 そんな態度を取れるほどの力があるのかと思って俺が試し返した、って言う流れだ ﹁何、簡単だよコイツが何か偉そうに﹃身の程を教えてやる﹄なんて言うもんだからな。 !? !! 67 ・ ・ ・ ・ ・ ﹄ 十六夜は殺気を振りまくことにより黒ウサギを怯ませ下がらせた。 ﹃その心意気は買ってやろう。 ・ さっきも言ったが寝言は寝て言え。 ・ ・ それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる ﹁ハッ ・ ﹃フン││││その戯言が貴様の最期だ ﹄ ・ ・ 決闘ってのは勝者を決めて終わるんじゃない、敗者を決めて終わるんだよ ・ !!! 人間が喰らえば死は免れないだろう。 ﹂ こんなもん⋮⋮│││││しゃらくせぇッ だが、その攻撃も、十六夜なら関係無いだろう。 ﹁ハッ ﹁嘘っ ﹂ ﹄ 十六夜がやったのは至極簡単なことだ。 ﹂ 蛇神は先程の竜巻に水柱を加えた更なる威力のモノを形成した。 !!! 向かい来る攻撃を片手で殴り、弾け飛ばしただけ。 !!! !!!!!! ﹁へぇ⋮⋮ここまで⋮⋮﹂ ﹃馬鹿なッッ ??!!!! │││││轟音と共に水滴が飛び散る。 !! ?!!!! ﹂ !!! !! ﹁十六夜さんっ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 68 しかし、その十六夜のやって見せたことがどれだけ異質な事なのか、それを黒ウサギ はきちんと理解しているだろうか 神格持ちの生物も十六夜に掛かればこの程度なんだね⋮⋮。 ﹁クッソ⋮⋮今日よく濡れる日だぜ⋮⋮こりゃクリーニング代位でるよな ぬれず 使うのはこの世界に来て新しく作った能力のうちのひとつ。 ﹁へぇ⋮⋮お前の︻恩恵︼が割と本気で気になってきたな⋮⋮﹂ ギフト それをみた十六夜は俺を興味深そうに見てくる。 俺がそう呟くと十六夜についた水はその場で下に落ち、空気へと消えていった。 ﹁︻不濡⋮⋮水は源へと帰す︼﹂ ﹂ すると、蛇神の巨体は呆気なくも揺れ今度こそ滝壺に沈んでいってしまう。 十六夜は高く跳び上がり、蛇神の頭へ蹴りを喰らわせる。 ﹁まっ、最後のは悪くなかったぜお前﹂ ? 十六夜は水滴を払いながら笑った。 ﹂ マジかよ。なら頼むわ﹂ ﹁俺が乾かしてあげようか ﹁おっ ? 俺は久しぶりに能力を行使する。 ! ? 69 ﹁ふふふ⋮⋮そうかい ﹁ヤハハ。勿論冗談だぜ ﹂ 何ボーっとしてんだよ ﹂ ﹂ ﹂ ﹂ ﹂ 今すぐにでもじっくりと聞きたい所だが⋮⋮まぁ、今はそ まぁ、何でもできるからこれからは頼りにしてもらってもいいよ そりゃスゲェや れより⋮⋮。 ﹁ヤハハ ﹂ │││││おい黒ウサギ あ、貴方はお馬鹿ですか うわ、超傷つけたい ﹂ ! と良い音をたてて十六夜はハリセンで叩かれる。 いいえ、お馬鹿様 ﹁二百年守った貞操 二百年守ってきた黒ウサギの貞操を傷つけるつもりですかっ !? 黒ウサギは十六夜から身体を護るようにして後ろに跳んだ。 ﹁え、きゃあ 足とか胸とか色々揉むぞ ! ﹁十六夜∼セクハラは駄目だよ スパンッ !! ? 笑いながらそういうものの、先程の十六夜の目は冗談を行っているように見えなかっ ? ? ﹁お馬鹿様 !! !? !? !? ?? ? ! !? ? ! ? ﹁なっ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 70 た。 見てください こんなに大きな︻水樹の苗︼を貰いましたよ ﹁│││││見てください ! ﹂ ﹁これでもう、他のコミュニティから水を買う必要もありません ﹂ 今の黒ウサギは何でも答えますよ♪﹂ ﹁どうぞどうぞ♪ ﹁そうかいそうかい。喜びついでに1つ聞いても良いか ﹂ すると、十六夜が喜びはしゃいでいる黒ウサギに話し掛けた。 みんな大助かりです 満面の笑みを浮かべながら黒ウサギは水樹の苗に頬ずりをしていた。 ! ! たようだ。 俺が十六夜と話しているうちに黒ウサギは蛇神の元へ行き、打倒した報酬を貰ってき ! ! 71 ? 黒ウサギは分かってないなぁ⋮⋮。 何でも答えるなんて、そんな安請け負いすると、十六夜に足元をすくわれるというの に⋮⋮。 そう、例えば│││││ ? ﹂ ﹁黒ウサギ、お前何か決定的な事をずっと俺たちに隠してるよな ⋮⋮お前はどうして俺達を呼び出す必要があったんだ │││││隠している秘密を聞かれたりするんだから。 ? ⋮⋮だがな、お前の態度はあまりにも必死すぎるんだよ﹂ 俺も初めは純粋な好意、 もしくは誰かの遊び心か何かだと思っていたんだよ。 ﹁⋮⋮本当にそうか ? 心なしか少し体が震えているように見えた。 黒ウサギは冷や汗を流し動揺の様子を見せる。 ﹁そ、それは⋮⋮い、十六夜さんたちにオモシロオカシク過ごして頂こうと⋮⋮﹂ ∼世界の果てを訪れるそうですよ?∼ 72 何も答えずに黙ってしまう黒ウサギ。 十六夜はその姿を見て、更に話を進める。 ﹂ ? 何とも奇妙な空気が流れ始めた。 そしてそれを眺め、話に耳を傾ける俺。 返答を待つ十六夜。 泣きそうな顔になった黒ウサギ。 ﹁沈黙は是なりだぜ、黒ウサギ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ んじゃねぇか 黒ウサギのコミュニティは弱小のチーム、もしくは訳あって衰退したコミュニティな ﹁これは俺の勘だが、今、確信に変わった。 73 ∼説明を受けるそうですよ Side 夜鶴 ∼ 俺と十六夜は静かに耳を傾け、黒ウサギの語る真実を聞く。 ﹁⋮⋮十六夜さんの仰るとおり⋮⋮私達のコミュニティは困窮に瀕しています﹂ 面目な表情でゆっくりと話し始めた。 しばしの間、沈黙を通していた黒ウサギは俺たち2人からの視線に観念したのか、真 ? ﹂ ? 数年前まで私達の旗印は東区画のいたるところで掲げられ、その輝かしい栄光を誇っ ﹁YES。お二方の言う通りその多くは領土の誇示に使われます。 俺もそうじゃないかと思ってたんだよ﹂ ﹁へぇ⋮⋮夜鶴って頭の回転も早ぇんだな。 ﹁黒ウサギそれって︻国旗︼みたいなモノとして捉えて良いのかな それ故に、活動する上で︻名︼と︻旗印︼を申告しなければなりません⋮⋮﹂ ﹁先ほどお話ししたコミュニティとは、大小あれど一つの国のような存在なのです。 ∼説明を受けるそうですよ?∼ 74 ておりました⋮⋮﹂ 十六夜は眉をピクリと動かした。 おそらく、黒ウサギのコミュニティは弱小なコミュニティだろうと予想していたのだ ろうがそれが外れたから。 ﹁それで⋮⋮ ? ・ ・ ・ ・ 相当な力量である事は火を見るよりも明らか。 それを一夜で壊滅させられた⋮⋮。 ・ それは、かなりの強さそれこそ最強に近しい場所にいたはずだ。 その中にある東区画に旗印を数々と掲げていた。 箱庭は確か莫大な大きさを誇っていた筈だ。 その言葉には、流石に衝撃を受けた。 ⋮⋮﹂ そ し て、た っ た﹃一 夜﹄に し て ⋮⋮ 私 た ち の コ ミ ュ ニ テ ィ は 壊 滅 さ せ ら れ た の で す ⋮⋮私達は敵に回してはいけないものに目をつけられてしまいました⋮⋮。 ﹁│││││ですがある日⋮⋮。 75 その原因は何なんだ は⋮⋮﹂ │││││︻魔王︼。 そんだけ大きなコミュニティを一夜で壊滅させた原因っての ⋮⋮それは、箱庭に起こる、最強最悪の天災│││││︻魔王︼です﹂ ﹁私達が目をつけられたもの⋮⋮。 黒ウサギは意を決したかのように息を吸い込むと俺たちの目を見て言う。 ? ⋮⋮十六夜って︻厨二病︼なんじゃないだろうか⋮⋮ 本名から︻厨二病︼っぽいし⋮⋮。 ﹁ま、マオウだと なんだそれ超格好良いじゃねえか !!! !!? 箱庭にはそんな素敵ネームで呼ばれてる奴らがいるのかよ ﹁え、えぇ⋮﹂ ﹂ ?!!! ︻魔王︼という名前に横にいる十六夜なんて、目をキラキラと輝かせている。 ∼説明を受けるそうですよ?∼ 76 ﹁十六夜⋮⋮ちょっと落ち着きなよ⋮⋮ 黒ウサギが何とも言えないような顔をしてるよ ﹂ ? ギフトゲームに破れた私達のコミュニティは︻名︼と︻旗印︼を奪われ、 ︻ノーネーム︼ 全力で向かい討ったのですが⋮⋮結果は惨敗。 ﹁魔王の力は強大でした。 十六夜もその話に眉をひそめる。 れないのだろうか⋮⋮。 それはどれだけ勝てないと分かっていても、どれだけ理不尽な報酬を要求されても断 拒否出来ない⋮⋮。 最後、誰もゲームを拒否することはできません﹂ │││││︻魔王︼は︻主催者権限︼ という特権階級を持つ修羅神仏で、挑まれたら ホ ス ト マ ス ター ⋮⋮しかし、十六夜さんが思い描いている︻魔王︼とは差異があるかと私は思います。 ﹁あははは⋮⋮夜鶴さんありがとうございます。 黒ウサギは少し笑みを浮かべながら話を再開する。 カラカラと笑いながら頭を掻く十六夜。 つい︻魔王︼だなんて素敵ネームを聞いちまったからな﹂ ﹁ヤハハ、悪ぃな。 77 となったのです⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮︻名無し︼って事か⋮⋮﹂ ギフトゲームに参加できるのは現リーダーであるジン坊ちゃんと私、黒ウサギだけ ﹁YES⋮⋮現在中核をなす仲間達は1人も残っていません⋮⋮。 ⋮⋮。 後の120人あまりは10歳以下の子供達ばかりなのですよ⋮⋮﹂ それはかなり絶望的だ。 復興以前にその為の手段であるギフトゲームにすら参加出来ないのだから。 ﹁じゃあ、オマエがゲームに参加すればいいじゃねえか黒ウサギ﹂ 首を傾げる十六夜。 ﹁⋮⋮残念ですが、それもできません﹂ 俺もそれは考えたのだが黒ウサギは無理だと言った。 ジャッジマスター 何か特殊な理由があるのだろうか⋮⋮ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮あぁ、目と耳が箱庭の中枢と繋がってるから、反則できないんだったか ﹁YES。 ﹂ ? 説明いたしましたよね ﹁黒ウサギを含むウサギたちは皆、 ︻審判権限︼と呼ばれる権限を所持していることはご ∼説明を受けるそうですよ?∼ 78 ︻審判権限︼を持つ者が審判を務めるゲームでは︻ルール違反=即敗北︼となるため多く のゲームで必要とされています﹂ 確かにそうだ。 もし、隠れた所でルール違反をされたら勝てるゲームも勝てなくなってしまう。 だから、黒ウサギたちのような特権を持った者が審判を務めればルール違反は不可能 となり、公平な、あくまで自分たちの力を持ってして行うゲームとなる筈だ。 まぁ⋮⋮俺が参加するゲームでルール違反などという真似は決して許さないだろう けどね。 ﹂﹂ ?? ホ ス ト だから、黒ウサギは審判の仕事を優先しているのだろう。 それは現実的に考えるとほぼゲームの参加は不可能となり得る。 │││││ひとつ。﹃箱庭の外で行われているゲームには参加することが出来ない﹄﹂ │││││ひとつ。﹃︻主催者︼側からの許可を取らねばゲームに参加できない。﹄ きない。﹄ │││││ひとつ。﹃ギフトゲームの審判を務めた日より15日間はゲームに参加で ﹁はい。 ﹁﹁︻縛り︼ ﹁ですが、︻審判権限︼の所持者は代償としてある致命的な︻縛り︼がございます﹂ 79 ﹁黒ウサギの審判稼業はコミュニティで唯一の稼ぎでしたから⋮⋮必然的にゲームに参 加する機会も少なかったのです⋮⋮﹂ ﹂ それを聞いた十六夜はにっこりと笑って黒ウサギに言った。 ﹁まさに崖っぷちだな ﹂ ﹂ そんな軽く言っちゃ駄目だよ ﹁ホントですね ﹁十六夜 ! それに黒ウサギも乗らないの ?! ! 黒ウサギは目を閉じ何かを思い出すかのように喋り出した。 何故身を削ってまで乗るのだろうか⋮⋮。 ような空気を漂わせ凹んでいる。 いい笑顔で言われれば同じような笑顔で返す。そして次の瞬間には地獄のどん底の !! ?! そこまで酷い状況に陥っているのか⋮⋮。 ﹁へぇ⋮⋮﹂ 土地だというのに⋮⋮﹂ 子供達は毎日遠くの川まで水を汲みに行き住む所以外は作物すら根付かない死んだ ﹁⋮⋮それでも、私たちは皆必死で生きています。 ∼説明を受けるそうですよ?∼ 80 俺と十六夜は黒ウサギから聞く状況を想像し、顔をしかめた。 そして十六夜は何か思い付いたのか黒ウサギにむかって言った。 ﹂⋮⋮﹂ ! ﹂ 十六夜も先程よりも真剣そうな顔をしている。 ﹁⋮⋮なんでだよ ? ⋮⋮仲間達が帰ってくる場所を守りたいのです ! を果たしたいのです ! ﹁十六夜さんや夜鶴さんたちのような強力な力を持つプレイヤーに頼るほかありません る。 俺と十六夜の座っている所に駆け寄ってくると必死な表情を浮かべ言葉を紡いでく そして、そのためには⋮⋮﹂ ! そしていつの日にか、 ︻魔王︼から︻名︼と︻旗印︼を取り戻しコミュニ ティの再建 ﹁私達はっ ! かなり必死な様子の黒ウサギに、俺の中で何かが動いた気がする。 上がる。 黒ウサギは大事そうに腕に抱えていた︻水樹の苗︼を自分の横に置き、勢いよく立ち んjy﹁そ、それは絶対駄目ですっ ﹁そんなに酷い状況なら、いっそのこと潰して新しくコミュニティを作っちまえばいい 81 お願いします 私達に力を貸してください ! ﹂ ? ⋮⋮それでだ。俺はお前に協力してやるぞ ﹁ヤハハ。軽いジョークだ。 ﹁十六夜、自重しないと﹂ もっと喜べ黒ウサギ。むしろ発狂しろ﹂ ? ﹂ ﹁︻魔王︼相手に︻旗︼と︻誇り︼を取り戻す。 ﹁で、ですが⋮⋮﹂ ﹂ ﹄じゃねえよ、協力するって言ったんだ。 一瞬呆けたような顔になる黒ウサギ。 ﹁え ﹁⋮⋮いいな、それ﹂ そんな黒ウサギに十六夜は救いの手を伸ばす。 俺から見るととても痛々しくそしてもうボロボロである。 頭を下げ、必死な様子で頼んでくる黒ウサギ。 ﹁ふぅん⋮⋮︻魔王︼を相手にコミュニティの再建か⋮⋮﹂ 十六夜は顎に手をあてて少し考える。 もはや泣きそうな⋮⋮いや、少し泣いている黒ウサギ。 ! ? ﹁﹃え ∼説明を受けるそうですよ?∼ 82 ﹂ あぁ⋮⋮ソイツはとてもロマンがある。 協力する理由としては上等な部類だろ あぁ⋮⋮黒ウサギの髪はこうやって色が変わるんだね⋮⋮。 涙を目に溜めながら笑みを浮かべる黒ウサギ。 ﹁ありがとう⋮⋮ございます﹂ まさか俺は協力しないと思ってたの ﹂ ﹂ ⋮なんか良い感じにまとまってるけどいい加減俺も入ろうかな ﹁何かな 黒ウサギではなく十六夜がそう答えた。 ? 黒ウサギは、それを聞くとパァッと髪の色が緋色に変わっていく。 ﹁まぁ、精々期待してろよ黒ウサギ﹂ 十六夜はそういうと、黒ウサギにニヒルな笑みを向けた。 ? じゃないと本当に空気になっちゃうよ⋮⋮ ﹂ ﹁黒ウサギ俺も協力するよ﹂ ふぇぇっ ?!! 間の抜けた悲鳴のようなものをあげる黒ウサギ。 ﹁ふぇ⋮⋮ ? ﹁いや、夜鶴。お前話に全然参加してなかっただろ ? 確かにそうであったが、それはただ入るタイミングを失っていただけなのだ。 ? ? 83 ﹁あははは⋮⋮。 まぁ、確かにそうだけどね しょ ﹂ 俺だって今の話を聞いたら﹃はい、知りません頑張ってね﹄なんて言えるわけないで ? ﹁どうする黒ウサギ 俺はコミュニティ再建には必要ない る。 ﹂ │││││もし、俺が必要無いならこの手を叩いて 俺は優しく、黒ウサギに笑い掛けた。 ﹁⋮⋮必要無いわけないじゃないですかっ !! その時は俺が勝手に黒ウサギたちのコミュニティを助けるから﹂ ? その時は俺の全力を持って黒ウサギたちのコミュニティを最強に返り咲かせてあげ ? 俺は黒ウサギに右手を差し出して言葉を続ける。 ? ? 俺は薄い笑いをしながら十六夜に答えると真剣な顔で黒ウサギのほうを見詰めた。 ? ﹁│││││もし、俺が必要ならこの手をとって ∼説明を受けるそうですよ?∼ 84 どうか黒ウサギたちを助けて下さいっ ﹁うん。わかったよ黒ウサギ。 ﹂ 黒ウサギは、そういって俺の右手を力強く掴んだ。 !! ﹂ 俺は全力を以て黒ウサギたちを助けてあげる。 もう、誰も悲しませない。 お願いします ! 勿論黒ウサギ⋮⋮キミのこともね ⋮⋮はいっ !! ﹂ ﹁た、確かに格好良かったのですよぅ﹂ 十六夜は俺に向かって残念そうに言ってくる。 まったぜ﹂ ﹁あ ∼ あ。せ っ か く 俺 が か っ こ よ く 決 め た の に 更 に 濃 い 内 容 で 夜 鶴 に 塗 り 替 え ら れ ち │││││閑話休題。 黒ウサギは、太陽のような笑顔を俺たち二人に向けた。 ﹁⋮⋮っ !! ? 85 黒ウサギ。 惚れちまったかぁ 黒ウサギは、頬と髪を染めてそういった。 ﹁なんだぁ 随分と夜鶴に執心だなぁ ﹂ ? これはただ⋮⋮そのぅ⋮⋮ともかく違うのですよっ ﹁ち、違うのですよっ ところで夜鶴はどうなんだよ ﹁はいはい。 ﹂ ﹂ ? ? ﹂ 黒ウサギは、からかう十六夜に必死で弁解しようとしている。 !! ! ニヤニヤという音が聞こえそうな笑みを顔に浮かべる十六夜。 ? ? 黒ウサギのことどう思ってんだ ?!!! ⋮⋮少し位仕返ししても良いよね⋮⋮ 俺はふぅ、と息を吐き出して口を開く。 ? それにしても十六夜のニヤニヤ笑いが少しムカつく。 黒ウサギは、猫のような声をあげた。 ﹁ニャッ ∼説明を受けるそうですよ?∼ 86 ﹁│││││煩いよ厨二病くん さもないと︻逆廻 痛よい︼って名前で呼ぶからね ﹂ どうやら︻厨二病︼が弱点らしい。 ﹂ ? 俺もそれを真似するように十六夜へと近づいて行った。 そして、耳もとでゴニョゴニョと話し始める。 ﹁│││││ねぇねぇ、その歳で︻厨二病︼ってどんな気持ち 多分十六夜ってそのせいで︻ボッチ︼だったんでしょう ? ? 黒ウサギは、突然吐血した十六夜に駆け寄って応急処置をし始める。 ﹁十六夜さぁぁぁぁん ?!!?!! ﹂ 人をからかう前にその永遠の︻厨二病︼と御別れしてきなよ。 ? 十六夜は吐血しながら倒れた。 ﹁ガハァァァァァァッッッ ?!!!? 87 ︻ボッチ︼って何して暇潰しするの 一人でずっと勉強 ? ガヘッ あぁ、だから頭いいんだね十六夜は⋮⋮﹂ ? それから数分程の時間。 ﹂⋮⋮あ、生きてたんだ﹂ 俺たちはふざけるだけふざけて、やっと箱庭に向かったのだった。 !! 俺や、黒ウサギが揺するが微動だにもしない。 十六夜は更に吐血をして地に伏せた。 ﹂ ??!!! ﹁ガホッ ?!! グッホォォォォォォオ ?!! ﹁あぁ⋮⋮まるで屍n﹁勝手に殺すな夜鶴 ∼説明を受けるそうですよ?∼ 88 ∼HENTAI降臨だそうですよ Side 夜鶴 を売るなんて状況になったのですか しかもゲームの日取りは明日っ それも敵のテリトリー内で戦うなんて 御二人ともっ ﹂ 私たちに準備している時間もお金もありませんよ 聞いているのですか !! ∼ ? ﹁黙らっしゃい このおバカ様方っ ﹂ !!! ﹁うわ⋮⋮ありゃ痛そうだ﹂ 放たれたハリセンは久遠さんと春日部さんの頭を寸分のズレもなく真芯で叩いた。 またも黒ウサギの伝家の宝刀ハリセンが火を噴く。 !! ﹁﹁腹が立って後先考えずに喧嘩を売った。今は反省はしているが後悔はしていない﹂﹂ どうやら久遠さんと春日部さんが何かをやらかしてしまったようだ。 俺と十六夜、黒ウサギが箱庭に戻って来た瞬間に黒ウサギは、絶叫する。 !! !! ! !? !!? ﹁⋮⋮な、なんであの短時間の間に︻フォレス・ガロ︼のリーダーと接触してしかも喧嘩 89 十六夜がヤハハと笑いながら言った。 ﹂ 確かあれ以上の威力のハリセンを十六夜は受けた筈なんだけどなぁ⋮⋮。 た。 俺たちにだって聞く権利位はあるだろ ﹁も、勿論です ﹂ 憤怒の表情をその顔に浮かべる少年に何かを感じたのか十六夜が話を聞き出し始め │││││彼らは決して許されないことをしたんです﹂ 話すと長くなってしまいますが、まずこれだけは言わせてください。 ﹁は、はい。 俺は一番真面目そうな少年に話を聞いてみることにした。 ﹁でも、どうしてこんなことになったの ? ∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼ ⋮⋮実は││││﹂ ! ? ﹁ちょっと内容を説明してくれよ。 ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 90 この世界では、そのような事も、出来てしまうのか⋮⋮と⋮⋮。 話を聞いている最中にも俺の腹の中は煮えくり返っていた。 │││││⋮⋮曰く、人質は既に⋮⋮殺されていた。 ティに取り込んでいた。 │││││曰く、ゲームに勝利した暁には、相手のコミュニティを自らのコミュニ でゲームに勝利していた。 │││││曰く、 ︻フォレス・ガロ︼というコミュニティは人質を取り、脅迫すること 明してくれた。 