問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?【リメイク版】 夜叉猫 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ ﹄ 突然の﹃死﹄の訪れ⋮⋮それは新しい﹃生﹄との出会いでもあった。 ﹄ │││││﹃俺が死んだのは神様のミス⋮⋮ │││││﹃お詫びに︻転生︼⋮⋮ ? 事で⋮⋮ しかも、神様のはからいで最強のバグキャラに生まれ変わるという こととなる。 少年は神様から告げられた衝撃の事実を受け入れ、再び生を受ける ? 少年は新たな人生をどう歩むのでしょうか⋮⋮ ? ?? 目 次 ∼ prologue one ∼ ││││││││ ウサギが呼びました ︼ ∼ ││││││││││ ∼ │││││││││││ ∼ prologue two ∼ ││││││││ ︻YES ∼箱庭にやって来たそうですよ ∼世界の果てを訪れるそうですよ ∼ │││││││││││││ 1 14 21 33 46 55 ∼説明を受けるそうですよ ∼ ││││││││││ ∼ │││││││││││││ ∼HENTAI降臨だそうですよ ∼挑戦と決闘だそうですよ ∼ ││││││││││││││ ∼コミュニティだそうですよ ∼ │││││││││││ ∼ ││││││││││││ ∼ ││││││││││││││││ ∼再開の時だそうですよ ? ? ? ∼ボーイズトークだそうですよ ? ∼神様だそうですよ ? 71 ! ? ? 89 129 110 99 ? ? ! ∼ prologue one ∼ │││││前後左右、永遠に続くかと錯覚する程に真っ白な空間 ⋮⋮。 何処ここ⋮⋮ ﹂ 俺が重たい目を開くとそれが広がっていた。 ﹁⋮⋮あれ │││││ひとつ。 俺は既に死んでおり、ここは天国もしくは地獄である。 コレはあまりに飛躍し過ぎているのだが⋮⋮ │││││ひとつ。 いと考えていいだろう。 リットがないうえにこの白い空間の説明がつかないためほとんど無 コレも無いことは無い考えだが、俺を拉致したとしても犯人にメ コレは現実世界で、俺は拉致・監禁された。 │││││ひとつ。 ⋮⋮一番あり得る現実的な考えだ。 コレなら今の自分の現状を説明することができる。 コレは俺の見ている夢で別に不思議なことではない。 │││││ひとつ。 たてる。 俺は目を瞑りふぅ、と息を吐く。そして予想できる仮説をいくつか こんな時こそ慌てず、冷静な思考が必要だ。 ﹁⋮⋮こんな時こそ冷静にならないと⋮⋮﹂ い。 辺りを見回してみるものの、その白い世界には俺以外見当たらな ? 超常現象よりあり得ないが⋮⋮ 1 ? 二次創作でよくある︻神様転生︼のための場所⋮⋮という荒唐無稽 な仮説。 ﹁⋮⋮やっぱりコレは夢なのかなぁ⋮⋮﹂ 自分のたてた仮説を吟味した結果、そのような思考に至る。 │││││俺が唸りながら考えていると、突然背後から何かを叩き ﹂ つけたような音が聞こえてくる。 ﹁⋮⋮ん 怪訝に思った俺が背後を振り返って見ると│││││ ⋮⋮えっ ﹂ │││││土下座をした幼い少女がいた。 ﹁⋮⋮えっ ?? しばしの無言の時を経て、俺は声を掛けようと少女に近づくと⋮⋮ ﹁申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁあっっっっ してしまう。 ﹂ ﹁え、えっと⋮⋮取り敢えず⋮⋮話を聞かせてくれないかな 何はともあれ、彼女から話を聞くべきだろう。 ? │││││何も無い所から現れたんだから。 俺の目がおかしくなってしまった訳でなければ、彼女は│││││ 彼女なら何か知っているはずだ。 ﹂ 空間を震わせるほど音の波が広がるのをみるとついつい遠い目を 声の爆弾が炸裂した。 !!!!! 2 ?? 俺はあまりのことに眼を擦り二度見をしてしまった。 ? ﹁は、はい⋮⋮すみません⋮⋮﹂ 少女は頭をあげて、申し訳なさそうな表情を浮かべた。 ﹁ひとまず基本的な質問から⋮⋮此処は一体何処なのかな ます⋮⋮﹂ 聞いたことない名前だね⋮⋮﹂ ﹁神によって創られた空間か⋮⋮ん、神⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹁︻神の間︼とは、その名の通り神によって創られた空間のことを指し 口を開く。 俺が眉をひそめ、首を傾げれば、少女は俺の疑問を解決させるべく ﹁︻神の間︼⋮⋮ ﹁⋮⋮此処は︻神の間︼⋮⋮﹂ た。 その質問をすると少女は泣きそうな表情をし、ゆっくりと話を始め ? ﹁はい。なんですか ﹂ ﹁⋮⋮じゃぁ、神様。もう一つ質問をさせて欲しい﹂ 少女は泣きそうになりながらも笑った。 │││││所詮は名ばかりですが⋮⋮。 私は│││││︻神︼と呼ばれる存在です⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮はい。あなたの考えてる通りです。 少女をじっと見つめて、言葉を待つ。 ﹁神が創ったということは⋮⋮キミの正体はまさか⋮⋮ ﹂ 俺は少女の発言を自らの中で反復させ、そして目を見開く。 ? ! ? せながら⋮⋮。 │││││どうか俺の考えすぎであって欲しい。そんな思いをの 俺はもう既に予想がついていたのだが、聞かずにはいれなかった。 ﹁│││││︻神の間︼に、人間が入る条件は⋮⋮ ﹂ 俺は、激しく脈打つ心臓を目の前に錯覚しながら口を開いた。 ? 3 ?? ﹁│││││人間が︻神の間︼に入る条件はその者の︻死︼。 ⋮⋮魂となった存在をここに召喚するこのです⋮⋮﹂ ﹁じゃぁ、俺は⋮⋮﹂ その後は続けない。 言ってしまえば悲しくなるから、そして│││││ ﹁は、はい⋮⋮あなた⋮⋮は⋮⋮死んで⋮⋮しまい⋮ました⋮⋮っ﹂ │││││少女が⋮⋮神様が泣きながら伝えようとしてくれたか ら。 ﹁⋮⋮そっかぁ⋮⋮﹂ 虚無感が俺を襲う。 突然の自分の︻死︼。 ﹂ 天を掴むような話だが⋮⋮一概に嘘だと拒絶することは出来ない。 2人の間に沈黙が続く⋮⋮。 ﹂ ﹁わ、私の⋮⋮ミスです⋮⋮﹂ ﹂ 少女はせっかく止まった涙を再び目に溜めながらそう言った。 ﹁キミの⋮⋮ミス⋮⋮ ⋮⋮それはどういう意味かな るんです⋮⋮﹂ は、我々神が管理し、その人の行いによって中に書かれることが変わ ﹁⋮⋮人間には、 ︻生命の書︼というものが必ずあります。︻生命の書︼ しかし、自分が体験するとそんなわけないと思ってしまう。 俺だって︻神様転生︼系の小説を読んでいたのだから。 正直この展開を予想していなかった訳ではない。 ? ? 4 ﹁⋮⋮ちなみになんで俺は死んだのかな⋮⋮ ﹁それは⋮⋮ ﹁そ、それは⋮⋮﹂ 突然の俺の問いに、少女はビクンと体を震わせた。 ? 俺は震える少女から視線を外さず、じっと見つめる。 ? ﹁まさか⋮⋮俺の︻生命の書︼を⋮⋮ ﹁⋮⋮はい﹂ 小さくコクリと頷いた少女。 にっ ﹂ ﹂ ﹁な、なんでですかっ ﹂ わ、私が⋮⋮私が貴方を⋮⋮殺してしまったの ﹁だから、許してあげるって言ってるの﹂ その様子に可愛らしさを感じてしまう。 情を浮かべた。 少女は涙を溜めた眼を大きく開いて変な声をあげながら驚愕の表 えっ ﹁許して貰えるとは思っていませ﹁良いよ。許してあげる﹂⋮⋮っぇ ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ 私 が ミ ス に 気 づ い た 時 に は ⋮⋮ も う 手 遅 れ に な っ て い ま し た る書き込みをされます⋮⋮﹂ ﹁︻大罪人︼の棚に置かれた︻生命の書︼には遅かれ早かれ︻死︼に至 ﹁私が⋮⋮間違えて︻大罪人︼の棚に置いてしまったんです⋮⋮﹂ ? ﹂ ? ﹁│││││でもね⋮⋮ ﹂ 俺が喋る度に少女の雰囲気は暗く重いものとなる。 ﹁もし、死ななかったら楽しみを見つけられたかもしれない﹂ ﹁もし、死ななかったら幸せを知れたかもしれない﹂ ﹁もし、死ななかったら面白く生きれたかもしれない﹂ その姿は拒絶を恐がる小さな子供のようだった。 身を強ばらせる少女。 ﹁⋮⋮別に君が少しも憎くない訳じゃないよ 少女は身を乗り出し、至近距離で俺に聞いて来る。 ?! ﹂ キザったらしい物言いをしたのは分かっているが後悔はしていな だよ ﹁俺が死ななかったら、君との出会いっていう奇跡が起きなかったん 少女は俺の顔をじっと見詰める。 ? 5 ??!! !!! ? い。 ﹁だから許してあげる。 出会いっていうものは尊いものだしね │││││だから泣かないで 俺は少女に明るい笑顔を向けた。 ﹂ ﹁ぁぅ⋮⋮あり⋮⋮がとう⋮⋮ございますぅ⋮⋮っ 少女は泣きながらも笑顔を浮かべてくれた。 ﹂ その笑顔は俺の瞳を捕らえて離さなかった。 │││││閑話休題。 ﹁所で俺はどうなるんだい ﹂ ふとした疑問を抱いた俺は、さっそく少女に聞いてみる。 ﹁そのことですが⋮⋮実は貴方は死ぬ予定ではなかったので⋮⋮天国 に空きが無いんです⋮⋮﹂ ﹂ │││││地獄なんてもっての他ですしね。 ﹁じゃあ俺はどうすれば良いの 此処で君と仲睦まじく過ごせば良いのかな 俺が冗談めかしく少女に向かって言った。 正直それも悪くないとは思っている。 │││││いや それが良いですねっ ⋮⋮た、確かにそれもありですね⋮⋮ ﹁ふぇっ 彼女となら楽しく会話をすることができそうだ。 ? ? ﹂ 見るからに桃色空間にトリップしている様子は少なくとも神様に 頬を紅く染めてクネクネとしている少女。 彼なら私を優しく包んでくれそうですし⋮⋮﹂ !! 神様ちゃ∼ん ? は到底見えない。 ﹁お、お∼い ? 6 ? ! ? ? ! ?! わ、私は何を⋮⋮っ ﹁えへへ∼♪駄目ですよぅ∼♪ ⋮⋮はっ ﹁お帰り神様ちゃん。 イイ感じにトリップしてたね ﹁お、お恥ずかしい⋮⋮﹂ ﹁ふふふ⋮⋮。 ﹂ ﹂ 俺はこれからどうすれば良いの もし良ければ別の世界に︻転生︼しませんか さて、神様ちゃん ﹂ 桃色空間での出来事はそんなに楽しかったのかな⋮⋮ ようやく戻ってきた様子の神様ちゃん。 ?! ﹁⋮⋮まさかの4つ目だったか⋮⋮﹂ 少女は元気に明るくそういった。 ﹁は、はいっ ? ? ﹂ ﹁本当ですかっ 良かったぁ∼⋮⋮﹂ そんな楽しそうなこと、断る道理はない。 それで、︻転生︼の件だけど喜んで受けるよ﹂ ﹁いや、なんでもないよ。 少女は俺の呟きに可愛く首をコテンと横にかしげていた。 ﹁ ﹂ 一番ありえないであろう仮説がまさかの本当に起こってしまった。 ? ? ?? ?! ! ﹂ ﹁⋮⋮失礼なっ 私だって成長したらもっとスタイルが良いんですよ 俺からの返事に︵小さな︶胸をなでおろしていた少女︵幼女︶。 ! ﹁│││││ここにサインをして下さい。 た。 それから少女は何も無い虚空から、一枚の紙をその手に出現させ ﹁まったくもぅ⋮⋮当たり前ですよっ﹂ 神様なのだから当然と言えば当然な能力である。 キミは心の中を読めるんだね⋮⋮﹂ ﹁ふふふ⋮⋮ごめんね。 いる。 少女は頬大きくを膨らませて私怒ってますという雰囲気を出して !! 7 ??? ! 貴方のことは私が背負わないといけませんから⋮⋮。 これから貴方は私が護ります﹂ 真剣な表情を浮かべながらも優しい笑みを向ける少女。 ﹂ 幼い見た目の中にクールな雰囲気というギャップに魅力を感じる。 ﹁⋮⋮分かったよ。だけど無理は駄目だよ 少女は機嫌を良くしながら笑った。 ﹂ ﹂ ﹁これで契約終了です⋮⋮。さて、次は︻転生︼の話をしましょう♪﹂ すると、その紙は光を放ち始め俺と彼女に半分づつ入ってゆく。 俺はそういうと、何の疑問も持たずにサインを記入する。 ? 私頑張りますからっ ﹁う∼ん⋮⋮俺は何処に転生するのかな ﹁転生先は何処でも大丈夫ですよっ ! ? きた。 ﹁そっか∼⋮⋮じゃあ、特権 それによっ ? だけの力は欲しい。 ﹂ ﹂ ﹁勿論ですよっ♪私こうみえてかなり偉いんですよ ふたつパパッとあげちゃいますっ ﹁じゃあ、能力の制限とかはどれくらいかな ! ﹁制限なんてありませんよ ﹂ │││││などと、そう思っていた時期が私にもありました。 いくら彼女が偉いと言っても限度というものがあるだろう。 ? 能力のひとつや 理想としてはその世界で死なない位の強さ、少なくとも逃げられる て転生場所変わっちゃうからね﹂ とか能力はくれるのかな 少女はガッツポーズをしながら俺に向けてやる気をアピールして ! ! ﹁ち、ちなみに俺はいくつ能力を貰えるの ﹂ ﹁そうですね⋮⋮貴方にならいくつでもあげちゃいます ⋮⋮と、本 !! ? 8 ? キョトンとした顔で当然ですと言わんばかりの態度を取る少女。 ? 来ならそう言いたいですけど⋮⋮貴方の魂を傷つけたくないので、私 が外から与えることの出来るのは10個までですね⋮⋮﹂ 何処か残念そうに肩を落とす少女。 俺は頬が引き攣るのを感じながら口を開く。 ﹁うんそれ超チートだよね﹂ 小さな子が 制限の無いあらゆる能力の中から10個もの数が選択可能⋮⋮。 ﹂ このような優遇は許されるのだろうか⋮⋮。 ﹁えっへん。私偉いんですよ ⋮⋮うん、偉さが微塵も感じないのは仕方がないよね 腕を組んで胸を張った少女⋮⋮。 ! ﹂ 少女は良い笑顔でサラッと言ってくれた。 ﹁ちょ、ちょっと待とうか⋮⋮ もうその時点で能力要らないんじゃないのかな⋮⋮ ? 貴方には無双してもらわないと 尽な真似が出来てしまう⋮⋮。 ﹁だ、駄目ですよ ﹂ !!! お、俺ってそんな最強バグキャラになるのかい⋮⋮ ﹁えっ⋮⋮ またも少女がサラッと凄いことを言ってくれた。 !! ﹁│││││それではそろそろ能力を決めましょうか♪﹂ ね⋮⋮。 それに、彼女の善意からなのだから⋮⋮ここは有り難く頂くべきだ ⋮⋮まぁ、弱いより強いに越したことはないだろう⋮⋮。 ﹁はいっ♪私からのお詫びですから♪﹂ ﹂ ば遠距離からは固定砲台と化し、近接戦闘ともなれば圧倒という理不 身体能力だけで世界最強級⋮⋮魔力などの限度がないと言われれ ﹂ や魔力、霊力などのモノが尽きることは無いでしょう﹂ ﹁はいっ♪貴方が転生した場合、身体能力だけでもその世界最強級、気 な ﹁じゃ、じゃあ、俺が転生した場合の基本スペックを教えてくれないか 背伸びして大人ぶってるようにしか見えないのも事実だった。 ? ? ? ? 9 ? 少女は俺に向けて笑顔を振りまく。 愛らしい笑顔に自然と俺の頬も解けた。 ﹁分かったよ。 ちょっと時間をくれるかな これから先ずっと付き合うモノだし、自分に合う能力を考えたいか らね⋮⋮﹂ そこから俺は瞑想を始めた。 │││││1時間は経っただろうか ﹁はいっ♪何ですか 私気になります ﹂ ﹁遠慮無しに書いてしまったけど⋮⋮大丈夫かな ﹂ 俺の呟きに少女は興味津々という具合に近づいてきた。 ﹁よし⋮⋮やっと決まったね⋮⋮﹂ を吐いた。 俺は何とか纏まった考えを少女に貰った紙に書き出してふぅ、と息 ? ! ﹂ 後悔を覚えながら、紙を少女に渡す。 ﹁なになに ︻能力を創る能力︼ ︻完全記憶能力︼ ︻存在する世界全ての知識︼ ︻武術の才能︼ ないと思うんだけれど⋮⋮﹂ 10 ? 制限がない、と言われたため何の遠慮もなしに書いてしまった事に ? ? 5つしかありませんよ ︻修行の場︼ あれ ?? ? ﹁︻能力を創る能力︼というのが許可された時点でもう殆ど願うことは ? 5つしかないのが不思議だという表情の少女に俺はそう言う。 そもそも5つしかではなく5つもだと思うのは俺だけなのだろう か⋮⋮。 ﹁そうですか は修行するための場所が欲しいという意味ですか 例えば異空間だったり⋮⋮﹂ るようになってから転生したいんだ。 ⋮⋮そういう意味で︻修行の場︼なんだけど⋮⋮駄目かな 貰うだけで使いこなせるとは思っていない。 だからこそ、慣れるというのが必要なんだ。 ﹁いえいえ ? としても安心だね⋮⋮。 ﹁それでは ﹂ まずは5つ⋮⋮いえ、4つの能力をあなたにさずけましょう ﹁﹃まず﹄ ! 彼女の力に苦笑いが浮かぶ。 ﹁ともかく│││││いきますよ ﹂ 自分がかなり優遇されているのを感じながらも、それを可能にする ⋮⋮まさかの後取りが許可されてしまった⋮⋮。 留にしておきましょう♪﹂ まだ後5つ分ありますから、それはもし欲しくなった時のために保 ﹁えぇ♪ ﹂ ⋮⋮神様から直接見てもらえるのなら、もし仮に暴走してしまった 少女は機嫌が良さそうにそう言った。 ♪﹂ では、能力をあなたにさずけた後、私自ら修行を付けてあげますね むしろそういう所は私にとってポイント高いですっ ﹂ ﹁そういう訳じゃなくて、君からもらう能力をしっかりと使いこなせ ?? あ、それとひとつ聞きたいんですけど、この︻修行の場︼と言うの ?? ﹁これが、私の創った能力の種です。これを貴方に入れれば貴方に能 少女はニコリと笑って俺の前に光る4つの光の玉を差し出した。 ? 11 ! ! ! ? 力がさずけられます♪﹂ ﹁⋮⋮ひとつ疑問なんだが⋮⋮君は一体どれほど凄いんだい⋮⋮ ﹁お祖父さんの名前って何なのかな ﹂ いだんですけど⋮⋮あまり凄く無いですよ ﹂ ﹂ ﹁う∼ん⋮⋮私はお祖父様より凄いと言われて、お祖父様の名前を継 こが気になり始める。 これほどまでの事が出来る彼女が神様の中でどれほど凄いのか、そ ? です。 そして、私は︻二代目オーディン︼ですよ ﹁⋮⋮主神オーディン。 そして⋮⋮二代目オーディン﹂ ? その光は俺の身体に入り、そして広がる⋮⋮。 オーディンは俺に向かって先程の4つの光を渡した。 ⋮⋮のだろう。 なるほど、主神だと言うのならこれまでの出来事もおかしくはない にこにこ笑う彼女が二代目のオーディン⋮⋮。 俺は遠い目で少女││オーディンを見た。 ﹂ ﹁│││││北欧神話の主神にして戦争と死を司る神、︻オーディン︼ │││││凄いことを。 すると、少女は、またもや言った。 はいかない。 好奇心の揺さぶられることを聞いてしまっては質問しないわけに ? │││││とても暖かく⋮⋮そして、優しい光だ⋮⋮。 ﹁ありがとうオーディン﹂ ⋮⋮はい。どういたしまして⋮⋮﹂ 自然と御礼の言葉が漏れた。 ﹁⋮⋮ 12 ? 俺の言葉に驚いた様子のオーディンだったが、その表情はすぐに暖 ! かい笑えと変えられた。 │││││閑話休題。 ﹁さて 能力もさずけたことですし あなたの望んだ修行をしましょう ﹁そうだね。 そうしてもらえるとありがたい﹂ ﹂ やる気満々と言った様子のオーディン。 ﹂ これから彼女に修行してもらうのだから、恥ずかしくない様に強く ならないとね⋮⋮。 ﹁まずは場所を変えましょう ? ね。 どんなに荒らしても良いような場所が適切でしょう ﹁確かにそうだね﹂ 俺が頷いて答えると、少女は微笑んだ。 ﹂ ﹂ ﹁修 行 と 言 っ て も 能 力 を 使 い こ な せ る よ う に な る の が 目 的 で す か ら ﹁これは⋮⋮凄いね﹂ 景が一変し遮蔽物のない広い平原になった。 そう言ったオーディンは指をぱちん、と鳴らす。すると、周りの風 ! ﹁│││││さぁ、修行スタートです ! 13 ! ! ! ∼ prologue two ∼ Side 三人称 │││││修行を開始しておよそ10年。 しかしその10年という時間が全て修行に使われていたかと問わ れれば│││││それは否だ。 何せ少年は、3年も過ぎた辺りから能力を使いこなせるようになっ ていたのだから。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本来なら修行はしなくていいはずだが、少年は使いこなせるように なった事を意図的に隠していた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そしてオーディンもまた、少年が能力を使いこなせるようになった ・ ・ ・ ・ ・ というのを隠していることを、気付かないフリをしていた。 ﹂ ・ ﹂ して少年の前に広がったのは10年ぶりの真っ白な空間。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 2人を沈黙が襲う。 14 ﹁│││││ねぇ、オーディン﹂ ﹁何ですか べる。 ﹁で、では ・ ! そう言って立ち上がった少女は、あの時と同じく、指を鳴らす。そ そろそろあなたを転生させる事にしましょう ・ 呟くようにそう言った少女は、悲しそうな表情を消し、笑顔を浮か ﹁⋮⋮そ、そう⋮⋮ですか⋮⋮﹂ ﹁能力も使いこなせるようになったしね﹂ 少年の言葉に何処か悲しそうな表情を浮かべる少女。 ﹁えっ⋮⋮﹂ ﹁俺はそろそろ行こうかなって思ってる﹂ オーディンと呼ばれた少女は少年に向かって優しい笑みを向ける。 ?? ! 互いに何かを言いたい。そう言った様子は見えるものの、なかなか ﹂﹂ 言い出すことが出来ない。そう言ったじれったさがその場を満たし ていた。 ﹁﹁あ、あの ﹂ ﹂ 沈黙の後、2人の言葉が重なる。 あなたから先に ﹁お、オーディンから先にどうぞ ﹁い、いえ ? 続く。 ﹁⋮⋮じゃぁ、俺から言わせてもらうね ? 知らないよね ﹂ ﹁俺たち、10年も一緒に居たのにさ│││││互いの﹃本当の名前﹄ 先に折れたのは少年の方だった。 ﹂ 互いに相手の言いたいことを先に聞きたいらしく、遠慮のしあいが ! ⋮⋮ ﹂ ﹁⋮⋮気付いてたんですか⋮⋮ 驚いた様子の少女。 ﹂ それに⋮⋮オーディンって言うのは本当の名前じゃないんだよね 付いてた。 ﹁オーディンが頑なに俺のことを﹃あなた﹄って呼ぼうとしてたのは気 表情を浮かべた。 少年はその様子に何か理由があるのは薄々気がついていたという 言い淀む少女。 ﹁そ、それは⋮⋮﹂ ? ﹁気付いたのは3年を過ぎた辺りだけどね だ。 俺がオーディンと呼ぶ度にほんの少しだけ、表情が悲しげになるん ? ﹂ だから、確証は無かったけどそうなんだろうって思ってた﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮理由、聞いてもいい 無言で俯く少女に少年は尋ねる。 ? 15 ! ! 何故バレたのかが分からないという表情を浮かべていた。 ? ? 少女は時折顔を上げて口を開こうとするが、声が出ない。何かを躊 ﹂ 躇っているように、言葉が纏まらないのだろう。 ﹁⋮⋮じゃぁ、一つだけ教えて │││││俺のこと、嫌いかい 強くなったから ⋮⋮あ、ありません﹂ ・ ・ │││││違う。 │││││違う。 能力を使いこなせるようになったから 心置きなく過ごせたから 違う。全部違うんだ。 俺はただ│││││﹂ 少年は柔らかに微笑む。 ? ﹂ ﹁│││││神様と一緒にいれたからたのしかったんだよ ﹁っっ ﹂ │││││違う。 この10年間一緒に居たけどさ、凄く、楽しかった。 ﹁│││││ねぇ、神様。 その表情は心なしか赤く染まって見える。 見つめた。 少年は自らに何かを言い聞かせるように頷くと、しっかりと少女を ﹁そっか⋮⋮良かった⋮⋮﹂ ﹁そ、そんなこと すると、先程までは悩んでいた少女が顔を上げて大きな声で言う。 苦笑い気味の表情を浮かべる少年は心配そうにそう聞いた。 ? ? そんな少女に向かって少年は片手を伸ばす。 ? ? 16 ! ? 少女はその言葉に顔を真っ赤に染めた。 !!? ﹁│││││大好き。 俺は神様が大好きだよ 少年の、突然の告白。 ﹁っ ど、どうしたんだい ﹂ 泣き止んでもらおうと四苦八苦する。 ﹁ちっ、ちがう⋮⋮です⋮⋮っ。 ⋮⋮う、うれし、くてぇ⋮⋮。 ﹂ だめ、だって⋮⋮おもって⋮⋮たから⋮⋮っ ﹁嬉し⋮⋮かった⋮⋮ ﹂ 少女に心が痛んだのだろう、少女の美しい白髪を優しく撫でて何とか 悲しそうに表情を歪める少年だったがボロボロと大粒の涙を零す ま、まさか⋮⋮そんなに嫌だったのかい⋮⋮ ﹂ 少女の瞳から、1粒、また1粒と涙が流れた。 ? ﹁はい⋮⋮っ ﹂ 少女は泣きながらも美しく笑った。 ﹁│││││私も、あなたが大好きです⋮⋮っ 笑った。 少女があまりにも綺麗に泣いているから、少年は思わずその横で ﹂ 少年はその言葉にぽかんと、間抜けな表情を浮かべた。 ? ! ! ! 17 ? !? ?! 少女が泣き止んだ頃には、2人の距離は近づいていた。 ﹁ねぇ、神様。 よづる ﹂ ﹁そう言えば俺は転生するんだったね⋮⋮すっかり忘れていたよ﹂ ﹂ ! 今更だけど自己紹介しようよ﹂ ﹁そうですね⋮⋮これからは⋮⋮その⋮⋮こ、恋人ですしね⋮⋮っ 顔を赤く染める少女を愛おしげに見つめる少年。 し ら ぬ い 2人は向かい合って10年越しの自己紹介をする。 大好きだよ﹂ ﹁俺は﹃不知火 夜鶴﹄。ただの人間だ。 これから末永く宜しくね 大好きです﹂ ﹁私は﹃オーミ﹄。ただの神です。 これからもずっと一緒ですよ 此処は明るく行きましょう 晴れてこ、恋人になれたわけですし ﹁さて │││││閑話休題。 2人は互いに顔を近づけて、やがて│││││唇を重ねた。 ? 告白という出来事で、夜鶴は他のことを何処かに置いてきてしまっ ていたようだ。 ﹁大切なことですからねっ ! 18 ? 私もやっと悔いもなく送り出せます ! ! ! ! 忘れないで下さいっ ﹁ごめんごめん。 ﹂ 以後、気をつけるよ﹂ そう言い合う2人は笑っていた。 ﹂ ︼の世界に転生 ﹁さて、まずは夜鶴が転生したい世界を教えてくれますか ﹁分かったよ。 ﹂ じゃぁ、 ︻問題児たちが異世界から来るそうですよ させてもらえるかな ﹁了解しました。 ひとつ相談何ですけど⋮⋮﹂ ⋮⋮あ、そうでした あの⋮⋮夜鶴 オーミ﹂ ? いですか⋮⋮ ﹂ ﹁そ、その⋮⋮夜鶴の能力に私を召喚するってモノを⋮⋮付けてもい ﹁なんだい ? ! ! ? オーミはモジモジとしながら言う。 ? ﹂ ! に押し込んだ。 ﹁これで準備完了ですね♪ ! 移ってゆく。 すると、その両手には暖かな光が宿り、そしてそれは夜鶴の方へ そう言ったオーミは瞳を閉じて両手を夜鶴に向けた。 それでは早速転生の準備に取り掛かります ﹂ そして、早速と言わんばかりに光の玉を作り出し、それを夜鶴の胸 嬉しそうに笑うオーミ。 ことができますっ よ、よかったぁ∼⋮⋮これであちらの世界に転生しても会いに行く ﹁本当ですか むしろこちらから頼みたいくらいだよ﹂ ﹁勿論、良いよ。 かな笑みに変わって口を開いた。 夜鶴は初めはきょとんとした表情を浮かべていたものの、すぐに暖 恥ずかしそうに提案するオーミ。 ?? ! 19 ? それが準備だったのかオーミは瞳を開けて口を開く。 ﹁先程の能力、絶対に使ってくださいね⋮⋮ 呼んでくれないと拗ねちゃいますから﹂ ﹁ふふふ⋮⋮分かってるよ﹂ オーミ﹂ そう言って、夜鶴はオーミを抱き寄せた。 ﹁それじゃぁ、行ってくるね ﹁はい。行ってらっしゃいです。夜鶴﹂ そして夜鶴は移ってきた光と完全に一体化し│││││ ? │││││その姿を消し、転生を果たした。 20 ? ︻YES ウサギが呼びました ∼箱庭にやって来たそうですよ Side 夜鶴 俺がこの世界に転生してから17年。 その間にも色々なことがあった。 ︼ ∼ 勿論いくつかの能力も創ったし、それを使いこなすための修行もし た。 そんなことよりもまず話すべきは、この世界において俺には親がい なかったということだろう。 これはオーミなりの配慮というものだろうか ﹁原作の開始はいつになる事やら⋮⋮﹂ しき ⋮⋮最近では女性に間違われるのが少々面倒になってきている。 るとわかった時はかなり驚いた。 しかし俺の容姿が︻空の境界︼に出てくる︻両儀 式︼になってい りょうぎ そんな俺も能力を使わずにやっとここまで成長することが出来た。 ﹁んん∼⋮⋮それにしても⋮⋮暇だねぇ⋮⋮﹂ むしろ修行をつつがなく行うことができた。 し、ひとり暮らしをしたので問題は大してなかった。 まぁ、何にせよ、俺は︻身体を変化させる能力︼を創り出して成長 ? 俺は、寝転がるベットの上で早く原作が始まることを願いながら眠 りについた。 Side Out Side 三人称 21 ! ? ! 夜鶴が静かに眠りについたその時、まさに原作が始まろうとしてい た。 │││││ある快楽主義な少年は、川辺で⋮⋮ │││││ある御嬢様な少女は、部屋の中で⋮⋮ │││││ある動物が友人な少女は、猫から⋮⋮ さかまき い ざ よ い 自分宛の不思議な手紙を手に入れていた。 くどう あすか ﹃逆廻 十六夜 殿へ﹄ か す か べ よう ﹃久遠 飛鳥 殿へ﹄ ﹃春日部 耀 殿へ﹄ 三者三様の反応を浮かべたが、結局とった行動は皆同じ。 22 │││││迷いなくその手紙を開封したのだ。 │││││﹃悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。 その才能を試すことを望むならば、 己の家族を、 友人を、財産を、世界の全てを捨て、 我らの︻箱庭︼に来られたし﹄│││││ ﹂ そして、勿論夜鶴の元へもその手紙は届いていた。 ﹁⋮⋮ん⋮⋮ 何かと思いそれを手に取ってみると⋮⋮ 胸に何かが落ちてきたという感覚で眠りから醒めた夜鶴。 ? ﹃不知火 夜鶴 殿へ﹄ ﹁これは ! ⋮⋮そうか⋮⋮やっと始まるんだね⋮⋮うん、凄く楽しみだ﹂ そう言いながら夜鶴は手紙を開封したのだった。 ﹂ ﹂ 彼ら4人と1匹の目の前に広がっていたのは│││││完全無欠 に異世界だった。 これから、夜鶴のお話が始まって行く。 Side Out ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 夜鶴 辺りの風景はまるっと切り替わり、見たことのないような風景が広 がっていた。 今の時代コンクリートジャングルの多い町中でこれだけの自然を 23 ﹂﹁きゃっ ﹂﹁ふふふふふ ! ﹁わっ ﹂﹁にゃっ ?! ?! 少しばかりの悲鳴、そして笑い声が木霊する。 ﹁えっ !? !? 見たことのある者がどれだけいるだろうか。 青々と生い茂る草木に静かに流れる小川。 その向こうには栄えているであろう近未来的な街が存在している。 好奇心を揺さぶられる光景に両手放しで喜びたいのだが、今はこの 状況を何とかしようかな⋮⋮。 │││││何せ俺たちは上空4000mからのパラシュート無し ﹂ スカイダイビングをしているのだから。 ﹁これは⋮⋮なかなか⋮⋮っ 目にも止まらぬと表すべきか、結構なスピードで落下していく俺。 そして、一瞬の内に着水。 湖には4つの大きな水柱と1つの小さな水柱がたてられた。 湖から濡れた洋服に苦戦しながら、自力であがった俺たちは、とい まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放 場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。 石の中に呼び出された方がまだ親切だ﹂ ﹂ ﹁石の中じゃ動けないでしょ﹂ ﹁俺は問題ない﹂ ﹁そう、身勝手ね﹂ ﹁此処.........どこだろう ﹁さあな。 ねえか ﹂ まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃ ? それにしても⋮⋮間近で見るとこれまた性格が捻じ曲がっている のが分かる。 24 ! うか問題児たちは、口々に文句を言い始める。 ﹂ ﹁し、信じられないわ り出すなんて ! ﹁右に同じだクソッタレ。 ! あの落下の最中にそこまで見たという事実に少々の驚きを感じる。 ? ﹄ってオーラと﹃超御嬢様 ﹄ってオーラに﹃無関心﹄っ 3人が3人とも問題児オーラを迸らせる勢いだ。 ﹃俺超問題児 てオーラと言ったところかな !! を向いて喋り始めた。 ? 私は︻久遠 飛鳥︼よ﹂ ﹁えぇ、そうよ。だけどまずその︻オマエ︼って呼び方やめてくださる ﹁まず間違いはないだろうが⋮オマエらにもあの変な手紙が ﹂ 服から水を絞り終えたのか、金髪の少年が髪をかきあげ俺たちの方 ? !! ﹂ 飛鳥と名乗った少女は金髪の少年ににそういうと、今度は座って猫 ﹂ を拭いている少女に視線を向けた。 ﹁そちらの猫を抱えている貴女は ﹁⋮⋮︻春日部 耀︼。以下同文﹂ ﹁そう、よろしく春日部さん。そこの野蛮で凶暴そうな貴方は 量を守った上で適切な態度で接してくれよなお嬢様 ﹂ 粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用 十六夜︼です。 ﹁高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な︻逆廻 笑いが浮かぶ。 初対面にしては散々な言われように言われてもいない俺の顔に苦 ? ? ﹁んで、そこの和服のアンタは ﹂ 俺は、︻不知火 夜鶴︼。 ﹁⋮⋮失礼だけど、不知火さんは女性 ﹁久遠さん。俺は、男だよ ﹂ それとも男性 何も言わずに女性だと思われるよりかは遥かにマシだろう。 やっぱりこの見た目だと性別の判断に悩むんだね⋮⋮。 ? 俺は、にこりと柔らかに笑ってそういった。 何処にでもいるただの人間だよ﹂ ﹁俺か ? 久遠さんが俺を見て尋ねて来る。 ﹂ 金髪の少年│││││逆廻くんはそういうと、俺の方を見た。 ﹁ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様﹂ ﹁そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君﹂ ? ? ? ? 25 ? それを聞いた3人は、例外なく驚きの表情を浮かべた。 ⋮⋮そんな事だろうとは思っていたよ⋮⋮。 ﹁ご、ごめんなさい。 私はてっきり女性だと思っていたわ﹂ ﹁ヤハハ。俺も女だと思ってたぜ﹂ ﹁貴方と一緒だなんて傷ついたわ﹂ 最後の最後に毒を吐いた久遠さん。 本当に性格捻じ曲がってるなぁ⋮⋮。 心からケラケラと笑う逆廻十六夜。 傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。 我関せず無関心を装う春日部耀。 そんな3人を観察する不知火夜鶴。 物陰から見ているであろう黒ウサギはそう捉えているはずだ。 ︵うわぁ⋮⋮何だか問題児ばっかりみたいですねぇ⋮⋮︶ 26 ⋮⋮なんだろう。 心の声が聞こえた気がする。 しかも不本意ながら俺まで問題児判定されてるような感じの。 黒ウサギも大変なんだろうなぁ⋮⋮。 なんせ、自分たちが召喚した助っ人だというのに、短い間しか見て いないだろうが、十六夜たちが協力する姿なんて想像出来ないだろう し。 少なくとも俺は客観的に見て想像できそうにない。 その時何処からか、重いため息が聞こえた気がした。 │││││しばらくして逆廻くんが苛立たしげに喋り始めた。 ﹁⋮⋮で、呼びたされたのはいいけどなんで誰もいねえんだよ この状況だと普通、誰か説明する奴ぐらい現れるんじゃねえのか ? ﹂ ﹁そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの﹂ ﹁⋮⋮。 ﹂ ⋮⋮この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど ⋮⋮﹂ ﹁まぁ、仕方がないんじゃないかな んだろうし⋮⋮ ﹁│││││仕方がねえな⋮⋮。 ? ういった。 ﹁なんだ貴方も気づいていたの ﹂ ﹁当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ ﹂ 春日部と夜鶴も気づいていたんだろ ﹁⋮⋮風上に立たれたら嫌でもわかる﹂ ﹁長年の経験上ね⋮⋮﹂ ﹁へぇ⋮⋮おもしれぇなお前⋮⋮﹂ 目の笑っていない逆廻くん。 まさかとは思うが、ターゲットにされてしまったのだろうか ﹁断る﹂ いていただけたら嬉しいでございますョ ﹂ そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便にお話を聞 ⋮⋮ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。 すよ そんなら狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいま ﹁や、やだなぁ御四人様。 くる。 そんななか気配の主│││││黒ウサギがビクビクしながら出て ? 逆廻くんがわざとらしく、誰にでも聞こえるような大きめな声でそ こうなったらそこに隠れている奴にでも話を聞くか ﹂ 黒ウサギだって今の3人の苛立たしげな雰囲気を感じて焦ってる ? ? ? ? ? ? 27 ? ﹁却下﹂ ﹁お断りします﹂ ﹁⋮⋮強く生きてね﹂ ﹁あっは、取りつくシマもないですね♪﹂ バンザーイ、と降参のポーズを取る黒ウサギ。 しかし、黒ウサギの目は俺たちを値踏みするかのようにしていたの を俺は見逃さなかった。 そんな中で春日部さんは黒ウサギに近づいて行き、その頭について ﹂ いるウサギ耳をロックオンすると│││││鷲掴みし、力一杯引っ 張った。 ﹁えい﹂ ﹁フギャ 気の抜けたようなしかし、切実な黒ウサギの悲鳴があがった。 ﹁ちょ、ちょっとお待ちを ﹂ !? ﹁自由にも程があります ﹂ ﹁│││││好奇心の為せる業﹂ 掛けた。 黒ウサギは自らの耳を護るように手をあげると春日部さんに問い ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒 ! ﹂ !! で染まった。 ⋮⋮俺が最後の希望というものだったのだろうか ﹂ そんな黒ウサギに追い討ちをかけるかの如く、逆廻くんたちが動き ? 俺は初めに言ったように、その言葉を返すと黒ウサギの顔は悲しみ ﹁⋮⋮強く生きて⋮⋮﹂ ﹁どうか⋮⋮どうかお助け下さい 黒ウサギは今度は俺に視線を向けると必死の表情で言った。 ! 28 !? このウサ耳って本物なのか ? 始めた。 ﹁へえ ? ﹁⋮⋮⋮。じゃあ私も﹂ 十六夜は右。飛鳥は左のウサギ耳を掴むと左右同時に引っ張った。 て居なかった。 ﹂ ﹂ ⋮⋮まぁ、俺を除いてだけどね⋮⋮ ているだけマシなのだろうか⋮⋮。 ﹁それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ さと言え﹂ ⋮⋮よ、ようこそ、︻箱庭の世界︼へっ ? した ﹂ 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普 ﹁ギフトゲーム ﹂ トゲーム︼への参加資格をプレゼントさせて頂こうかと召喚いたしま 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる︻ギフ ! 言いm﹁さっ あの3人が彼女の話を﹃聞くだけ聞こう﹄という程度には耳を傾け ?? 半ば本気の涙を瞳に浮かべる黒ウサギに同情する者は誰一人とし ﹁いいからさっさと進めろ﹂ 学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス⋮⋮﹂ ⋮⋮。 ま さ か 話 を 聞 い て も ら う た め に 小 一 時 間 も 消 費 し て し ま う と は ﹁│││││あ、あり得ない。あり得ないのですよ⋮⋮。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹁⋮⋮皆ほどほどにね∼⋮⋮ そんな叫び⋮⋮いや、悲鳴が辺りを木霊した。 ﹁フギャァァァァァァッッ !!!?? その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から 通の人間ではございません ! 29 ? ! ﹁そうです ? ! 与えられた恩恵なのでございます。 ︻ギフトゲーム︼はその︻恩恵︼を用いて競い合うためのゲーム。 ﹂ そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロ オカシク生活できる為に作られたステージなのでございますよ 大げさに両手を広げ、俺たちに説明していく黒ウサギ。 ﹁まず、初歩的な質問からしていい 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するに 貴方の言う︻我々︼とは貴女を含めた誰かなの ﹂ 久遠さんはその説明に対して質問するために手をあげていた。 ! ﹁属していただきますっ 逆廻くんはコンマ数秒で拒否の言葉を口にした。 ﹁嫌だね﹂ あたって、数多とある︻コミュニティ︼に属していただきます♪﹂ ﹁Yes ? ? ﹂ ? です﹂ ﹁後者は結構俗物ね⋮⋮チップには何を ﹂ 敗退すればそれらは︻主催者︼のコミュニティに寄贈されるシステム 後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が せん。 ︻主催者︼次第ですが、新たな︻恩恵︼を手にすることも夢ではありま しかし、見返りは大きいです。 だけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。 特徴として、前者は自由参加が多いですが︻主催者︼が修羅神仏な 自開催するグループもございます。 て開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独 ﹁様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称し ﹁⋮⋮⋮︻主催者︼って誰 品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております﹂ そして︻ギフトゲーム︼の勝者はゲームの︻主催者︼が提示した賞 !!! 負ければ当然ご自身の才能も失われるのであしからず﹂ フトを賭け合うことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに ﹁それも様々ですね。金品、土地、利権、 名誉、人間、⋮⋮そしてギ ? 30 ! 黒ウサギはその笑みのなかに黒さを混ぜる。 これは俺たちを怖がらせようとしているのだろうか ﹁どうぞどうぞ♪﹂ ﹁ゲームはどうやったら始められるの ﹂ ﹁そう。なら最後に一つだけ質問させてもらってもいいかしら ﹂ 久遠さんはその持ち前の挑発的な声音で黒ウサギに質問をする。 もしそうならあまりにもお粗末過ぎるというのが俺の感想である。 ? ? いただければOKです ﹁コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録して ? ﹁ふふん ﹂ なかなか鋭いですね。 げてまた喋り出す。 案外鋭い久遠さんの問いに黒ウサギは感心したかのような声をあ いいのかしら ﹁⋮⋮⋮つまり︻ギフトゲーム︼はこの世界の法そのもの、と考えても 参加して行ってくださいな﹂ 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら ! ︻ギフトゲーム︼の本質は全く逆 一方の勝者だ 我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存 在します。 ⋮⋮が、しかし !! ての質問に答える義務がございます。 ﹁さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全 そう告げると黒ウサギは一枚の封書を取り出した。 ばいいだけの話でございます﹂ つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなけれ しかし、︻主催者︼は全て自己責任でゲームを開催しております。 ﹁ごもっとも。 ﹁そう。なかなか野蛮ね﹂ タダで手に入れることも可能ということですね﹂ 店頭に置かれている賞品も、店側が提示したゲームやクリアすれば けが全てを手にするシステムです。 ! 31 ? しかし、それは八割正解、二割間違いです。 ? ⋮⋮が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。 新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは 忍びない⋮⋮。 ﹂ ﹂ ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいので すが⋮⋮⋮よろしいですか ﹁│││││待てよ、俺がまだ質問してないだろ しかけた。 ﹂ ﹁⋮⋮どんな質問でしょうか のですか それともゲームそのも ? │││││この世界は面白いか ﹂ 俺が聞きたいことはただ一つだけ。 ﹁そんなのはどうでもいい。あぁ、どうでもいいんだ。 ルールですか 今まで清聴していた逆廻くんが黒ウサギに向かって真剣な顔で話 ? ? ? 俺は小さく呟いた。 ﹁⋮⋮ワクワクしてきたよ﹂ この世界で、どんな楽しいことに出会えるのだろうか│││││。 えた。 黒ウサギは目を輝かせ楽しそうにそして嬉しそうに自信満々で答 ♪﹂ 箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします 加できる神魔の遊戯。 ﹁│││││Yes。︻ギフトゲーム︼は人を超えたものたちだけが参 を傾けた。 逆廻くんの言葉に俺を含む全員が黒ウサギを見つめ、次の言葉に耳 ? 32 ? ∼世界の果てを訪れるそうですよ Side 夜鶴 ﹂ 味があるから行こうかな﹂ やっぱりそうこなくっちゃな ∼ !! ﹂ ! ピンとたてて走り寄って行った。 新しい方を連れて参りましたよ∼ ﹂ 入り口には、一人の少年が座っており、それを見た黒ウサギは耳を 残った飛鳥と耀、黒ウサギは都市の外壁まで辿り着いていた。 十六夜と夜鶴が世界の果てに向かってしばらくたった頃。 Side 三人称 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side Out いや⋮⋮むしろ跳びだしたというまである。 だした。 逆廻くんはそう言うと、俺の和服の袖を掴み、その直後に突然走り ﹁よし来た ﹂ ﹁う∼ん⋮⋮まぁ、逆廻くんの言うことはともかく、世界の果てには興 ⋮⋮。 黒ウサギはいつか過労で倒れる気がするのは俺だけなのだろうか ? ⋮⋮﹂ ﹁なら、行こうぜ 黒ウサギは迷惑を掛けてなんぼだろ ﹁う∼ん⋮⋮黒ウサギに迷惑が掛かっちゃうけど魅力的な誘いだなぁ かねぇか ﹁なぁ夜鶴。今から世界の果てに行こうと思ってるんだけど一緒に行 を掛けられた。 黒ウサギたちと共にコミュニティへ向かう途中で、俺は十六夜に声 ? ⋮⋮逆廻くん⋮⋮それは身も蓋もないよ⋮⋮。 ! ﹁ジン坊っちゃ∼ん !! 33 ? !! 近づいて来る黒ウサギに笑顔を向ける少年は後ろにいる二人を見 ﹂ ると、待っていましたと言わんばかりに声を掛ける。 こちらの御四人様⋮⋮が⋮⋮ ﹂ ﹁お帰り黒ウサギ。そちらの女性二人が ﹁はい ? クルリと後ろを振り向いた黒ウサギはそこにいるはずの存在が見 ? 私の記憶に間違いが無ければもうお二方いま 当たらず、カチンと体を固めた。 ﹁⋮⋮⋮え⋮⋮ あれ せんでしたっけ ? ︼っ てオーラを放っている殿方と、見た目は女性で、和服の似合っ ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から︻俺問題児 ? ﹂ ﹄と言って駆け出し ていたとても真面目そうで黒ウサギを励ましてくれたまさに︻大和撫 子︼な殿方が⋮⋮﹂ ﹁あぁ⋮⋮十六夜君と不知火さんのこと 彼らなら﹃ちょっと世界の果てを見てくるぜ て行ったわ。あっちの方に。 まぁ、不知火さんは十六夜君に引き摺られていたけど⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ 飛鳥はそう言い、遥か遠くに見える断崖絶壁を指差した。 ﹁な、なんで止めてくれなかったんですかっ ﹁だって﹃止めてくれるなよ﹄と言われたもの﹂ ﹁ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですかっ 実は面倒くさかっただけでしょう皆様方 !? !? 世界の果てには野放しにされている幻獣が⋮⋮﹂ ! ! ? ﹁⋮⋮﹃黒ウサギには言うなよ﹄と言われたから﹂ ﹁嘘です、絶対嘘です ﹁﹁うん﹂﹂ ! ジンと呼ばれた少年が話を聞くと蒼白になって叫ぶ。 ﹂ ﹁た、大変です ﹁幻獣 ! ても人間では太刀打ち出来ません ﹂ ⋮⋮斬新 ﹂ ﹁あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバーなの ﹁⋮⋮ゲーム参加前にゲームオーバー ﹂ ? ? ! ﹁冗談を言っている場合ではありませんっ !!! ? ﹂ ﹁は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉 で、出くわせば最後⋮⋮と ? 34 ! ? ! ジンは彼らの身を案じているのか、ことの重大さを必死に伝えよう と声を張った。 ﹁ハァ⋮⋮ジン坊ちゃん。 ﹂ ﹂ 申し訳ありませんが、御二方のご案内をお願いしても宜しいでしょ うか ﹁分かったよ。黒ウサギはどうするの ﹁│││││問題児様方をを捕まえに参ります ﹂ ⋮⋮事のついでに︻箱庭の貴族︼と謳われるこの黒ウサギを馬鹿に したことを骨の髄まで後悔させてやりますのでっ 飛鳥たちを見た。 ﹁一刻ほどで戻ります 皆さんはゆっくりと素敵な箱庭ライフを御堪能ございませっ 黒ウサギは壁に亀裂が入るほどの力で跳びだして行く。 その速度は圧巻の一言。 一瞬で飛鳥たちの視界から消えてしまう程だった。 ﹂ 跳び上がった黒ウサギは外壁の傍にあった門柱に水平に張り付き、 をピンと立てた。 そう言った黒ウサギの水色の綺麗な長髪は桃色に染まり、ウサギ耳 !! ﹂ ﹁⋮⋮黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に そんなジンに飛鳥は明るめの声で話し掛けた。 黒ウサギの跳んで行った方角を心配そうな様子で見詰めるジン。 ⋮⋮﹂ 彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが 種です。 力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴 ﹁黒ウサギは箱庭の創始者の眷属。 ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ 箱 庭 の 兎 は ⋮⋮ 随 分 早 く 跳 べ る の ね ⋮⋮。素 直 に 感 心 す る わ !!! ! ? 箱庭に入るとしましょう。 はい ! エスコートは貴方がしてくださるのかしら ﹁え⋮⋮あっ ! 35 ! ? ? 僕はコミュニティのリーダーをしている︻ジン=ラッセル︼です。 ﹂ 齢十一になったばかりの若輩ですが宜しくお願いします。 所でお二方の名前をうかがっても宜しいでしょうか⋮⋮ ジンはその歳の割には幼さを感じさせない丁寧な口調で自己紹介 をした。 ﹁久遠飛鳥よ。そして、そこで猫を抱えているのが﹂ ﹁⋮⋮春日部耀﹂ ﹁⋮⋮さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。 まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉し いわ﹂ ﹂ 飛鳥はそう言うと、ジン、耀を連れて箱庭の町中に入って行った。 Side Out ﹂ 今の速度はせいぜい新幹線の運行速度程度。 これくらいなら楽に出すことができる。 たはずだ。 ﹁これかい ﹂ これは俺の持ち前の身体能力で走ってるだけだよ﹂ ギフト さっきも言ったけどこれはただの身体能力だよ。 ﹁そ、そうか⋮⋮ちなみにそれが夜鶴の︻恩恵︼なのか ﹁違うよ ? ? ﹁まぁ、そうなんだが⋮⋮﹂ 逆廻くんだってこのスピードで走ってるじゃないか﹂ ? 36 ? 確か本気の十六夜は第三宇宙に相当するスピードが出せるんだっ ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 夜鶴 何かな逆廻くん ﹁そういえば夜鶴﹂ ﹁うん ? ﹁俺結構な速さで走ってるんだが⋮⋮なんで着いて来れるんだ ? 逆廻くんは納得いかないというような顔をしたが、前を向くとその 口を吊り上げて笑みを浮かべた。 ﹁夜鶴。どうやら着いたみたいだぞ﹂ ﹁そうみたいだね⋮⋮水の音が聞こえる⋮⋮﹂ しばらく走っていた森が拓け、そこに広がっていたのは│││││ ﹁うわぁ⋮⋮﹂ ﹁こりゃスゲェ⋮⋮﹂ ﹄ 37 │││││息を呑むような美しい滝だった。 遥か高くから流れ落ちる水は、濁りなど知らないかのような透明感 がある。 辺りを囲う草木には、一層の青々しさが感じられ、まるで美しい宝 石を見ているようだった。 確か名前を︻トリトニスの大滝︼と言った筈だ。 ﹁逆廻くん⋮⋮これは来て良かったよ⋮⋮﹂ ﹁あぁ⋮⋮俺もここまで凄いとは思って無かったぜ⋮⋮﹂ 俺たち二人はこの壮大なそして美しい景色に心を奪われていた。 そんな中、滝壺の方から大きな音をたてながらナニカが姿を現し た。 ﹃GUGYAAAAAAAOoooo 蛇神は威圧を籠めた声で俺たちに問いを投げ掛けた。 ﹃何故人間の小僧と小娘がこんな所にいる﹄ これがこの世界の神格持ちの生物⋮⋮。 その巨大さは、人などと比べるのもおこがましい程。 現れたのは│││││大蛇。 !!!!!! ﹁へぇ∼この蛇喋るんだな⋮⋮流石は︻箱庭︼ってか 逆廻くんは蛇神に対しておちゃらけたように喋る。 ﹁⋮⋮相手は一応神様だよ逆廻くん。 ﹂ 中々言うな夜鶴。 ﹃貴様等ァァァァァア まぁ、事実だから仕方ねぇけどな﹂ ﹁ヤハハ そんな俺の言葉に逆廻くんは楽しそうに笑う。 ﹂ この蛇神は全くと言っていいほど強くない、と⋮⋮。 直に見て、そして感じる。 ⋮⋮ ⋮⋮少しは敬意を⋮⋮いや、払うまで強くはないんだろうけどね ? テメェごときが俺等に試練だと 寝言は寝て言えよ爬虫類。 ﹁⋮⋮ハッ 貴様等には我の試練によってその身の程を教えてやる ﹄ ﹃良いだろう⋮⋮貴様等が誰に喧嘩を売ったのかを解らせてやろう 間をあけることなく、俺たち二人はハモリながらそういった。 ﹁キミにだよ蛇さん﹂ ﹁テメェだよ蛇神︵笑︶﹂ 誰にものを言っているのか分かっておるのかァァァァァア !!! ﹄ ﹂ 逆廻くんは蛇神を挑発するかのようにその言葉を発した。 小僧 貴様から身の程を教えてやる ﹄ 安い挑発ではあるがこの蛇神程度ならば乗ってくるだろう。 ﹃もう良いわ !! !! この様子だと俺は見学だね⋮⋮。 怒りを顕にそう言った瞬間両者はぶつかりあった。 案の定、挑発に乗った蛇神。 !!! 38 !! ⋮⋮むしろテメェが俺等を試せるのか試したい位だぜ ? !!!!! ? !! !! !!!! ? ﹄ あんだけの大口たたいておいてテメェはそ ﹃│││││がぁぁぁぁぁぁあッッッ ﹁おいおいどうしたぁっ ﹂ ﹄ ﹂ 舐めるなよ小僧ォォォオ の程度なのかよ ﹃グゥッ⋮⋮ そう来なくっちゃなぁぁぁっ ﹁そうか あまりにも手応えが無かったからな⋮⋮﹂ ﹁逆廻くん、結構派手にやったね⋮⋮﹂ ﹁ふぅ∼⋮⋮﹂ 蛇神は派手な音をたてながら滝壺に叩きつけられた。 ズガァァァァァァァン ﹁ハッ ! !!!!! !!! ? !!! !!! ! ﹁そうだ。 なぁ、夜鶴よ。 その﹃逆廻くん﹄ってのやめてくんねぇか ? ﹂ 見たところ同い年くらいだろうし、十六夜って呼び捨てでいいぜ が悪ぃ。 苗字でくん付けは気味 逆廻くんは首をコキリと鳴らしながらそういった。 ? ﹁そうかい ⋮⋮逆廻くんがそういうなら、これからは十六夜って呼ばせてもら うよ﹂ 俺がにこりと微笑めば、逆廻くん⋮⋮いや、十六夜もにかっと笑っ た。 ﹁│││││確か⋮⋮この辺りの筈⋮⋮﹂ と、その時。 さきほど聞いたばかりの声が聞こえてくる。 背後の森の方を見てみれば髪の色を桃色に変えた黒ウサギが現れ た。 ﹁あ⋮⋮黒ウサギ﹂ 39 !! なかなかいいと思ってたんだけどね⋮⋮。 ? ? ⋮⋮おぉ黒ウサギじゃん。どうしたんだよその頭。イメチェン ﹁ん あげた。 ﹁あ、貴方方は∼∼∼∼∼∼っ ﹂ !? まぁ、そんなに怒るなって﹂ !! かったぞ ﹂ 幾分か遊んでたとはいえ、この短時間で俺等に追いつくとは思わな お前いい足持ってんな。 ﹁⋮⋮しっかし黒ウサギ。 俺はやはり罪悪感が湧いていた。 十六夜はいつも通りケロッとしていて反省してないみたいだけど、 風景が観たかったんだ⋮⋮﹂ ﹁ゴメンね黒ウサギ⋮⋮迷惑をかけるのは、分かってたんだけどこの ﹁誰の、せいだと、思ってるんですか ﹂ 世界の果てまで来てるんですよ、っと。 ﹁ヤハハ。 一体全体何処まで来てるんですかっ !!!! 黒ウサギは此方を見つめると肩を震わせながらキッと睨み、大声を ﹂ か ? あ、いえ⋮⋮ ﹂ ? ホッと胸をなでおろした黒ウサギ。 たよ⋮⋮﹂ 森の幻獣たちから、水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしまし ⋮⋮ ⋮⋮そ、それより十六夜さんと夜鶴さんが無事でよかったですよ ﹁⋮⋮え ﹁黒ウサギどうかしたの たのを疑問に思ったのだろう。 おそらく貴種である黒ウサギが半刻以上もの時間、追いつけなかっ 黒ウサギは眉をしかめて首を傾げた。 その黒ウサギが││││﹂ なんたって黒ウサギは︻箱庭の貴族︼と謳われる優秀な貴種です。 ﹁むっ、それは当然です。 ? ? 40 ? アレの事か ﹂ ⋮⋮ほんの数秒後には頭を悩ませることになるだろうけどね⋮⋮。 ﹁水神 小僧ォォォオ ﹄ !!!! ⋮⋮って、どうやったらこんなにも怒らせられるんです ﹃まだだ⋮⋮まだ試練は終わって無いぞ ﹁じゃ、蛇神 か十六夜さん !! をあげながら滝壺から勢いよく飛び出してきた蛇神を指差した。 十六夜は先程滝壺に叩きつけられたダメージを回復し、怒りの叫び ? ﹂ ﹃付け上がるなよ小僧 我はこの程度では倒れはせんぞ ﹄ !!!! ﹁ 十六夜さん、下がって ﹂ まぁ、所詮悪足掻き程度のものってところだね⋮⋮。 モノだった。 それは豪雨、津波、渦潮⋮⋮様々な天災の混じり合ったかのような の竜巻を作り出した。 蛇神はそう叫ぶと辺りの水を巻き込み、巨大な、そして激しい水流 !! まっ、今んとこは不合格。ただのデカイ爬虫類って認識だな﹂ た、って言う流れだよ。 そ ん な 態 度 を 取 れ る ほ ど の 力 が あ る の か と 思 っ て 俺 が 試 し 返 し うもんだからな。 ﹁何、簡単だよコイツが何か偉そうに﹃身の程を教えてやる﹄なんて言 ?!!! !? !!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ 下がんのはテメェの方だろうが。 ﹂ これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手ぇ出せばお前から先に潰 すぞ ﹃その心意気は買ってやろう。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる ・ さっきも言ったが寝言は寝て言え。 ・ ・ !!! んだよ ﹂ !!! 蛇神は先程の竜巻に水柱を加えた更なる威力のモノを形成した。 ﹃フン││││その戯言が貴様の最期だ ﹄ 決闘ってのは勝者を決めて終わるんじゃない、敗者を決めて終わる ﹁ハッ ﹄ 十六夜は殺気を振りまくことにより黒ウサギを怯ませ下がらせた。 !! !! !!! 41 ? ﹁何を言ってんだよ黒ウサギ。 !? 人間が喰らえば死は免れないだろう。 ﹁十六夜さんっ ﹂ こんなもん⋮⋮│││││しゃらくせぇッ だが、その攻撃も、十六夜なら関係無いだろう。 ﹁ハッ │││││轟音と共に水滴が飛び散る。 ﹁嘘っ ﹂ ﹄ 十六夜がやったのは至極簡単なことだ。 ﹂ か、それを黒ウサギはきちんと理解しているだろうか ﹁まっ、最後のは悪くなかったぜお前﹂ ﹂ ﹂ マジかよ。なら頼むわ﹂ ? ﹁へぇ⋮⋮お前の︻恩恵︼が割と本気で気になってきたな⋮⋮﹂ ギフト それをみた十六夜は俺を興味深そうに見てくる。 えていった。 俺がそう呟くと十六夜についた水はその場で下に落ち、空気へと消 ﹁︻不濡⋮⋮水は源へと帰す︼﹂ ぬれず 使うのはこの世界に来て新しく作った能力のうちのひとつ。 俺は久しぶりに能力を行使する。 ﹁おっ ﹁俺が乾かしてあげようか 十六夜は水滴を払いながら笑った。 よな ﹁クッソ⋮⋮今日よく濡れる日だぜ⋮⋮こりゃクリーニング代位でる 神格持ちの生物も十六夜に掛かればこの程度なんだね⋮⋮。 しまう。 すると、蛇神の巨体は呆気なくも揺れ今度こそ滝壺に沈んでいって 十六夜は高く跳び上がり、蛇神の頭へ蹴りを喰らわせる。 ? しかし、その十六夜のやって見せたことがどれだけ異質な事なの 向かい来る攻撃を片手で殴り、弾け飛ばしただけ。 !!! !!!!!! ﹁へぇ⋮⋮ここまで⋮⋮﹂ ﹃馬鹿なッッ ??!!!! ﹁ふふふ⋮⋮そうかい ? 42 !! ?!!!! ? ! そりゃスゲェや ﹂ うわ、超傷つけたい いいえ、お馬鹿様 ﹁二百年守った貞操 ﹁お馬鹿様 ﹂ ! ﹂ と良い音をたてて十六夜はハリセンで叩かれる。 ﹂ ﹁十六夜∼セクハラは駄目だよ ﹁ヤハハ。勿論冗談だぜ ? ように見えなかった。 ﹁│││││見てください 見てください こんなに大きな︻水樹の苗︼を貰いましたよ ! た報酬を貰ってきたようだ。 ﹂ ﹁これでもう、他のコミュニティから水を買う必要もありません ﹂ ! た。 満面の笑みを浮かべながら黒ウサギは水樹の苗に頬ずりをしてい んな大助かりです み 俺が十六夜と話しているうちに黒ウサギは蛇神の元へ行き、打倒し ! ! 笑いながらそういうものの、先程の十六夜の目は冗談を行っている ? ﹂ 今すぐにでもじっくりと聞きたい所だが まぁ、何でもできるからこれからは頼りにしてもらってもいいよ ﹂ ﹁ヤハハ ⋮⋮まぁ、今はそれより⋮⋮。 何ボーっとしてんだよ ﹂ │││││おい黒ウサギ ﹂ 足とか胸とか色々揉むぞ ﹁え、きゃあ あ、貴方はお馬鹿ですか 黒ウサギは十六夜から身体を護るようにして後ろに跳んだ。 ﹁なっ !? 二百年守ってきた黒ウサギの貞操を傷つけるつもりですかっ !? スパンッ !! ? ! 43 ! !! !? !? ! ? !? ? ! ?? ﹂ すると、十六夜が喜びはしゃいでいる黒ウサギに話し掛けた。 ﹁そうかいそうかい。喜びついでに1つ聞いても良いか ﹁どうぞどうぞ♪ 今の黒ウサギは何でも答えますよ♪﹂ 黒ウサギは分かってないなぁ⋮⋮。 何でも答えるなんて、そんな安請け負いすると、十六夜に足元をす くわれるというのに⋮⋮。 そう、例えば│││││ ﹂ ﹁黒ウサギ、お前何か決定的な事をずっと俺たちに隠してるよな ⋮⋮お前はどうして俺達を呼び出す必要があったんだ │││││隠している秘密を聞かれたりするんだから。 ﹁⋮⋮本当にそうか 心なしか少し体が震えているように見えた。 黒ウサギは冷や汗を流し動揺の様子を見せる。 うと⋮⋮﹂ ﹁そ、それは⋮⋮い、十六夜さんたちにオモシロオカシク過ごして頂こ ? いたんだよ。 ⋮⋮だがな、お前の態度はあまりにも必死すぎるんだよ﹂ 何も答えずに黙ってしまう黒ウサギ。 十六夜はその姿を見て、更に話を進める。 ﹁これは俺の勘だが、今、確信に変わった。 ﹂ 黒ウサギのコミュニティは弱小のチーム、もしくは訳あって衰退し たコミュニティなんじゃねぇか ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁沈黙は是なりだぜ、黒ウサギ﹂ 泣きそうな顔になった黒ウサギ。 ? 44 ? ? 俺も初めは純粋な好意、 もしくは誰かの遊び心か何かだと思って ? 返答を待つ十六夜。 そしてそれを眺め、話に耳を傾ける俺。 何とも奇妙な空気が流れ始めた。 45 ∼説明を受けるそうですよ Side 夜鶴 ∼ しばしの間、沈黙を通していた黒ウサギは俺たち2人からの視線に 観念したのか、真面目な表情でゆっくりと話し始めた。 ﹁⋮⋮十六夜さんの仰るとおり⋮⋮私達のコミュニティは困窮に瀕し ています﹂ 俺と十六夜は静かに耳を傾け、黒ウサギの語る真実を聞く。 ﹁先ほどお話ししたコミュニティとは、大小あれど一つの国のような 存在なのです。 ﹂ それ故に、活動する上で︻名︼と︻旗印︼を申告しなければなりま せん⋮⋮﹂ ﹁黒ウサギそれって︻国旗︼みたいなモノとして捉えて良いのかな ﹁へぇ⋮⋮夜鶴って頭の回転も早ぇんだな。 俺もそうじゃないかと思ってたんだよ﹂ ﹁YES。お二方の言う通りその多くは領土の誇示に使われます。 した⋮⋮。 ⋮⋮私達は敵に回してはいけないものに目をつけられてしまいま ﹁│││││ですがある日⋮⋮。 