話の途中、ジン=ラッセルと名乗った少年は、これまでの話を丁寧に分かりやすく説 ﹁││││と、言うことなんです﹂ 91 ﹁⋮⋮確かにお気持ちはわかりますが⋮⋮ ﹂ ﹂ ⋮⋮まぁ︻フォレス・ガロ︼が相手なら十六夜さん1人でm⋮⋮﹁俺は出ねえぞ エェッ⋮⋮ じゃねえよ。 ﹂⋮⋮ ? コミュニティの仲間同士協力しn⋮⋮﹁あら、分かってるじゃない。 この喧嘩はコイツらが売ったんだ、俺が手を出すのは無粋ってもんだろ ﹁エェッ 十六夜の発言にすっとんきょうな声をあげて振り返る黒ウサギ。 ? !! 俺もできるだけ協力するから⋮⋮ね ろしい。 ﹁あ、ありがとうございますぅ∼っ !!! ﹂ ﹂ あざといと言うかなんというか⋮⋮しかし、これを天然でやってのけるのだからおそ すると黒ウサギは、涙目で俺を見上げてきた。 頭を優しく撫でて、黒ウサギを励ます。 ? ﹁元気出して黒ウサギ。 ウサギ耳をへんにょりさせて若干涙目の黒ウサギ。 貴方なんて参加させないわ﹂⋮⋮もう好きにしてください⋮⋮﹂ ﹁だ、駄目ですよ ? ? 夜鶴さんだけが黒ウサギの救いですよ∼ ! ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 92 感極まって俺に抱き着く黒ウサギ。 俺の胸板では黒ウサギのたわわに実った果実が押しつぶされていた。 ﹂ ⋮⋮で、黒ウサギ。これから俺たちはどうするんだ │││││そんな時、十六夜がわざとらしく咳払いをして話を始める。 ﹁ん゛ん゛っ コミュニティに戻るのか ? ジン坊ちゃんは先にお帰り下さいませ ! ﹁⋮⋮あぅっ ⋮⋮い、いえ⋮⋮あ、ですが 黒ウサギは答えた。 ﹁︻サウザンドアイズ︼ ⋮⋮予想するにコミュニティの名前か ﹂ ? ﹁⋮⋮誤魔化そうとしてるね飛鳥﹂ │││││そうは問屋が下ろさないようだ。 題児︼と呼ばれるだけのことはある。 黒ウサギが早口でそう言って先程のことを誤魔化そうとしているのだが、流石は︻問 ﹁YES、詳しいお話は歩きながらでも⋮⋮﹂ ? ニヤニヤしながらこちらを見てくる十六夜たちの視線を受けながら、恥ずかしそうに 皆様方のギフト鑑定をお願いしないと⋮⋮﹂ 黒ウサギたちは︻サウザンドアイズ︼に行って参りますので。 ! ? !! !!? 93 ﹁そのようね春日部さん﹂ ﹁ヤハハ。なんだやっぱり夜鶴に惚れちまったのか ﹁うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁん ﹂ ﹂ ⋮⋮黒ウサギの苦労は何か不幸な︻恩恵︼でも与えられてるんではないだろうか⋮⋮ コソコソとしかし確実に聞こえる声で黒ウサギに言った。 ? 十六夜君 ﹂ ? 黒ウサギの胃に穴が開くのも時間の問題かもしれない⋮⋮。 いた。 容赦ない問題児たちの口撃により黒ウサギは、更に赤く染まり、頭から湯気をたてて ﹁あぅあぅ⋮⋮ぁうぁうぅ⋮⋮﹂ ﹁分かりやすいね。黒ウサギは﹂ ﹁あぁ。黒ウサギは、夜鶴にご執心だ﹂ ? しかし、そんな事は関係ないと言わんばかりにその周りを十六夜たちが取り囲む 黒ウサギは、髪を朱色に染めてその場でうずくまってしまう。 !!! ? ﹁あら、やっぱりそうなのかしら ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 94 │││││閑話休題。 ! 幸いこの近くに支店がありますし﹂ ちなみにギフトを鑑定すると何かメリットがあるのか ﹂ ? 俺は︻ギフト︼そのものというより︻ギフトネーム︼の方が気になっている。 十六夜たち三人は自分の︻ギフト︼に興味があるようだ。 皆さんも自分の力の出所は気になるでしょ う ﹁自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。 ? ﹁へぇ⋮⋮。 ﹂ 箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨 大商業コミュニティでして⋮⋮。 す。 ﹁YES ︻サウザンドアイズ︼は特殊な瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティで ﹁そういえば︻サウザンドアイズ︼について話を聞いていなかったな﹂ ると、黒ウサギが喋り始めた。 復活した黒ウサギとともにジン君を除いた五人で︻サウザンドアイズ︼へ向かってい ﹁⋮⋮そろそろ︻サウザンドアイズ︼について説明させて頂きますね﹂ 95 と、そんなことを考えていると飛鳥が街路樹を指差して疑問を口にした。 ﹁桜の木ではないわよね ろ ﹂ ⋮⋮今は秋だったと思うけど﹂ 確か寒くてベットで寝ていたからね﹂ そんな俺たちを見ていた黒ウサギは、微笑みながら説明をしてくれる。 ︻パラレルワールド︼ってやつか ﹂ 元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系などに所々違う箇所があるはずですよ ﹁へぇ ? ﹂ ﹁いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだ 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けている桜があるはずがないもの﹂ ? 話の噛み合わない俺たち四人は互いに互いを見ると首をかしげた。 ﹁冬じゃなかったかな ﹁⋮⋮ ? ので、またの機会ということに⋮⋮﹂ ! ﹁へぇ⋮⋮黒ウサギって物知りなんだね﹂ ﹁い、いえいえ⋮⋮そんなこと無いのですよっ ﹂ ⋮⋮今から︻立体交差平行世界論︼の説明を始めますと一日二日では説明しきれない ﹁近いですね。正しくは︻立体交差並行世界論︼というものなのですけども⋮⋮ ? ? ? ? ﹁皆さんはそれぞれ違う世界から召還されているのです。 ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 96 照れているのか頬を染めている黒ウサギ。 ﹂ このような反応を見せるから、面白がって十六夜たちがからかっているのではないだ あれがそうなんじゃないかしら ろうか ﹁あ ? ? あれがコミュニティ︻サウザンドアイズ︼の支店でございます﹂ ! 涼しい顔で黒ウサギに対応する女性店員。 うちは時間外営業をやっていませんので﹂ ﹁待ったは無しです、御客様。 ﹁まっ﹂ でもあるのだろうか。 確かに日も暮れているから慌てるのもわかるのだが、あの建物に入るのには時間制限 黒ウサギは滑り込みでその店員さんにストップをかける。 そんな旗印を下げる建物には割烹着姿の女性店員が掃除しているのが見えた。 おそらくあれが︻サウザンドアイズ︼の旗印なのだろう。 た。 飛鳥の指差す先を見れば、青い生地に向かい合う2人の女神が記されている旗が見え ﹁YES 飛鳥がひとつの大きな建物を指差して黒ウサギに質問する。 ! 97 押し入ろうとする客への対応は御手の物らしい。 閉店時間の5分前に客を締め出すなんて ﹁なんて商売っけのない店なのかしら﹂ ﹁ま、全くですっ ﹁文句があるならどうぞ他所へ。 貴方方は今後一切の出入りを禁じます。 ﹂ ! これだけで︻出禁︼とか御客様舐めすぎでございますよ 簡単に言えば︻出禁︼です。︻出禁︼﹂ ﹁︻出禁︼ ﹂ !? ! 更に店員さんは見下したかのような声で対応し始める。 騒ぐ黒ウサギを冷ややかな│││││侮蔑するような眼で見ている。 !? ﹂ ? ﹁⋮⋮ほほぅ。 ではどこの︻ノーネーム︼様でしょうか ? ﹁⋮⋮俺達は︻ノーネーム︼ってコミュニティなんだが ﹂ ⋮⋮この店員さんは俺たちが︻ノーネーム︼だと言うことを知っているようだ。 何も言えない黒ウサギを悪そうな笑みを浮かべて見ている店員さん。 ﹁⋮⋮うぅ⋮⋮﹂ 中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を宜しいでしょうか ﹁なるほど⋮⋮︻箱庭の貴族︼であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。 ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 98 ? 宜しければ、旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか 意地悪な口調で黒ウサギを精神的に追い詰めていく店員さん。 │││││俺の中で何かが切れる音が響いた。 ん ﹂ ﹂ ﹁あ、あの⋮⋮その⋮⋮わ、私たちには﹁⋮⋮キミ⋮⋮何様なんだい⋮⋮ ? ﹂ ? しかし、そんなことは関係ない。 俺のこの怒りは冷めない。 ﹁そんなにも︻名︼が重要かい⋮⋮ そんなにも︻旗印︼が重要かい⋮⋮ ⋮⋮だけどね ﹂ ﹂ ﹁︻サウザンドアイズ︼は大きなコミュニティなんだろうね。 俺は店員さんをじっと見詰め視線を外さない。 ? ? 店員さんは台詞を遮られたからか、少し不機嫌になっているようだ。 か ﹂よ、夜鶴さ 先程も申し上げしまたが、文句があるならどうぞ﹁⋮⋮そんなに⋮⋮﹂⋮⋮なんです ﹁なんで御座いましょう ? 俺は黒ウサギの隣まで行くと、店員さんの前に立つ。 ? ? 99 ? 眉をひそめ怒りの表情を浮かべる。 ﹂ ﹁キミに俺たち︻ノーネーム︼を⋮⋮黒ウサギが心から大切にする︻ノーネーム︼を馬鹿 ﹂ にする権利は無い⋮⋮っ ﹁⋮⋮ひっ !!!! せば幾らかは皆の表情から硬さが取れるのがわかった。 サギぃぃぃぃぃぃっ ﹂⋮⋮﹂ !! 浅めの水路へポチャンと入水した。 そしてそのまま黒ウサギに抱き着くと勢いを殺すことなく空中を吹き飛び、反対側の 爆走してきた。 もの凄い声と共に︻サウザンドアイズ︼の建物の中から和服を着た白髪の幼い少女が !!!! 久しぶりだなぁぁぁぁ黒ウ しばしその場が沈黙に支配されるが、俺の睨みが無くなり、いつも通りの雰囲気を出 自分でも驚くほどに低く、冷たい声がでる。 │││││俺はキミを無事で済ませる自信が無いよ。 ﹁もし⋮⋮もしそれでもまだ考えを改めないというのなら⋮⋮﹂ 十六夜たちも怒りを燃やす俺を見て驚いている。 俺の怒りの叫びに店員さんは小さな悲鳴をあげる。 !! ﹁まぁ⋮⋮覚えてお﹁いぃぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉう ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 100 ⋮⋮なんか⋮⋮今凄い光景を見た気がする。 ﹂ それなら俺も別バージョンで是非頼む﹂ ﹁⋮⋮おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか ﹁⋮⋮あ、ありません﹂ ﹁なんなら有料でも良いぜ ﹁や、やりません⋮⋮﹂ ? どうして貴女がこんな下層にいらっしゃるのですかっ それにしても⋮⋮店員さんをちょっと怖がらせ過ぎたかな⋮⋮ ﹁し、白夜叉さま ﹂ 十六夜がとても輝いた笑顔で店員と会話しているのだが、如何せん内容が残念だ。 ? ここが良いのかっ ﹂ それにしてもやっぱり黒ウサギは触り心地が違うのぉ∼ ほれ、ここが良いか ?! !! ﹁そろそろ黒ウサギが来るような予感がしておったからに決まっておるだろうに !? 離れて下さいませっ ﹂ !! ﹁ちょ、ちょっと白夜叉様っ だ、駄目です ! !? ⋮⋮なるほど、分かった。⋮⋮ただの変態のようだ。 り揉んだりを繰り返していた。 白夜叉と呼ばれた白髪の少女は水に濡れながらも黒ウサギの豊満な胸に顔を埋めた ?! ! !? 101 ほれ、プレゼントだぁっ ﹂ 黒ウサギは、胸に張り付いた白夜叉を引き剥がすと、十六夜に向かって全力投球した。 ﹁夜鶴っ !! る。 ﹁大丈夫 怪我は無いかい ⋮⋮じゃが ﹂ 一体何様じゃ そこのおんし ﹁う、うむ。別段問題は無い。 私も予想出来んかったわ !! ﹂ ? ﹁あ、貴女はこのお店の人 ﹂ ﹂ 俺はそういうと白夜叉を地面に降ろした。 ﹁俺は不知火 夜鶴だよ。宜しくね白夜叉ちゃん﹂ おんしはなんと言うのじゃ ﹁私を優しく抱き止めてくれた上に、今、現在進行形で脇から手を通して持ち上げておる ふむふむと白夜叉は首を振ると俺を見て口を開いた。 !! ! ? !! 飛んできた初対面の美少女をボレーシュートするなぞ そこそこの勢いで飛んでくる白夜叉を優しく勢いを殺しながらキャッチし、抱きとめ ﹁おおっと⋮⋮﹂ 十六夜はボレーシュートの要領で俺の方へ白夜叉を蹴り渡してきた。 !! ? ﹁十六夜様だぜ。以後宜しく和服ロリ﹂ ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 102 ? ﹁うむ、そうじゃぞ。 コミュニティ︻サウザンドアイズ︼幹部の︻白夜叉︼様じゃよご令嬢。 ﹂ 仕事の依頼ならおんしのその年齢の割に発育の良い胸をワンタッチ生揉みで引き受 けてやるぞ │││││遂に黒ウサギが私のペットに ﹁なりませんっ ﹂ !! どのような事からそのような話になるのですかっ ﹂ 異世界の人間が黒ウサギを連れてワシの所に着たと言うことは⋮⋮そうか ﹁ふふん⋮⋮。おんしたちが黒ウサギの新しい同士か。 白夜叉は俺たちを順番に見回すと黒ウサギを見詰める。 久遠さんは引き吊った笑みを浮かべて白夜叉を見ていた。 ﹁え、遠慮しておくわ⋮⋮﹂ ? からね﹂ さて、おんしらは話があって来たのであろう ﹁わはははは ! 話なら店内で聞くとしよう﹂ ? そうかそうか。それはすまんかったの夜鶴。 ﹁白夜叉ちゃん。あんまり黒ウサギをからかわないであげてよ。今日は疲れてるだろう !! !! ! 103 そういった白夜叉は店内を指差した。 その表情にも、声音にも、見下すような色は見えない。 俺は少しだけ︻サウザンドアイズ︼というコミュニティを見直した。 ﹁よ、宜しいのですか⋮⋮ ﹂ ﹁あ、頭を撫でないで下さいっ ﹂ 俺は入る前に落ち込む店員さんに近づいていき、頭を撫でる。 俺たちは順番に店内に入っていった。 シュンとした態度で店員さんはうなずいた。 身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ﹂ る侘びだ。 ﹁︻ノーネーム︼だとわかっていながら名を尋ねるなどというマネをした性悪店員に対す 我らが︻サウザンドアイズ︼の規定では⋮⋮﹂ 彼らは名も旗も持たない︻ノーネーム︼のはずです。 ? でも、さっきは本当にごめんね ﹁あはは⋮⋮ごめんごめん。 !! ? まさかあんなに怖がらせるとは思わなくてね⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮さっきはごめんね ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 104 ﹁い、いえ。あれは私も悪かったので⋮⋮。 ⋮⋮さぁ、早く行かないと置いて行かれますよ ﹂ ? 私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構えている︻サウザンドアイズ︼幹部の︻白 ﹁改めて自己紹介をしておこうかの。 上座にゆっくりと座った白夜叉ちゃんは俺たちを捉えると話し始めた。 十六夜たちもその香りを気に入ったのか顔に柔らかい表情が浮かんでいる。 良い香りがしてくる。 俺たちが入った白夜叉ちゃんの部屋は、和室で何かのお香を焚いているのか安心する ﹁すまぬな。生憎と店は閉めてしまったのでな、私の部屋で勘弁してくれ﹂ そういった俺は十六夜たちの後ろを追いかけて行った。 ありがとう。また今度御詫びするよ﹂ ﹁あ、そうみたいだね。 105 夜叉︼だ。 この黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手 を貸している器の大きな美少女だと認識しておいてくれ﹂ ﹁はいはい。お世話になっております本当に⋮⋮﹂ 黒ウサギの投げやりな答えに自然と笑顔が出てくる。 ﹂ おそらく会う度にセクハラされているのだろう。 ﹁⋮⋮外門って何 ものだ。 少しは予想がつくのだが、如何せん情報が少ない。どうせなら詳しく聞いておきたい こてんと首を横に倒した春日部さん。 ? すると、春日部さんが上空からみた箱庭を思い出したのか、自分の考えを言った。 おおよそ考えていたものと同じだが、階層の数が予想外だったな。 なるほど⋮⋮。 箱庭で四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境ですよ﹂ 強大な力を持ちます。 外壁から数えて七桁の外門、六桁の外門、 と内側に行くほど数字は若くなり同時に ﹁箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。 ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 106 ﹁⋮⋮超巨大タマネギ ﹂ ﹁いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら 知恵比べか それとも勇気を試したのか ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ 十中八九、あの蛇神のことを知っているのだろう。 白夜叉ちゃんが含みを持った声でそう言った。 ちが棲んでおる│││││その水樹の持ち主などな⋮⋮﹂ あそこにはコミュニティに所属こそしていないものの強力な︻ギフト︼を持った者た 界の果て︼と向かい合う場所になる。 さらに説明するなら東西南北4つの地区の区切りの東側にあたり、外門のすぐ外︻世 その例えなら今居る七桁の外門はバームクーヘンの1番薄い皮の部分に当たる。 ﹁ふふふ⋮⋮うまいことたとえる。 ﹁年輪がちょっと多すぎるけどね⋮⋮﹂ ﹁そうだな、どちらかといえばバームクーヘンだ﹂ ? ? ? ﹂ !! 黒ウサギはとても得意気にその話を語った。 よ ﹁いえいえ、この十六夜さんがココに来る前に蛇神様を素手で叩きのめしてきたのです ? ? 107 クリアではなく直接倒した と の傾きがある時だけのはず⋮⋮。 ﹂ ではその童は神格持ちの神童か 種族の力でいうのなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ ? ﹁ところで白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか ﹁知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。 ﹂ ? ︻神格︼か⋮⋮どうせならゲットしておきたいものだね⋮⋮。 ニティの多くは神格を手に入れることを第一目的としている んですよ﹂ ﹂ 神格を持つことで自分の他のギフトも強化されますから、箱庭の上層を目指すコミュ なります。 例えばですが蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に、人に神格を与えれば現人神や神童に ﹁神格とは存在を種の最高ランクまで押し上げる、簡単に言えば強化系の︻ギフト︼です。 ? ﹂ ⋮⋮しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほどのパワーバランス ﹁む⋮⋮それもそうか。 ? しかし、十六夜からは特に嬉しそうな雰囲気は感じない。 ﹁なんと !? もし神格持ちなら一目見れば分かるはずですし⋮⋮﹂ ﹁いえ、黒ウサギはそうは思えません。 !? ﹁神格ってなんだ ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 108 ⋮⋮まぁ、もう何百年も前の話しだがの﹂ そう言いながらからからと笑う白夜叉ちゃん。 さらっと神格を与えたと言ったが、という事は彼女は神格を与える側にいるというこ じゃあ、お前はあの蛇神︵笑︶より強いのか ﹂ と⋮⋮つまりは、それ相応の実力があるということになる。 ﹁へぇ⋮⋮ フ ロ ア マ ス ター ﹁ふふん、当然だ。 私は東側の︻階層支配者︼だぞ ? ﹂ ? │││││探す手間が省けたぜ﹂ ﹁そりゃ景気のいい話だ。 ﹁無論、そうなるのぅ⋮⋮﹂ ティという事になるのかしら ﹁つまり、貴女のゲームをクリア出来れば私達のコミュニティは東側で最強のコミュニ た。 すると、十六夜たち三人の問題児が立ち上がり、白夜叉ちゃんを獰猛な眼で睨んでい 白夜叉ちゃんは胸を張って答えた。 らの﹂ この東側四桁以下のコミュニティでは並ぶものがいない、最強の︻主催者︼なのだか ? ? 109 ﹂ 十六夜たちの視線に闘争心が籠められると、白夜叉ちゃんは愉快そうに笑った。 ﹂ ? ﹁抜け目ない童達だ。 ちょっ、御三人様 依頼しに来ておきながら、私にギフトゲームで挑むと ﹁え !? ﹁あら、ノリが良いじゃない﹂ ﹁ふふふ⋮⋮まぁの。 ? ﹁あら、案外弱虫なのね夜鶴君﹂ ﹁⋮⋮弱いんだね﹂ ﹁夜鶴さんまでっ ﹂ ﹂ 黒ウサギはまたも涙目になっていた。 ?!!! ⋮⋮まぁ、俺も参加させて貰うけど⋮⋮﹂ ﹁あははは⋮⋮酷い言われようだね⋮⋮。 ? 十六夜たちもこちらを見ている。 白夜叉ちゃんはのんびりと座る俺を見ると不思議そうに聞いてきた。 ⋮⋮ところで夜鶴。おんしはせんのか ﹂ ﹁よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えているんだからな﹂ ? ﹁なんだ夜鶴。お前怖じけ付いたのか ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 110 ごめんね黒ウサギ。 俺も彼女の、白夜叉ちゃんの実力を知りたいんだ。 ﹁おんしらが望むのは︻挑戦︼か ││││もしくは︻決闘︼か⋮⋮ ﹂ ? ? 白夜叉ちゃんは壮絶な笑みを浮べながら俺たちに問いた。 カードに注目していると突然カードが光りだした。 描かれていたのは︻サウザンドアイズ︼の旗印である双女神の紋である。 す。 白夜叉ちゃんは自分の着物の袖から、一枚の見たことの無いようなカードを取り出 ││││しかし、ゲームの前に1つ確認しておくことがある﹂ ﹁ふふふ⋮⋮そろそろ始めようか。 まぁ、お前ら敗けるなんて言われたらそりゃそういう反応になるよね。 俺のこの言葉に三人は眉を動かした。 │││││キミたちは直ぐに敗けを認めることになる﹂ ﹁でも、これだけは言っておくよ三人とも。 111 途端に辺りは暗転し、見覚えのない場所へと風景を変えた。 鬱蒼と繁る美しい草原、白い地平線を覗く広大な陸地、青々と力強く生えた森林の傍 にある物静かな湖畔。 そして最終的に俺たちの捉えた世界は│││││ ﹂ │││││白銀に染まる白い雪原と凍り付いた湖畔、そして⋮⋮水平に廻る太陽の世 こ、こいつは⋮⋮っ かくいう俺もこの風景には感動した。 十六夜たちはこの現象と驚き、そして感動していた。 ﹁今一度名乗り直し、問おう﹂ イトだ 白銀に染まる大地に反射された太陽の光は、まるで白夜叉ちゃんを照らすスポットラ !? 界だった。 ?! 廻る太陽は白。 ﹁⋮⋮なっ ∼HENTAI降臨だそうですよ?∼ 112 ﹁⋮⋮私は︻白き夜の魔王︼ │││││太陽と白夜の星霊・白夜叉。 ﹂ おんしらが望むのは試練への︻挑戦︼か それとも私と対等な︻決闘︼か ? 笑みとともに向けられた双女神の描かれた扇子は、先程よりも大きく見えた。 ? 白夜叉ちゃんには悪いけど俺の実験に付き合って貰わないとね⋮⋮。 俺は誰にも気付かれないように小さく笑った。 ﹁⋮⋮ふふふっ♪﹂ 113 ∼挑戦と決闘だそうですよ Side 夜鶴 ∼ あの水平に廻る太陽やこの土地はお前自身を表現してるってことか﹂ ﹁水平に廻る太陽と⋮⋮そうか、︻白夜︼と︻夜叉︼⋮⋮。 ? </rt><rp>︶</rp></ruby>︼しようか⋮⋮。 仕方無い⋮⋮︻検<rb>索</rb><rp>︵</rp><rt> ・ こっちは知らないね⋮⋮。 そして│││││︻夜叉︼。 はず⋮⋮。 確か︻白夜︼はある経度を持つ地域のみで見られる太陽が沈まない現象のことだった ⋮⋮なるほど⋮⋮︻白夜︼と︻夜叉︼ね⋮⋮。 白夜叉ちゃんが両手を開くと空に浮かぶ雲が裂け、薄明の太陽がその全貌を現した。 ゲーム盤の一つだ﹂ この白夜の湖畔と雪原。永遠と沈むことなく世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つ ﹁如何にも⋮⋮。 ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 114 俺は 眼を閉じて静かに自分の︻中︼に存在するある場所から︻知識︼を取り出す。 る。 大乗仏典では薬師如来の十二神将や、般若経典を守護する十六善神などが夜叉であ 後に仏教に取り入れられ、護法善神の一尊となった。 yaksyaと名づけられたという語源説もある。 │││││また、水との関係もあり、 ︻水を崇拝する︵yasy│︶︼ といわれたので、 森林に棲む神霊であり、樹木に関係するため、 聖樹と共に絵図化されることも多い。 ヤクシャは鬼神である反面、人間に恩恵をもたらす存在と考えられていた。 からも変わらなかったが、一方で人を食らう鬼神の性格も併せ持った。 財宝の神︻クベーラ︵毘沙門天︶︼の眷属と言われ、その性格は仏教に取り入れられて i︶︼と呼ばれる。 男は︻ヤクシャ︵Yaksa︶︼女は︻ヤクシー︼もしくは︻ヤクシニー︵Yaksn ︻夜叉︼│││││夜叉には男と女があり、 115 これはなかなか興味深い内容だね⋮⋮。 ︻白夜叉︼という名前からすると、白夜が本質かな 夜叉は神格として取り入れたと考えるのが妥当だね。 ﹁参った、やられたぜ⋮⋮。 それでは決闘ではなく試練を受けるということでいいのかの ││││降参だ白夜叉﹂ ﹁ふむ 十六夜は吐き捨てるかのように白夜叉ちゃんに言った。 なんとも可愛い抵抗を示す十六夜。 ﹂ 白夜叉ちゃんは十六夜の言葉を高らかと笑い飛ばした。 ね。 ﹂ まぁ、これだけされればどれだけ格が違うのか分かるだろうから当然といえば当然だ 悔しそうにそういった久遠さんたち。 ﹁⋮⋮右に同じ﹂ ﹁⋮⋮⋮ええ、私も試されてあげてもいいわ﹂ ? ? ? ⋮⋮今回は黙って試されてやるよ⋮⋮﹃今回は﹄、な⋮⋮﹂ ﹁あぁ、これだけのもんを見せてくれたんだ。 ? ﹁く、くく⋮⋮⋮して、他の童達も同じか ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 116 ﹂ 白夜叉ちゃんはひとしきり笑い終えると俺にも聞いてくる。 ﹂ フ ロ ア マ ス ター しばらく無言で見つめ合っていると黒ウサギが間に割り込んで来た。 その眼は俺の思惑を見通そうとしているようにも見える。 ? ﹁│││││いいや ﹁⋮⋮ほう⋮⋮﹂ ⋮⋮俺は︻決闘︼を選ぶよ 俺はそれに対して柔らかに笑うと、自らの考えを口にする。 当たり前のように︻挑戦︼を提案してくる白夜叉ちゃん。 ﹁夜鶴、おんしも︻挑戦︼で良いな⋮⋮ ? 白夜叉ちゃんは目を細めて俺を見つめた。 ? お互いもう少し相手を選んで下さいっ フ ロ ア マ ス ター ﹁も、もう ! も寒すぎますっ ﹂ それじゃあ元・魔王ってことか ﹂ ⋮⋮それに白夜叉様が︻魔王︼だったのはもう何千年も前の話じゃないですか ﹁⋮⋮なに ﹁⋮⋮はてさて⋮⋮どうだったかな ? ? ? ﹂ ! ! ︻階級支配者︼に喧嘩を売る新人と、新人の喧嘩を買う︻階級支配者︼なんて冗談にして !! 117 白夜叉ちゃんがそういってはぐらかしていると、山脈の方から今まで聞いたことの無 いような獣の声が聞こえてきた。 ﹂ そこにいたのは前世では決して見ることの出来なかったであろう│││││獣だっ 本物 ?! た。 グリフォン !? 地に降り立ったグリフォンは白夜叉ちゃんに近寄るとゆっくりと頭を垂れた。 トゲーム︼を代表する幻獣だ﹂ あやつこそ鳥の王にして獣の王⋮⋮︻力︼ ︻知恵︼ ︻勇気︼の全てを兼ね備えた︻ギフ ﹁いかにも。 る。 その声にはグリフォンに対する驚きと同じぐらい、歓喜が混ざっているように聞こえ 珍しく春日部さんが声を上げる。 ﹁⋮⋮嘘っ !? そこには今回行われる︻ギフトゲーム︼の内容が書かれていた。 白夜叉は何処からともなく光輝く羊皮紙を出現させ、それをこちらに見せる。 ﹁おんしらにはこのグリフォンによって︻力︼ ︻知恵︼ ︻勇気︼を試させて貰うとしよう﹂ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 118 ﹃ギフトゲーム名 ︻鷲獅子の手綱︼ ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜 久遠 飛鳥 春日部 耀 ・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。 ・クリア方法 ︻サウンドアイズ︼印﹄ ? 白夜叉様、夜鶴さんの名前が無いですよ⋮⋮ ? ﹁あ、あれ ﹂ 上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 宣誓 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。 ・敗北条件 ︻力︼︻知恵︼︻勇気︼の何れかでグリフォンに認められる。 119 黒ウサギが冷や汗をダラダラと垂らしながら白夜叉ちゃんに言った。 ﹁当然じゃ。そやつは私との︻決闘︼を望んだのじゃからな﹂ ﹁大丈夫だよ黒ウサギ﹂⋮⋮夜鶴さん ﹂ 扇子で口元を隠しながら楽しそうにしかし真剣に白夜叉ちゃんは言った。 ﹁し、しかし ?! た、と口にする。 俺がそういうと黒ウサギは耳を垂れさせながら渋々という様子だったが分かりまし 大丈夫。白夜叉ちゃんだって命までは取らないよ﹂ ﹁俺だって黒ウサギたちの役に立つっていうのをそろそろ証明したいしね。 !! おそらく十六夜もそうなのだろう。 ? 意外そうに春日部さんを見ている。 ﹁⋮⋮OK、先手は譲ってやる。失敗すんなよ ﹁気をつけてね、春日部さん﹂ ﹂ 短い間しか一緒に居ないが、大人しい印象の春日部さんには珍しいことだと思う俺。 はっきりとした通る声が春日部さんから聞こえた。 ﹁││││そのゲーム私がやる﹂ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 120 ﹁応援してるよ。落ち着いてね ﹄ ﹂ ﹁⋮⋮え、えーと。始めまして、春日部 耀です﹂ ﹃ 別にそういった能力を創っても良いのだが、今は止めておこう。 ﹁ほう⋮⋮あの娘、グリフォンと言葉を交わすか⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんは感心したように扇を広げた。 ﹁私を貴方の背に乗せ⋮⋮誇りを掛けて私と勝負をしませんか⋮⋮ ﹂ 春日部さんは目をキラキラさせながらグリフォンに近づいていく。 そしてまた、幻獣などの架空の生物と言われたグリフォンに興味津々なのだろう。 よほど動物が好きなのだろう。 そういった春日部さんの目はグリフォンに釘付けにされていた。 ﹁⋮⋮うん、頑張る﹂ ? 俺にはグリフォンが何を言っているのかは分からない。 !? あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定めます。 ﹁貴方が飛んできたあの山脈。 それを聞いた春日部さんはまた口を開いた。 グリフォンは驚いた表情をしていたが、すぐにそれを無くし、何かを答える。 ? 121 貴方は強靭なその翼と四肢で空を駆け、湖畔までに私を振るい落とせば勝ち。 ﹂ 私が背に乗っていられたら私の勝ち。 ⋮⋮⋮どうかな 貴女本気なの 私は命を賭ける。 ﹁⋮⋮貴方は誇りを賭ける。 ﹁か、春日部さん ﹂ ﹂ それを聞いた黒ウサギと久遠さんは驚きの声を上げた。 ﹁│││││命を賭けます﹂ すると、春日部さんは迷うことなく、真剣な眼差しで即答する。 すると、またもグリフォンは春日部さんに何かを言ったようだ。 春日部さんは小首をかしげる。 ? !? !!! もし転落して生きていても、私は貴方の晩御飯になります。 !? ﹁だ、駄目ですっ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 122 私あんまりスタイルが良くないけど⋮⋮⋮それじゃ駄目かな⋮⋮ 自らの身体をペタペタと触りながらそう言う春日部さん。 ﹂ そんな様子に慌てる黒ウサギたちを白夜叉ちゃん、十六夜そして俺が制した。 ? 仲間を信じてあげよう ﹂ ﹁春日部さんなら大丈夫だよ。 ﹁そんな問題ではございません ? そのスピードは始めのスピードの優に数倍はくだるまい。 山頂近くになると突然スピードを上げ、容赦のない、頂からの急降下。 しめるように走る。 それと同時に、グリフォンは駆け出した。その強靭な四肢を十二分に使い、空を踏み そして、ゆっくりとグリフォンに跨がると何かを呟く。 春日部さんの瞳には勝算しか無いと言ったような光が宿っていた。 ﹁夜鶴の言ったとおり、私は大丈夫だよ﹂ 同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには⋮⋮﹂ !! お前ら無粋な真似はやめとけ﹂ ﹁ああ。白夜叉の言う通りだ。 ﹁⋮⋮双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ⋮⋮﹂ 123 更にグリフォンは旋回までも加え、春日部さんを本格的に振り落としに掛かった。 │││││しかし、春日部さん負けなかった。 下半身が空中に投げ出されたのにも関わらず、手綱は決して離さない。 グリフォンはそんな春日部さんを見て、最後の激しい旋回を始めた。 縦横無尽に動くグリフォン。 それに伴い振り回される春日部さんであったが、やはり手綱は離さない。 そして遂に│││││春日部さんとグリフォンとの攻防が、終わりを告げる。 │││││グリフォンは今までの激しい動きが嘘だったかのように、残る距離はただ 純粋なスピードで直線的に指定された道を駆け抜けていく。 その背には勿論、春日部さんの姿があった。 ゴールを示す場所を駆け抜け、春日部さんの勝利が決まった瞬間、気が緩んだのか春 ﹂ 日部さんの手から手綱が離れた。 !? グリフォンから滑り落ちた春日部さんはそのまま真っ逆さまに落下していく。 ﹁春日部さん ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 124 まだ終わってない ﹂⋮⋮えっ⋮⋮ ! ﹂ ? それを見て助けに行こうとした黒ウサギの手を十六夜が掴んだ。 は、離し﹁待て ! ﹁なっ⋮⋮ ﹂ │││││空をしっかりと踏みしめる。 そして、春日部さんの体に風が纏い始め│││││ ていくのが見えた。 十六夜の言葉を証明するように、ふわりと春日部さんの体が翻り、落下の勢いを殺し ﹁十六夜さん !? なかなか良い︻恩恵︼を持ってるみたいだけど⋮⋮誰か気づいてるのかな しかし、十六夜は予想していたのか、ゆっくりと降りて来た春日部さんに話し掛けた。 黒ウサギは驚愕の表情を浮かべた。 ?! しかし、十六夜は賢いね⋮⋮。 春日部さんの︻恩恵︼はそんな﹃手に入れる﹄だなんて野蛮なものじゃ無いんだ。 だけどね十六夜、それは違うんだよ。 十六夜は自信ありげにそう言った。 ﹁⋮⋮やっぱりな、お前のギフトは、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな﹂ ? 125 たった少しの情報でそこまで予想するなんて。 ﹂ ﹁⋮⋮違う、これは︻友達になった証︼。 ⋮⋮けど、 いつから知ってたの ﹁あぁ⋮⋮お前、黒ウサギと会った時に﹃風上に立たれたらわかる﹄って言ってただろ ていった。 十六夜は、春日部さんにそういうと、お疲れ様だな、と労いの言葉を口にして、離れ そうだけどな﹂ ⋮⋮まぁ、あの速度に耐えられる生物は地球上にはいないから⋮⋮それだけじゃなさ じゃないかと推測したわけだ。 ションがとれる︼だけじゃなく、 ︻他種のギフトをなんらかの形で手に入れるもの︼なん そんな芸当人間にはできねぇ。だから春日部のギフトは︻他種の生物とコミュニケー ? ? 春日部さんに向かって拍手を送りながら近寄っていく。 十六夜の次は白夜叉ちゃん。 ⋮⋮⋮ところで、おんしの持つギフトだがそれは先天性か ﹂ ﹁│││││いやはや大したものだこのゲームはおんしの勝利だの。 ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 126 ? ﹁⋮⋮違う。 ﹂ ﹂ 私は、父さんに貰った木彫りのおかげでみんなと話せるようになったの﹂ ﹁木彫り ﹁ほほう⋮⋮彫刻家の父か⋮⋮。 もしよければ、その木彫りというのを見せてくれんか ﹂ ? ﹁素材は楠の神木⋮⋮ ? しかもかなり高度な技術で造られている。 その模様は︻系統樹︼を示したモノ。 ﹁⋮⋮これは﹂ 確か父さんに昔教えてもらったけど忘れた﹂ ﹁意味はあるけど知らない。 ﹁これは複雑な模様ね、なにか意味があるの それを見て白夜叉ちゃんは急に顔を驚きに染める。 雑な模様が彫られていた。 丸く、大きさはそれほど大きく無いが、かといって小さくもない。そしてそこには複 んに渡す。 春日部さんは頷いてペンダントにしている木彫りを服の中から取り出し、白夜叉ちゃ ? ? 127 神格は残っていないようですが⋮⋮。 ﹂ ﹂ この中心を目指す幾何学線⋮⋮そして中心に円状の空白⋮⋮もしかしてお父様のお 知り合いには生物学者がおられるのでは 黒ウサギまでもいつの間にか春日部さんの木彫りに魅入っていた。 ﹁うん、私の母さんがそうだった﹂ ﹁生物学者ってことは⋮⋮やっぱりこの図形は︻系統樹︼を表してるのか白夜叉 こ、これは凄いっ ! ? ? ﹁おそらくの⋮ならこの図形はこうで⋮⋮この円状が収束するのは⋮⋮。 ⋮⋮いや、これは⋮⋮っ 本当に凄いぞ娘 !? 本当にこれが人造ならばおんしの父親は神代の大天才だ !! ﹂ !!! とは それに対して、春日部さんはかなり不思議そうだ。 興奮した声を上げる白夜叉ちゃん。 正真正銘︻生命の目録︼と称して過言ではない名品だ ゲ ノ ム・ ツ リ ー まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかも︻ギフト︼として確立させてしまう ! でも母さんの作った系統樹はもっと樹の形をしていたと思うけど﹂ ? ! ﹁︻系統樹︼って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 128 ﹁うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスがなす業よ。 この木彫りを態々円状にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。 再生と滅び、輪廻を繰り返す生命を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して 進む様子を表現している。 中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えぬからか ⋮⋮。 それともこの作品が未完成の作品だからか⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんの眼がキラキラと輝いて見えた。 あの十六夜ですらも少し引き気味な程に⋮⋮。 久しく想像力が刺激されるぞ ﹁うぬぬ、凄い⋮⋮凄いぞ ! 実にアーティスティックだ ﹂ ?!! 物凄く残念そうな顔をする白夜叉を見た十六夜は小声で子供みたいだなと呟いた。 白夜叉ちゃんから木彫りを取り上げる春日部さん。 ﹁ダメ﹂ 私に売ってくれんか おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの !!! ! !! 129 ﹁うむむむ⋮⋮残念じゃな⋮⋮﹂ ﹂ ﹁⋮⋮それより白夜叉ちゃん。 俺とのゲームはまだかな 白夜叉ちゃんは先程よりも引き締まった顔をして光輝く羊皮紙を取り出した。 ⋮⋮では、行うとしようか﹂ ﹁そうじゃったな。 その言葉に白夜叉ちゃんはピクリと反応し、俺と向き合った。 ? ︻力︼により白夜叉を打倒する。 ・クリア方法 白夜叉に認められること。 白夜叉との決闘による打倒。 ・クリア条件 不知火 夜鶴 ・プレイヤー一覧 ﹃ギフトゲーム名 ︻沈まぬ太陽との決闘︼ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 130 白夜叉を楽しませ、その︻力︼を認めさせる。 ・敗北条件 降参もしくはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。 