予想していたのだろうがそれが外れたから。 おそらく、黒ウサギのコミュニティは弱小なコミュニティだろうと 十六夜は眉をピクリと動かした。 かしい栄光を誇っておりました⋮⋮﹂ 数年前まで私達の旗印は東区画のいたるところで掲げられ、その輝 ? そして、たった﹃一夜﹄にして⋮⋮私たちのコミュニティは壊滅さ せられたのです⋮⋮﹂ その言葉には、流石に衝撃を受けた。 46 ? 箱庭は確か莫大な大きさを誇っていた筈だ。 その中にある東区画に旗印を数々と掲げていた。 ・ ・ ・ ・ ・ それは、かなりの強さそれこそ最強に近しい場所にいたはずだ。 それを一夜で壊滅させられた⋮⋮。 そんだけ大きなコミュニティを一夜で壊滅 相当な力量である事は火を見るよりも明らか。 ﹁それで⋮⋮ その原因は何なんだ させた原因ってのは⋮⋮﹂ 黒ウサギは意を決したかのように息を吸い込むと俺たちの目を見 て言う。 ﹁私達が目をつけられたもの⋮⋮。 ⋮⋮それは、箱庭に起こる、最強最悪の天災│││││︻魔王︼で す﹂ │││││︻魔王︼。 ﹂ ︻魔王︼という名前に横にいる十六夜なんて、目をキラキラと輝かせて いる。 ⋮⋮十六夜って︻厨二病︼なんじゃないだろうか⋮⋮ 本名から︻厨二病︼っぽいし⋮⋮。 ﹁ま、マオウだと カラカラと笑いながら頭を掻く十六夜。 ?!!! なんだそれ超格好良いじゃねえか ﹁え、えぇ⋮﹂ ﹁十六夜⋮⋮ちょっと落ち着きなよ⋮⋮ 黒ウサギが何とも言えないような顔をしてるよ ? つい︻魔王︼だなんて素敵ネームを聞いちまったからな﹂ ﹁ヤハハ、悪ぃな。 ﹂ 箱庭にはそんな素敵ネームで呼ばれてる奴らがいるのかよ !!! !!? 47 ? ? 黒ウサギは少し笑みを浮かべながら話を再開する。 ﹁あははは⋮⋮夜鶴さんありがとうございます。 ホ ス ト マ ス ター ⋮⋮しかし、十六夜さんが思い描いている︻魔王︼とは差異がある かと私は思います。 │││││︻魔王︼は︻主催者権限︼ という特権階級を持つ修羅神 仏で、挑まれたら最後、誰もゲームを拒否することはできません﹂ 拒否出来ない⋮⋮。 それはどれだけ勝てないと分かっていても、どれだけ理不尽な報酬 を要求されても断れないのだろうか⋮⋮。 十六夜もその話に眉をひそめる。 ﹁魔王の力は強大でした。 全力で向かい討ったのですが⋮⋮結果は惨敗。 ギフトゲームに破れた私達のコミュニティは︻名︼と︻旗印︼を奪 われ、︻ノーネーム︼となったのです⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ 48 ﹁⋮⋮︻名無し︼って事か⋮⋮﹂ ﹁YES⋮⋮現在中核をなす仲間達は1人も残っていません⋮⋮。 ギフトゲームに参加できるのは現リーダーであるジン坊ちゃんと 私、黒ウサギだけ⋮⋮。 後の120人あまりは10歳以下の子供達ばかりなのですよ⋮⋮﹂ それはかなり絶望的だ。 復興以前にその為の手段であるギフトゲームにすら参加出来ない のだから。 ﹁じゃあ、オマエがゲームに参加すればいいじゃねえか黒ウサギ﹂ ﹁⋮⋮残念ですが、それもできません﹂ 首を傾げる十六夜。 俺もそれは考えたのだが黒ウサギは無理だと言った。 していることはご説明いたしましたよね ﹁黒ウサギを含むウサギたちは皆、 ︻審判権限︼と呼ばれる権限を所持 ジャッジマスター 何か特殊な理由があるのだろうか⋮⋮ ? ? ﹁⋮⋮あぁ、目と耳が箱庭の中枢と繋がってるから、反則できないん だったか ? ﹁YES。 ︻審判権限︼を持つ者が審判を務めるゲームでは︻ルール違反=即敗 北︼となるため多くのゲームで必要とされています﹂ 確かにそうだ。 もし、隠れた所でルール違反をされたら勝てるゲームも勝てなく なってしまう。 だから、黒ウサギたちのような特権を持った者が審判を務めれば ルール違反は不可能となり、公平な、あくまで自分たちの力を持って して行うゲームとなる筈だ。 まぁ⋮⋮俺が参加するゲームでルール違反などという真似は決し て許さないだろうけどね。 ﹁ですが、 ︻審判権限︼の所持者は代償としてある致命的な︻縛り︼が ﹂﹂ ございます﹂ ﹁﹁︻縛り︼ ﹁はい。 ス ト │││││ひとつ。﹃ギフトゲームの審判を務めた日より15日間 ホ はゲームに参加できない。﹄ │││││ひとつ。﹃︻主催者︼側からの許可を取らねばゲームに参 加できない。﹄ │││││ひとつ。﹃箱庭の外で行われているゲームには参加する ことが出来ない﹄﹂ それは現実的に考えるとほぼゲームの参加は不可能となり得る。 だから、黒ウサギは審判の仕事を優先しているのだろう。 ﹁黒ウサギの審判稼業はコミュニティで唯一の稼ぎでしたから⋮⋮必 然的にゲームに参加する機会も少なかったのです⋮⋮﹂ ﹂ それを聞いた十六夜はにっこりと笑って黒ウサギに言った。 ﹁まさに崖っぷちだな ﹂ ﹂ そんな軽く言っちゃ駄目だよ ﹁ホントですね ﹁十六夜 ! それに黒ウサギも乗らないの ?! ! 49 ?? いい笑顔で言われれば同じような笑顔で返す。そして次の瞬間に !! ?! は地獄のどん底のような空気を漂わせ凹んでいる。 何故身を削ってまで乗るのだろうか⋮⋮。 黒ウサギは目を閉じ何かを思い出すかのように喋り出した。 ﹁⋮⋮それでも、私たちは皆必死で生きています。 子供達は毎日遠くの川まで水を汲みに行き住む所以外は作物すら 根付かない死んだ土地だというのに⋮⋮﹂ ﹁へぇ⋮⋮﹂ そこまで酷い状況に陥っているのか⋮⋮。 俺と十六夜は黒ウサギから聞く状況を想像し、顔をしかめた。 そ し て 十 六 夜 は 何 か 思 い 付 い た の か 黒 ウ サ ギ に む か っ て 言 っ た。 ﹂⋮⋮﹂ ﹁そんなに酷い状況なら、いっそのこと潰して新しくコミュニティを 作っちまえばいいんjy﹁そ、それは絶対駄目ですっ 黒ウサギは大事そうに腕に抱えていた︻水樹の苗︼を自分の横に置 き、勢いよく立ち上がる。 かなり必死な様子の黒ウサギに、俺の中で何かが動いた気がする。 十六夜も先程よりも真剣そうな顔をしている。 ﹂ ニ ティの再建を果たしたいのです そして、そのためには⋮⋮﹂ ﹂ ﹁十六夜さんや夜鶴さんたちのような強力な力を持つプレイヤーに頼 べ言葉を紡いでくる。 俺と十六夜の座っている所に駆け寄ってくると必死な表情を浮か ! 私達に力を貸してください るほかありません お願いします ! ! ﹁ふぅん⋮⋮︻魔王︼を相手にコミュニティの再建か⋮⋮﹂ 十六夜は顎に手をあてて少し考える。 もはや泣きそうな⋮⋮いや、少し泣いている黒ウサギ。 ! 50 ! ⋮⋮仲間達が帰ってくる場所を守りたいのです ﹁⋮⋮なんでだよ ﹁私達はっ ! ? そしていつの日にか、 ︻魔王︼から︻名︼と︻旗印︼を取り戻しコミュ ! 頭を下げ、必死な様子で頼んでくる黒ウサギ。 俺から見るととても痛々しくそしてもうボロボロである。 そんな黒ウサギに十六夜は救いの手を伸ばす。 ﹂ ﹁⋮⋮いいな、それ﹂ ﹁え ﹂ ﹄じゃねえよ、協力するって言ったんだ。 一瞬呆けたような顔になる黒ウサギ。 ﹁﹃え もっと喜べ黒ウサギ。むしろ発狂しろ﹂ ﹁十六夜、自重しないと﹂ ﹁ヤハハ。軽いジョークだ。 ⋮⋮それでだ。俺はお前に協力してやるぞ ﹁で、ですが⋮⋮﹂ 協力する理由としては上等な部類だろ ﹂ あぁ⋮⋮ソイツはとてもロマンがある。 ﹁︻魔王︼相手に︻旗︼と︻誇り︼を取り戻す。 ? あぁ⋮⋮黒ウサギの髪はこうやって色が変わるんだね⋮⋮。 ﹁ありがとう⋮⋮ございます﹂ 涙を目に溜めながら笑みを浮かべる黒ウサギ。 ﹂ まさか俺は協力しないと思ってたの ﹂ ﹂ ⋮なんか良い感じにまとまってるけどいい加減俺も入ろうかな ﹁何かな 黒ウサギではなく十六夜がそう答えた。 ﹁いや、夜鶴。お前話に全然参加してなかっただろ ? ? 黒ウサギは、それを聞くとパァッと髪の色が緋色に変わっていく。 ﹁まぁ、精々期待してろよ黒ウサギ﹂ 十六夜はそういうと、黒ウサギにニヒルな笑みを向けた。 ? じゃないと本当に空気になっちゃうよ⋮⋮ ふぇぇっ ﹁黒ウサギ俺も協力するよ﹂ ﹁ふぇ⋮⋮ ?!! 間の抜けた悲鳴のようなものをあげる黒ウサギ。 ? 確かにそうであったが、それはただ入るタイミングを失っていただ ? ? 51 ? ? けなのだ。 ﹁あははは⋮⋮。 まぁ、確かにそうだけどね 言えるわけないでしょ ﹂ 俺だって今の話を聞いたら﹃はい、知りません頑張ってね﹄なんて ? ほうを見詰めた。 ﹁どうする黒ウサギ ﹁│││││もし、俺が必要ならこの手をとって 返り咲かせてあげる。 │││││もし、俺が必要無いならこの手を叩いて 俺は優しく、黒ウサギに笑い掛けた。 ﹁⋮⋮必要無いわけないじゃないですかっ お願いします ﹂ !! ? もう、誰も悲しませない。 ⋮⋮はいっ 勿論黒ウサギ⋮⋮キミのこともね ﹁⋮⋮っ ﹂ ﹂ 俺は全力を以て黒ウサギたちを助けてあげる。 ﹁うん。わかったよ黒ウサギ。 黒ウサギは、そういって俺の右手を力強く掴んだ。 どうか黒ウサギたちを助けて下さいっ !! !! その時は俺が勝手に黒ウサギたちのコミュニティを助けるから﹂ ? その時は俺の全力を持って黒ウサギたちのコミュニティを最強に ? 俺は黒ウサギに右手を差し出して言葉を続ける。 俺はコミュニティ再建には必要ない ﹂ 俺は薄い笑いをしながら十六夜に答えると真剣な顔で黒ウサギの ? ! │││││閑話休題。 52 ? ? 黒ウサギは、太陽のような笑顔を俺たち二人に向けた。 !! ﹁あ∼あ。せっかく俺がかっこよく決めたのに更に濃い内容で夜鶴に 塗り替えられちまったぜ﹂ ﹂ 十六夜は俺に向かって残念そうに言ってくる。 ﹁た、確かに格好良かったのですよぅ﹂ 黒ウサギ。 惚れちまったかぁ 黒ウサギは、頬と髪を染めてそういった。 ﹁なんだぁ 随分と夜鶴に執心だなぁ ﹁ち、違うのですよっ ﹂ ニヤニヤという音が聞こえそうな笑みを顔に浮かべる十六夜。 ? これはただ⋮⋮そのぅ⋮⋮ともかく違うのですよっ ﹁はいはい。 ところで夜鶴はどうなんだよ ﹂ 黒ウサギのことどう思ってんだ ﹁ニャッ ﹂ ? ? 黒ウサギは、からかう十六夜に必死で弁解しようとしている。 !! ! それにしても十六夜のニヤニヤ笑いが少しムカつく。 ⋮⋮少し位仕返ししても良いよね⋮⋮ ﹁│││││煩いよ厨二病くん 俺はふぅ、と息を吐き出して口を開く。 ? さもないと︻逆廻 痛よい︼って名前で呼ぶからね ﹂ どうやら︻厨二病︼が弱点らしい。 ﹂ ﹂ 人をからかう前にその永遠の︻厨二病︼と御別れしてきなよ。 ? 十六夜は吐血しながら倒れた。 ﹁ガハァァァァァァッッッ ?!!!? ? る。 黒ウサギは、突然吐血した十六夜に駆け寄って応急処置をし始め ﹁十六夜さぁぁぁぁん ?!!?!! 53 ? ? 黒ウサギは、猫のような声をあげた。 ?!!! 俺もそれを真似するように十六夜へと近づいて行った。 そして、耳もとでゴニョゴニョと話し始める。 ﹁ガホッ ガヘッ 俺や、黒ウサギが揺するが微動だにもしない。 ? それから数分程の時間。 ﹁あぁ⋮⋮まるで屍n﹁勝手に殺すな夜鶴 ﹂⋮⋮あ、生きてたんだ﹂ ? ﹁│││││ねぇねぇ、その歳で︻厨二病︼ってどんな気持ち 多分十六夜ってそのせいで︻ボッチ︼だったんでしょう ︻ボッチ︼って何して暇潰しするの 一人でずっと勉強 ? 十六夜は更に吐血をして地に伏せた。 ﹂ ??!!! あぁ、だから頭いいんだね十六夜は⋮⋮﹂ ? グッホォォォォォォオ ?!! 俺たちはふざけるだけふざけて、やっと箱庭に向かったのだった。 !! 54 ?!! ∼HENTAI降臨だそうですよ Side 夜鶴 ∼ 触してしかも喧嘩を売るなんて状況になったのですか しかもゲームの日取りは明日っ それも敵のテリトリー内で戦うなんて 御二人ともっ ﹂ !!? ﹁⋮⋮な、なんであの短時間の間に︻フォレス・ガロ︼のリーダーと接 ? 私たちに準備している時間もお金もありませんよ 聞いているのですか !! ! !? このおバカ様方っ !!! 悔はしていない﹂﹂ ﹁黙らっしゃい ﹂ ﹁﹁腹が立って後先考えずに喧嘩を売った。今は反省はしているが後 だ。 どうやら久遠さんと春日部さんが何かをやらかしてしまったよう する。 俺と十六夜、黒ウサギが箱庭に戻って来た瞬間に黒ウサギは、絶叫 !! 放たれたハリセンは久遠さんと春日部さんの頭を寸分のズレもな く真芯で叩いた。 ﹁うわ⋮⋮ありゃ痛そうだ﹂ 十六夜がヤハハと笑いながら言った。 ﹂ 確 か あ れ 以 上 の 威 力 の ハ リ セ ン を 十 六 夜 は 受 け た 筈 な ん だ け ど なぁ⋮⋮。 ﹁でも、どうしてこんなことになったの 話を聞き出し始めた。 憤怒の表情をその顔に浮かべる少年に何かを感じたのか十六夜が │││││彼らは決して許されないことをしたんです﹂ い。 話すと長くなってしまいますが、まずこれだけは言わせてくださ ﹁は、はい。 俺は一番真面目そうな少年に話を聞いてみることにした。 ? 55 !! またも黒ウサギの伝家の宝刀ハリセンが火を噴く。 !! ﹁ちょっと内容を説明してくれよ。 俺たちにだって聞く権利位はあるだろ ﹁も、勿論です ⋮⋮実は││││﹂ ﹁⋮⋮確かにお気持ちはわかりますが⋮⋮ ﹂ この世界では、そのような事も、出来てしまうのか⋮⋮と⋮⋮。 話を聞いている最中にも俺の腹の中は煮えくり返っていた。 │││││⋮⋮曰く、人質は既に⋮⋮殺されていた。 自らのコミュニティに取り込んでいた。 │││││曰く、ゲームに勝利した暁には、相手のコミュニティを り、脅迫することでゲームに勝利していた。 │││││曰く、 ︻フォレス・ガロ︼というコミュニティは人質を取 に分かりやすく説明してくれた。 話の途中、ジン=ラッセルと名乗った少年は、これまでの話を丁寧 ﹁││││と、言うことなんです﹂ ∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼ ? ﹂⋮⋮エェッ⋮⋮ ﹂ ⋮⋮まぁ︻フォレス・ガロ︼が相手なら十六夜さん1人でm⋮⋮﹁俺 は出ねえぞ ? ﹁エェッ じゃねえよ。 56 ! 十六夜の発言にすっとんきょうな声をあげて振り返る黒ウサギ。 ? この喧嘩はコイツらが売ったんだ、俺が手を出すのは無粋ってもん ? だろ ﹂ ﹁だ、駄目ですよ コミュニティの仲間同士協力しn⋮⋮﹁あら、分 かってるじゃない。貴方なんて参加させないわ﹂⋮⋮もう好きにして ください⋮⋮﹂ ﹂ ウサギ耳をへんにょりさせて若干涙目の黒ウサギ。 ﹁元気出して黒ウサギ。 俺もできるだけ協力するから⋮⋮ね けるのだからおそろしい。 ﹁あ、ありがとうございますぅ∼っ ! ﹂ ⋮⋮で、黒ウサギ。これから俺たちはどうするんだ │││││そんな時、十六夜がわざとらしく咳払いをして話を始め た。 俺の胸板では黒ウサギのたわわに実った果実が押しつぶされてい 感極まって俺に抱き着く黒ウサギ。 ﹂ あざといと言うかなんというか⋮⋮しかし、これを天然でやっての すると黒ウサギは、涙目で俺を見上げてきた。 頭を優しく撫でて、黒ウサギを励ます。 ? 夜鶴さんだけが黒ウサギの救いですよ∼ !!! ジン坊ちゃんは先にお帰り下さいま ? る。 ﹁ん゛ん゛っ コミュニティに戻るのか ﹁⋮⋮あぅっ ⋮⋮い、いえ⋮⋮あ、ですが せ ! ? !! !!? 皆様方のギフト鑑定をお願いしないと⋮⋮﹂ ﹂ ニヤニヤしながらこちらを見てくる十六夜たちの視線を受けなが ⋮⋮予想するにコミュニティの名前か ら、恥ずかしそうに黒ウサギは答えた。 ﹁︻サウザンドアイズ︼ ? のだが、流石は︻問題児︼と呼ばれるだけのことはある。 黒ウサギが早口でそう言って先程のことを誤魔化そうとしている ﹁YES、詳しいお話は歩きながらでも⋮⋮﹂ ? 57 !! ? 黒ウサギたちは︻サウザンドアイズ︼に行って参りますので。 ! │││││そうは問屋が下ろさないようだ。 ﹁⋮⋮誤魔化そうとしてるね飛鳥﹂ ﹁そのようね春日部さん﹂ ﹁ヤハハ。なんだやっぱり夜鶴に惚れちまったのか ないだろうか⋮⋮ ﹂ 黒ウサギは、髪を朱色に染めてその場でうずくまってしまう。 ﹁うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁん ﹂ ⋮⋮黒ウサギの苦労は何か不幸な︻恩恵︼でも与えられてるんでは コソコソとしかし確実に聞こえる声で黒ウサギに言った。 ? 十六夜君 ﹂ しかし、そんな事は関係ないと言わんばかりにその周りを十六夜た ちが取り囲む ﹁あら、やっぱりそうなのかしら ? ﹁YES ︻サウザンドアイズ︼は特殊な瞳のギフトを持つ者達の群体 ﹁そういえば︻サウザンドアイズ︼について話を聞いていなかったな﹂ ズ︼へ向かっていると、黒ウサギが喋り始めた。 復活した黒ウサギとともにジン君を除いた五人で︻サウザンドアイ ﹁⋮⋮そろそろ︻サウザンドアイズ︼について説明させて頂きますね﹂ │││││閑話休題。 黒ウサギの胃に穴が開くのも時間の問題かもしれない⋮⋮。 から湯気をたてていた。 容赦ない問題児たちの口撃により黒ウサギは、更に赤く染まり、頭 ﹁あぅあぅ⋮⋮ぁうぁうぅ⋮⋮﹂ ﹁分かりやすいね。黒ウサギは﹂ ﹁あぁ。黒ウサギは、夜鶴にご執心だ﹂ ? 箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨 大商業コミュニ ティでして⋮⋮。 58 !!! ? コミュニティです。 ! 幸いこの近くに支店がありますし﹂ ﹁へぇ⋮⋮。 ちなみにギフトを鑑定すると何かメリットがあるのか くなります。 皆さんも自分の力の出所は気になるでしょ う ﹂ ﹂ ﹁自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大き ? ﹂ 確か寒くてベットで寝ていたからね﹂ ⋮⋮今は秋だったと思うけど﹂ もおかしくないだろ ﹁いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていて ないもの﹂ 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けている桜があるはずが ﹁桜の木ではないわよね した。 と、そんなことを考えていると飛鳥が街路樹を指差して疑問を口に ている。 俺は︻ギフト︼そのものというより︻ギフトネーム︼の方が気になっ 十六夜たち三人は自分の︻ギフト︼に興味があるようだ。 ? そんな俺たちを見ていた黒ウサギは、微笑みながら説明をしてくれ る。 ﹁皆さんはそれぞれ違う世界から召還されているのです。 ﹂ 元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系などに所々違う箇所があ ﹂ ︻パラレルワールド︼ってやつか るはずですよ ﹁へぇ ! ﹁へぇ⋮⋮黒ウサギって物知りなんだね﹂ ﹁い、いえいえ⋮⋮そんなこと無いのですよっ ﹂ は説明しきれないので、またの機会ということに⋮⋮﹂ ⋮⋮今から︻立体交差平行世界論︼の説明を始めますと一日二日で ども⋮⋮ ﹁近いですね。正しくは︻立体交差並行世界論︼というものなのですけ ? ? 59 ? 話の噛み合わない俺たち四人は互いに互いを見ると首をかしげた。 ﹁冬じゃなかったかな ﹁⋮⋮ ? ? ? ? 照れているのか頬を染めている黒ウサギ。 ﹂ このような反応を見せるから、面白がって十六夜たちがからかって あれがそうなんじゃないかしら いるのではないだろうか ﹁あ す﹂ ﹁YES あれがコミュニティ︻サウザンドアイズ︼の支店でございま 飛鳥がひとつの大きな建物を指差して黒ウサギに質問する。 ? ? ﹂ ﹂ !? るのには時間制限でもあるのだろうか。 ﹁まっ﹂ ﹁待ったは無しです、御客様。 うちは時間外営業をやっていませんので﹂ 涼しい顔で黒ウサギに対応する女性店員。 押し入ろうとする客への対応は御手の物らしい。 閉店時間の5分前に客を締め出すなんて ﹁なんて商売っけのない店なのかしら﹂ ﹁ま、全くですっ これだけで︻出禁︼とか御客様舐めすぎでございますよ 簡単に言えば︻出禁︼です。︻出禁︼﹂ 貴方方は今後一切の出入りを禁じます。 ﹁文句があるならどうぞ他所へ。 ! 失礼ですね。 ﹁なるほど⋮⋮︻箱庭の貴族︼であるウサギの御客様を無下にするのは 更に店員さんは見下したかのような声で対応し始める。 る。 騒ぐ黒ウサギを冷ややかな│││││侮蔑するような眼で見てい ﹁︻出禁︼ ! 確かに日も暮れているから慌てるのもわかるのだが、あの建物に入 黒ウサギは滑り込みでその店員さんにストップをかける。 のが見えた。 そんな旗印を下げる建物には割烹着姿の女性店員が掃除している おそらくあれが︻サウザンドアイズ︼の旗印なのだろう。 れている旗が見えた。 飛鳥の指差す先を見れば、青い生地に向かい合う2人の女神が記さ ! !? 60 ! ﹂ 中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を宜しいでしょ うか いるようだ。 ﹁⋮⋮俺達は︻ノーネーム︼ってコミュニティなんだが ﹁⋮⋮ほほぅ。 ではどこの︻ノーネーム︼様でしょうか ? ﹂ 宜しければ、旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか ? ﹂ ⋮⋮この店員さんは俺たちが︻ノーネーム︼だと言うことを知って ん。 何も言えない黒ウサギを悪そうな笑みを浮かべて見ている店員さ ﹁⋮⋮うぅ⋮⋮﹂ ? 意地悪な口調で黒ウサギを精神的に追い詰めていく店員さん。 │││││俺の中で何かが切れる音が響いた。 ﹂よ、夜鶴さん ﹂ ﹁あ、あの⋮⋮その⋮⋮わ、私たちには﹁⋮⋮キミ⋮⋮何様なんだい ⋮⋮ ? ﹁なんで御座いましょう ﹂ ? だ。 しかし、そんなことは関係ない。 俺のこの怒りは冷めない。 ﹁そんなにも︻名︼が重要かい⋮⋮ そんなにも︻旗印︼が重要かい⋮⋮ ⋮⋮だけどね ﹂ ﹂ ﹁︻サウザンドアイズ︼は大きなコミュニティなんだろうね。 俺は店員さんをじっと見詰め視線を外さない。 ? ? 店員さんは台詞を遮られたからか、少し不機嫌になっているよう ⋮⋮﹂⋮⋮なんですか 先 程 も 申 し 上 げ し ま た が、文 句 が あ る な ら ど う ぞ﹁⋮⋮ そ ん な に ? 俺は黒ウサギの隣まで行くと、店員さんの前に立つ。 ? ﹁キ ミ に 俺 た ち︻ノ ー ネ ー ム︼を ⋮⋮ 黒 ウ サ ギ が 心 か ら 大 切 に す る 眉をひそめ怒りの表情を浮かべる。 ? 61 ? ﹂ ︻ノーネーム︼を馬鹿にする権利は無い⋮⋮っ ﹁⋮⋮ひっ ﹂ !! かった。 ﹁まぁ⋮⋮覚えてお﹁いぃぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉう ﹂⋮⋮﹂ 久しぶり 通りの雰囲気を出せば幾らかは皆の表情から硬さが取れるのがわ しばしその場が沈黙に支配されるが、俺の睨みが無くなり、いつも 自分でも驚くほどに低く、冷たい声がでる。 │││││俺はキミを無事で済ませる自信が無いよ。 ﹁もし⋮⋮もしそれでもまだ考えを改めないというのなら⋮⋮﹂ 十六夜たちも怒りを燃やす俺を見て驚いている。 俺の怒りの叫びに店員さんは小さな悲鳴をあげる。 !!!! 吹き飛び、反対側の浅めの水路へポチャンと入水した。 ⋮⋮なんか⋮⋮今凄い光景を見た気がする。 ﹁⋮⋮おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか ﹂ それなら俺も別バージョンで是非頼む﹂ ﹁⋮⋮あ、ありません﹂ ﹁なんなら有料でも良いぜ ﹁や、やりません⋮⋮﹂ ? そしてそのまま黒ウサギに抱き着くと勢いを殺すことなく空中を 白髪の幼い少女が爆走してきた。 もの凄い声と共に︻サウザンドアイズ︼の建物の中から和服を着た だなぁぁぁぁ黒ウサギぃぃぃぃぃぃっ !!!! 内容が残念だ。 十六夜がとても輝いた笑顔で店員と会話しているのだが、如何せん ? どうして貴女がこんな下層にいらっしゃるのです それにしても⋮⋮店員さんをちょっと怖がらせ過ぎたかな⋮⋮ ﹂ ﹁し、白夜叉さま かっ !? ﹂ ?! !! るだろうに ここが良いのかっ それにしてもやっぱり黒ウサギは触り心地が違うのぉ∼ ほれ、ここが良いか ?! 62 !! ! ﹁そろそろ黒ウサギが来るような予感がしておったからに決まってお !? 白夜叉と呼ばれた白髪の少女は水に濡れながらも黒ウサギの豊満 な胸に顔を埋めたり揉んだりを繰り返していた。 ﹂ ⋮⋮なるほど、分かった。⋮⋮ただの変態のようだ。 離れて下さいませっ ﹁ちょ、ちょっと白夜叉様っ だ、駄目です !! かって全力投球した。 ほれ、プレゼントだぁっ !! 怪我は無いかい キャッチし、抱きとめる。 ﹁大丈夫 ﹂ そこのおんし ﹁う、うむ。別段問題は無い。 ⋮⋮じゃが シュートするなぞ私も予想出来んかったわ ﹁十六夜様だぜ。以後宜しく和服ロリ﹂ 一体何様じゃ ﹂ ? ﹂ ﹂ ? ﹂ 久遠さんは引き吊った笑みを浮かべて白夜叉を見ていた。 ﹁え、遠慮しておくわ⋮⋮﹂ チ生揉みで引き受けてやるぞ 仕事の依頼ならおんしのその年齢の割に発育の良い胸をワンタッ 嬢。 コミュニティ︻サウザンドアイズ︼幹部の︻白夜叉︼様じゃよご令 ﹁うむ、そうじゃぞ。 ﹁あ、貴女はこのお店の人 俺はそういうと白夜叉を地面に降ろした。 ﹁俺は不知火 夜鶴だよ。宜しくね白夜叉ちゃん﹂ て持ち上げておるおんしはなんと言うのじゃ ﹁私を優しく抱き止めてくれた上に、今、現在進行形で脇から手を通し !! !! ふむふむと白夜叉は首を振ると俺を見て口を開いた。 !! 飛んできた初対面の美少女をボレー そ こ そ こ の 勢 い で 飛 ん で く る 白 夜 叉 を 優 し く 勢 い を 殺 し な が ら ﹁おおっと⋮⋮﹂ た。 十六夜はボレーシュートの要領で俺の方へ白夜叉を蹴り渡してき ﹁夜鶴っ ﹂ 黒ウサギは、胸に張り付いた白夜叉を引き剥がすと、十六夜に向 ! !? ! ? ? 63 !! ? 白夜叉は俺たちを順番に見回すと黒ウサギを見詰める。 ﹁ふふん⋮⋮。おんしたちが黒ウサギの新しい同士か。 ﹂ ﹂ 異 世 界 の 人 間 が 黒 ウ サ ギ を 連 れ て ワ シ の 所 に 着 た と 言 う こ と は ⋮⋮そうか │││││遂に黒ウサギが私のペットに ﹁なりませんっ どのような事からそのような話になるのですかっ ﹁白夜叉ちゃん。あんまり黒ウサギをからかわないであげてよ。今日 そうかそうか。それはすまんかったの夜鶴。 は疲れてるだろうからね﹂ ﹁わはははは さて、おんしらは話があって来たのであろう 話なら店内で聞くとしよう﹂ そういった白夜叉は店内を指差した。 ﹁よ、宜しいのですか⋮⋮ 俺は少しだけ︻サウザンドアイズ︼というコミュニティを見直した。 その表情にも、声音にも、見下すような色は見えない。 ? ﹁⋮⋮さっきはごめんね ﹂ ﹁あ、頭を撫でないで下さいっ でも、さっきは本当にごめんね ﹁あはは⋮⋮ごめんごめん。 ﹂ 俺は入る前に落ち込む店員さんに近づいていき、頭を撫でる。 俺たちは順番に店内に入っていった。 シュンとした態度で店員さんはうなずいた。 ら入れてやれ﹂ 身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいか た性悪店員に対する侘びだ。 ﹁︻ノーネーム︼だとわかっていながら名を尋ねるなどというマネをし 我らが︻サウザンドアイズ︼の規定では⋮⋮﹂ 彼らは名も旗も持たない︻ノーネーム︼のはずです。 ? ﹁い、いえ。あれは私も悪かったので⋮⋮。 まさかあんなに怖がらせるとは思わなくてね⋮⋮﹂ ? !! ? 64 !! !! !! ! ! ⋮⋮さぁ、早く行かないと置いて行かれますよ ﹁あ、そうみたいだね。 ありがとう。また今度御詫びするよ﹂ ﹂ そういった俺は十六夜たちの後ろを追いかけて行った。 ﹁すまぬな。生憎と店は閉めてしまったのでな、私の部屋で勘弁して くれ﹂ 俺たちが入った白夜叉ちゃんの部屋は、和室で何かのお香を焚いて いるのか安心する良い香りがしてくる。 十六夜たちもその香りを気に入ったのか顔に柔らかい表情が浮か んでいる。 上座にゆっくりと座った白夜叉ちゃんは俺たちを捉えると話し始 めた。 ﹁改めて自己紹介をしておこうかの。 私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構えている︻サウザンドア イズ︼幹部の︻白夜叉︼だ。 この黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティが崩壊してから もちょくちょく手を貸している器の大きな美少女だと認識しておい てくれ﹂ ﹁はいはい。お世話になっております本当に⋮⋮﹂ 黒ウサギの投げやりな答えに自然と笑顔が出てくる。 ﹂ おそらく会う度にセクハラされているのだろう。 ﹁⋮⋮外門って何 く聞いておきたいものだ。 ﹁箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。 65 ? 少しは予想がつくのだが、如何せん情報が少ない。どうせなら詳し こてんと首を横に倒した春日部さん。 ? 外壁から数えて七桁の外門、六桁の外門、 と内側に行くほど数字 は若くなり同時に強大な力を持ちます。 箱庭で四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な 人外魔境ですよ﹂ なるほど⋮⋮。 おおよそ考えていたものと同じだが、階層の数が予想外だったな。 ﹂ ﹂ すると、春日部さんが上空からみた箱庭を思い出したのか、自分の 考えを言った。 ﹁⋮⋮超巨大タマネギ ﹁いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら ﹁そうだな、どちらかといえばバームクーヘンだ﹂ ﹁年輪がちょっと多すぎるけどね⋮⋮﹂ ﹁ふふふ⋮⋮うまいことたとえる。 その例えなら今居る七桁の外門はバームクーヘンの1番薄い皮の 部分に当たる。 さらに説明するなら東西南北4つの地区の区切りの東側にあたり、 外門のすぐ外︻世界の果て︼と向かい合う場所になる。 あそこにはコミュニティに所属こそしていないものの強力な︻ギフ ト︼を持った者たちが棲んでおる│││││その水樹の持ち主などな ⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんが含みを持った声でそう言った。 ﹂ ? 十中八九、あの蛇神のことを知っているのだろう。 それとも勇気を試したのか ﹁⋮⋮して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ 知恵比べか ? めしてきたのですよ ﹁なんと ﹂ ﹂ クリアではなく直接倒した と ではその童は神格持ちの しかし、十六夜からは特に嬉しそうな雰囲気は感じない。 黒ウサギはとても得意気にその話を語った。 !! !? 66 ? ? ﹁いえいえ、この十六夜さんがココに来る前に蛇神様を素手で叩きの ? ﹁いえ、黒ウサギはそうは思えません。 神童か !? ? もし神格持ちなら一目見れば分かるはずですし⋮⋮﹂ ﹁む⋮⋮それもそうか。 ﹂ ⋮⋮しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど のパワーバランスの傾きがある時だけのはず⋮⋮。 ﹂ 種族の力でいうのなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ ﹁神格ってなんだ としている んですよ﹂ ︻神格︼か⋮⋮どうせならゲットしておきたいものだね⋮⋮。 ﹁ところで白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか ﹁知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。 ⋮⋮まぁ、もう何百年も前の話しだがの﹂ ? になる。 ﹁へぇ⋮⋮ 私は東側の︻階層支配者︼だぞ フ ロ ア マ ス ター ﹁ふふん、当然だ。 じゃあ、お前はあの蛇神︵笑︶より強いのか ﹂ 側にいるということ⋮⋮つまりは、それ相応の実力があるということ さらっと神格を与えたと言ったが、という事は彼女は神格を与える そう言いながらからからと笑う白夜叉ちゃん。 ﹂ 層を目指すコミュニティの多くは神格を手に入れることを第一目的 神格を持つことで自分の他のギフトも強化されますから、箱庭の上 ば現人神や神童になります。 例えばですが蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に、人に神格を与えれ 系の︻ギフト︼です。 ﹁神格とは存在を種の最高ランクまで押し上げる、簡単に言えば強化 ? ? ︻主催者︼なのだからの﹂ 白夜叉ちゃんは胸を張って答えた。 すると、十六夜たち三人の問題児が立ち上がり、白夜叉ちゃんを獰 猛な眼で睨んでいた。 ﹂ ﹁つまり、貴女のゲームをクリア出来れば私達のコミュニティは東側 で最強のコミュニティという事になるのかしら ? 67 ? この東側四桁以下のコミュニティでは並ぶものがいない、最強の ? ? ﹁無論、そうなるのぅ⋮⋮﹂ ﹁そりゃ景気のいい話だ。 │││││探す手間が省けたぜ﹂ ﹂ ﹂ 十六夜たちの視線に闘争心が籠められると、白夜叉ちゃんは愉快そ うに笑った。 ﹁抜け目ない童達だ。 ちょっ、御三人様 依頼しに来ておきながら、私にギフトゲームで挑むと ﹁え ? ﹁あら、ノリが良いじゃない﹂ ﹁ふふふ⋮⋮まぁの。 ? た。 十六夜たちもこちらを見ている。 ﹁なんだ夜鶴。お前怖じけ付いたのか ﹁あら、案外弱虫なのね夜鶴君﹂ ? ﹁夜鶴さんまでっ ﹂ ⋮⋮まぁ、俺も参加させて貰うけど⋮⋮﹂ ﹁あははは⋮⋮酷い言われようだね⋮⋮。 ﹁⋮⋮弱いんだね﹂ ﹂ 白夜叉ちゃんはのんびりと座る俺を見ると不思議そうに聞いてき ⋮⋮ところで夜鶴。おんしはせんのか ﹂ ﹁よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えているんだからな﹂ !? ││││しかし、ゲームの前に1つ確認しておくことがある﹂ ﹁ふふふ⋮⋮そろそろ始めようか。 ね。 まぁ、お前ら敗けるなんて言われたらそりゃそういう反応になるよ 俺のこの言葉に三人は眉を動かした。 │││││キミたちは直ぐに敗けを認めることになる﹂ ﹁でも、これだけは言っておくよ三人とも。 俺も彼女の、白夜叉ちゃんの実力を知りたいんだ。 ごめんね黒ウサギ。 黒ウサギはまたも涙目になっていた。 ?!!! 68 ? 白夜叉ちゃんは自分の着物の袖から、一枚の見たことの無いような カードを取り出す。 描かれていたのは︻サウザンドアイズ︼の旗印である双女神の紋で ある。 カードに注目していると突然カードが光りだした。 ﹂ 白夜叉ちゃんは壮絶な笑みを浮べながら俺たちに問いた。 ﹁おんしらが望むのは︻挑戦︼か ││││もしくは︻決闘︼か⋮⋮ 途端に辺りは暗転し、見覚えのない場所へと風景を変えた。 鬱蒼と繁る美しい草原、白い地平線を覗く広大な陸地、青々と力強 く生えた森林の傍にある物静かな湖畔。 そして最終的に俺たちの捉えた世界は│││││ ﹂ │││││白銀に染まる白い雪原と凍り付いた湖畔、そして⋮⋮水 こ、こいつは⋮⋮っ 平に廻る太陽の世界だった。 ﹁⋮⋮なっ 照らすスポットライトだ ﹁今一度名乗り直し、問おう﹂ 十六夜たちはこの現象と驚き、そして感動していた。 かくいう俺もこの風景には感動した。 ﹁⋮⋮私は︻白き夜の魔王︼ ? │││││太陽と白夜の星霊・白夜叉。 ﹂ おんしらが望むのは試練への︻挑戦︼か それとも私と対等な︻決闘︼か ? 69 ? ? !? 白銀に染まる大地に反射された太陽の光は、まるで白夜叉ちゃんを 廻る太陽は白。 ?! 笑みとともに向けられた双女神の描かれた扇子は、先程よりも大き く見えた。 ﹁⋮⋮ふふふっ♪﹂ 俺は誰にも気付かれないように小さく笑った。 白 夜 叉 ち ゃ ん に は 悪 い け ど 俺 の 実 験 に 付 き 合 っ て 貰 わ な い と ね ⋮⋮。 70 ∼挑戦と決闘だそうですよ Side 夜鶴 ∼ ﹁水平に廻る太陽と⋮⋮そうか、︻白夜︼と︻夜叉︼⋮⋮。 あの水平に廻る太陽やこの土地はお前自身を表現してるってこと か﹂ ﹁如何にも⋮⋮。 この白夜の湖畔と雪原。永遠と沈むことなく世界を薄明に照らす 太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ﹂ 白夜叉ちゃんが両手を開くと空に浮かぶ雲が裂け、薄明の太陽がそ の全貌を現した。 ⋮⋮なるほど⋮⋮︻白夜︼と︻夜叉︼ね⋮⋮。 確か︻白夜︼はある経度を持つ地域のみで見られる太陽が沈まない 現象のことだったはず⋮⋮。 そして│││││︻夜叉︼。 ・ こっちは知らないね⋮⋮。 仕方無い⋮⋮︻検<rb>索</rb><rp>︵</rp><r t> </rt><rp>︶</rp></ruby>︼しようか⋮⋮。 俺は 眼を閉じて静かに自分の︻中︼に存在するある場所から︻知 識︼を取り出す。 ︻夜叉︼│││││夜叉には男と女があり、 男は︻ヤクシャ︵Yaksa︶︼女は︻ヤクシー︼もしくは︻ヤクシ ニー︵Yaksni︶︼と呼ばれる。 財宝の神︻クベーラ︵毘沙門天︶︼の眷属と言われ、その性格は仏教 に取り入れられてからも変わらなかったが、一方で人を食らう鬼神の 性格も併せ持った。 ヤクシャは鬼神である反面、人間に恩恵をもたらす存在と考えられ ていた。 71 ? 森林に棲む神霊であり、樹木に関係するため、 聖樹と共に絵図化 されることも多い。 │││││また、水との関係もあり、 ︻水を崇拝する︵yasy│︶︼ といわれたので、yaksyaと名づけられたという語源説もあ る。 後に仏教に取り入れられ、護法善神の一尊となった。 大乗仏典では薬師如来の十二神将や、般若経典を守護する十六善神 などが夜叉である。 これはなかなか興味深い内容だね⋮⋮。 ︻白夜叉︼という名前からすると、白夜が本質かな ﹁参った、やられたぜ⋮⋮。 夜叉は神格として取り入れたと考えるのが妥当だね。 ? それでは決闘ではなく試練を受けるということでいいのかの ⋮⋮今回は黙って試されてやるよ⋮⋮﹃今回は﹄、な⋮⋮﹂ 十六夜は吐き捨てるかのように白夜叉ちゃんに言った。 なんとも可愛い抵抗を示す十六夜。 ﹂ 白夜叉ちゃんは十六夜の言葉を高らかと笑い飛ばした。 ﹁く、くく⋮⋮⋮して、他の童達も同じか ﹁夜鶴、おんしも︻挑戦︼で良いな⋮⋮ ﹂ 白夜叉ちゃんはひとしきり笑い終えると俺にも聞いてくる。 然といえば当然だね。 まぁ、これだけされればどれだけ格が違うのか分かるだろうから当 悔しそうにそういった久遠さんたち。 ﹁⋮⋮右に同じ﹂ ﹁⋮⋮⋮ええ、私も試されてあげてもいいわ﹂ ? 当たり前のように︻挑戦︼を提案してくる白夜叉ちゃん。 ? 72 ││││降参だ白夜叉﹂ ﹁ふむ ﹂ ? ﹁あぁ、これだけのもんを見せてくれたんだ。 ? ⋮⋮俺は︻決闘︼を選ぶよ ﹂ 俺はそれに対して柔らかに笑うと、自らの考えを口にする。 ﹁│││││いいや ﹁⋮⋮ほう⋮⋮﹂ ? た。 お互いもう少し相手を選んで下さいっ フ ロ ア マ ス ター ﹁も、もう なんて冗談にしても寒すぎますっ ﹂ ないですか ﹁⋮⋮はてさて⋮⋮どうだったかな ﹂ ? グリフォン ﹂ ?! │││││獣だった。 ﹁⋮⋮嘘っ 本物 フ ロ ア マ ス ター そこにいたのは前世では決して見ることの出来なかったであろう で聞いたことの無いような獣の声が聞こえてきた。 白夜叉ちゃんがそういってはぐらかしていると、山脈の方から今ま ? ﹂ ⋮⋮それに白夜叉様が︻魔王︼だったのはもう何千年も前の話じゃ ! ︻階級支配者︼に喧嘩を売る新人と、新人の喧嘩を買う︻階級支配者︼ !! しばらく無言で見つめ合っていると黒ウサギが間に割り込んで来 その眼は俺の思惑を見通そうとしているようにも見える。 白夜叉ちゃんは目を細めて俺を見つめた。 ? それじゃあ元・魔王ってことか ﹁⋮⋮なに ! て貰うとしよう﹂ ﹁おんしらにはこのグリフォンによって︻力︼ ︻知恵︼ ︻勇気︼を試させ 頭を垂れた。 地に降り立ったグリフォンは白夜叉ちゃんに近寄るとゆっくりと 兼ね備えた︻ギフトゲーム︼を代表する幻獣だ﹂ あやつこそ鳥の王にして獣の王⋮⋮︻力︼ ︻知恵︼ ︻勇気︼の全てを ﹁いかにも。 いるように聞こえる。 その声にはグリフォンに対する驚きと同じぐらい、歓喜が混ざって 珍しく春日部さんが声を上げる。 !? 73 ! ? !? 白夜叉は何処からともなく光輝く羊皮紙を出現させ、それをこちら に見せる。 そこには今回行われる︻ギフトゲーム︼の内容が書かれていた。 ﹃ギフトゲーム名 ︻鷲獅子の手綱︼ ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜 久遠 飛鳥 春日部 耀 ・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。 ・クリア方法 ︻力︼︻知恵︼︻勇気︼の何れかでグリフォンに認められる。 た。 ﹁当然じゃ。そやつは私との︻決闘︼を望んだのじゃからな﹂ ﹁大丈夫だよ黒ウサギ﹂⋮⋮夜鶴さん ﹂ 扇子で口元を隠しながら楽しそうにしかし真剣に白夜叉ちゃんは 言った。 ﹁し、しかし ?! しね。 ﹁俺だって黒ウサギたちの役に立つっていうのをそろそろ証明したい !! 74 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。 宣誓 ﹂ 上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲー ムを開催します。 白夜叉様、夜鶴さんの名前が無いですよ⋮⋮ ︻サウンドアイズ︼印﹄ ﹁あ、あれ ? 黒ウサギが冷や汗をダラダラと垂らしながら白夜叉ちゃんに言っ ? 大丈夫。白夜叉ちゃんだって命までは取らないよ﹂ 俺 が そ う い う と 黒 ウ サ ギ は 耳 を 垂 れ さ せ な が ら 渋 々 と い う 様 子 だったが分かりました、と口にする。 ﹁││││そのゲーム私がやる﹂ はっきりとした通る声が春日部さんから聞こえた。 ﹂ 短い間しか一緒に居ないが、大人しい印象の春日部さんには珍しい ことだと思う俺。 おそらく十六夜もそうなのだろう。 意外そうに春日部さんを見ている。 ﹂ ﹁⋮⋮OK、先手は譲ってやる。失敗すんなよ ﹁気をつけてね、春日部さん﹂ ﹁応援してるよ。落ち着いてね ﹁⋮⋮うん、頑張る﹂ ﹃ ﹄ ﹁⋮⋮え、えーと。始めまして、春日部 耀です﹂ 春日部さんは目をキラキラさせながらグリフォンに近づいていく。 津々なのだろう。 そしてまた、幻獣などの架空の生物と言われたグリフォンに興味 よほど動物が好きなのだろう。 そういった春日部さんの目はグリフォンに釘付けにされていた。 ? 別にそういった能力を創っても良いのだが、今は止めておこう。 ﹁ほう⋮⋮あの娘、グリフォンと言葉を交わすか⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんは感心したように扇を広げた。 ﹁私 を 貴 方 の 背 に 乗 せ ⋮⋮ 誇 り を 掛 け て 私 と 勝 負 を し ま せ ん か ⋮⋮ ﹂ グリフォンは驚いた表情をしていたが、すぐにそれを無くし、何か を答える。 それを聞いた春日部さんはまた口を開いた。 75 ? 俺にはグリフォンが何を言っているのかは分からない。 !? ? ﹁貴方が飛んできたあの山脈。 あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着 点と定めます。 貴方は強靭なその翼と四肢で空を駆け、湖畔までに私を振るい落と せば勝ち。 ﹂ 私が背に乗っていられたら私の勝ち。 ⋮⋮⋮どうかな 春日部さんは小首をかしげる。 すると、またもグリフォンは春日部さんに何かを言ったようだ。 すると、春日部さんは迷うことなく、真剣な眼差しで即答する。 ﹁│││││命を賭けます﹂ ﹂ 貴女本気なの ﹂ それを聞いた黒ウサギと久遠さんは驚きの声を上げた。 ﹁だ、駄目ですっ ﹁か、春日部さん ﹁⋮⋮貴方は誇りを賭ける。 私は命を賭ける。 ﹂ 私あんまりスタイルが良くないけど⋮⋮⋮それじゃ駄目かな⋮⋮ もし転落して生きていても、私は貴方の晩御飯になります。 !? そんな様子に慌てる黒ウサギたちを白夜叉ちゃん、十六夜そして俺 が制した。 ﹁⋮⋮双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ⋮⋮﹂ ﹁ああ。白夜叉の言う通りだ。 お前ら無粋な真似はやめとけ﹂ ﹂ ﹁春日部さんなら大丈夫だよ。 仲間を信じてあげよう ? 76 ? !? !!! 自らの身体をペタペタと触りながらそう言う春日部さん。 ? ﹁そんな問題ではございません 同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには⋮⋮﹂ ﹁夜鶴の言ったとおり、私は大丈夫だよ﹂ 春日部さんの瞳には勝算しか無いと言ったような光が宿っていた。 そして、ゆっくりとグリフォンに跨がると何かを呟く。 それと同時に、グリフォンは駆け出した。その強靭な四肢を十二分 に使い、空を踏みしめるように走る。 山頂近くになると突然スピードを上げ、容赦のない、頂からの急降 下。 そのスピードは始めのスピードの優に数倍はくだるまい。 更にグリフォンは旋回までも加え、春日部さんを本格的に振り落と しに掛かった。 │││││しかし、春日部さん負けなかった。 下半身が空中に投げ出されたのにも関わらず、手綱は決して離さな い。 グリフォンはそんな春日部さんを見て、最後の激しい旋回を始め た。 縦横無尽に動くグリフォン。 それに伴い振り回される春日部さんであったが、やはり手綱は離さ ない。 そして遂に│││││春日部さんとグリフォンとの攻防が、終わり を告げる。 │││││グリフォンは今までの激しい動きが嘘だったかのよう に、残る距離はただ純粋なスピードで直線的に指定された道を駆け抜 けていく。 その背には勿論、春日部さんの姿があった。 ゴールを示す場所を駆け抜け、春日部さんの勝利が決まった瞬間、 気が緩んだのか春日部さんの手から手綱が離れた。 77 !! ﹁春日部さん ﹂ ﹂⋮⋮えっ⋮⋮ ? 下していく。 まだ終わってない ! それを見て助けに行こうとした黒ウサギの手を十六夜が掴んだ。 は、離し﹁待て ! のかな なかなか良い︻恩恵︼を持ってるみたいだけど⋮⋮誰か気づいてる さんに話し掛けた。 しかし、十六夜は予想していたのか、ゆっくりと降りて来た春日部 黒ウサギは驚愕の表情を浮かべた。 ﹁なっ⋮⋮ ﹂ │││││空をしっかりと踏みしめる。 そして、春日部さんの体に風が纏い始め│││││ 落下の勢いを殺していくのが見えた。 十六夜の言葉を証明するように、ふわりと春日部さんの体が翻り、 ﹁十六夜さん ﹂ グリフォンから滑り落ちた春日部さんはそのまま真っ逆さまに落 !? !? だったんだな﹂ 十六夜は自信ありげにそう言った。 だけどね十六夜、それは違うんだよ。 春日部さんの︻恩恵︼はそんな﹃手に入れる﹄だなんて野蛮なもの じゃ無いんだ。 しかし、十六夜は賢いね⋮⋮。 たった少しの情報でそこまで予想するなんて。 ﹂ ﹁⋮⋮違う、これは︻友達になった証︼。 ⋮⋮けど、 いつから知ってたの て言ってただろ ﹁あぁ⋮⋮お前、黒ウサギと会った時に﹃風上に立たれたらわかる﹄っ ? 物とコミュニケーションがとれる︼だけじゃなく、 ︻他種のギフトをな そんな芸当人間にはできねぇ。だから春日部のギフトは︻他種の生 ? 78 ?! ﹁⋮⋮やっぱりな、お前のギフトは、他の生き物の特性を手に入れる類 ? んらかの形で手に入れるもの︼なんじゃないかと推測したわけだ。 ⋮⋮まぁ、あの速度に耐えられる生物は地球上にはいないから⋮⋮ それだけじゃなさそうだけどな﹂ 十六夜は、春日部さんにそういうと、お疲れ様だな、と労いの言葉 を口にして、離れていった。 ﹂ ﹁│││││いやはや大したものだこのゲームはおんしの勝利だの。 ⋮⋮⋮ところで、おんしの持つギフトだがそれは先天性か 十六夜の次は白夜叉ちゃん。 春日部さんに向かって拍手を送りながら近寄っていく。 ﹁⋮⋮違う。 ﹂ ﹂ 私は、父さんに貰った木彫りのおかげでみんなと話せるようになっ たの﹂ ﹁木彫り ﹁ほほう⋮⋮彫刻家の父か⋮⋮。 もしよければ、その木彫りというのを見せてくれんか り出し、白夜叉ちゃんに渡す。 丸く、大きさはそれほど大きく無いが、かといって小さくもない。 そしてそこには複雑な模様が彫られていた。 ﹂ それを見て白夜叉ちゃんは急に顔を驚きに染める。 ﹁これは複雑な模様ね、なにか意味があるの ﹁意味はあるけど知らない。 ﹁素材は楠の神木⋮⋮ しかもかなり高度な技術で造られている。 その模様は︻系統樹︼を示したモノ。 ﹁⋮⋮これは﹂ 確か父さんに昔教えてもらったけど忘れた﹂ ? この中心を目指す幾何学線⋮⋮そして中心に円状の空白⋮⋮もし 神格は残っていないようですが⋮⋮。 ? 79 ? 春日部さんは頷いてペンダントにしている木彫りを服の中から取 ? ? かしてお父様のお知り合いには生物学者がおられるのでは ⋮⋮。 ﹂ ⋮⋮いや、これは⋮⋮っ 本当に凄いぞ娘 確立させてしまうとは ゲ ノ ム・ ツ リ ー こ、これは凄いっ 正真正銘︻生命の目録︼と称して過言ではない名品だ 興奮した声を上げる白夜叉ちゃん。 それに対して、春日部さんはかなり不思議そうだ。 ﹂ ﹂ ﹁︻系統樹︼って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ だに視えぬからか⋮⋮。 それともこの作品が未完成の作品だからか⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんの眼がキラキラと輝いて見えた。 あの十六夜ですらも少し引き気味な程に⋮⋮。 ! ﹁うぬぬ、凄い⋮⋮凄いぞ 久しく想像力が刺激されるぞ 実にアーティスティックだ !!! おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの ! 中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未 の中心を目指して進む様子を表現している。 再生と滅び、輪廻を繰り返す生命を遂げて進む円の中心、即ち世界 の。 この木彫りを態々円状にしたのは生命の流転、輪廻を表現したも ﹁うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスがなす業よ。 でも母さんの作った系統樹はもっと樹の形をしていたと思うけど﹂ ? !!! ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかも︻ギフト︼として 本当にこれが人造ならばおんしの父親は神代の大天才だ ! ﹁お そ ら く の ⋮ な ら こ の 図 形 は こ う で ⋮⋮ こ の 円 状 が 収 束 す る の は か白夜叉 ﹁生物学者ってことは⋮⋮やっぱりこの図形は︻系統樹︼を表してるの ﹁うん、私の母さんがそうだった﹂ 黒ウサギまでもいつの間にか春日部さんの木彫りに魅入っていた。 ? ! !! !? !! 80 ? 私に売ってくれんか ﹁ダメ﹂ ﹂ 白夜叉ちゃんから木彫りを取り上げる春日部さん。 物凄く残念そうな顔をする白夜叉を見た十六夜は小声で子供みた いだなと呟いた。 ﹁うむむむ⋮⋮残念じゃな⋮⋮﹂ ﹂ ﹁⋮⋮それより白夜叉ちゃん。 俺とのゲームはまだかな 宣誓 合。 降参もしくはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場 ・敗北条件 白夜叉を楽しませ、その︻力︼を認めさせる。 ︻力︼により白夜叉を打倒する。 ・クリア方法 白夜叉に認められること。 白夜叉との決闘による打倒。 ・クリア条件 不知火 夜鶴 ・プレイヤー一覧 ﹃ギフトゲーム名 ︻沈まぬ太陽との決闘︼ 取り出した。 白夜叉ちゃんは先程よりも引き締まった顔をして光輝く羊皮紙を ⋮⋮では、行うとしようか﹂ ﹁そうじゃったな。 その言葉に白夜叉ちゃんはピクリと反応し、俺と向き合った。 ? 上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲー ムを開催します。 ︻サウンドアイズ︼印﹄ 81 ?!! ﹁な 白夜叉様 これはどういうことですか ?!! ﹂ ? ﹂﹂﹂ ?!! ﹂ !!! た。 ? ﹂ このゲームは白夜叉様﹁黒ウサギ大丈夫だよ﹂⋮⋮夜鶴さん ﹁そうじゃったかな ﹁いえ ﹂ 私は覚えておらぬよ﹂ 黒ウサギの発言を聞いた十六夜たちの息を飲むような声が聞こえ ﹁﹁﹁なっ じゃ無いですかっ ﹁これは白夜叉様が︻魔王︼として活動していたときのゲームのひとつ ﹁なんのことじゃ 黒ウサギが慌ながら白夜叉ちゃんに言った。 ?! ?! つめてきた。 ﹁これは俺が望んだゲームだよ ﹁ふはははは 夜鶴おんしは本当に面白いな ﹂ !! ﹁そうかな ﹂ ⋮⋮そして、黒ウサギ ﹁何ですか⋮⋮ ﹂ 白夜叉ちゃんは扇子を開き、俺を見て高らかに笑った。 !!! それなら相手の選んだゲームで戦うのが筋ってものだよ﹂ ? 俺が間に言葉を挟んであげると、黒ウサギがこちらを心配そうに見 !! Side Out 俺は黒ウサギ、そして十六夜たち問題児に不敵に笑った。 そして│││││俺が誰にも敗けないことを⋮⋮ね﹂ 黒ウサギたちを助けることが出来るのを。 ⋮⋮これから俺は示してあげるよ ﹁そんなに不安そうな顔で見ないでよ。 ? ? ? 82 ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 三人称 ﹁待たせたね白夜叉ちゃん﹂ ﹁良いよ。 ⋮⋮しかしおんし言い切ったな﹂ 白夜叉はその手に持つ扇子をたたみ、夜鶴を指しながら口を開く。 ﹁︻誰にも敗けない︼⋮⋮か。 おんしはそんな奴では無いと思っていたのじゃが⋮⋮﹂ 眉をしかめて残念そうな表情となる白夜叉は、夜鶴の発言に頭を痛 めていると言ったふうに口にする。 しかし、その声音からは何処か楽しそうな雰囲気を感じさせた。 ﹁まぁ、良い。 ﹂ わせるように片方の手の平を添えた。 83 その言葉が誠か、それとも嘘なのか⋮⋮﹂ ﹂ 一瞬顔を伏せた白夜叉は、次に夜鶴を見た時には獰猛な笑みを浮か べていた。 ﹁│││││私が見極めれば良いのだからな その言葉を合図に白夜叉は動き出した。 ﹁⋮⋮遅いよ白夜叉ちゃん﹂ ⋮⋮しかし、その攻撃は夜鶴にとっては愚鈍。 そして、流れるような体捌きで拳を叩き込まんとした。 を利用して懐へと潜り込む。 夜鶴との距離をたった1歩の跳躍でゼロまで縮め、その小さな体躯 ! 繰り出された白夜叉の拳を半身でかわすと、夜鶴は白夜叉の体に合 ﹁ッッ ??!!! ・ ・ ・ ・ あまづき ﹁│││││不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻天月︼﹂ 添えた手に力を入れて白夜叉の身体を軽々と宙に浮かせると、残る ﹂ 片手を手刀とし、白夜叉の腹部を穿つかと思わせるほどに突く。 ﹁ガハァッッッ 白夜叉はその攻撃をどう対処することも出来ずに喰らい、身体をく ﹂ の字に折り曲げ吹き飛ばされる。 ﹁ぐうぅ⋮⋮っ 吹き飛んだ白夜叉は、宙で体制を整えると夜鶴から逃げるように距 離を取り、後ろに下がった。 ﹁⋮⋮おんしなかなかやるな⋮⋮﹂ 腹部を押さえながらニヤリと笑う白夜叉。 ﹂ その速度が│││││﹃異常﹄。 ﹁なっ⋮⋮ ﹁ガァァア⋮⋮ッッ ﹂ あ わ じ し まりは地面に勢いよく体全体が叩きつけられた。 その後は分かりきったもので、白夜叉は蹴られた方向│││││つ を蹴り下ろす。 白夜叉の両の足が地から離れ、浮いた所を見極め、手を離し、胸部 き付けようとする。しかし、夜鶴の業がその程度の訳がない。 突進の勢いのまま白夜叉の頭を鷲掴みにすると、そのまま地面に叩 ﹁不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻淡獅子︼﹂ たものだろう。 視界から消えて、いきなり目の前に現れる。言わば﹃転移﹄と言っ ? その表情は今まで強者に飢えていたと言わんばかり。 ﹁ふふふ⋮⋮まだまだこれからでしょ⋮⋮ ほら、早く構えて ﹂ ? 次は夜鶴から白夜叉に近付いて行く。 │││││次⋮⋮行くよ ? !!!? 84 ?!!! ! 最早それは移動ではない。 ?!!! 地面には亀裂が走り、土埃が舞い上がる。 ﹂ 止めをさすために白夜叉の体を掴もうと近づこうとする夜鶴だっ たのだが、そう簡単には終わらないらしい。 白夜叉の回りに白く燃える焔の塊が漂い始めた。 夜鶴はそれを感知した途端に距離を取る。 ﹁⋮⋮夜鶴。おんし、誇るが良い⋮⋮。 私にこの力を使わせた奴なぞ片手で数える程しかおらぬ。 │││││故にここからの私は本気じゃ⋮⋮。 本気で⋮⋮︻白き夜の魔王︼としておんしを叩き潰してやるぞ 紅々と燃える焔が漂い白夜叉を囲んでいた。 ﹂ ﹂ 立 ち 上 が っ た 白 夜 叉 の 回 り に は 先 程 の 白 く 燃 え る 焔 の 塊 そ し て !!! を成し、夜鶴に向かって飛来して行く。 ﹂ 流石の夜鶴もそれを素手で迎撃するのは悪手と理解しているのか、 ﹂ 周りの地形を利用して立体的に躱す。 ﹁ほれほれ 逃げるだけでは私には勝てぬぞ ﹁そうだね⋮⋮俺も逃げるのは趣味に合わないんだ ﹁│││││非常に強力な焔⋮⋮﹃だからこそ﹄かき消せる﹂ そう言った夜鶴は動くのをやめ、白い焔球を真正面で捉えた。 ! 85 ﹁それが白夜叉ちゃんの本気かい ﹂ 夜鶴ッ !! ﹁うむ。私自身この力を使うのは数千年ぶりだ⋮⋮﹂ 白夜叉は、懐かしげにそう語った。 ﹁そっか⋮⋮なら、まだ楽しめる⋮⋮っ ﹁それは私のセリフじゃ 夜鶴がそういうと白夜叉は再び獰猛に笑う。 ! この力を使うのだから⋮⋮簡単に沈んでくれるなよ ! 白夜叉の言葉が終わると同時に、その白い焔塊は密度を高め、球体 ?! ? ! !! 言って、夜鶴は白い焔球を﹃素手﹄でかき消した。 ﹁んなっ そ、そんな馬鹿な その焔は私自身を司るモノじゃぞ ﹂ ﹁ふふふ⋮⋮そうかい ﹂ ﹁また面白い︻恩恵︼を使うのぅ⋮⋮﹂ ﹂ らも今はどう夜鶴を攻略するかという方へと思考をシフトさせた。 白夜叉も思い当たるものが無かったのだろう。悔しそうにしなが 如何せん情報が少なすぎる。 ⋮⋮が、しかし。 せる。 夜鶴の言葉に白夜叉はその︻恩恵︼を見極めようと頭をフル回転さ べきかな ﹁これが俺の能力のひとつ⋮⋮いや、此処では︻恩恵︼のひとつと言う 夜鶴の口から出された舌には︻逆︼という一文字が書かれていた。 そ﹄無傷﹂ 焔を触って溶けないことなんて有り得ない│││││﹃だからこ 消せる。 高温の焔を素手で消すことなんて不可能│││││﹃だからこそ﹄ ﹁│││││﹃だからこそ﹄勝てる。 しかし、次の瞬間、夜鶴はにっこりと笑って舌を出した。 顎に手を当てながら頷いて話す夜鶴。 そう考えると負けるのは必然。絶対に勝利できない﹂ てなくなりそうだね。 ﹁確かにそんな高温の焔を素手で触ったりなんかしたら火傷所か溶け そんな白夜叉に対して、夜鶴は仕方なさげに口を開く。 目の前で起きたことが信じられない、そう言わんばかりの白夜叉。 そ、それを素手でかき消してしまうとは⋮⋮おんし、何をした 熱は優に摂氏1600万度を越える ?! !? ? 86 ?! !! ?!! ? 2人はそう話しながらいつでも飛び出せる様な体制を取っている。 ﹁何にせよ⋮⋮そろそろ決着と行こうではないか﹂ ﹁そうだね⋮⋮こういうのはダラダラ続けるより、楽しいうちに終わ らせるべきだよ﹂ 互いの意見の一致。 にやりと笑う仕草までも一致させ、決着へと向かう。 互いの距離は一瞬で詰められるものではないほどに開いている。 ならば遠距離攻撃を行える白夜叉の方が有利。 そう考えたからこそ、白夜叉は夜鶴よりも先に、今度はかき消せな いほどの焔を叩き込むべく動いた。 ﹂ 夜鶴の︻恩恵︼がどんなものなのかを。 87 ﹂ │││││先に動いたのは白夜叉 ﹁喰らえ⋮⋮ッッ ﹁ッッ れる⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮一瞬で詰められるものではない│││││﹃だからこそ﹄詰めら │││││その筈だった。 ?!! 白夜叉は此処に来てやっと理解した。 !! しかし、それよりもこの間合いは致命的。何とかバックステップで 離れようとするが⋮⋮それは叶わなかった。 ﹂ むしろ、その場で後ろに倒れてゆく。 ﹁な⋮⋮ッッ ﹁読んでるよ ﹂ 白夜叉の足が、夜鶴に踏まれていた。 そして、白夜叉は後ろに倒れゆく中で悟った。 │││││自分の敗けだと。 しかし、ゲームを終える気は白夜叉には無かった。 敗者は敗者らしく、その一撃を素直に喰らおう、そう考えたのだ。 こほう 夜鶴は後ろへと倒れる白夜叉の腹部に両手を添える。そして、全力 で、突いた。 ﹁不知火式⋮⋮無刀⋮⋮︻鼓咆︼﹂ ﹂ ・ ・ ・ ・ ︻天月︼の時同様に身体をくの字に曲げ、苦しそうな表情を浮かべる白 夜叉。 しかし、今回は、地面に、ゆっくりと、落ちる。 白夜叉はそれ以降一言として喋ることも、動くこともせずに、その 意識を完全に飛ばした。 ﹁│││││俺の勝ち、だね﹂ 夜鶴の呟きはやけに響いた。 88 ? ?!! ﹁が⋮⋮ッッッ !!!!?? ∼再開の時だそうですよ Side 夜鶴 ∼ ︻決闘︼により俺に気絶させられた白夜叉ちゃんが目覚めたのは、約2 時間程後のことであった。 起きるまで、流石に地面に寝かせるのは許せず、俺の膝の上で寝か せていたのだが、俺が動けないのをこれ幸いに、十六夜たちが先ほど ﹂ の戦いについて聞き出そうと俺を囲んだ。 │││││﹁不知火式ってなんだ ﹂ ﹂ │││││﹁貴方どんな動きをしているのよ ギフト │││││﹁あれってどんな︻恩恵︼なの ? が覚醒。 これ以上は話しすぎると困っていたところで白夜叉ちゃんの意識 様々な質問があったが俺はそれに曖昧に答えていた。 !! ?! 白夜叉様でも鑑定できないのですか ﹂ そして、本来の目的を果たすために黒ウサギに説明をしてもらうに 至る。 ﹁│││││え⋮⋮ ? 夜叉ちゃん。 扇子で顔を軽く隠しているところからすると、どうやら白夜叉ちゃ んは︻ギフト︼の鑑定は苦手らしい。 ﹁⋮⋮よ、よりにもよってギフト鑑定か⋮⋮。 専門外どころか無関係もいいとこなのだがのぅ⋮⋮﹂ 腕を組み、ウンウンと唸りながら悩む白夜叉ちゃん。 そして、目を開けると俺たちを一人一人ゆっくりと見る。 俺たちを見て何か考えがまとまったのか口を開いた。 89 ? 黒ウサギのそんな物言いに、起きて早々顔色を悪くして汗を流す白 ? ﹂ ﹁どれどれ⋮⋮ふむふむ⋮⋮夜鶴はまぁ言うまでもないだろうが⋮⋮ 他の三人ともに素養が高いのは分かる。 しかしこれではなんとも言えんな。 ﹂ おんしらは自分の︻ギフト︼の力をどの程度に把握している ﹁企業秘密﹂ ﹁右に同じ﹂ ﹁以下同文﹂ ﹁えっと⋮⋮全略 ﹁うぉぉぉぉい ? ﹁ギフトカード ﹂ ﹂ の名前│││││︻ギフトネーム︼であろうものが書かれていた。 そこには、俺たちの名前とおそらく俺たち自身の体に宿る︻ギフト︼ すると、俺たち四人の前に光輝くカードが現れた。 そういった白夜叉ちゃんはパンパンと柏手を打った。 良かろう﹂ ちょいと贅沢なものだが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度 したおんしらには︻恩恵︼を与えねばならん。 何にせよ︻主催者︼として、星霊の端くれとして、 ︻試練︼をクリア ﹁ふむ⋮⋮。 笑った。 しばらくすると突如妙案が浮かんだのか、白夜叉ちゃんがニヤリと 困ったように頭を掻く。 はっきりとした十六夜の拒絶するような言葉に、白夜叉ちゃんは 人に値札貼られるのは趣味じゃない﹂ ﹁別に鑑定なんていらねえよ。 頭が痛いと言わんばかりに頭を抱える白夜叉ちゃん。 怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに⋮⋮﹂ ⋮⋮いやまあ、仮にも対戦相手だった者に︻ギフト︼を教えるのが ? ? 90 !? ! ﹁なにそれ御中元 ﹂ ﹁お歳暮 ? ﹂ ﹁お年玉 ? ﹁お見舞い ﹂ ﹁なんでそんなに息ピッタリにボケるんですかっ 違いますよっ この︻ギフトカード︼は顕現している︻ギフト︼も収納できる超高 るのですよっ ﹂ ﹁⋮⋮つまり素敵アイテムってことでオッケーか ﹁だからなんで適当に聞き流すんですか ﹁これまた簡単に纏めたね⋮⋮﹂ 十六夜の言葉に怒鳴る黒ウサギ。 そしてそんな黒ウサギを可哀想にと哀れむ俺。 ﹁⋮⋮私も﹂ ﹁確かにそれは気になるわね⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮そういや皆の︻ギフト︼は何なんだ ﹂ 久遠さん、春日部さんを見ながら口を開いた。 ﹂ ﹂ すると十六夜は自分以外の︻ギフトカード︼が気になったのか俺や 白夜叉ちゃんは扇子を開いて自分を扇ぎながらしれっと言った。 少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ﹂ も記されるのだが、 おんしらは残念ながら︻ノーネーム︼だからの。 ﹁我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの︻名︼と︻旗印︼ と、今の会話から察することが出来る。 それにしても、このギフトカード。相当に貴重なものなのだろう !!!! 耀さん の︻生命の目録︼だって収納可能で、好きな時に顕現でき ゲ ノ ム・ ツ リ ー 価なカードですよ ! あぁ∼もうそうです、超素敵アイテムなんですよっ !!! ? ! 春日部さんの手には、パールエメラルドのカード。 ︻威光︼ ︻久遠 飛鳥︼ 久遠さんの手には、ワインレッドのカード。 そして、それぞれが︻ギフトカード︼を見せ合い始めた。 予想通りな十六夜の言葉に久遠さん、春日部さんも反応する。 ? 91 !!! !! ? ゲ ノ ム・ ツ リ ー ︻春日部 耀︼ ︻生命の目録︼ ︻ノーフォーマー︼ 十六夜の手には、コバルトブルーのカード。 コード・アンノウン ︻逆廻 十六夜︼ ︻正 体 不 明︼ ﹁へぇ∼⋮⋮みんな名前があんのか⋮⋮﹂ 十六夜の呟きに白夜叉ちゃんが答えた。 ﹁その︻ギフトカード︼は、正式名称を︻ラプラスの紙片︼、即ち全知 の一端だ。 そこに刻まれる︻ギフトネーム︼とはおんしらの魂と繋がったの︻恩 恵︼の名称。 ﹂ 鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるとい じゃあ俺のはレアケースなわけだ それを白夜叉ちゃんが覗き込むと、その表情に驚愕が広がった。 ﹁⋮⋮いや、そ、そんな馬鹿な⋮⋮﹂ コード・アンノウン 原因が本当に不明なのか白夜叉ちゃんは眉をひそめたままに呟く。 ﹁︻正 体 不 明︼だと⋮⋮ ラーを起こすはずなど⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮何にせよ、鑑定出来なかったってことだろ まぁ、俺的にはこの方がありがたいさ﹂ ﹁そんなことより⋮⋮夜鶴お前の︻ギフト︼は何なんだよ ? そして今度は、十六夜が俺の方を見て興味深そうに聞いて来た。 ば仕方がないと引く。 白夜叉は納得いかないようだったが、本人が気にしていないのなら カード︼を取り上げた。 そういった十六夜は白夜叉ちゃんが食い入るように見る︻ギフト ? ⋮⋮いいやありえん⋮⋮全知の一片である︻ラプラスの紙片︼がエ ? 92 うものじゃからな﹂ ﹁⋮⋮へぇ ? 十六夜は自分の︻ギフトカード︼を白夜叉ちゃんに差し出す。 ? いくら考えてもお前の︻ギフト︼が予想出来ねぇ⋮⋮﹂ ﹁確かにそうね⋮⋮さっきの有り得ない光景の理由⋮⋮知りたいわ﹂ ﹁それに、あの反射神経は異常だよ。 私なんか白夜叉の動きも見えなかった⋮⋮﹂ 十六夜、久遠さん、春日部さんが次々と疑問を口にした。 こんなふうに言われるのは予想通り。 俺は手にもつ︻ギフトカード︼を皆に差し出した。 すると、十六夜たちの他にも白夜叉ちゃん、黒ウサギも興味津々と 覗いて来た。 ﹁俺の︻ギフト︼はこれだよ﹂ 俺の手にはクロムシルバーのカード。 ク リ エ イ ター ︻不知火 夜鶴︼ アビリティ・センス ︻創造者の娯楽︼ ス ピ リッ ター タ イ ル オー ディ ン 物にならない程の驚愕の表情を浮かべた。 ﹂ ﹁︻創造者︼に︻全知全能の神︼じゃと おんしは一体何なのじゃ ?!!! 俺が無言でしばらく止まる。 ﹁ん∼⋮⋮俺が何者か⋮⋮か⋮⋮﹂ 見つめ、十六夜たちは俺の︻ギフト︼の異常さに目を見開いている。 白夜叉ちゃん、黒ウサギは俺を信じられないモノを見るようにして !? 93 ︻武 術 無 双︼ ミュージアム・オブ・オーディン ︻言霊使い︼ ス ︻全 知 の 司 書 官︼ フ ォ ー ム・ レ ス ︻言葉使い︼ ラヴ・フォー・ユー ︻無形な有形︼ ︻永 久 の 愛︼ ﹁な、なんじゃと ﹂ ?! 白夜叉ちゃんは俺の︻ギフトカード︼を指差し十六夜の時とは比べ おんしなんじゃこの︻ギフト︼は ?!! その間白夜叉ちゃんたちは何もしない。 ディ ン しばらくの間を開けて俺は、白夜叉ちゃんたちを見つめて薄く笑い ながら呟いた。 オー ﹁│││││俺は俺だよ⋮⋮。 別に俺は︻創造者︼や︻全知全能の神︼なんていう特別な者じゃな い﹂ 白夜叉ちゃんたちは静かに俺の話を聞いていく。 ﹂ ﹁でもそうだね⋮⋮ひとつ言うなら│││││ ﹂ │││││俺は︻神を愛した者︼かな ﹁⋮⋮︻神を愛した者︼、じゃと⋮⋮ そして│││││ │││││俺は神に愛された﹂ ﹁⋮⋮っ おんしは神と恋仲⋮⋮という訳かの ﹂ 俺は一人の神をただ普通に普遍的に愛した。 ﹁そうだよ白夜叉ちゃん。 その顔には、理解出来ないといった表情が浮かんでいる。 白夜叉ちゃんが俺を見ながら口を開いた。 ? 勿論俺はそれに肯定の意味を込めて首を縦に振る。 ﹂ そんな中、今まで静かに聞いていた十六夜たちが口を開いた。 ﹁おい夜鶴。 そのお前が愛した神ってのは誰なんだよ ﹁確かに気になるわね⋮⋮。 貴方が愛した神様⋮⋮一体誰なのかしら ﹁⋮⋮私も気になるな⋮⋮。 ﹂ ? ? 94 ? 白夜叉ちゃんは有り得ぬものを見るようにそう呟く。 ? ?! 神様にも興味があるし⋮⋮﹂ 十六夜たちは、俺の愛した神に興味津々のようだ。 やっぱり恋愛に引かれる年頃なのかな 俺はその歳相応の反応にクスリと笑った。 ﹁⋮⋮俺が愛した神。それは⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃん、黒ウサギ、十六夜、久遠さん、春日部さんをゆっく り見見回し、俺はその名を口にした。 ﹁│││││全知全能の神と呼ばれ、北欧神話の主神にして戦争と死 の神、︻オーディン︼だよ﹂ その名を聞いた皆はその顔に驚愕の表情を浮かべ、そしてその名前 の偉大さに絶句していた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹁⋮⋮夜鶴⋮⋮お前ホモ⋮⋮しかも爺フェチなのか⋮⋮﹂ 十六夜が口元を押さえ笑いを堪えるように言った。 今の今まで皆が絶句していたのに、開口一言目がそれというのは一 体どういうことなのだろうかさん。 ﹁⋮⋮オーディンって言うのは主に長い髭をたくわえ、つばの広い帽 ﹂ 子を目深に被り、黒いローブを着た老人として描かれているけど、そ れが実際正しいとは限らないんだよ十六夜 こ こ ﹁じゃあ、どんなふうにしてんだよ ﹂ その言葉にいち早く反応したのは白夜叉ちゃんだった。 ﹁な、なんじゃと ﹂ 95 ? 俺の言葉に興味深そうに反応する十六夜。 ? ﹁そうだなぁ⋮⋮もう︻箱庭︼に呼んだほうが早い気がするね⋮⋮﹂ ? おんし、神を、しかも主神クラスの者を呼び出せるというのか !? ?! ﹁勿論だよ白夜叉ちゃん。 俺の︻永久の愛︼はその為の︻ギフト︼だからね﹂ 俺は片手でクロムシルバーのカードを弄びながら白夜叉ちゃんに 答えた。 そりゃすげぇ 早速オーディンを呼び出してくれよ ﹂ 正直そろそろオーミに逢いたいというのが本音だ。 ﹁ヤハハ おい夜鶴 十六夜は笑いながら俺にそういった。 ﹁│││││愛しき者よ、今こそ私の元へ﹂ ﹁│││││廃れる事の無い永久の愛を誓おう﹂ ﹁│││││私の心に嘘偽りは無く﹂ ﹁│││││私は彼女を愛し、彼女は私を愛した﹂ ﹁│││││彼女は全知全能、戦争と死を司る﹂ ﹁│││││私が愛した神は一人﹂ を飲んで見守っていた。 その姿を十六夜たち問題児たち。そして白夜叉ちゃんたちも固唾 俺は拗ねるオーミの姿を想像しながら︻永久の愛︼を発動する。 ﹁十六夜に言われなくてもそうするよ﹂ 恐らくだが⋮⋮拗ねているだろうから。 逢うのは十七年ぶりという事になるのだが⋮⋮苦笑いが浮かぶ。 !! !! ﹁│││││召喚⋮⋮︻オーディン︼﹂ 96 ! !! 長い呪文を詠み終えた俺の回りに光輝く魔法陣が広がった。 その魔法陣からは光が立ち上ぼり、頭上に収束していく。 照らすその光は優しく⋮⋮俺が転生時に感じた、オーミの光のよう だった。 懐かしい暖かさに包まれ、安心感が産まれる。 │││││刹那、頭上の光が爆発した。 辺りに眩い閃光が弾け、俺たちの視界は光で染められる。 しばらくしてやっと視界が戻ってくると、魔法陣は消え、頭上の光 も無くなっていた。 97 │││││しかし、そのかわりに。 美しい白髪の、俺が愛する少女がそこにいた。 少女│││││オーミは閉じていた目を開くとこちらをニコリと 笑う。 ﹁お久しぶりですね⋮⋮夜鶴⋮⋮﹂ ﹁うん。久しぶりオーミ⋮⋮﹂ 笑っているオーミの瞳には涙があった。 俺は傍に寄るとその涙を優しく拭う。 ﹁やっと⋮⋮やっと逢えました⋮⋮﹂ ﹁ごめんねオーミ⋮⋮凄く、遅くなっちゃったよ⋮⋮﹂ ﹁謝らないでください⋮⋮。 ﹂ 今 は ⋮⋮ 貴 方 に ⋮⋮ 夜 鶴 に 逢 え た だ け で ⋮⋮ 幸 せ な ん で す か ら ⋮⋮っ ﹁⋮⋮俺も幸せだよオーミ﹂ 何故だろうか、その笑みを見た瞬間、俺の頬にも涙が伝う。 涙を流していたオーミは俺に満面の笑みを向けてくれた。 ! 俺とオーミは既に周囲のことは視界に入れておらず、ただ愛しい者 を見ることに専念していた。 抱き合い、互いの身体を触れ合わせ、その存在を確認する。 ﹁大好きです⋮⋮夜鶴﹂ ﹁大好きだよ⋮⋮オーミ﹂ どちらからともなく自然と、そう呟き合うと、お互いに見つめ合う。 そして│││││ひとつのついばむようなキスをした。 その時に感じた甘い香り。 それを俺は生涯忘れることは無いだろう⋮⋮。 │││││この行為を見ていた十六夜たちがどんな反応を示して いたのかは皆様のご想像にお任せしよう⋮⋮│││││ 98 ∼神様だそうですよ Side 夜鶴 ﹁んん゛っ ∼ とらしく咳払いをしながら話し掛けてきた。 俺とオーミが互いの久しぶりの再会を喜んでいると、十六夜がわざ ? ﹂ ﹁⋮⋮じゃあ、あんまり強く無いの ﹂ この話をきいた十六夜は考えるように顎に手を置き、瞳を閉じる。 そしてこの娘がお爺さんから︻オーディン︼の名を継いだんだ﹂ この娘のお爺さんが︻初代オーディン︼。 ﹁そのままの意味だよ。 りが収まったのか俺の言葉に疑問を投げ掛けた。 先程は俺たちのキスを目撃して赤面していた久遠さんが、顔の火照 ﹁︻二代目︼っていうのは、どういうことかしら﹂ ⋮⋮でもまぁ、彼女は︻二代目︼だけどね﹂ ﹁うん。この娘が︻オーディン︼だよ。 周りを見れば、顔を赤くする者、生暖かい視線を送る者などがいた。 そう言う十六夜の顔にはニヤニヤとした笑みが貼り付いている。 のか ⋮⋮おい夜鶴。その白髪の美少女が︻オーディン︼ってことでいい !! ﹁よ、夜鶴⋮⋮そ、その⋮⋮止めて下さい⋮⋮よぉ⋮⋮﹂ というので、恥ずかしくなったのかその頬をほんのりと赤く染める。 オーミは、気持ち良さそうな顔をしながらも今更十六夜たちの前だ さらさらの白髪は、俺の手を止めることなく流れていく。 俺はオーミの頭を撫でながらそう伝えた。 だからこそ主神である︻オーディン︼の名前を継げたんだ﹂ 彼女は︻初代オーディン︼よりも強い。 ﹁いや、むしろ強いよ。 │││││しかし、それは違う。 確かに名前をただ継いだのであれば弱いと思われるのも納得だ。 春日部さんはオーミを見て興味津々に言った。 ? 99 ? そう言いながら俺から逃げないのを見ると、やはりそれは口だけ で、本心は離れたくないのだろう。 ⋮⋮この愛らしさ、誰かに語りたいと思う程である。 ﹁⋮⋮なぁ夜鶴。 その白髪娘の名前は何なんだ 名があるはずだろ ﹂ ︻オーディン︼って名前は継いだ、ってことはそれ以前の⋮⋮そう、真 ? ﹂ ﹂ 長い間貯めた割には随分と普通のことをかっかっか と笑い、口元 ﹁│││││うむ、この箱庭におるオーディンとは全くの別人じゃな に見つめた。 そういった白夜叉ちゃんはオーミに近づいてまるで鑑賞するよう ﹁それにしても彼女がオーディンかのぅ⋮⋮﹂ どうやら、疑問ができただけだったようだ。 海へ旅立って行った。 十六夜はその名前を聞くと再び顎に手を置くと瞳を閉じて思考の ﹁︻オーミ︼か⋮⋮確か︻オーディン︼の呼び名のひとつだったな⋮⋮﹂ ケ ニ ン グ 神々の中では︻最高なモノ︼という意味を持つ名前だよ﹂ ﹁⋮⋮彼女の名前は︻オーミ︼。 とが出来なくなってしまう。 その仕草がなんとも可愛く、俺はオーミの頭を撫でる手を止めるこ たのかコクリと小さく首を縦に動かした。 オーミに向かって短い言葉で許可を求めると、それを理解してくれ ﹁⋮⋮イイかい オーミを見ながら口を開いた。 て、見逃す事ができなかったのか、今まで閉じていた瞳を開いて俺と 十六夜は自らの考えが纏まったのか、はたまたただ疑問が出てき ? を扇子で隠しながらそう言う白夜叉ちゃん。 100 ? ﹁く、黒ウサギも1度だけお会いしたことがありますが⋮⋮全く違う ! ! 雰囲気を纏っていらっしゃいますし⋮⋮白夜叉様の言う通りだと思 います⋮⋮﹂ 黒ウサギもオーミを見つめながらそう言った。 やはり、オーミはこの世界のオーディンと同一という訳では無いら しい。 ﹁この世界のオーディンという存在に会ってみたいですね⋮⋮﹂ ﹁なら、オーミに時間が出来た時にでも二人で行こうか。 俺も気になってきたからね﹂ ﹁はい♪ ふふふ♪これで楽しみが出来ましたね♪﹂ 嬉しそうに笑うオーミを抱きしめたい衝動に駆られつつも、周りの ことも考え、今回は自重して頭を撫でる手を少し強くするだけに留め た。 ﹁⋮⋮くすぐったいですよぉ⋮⋮♪﹂ ﹂ 101 そう言いつつ撫でられる手に頭を寄せるオーミは人懐っこいネコ ﹂ のようで、さらに愛らしさを感じさせる。 │││││閑話休題。 ﹁所であなた方は何方なのでしょうか 口にする。 ﹁取り敢えず、オーミから皆に自己紹介したらどうかな 知らない人に名前を訊ねる時は自分からっていうでしょ ﹁⋮⋮それもそうですね。 では│││││初めまして皆様方。 現在は此方に夜鶴によって顕現していますが、私自身やらねばなら 継いだ﹃二代目﹄の︻オーミ︼と申します。 私は、北欧神話における主神である︻オーディン︼の名と位を受け ? ? オーミは今まで口にしなかったが、ずっと思っていたであろう事を ? ない仕事などがありますので、此方と︻神界︼を往き来しますが宜し くお願いします﹂ ペコリとお辞儀をするオーミ。 それを見た十六夜たちもそれぞれ自己紹介を始めた。 ﹁ヤハハ。俺は逆廻十六夜だぜ白髪ロリ。 見たまんま粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なの ﹂ ﹂ ﹂ で、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれるとありがたい ぜ主神様 ﹁私は久遠飛鳥よ。 貴女とは仲良くしたいわ。 出来れば私と友達になってくれないかしら ﹁⋮⋮私は春日部耀。 私もあなたと友達になりたいな⋮⋮駄目、かな⋮⋮ 十六夜は笑いながら、久遠さんは微笑みながら、春日部さんは首を こてんと横に傾けながら、各々の自己紹介を追える。 ﹁えっと⋮⋮分かりました、逆廻さん。 出来るだけ考えてみますね ﹂ 始者の眷属であるの黒ウサギと申します 今後とも宜しくお願い致しますっ ! ! ﹁わ、私はコミュニティ︻ノーネーム︼所属、そして此処︻箱庭︼の創 今後とも御贔屓にして頂けると助かるのじゃ﹂ まさか、異世界の主神殿と逢えるとは光栄だ。 昔は︻白き夜の魔王︼と呼ばれておった。 私はコミュニティ︻サウザンドアイズ︼幹部の白夜叉じゃ。 ﹁⋮⋮次は私の番のようじゃな。 んが口を開く。 たちの方に視線を向けると、意味を汲んでくれたようで、白夜叉ちゃ そして今度は問題児たちの自己紹介が終わったため、白夜叉ちゃん オーミは3人の自己紹介に返事を返しながらニコリとわらった。 此方から頼みたいくらいですね♪﹂ 久遠さんと春日部さんの申し出は私も嬉しいです。 ? 102 ? ? ? ﹁白夜叉さんに黒ウサギさんですね 此方こそ宜しくお願いします﹂ 私に対してそんなに畏まらなくて良いですよ ﹁│││││皆さん。 頭を上げたオーミは皆を見回すと口を開く。 還すオーミ。 白夜叉ちゃんと黒ウサギの自己紹介のあとにはペコリとお辞儀を ? ﹂﹂﹂ が⋮⋮今日はこのあたりで失礼します。 まだ︻神界︼での仕事が残っていまして⋮⋮。 約束ですよ ? そして、俺と同じ目線まで浮かび上がり│││││ してくる。 そう言ったオーミは何処か小悪魔めいた表情を浮かべて俺に密着 それじゃぁ、そのお返しに│││││﹂ ﹁ふふふっ♪それは楽しみです♪ ﹁あぁ。すぐにでも喚ぶよオーミ﹂ 悲しそうな、残念そうな、そして寂しそうな表情のオーミ。 │││││夜鶴またいつでも呼んで下さいね ﹂ まだ皆さんと親睦を深めるために此処に居たいのは山々なんです ﹁皆さんすみません。 巨大な魔法陣を展開した。 感謝を述べたオーミは、ふぅ、と一息吐くと、いとも簡単に足元に たオーミ。 間髪入れずに二つ返事を返してくれた十六夜たちを優しく見つめ ﹁ありがとうございます皆さん﹂ ﹁わ、分かりました﹂ ﹁了解じゃ﹂ ﹁﹁﹁勿論 しいです﹂ 宜しければ私とは︻オーミ︼という一個人として接して頂けると嬉 だの名前ですから。 ︻オーディン︼なんていう大層な名前を継ぎましたがそんなものはた ? ? 103 !! ﹁│││││ん⋮⋮んぅ⋮⋮はむ⋮⋮ちゅ⋮⋮ぷはぁ ﹂ 舌の絡み合い、唾液の交わる音が蠱惑的で、周りに十六夜たちがい して来た。 │││││俺の頬に手を当て、キスを、深い絡み合うようなキスを ! る。 ・ ・ ・ それとも10分 ・ ・ ﹁⋮⋮ぷはぁ⋮⋮お、オーミ⋮⋮ ﹂ ? 見つめながら口を開く。 ﹂ ﹁⋮⋮オーミ⋮⋮覚えておきなよ⋮⋮ ﹁し、知りませーん ﹂ その言葉を聞き、何処か負けたような気分になった俺は、オーミを 慌てる夜鶴も⋮⋮良いですね♪﹂ ﹁ふふふっ♪ 色々な意味で慌てる俺にオーミは満足そうな表情を浮かべていた。 !! オーミの姿は消えて行ったのだった。 そのような言葉を残して、足元の魔法陣から発せられる輝きと共に、 俺の声音にビクンと身体を震わせたオーミであったが、慌てつつも ! 104 るのも忘れさせられそうな、そんな⋮⋮キス。 1分 ? 時間の感覚も忘れてしまいそうになりながら、俺とオーミは離れ ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹁夜鶴たちって見た目によらず自重しないんだな﹂ 十六夜はオーミが帰った瞬間俺にニヤニヤしながら近づいて来る。 ﹂ ちなみに女性陣は顔を真っ赤にしているのだが唯一白夜叉だけは 良いものを見たと楽しそうに笑っていた。 ﹁なんだい ﹂ その見た目によらずってどういう意味かな ﹁そのまんまの意味だぜ 見た目が超絶美少女︵笑︶の夜鶴くん ﹁⋮⋮ま、厨二病な﹃痛よい﹄くんよりマシだから良いかな﹂ 俺は半眼で十六夜をジトーっと睨みながらそう言う。 しかし、十六夜も負けるつもりは無いようで、ダメージを負いなが らも反論を口にする。 エ イ ター ﹂ ﹂ ﹁いやいや、︻ギフトネーム︼が厨二病な夜鶴に言われたく無いな﹂ コード・アンノウン リ ﹁︻正 体 不 明︼よりマシだと思うよ ク ﹁︻創造者の娯楽︼よりマシだろ ? と十六夜。 始めた。 ﹁⋮⋮やるか夜鶴 ﹂ ﹁⋮⋮十六夜こそやるの ﹂ 俺と十六夜は正に一触即発の雰囲気を醸し出しながら睨み合いを そして、それが引き金となったのだろう。 ﹁﹁⋮⋮はぁ ﹂﹂ 全く同時のタイミングで互いのギフトネームについて口にする俺 ? そして勝負開始│││││ 十六夜はファイティングポーズ、俺は足を肩幅に広げた。 互いに闘いやすいように構える。 ? ? 105 ? ? ? ? ? ﹁こんのぉ⋮⋮お馬鹿様方がぁぁぁぁぁあっっ を叩き抜いた。 ﹁なんなのですかっ ﹂ そんなくだらない理由で同士内で喧嘩しないで下さいっ ﹂ ﹁ヤハハ。冗談に決まってるだろ │││││なぁ夜鶴 ﹁うん。まぁ、確かに冗談だよね ﹂ ﹂ ﹂ │││││というところで黒ウサギがハリセンで俺と十六夜の頭 !!!! ﹁当然だ。次は必ず渾身の大舞台で挑んでやる﹂ 次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの﹂ ﹁あら、駄目よ春日部さん。 また遊んでくれると嬉しい﹂ ﹁⋮⋮今日はありがとう。 し、別れの挨拶のようなものを行う。 