宣誓 ﹂ 上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 白夜叉様 ︻サウンドアイズ︼印﹄ ﹁な ?! これはどういうことですか ?!! ﹂ ? ﹁そうじゃったかな 私は覚えておらぬよ﹂ 黒ウサギの発言を聞いた十六夜たちの息を飲むような声が聞こえた。 ?!! ﹂ !!! ﹁﹁﹁なっ ﹂﹂﹂ ﹁これは白夜叉様が︻魔王︼として活動していたときのゲームのひとつじゃ無いですかっ ﹁なんのことじゃ 黒ウサギが慌ながら白夜叉ちゃんに言った。 ?! 131 ? ﹁いえ このゲームは白夜叉様﹁黒ウサギ大丈夫だよ﹂⋮⋮夜鶴さん ﹁そうかな 夜鶴おんしは本当に面白いな ﹂ ⋮⋮そして、黒ウサギ ﹁何ですか⋮⋮ ? ﹂ ? ? ﹂ !! 白夜叉ちゃんは扇子を開き、俺を見て高らかに笑った。 ﹁ふはははは !!! それなら相手の選んだゲームで戦うのが筋ってものだよ﹂ ﹁これは俺が望んだゲームだよ ? ﹂ ? 俺が間に言葉を挟んであげると、黒ウサギがこちらを心配そうに見つめてきた。 !! Side Out 俺は黒ウサギ、そして十六夜たち問題児に不敵に笑った。 そして│││││俺が誰にも敗けないことを⋮⋮ね﹂ 黒ウサギたちを助けることが出来るのを。 ⋮⋮これから俺は示してあげるよ ﹁そんなに不安そうな顔で見ないでよ。 ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 132 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 三人称 一瞬顔を伏せた白夜叉は、次に夜鶴を見た時には獰猛な笑みを浮かべていた。 その言葉が誠か、それとも嘘なのか⋮⋮﹂ ﹁まぁ、良い。 しかし、その声音からは何処か楽しそうな雰囲気を感じさせた。 ふうに口にする。 眉をしかめて残念そうな表情となる白夜叉は、夜鶴の発言に頭を痛めていると言った おんしはそんな奴では無いと思っていたのじゃが⋮⋮﹂ ﹁︻誰にも敗けない︼⋮⋮か。 白夜叉はその手に持つ扇子をたたみ、夜鶴を指しながら口を開く。 ⋮⋮しかしおんし言い切ったな﹂ ﹁良いよ。 ﹁待たせたね白夜叉ちゃん﹂ 133 ﹁│││││私が見極めれば良いのだからな その言葉を合図に白夜叉は動き出した。 ﹂ ⋮⋮しかし、その攻撃は夜鶴にとっては愚鈍。 そして、流れるような体捌きで拳を叩き込まんとした。 潜り込む。 夜鶴との距離をたった1歩の跳躍でゼロまで縮め、その小さな体躯を利用して懐へと ! ﹂ ・ ・ ・ の手の平を添えた。 あまづき 添えた手に力を入れて白夜叉の身体を軽々と宙に浮かせると、残る片手を手刀とし、 ﹁│││││不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻天月︼﹂ ・ 繰り出された白夜叉の拳を半身でかわすと、夜鶴は白夜叉の体に合わせるように片方 ﹁ッッ ??!!! ﹁⋮⋮遅いよ白夜叉ちゃん﹂ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 134 ﹂ 白夜叉の腹部を穿つかと思わせるほどに突く。 き飛ばされる。 ﹂ ﹁ふふふ⋮⋮まだまだこれからでしょ⋮⋮ ほら、早く構えて │││││次⋮⋮行くよ ﹁なっ⋮⋮ ﹂ その速度が│││││﹃異常﹄。 次は夜鶴から白夜叉に近付いて行く。 ? ? 最早それは移動ではない。 ?!!! ? その表情は今まで強者に飢えていたと言わんばかり。 腹部を押さえながらニヤリと笑う白夜叉。 ﹁⋮⋮おんしなかなかやるな⋮⋮﹂ 下がった。 吹き飛んだ白夜叉は、宙で体制を整えると夜鶴から逃げるように距離を取り、後ろに ﹁ぐうぅ⋮⋮っ ﹂ 白夜叉はその攻撃をどう対処することも出来ずに喰らい、身体をくの字に折り曲げ吹 ﹁ガハァッッッ ?!!! ! 135 あ わ じ し 視界から消えて、いきなり目の前に現れる。言わば﹃転移﹄と言ったものだろう。 ﹁不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻淡獅子︼﹂ 突進の勢いのまま白夜叉の頭を鷲掴みにすると、そのまま地面に叩き付けようとす る。しかし、夜鶴の業がその程度の訳がない。 白夜叉の両の足が地から離れ、浮いた所を見極め、手を離し、胸部を蹴り下ろす。 その後は分かりきったもので、白夜叉は蹴られた方向│││││つまりは地面に勢い ﹂ よく体全体が叩きつけられた。 夜鶴はそれを感知した途端に距離を取る。 白夜叉の回りに白く燃える焔の塊が漂い始めた。 には終わらないらしい。 止めをさすために白夜叉の体を掴もうと近づこうとする夜鶴だったのだが、そう簡単 地面には亀裂が走り、土埃が舞い上がる。 ﹁ガァァア⋮⋮ッッ !!!? 私にこの力を使わせた奴なぞ片手で数える程しかおらぬ。 ﹁⋮⋮夜鶴。おんし、誇るが良い⋮⋮。 ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 136 │││││故にここからの私は本気じゃ⋮⋮。 本気で⋮⋮︻白き夜の魔王︼としておんしを叩き潰してやるぞ ﹂ !!! ﹂ 夜鶴ッ ﹂ 立ち上がった白夜叉の回りには先程の白く燃える焔の塊そして紅々と燃える焔が漂 い白夜叉を囲んでいた。 ﹁それが白夜叉ちゃんの本気かい ﹂ ﹁うむ。私自身この力を使うのは数千年ぶりだ⋮⋮﹂ 白夜叉は、懐かしげにそう語った。 ﹁そっか⋮⋮なら、まだ楽しめる⋮⋮っ 夜鶴がそういうと白夜叉は再び獰猛に笑う。 ! この力を使うのだから⋮⋮簡単に沈んでくれるなよ ﹁それは私のセリフじゃ !! ! して立体的に躱す。 ﹁ほれほれ ! !! 逃げるだけでは私には勝てぬぞ ﹂ 流石の夜鶴もそれを素手で迎撃するのは悪手と理解しているのか、周りの地形を利用 かって飛来して行く。 白夜叉の言葉が終わると同時に、その白い焔塊は密度を高め、球体を成し、夜鶴に向 ?! ? 137 ﹁そうだね⋮⋮俺も逃げるのは趣味に合わないんだ その焔は私自身を司るモノじゃぞ そ、そんな馬鹿な ﹁んなっ ﹂ 言って、夜鶴は白い焔球を﹃素手﹄でかき消した。 ﹁│││││非常に強力な焔⋮⋮﹃だからこそ﹄かき消せる﹂ そう言った夜鶴は動くのをやめ、白い焔球を真正面で捉えた。 ! そ、それを素手でかき消してしまうとは⋮⋮おんし、何をした 熱は優に摂氏1600万度を越える ?! !? そんな白夜叉に対して、夜鶴は仕方なさげに口を開く。 ﹂ 目の前で起きたことが信じられない、そう言わんばかりの白夜叉。 ?! !! ?!! 顎に手を当てながら頷いて話す夜鶴。 そう考えると負けるのは必然。絶対に勝利できない﹂ ね。 ﹁確かにそんな高温の焔を素手で触ったりなんかしたら火傷所か溶けてなくなりそうだ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 138 しかし、次の瞬間、夜鶴はにっこりと笑って舌を出した。 ﹁│││││﹃だからこそ﹄勝てる。 高温の焔を素手で消すことなんて不可能│││││﹃だからこそ﹄消せる。 焔を触って溶けないことなんて有り得ない│││││﹃だからこそ﹄無傷﹂ 夜鶴の口から出された舌には︻逆︼という一文字が書かれていた。 ﹁これが俺の能力のひとつ⋮⋮いや、此処では︻恩恵︼のひとつと言うべきかな 夜鶴の言葉に白夜叉はその︻恩恵︼を見極めようと頭をフル回転させる。 ⋮⋮が、しかし。 如何せん情報が少なすぎる。 ﹂ ? ﹁何にせよ⋮⋮そろそろ決着と行こうではないか﹂ 2人はそう話しながらいつでも飛び出せる様な体制を取っている。 ﹁ふふふ⋮⋮そうかい ﹁また面白い︻恩恵︼を使うのぅ⋮⋮﹂ を攻略するかという方へと思考をシフトさせた。 ﹂ 白夜叉も思い当たるものが無かったのだろう。悔しそうにしながらも今はどう夜鶴 ? 139 込むべく動いた。 そう考えたからこそ、白夜叉は夜鶴よりも先に、今度はかき消せないほどの焔を叩き ならば遠距離攻撃を行える白夜叉の方が有利。 互いの距離は一瞬で詰められるものではないほどに開いている。 にやりと笑う仕草までも一致させ、決着へと向かう。 互いの意見の一致。 ﹁そうだね⋮⋮こういうのはダラダラ続けるより、楽しいうちに終わらせるべきだよ﹂ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 140 ﹂ │││││先に動いたのは白夜叉 ﹁喰らえ⋮⋮ッッ ﹂ !! ﹂ ﹂ ? ?!! そして、白夜叉は後ろに倒れゆく中で悟った。 白夜叉の足が、夜鶴に踏まれていた。 ﹁読んでるよ ﹁な⋮⋮ッッ むしろ、その場で後ろに倒れてゆく。 ⋮⋮それは叶わなかった。 しかし、それよりもこの間合いは致命的。何とかバックステップで離れようとするが 夜鶴の︻恩恵︼がどんなものなのかを。 白夜叉は此処に来てやっと理解した。 ﹁ッッ ﹁⋮⋮一瞬で詰められるものではない│││││﹃だからこそ﹄詰められる⋮⋮﹂ │││││その筈だった。 ?!! 141 │││││自分の敗けだと。 しかし、ゲームを終える気は白夜叉には無かった。 敗者は敗者らしく、その一撃を素直に喰らおう、そう考えたのだ。 こほう 夜鶴は後ろへと倒れる白夜叉の腹部に両手を添える。そして、全力で、突いた。 ﹁不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻鼓咆︼﹂ した。 ﹂ ・ ・ ・ 白夜叉はそれ以降一言として喋ることも、動くこともせずに、その意識を完全に飛ば しかし、今回は、地面に、ゆっくりと、落ちる。 ・ ︻天月︼の時同様に身体をくの字に曲げ、苦しそうな表情を浮かべる白夜叉。 ﹁が⋮⋮ッッッ !!!!?? ﹁│││││俺の勝ち、だね﹂ ∼挑戦と決闘だそうですよ?∼ 142 143 夜鶴の呟きはやけに響いた。 ∼再開の時だそうですよ Side 夜鶴 ∼ ? だ。 │││││﹁不知火式ってなんだ ﹂ ギフト ﹂ │││││﹁貴方どんな動きをしているのよ │││││﹁あれってどんな︻恩恵︼なの !! ?! ? これ以上は話しすぎると困っていたところで白夜叉ちゃんの意識が覚醒。 様々な質問があったが俺はそれに曖昧に答えていた。 ﹂ が動けないのをこれ幸いに、十六夜たちが先ほどの戦いについて聞き出そうと俺を囲ん 起きるまで、流石に地面に寝かせるのは許せず、俺の膝の上で寝かせていたのだが、俺 あった。 ︻決闘︼により俺に気絶させられた白夜叉ちゃんが目覚めたのは、約2時間程後のことで ∼再開の時だそうですよ?∼ 144 白夜叉様でも鑑定できないのですか ﹂ そして、本来の目的を果たすために黒ウサギに説明をしてもらうに至る。 ﹁│││││え⋮⋮ ? 養が高いのは分かる。 ? しかしこれではなんとも言えんな。 おんしらは自分の︻ギフト︼の力をどの程度に把握している ﹁企業秘密﹂ ﹂ ﹁どれどれ⋮⋮ふむふむ⋮⋮夜鶴はまぁ言うまでもないだろうが⋮⋮他の三人ともに素 俺たちを見て何か考えがまとまったのか口を開いた。 そして、目を開けると俺たちを一人一人ゆっくりと見る。 腕を組み、ウンウンと唸りながら悩む白夜叉ちゃん。 専門外どころか無関係もいいとこなのだがのぅ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮よ、よりにもよってギフト鑑定か⋮⋮。 鑑定は苦手らしい。 扇子で顔を軽く隠しているところからすると、どうやら白夜叉ちゃんは︻ギフト︼の 黒ウサギのそんな物言いに、起きて早々顔色を悪くして汗を流す白夜叉ちゃん。 ? 145 ﹁右に同じ﹂ ﹁以下同文﹂ ﹁えっと⋮⋮全略 ﹁うぉぉぉぉい ﹂ ? しばらくすると突如妙案が浮かんだのか、白夜叉ちゃんがニヤリと笑った。 く。 はっきりとした十六夜の拒絶するような言葉に、白夜叉ちゃんは困ったように頭を掻 人に値札貼られるのは趣味じゃない﹂ ﹁別に鑑定なんていらねえよ。 頭が痛いと言わんばかりに頭を抱える白夜叉ちゃん。 それじゃ話が進まんだろうに⋮⋮﹂ ⋮⋮いやまあ、仮にも対戦相手だった者に︻ギフト︼を教えるのが怖いのは分かるが、 !? そういった白夜叉ちゃんはパンパンと柏手を打った。 ちょいと贅沢なものだが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう﹂ ︻恩恵︼を与えねばならん。 何にせよ︻主催者︼として、星霊の端くれとして、 ︻試練︼をクリアしたおんしらには ﹁ふむ⋮⋮。 ∼再開の時だそうですよ?∼ 146 すると、俺たち四人の前に光輝くカードが現れた。 そこには、俺たちの名前とおそらく俺たち自身の体に宿る︻ギフト︼の名前││││ ﹂ ゲ ノ ム・ ツ リ ー ﹂ ﹂ 耀さん の︻生命の目録︼だって収納可能で、好きな時に顕現できるのですよっ ﹁⋮⋮つまり素敵アイテムってことでオッケーか ? あぁ∼もうそうです、超素敵アイテムなんですよっ ﹁これまた簡単に纏めたね⋮⋮﹂ !!!! ﹁だからなんで適当に聞き流すんですか !!! ﹂ ! ! この︻ギフトカード︼は顕現している︻ギフト︼も収納できる超高価なカードですよ 違いますよっ ﹁なんでそんなに息ピッタリにボケるんですかっ ﹁お見舞い ﹂ ﹂ │︻ギフトネーム︼であろうものが書かれていた。 ﹁ギフトカード ﹂ ﹁お歳暮 ? ﹂ ﹁お年玉 ? ﹁なにそれ御中元 ! !!! !! ? ? 147 十六夜の言葉に怒鳴る黒ウサギ。 そしてそんな黒ウサギを可哀想にと哀れむ俺。 それにしても、このギフトカード。相当に貴重なものなのだろうと、今の会話から察 することが出来る。 おんしらは残念ながら︻ノーネーム︼だからの。 ﹁我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの︻名︼と︻旗印︼も記されるのだが、 少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ﹂ 白夜叉ちゃんは扇子を開いて自分を扇ぎながらしれっと言った。 ﹂ すると十六夜は自分以外の︻ギフトカード︼が気になったのか俺や久遠さん、春日部 さんを見ながら口を開いた。 ? 久遠さんの手には、ワインレッドのカード。 そして、それぞれが︻ギフトカード︼を見せ合い始めた。 予想通りな十六夜の言葉に久遠さん、春日部さんも反応する。 ﹁⋮⋮私も﹂ ﹁確かにそれは気になるわね⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮そういや皆の︻ギフト︼は何なんだ ∼再開の時だそうですよ?∼ 148 ︻久遠 飛鳥︼ ﹁⋮⋮へぇ じゃあ俺のはレアケースなわけだ ﹂ ? 十六夜は自分の︻ギフトカード︼を白夜叉ちゃんに差し出す。 ? 鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというものじゃからな﹂ そこに刻まれる︻ギフトネーム︼とはおんしらの魂と繋がったの︻恩恵︼の名称。 ﹁その︻ギフトカード︼は、正式名称を︻ラプラスの紙片︼、即ち全知の一端だ。 十六夜の呟きに白夜叉ちゃんが答えた。 ﹁へぇ∼⋮⋮みんな名前があんのか⋮⋮﹂ ︻正 体 不 明︼ コード・アンノウン ︻逆廻 十六夜︼ 十六夜の手には、コバルトブルーのカード。 ︻ノーフォーマー︼ ︻生命の目録︼ ゲ ノ ム・ ツ リ ー ︻春日部 耀︼ 春日部さんの手には、パールエメラルドのカード。 ︻威光︼ 149 それを白夜叉ちゃんが覗き込むと、その表情に驚愕が広がった。 ﹁⋮⋮いや、そ、そんな馬鹿な⋮⋮﹂ コード・アンノウン 原因が本当に不明なのか白夜叉ちゃんは眉をひそめたままに呟く。 ﹁︻正 体 不 明︼だと⋮⋮ など⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮何にせよ、鑑定出来なかったってことだろ まぁ、俺的にはこの方がありがたいさ﹂ いくら考えてもお前の︻ギフト︼が予想出来ねぇ⋮⋮﹂ ﹁それに、あの反射神経は異常だよ。 ﹁確かにそうね⋮⋮さっきの有り得ない光景の理由⋮⋮知りたいわ﹂ ? そして今度は、十六夜が俺の方を見て興味深そうに聞いて来た。 く。 白夜叉は納得いかないようだったが、本人が気にしていないのならば仕方がないと引 た。 そういった十六夜は白夜叉ちゃんが食い入るように見る︻ギフトカード︼を取り上げ ? ⋮⋮いいやありえん⋮⋮全知の一片である︻ラプラスの紙片︼がエラーを起こすはず ? ﹁そんなことより⋮⋮夜鶴お前の︻ギフト︼は何なんだよ ∼再開の時だそうですよ?∼ 150 私なんか白夜叉の動きも見えなかった⋮⋮﹂ 十六夜、久遠さん、春日部さんが次々と疑問を口にした。 こんなふうに言われるのは予想通り。 俺は手にもつ︻ギフトカード︼を皆に差し出した。 すると、十六夜たちの他にも白夜叉ちゃん、黒ウサギも興味津々と覗いて来た。 リ タ エ イ イ ル ター ︻永 久 の 愛︼ ラヴ・フォー・ユー ︻無形な有形︼ フ ォ ー ム・ レ ス ︻言葉使い︼ ス ︻全 知 の 司 書 官︼ ミュージアム・オブ・オーディン ︻言霊使い︼ ス ピ リッ ター ︻武 術 無 双︼ アビリティ・センス ︻創造者の娯楽︼ ク ︻不知火 夜鶴︼ 俺の手にはクロムシルバーのカード。 ﹁俺の︻ギフト︼はこれだよ﹂ 151 ﹁な、なんじゃと ﹂ ?! オー ディ 驚愕の表情を浮かべた。 おんしは一体何なのじゃ ン ﹂ ﹁︻創造者︼に︻全知全能の神︼じゃと オー ン 別に俺は︻創造者︼や︻全知全能の神︼なんていう特別な者じゃない﹂ ディ しばらくの間を開けて俺は、白夜叉ちゃんたちを見つめて薄く笑いながら呟いた。 その間白夜叉ちゃんたちは何もしない。 俺が無言でしばらく止まる。 ﹁ん∼⋮⋮俺が何者か⋮⋮か⋮⋮﹂ ちは俺の︻ギフト︼の異常さに目を見開いている。 白夜叉ちゃん、黒ウサギは俺を信じられないモノを見るようにして見つめ、十六夜た !? ?!!! 白夜叉ちゃんは俺の︻ギフトカード︼を指差し十六夜の時とは比べ物にならない程の おんしなんじゃこの︻ギフト︼は ?!! ﹁│││││俺は俺だよ⋮⋮。 ∼再開の時だそうですよ?∼ 152 白夜叉ちゃんたちは静かに俺の話を聞いていく。 │││││俺は︻神を愛した者︼かな ﹂ ? そして│││││ │││││俺は神に愛された﹂ ﹁⋮⋮っ そんな中、今まで静かに聞いていた十六夜たちが口を開いた。 勿論俺はそれに肯定の意味を込めて首を縦に振る。 白夜叉ちゃんは有り得ぬものを見るようにそう呟く。 ? ?! おんしは神と恋仲⋮⋮という訳かの ﹂ 俺は一人の神をただ普通に普遍的に愛した。 ﹁そうだよ白夜叉ちゃん。 その顔には、理解出来ないといった表情が浮かんでいる。 白夜叉ちゃんが俺を見ながら口を開いた。 ﹁⋮⋮︻神を愛した者︼、じゃと⋮⋮ ? ﹂ ﹁でもそうだね⋮⋮ひとつ言うなら│││││ 153 ﹁おい夜鶴。 そのお前が愛した神ってのは誰なんだよ 貴方が愛した神様⋮⋮一体誰なのかしら ﹁確かに気になるわね⋮⋮。 やっぱり恋愛に引かれる年頃なのかな ﹂ ﹂ 十六夜たちは、俺の愛した神に興味津々のようだ。 神様にも興味があるし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮私も気になるな⋮⋮。 ? ? その名を口にした。 白夜叉ちゃん、黒ウサギ、十六夜、久遠さん、春日部さんをゆっくり見見回し、俺は ﹁⋮⋮俺が愛した神。それは⋮⋮﹂ 俺はその歳相応の反応にクスリと笑った。 ? その名を聞いた皆はその顔に驚愕の表情を浮かべ、そしてその名前の偉大さに絶句し だよ﹂ ﹁│││││全知全能の神と呼ばれ、北欧神話の主神にして戦争と死の神、 ︻オーディン︼ ∼再開の時だそうですよ?∼ 154 ていた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹂ ? こ ﹂ ? その言葉にいち早く反応したのは白夜叉ちゃんだった。 ﹁そうだなぁ⋮⋮もう︻箱庭︼に呼んだほうが早い気がするね⋮⋮﹂ こ ﹁じゃあ、どんなふうにしてんだよ 俺の言葉に興味深そうに反応する十六夜。 六夜 いローブを着た老人として描かれているけど、それが実際正しいとは限らないんだよ十 ﹁⋮⋮オーディンって言うのは主に長い髭をたくわえ、つばの広い帽子を目深に被り、黒 のだろうかさん。 今の今まで皆が絶句していたのに、開口一言目がそれというのは一体どういうことな 十六夜が口元を押さえ笑いを堪えるように言った。 ﹁⋮⋮夜鶴⋮⋮お前ホモ⋮⋮しかも爺フェチなのか⋮⋮﹂ 155 ﹁な、なんじゃと おんし、神を、しかも主神クラスの者を呼び出せるというのか 俺の︻永久の愛︼はその為の︻ギフト︼だからね﹂ ﹁勿論だよ白夜叉ちゃん。 ﹁ヤハハ 早速オーディンを呼び出してくれよ そりゃすげぇ おい夜鶴 恐らくだが⋮⋮拗ねているだろうから。 ﹂ ﹂ 逢うのは十七年ぶりという事になるのだが⋮⋮苦笑いが浮かぶ。 !! !! 正直そろそろオーミに逢いたいというのが本音だ。 俺は片手でクロムシルバーのカードを弄びながら白夜叉ちゃんに答えた。 !? ?! 十六夜は笑いながら俺にそういった。 ! !! いた。 その姿を十六夜たち問題児たち。そして白夜叉ちゃんたちも固唾を飲んで見守って 俺は拗ねるオーミの姿を想像しながら︻永久の愛︼を発動する。 ﹁十六夜に言われなくてもそうするよ﹂ ∼再開の時だそうですよ?∼ 156 ﹁│││││召喚⋮⋮︻オーディン︼﹂ ﹁│││││愛しき者よ、今こそ私の元へ﹂ ﹁│││││廃れる事の無い永久の愛を誓おう﹂ ﹁│││││私の心に嘘偽りは無く﹂ ﹁│││││私は彼女を愛し、彼女は私を愛した﹂ ﹁│││││彼女は全知全能、戦争と死を司る﹂ ﹁│││││私が愛した神は一人﹂ 157 長い呪文を詠み終えた俺の回りに光輝く魔法陣が広がった。 その魔法陣からは光が立ち上ぼり、頭上に収束していく。 照らすその光は優しく⋮⋮俺が転生時に感じた、オーミの光のようだった。 懐かしい暖かさに包まれ、安心感が産まれる。 │││││刹那、頭上の光が爆発した。 辺りに眩い閃光が弾け、俺たちの視界は光で染められる。 しばらくしてやっと視界が戻ってくると、魔法陣は消え、頭上の光も無くなっていた。 │││││しかし、そのかわりに。 美しい白髪の、俺が愛する少女がそこにいた。 少女│││││オーミは閉じていた目を開くとこちらをニコリと笑う。 笑っているオーミの瞳には涙があった。 ﹁うん。久しぶりオーミ⋮⋮﹂ ﹁お久しぶりですね⋮⋮夜鶴⋮⋮﹂ ∼再開の時だそうですよ?∼ 158 俺は傍に寄るとその涙を優しく拭う。 ﹁やっと⋮⋮やっと逢えました⋮⋮﹂ ﹁ごめんねオーミ⋮⋮凄く、遅くなっちゃったよ⋮⋮﹂ ﹁謝らないでください⋮⋮。 今は⋮⋮貴方に⋮⋮夜鶴に逢えただけで⋮⋮幸せなんですから⋮⋮っ 涙を流していたオーミは俺に満面の笑みを向けてくれた。 何故だろうか、その笑みを見た瞬間、俺の頬にも涙が伝う。 ﹁⋮⋮俺も幸せだよオーミ﹂ それを俺は生涯忘れることは無いだろう⋮⋮。 その時に感じた甘い香り。 そして│││││ひとつのついばむようなキスをした。 どちらからともなく自然と、そう呟き合うと、お互いに見つめ合う。 ﹁大好きだよ⋮⋮オーミ﹂ ﹁大好きです⋮⋮夜鶴﹂ 抱き合い、互いの身体を触れ合わせ、その存在を確認する。 していた。 ﹂ 俺とオーミは既に周囲のことは視界に入れておらず、ただ愛しい者を見ることに専念 ! 159 ∼再開の時だそうですよ?∼ 160 │││││この行為を見ていた十六夜たちがどんな反応を示していたのかは皆様の ご想像にお任せしよう⋮⋮│││││ ∼神様だそうですよ Side 夜鶴 しながら話し掛けてきた。 ∼ ⋮⋮おい夜鶴。その白髪の美少女が︻オーディン︼ってことでいいのか ﹁んん゛っ そう言う十六夜の顔にはニヤニヤとした笑みが貼り付いている。 周りを見れば、顔を赤くする者、生暖かい視線を送る者などがいた。 ﹁うん。この娘が︻オーディン︼だよ。 ⋮⋮でもまぁ、彼女は︻二代目︼だけどね﹂ ﹁︻二代目︼っていうのは、どういうことかしら﹂ ﹂ 俺とオーミが互いの久しぶりの再会を喜んでいると、十六夜がわざとらしく咳払いを ? この娘のお爺さんが︻初代オーディン︼。 ﹁そのままの意味だよ。 俺の言葉に疑問を投げ掛けた。 先程は俺たちのキスを目撃して赤面していた久遠さんが、顔の火照りが収まったのか ? !! 161 そしてこの娘がお爺さんから︻オーディン︼の名を継いだんだ﹂ この話をきいた十六夜は考えるように顎に手を置き、瞳を閉じる。 ﹂ かしくなったのかその頬をほんのりと赤く染める。 オーミは、気持ち良さそうな顔をしながらも今更十六夜たちの前だというので、恥ず さらさらの白髪は、俺の手を止めることなく流れていく。 俺はオーミの頭を撫でながらそう伝えた。 だからこそ主神である︻オーディン︼の名前を継げたんだ﹂ 彼女は︻初代オーディン︼よりも強い。 ﹁いや、むしろ強いよ。 │││││しかし、それは違う。 確かに名前をただ継いだのであれば弱いと思われるのも納得だ。 春日部さんはオーミを見て興味津々に言った。 ﹁⋮⋮じゃあ、あんまり強く無いの ? ⋮⋮この愛らしさ、誰かに語りたいと思う程である。 ないのだろう。 そう言いながら俺から逃げないのを見ると、やはりそれは口だけで、本心は離れたく ﹁よ、夜鶴⋮⋮そ、その⋮⋮止めて下さい⋮⋮よぉ⋮⋮﹂ ∼神様だそうですよ?∼ 162 ﹁⋮⋮なぁ夜鶴。 その白髪娘の名前は何なんだ ? ﹂ ︻オーディン︼って名前は継いだ、ってことはそれ以前の⋮⋮そう、真名があるはずだろ 163 ﹂ ? どうやら、疑問ができただけだったようだ。 た。 十六夜はその名前を聞くと再び顎に手を置くと瞳を閉じて思考の海へ旅立って行っ ﹁︻オーミ︼か⋮⋮確か︻オーディン︼の呼び名のひとつだったな⋮⋮﹂ ケ ニ ン グ 神々の中では︻最高なモノ︼という意味を持つ名前だよ﹂ ﹁⋮⋮彼女の名前は︻オーミ︼。 てしまう。 その仕草がなんとも可愛く、俺はオーミの頭を撫でる手を止めることが出来なくなっ さく首を縦に動かした。 オーミに向かって短い言葉で許可を求めると、それを理解してくれたのかコクリと小 ﹁⋮⋮イイかい なかったのか、今まで閉じていた瞳を開いて俺とオーミを見ながら口を開いた。 十六夜は自らの考えが纏まったのか、はたまたただ疑問が出てきて、見逃す事ができ ? ﹁それにしても彼女がオーディンかのぅ⋮⋮﹂ ﹂ そういった白夜叉ちゃんはオーミに近づいてまるで鑑賞するように見つめた。 長い間貯めた割には随分と普通のことをかっかっか と笑い、口元を扇子で隠しなが ﹁│││││うむ、この箱庭におるオーディンとは全くの別人じゃな らそう言う白夜叉ちゃん。 ! やはり、オーミはこの世界のオーディンと同一という訳では無いらしい。 黒ウサギもオーミを見つめながらそう言った。 らっしゃいますし⋮⋮白夜叉様の言う通りだと思います⋮⋮﹂ ﹁く、黒ウサギも1度だけお会いしたことがありますが⋮⋮全く違う雰囲気を纏ってい ! 嬉しそうに笑うオーミを抱きしめたい衝動に駆られつつも、周りのことも考え、今回 ふふふ♪これで楽しみが出来ましたね♪﹂ ﹁はい♪ 俺も気になってきたからね﹂ ﹁なら、オーミに時間が出来た時にでも二人で行こうか。 ﹁この世界のオーディンという存在に会ってみたいですね⋮⋮﹂ ∼神様だそうですよ?∼ 164 は自重して頭を撫でる手を少し強くするだけに留めた。 そう言いつつ撫でられる手に頭を寄せるオーミは人懐っこいネコのようで、さらに愛 ﹁⋮⋮くすぐったいですよぉ⋮⋮♪﹂ らしさを感じさせる。 │││││閑話休題。 ﹂ 知らない人に名前を訊ねる時は自分からっていうでしょ ﹁取り敢えず、オーミから皆に自己紹介したらどうかな ﹁⋮⋮それもそうですね。 では│││││初めまして皆様方。 ︻オーミ︼と申します。 ﹂ 私は、北欧神話における主神である︻オーディン︼の名と位を受け継いだ﹃二代目﹄の ? ? オーミは今まで口にしなかったが、ずっと思っていたであろう事を口にする。 ﹁所であなた方は何方なのでしょうか ? 165 現在は此方に夜鶴によって顕現していますが、私自身やらねばならない仕事などがあ りますので、此方と︻神界︼を往き来しますが宜しくお願いします﹂ ペコリとお辞儀をするオーミ。 それを見た十六夜たちもそれぞれ自己紹介を始めた。 ﹂ 見たまんま粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を ﹁ヤハハ。俺は逆廻十六夜だぜ白髪ロリ。 ﹂ ﹂ 守った上で適切な態度で接してくれるとありがたいぜ主神様 貴女とは仲良くしたいわ。 ﹁私は久遠飛鳥よ。 出来れば私と友達になってくれないかしら ﹁⋮⋮私は春日部耀。 私もあなたと友達になりたいな⋮⋮駄目、かな⋮⋮ ? ながら、各々の自己紹介を追える。 十六夜は笑いながら、久遠さんは微笑みながら、春日部さんは首をこてんと横に傾け ? ? 出来るだけ考えてみますね 久遠さんと春日部さんの申し出は私も嬉しいです。 ? ﹁えっと⋮⋮分かりました、逆廻さん。 ∼神様だそうですよ?∼ 166 此方から頼みたいくらいですね♪﹂ オーミは3人の自己紹介に返事を返しながらニコリとわらった。 そして今度は問題児たちの自己紹介が終わったため、白夜叉ちゃんたちの方に視線を 向けると、意味を汲んでくれたようで、白夜叉ちゃんが口を開く。 の黒ウサギと申します 今後とも宜しくお願い致しますっ ﹁│││││皆さん。 頭を上げたオーミは皆を見回すと口を開く。 白夜叉ちゃんと黒ウサギの自己紹介のあとにはペコリとお辞儀を還すオーミ。 ﹂ ﹁白夜叉さんに黒ウサギさんですね ! 此方こそ宜しくお願いします﹂ ? ! ﹁わ、私はコミュニティ︻ノーネーム︼所属、そして此処︻箱庭︼の創始者の眷属である 今後とも御贔屓にして頂けると助かるのじゃ﹂ まさか、異世界の主神殿と逢えるとは光栄だ。 昔は︻白き夜の魔王︼と呼ばれておった。 私はコミュニティ︻サウザンドアイズ︼幹部の白夜叉じゃ。 ﹁⋮⋮次は私の番のようじゃな。 167 私に対してそんなに畏まらなくて良いですよ ﹁﹁﹁勿論 ﹂﹂﹂ 宜しければ私とは︻オーミ︼という一個人として接して頂けると嬉しいです﹂ ︻オーディン︼なんていう大層な名前を継ぎましたがそんなものはただの名前ですから。 ? あたりで失礼します。 ? まだ︻神界︼での仕事が残っていまして⋮⋮。 約束ですよ ? 悲しそうな、残念そうな、そして寂しそうな表情のオーミ。 │││││夜鶴またいつでも呼んで下さいね ﹂ まだ皆さんと親睦を深めるために此処に居たいのは山々なんですが⋮⋮今日はこの ﹁皆さんすみません。 開した。 感謝を述べたオーミは、ふぅ、と一息吐くと、いとも簡単に足元に巨大な魔法陣を展 間髪入れずに二つ返事を返してくれた十六夜たちを優しく見つめたオーミ。 ﹁ありがとうございます皆さん﹂ ﹁わ、分かりました﹂ ﹁了解じゃ﹂ !! ﹁あぁ。すぐにでも喚ぶよオーミ﹂ ∼神様だそうですよ?∼ 168 ﹁ふふふっ♪それは楽しみです♪ それじゃぁ、そのお返しに│││││﹂ そう言ったオーミは何処か小悪魔めいた表情を浮かべて俺に密着してくる。 そして、俺と同じ目線まで浮かび上がり│││││ ﹂ 舌の絡み合い、唾液の交わる音が蠱惑的で、周りに十六夜たちがいるのも忘れさせら │││││俺の頬に手を当て、キスを、深い絡み合うようなキスをして来た。 ﹁│││││ん⋮⋮んぅ⋮⋮はむ⋮⋮ちゅ⋮⋮ぷはぁ ! 169 それとも10分 れそうな、そんな⋮⋮キス。 1分 ? ・ ・ ・ ・ ﹂ !! 開く。 ﹂ ﹁⋮⋮オーミ⋮⋮覚えておきなよ⋮⋮ ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 残して、足元の魔法陣から発せられる輝きと共に、オーミの姿は消えて行ったのだった。 俺の声音にビクンと身体を震わせたオーミであったが、慌てつつもそのような言葉を ! ﹂ その言葉を聞き、何処か負けたような気分になった俺は、オーミを見つめながら口を 慌てる夜鶴も⋮⋮良いですね♪﹂ ﹁ふふふっ♪ 色々な意味で慌てる俺にオーミは満足そうな表情を浮かべていた。 ・ ﹁⋮⋮ぷはぁ⋮⋮お、オーミ⋮⋮ 時間の感覚も忘れてしまいそうになりながら、俺とオーミは離れる。 ? ﹁し、知りませーん ∼神様だそうですよ?∼ 170 楽しそうに笑っていた。 ﹁なんだい ﹂ その見た目によらずってどういう意味かな ﹁そのまんまの意味だぜ 見た目が超絶美少女︵笑︶の夜鶴くん ? ? リ エ イ ター ﹂ ? ﹂ ? 全く同時のタイミングで互いのギフトネームについて口にする俺と十六夜。 ﹁︻創造者の娯楽︼よりマシだろ ク ﹁︻正 体 不 明︼よりマシだと思うよ コード・アンノウン ﹁いやいや、︻ギフトネーム︼が厨二病な夜鶴に言われたく無いな﹂ る。 しかし、十六夜も負けるつもりは無いようで、ダメージを負いながらも反論を口にす 俺は半眼で十六夜をジトーっと睨みながらそう言う。 ﹁⋮⋮ま、厨二病な﹃痛よい﹄くんよりマシだから良いかな﹂ ? ? ﹂ ちなみに女性陣は顔を真っ赤にしているのだが唯一白夜叉だけは良いものを見たと 十六夜はオーミが帰った瞬間俺にニヤニヤしながら近づいて来る。 ﹁夜鶴たちって見た目によらず自重しないんだな﹂ 171 ﹁﹁⋮⋮はぁ ﹂﹂ ﹁⋮⋮やるか夜鶴 ﹂ そして勝負開始│││││ ﹁こんのぉ⋮⋮お馬鹿様方がぁぁぁぁぁあっっ ﹂ そんなくだらない理由で同士内で喧嘩しないで下さいっ ﹁なんなのですかっ ﹂ !!!! !! │││││というところで黒ウサギがハリセンで俺と十六夜の頭を叩き抜いた。 !!!! 十六夜はファイティングポーズ、俺は足を肩幅に広げた。 互いに闘いやすいように構える。 ? ? ﹁⋮⋮十六夜こそやるの ﹂ 俺と十六夜は正に一触即発の雰囲気を醸し出しながら睨み合いを始めた。 そして、それが引き金となったのだろう。 ? ﹁ヤハハ。冗談に決まってるだろ ? ∼神様だそうですよ?∼ 172 │││││なぁ夜鶴 ﹂ │││││ねぇ十六夜 ﹂ ? ? ﹁うん。まぁ、確かに冗談だよね ? ﹁⋮⋮今日はありがとう。 うなものを行う。 ﹂ ゲーム用のフィールドから、 ︻サウザンドアイズ︼の店の前に移動し、別れの挨拶のよ 俺たちは用事も終わり時間も時間なのでコミュニティに帰ることになった。 │││││閑話休題。 何とも苦笑いの込み上げてくる悩みである。 ⋮⋮俺も十六夜たちに影響を受け始めてるなぁ⋮⋮。 黒ウサギの叫び声、そして再びハリセンの音が木霊した。 ﹁冗談に聞こえないのですよぉぉぉぉお !!!!! 173 また遊んでくれると嬉しい﹂ ﹁あら、駄目よ春日部さん。 次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの﹂ ﹁当然だ。次は必ず渾身の大舞台で挑んでやる﹂ │││││ところで﹂ ﹁ふふ、よかろう。楽しみにしておけ 真剣な顔で白夜叉ちゃんは此方を見る。 その眼に先程までのお気楽さなど存在しない。 ﹁今更だが、1つだけ聞かせてくれ。 それなら聞いたぜ﹂ おんしらは自分達のコミュニティの現状をよく理解しておるか ﹁ああ、名前とか旗の話しか ﹁勿論聞いてるわよ﹂ ﹂ ﹁ならばそれを取り戻す為に︻魔王︼と戦わねばならんことも⋮⋮か⋮⋮ ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮では、おんしらは全て承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな ﹁そうよ。 ︻打倒魔王︼なんてカッコイイじゃない﹂ ﹂ ? ? ? ﹁まぁ、聞き出したというのが妥当な言葉だけどね⋮⋮﹂ ∼神様だそうですよ?∼ 174 久遠さんの言葉になんとも言えないような表情を浮かべた白夜叉ちゃん。 十中八九、久遠さんの心構えについてを考えてのことだろう。 それでも魔王と戦うことを望むというなら止めんがのぅ⋮⋮﹂ 扇子を開いて口元に寄せる白夜叉ちゃん。 固めだけを閉じてじっと、こちらを見つめる。 ﹂ ﹁⋮⋮そこの娘二人⋮⋮に言わねばならぬことがある﹂ ﹁あら、何かしら ﹂ ? ? ﹂﹂ ・ ・ ・ その殺気は一瞬のもので、直ぐに消え去ったが、白夜叉ちゃんの表情は優れず、ため 身体を硬直させた。 久遠さん、春日部さんの両名は白夜叉ちゃんから発せられたその殺気に目を見開いて ﹁﹁っっ !!!?? 白夜叉ちゃんは開いた扇子をわざわざ音がなるように閉じて、2人を睨む。 ﹁⋮⋮何 ・ ⋮⋮まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろう。 ⋮⋮無謀というか、勇敢というか。 ⋮⋮全く、若さゆえのものなのか⋮⋮。 ﹁︻カッコイイ︼で済む話ではないのだがのう⋮⋮。 175 息を漏らした。 ﹁今の殺気で動けぬようになるか⋮⋮。 ・ ・ ・ うむ。これは予想やら勘などという生易しいものではない│││││おんしらは確 実に死ぬぞ⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんの予言めいた言葉に久遠さんも春日部さんも何も言えなくなっていた。 元魔王である白夜叉の言葉には信じなければならないと思わせる程の圧倒的雰囲気 があった。 未知数な十六夜や規格外の夜鶴はともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームには ﹁︻魔王︼の前に様々なギフトゲームに挑んで力をつけろ。 ほぼ100%生き残ることはできん。 嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ⋮⋮。 ⋮⋮まぁ、夜鶴さえ居ればなんとかなる気しかせんがのぅ⋮⋮﹂ 私は三三四五外門に本拠を構えておる、いつでも遊びに来い。 ﹁⋮⋮ふふ、望むところだ。 │││││次は貴方の本気のゲームに挑みに行くから覚悟しておきなさい﹂ 肝に⋮⋮銘じておくわ。 ﹁⋮⋮ご忠告、ありがとう。 ∼神様だそうですよ?∼ 176 ⋮⋮ただし│││││ゲームには黒ウサギをチップにかけてもらうがのぅっ ﹂ 今なら三食首輪付きの個室も用意するしのぅ﹂ 私のコミュニティに所属すれば生涯遊んで暮らせると保証するぞ ﹁つれない事を言うなよぅ黒ウサギぃ⋮⋮。 先程まで久遠さんたちを脅していた姿とは全く別物である。 黒ウサギの全力の拒否に拗ねた子供のような表情をした白夜叉ちゃん。 ﹁絶対に嫌ですっ !! ﹂ ﹂ !! ﹁私は本気だったのに対しておんしはまだ一割も出しておらぬのだろう 白夜叉は悔しそうな表情になった。 ﹂ ? ﹁それは光栄だね﹂ あれほどまでに︻遊ばれた︼のは後にも先にもおんし以外にはおらぬだろうよ﹂ 今日は見事な︻業︼の数々だった。 ﹁そして⋮⋮夜鶴。 怒る黒ウサギですらその顔に無意識の笑いが浮かんでいるのだから。 た。 怒る黒ウサギを見ながらケラケラと笑う白夜叉ちゃんの姿は、まるで家族のようだっ ﹁三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いじゃないですかっ ? !! 177 それはどうだったかな ﹂ それは己が力の足りなさ故に、まともな戦いのできなかった武人の表情。 ﹁さぁ⋮⋮ ? 娯楽程度なら提供してやれるからの﹂ おんしも暇が出来れば私を訪ねるとよい。 ﹁ふふ⋮⋮まぁ良いわ。 俺ははぐらかすように手を振った。 ? た。 俺たちはそんな会話を交わし、コミュニティ︻ノーネーム︼の本拠地を目指したのだっ ﹁そうするよ白夜叉ちゃん﹂ ∼神様だそうですよ?∼ 178 ∼コミュニティだそうですよ Side 夜鶴 │││││二一零五三八零外門。 る。 ∼ 入り口である門は確かに立派ではあるものの、旗が無いからか、何処か寂しさを感じ そこにコミュニティ︻ノーネーム︼の本拠地があった。 ? ﹂ ? 箱庭最悪最凶の天災が残した爪跡を見せて貰おうじゃないの﹂ ﹁ちょうど良いわ。 ﹁戦いの名残って言うのは魔王との戦いか 戦いの名残という言葉に俺たちは反応する。 黒ウサギは寂しそうな表情を一瞬浮かべた。 ⋮⋮この辺りはまだ戦いの名残が残っていますので⋮⋮﹂ い。 しかし、我々の活動する本館まではしばらく歩かなければなりませんが御了承下さ ﹁此処が我々のコミュニティの本拠でございます。 179 ﹁⋮⋮私も興味がある﹂ 問題児たちの言葉になんとも言えないような表情をしながら、扉をゆっくりと開けた 黒ウサギ。 そこに広がっていたのは││││ ││││荒れ果てた荒野と言っても過言ではない一面の廃墟だった。 ﹂﹂﹂ ?!!! 荒れ果てた地を見て開いた口が塞がらない春日部さん。 その異様さに立ち尽くす久遠さん。 自分の予想以上だったのか目を見開く十六夜。 ﹁これは⋮⋮酷いね⋮⋮﹂ ﹁﹁﹁なっ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 180 三者三様の様子に黒ウサギは重い雰囲気を出している。 十六夜がスッと目を細めると、側にある木製の建物の残骸に近づいて行く。 そして、地面に落ちている木製の囲いを手に取った。 │││││ササァー⋮⋮。 乾いた音をたてながら十六夜の手にある囲いは崩れていった。 ﹂ ? この風化しきった街並みが三年で完成しただと ﹂ ? ﹂ ! ⋮⋮断言できる、木造の崩れ方なんて自然崩壊したとしか思えないぞ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮例えどんな力がぶつかったとしても、こんな壊れ方はありえねぇ⋮⋮。 冷や汗を流しながら久遠さんは事の状況について口にした。 ﹁⋮⋮なんてデタラメな⋮⋮ ﹁いいえ、この状況は三年前に襲来した︻魔王︼の力による惨状で間違いありません⋮⋮﹂ ⋮⋮三百年前の間違いじゃないのか ⋮⋮軽く見積もっても二百年以上は経過してる筈なんだがな⋮⋮ ? ﹁ハッ⋮⋮それは面白いな、いや、マジで⋮⋮本気で面白いぞ⋮⋮。 ﹁⋮⋮僅か三年前でございます⋮⋮﹂ 年前の⋮⋮いや、何百年前の話だ⋮⋮ ﹁⋮おい黒ウサギ⋮⋮その︻最悪の魔王︼つう奴とのギフトゲームがあったのは今から何 181 ﹁ベランダにテーブルとティーセットがそのまま出てるわ⋮⋮。 ⋮⋮これじゃまるで生活していた人間が突然﹃消えた﹄みたいじゃない⋮⋮﹂ ﹂ こんな廃墟なのに動物が寄って来ないなんて⋮⋮。 ﹁動物の気配⋮⋮いや、生命の気配が感じない⋮⋮。 まさか⋮⋮土地が死んでるの⋮⋮ ︻魔王︼の力がどれ程強大か分からせるには十分である。 うなモノではなかった。 辺りに散らばる数々の残骸は僅か三年で風化したなどと言われても到底信じれるよ ? │││││しかし、十六夜たちは違った。 確かにこの状況を見せ付けられれば普通の者ならぽっきりと心を折られるだろう。 黒ウサギは悲し気にそう語った。 その証拠に僅かに残っていた仲間も心を折られ、 コミュニティを去りました⋮⋮﹂ 屈服させます。 ⋮⋮彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないように しめでしょう。 ⋮⋮彼らがこの土地を取り上げなかったのは︻魔王︼としての力の誇示と一種の見せ ﹁⋮⋮魔王とのゲームはそれほど未知数の戦いだったのでございます⋮⋮。 ∼コミュニティだそうですよ?∼ 182 ﹂ !!! ⋮⋮ハッ、いいぜいいぜいいなオイ 私は﹃弱い﹄わ⋮⋮ ﹂ ⋮⋮でも、だからどうしたと言うの むしろ、私はやる気が出てきたわ ﹁私も﹃弱い﹄よ⋮⋮。 だけど、私は負けたくない。 それぞれ高らかにそう叫んだ。 私は強くなってたくさんの友達をこの手で守りたい !! これが復興への狼煙となる希望が出たからだろう。 ﹂ 黒ウサギはそんな十六夜たちを見て涙を浮かべていた。 ﹁⋮⋮皆様⋮⋮﹂ たのだろう。 いつもは大人しい春日部さんが叫んだのだ。それほどに彼らには刺激的なことだっ !! ! ﹁⋮⋮この風景を見せられたら嫌でも認めなければならないようね⋮⋮ 想像以上に面白そうじゃねえか︻魔王︼様って奴はよぉっ !!! ﹁︻魔王︼⋮⋮か⋮⋮。 183 ﹂ ﹂ ⋮⋮なら俺はその狼煙を確実なるモノにしよう。 ﹁⋮⋮ねぇ黒ウサギ ﹁﹁﹁ッッ ﹂﹂﹂ ・ ﹁ほ、本当でございますかっ ・ ・ ﹂ だから⋮⋮だからお願いします ・ この場所を元に戻して下さい夜鶴さんっ 黒ウサギは深く頭を下げた。 ﹂ ﹂ 黒ウサギから感じられるその︻敗者︼特有の⋮⋮無意識の内に何処か諦めた様な香り すぐに戻しても別に良いのだが、俺はここでひとつ試すことにした。 !! ! !! 黒ウサギはその目に少しの疑いがあるものの、俺の言葉に希望を感じたようだ。 十六夜たちは俺を見ながら目を見開いている。 ?!! ? ・ 真面目な声色の俺に何かを感じたのか、黒ウサギは言葉を詰まらせる。 ﹁は、はいっ。な、何でしょうか ? ? ﹁│││││俺が此処を元に戻せるって言ったら⋮⋮どうする ?!!!?!!! ﹁な、何でも致します ∼コミュニティだそうですよ?∼ 184 が気がかりとなるから⋮⋮。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹂ 俺は黒ウサギを見ると、冷たい凍るような笑みを浮かべて条件を提示する。 ﹁﹃何でもする﹄⋮⋮か⋮⋮﹂ ﹁なら黒ウサギ。 ﹂﹂﹂ ⋮⋮ここで今すぐ││││死んでくれないかな ﹁﹁﹁なっ ﹂ !! 久遠さんは冷たい目線で俺を見つめる。 最低ね⋮⋮ッ ﹁夜鶴君私は貴方良い人だと思っていたのに⋮⋮。 ﹂ 十六夜は鋭い視線を此方に向け、拳を握り締めている。 お前言って良いことと悪いことがあるぞ⋮⋮ッ ﹁おい夜鶴⋮⋮。 そして、俺を睨みつけると口々に非難の言葉をあげる。 十六夜たちはその言葉に声を上げた。 淡々と黒ウサギに告げる俺。 ?!!! ? !!! 185 ﹁⋮⋮夜鶴と友達になったのが私の一生の恥だよ⋮⋮ッ ﹂ !! ・ ・ ・ ・ ﹂ 春日部さんは三毛猫をその胸に抱きしめ強い口調でそういった。 俺は今、黒ウサギと取引しているんだよ ﹁ふふふ⋮⋮最低上等。 ﹂﹂﹂ 他の人が口を挟まないで欲しいなぁ⋮⋮ねぇ⋮⋮ ﹁﹁﹁⋮⋮ッッッ ? ? 答えはなんだい ﹂ ﹁うん。これで邪魔者はいなくなったね│││││それで 黒ウサギ。 これは先程の白夜叉ちゃんの殺気とは比べ物にならない程に濃密なものだ。 威嚇の意味を込めて殺気を向ける。 !!!? ? し、冷たい凍るような笑みを浮かべて黒ウサギに答えを聞く。 その場に足を縫い付けられたかのように動けなくなった十六夜たちに軽く視線を移 ? は喜んでこの身を捧げましょう⋮⋮﹂ 黒ウサギの身を捧げるだけでコミュニティを元に戻して下さるのなら⋮⋮黒ウサギ ﹁│││││わ、分かりました⋮⋮。 ∼コミュニティだそうですよ?∼ 186 そういった黒ウサギは身体を震わせながら一本の普通の短剣を︻ギフトカード︼から 取り出した。 そして、未だに動けず悔しそうな表情を浮かべる十六夜たちの方を見つめて口を開 く。 │││││ザクゥッ 鮮血が、その場に飛び散った⋮⋮。 !! ﹂ ! 黒ウサギは瞳を閉じて短剣を大きく振り上げると自らの胸に向けて突き刺す。 どうか⋮⋮どうかお願い致します⋮⋮っ ﹁⋮⋮皆様⋮⋮黒ウサギが大好きなこのコミュニティを⋮⋮そして大切な同士たちを、 187 ﹁⋮⋮夜鶴⋮⋮さん⋮⋮ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ その短剣を返して頂かないと⋮⋮黒ウサギは死ねないのですよ⋮⋮ に溢れ、頬を伝っていく。 ﹂ 黒ウサギの目には涙が大量にたまっていた。そしてそれは、ダムが決壊するかのよう ? ? 俺はそういいながら、俺の手に突き刺さる短剣を黒ウサギから優しく奪った。 ・ ﹁│││││ごめんね、黒ウサギ⋮⋮﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 188 ? ﹂ ? ﹁口だけなら何とでも言える。 情を浮かべた。 その姿を見た十六夜たちは俺の考えていたことを理解したのか、申し訳なさそうな表 手からは血が滴る。 俺は手に突き刺さる短剣をズブリと抜いた。 命を掛けてまでコミュニティの復興を願うのかをね⋮⋮﹂ │││││だから、俺は君の︻覚悟︼を試させてもらった。 ないかと思ったんだ。 このまま行けばたった1度の大きな壁にぶつかっただけで君が諦めてしまうんじゃ ⋮⋮君からは何処か諦めた様な香りを感じたからね⋮⋮。 ﹁そうだよ。 べる。 俺の言葉に殺気を収めたおかげでその場に膝をつく十六夜たちは疑問の表情を浮か ﹁試⋮⋮した ごめんね⋮⋮俺は君を試したんだ⋮⋮﹂ ﹁黒ウサギ⋮⋮君は死ななくて良いんだよ⋮⋮ 189 だけどね、黒ウサギ。 │││││君の命を掛けた行動は誰にでも出来るわけじゃない。 君は︻ノーネーム︼を、そしてたくさんの︻同士たち︼を心の底から大切に想って⋮⋮ ﹃愛して﹄いるんだね⋮⋮﹂ 最後に黒ウサギの頭を撫でながらにっこりと暖かく笑う。 ﹂ すると、先程までは涙を流すだけだった黒ウサギが、更に大粒の涙を流し、声を上げ て泣いた。 夜鶴さんが夜鶴さんじゃないみたいでっ⋮⋮ ﹁怖かったんですよっ⋮⋮ ﹁ぅぅ⋮⋮うわぁぁぁぁぁん ﹂ ﹁ごめん⋮⋮本当にごめんね黒ウサギ⋮⋮﹂ この身が例え果てても皆さんと⋮⋮戦うんです⋮⋮っ 俺はしばらく黒ウサギの頭を撫で続けた。 ﹂ ﹁黒ウサギはどんなことがあっても⋮⋮諦めたりしません⋮⋮っ !! !! 黒ウサギは俺の胸で泣いている !!! ! ! ﹁⋮⋮ごめん﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 190 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ しばらくして、十六夜たちが俺の方に歩み寄って来た。 いくら黒ウサギを試す為とはいえ、余りにも下衆な態度をとりすぎたのだから。 謝る十六夜たちに俺は苦笑いしながら言った。 それに、俺も3人に殺気を向けて怖がらせちゃったし⋮⋮﹂ あれは俺が悪いんだからね⋮⋮。 ﹁いや、良いんだよ⋮⋮。 十六夜の表情には、何故気づかなかったのかという悔しさも読み取れた。 その表情には心底申し訳無さそうなモノだった。 次々と謝ってくる十六夜たち。 ﹁私もごめんなさい⋮⋮夜鶴﹂ 夜鶴君の思いも考えも知らずにあんなこと言ってしまって⋮⋮﹂ ﹁私もごめんなさい⋮⋮ ﹁悪かったなあんなに威嚇しちまって⋮⋮﹂ 191 そして、俺は泣き止んだ黒ウサギに目を移す。 ﹁⋮⋮さぁ黒ウサギ。 君は俺に︻覚悟︼を見せてくれた。 ﹂ だから今度は俺が君に│││││︻奇跡︼を見せる番だ﹂ お願いします夜鶴さん !! 彼女は⋮⋮黒ウサギは優しい⋮⋮優し過ぎるほどに⋮⋮。 た。 むしろ、その顔にはこの荒れ地を復活させる俺に対しての感謝や笑顔が浮かんでい の感情は見受けられない。 その顔には、あのような態度をとった俺に対しての恐怖や拒絶、怨みなどといった負 ﹁は、はいっ !! ク リ エ イ ター ﹁︻創造者の娯楽︼発動。 クリエイト 作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 ガ イ ア・ オ ブ・ エ デ ン │││││︻神聖なる大地︼ ! ︻創 造︼│││││ 新たに作成された能力。 ﹂ 十六夜たちが見守る中、俺は︻ギフト︼を発動させた。 ﹁じゃあ、始めようか⋮⋮﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 192 その効果はあらゆる大地に恵みを与え、俺の知識に存在する植物などの自然を産み出 すことだ。 │││││効果はすぐに現れた。 乾き、割れた大地はその姿を緑に覆われ、本来あるべき豊穣の大地である姿を取り戻 す。 辺りには木々も生え始め、その木には果実が実った。 しかし、まだ廃墟が残っている。 このままでは黒ウサギと約束した﹃元に戻す﹄とは言えなくなる。 クリエイト ク ロ ノ ⋮⋮︻創 造︼│││││ ﹂ ! 俺は早速︻時を司りし者︼を使用し、眼前に広がる廃墟たちを元の姿へと戻す。 効果は時間を巻き戻す、進める、停めるというふうに時に関するモノの操作。 次の能力は、その名の通り時間、時に関係する能力である。 連続して能力を創り出す。 │││││︻時を司りし者︼ ス ﹁もうひとつ⋮⋮作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 193 効果範囲指定⋮⋮作用指定⋮⋮ レグレーション ? ? そして最後に、意図的に流していなかった水を枯れた小川に流す。 り戻したのだった。 辺りに散らばる残骸ですら、壊れる前⋮⋮いや、完成したばかりのような美しさを取 すると、廃墟は光を放ち始め、その姿を変える。 ﹁⋮⋮時よ、戻れ│││││︻後 戻 り︼﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 194 ﹂ 復活した建物も、自然をバックに映えている。 そこに広がるのは、青々と茂る草木たち。 ﹁│││││復活完了⋮⋮かな ? ﹁え、えぇ⋮⋮夜鶴君って実は規格外なのね⋮⋮﹂ あんな荒れ地から此処まで復活させるのかよ⋮⋮﹂ ﹁こ、こりゃスゲェな⋮⋮ 黒ウサギはとびあがりながら嬉しさを体で表現している。 これは以前のコミュニティの時よりも遥かに豊かになっていますっ ﹁す、凄いのですよっ⋮⋮ !! ﹂ ﹁動物たちの気配がする⋮⋮ 凄いね夜鶴って⋮⋮ !! 振り向くとそこには、涙を流す黒ウサギがいた。 黒ウサギから声を掛けられる。 ﹁⋮⋮夜鶴さん﹂ 三人は各々の俺に対しての意見を述べた。 ﹂ 冷や汗を流す十六夜、目を見開く久遠さん、目を閉じ動物たちを感じる春日部さん。 ! !! 195 ﹁本当にありがとうございますっ ﹁良いんだよ黒ウサギ⋮⋮。 前に、俺は言ったよね ﹂ !! 最底辺 名無し その話俺も乗ったぁっ ﹂ ﹁確かに素敵な話じゃない。 ﹂ │││││だからどうしたんだい。 すると、一本また一本と腕が突き上げられた。 俺が腕を天に向かって高々と突き上げた。 そして知らしめよう俺たち︻ノーネーム︼の名を 返り咲こうじゃないか﹃最強﹄に 俺たちは決して負けない。 ? おもしれぇこというじゃねぇか夜鶴 !! ! ? ﹁此処には十六夜が、久遠さんが、春日部さんが、そして⋮⋮俺がいる。 俺は十六夜たちに視線を移す。 むしろこれからだよ⋮⋮これから︻ノーネーム︼は出発するんだ﹂ │││││﹃全力を持って黒ウサギたちを助ける﹄って⋮⋮。 ? !! ! ﹁ヤハハ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 196 私も賛成よ夜鶴君﹂ 私も負けたくないから⋮⋮﹂ ﹁私も賛成。 ﹂ 俺はそういう十六夜たちを見て自然と笑みが溢れた。 ﹁Yes ︻ノーネーム︼の始動なのですよ ﹂ ! ﹁何かな 久遠さん﹂ 久遠さんが俺の方に腕を組みながら視線を向けてくる。 ﹁さて、不知火さん⋮⋮いえ、夜鶴くん﹂ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 黒ウサギも腕を天に向かって突き上げた。 !! そんな俺たちの視線を受けてか、黒ウサギは涙を拭い、笑った勝ち気な顔で。 俺たちの視線は自然と黒ウサギに集められた。 ﹁黒ウサギあとは君だけだよ ? 197 ? ﹂ ﹁私たちは今日から切磋琢磨していく仲間なのよね ﹁勿論そうだよ ﹂ ? ﹂ ? じゃぁ、これからは飛鳥と耀って呼ばせて貰うよ﹂ ﹁ふふふ⋮⋮確かにそうだね⋮⋮。 てそう言った。 久遠さんの隣からぬぅっと現れた春日部さんもこちらをジトーっとした目で見つめ ﹁⋮⋮私もそう思う﹂ 行儀ではないかしら ﹁なら│││││十六夜くんだけ名前で呼んで私と春日部さんだけ苗字で呼ぶのは他人 ? ﹁耀の事を名前で呼ばないのかい ﹁そ、それは⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹁え、えっと⋮⋮﹂ ﹁そう言えば飛鳥も耀の事は苗字で呼んでるよね ﹂ そして、俺は今までの会話で思った事を口にする。 2人は何処か嬉しそうな雰囲気で笑う。 ﹁ありがとう夜鶴﹂ ﹁えぇ、そうしてくれると嬉しいわ﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 198 ? 俺の視線から逃れるように横を向けば今度は耀が飛鳥を悲しそうな表情で見つめて ﹂ いるのが視界に入る。 ﹁⋮⋮飛鳥⋮⋮ ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹁きゃ⋮⋮っ よ、耀さん ﹂ ?! ! 耀もそれに満足したのか、嬉しそうに飛鳥に抱きついていた。 顔を真っ赤にして少し俯きながら耀の名前を呼ぶ飛鳥。 ﹁よ、よ、よ、よ⋮⋮耀、さん⋮⋮﹂ ﹁よ⋮⋮ そ、その⋮⋮よ、よ、よ⋮⋮﹂ ﹁うぅ⋮⋮っ ! ﹁じゃぁ⋮⋮呼んで⋮⋮ ﹁そ、そんなことないわ﹂ ズアップしているのを見る限り、アレは飛鳥をからかっているのだろう。 とても悲しそうな表情だが、耀は飛鳥から見えないような位置から俺に向かってサム ﹁⋮⋮呼んで、くれないの⋮⋮ ﹁あの⋮⋮えっと⋮⋮その⋮⋮﹂ ? 199 ﹁名前で呼ばれただけだけど凄く嬉しい ﹁│││││百合ってのも悪くねぇな ﹂ ﹂ ﹁何変な事を抜かしているんですかこのお馬鹿様ッ ﹂ そんな2人を十六夜は顎に手を当てながらうんうんと唸りながら見ていた。 耀の抱きつきに耐えきれず尻餅をつく飛鳥。 ! 黒ウサギのハリセンによる激しいツッコミが十六夜に炸裂。 ! ! ﹂ しかし当の本人はカラカラと笑っており、何のそのの様子である。 ﹁│││││黒ウサギ !! ∼コミュニティだそうですよ?∼ 200 落ち着いた所で、俺たちが水樹の苗を植えるために巨大な貯水池へと来ると、1人の ﹂ 少年が慌てながら黒ウサギの名前を呼びながら駆け寄ってくる。 ﹁なんで自然が⋮⋮建物が元に戻ってるの あの死んだ土地を復活させたのですか ﹂ !? ﹁ありがとうございました ﹂ !! 俺もこのコミュニティの一員だからね。 ﹁良いよ。 た このコミュニティを代表して御礼を申し上げます⋮⋮本当にありがとうございまし ! その話を聞いた少年は俺に向かって深く頭を下げた。 たのでこのコミュニティの水問題は万事解決です♪﹂ ﹁それに、水樹の苗では補えない居住区の水も夜鶴さんが小川までも復活させて下さっ 黒ウサギは嬉しそうに話を続ける。 俺の方を見ながら目を見開いて驚く少年。 ﹁なっ ?! ﹁ジン坊っちゃんそれは、夜鶴さんが戻してくれたのですよ♪﹂ 俺が理由を説明しようとすると、黒ウサギがご機嫌に答えた。 どうやら少年が慌てている原因は俺の行ったことらしい。 ?! 201 そう言えば君は⋮⋮ ﹂ さて、自己紹介もそこそこに⋮⋮ほら、子供たちが興味津々で此方を見てるよ 俺は不知火夜鶴だよ。 ﹁ジンくんだね 齢十一になったばかりの若輩ですが宜しくお願いします﹂ 僕はこのコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルと言います。 ﹁そう言えば自己紹介していませんでしたね⋮⋮。 ? ﹂ 新しい人たちって誰 強いの ﹂ 黒ウサギはそれに気がついたのか手招きをする。 ﹁ねぇねぇ ﹁かっこいいの !! ﹂ ?! ﹂ とても強くて可愛く、格好良い人たちですよ ふふふ⋮⋮可愛いなぁ⋮⋮。 黒ウサギにキラキラとした瞳を向ける子供たち。 !? 皆にも紹介しますから一列に並んで下さいね ﹁Yes !! 黒ウサギの言葉でササッと並ぶ子供たち。 ! ! ﹂ 俺が視線を移せば、そこには先程から木の影から此方を見ている子供たちがいた。 ? ? !? ! ﹁黒ウサギのおねーちゃんおかえり ∼コミュニティだそうですよ?∼ 202 その数は二十人程だ。その中には狐や狸、猫や犬といった獣耳をつけた子供がいた。 こういった小さい子たちを見ていると保護欲と言うかなんというか⋮⋮守ってあげ たいという気持ちが湧いてくる。 ふと、横にいる十六夜たちを見てみると│││││なんとも言えない表情をしてい た。 十六夜は面倒臭そうに、飛鳥はその数に圧倒されたように、耀は嫌そうにしていた。 三人とも子供が苦手なようだ。 すると、黒ウサギからわざとらしい咳払いが聞こえてくる。 その風格は長年︻ノーネーム︼を支えて来たからだろう。 飛鳥の提案を一刀両断した黒ウサギ。 ﹁それでは組織は成り立ちません﹂ ﹁あら、私はフランクにしてくれてm﹁駄目です﹂⋮⋮﹂ 時には彼らのために身を粉にして尽くさねばなりません﹂ ギフトゲームに参加出来ない者はギフトゲームプレイヤーの私生活を支え、励まし、 コミュニティを支えるのはこの御四方のような方々です。 この御四方は皆、強力な︻ギフト︼を持っていらっしゃいます。 ﹁右から、逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、不知火夜鶴さんです。 203 確かに黒ウサギがここの中核なのだとわかる。 ﹁ココに居るのは子供達の年長組です。 皆、ゲームには出られませんが見ての通り獣のギフトを持っている子もいますから何 か用事を言いつけるときにはこの子達を使ってください。 ﹁ヤハハ、なかなか元気じゃねぇか﹂ とても元気で、きらきらとした目をしている。 ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ みんなもそれでいいですね ﹂ ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁よろしくお願いします ? 子供たちが一斉に叫んだ。 ! ﹂ 俺が子供たちに話し掛けると、 ﹁みんな無理はしないでね !! ? 夜鶴お姉ちゃん ! 俺の見た目からだとやっぱり女と間違われるんだね⋮⋮。 元気に俺の性別を間違えてくれた⋮⋮。 ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁はいっ ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ その代わり飛鳥と耀が子供が苦手なことが確定したね⋮⋮。 おっと⋮⋮十六夜は子供が苦手な訳じゃ無いみたいだ⋮⋮。 ﹁そ、そうね⋮⋮﹂ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 204 ﹁あ、あははは⋮⋮﹂ つい乾いた声で笑ってしまった。 夜鶴さんは男の方ですよ ﹂ すると、黒ウサギが慌てたように子供たちに言い聞かせるように口を開く。 ﹁み、皆 ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ !! 別に気にはしていないしね ﹁大丈夫だよ黒ウサギ。 ⋮⋮みんなも呼びやすい呼び方で良いからね ﹂ そして、柏手をひとつ打つと十六夜の方を向いた。 自己紹介も終りましたし、水樹の苗を植えましょう ! けますか ﹂ 黒ウサギが台座に根を張らせるので十六夜さんの︻ギフトカード︼から出していただ ﹁さてさてっ ! 俺が笑顔でそう言うと、安心したのか黒ウサギは胸をなでおろす。 ?? ? おそらく俺が不機嫌になったと思ったのだろう。 あわあわと、困ったかのように動き出した黒ウサギ。 ﹁え、えっと⋮⋮あのぅ⋮⋮﹂ 全員が心底驚いたような顔をした。 ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁ええっ ?!! !! 205 ? ﹁おう﹂ 十六夜は︻ギフトカード︼を取り出すと、そこから素早く水樹の苗を出して黒ウサギ に渡す。 ﹂ ﹁大きな貯水池だね⋮⋮ちょっとした湖ぐらいあるよ﹂ ﹁にゃ∼ 。 !! 。 龍と戦いたかったんだろうなぁ⋮⋮。 ﹂ そんな黒ウサギを子供のように恨めがましく睨む十六夜。 黒ウサギはツーンとそっぽを向いた。 もし知っていても十六夜さんだけには絶対に教えません﹂ ﹁さて、何処でしょうか ? ?! なにソレ超欲しい ﹁︻龍の瞳︼ ? 何処に行けば手に入るんだ ! その時、十六夜が瞳を輝かせて黒ウサギに言った。 耀の抱える三毛猫からの問いに黒ウサギがそう返す。 り上げられてしまいましたから⋮⋮﹂ 元々は︻龍の瞳︼を水珠に加工したギフトが設置してあったのですがそれも魔王に取 ﹁はいな、最後に貯水池を使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。 ? 黒ウサギ ∼コミュニティだそうですよ?∼ 206 ﹂ ﹁それでは、苗の紐を解いて根をはります 十六夜さんは水門を開けてください ﹁あいよ﹂ 十六夜は軽く了解すると、貯水池に下りて水門を空ける。 すると、大波のような水が十六夜に向かって流れていく。 ﹂ まさに激流のような水に襲われそうな十六夜。 少しは待てって ﹂ これなら水樹の水だけでも生活以外の水が使えるのですよっ ﹁凄いです ! 水産業か何かか ﹁生活以外 ? そのあと、黒ウサギは水量を見て嬉しそうに口を開いた。 あれには巻き込まれたく無いかな⋮⋮。 そのほんの数秒先に今まで十六夜の居た場所に激流が通過した。 叫びながら十六夜は貯水池から石垣まで跳躍した。 ⋮⋮今日はもう濡れたくねぇんだよっ ﹁ちょ !! トゲームに参加せずともそれを売ればコミュニティの収入になります。 ﹂ ⋮⋮例えばですが︻水仙卵華︼などの水面に自生する花のギフトを繁殖させればギフ ﹁いえ、どちらかといえば農作業の方が近いかもしれません。 ? ! ! ! ! ! 207 これなら皆にも出来ますし⋮⋮﹂ ﹁ふぅん⋮⋮おいその︻水仙卵華︼ってなんだ御チビ が口を開いた。 もりはこれっぽっちもないからな ﹂ ﹂ その水樹だって気が向いたから貰ってきただけで コミュニティのためになんてつ ﹁⋮⋮言っておくが、俺は俺自身が認めない限り︻リーダー︼なんて呼ばないぞ ? その説明のあと、ジンくんは十六夜に何かを言おうとしたが、それよりも早く十六夜 えたのか丁寧に説明してくれた。 ジンくんは十六夜の︻御チビ︼という呼び方に驚いたようだったが、気持ちを切り替 ﹁確かにそれは気になるね﹂ ? │││││だが、もし俺が︻義理︼を果たした時にこのコミュニティがつまらないこ 箱庭の世界なら退屈して暇の大安売りなんてしないで済みそうだしな。 ともかく、俺は召喚された分の︻義理︼は返す。 ﹁確か黒ウサギにも言ったと思うんだが│││││いや、言ってないか⋮⋮。 そのあとも真剣な顔で話を続ける十六夜。 十六夜は鋭い目線をジンくんに向けた。 ? とになってたら、迷いなく、そして躊躇いなく俺はコミュニティを抜けるぞ ? ∼コミュニティだそうですよ?∼ 208 │││││最悪俺がコミュニティ事態を跡形も無く潰す⋮⋮﹂ 十六夜の言葉は冗談なんかという考えを消し去る迫力があった。 そして、ジンくんはそれに対して怯むことなく堂々と語った。 と判断したらすぐにでも俺はコミュニティを抜けるよ 俺の言葉には黒ウサギが答える。 まぁ、俺は十六夜とは違ってコミュニティを潰したりはしないけどね⋮⋮﹂ ? ﹁俺は確かに黒ウサギたちを助けるとは言ったけど⋮⋮黒ウサギたちにその価値が無い 俺の話は静かに聞くって決まりでもあるのだろうか⋮⋮。 黒ウサギたちも静かに聞いている。 十六夜も眠そうながら俺の方を見る。 ﹁少なからず俺も十六夜に同意するよ﹂ 俺は皆に聞こえるように口を開いた。 ﹁ちなみに⋮⋮﹂ 十六夜は眠たそうに呟いた。 ﹁⋮⋮そうかい、頑張れよ御チビ﹂ ⋮⋮次のギフトゲームでそれを証明します﹂ ﹁僕らは何時までも黒ウサギに頼るつもりはありません。 209 ウサギ耳をピンと張り、髪を桃色に染めた。 顔は真剣なものである。 ﹁私たちはそれぞれ︻誇り︼を持って行動しています。 ︻ノーネーム︼だからと言って他のコミュニティと変わりはしません。 だから、夜鶴さんを失望させることは決してありません ﹂ ﹂ ︻ノーネーム︼というコミュニティに︻誇り︼を持ち、同士たちを思う。 黒ウサギの熱弁に俺は頷く。 でも、俺と十六夜の話は忘れないでね ﹁黒ウサギが言うならそうなんだろうね⋮⋮ !! 俺がそういうと黒ウサギ、ジンくんはゆっくりと頷いてくれた。 ? │││││本館の明かりはもうすぐ傍だ。 確かに空には月が上がっている。 黒ウサギのその言葉で、俺たちは歩き始めた。 本館に行くとしましょう﹂ ﹁⋮⋮さぁ、もう夜も深くなって参りました。 ∼コミュニティだそうですよ?∼ 210 ∼ボーイズトークだそうですよ Side 夜鶴 ク ロ ノ ス 本館である屋敷にはすぐに着くことが出来た。 ∼ ? ﹂ ? コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位の ! 俺は顎に手を当てながら考える姿勢を見せる。 なるほど、コミュニティでは強さによる序列制度が設けられているのか⋮⋮。 ただいて結構でございますよ﹂ 人からこの屋敷の最上階に住むことになっておりますが今は好きなところを使ってい ﹁はい 私たちは何処に泊まればいいの ﹁遠目から見てもかなり大きかったのだけれど⋮⋮近づくと一層大きいわね⋮⋮。 が想像できるであろう。 立派な屋敷を見れば以前の︻ノーネーム︼がどれほど大きなコミュニティだったのか 戻っている。 ︻時を司りし者︼に よ る 時 間 操 作 は こ の 屋 敷 も 例 外 に 漏 れ ず 新 築 当 然 ま で 時 間 が 巻 き 211 そして、ゆっくりと眼前の屋敷に視線を向け、溜息を吐く。 │││││突然だが俺は、和風な物が好きである。 だからこそ、私服も和服を好んで着ているのだ。 この︻ノーネーム︼の屋敷は見たところ洋館。確かに立派な造りをしているのだが、お そらく和室というモノは無いのだろう。 ﹂ ﹂ ⋮⋮まぁ、とどのつまり、俺の趣味に合わないのである。 ﹁⋮⋮ねぇ黒ウサギ﹂ ﹁はい、なんでしょうか ﹁この辺りで何処か使わない所って無いかな ⋮⋮しかし何故ですか 夜鶴さん﹂ すみません気がつきませんでした⋮⋮。 ﹁そ、そうでしたか⋮⋮ ちょっと他の住居を創ろうかと思ったんだよ﹂ ﹁あぁ⋮⋮俺にはこの屋敷が合わなくってね⋮⋮。 ? ! ? ちょうどいい広さに開けており、場所も悪くない。 黒ウサギは少し考えるようにすると、屋敷の横を指差した。 ? ? ﹁あの場所であればお好きに使っても宜しいですよ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 212 どうぞ、あの場所をお好きにお使い下さいっ ﹁ごめんね黒ウサギ。 てくれる。 ﹂ 黒ウサギは申し訳無さそうな顔をすると、俺にどうぞ、どうぞと先程の場所をすすめ ! ﹂ 夜鶴さんはこのコミュニティ最強の実力者ですので、この程度のことは我 俺の我が儘で困らせちゃって⋮⋮﹂ ﹁いえいえ が儘の内に入らないのですよ ! リ エ イ ター ︻拘りの我が家︼﹂ ホ ー ム・ メ イ カ ー ︻創 造︼│││││ クリエイト 作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 ﹁︻創造者の娯楽︼発動。 ク そしてなるべく日当たりの良さそうな所を予想して住居を創り出す。 俺は屋敷の隣にゆっくりと移動して場所を確かめる。 ﹁Yes♪﹂ ﹁じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うよ黒ウサギ﹂ と黒ウサギは微笑んだ。 むしろ自分で住居を造ると言って下さるのでただのお願いごとよりも楽なのですよ、 ! 213 今回創った能力は、ただ家を造る能力だ。 家の外装、内装、大きさ、強度と言ったモノを自分の好みで設定して造ることができ る。 俺が設定したのは、 ︻和風の家︼ ︻防音の部屋︼ ︻和の雰囲気︼ ︻壊れない︼というもの コンストラクト だ。 ﹁︻建 造︼﹂ 指定したものをしっかりと意識しつつ、行使する。 俺の目の前では使う土地の部分が光を放ち始めた。 その時間は僅か十秒程度であったが、光が止むと俺の設定した通りであろう家が建っ ていた。 江戸時代を連想させるような古風な家、どことなく漂う古き良き日本の雰囲気が俺を 包む。 なかなか良い家じゃねぇか夜鶴。 ! ト︼の方に驚いていた。 その他に黒ウサギや飛鳥、耀も俺の家について驚いていたが、ジンくんは俺の︻ギフ 十六夜が笑いながらそういった。 お前ってやっぱり﹃和﹄が好きなんだな﹂ ﹁ヤハハ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 214 ﹁ジン君。夜鶴君の︻ギフト︼にいちいち驚いていたらこの先もたないわよ 飛鳥が何かを悟ったかのようにジンくんにそう告げた。 ﹁し、白夜叉様を ﹂ ? ﹁と、とりあえず ﹂ !! ﹁それもそうだな⋮⋮。 う 夜鶴さんの住む場所は決まりましたので、残りの御三方の部屋を決めてしまいましょ !! 敷を指差しながら話し始めた。 俺が溜息を吐いていると、黒ウサギが場の空気を変える為なのか、 ︻ノーネーム︼の屋 ジンくんまでもが俺を規格外だと言い始め、その発言に十六夜がけらけらと笑う。 す⋮⋮﹂ ⋮⋮夜鶴さんには悪いですが﹃規格外﹄だからということで自己完結させてもらいま ?!! ⋮⋮なるほど、3人の俺の認識がよく分かった⋮⋮。 飛鳥に続き、十六夜と耀もそういった。 ﹁むしろ白夜叉を倒してる時点で夜鶴は﹃規格外﹄だよ﹂ ﹁ヤハハ。御チビ、夜鶴は﹃規格外﹄だと思っておけ﹂ ﹁で、ですが⋮⋮﹂ 215 黒ウサギ﹂ どうぞ、お好きな部屋をお選び下さい﹂ 確か、どの部屋でも良いんだよな ﹁Yes ? 黒ウサギは行かないの ﹂ ? ﹂ ? 夜鶴さんに手伝わせる訳には参りません 後は、黒ウサギたちにお任せ下さい ﹂ 今日は夜鶴さんのおかげでコミュニティに自然が戻って来たのですから !! 俺が手伝いを申し出ると、黒ウサギは手を振りながら首まで振った。 ﹁手伝おうか ﹁は、はい。黒ウサギは湯殿の用意をしなければなりませんので⋮⋮﹂ ﹁あれ そういいながら、十六夜たち三人はジンくんを連れながら屋敷の中に入って行った。 ﹁私も飛鳥に賛成﹂ ﹁なら、私たちは少し中を探険してくるわ﹂ ! ﹁い、いえ !! に任せることにした。 黒ウサギ﹂ しかし、何でもやるというのは今後に悪影響が出る可能性もあるため、俺は黒ウサギ い。 そういう黒ウサギだったが、俺としては大したことはしていないというイメージが強 !! !! ? ﹁⋮⋮じゃあ、頼んだよ ? ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 216 ﹁ ⋮⋮Yes♪お任せ下さいっ 黒ウサギが寂しそうに俺を見ながら聞いてくる。 ⋮⋮ところで夜鶴さんは食事などはどうなさるのですか⋮⋮ !! ﹁そ、そうで御座いますか 俺がそういうと黒ウサギはパァッと明るい笑顔になった。 ﹂ ﹁そうだなぁ⋮⋮ご飯とお風呂は黒ウサギたちの屋敷で貰おうかな ? !! ﹂ ﹂ 分かりました♪それでは早速湯殿の方を用意して参りますので、少々お待ち下さいね !! ? 217 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 庵︼は少しの間放置することにした。 ちなみに俺の建てた家│││││そうだな︻月光庵︼と名付けよう│││││︻月光 げっこうあん これからの暇潰しを考えながら屋敷の中に入って行った。 ﹁⋮⋮しばらく俺も屋敷の中を探険しようかな⋮⋮﹂ 黒ウサギは駆け足で屋敷の中に入って行った。 ! ﹁│││││御待たせいたしました 湯殿のご用意が整いましたので、女性の方からどうぞ ﹂ ﹁それじゃあ先に入らせてもらうわよ、十六夜君﹂ どうやらお風呂の用意が終わったそうだ。 てやって来た。 ﹂ いつの間にか四人全員がひとつの部屋に集まっていたのだが、そこに黒ウサギが走っ !! !! ﹁俺は二番風呂好きだから大丈夫だぜ ? ? │││││と、三人が部屋を出て行くと、十六夜が真剣な目で俺を見てきた。 無意識でお風呂を楽しみにしているのだろう。 やはり三人とも女の子だ。 た。 俺と十六夜がそういうと、黒ウサギ、飛鳥、耀は、嬉しそうにお風呂に向かって行っ ゆっくり入って来なよ三人とも﹂ ﹁俺も後からで良いよ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 218 十六夜﹂ ﹁⋮⋮なぁ夜鶴﹂ ﹁うぉい ﹂ それは洒落になんねぇぞ夜鶴 ﹂ !? ﹂ ﹁十六夜がふざけるからだよね ⋮⋮で、本題は ﹁外の奴等、どうするよ 夜鶴﹂ ﹁⋮⋮そのことなら十六夜に任せて良いかな ? │││││俺はちょっとやることがあるから﹂ ? 十六夜はヤレヤレと首を振ると今度は真剣な目をした。 ﹁全く⋮⋮冗談くらい言わせろよ⋮⋮﹂ ? ? 机が当たる寸前に、十六夜はなんとかバックステップで躱す。 ?! 俺は黒ウサギばりの勢いで十六夜の頭を叩いた│││││机で。 !! ﹁⋮⋮覗くかっ ﹂ おそらく外にいる招かれざる客に対しての対応を│││││ ﹁⋮⋮何かな ? ﹁自重しなよ十六夜っ !!! 219 ・ ・ ﹂ 俺がそういうと、十六夜はヤハハと笑い何処からともなく連れてきたジンくんととも に外へと向かって行った。 ・ ﹁│││││さてと⋮⋮オーミ来てるんでしょ ﹁⋮⋮良く分かりましたね⋮⋮﹂ 俺の呟きに反応してか、目と鼻の先程の距離で空間が歪み、そこからオーミが現れる。 ? ・ 俺は︻ギフトカード︼を取り出しながらオーミに言った。 ⋮⋮﹂ ⋮⋮ 君 の キス の せ い で 感 覚 か ら 能 力 ま で あ り 得 な い 位 ま で 強 く な っ て る ん だ か ら ・ ﹁当たり前でしょ ? ﹂ ? ﹁勿論です。 すると、オーミは指をパチンと鳴らし辺りの時を停めた。 オーミに笑いながら話し掛けた。 ﹁とりあえず⋮⋮きちんと説明してくれるんだよね │││││私ではもう勝てそうにありませんね⋮⋮﹂ ﹁まさかそこまで強くなるとは思いませんでしたよ⋮⋮。 ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 220 隠しごとなく全て話しますよ﹂ オーミは真剣な顔でしかし何処か嬉しそうに口を開き始めた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 初めての俺視点か Side 十六夜 ヤハハ ! どうかしましたか ﹂ 作者もいきなり粋な真似をするな ﹁十六夜さん ? ﹂ ? 俺は屋敷をバックに仁王立ちすると、茂みを睨んだ。 全く⋮⋮こんなに綺麗な月の出る夜に仕掛けてくるとは⋮⋮ふざけてやがるな⋮⋮。 御チビ様にそういうと、俺は小石をひとつ拾い上げた。 ﹁別に何とも無いぜ メタ発言もここまでにしておくかな。 ! ! おおっと御チビ様が呼んでるな。 ? 221 ﹁おーい、そろそろ決めてくれねぇと俺が風呂に入れねえだろうが⋮⋮﹂ ⋮⋮茂みからの反応なし。 ⋮⋮あぁ、面倒くさいな⋮⋮。 どうせやるなら派手にやれよな、おい。 それとも襲わねえのか ? 茂みに着石するとスガァンという音と共に爆発する。 俺はイライラが溜まり、つい手に持っていた小石を投石してしまった。 ⋮⋮やはり反応は無い。 いい加減飽きたぞ、おい﹂ やるならいい加減出てきてかかってこいよ⋮⋮ ﹁⋮⋮ここを襲うのか ? ﹂ ? ほら﹂ いきなり喋り始めたかと思えば石を投げつけるなんて、一体何事です ⋮⋮やり過ぎたか か ?! ﹁︻フォレス・ガロ︼から物騒なお使いみたいだぜ ?! 気になったのがその姿だ。 爆発により打ち上げられ、落ちた人影は、何かを言っているようだ。⋮⋮がそれより 御チビ様は俺の言葉を聞くと、茂みに目を移した。 ? ﹁い、十六夜さん ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 222 犬の耳だったり猫の耳だったりと、一部が獣である者ばかりだ。 おそらく︻獣のギフト︼を持ってはいるが格が低いため中途半端な獣化になっている んだろう。 ﹂ はい、この話題終了∼﹂ ﹂ ﹂ ガルドのコミュニティ︻フォレス・ガロ︼を完膚なきまでに叩きのめ しばらくすると、その内の一人が口を開いた。 して欲しい ﹁恥を忍んで頼む 俺が即答すると、御チビ様と侵入者は絶句した。 ﹁│││││嫌だね﹂ 御チビ様にいたっては信じられないモノを見る目で俺を見詰めている。 何か喋り始めた侵入者に俺は被せながら言った。 ⋮⋮我々も人質を取られている身分、ガルドに逆らうこともできず⋮⋮﹂ ﹁は、はい。⋮⋮まさかそこまでお見通しだとは露知らず失礼な真似を⋮⋮。 予想するに命令されて俺たちのコミュニティのガキを拉致しに来たってところか ﹁どうせお前らもガルドから人質を取られてる連中だろ ? ﹁⋮⋮ああ、その人質たちのならもう全員死んでっから。 ﹁⋮⋮なっ ??!!!! ? !! ! 223 ﹁い、十六夜さんっ ⋮⋮ ﹂ ﹂ お前らが明日のギフトゲームに勝ったら全部知れ渡るだろ ﹁隠す必要なんかあるのかよ ﹁そ、それにしたって言い方というものがあるでしょう ⋮⋮冗談きついぞ御チビ様。 ﹁ハッ、コイツらに気を使えってことか ! 気づくのがあまりにも遅すぎる⋮⋮。 その言葉に今気がついたのか御チビの表情が変わった。 ⋮⋮他でもないコイツらだろうが⋮⋮﹂ よく考えてもみろよ。殺された人質を攫ってきたのは誰だ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮はい。 ﹁⋮⋮そ、それでは人質はっ⋮⋮ ﹂ 同じ穴のムジナに頼まれてまでやろうとは思わねえよ、 俺は﹂ ? ? そ の 目 に は 相 手 を い た わ る よ う な モ ノ が 見 え る が ⋮⋮ コ イ ツ は 分 か っ て ん の か ね 御チビが慌てながら割り入ってくる。 !!! ﹁悪党狩りってのはカッコいいけどな⋮⋮。 ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 224 !! 残念ですが、皆死んでいます。 ﹂ ガルドは人質を攫ったその日の内に全員殺していたそうです⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮そんなっ⋮⋮ だろうに⋮⋮。 自業自得⋮⋮ん ちょっと待てよ⋮⋮魔王傘下のコミュニティ⋮⋮ 叩き潰して欲しいか ﹂ ﹂ ? ⋮⋮これは使えるかもしれねぇ⋮⋮ ﹁お前達、︻フォレス・ガロ︼そしてガルドが憎いか ﹁あ、当たり前だ ﹂ ⋮⋮でもお前達にはそれをするだけの力が、勇気はないと ﹁そうかそうか。 俺達がアイツのせいでどんな目にあってきたかっ⋮⋮ ? 俺達がゲームを挑んでも勝てるはずがない もし万が一にでも勝てたとしても︻魔王︼にでも目を付けられたら⋮⋮﹂ ! ﹁ア、アイツはあれでも魔王の配下、所持している︻ギフト︼の格も遥かに上だ⋮⋮。 ? !!!! !! ? 全く⋮⋮魔王傘下のコミュニティだからといってそいつの言うことを聞いたら駄目 悲しむ侵入者たち。 !!! ? 225 │││││︻魔王︼。 何処にでも付きまとうその名前に、再度︻魔王︼が強大な力を持っていることを認知 した。 ⋮⋮だからこそ、だからこそいけるかもしれない。 ﹂ いや、もし駄目ならこれからの俺たちに待っているのはかなり辛い展開だ。 だが、今のコイツらの反応から確信した。 あとは御チビ様を説得すれば良いのだからなんとでもなる。 間の抜けたような声をあげる侵入者たち。 ﹁⋮⋮その︻魔王︼を倒すためのコミュニティがあるとしたら⋮⋮ 俺はスッと御チビの肩を抱き寄せて声高らかに宣言する。 ? ﹁│││││言葉通りの意味さ。 むしろこれで宣伝が出来るのなら安いモノだ。 困惑したような様子で聞き直して来るので、俺は再び口を開いた。 俺のその言葉に再び絶句する侵入者たち。 ﹁このジン坊っちゃんが、︻魔王︼を倒すためのコミュニティを作ると言ってるんだよ﹂ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 226 俺たちは︻魔王︼の脅威にさらされたコミュニティを守る。 守られたコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。 てな﹂ 余計なことを言おうとした御チビの口を塞ぐ。 ﹁じょ、⋮⋮﹂ そもそもこの御チビは何も分かっていない。 俺は御チビの口を塞いだまま腕を広げてもう一度言う。 ここまでくればもう異論もないだろうし勢い任せでも承諾してくれるはずだ。 だけど安心して良いぞ。 ﹁人質のことは残念だったな⋮⋮ ﹂ なぜなら、俺たちの︻ジン =ラッセル︼が︻魔 明日︻ジン=ラッセル︼率いる俺たち︻ノーネーム︼メンバーが仇を取ってくれる 倒した後の心配もしなくていいぞ 王︼を倒すために立ち上がったのだからな ﹂ !!! ! その表情に俺の選択は間違っていなかったと確信した。 俺たちを希望の光を見たかのように見詰めてくる侵入者たち。 ﹁おお⋮⋮ !!!!! ! ﹃押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずは︻ジン=ラッセル︼に問い合わせください﹄っ 227 そして歓喜しろ ! ﹂ これならもう大丈夫だ。明日のゲームの勝敗次第で現状は大きく変わる筈だ。 ﹁さあ、コミュニティに帰って仲間に言いふらせ 明日は頑張ってくれよなジン坊ちゃん ﹂ ! ! ! 俺たちの︻ジン=ラッセル︼が︻ノーネーム︼が︻魔王︼を倒してくれると ﹁わ、わかった ﹂ ⋮⋮待っ⋮⋮ 俺たちは応援してるぜ ﹁ちょ、まっ ! ! ! なんだよ夜鶴。 なに他人事みたいにしてんだよ﹂ お前俺の考え知ってて送り出したんだろ ﹁ヤハハ ⋮⋮ジン君も大変だったみたいだね﹂ ﹁あぁ、お帰り十六夜。お疲れ様 屋敷の最上階にある大広間に着くとそこには真面目な表情を浮かべた夜鶴がいた。 る部屋に駆けていく。 侵入者たちが全員帰ったのを確認して俺は御チビの口を塞ぎながら抱えて夜鶴のい ! あれじゃあまるで⋮⋮﹂ 俺と夜鶴が会話していると、御チビが大声をあげた。 ? ! ﹁さっきのは一体どういうことですか !? ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 228 ﹂ ﹁﹃打倒全ての魔王とその関係者。お困りの方は︻ジン=ラッセル︼まで﹄⋮⋮キャッチ フレーズはこんなところか ﹁ふざけないでください十六夜さん ? ﹂ ! ﹂ ! ﹂ !? ﹂ ? 御チビは俺の方を興味深げに見つめて来た。 ﹁か、考えですか⋮⋮ 十六夜には考えがあってやったんだよ﹂ ﹁いや、ジン君それは誤解だよ。 俺がそれについて語ってやろうかと思っていたのだが、そこに夜鶴が入って来た。 なんですか ⋮⋮では十六夜さんは、自分の趣味のためにコミュニティを滅亡に追いやるおつもり ﹁お、面白そう⋮⋮ ? ⋮⋮へえ⋮⋮ちょっとはリーダーしてんだな⋮⋮。 俺が楽しむように笑ってやれば御チビの表情が変わった。 えか ﹁おお、そいつは大歓迎だ。あんな面白そうな奴らとゲームで戦えるなんて最高じゃね れるかもしれないのにっ そんな宣告が流布されたら僕たちの倒すべき︻魔王︼以外の他の魔王にも目をつけら ! 229 全く⋮⋮折角驚かしてやろうと思ったのによ⋮⋮。 ﹁あぁそうだよ。俺にはある考えがあった。 ﹂ まず最初に聞いておくが⋮⋮お前はどうやって︻魔王︼に⋮⋮あの︻白夜叉︼みたい な強力な︻ギフト︼を持つ奴に勝とうと思って俺達を呼んだんだ ださったので感謝していま す﹂ 法は十分ありましたが⋮⋮そこは十六夜さんと夜鶴さんが想像以上の成果を上げてく 新しい人材と作戦を的確に組みさえすれば︻神格クラス︼は無理でも水を確保する方 ﹁まず⋮⋮水源を確保するつもりでした。 その表情には思い悩んでいるという色がみえた。 夜鶴と俺の言葉に御チビは少し黙り込むと、しばらくしてゆっくりと口を開いた。 ﹁その考えは俺も気になるよ﹂ ? ﹁でもジン君。それには大きな見落としがあるよ﹂ ﹁なるほどねぇ⋮⋮期待一杯、胸一杯だったわけだ⋮⋮﹂ ほど才の有る方々が揃えばどんなギフトゲームにも対抗できたはずです﹂ ﹁ギフトゲームを堅実にクリアし、コミュニティを大きくしていけば⋮⋮ましてや、これ ﹁俺は出来ることをしただけだよ﹂ ﹁おう、存分に感謝しやがれ﹂ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 230 俺の言葉を代弁してくれたかのような夜鶴の言葉。 十六夜さんは自分の考えの為だけにコミュニティを危険に陥れるような しかし、それに対して御チビは大声をあげた。 ﹁何故ですか 真似をした ﹂ もしあの宣誓が流布されれば最後、魔王とのゲームは不可避になる まだ成長も何もしていないのにです そのことを貴方方は分かっているのですか 壁を強く叩いた御チビ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹁だ、だからそれはギフトゲームに参加して⋮⋮﹂ 俺が聞いてるのはどうやって魔王に勝つかだ﹂ ・ ・ ﹁ギフトゲームに参加して力をつける、なんてのは大前提だろうが。 俺と夜鶴の容赦無い言葉に顔を歪める御チビ。 ﹁十六夜違うよ。このコミュニティはリーダーが悪い﹂ ・ やっぱりこのコミュニティに入ったのは失敗だったかもな⋮⋮﹂ ﹁呆れた奴だな、そんな机上の空論で再建がどうの誇りがどうの言ってたとは⋮⋮ しかし、夜鶴の言葉と意味が分からないとは⋮⋮あまりにも残念だ⋮⋮。 !? !! !! !! ! 231 前のコミュニティはゲーム参加して力をつける事をしていなかったの ﹁それは大前提だと散々言ってるだろうが。 ﹂ じゃあ何か か ? 夜鶴が俺を援護するように言葉を繋いだ。 ﹁そして、俺たち︻ノーネーム︼が何をしようとも覚えてすら貰えないんだよ﹂ それはとんでもないハンデだ、これじゃぁ口コミで広がりすらしない﹂ 況だ。 ﹁今俺達には︻名︼も︻旗印︼も組織を主張する旗頭はなに1つとして存在していない状 俺の言葉に黙り込む御チビに畳み掛けるように口を開いた。 ? ﹁先代を⋮⋮超える⋮⋮っ 理解はしていたはずだ。 ﹂ !!? よ﹂ ⋮⋮だがな、お前はそのハンデを背負ったままで︻先代︼を超えなきゃならないんだ そんな奴らを信用すると危険と判断されるのが普通だ。 ﹁│││││︻ノーネーム︼ってのは所詮その他大勢という認知でしかない。 ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 232 しかし、それを無意識に避けていたのだろう。 ・ ・ ・ ・ ・ ﹂ ﹂ まだ11歳の子供だというのは重々承知している。だが、コミュニティのリーダーと して判断する立場なのだからそんなことはして欲しくない。 ・ ﹁でだ⋮⋮︻名︼も︻旗印︼も無い。 ・ となると後はもうリーダーの名前を売り込むしか無いだろう その言葉にハッとした表情になる。 やっと俺の意図に気づいたようだ。 全く⋮⋮もっと早く気づいてくれても良いのにな⋮⋮。 コイツはリーダーなんだからちった勉強させねぇといけねぇな。 ﹁僕を担ぎ上げて、コミュニティの存在をアピールするおつもりですか ﹁あぁそうだ。 それもただのリーダーじゃねえぞ。 │││││︻打倒魔王︼を掲げたコミュニティのリーダーだ。 そいつが明日のゲームに勝てば良い宣伝になる﹂ 流石は夜鶴だ⋮⋮俺の考えを先読みしてきやがる。 そして、その波はいずれ箱庭全土に広がっていく⋮⋮﹂ ﹁少なくともこの辺りの人達には必ず伝わるよ ? ? ? 233 ⋮⋮いや、先読み所か俺はコイツの手の平の上で踊らされてるような気がしてならな い。 │││魔王を倒した前例がないわけじゃないだろ ﹁⋮⋮ま、御チビが懸念するように他の魔王を引き寄せる可能性は大きいだろうが││ ミュニティに引き入れられる。 ⋮⋮つまり、︻魔王︼を倒した者は過去にもいてその魔王を倒せば強力な駒としてコ コイツは黒ウサギに聞いた話の内のひとつだ。 │││││﹃魔王を倒せばその魔王を隷属させられる﹄│││││ 来た﹂ しかも、夜鶴にいたっては既に︻元・魔王︼だが、白夜叉を軽く捻ったことがあると ? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 俺並み⋮⋮少なくとも俺の足下並みの奴が欲しい﹂ ・ 夜鶴並みなんて贅沢は言わねぇ⋮⋮。 ・ ﹁今のコミュニティに足りないのは人材だ。 だ。 ︻魔王︼の襲来は︻最悪のピンチ︼と︻最高のチャンス︼が同時に巡ってくるようなもの ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 234 ・ ・ ・ ・ ・ ﹁確かに⋮⋮十六夜並みの仲間は欲しいところだね﹂ 俺がニヤリと笑いながら言った言葉に夜鶴も笑いながらそういった。 ﹂ そして、俺は夜鶴をチラリと見ると、再び御チビに話し始める。 ﹁乗るか反るかは御チビ次第 もしかしたら俺の知らない方法があるかもしれない。 何せ俺は箱庭に来たばかりだ。 他に作戦が有るのならそれに乗ってもいい。 他にカッコイイ作戦があるってんなら協力は惜しまないぜ ! 思い浮かばなかった。 御チビを見てみるとグッと手を握り締め此方を真っ直ぐと見据えてくる。 俺の実力でも見せろってか ? ? 加してください﹂ ﹁⋮⋮なんだ ﹂ ・ ・ 今度行われる︻サウザントアイズ︼傘下のコミュニティが開催するギフトゲームに参 ﹁⋮⋮1つ条件があります。 だ。 ⋮⋮ な ん だ、少 し は 良 い 顔 に な っ た じ ゃ な い か。 そ れ で こ そ │ │ │ │ │ リーダー ・ ・ だが1番手っ取り早くて1番即戦力を手に入れられる方法は俺にはコレぐらいしか ? 235 ﹁それもありますが⋮⋮このゲームには僕らが取り戻さなければならない大事なものが ﹂ 出品されるのです⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮昔の仲間、か が、それは御チビの言葉にかき消される。 夜鶴ですら目を細めて興味深そうに⋮⋮そして何かを呟いていたように見えたのだ 俺の笑みは無意識に深くなった。 ││元・魔王だった仲間です﹂ ﹁はい。⋮⋮それもただの仲間ではなく││ ? 俺が楽しさで震えていると、突然その場の空気が│││││凍りつく。 奴らもいる⋮⋮か⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮そして魔王を隷属させたコミュニティすらも滅ぼせる︻仮称・超魔王︼とも呼べる ﹁御二人のお察しの通り、先代コミュニティは︻魔王︼と戦って勝利した経験があります﹂ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 236 │││││ゾクッ ﹁ジン君⋮⋮ここに再度聞くよ 君は│││││︻打倒魔王︼を掲げるんだね⋮⋮ ﹂ その濃密な殺気は⋮⋮明確な死をイメージさせた。 背後⋮⋮夜鶴から殺気が滲み出してくる。 !!! や、ヤバい俺もこの殺気に飲まれそうだ⋮⋮。 御チビはその殺気に圧されながらも掠れる声で答えた。 ﹁は⋮⋮⋮⋮ぃ⋮⋮﹂ ? ? 237 ﹁⋮⋮そうかい⋮⋮。 じゃあ1つ俺からのお願いごとを聞いてくれないかな ﹂ いのち ﹁キミか十六夜いや、その他の誰でもいいから│││││俺に差し出せ⋮⋮生命を﹂ 御チビはゆっくりと頷き、次の言葉を待つ。 そう言った夜鶴はその場にあるソファーに腰掛けて足を組む。 ? ﹂ ﹁︻生贄︼とでも言えば良いのかな ・ ・ ・ 俺は今日、強力な︻ギフト︼の行使で些か疲れていてね ちょっと生き血が啜りたくなったんだ﹂ ﹂ 夜鶴の瞳が紅く光り、鋭い八重歯が見える。 俺の言葉は夜鶴の仕草で止められた。 ⋮⋮なるほど⋮⋮夜鶴は御チビを試してるのか⋮⋮。 ⋮⋮御チビには見えていない⋮⋮が、夜鶴は俺に向かって唇の前で指を立てた。 ! ? ? ﹃魔王﹄という呼称は今の夜鶴にピッタリではないだろうか。 そう言った夜鶴の風格は絶対的支配者のそれ。 ﹁なっ⋮⋮ ?!!!! ﹁よ、夜鶴⋮⋮お前は⋮⋮吸血鬼⋮⋮ッ ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 238 │││││が、しかし、俺の冷や汗は止まらない。 もし御チビが下手な選択をすれば⋮⋮夜鶴は容赦なく俺たちを見放すだろう。 黒ウサギの時とは比べ物にならないこの気合の入った試練⋮⋮なるほど、御チビが ﹂ リーダーとしてやっていけるかを試しているんだな⋮⋮。 ﹁さぁ⋮⋮早く選びなよ⋮⋮ジン君 ・ ・ 御チビはそう叫んだ。 ﹁│││││僕は戦う。 !!! 今までのような流されるままの自分は止めます。 ・ これからは│││││みんなと戦って切り開いていきます ﹁⋮⋮良いぜ御チビ⋮⋮いやリ<rb ﹂ に、今の夜鶴さんの言葉に屈してしまったのでは話になりませんっ ﹂ 本当なら僕がこの身を差し出すところですが⋮⋮今まさに魔王に挑むと決意したの ﹁僕は⋮⋮誰も犠牲にしない ! 御チビはキュッと口を結び目を開くと決意の眼差しを見せた。 しかし、目には強い意思があった。 御チビの体はガクガクと震えている。 ﹁⋮⋮ぼ⋮くは⋮⋮ぼく⋮⋮は⋮⋮﹂ ? !! 239 ・ ﹂ ・ ー</rb><rp>︵</rp><rt>・</rt><rp>︶</rp><ダ ー その案に乗ってやる る。 ﹁│││││へぇ 俺に挑もうって言うのかい ﹂ しかし、御チビは一歩も引かずに口を開く。 そうして、夜鶴からの重圧が増す。 ? ? ジンの表情は申し訳なさそうだったがキリッとしており、これぞリーダーの顔であ ﹁すみません十六夜さん⋮⋮本当は僕が貴方を護らなければならないのに⋮⋮﹂ ! ! ﹁行くぜ夜鶴っ ﹂ 今のコイツにならついて行ってもいい、そう思わせる 俺は御チビの⋮⋮いや、ジンの頭に手を置いて笑う。 │││││僕たちはだ﹂ ﹁僕はじゃねぇよ御チビ。 僕は夜鶴さんに挑みます﹂ ﹁はい。 ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 240 !!! ﹁行きます夜鶴さんっ ﹂ 俺とジンは夜鶴に向かって走りだした。 !!! いつの間にか殺気が止んでいるのにも気がつかないままに⋮⋮。 合格だよジン君 ﹂ ﹁│││││ふふふ。 241 ? ﹂ 俺たちは夜鶴に抱き止められていた。 ﹁⋮⋮えっ ﹁俺はね ﹂ ? 君がリーダーに相応しいか試したんだよ。 ﹁そ、それってどういう⋮⋮ ﹁⋮⋮夜鶴はお前を試したんだよ御チビ﹂ 俺は夜鶴の真意を御チビに告げる。 ﹁だから、合格だよジン君﹂ ⋮⋮まだ呼び名は御チビでいいな⋮⋮。 何がなんだが分かっていないふうのジン。 ??? 夜鶴は俺と御チビを話してまた口を開く。 魔王という強大な力に挑戦するんだから、生半可な覚悟じゃ直ぐに折れてしまう﹂ ? ﹁故に君は合格だよジン君。 夜鶴はにっこりと笑って御チビを見詰める。 俺という強大な力の前に屈さず、立ち向かうその姿は俺の求めているもの通り⋮⋮﹂ 目的を達成させるのに必要なのは︻傲慢さ︼と︻打ち勝つ勇気︼だ。 ない。 ﹁リーダーというのは時に︻優しく︼時に︻厳しく︼そして時に︻傲慢︼でなければなら ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 242 これからは全力で君の力になろう 高らかとそう宣言した。 Side Out ﹁なんでだい ﹂ ﹁あんなことするか 普通。 ﹂ ﹂ 俺がジン君を試したあと、十六夜がそういった。 ﹁それにしても夜鶴は不器用だな⋮⋮﹂ Side 夜鶴 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ !! 俺は分かってたのに死ぬかと思ったぞ ? ? 確かに十六夜は途中で気がついたようだったけど何であんなに必死だったのかと不 だから俺はいつもこうするんだ﹂ ﹁人間、死を間近に感じたら本心がでるんだよ。 ? 243 思議だったね⋮⋮。 ﹁御チビも怖かっただろ ﹂ ﹁む⋮⋮それは心外だなぁ⋮⋮。 ? そこにいたのは先程までお風呂に入っていた黒ウサギたちだった。 パチッと音がすると、部屋に明かりが灯った。 ﹁あら、何か楽しそうね三人とも﹂ それを見ていると、俺も頬が緩み終いには俺、十六夜、ジン君で笑っていたのだった。 ジン君の言葉に十六夜が笑い始めた。 俺は︻魔王︼なんかじゃないぞ ﹂ ﹁は、はい⋮⋮三年前の魔王襲来の比ではないくらい怖かったです﹂ ? ﹂ ? ﹁だから、明日は絶対に勝て﹂ ﹁えっ⋮⋮ そしたら俺が、昔の仲間を取り戻してやる﹂ ﹁明日のギフトゲーム、勝てよ。 十六夜はそういうと、俺とジン君の肩を引っ張り寄せた。 なぁにちょっとばかり御チビと夜鶴と俺で語りあってたんだよ﹂ ﹁まぁな。 ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 244 ﹁十六夜さん⋮⋮﹂ 俺とジン君にしか聞こえない位の声で十六夜は言った。 俺はスキップ気味にお風呂場に向かっていった。 それよりもお風呂だお風呂♪ 俺も巻き込まれた形になったが⋮⋮まぁ、気にしても仕方がないだろう⋮⋮。 んで、ついでに夜鶴も連れていく﹂ ﹁あ、明日負けたら俺コミュニティ抜けるから宜しく。 十六夜は部屋を出る寸前にくるりとターンしてジン君の方を向き口を開く。 そういいながら俺と十六夜はお風呂に向かっていく。 ﹁あ、俺も行くよ﹂ ﹁さて⋮⋮俺もいい加減風呂にでも行くかな﹂ 245 ││﹁⋮⋮夜鶴やっぱりお前産まれた性別間違えてるだろ⋮⋮﹂││ ││﹁十六夜煩いよ⋮⋮﹂││ ││﹁何か女と風呂入ってるみてぇだわ﹂││ ﹂││ !!! ﹂││ それは洒落に⋮⋮﹂││ 十六夜君の変態っ !!! おい夜鶴 ?! ││﹁キャー ││﹁ちょ !! ││﹁十六夜君に襲われる∼っ !!!! ∼ボーイズトークだそうですよ?∼ 246 247 ││﹁夜鶴止めろぉぉぉぉお ﹂││ ∼﹃お風呂場での出来事﹄から抜粋∼ !!!!
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