ゲーム用のフィールドから、︻サウザンドアイズ︼の店の前に移動 になった。 俺たちは用事も終わり時間も時間なのでコミュニティに帰ること │││││閑話休題。 何とも苦笑いの込み上げてくる悩みである。 ⋮⋮俺も十六夜たちに影響を受け始めてるなぁ⋮⋮。 黒ウサギの叫び声、そして再びハリセンの音が木霊した。 ﹁冗談に聞こえないのですよぉぉぉぉお │││││ねぇ十六夜 ? ? ? ﹁ふふ、よかろう。楽しみにしておけ 106 !!!!! ? !!!! !! │││││ところで﹂ 真剣な顔で白夜叉ちゃんは此方を見る。 その眼に先程までのお気楽さなど存在しない。 ﹁今更だが、1つだけ聞かせてくれ。 それなら聞いたぜ﹂ おんしらは自分達のコミュニティの現状をよく理解しておるか ﹁ああ、名前とか旗の話しか ﹂ ? ﹂ ﹁そうよ。 加入するのだな ﹂ ﹁⋮⋮⋮では、おんしらは全て承知の上で黒ウサギのコミュニティに ﹁勿論聞いてるわよ﹂ ⋮⋮ ﹁ならばそれを取り戻す為に︻魔王︼と戦わねばならんことも⋮⋮か ﹁まぁ、聞き出したというのが妥当な言葉だけどね⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮何 ﹂ ﹁あら、何かしら ﹂ ﹁⋮⋮そこの娘二人⋮⋮に言わねばならぬことがある﹂ 固めだけを閉じてじっと、こちらを見つめる。 扇子を開いて口元に寄せる白夜叉ちゃん。 それでも魔王と戦うことを望むというなら止めんがのぅ⋮⋮﹂ ろう。 ⋮⋮まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだ ⋮⋮無謀というか、勇敢というか。 ⋮⋮全く、若さゆえのものなのか⋮⋮。 ﹁︻カッコイイ︼で済む話ではないのだがのう⋮⋮。 十中八九、久遠さんの心構えについてを考えてのことだろう。 ちゃん。 久遠さんの言葉になんとも言えないような表情を浮かべた白夜叉 ︻打倒魔王︼なんてカッコイイじゃない﹂ ? ? ・ ・ を睨む。 ﹁﹁っっ ﹂﹂ 107 ? 白夜叉ちゃんは開いた扇子をわざわざ音がなるように閉じて、2人 ? !!!?? ・ ・ 久遠さん、春日部さんの両名は白夜叉ちゃんから発せられたその殺 気に目を見開いて身体を硬直させた。 その殺気は一瞬のもので、直ぐに消え去ったが、白夜叉ちゃんの表 情は優れず、ため息を漏らした。 ﹁今の殺気で動けぬようになるか⋮⋮。 ・ ・ ・ うむ。これは予想やら勘などという生易しいものではない│││ ││おんしらは確実に死ぬぞ⋮⋮﹂ 白夜叉ちゃんの予言めいた言葉に久遠さんも春日部さんも何も言 えなくなっていた。 元魔王である白夜叉の言葉には信じなければならないと思わせる 程の圧倒的雰囲気があった。 ﹁︻魔王︼の前に様々なギフトゲームに挑んで力をつけろ。 未知数な十六夜や規格外の夜鶴はともかく、おんしら二人の力では 魔王のゲームにはほぼ100%生き残ることはできん。 108 嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しい ものだ⋮⋮。 ⋮⋮まぁ、夜鶴さえ居ればなんとかなる気しかせんがのぅ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ご忠告、ありがとう。 肝に⋮⋮銘じておくわ。 │││││次は貴方の本気のゲームに挑みに行くから覚悟してお きなさい﹂ ﹁⋮⋮ふふ、望むところだ。 私は三三四五外門に本拠を構えておる、いつでも遊びに来い。 ﹂ ﹂ ⋮⋮ただし│││││ゲームには黒ウサギをチップにかけてもら うがのぅっ ﹁絶対に嫌ですっ 私のコミュニティに所属すれば生涯遊んで暮らせると保証するぞ ﹁つれない事を言うなよぅ黒ウサギぃ⋮⋮。 先程まで久遠さんたちを脅していた姿とは全く別物である。 ちゃん。 黒 ウ サ ギ の 全 力 の 拒 否 に 拗 ね た 子 供 の よ う な 表 情 を し た 白 夜 叉 !! !! ﹂ ﹁三 食 首 輪 付 き っ て ソ レ も う 明 ら か に ペ ッ ト 扱 い じ ゃ な い で す か っ 今なら三食首輪付きの個室も用意するしのぅ﹂ ? ﹂ ﹂ ? 表情。 ﹁さぁ⋮⋮ それはどうだったかな それは己が力の足りなさ故に、まともな戦いのできなかった武人の 白夜叉は悔しそうな表情になった。 う ﹁私は本気だったのに対しておんしはまだ一割も出しておらぬのだろ ﹁それは光栄だね﹂ ぬだろうよ﹂ あれほどまでに︻遊ばれた︼のは後にも先にもおんし以外にはおら 今日は見事な︻業︼の数々だった。 ﹁そして⋮⋮夜鶴。 ら。 怒る黒ウサギですらその顔に無意識の笑いが浮かんでいるのだか で家族のようだった。 怒る黒ウサギを見ながらケラケラと笑う白夜叉ちゃんの姿は、まる !! 地を目指したのだった。 俺たちはそんな会話を交わし、コミュニティ︻ノーネーム︼の本拠 ﹁そうするよ白夜叉ちゃん﹂ 娯楽程度なら提供してやれるからの﹂ おんしも暇が出来れば私を訪ねるとよい。 ﹁ふふ⋮⋮まぁ良いわ。 俺ははぐらかすように手を振った。 ? 109 ? ∼コミュニティだそうですよ Side 夜鶴 │││││二一零五三八零外門。 ∼ そこにコミュニティ︻ノーネーム︼の本拠地があった。 入り口である門は確かに立派ではあるものの、旗が無いからか、何 処か寂しさを感じる。 ﹁此処が我々のコミュニティの本拠でございます。 しかし、我々の活動する本館まではしばらく歩かなければなりませ んが御了承下さい。 ⋮⋮この辺りはまだ戦いの名残が残っていますので⋮⋮﹂ 黒ウサギは寂しそうな表情を一瞬浮かべた。 ﹂ 戦いの名残という言葉に俺たちは反応する。 ﹁戦いの名残って言うのは魔王との戦いか ﹁ちょうど良いわ。 ﹁⋮⋮私も興味がある﹂ 箱庭最悪最凶の天災が残した爪跡を見せて貰おうじゃないの﹂ ? 問題児たちの言葉になんとも言えないような表情をしながら、扉を ゆっくりと開けた黒ウサギ。 そこに広がっていたのは││││ ﹂﹂﹂ 110 ? ││││荒れ果てた荒野と言っても過言ではない一面の廃墟だっ た。 ﹁﹁﹁なっ ﹁これは⋮⋮酷いね⋮⋮﹂ ?!!! 自分の予想以上だったのか目を見開く十六夜。 その異様さに立ち尽くす久遠さん。 荒れ果てた地を見て開いた口が塞がらない春日部さん。 三者三様の様子に黒ウサギは重い雰囲気を出している。 十六夜がスッと目を細めると、側にある木製の建物の残骸に近づい て行く。 そして、地面に落ちている木製の囲いを手に取った。 │││││ササァー⋮⋮。 乾いた音をたてながら十六夜の手にある囲いは崩れていった。 ﹂ ﹁⋮おい黒ウサギ⋮⋮その︻最悪の魔王︼つう奴とのギフトゲームが あったのは今から何年前の⋮⋮いや、何百年前の話だ⋮⋮ ﹁⋮⋮僅か三年前でございます⋮⋮﹂ ⋮⋮三百年前の間違いじゃないのか ﹂ ⋮⋮軽く見積もっても二百年以上は経過してる筈なんだがな⋮⋮ この風化しきった街並みが三年で完成しただと ﹁ハッ⋮⋮それは面白いな、いや、マジで⋮⋮本気で面白いぞ⋮⋮。 ? いありません⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮なんてデタラメな⋮⋮ ﹂ ﹁⋮⋮ 例 え ど ん な 力 が ぶ つ か っ た と し て も、こ ん な 壊 れ 方 は あ り え ねぇ⋮⋮。 ⋮⋮断言できる、木造の崩れ方なんて自然崩壊したとしか思えない ぞ⋮⋮﹂ ﹁ベランダにテーブルとティーセットがそのまま出てるわ⋮⋮。 ⋮⋮これじゃまるで生活していた人間が突然﹃消えた﹄みたいじゃ ない⋮⋮﹂ ﹁動物の気配⋮⋮いや、生命の気配が感じない⋮⋮。 ﹂ こんな廃墟なのに動物が寄って来ないなんて⋮⋮。 まさか⋮⋮土地が死んでるの⋮⋮ 辺りに散らばる数々の残骸は僅か三年で風化したなどと言われて ? 111 ? ﹁いいえ、この状況は三年前に襲来した︻魔王︼の力による惨状で間違 ? 冷や汗を流しながら久遠さんは事の状況について口にした。 ! も到底信じれるようなモノではなかった。 ︻魔王︼の力がどれ程強大か分からせるには十分である。 ﹁⋮⋮魔王とのゲームはそれほど未知数の戦いだったのでございます ⋮⋮。 ⋮⋮彼らがこの土地を取り上げなかったのは︻魔王︼としての力の 誇示と一種の見せしめでしょう。 ⋮⋮彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と 逆らえないように屈服させます。 その証拠に僅かに残っていた仲間も心を折られ、 コミュニティを 去りました⋮⋮﹂ 黒ウサギは悲し気にそう語った。 確かにこの状況を見せ付けられれば普通の者ならぽっきりと心を 折られるだろう。 │││││しかし、十六夜たちは違った。 ⋮⋮ 私は﹃弱い﹄わ⋮⋮ ﹂ ⋮⋮でも、だからどうしたと言うの むしろ、私はやる気が出てきたわ ﹁私も﹃弱い﹄よ⋮⋮。 だけど、私は負けたくない。 私は強くなってたくさんの友達をこの手で守りたい それぞれ高らかにそう叫んだ。 刺激的なことだったのだろう。 ﹁⋮⋮皆様⋮⋮﹂ ﹂ 黒ウサギはそんな十六夜たちを見て涙を浮かべていた。 112 ﹁︻魔王︼⋮⋮か⋮⋮。 ⋮⋮ハッ、いいぜいいぜいいなオイ ﹂ !!! ﹁⋮⋮ こ の 風 景 を 見 せ ら れ た ら 嫌 で も 認 め な け れ ば な ら な い よ う ね 想像以上に面白そうじゃねえか︻魔王︼様って奴はよぉっ !!! ! いつもは大人しい春日部さんが叫んだのだ。それほどに彼らには !! !! これが復興への狼煙となる希望が出たからだろう。 ﹂ ﹂ ⋮⋮なら俺はその狼煙を確実なるモノにしよう。 ﹁⋮⋮ねぇ黒ウサギ ﹁は、はいっ。な、何でしょうか る。 ﹂﹂﹂ じたようだ。 ﹁な、何でも致します ・ ・ ・ だから⋮⋮だからお願いします ・ ﹂ !! 示する。 ﹁なら黒ウサギ。 ﹁﹁﹁なっ ﹂﹂﹂ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ⋮⋮ここで今すぐ││││死んでくれないかな ・ ﹂ ﹂ 俺は黒ウサギを見ると、冷たい凍るような笑みを浮かべて条件を提 ﹁﹃何でもする﹄⋮⋮か⋮⋮﹂ か諦めた様な香りが気がかりとなるから⋮⋮。 黒ウサギから感じられるその︻敗者︼特有の⋮⋮無意識の内に何処 た。 すぐに戻しても別に良いのだが、俺はここでひとつ試すことにし 黒ウサギは深く頭を下げた。 この場所を元に戻して下さい夜鶴さんっ ! !! 黒ウサギはその目に少しの疑いがあるものの、俺の言葉に希望を感 ? ﹁﹁﹁ッッ ?!! 十六夜たちは俺を見ながら目を見開いている。 ﹁ほ、本当でございますかっ ﹂ ﹁│││││俺が此処を元に戻せるって言ったら⋮⋮どうする ・ 真面目な声色の俺に何かを感じたのか、黒ウサギは言葉を詰まらせ ? ? 淡々と黒ウサギに告げる俺。 ? 113 ?!!!?!!! ?!!! 十六夜たちはその言葉に声を上げた。 ﹂ そして、俺を睨みつけると口々に非難の言葉をあげる。 ﹁おい夜鶴⋮⋮。 お前言って良いことと悪いことがあるぞ⋮⋮ッ ﹂ ﹁夜鶴君私は貴方良い人だと思っていたのに⋮⋮。 最低ね⋮⋮ッ 久遠さんは冷たい目線で俺を見つめる。 ・ ・ ・ ・ ﹁ふふふ⋮⋮最低上等。 俺は今、黒ウサギと取引しているんだよ ﹂﹂﹂ 他の人が口を挟まないで欲しいなぁ⋮⋮ねぇ⋮⋮ ﹁﹁﹁⋮⋮ッッッ 威嚇の意味を込めて殺気を向ける。 ﹂ 春日部さんは三毛猫をその胸に抱きしめ強い口調でそういった。 ﹁⋮⋮夜鶴と友達になったのが私の一生の恥だよ⋮⋮ッ ﹂ 十六夜は鋭い視線を此方に向け、拳を握り締めている。 !!! ? なものだ。 ﹂ ﹁う ん。こ れ で 邪 魔 者 は い な く な っ た ね │ │ │ │ │ そ れ で ギ。 答えはなんだい 黒ウサ これは先程の白夜叉ちゃんの殺気とは比べ物にならない程に濃密 ? ? そして、未だに動けず悔しそうな表情を浮かべる十六夜たちの方を フトカード︼から取り出した。 そういった黒ウサギは身体を震わせながら一本の普通の短剣を︻ギ なら⋮⋮黒ウサギは喜んでこの身を捧げましょう⋮⋮﹂ 黒ウサギの身を捧げるだけでコミュニティを元に戻して下さるの ﹁│││││わ、分かりました⋮⋮。 えを聞く。 ちに軽く視線を移し、冷たい凍るような笑みを浮かべて黒ウサギに答 その場に足を縫い付けられたかのように動けなくなった十六夜た ? 114 !! !! !!!? 見つめて口を開く。 ﹂ ﹁⋮⋮皆様⋮⋮黒ウサギが大好きなこのコミュニティを⋮⋮そして大 切な同士たちを、どうか⋮⋮どうかお願い致します⋮⋮っ て突き刺す。 │││││ザクゥッ 鮮血が、その場に飛び散った⋮⋮。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹁│││││ごめんね、黒ウサギ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮夜鶴⋮⋮さん⋮⋮ く奪った。 ・ 俺はそういいながら、俺の手に突き刺さる短剣を黒ウサギから優し ・ 黒ウサギは瞳を閉じて短剣を大きく振り上げると自らの胸に向け ! そ の 短 剣 を 返 し て 頂 か な い と ⋮⋮ 黒 ウ サ ギ は 死 ね な い の で す よ 115 !! ? ⋮⋮ ﹂ 黒ウサギの目には涙が大量にたまっていた。そしてそれは、ダムが 決壊するかのように溢れ、頬を伝っていく。 ﹁黒ウサギ⋮⋮君は死ななくて良いんだよ⋮⋮ ﹂ ごめんね⋮⋮俺は君を試したんだ⋮⋮﹂ ﹁試⋮⋮した を流し、声を上げて泣いた。 ﹁怖かったんですよっ⋮⋮ 夜鶴さんが夜鶴さんじゃないみたいでっ⋮⋮ ﹁⋮⋮ごめん﹂ ﹂ ﹁黒ウサギはどんなことがあっても⋮⋮諦めたりしません⋮⋮っ ! すると、先程までは涙を流すだけだった黒ウサギが、更に大粒の涙 最後に黒ウサギの頭を撫でながらにっこりと暖かく笑う。 ら大切に想って⋮⋮﹃愛して﹄いるんだね⋮⋮﹂ 君は︻ノーネーム︼を、そしてたくさんの︻同士たち︼を心の底か │││││君の命を掛けた行動は誰にでも出来るわけじゃない。 だけどね、黒ウサギ。 ﹁口だけなら何とでも言える。 し訳なさそうな表情を浮かべた。 その姿を見た十六夜たちは俺の考えていたことを理解したのか、申 手からは血が滴る。 俺は手に突き刺さる短剣をズブリと抜いた。 命を掛けてまでコミュニティの復興を願うのかをね⋮⋮﹂ │││││だから、俺は君の︻覚悟︼を試させてもらった。 めてしまうんじゃないかと思ったんだ。 このまま行けばたった1度の大きな壁にぶつかっただけで君が諦 ⋮⋮君からは何処か諦めた様な香りを感じたからね⋮⋮。 ﹁そうだよ。 疑問の表情を浮かべる。 俺の言葉に殺気を収めたおかげでその場に膝をつく十六夜たちは ? ? !! !! 116 ? この身が例え果てても皆さんと⋮⋮戦うんです⋮⋮っ ﹂ ﹁ごめん⋮⋮本当にごめんね黒ウサギ⋮⋮﹂ ﹁ぅぅ⋮⋮うわぁぁぁぁぁん 黒ウサギは俺の胸で泣いている 俺はしばらく黒ウサギの頭を撫で続けた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 君は俺に︻覚悟︼を見せてくれた。 ﹁⋮⋮さぁ黒ウサギ。 そして、俺は泣き止んだ黒ウサギに目を移す。 たのだから。 ﹂ いくら黒ウサギを試す為とはいえ、余りにも下衆な態度をとりすぎ 謝る十六夜たちに俺は苦笑いしながら言った。 それに、俺も3人に殺気を向けて怖がらせちゃったし⋮⋮﹂ あれは俺が悪いんだからね⋮⋮。 ﹁いや、良いんだよ⋮⋮。 れた。 十六夜の表情には、何故気づかなかったのかという悔しさも読み取 その表情には心底申し訳無さそうなモノだった。 次々と謝ってくる十六夜たち。 ﹁私もごめんなさい⋮⋮夜鶴﹂ 夜鶴君の思いも考えも知らずにあんなこと言ってしまって⋮⋮﹂ ﹁私もごめんなさい⋮⋮ ﹁悪かったなあんなに威嚇しちまって⋮⋮﹂ しばらくして、十六夜たちが俺の方に歩み寄って来た。 ! お願いします夜鶴さん ﹂ だから今度は俺が君に│││││︻奇跡︼を見せる番だ﹂ ﹁は、はいっ !! 117 !!! その顔には、あのような態度をとった俺に対しての恐怖や拒絶、怨 !! みなどといった負の感情は見受けられない。 むしろ、その顔にはこの荒れ地を復活させる俺に対しての感謝や笑 顔が浮かんでいた。 彼女は⋮⋮黒ウサギは優しい⋮⋮優し過ぎるほどに⋮⋮。 ﹁じゃあ、始めようか⋮⋮﹂ ク リ エ イ ター ﹂ 十六夜たちが見守る中、俺は︻ギフト︼を発動させた。 ﹁︻創造者の娯楽︼発動。 クリエイト 作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 ︻創 造︼│││││ ガ イ ア・ オ ブ・ エ デ ン │││││︻神聖なる大地︼ 新たに作成された能力。 その効果はあらゆる大地に恵みを与え、俺の知識に存在する植物な どの自然を産み出すことだ。 │││││効果はすぐに現れた。 乾き、割れた大地はその姿を緑に覆われ、本来あるべき豊穣の大地 である姿を取り戻す。 辺りには木々も生え始め、その木には果実が実った。 しかし、まだ廃墟が残っている。 このままでは黒ウサギと約束した﹃元に戻す﹄とは言えなくなる。 クリエイト ノ ス ﹂ ﹁もうひとつ⋮⋮作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 ロ ⋮⋮︻創 造︼│││││ ク │││││︻時を司りし者︼ 連続して能力を創り出す。 次の能力は、その名の通り時間、時に関係する能力である。 効果は時間を巻き戻す、進める、停めるというふうに時に関するモ ノの操作。 俺は早速︻時を司りし者︼を使用し、眼前に広がる廃墟たちを元の 姿へと戻す。 118 ! ! レグレーション 効果範囲指定⋮⋮作用指定⋮⋮ ﹁│││││復活完了⋮⋮かな ﹂ そして最後に、意図的に流していなかった水を枯れた小川に流す。 ような美しさを取り戻したのだった。 辺りに散らばる残骸ですら、壊れる前⋮⋮いや、完成したばかりの すると、廃墟は光を放ち始め、その姿を変える。 ﹁⋮⋮時よ、戻れ│││││︻後 戻 り︼﹂ ? ﹁す、凄いのですよっ⋮⋮ 復活した建物も、自然をバックに映えている。 そこに広がるのは、青々と茂る草木たち。 ? すっ ﹂ こ れ は 以 前 の コ ミ ュ ニ テ ィ の 時 よ り も 遥 か に 豊 か に な っ て い ま !! ﹂ ﹁動物たちの気配がする⋮⋮ 凄いね夜鶴って⋮⋮ じる春日部さん。 冷や汗を流す十六夜、目を見開く久遠さん、目を閉じ動物たちを感 ! !! ﹁え、えぇ⋮⋮夜鶴君って実は規格外なのね⋮⋮﹂ あんな荒れ地から此処まで復活させるのかよ⋮⋮﹂ ﹁こ、こりゃスゲェな⋮⋮ 黒ウサギはとびあがりながら嬉しさを体で表現している。 !! 119 ? 三人は各々の俺に対しての意見を述べた。 ﹁⋮⋮夜鶴さん﹂ 黒ウサギから声を掛けられる。 ﹂ 振り向くとそこには、涙を流す黒ウサギがいた。 ﹁本当にありがとうございますっ ﹁良いんだよ黒ウサギ⋮⋮。 前に、俺は言ったよね 最底辺 名無し そして知らしめよう俺たち︻ノーネーム︼の名を 俺が腕を天に向かって高々と突き上げた。 すると、一本また一本と腕が突き上げられた。 ﹁ヤハハ ﹂ おもしれぇこというじゃねぇか夜鶴 その話俺も乗ったぁっ ﹁確かに素敵な話じゃない。 私も賛成よ夜鶴君﹂ ﹁私も賛成。 私も負けたくないから⋮⋮﹂ ﹁黒ウサギあとは君だけだよ ﹂ 俺はそういう十六夜たちを見て自然と笑みが溢れた。 ! ﹂ │││││だからどうしたんだい。 ﹁此処には十六夜が、久遠さんが、春日部さんが、そして⋮⋮俺がいる。 俺は十六夜たちに視線を移す。 むしろこれからだよ⋮⋮これから︻ノーネーム︼は出発するんだ﹂ │││││﹃全力を持って黒ウサギたちを助ける﹄って⋮⋮。 !! 返り咲こうじゃないか﹃最強﹄に 俺たちは決して負けない。 ? ︻ノーネーム︼の始動なのですよ ! 気な顔で。 ﹁Yes 黒ウサギも腕を天に向かって突き上げた。 ﹂ そんな俺たちの視線を受けてか、黒ウサギは涙を拭い、笑った勝ち 俺たちの視線は自然と黒ウサギに集められた。 ? 120 ? !! ! ? !! !! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹁さて、不知火さん⋮⋮いえ、夜鶴くん﹂ 久遠さん﹂ ﹂ 久遠さんが俺の方に腕を組みながら視線を向けてくる。 ﹁何かな ﹂ ﹁私たちは今日から切磋琢磨していく仲間なのよね ﹁勿論そうだよ ﹂ ﹁なら│││││十六夜くんだけ名前で呼んで私と春日部さんだけ苗 字で呼ぶのは他人行儀ではないかしら ﹁⋮⋮私もそう思う﹂ ﹁え、えっと⋮⋮﹂ ﹁耀の事を名前で呼ばないのかい ﹁そ、それは⋮⋮﹂ ﹂ ﹁そう言えば飛鳥も耀の事は苗字で呼んでるよね ﹂ そして、俺は今までの会話で思った事を口にする。 2人は何処か嬉しそうな雰囲気で笑う。 ﹁ありがとう夜鶴﹂ ﹁えぇ、そうしてくれると嬉しいわ﹂ じゃぁ、これからは飛鳥と耀って呼ばせて貰うよ﹂ ﹁ふふふ⋮⋮確かにそうだね⋮⋮。 とした目で見つめてそう言った。 久遠さんの隣からぬぅっと現れた春日部さんもこちらをジトーっ ? ? ﹁⋮⋮飛鳥⋮⋮ ﹂ な表情で見つめているのが視界に入る。 俺の視線から逃れるように横を向けば今度は耀が飛鳥を悲しそう ? ﹂ ? とても悲しそうな表情だが、耀は飛鳥から見えないような位置から ﹁⋮⋮呼んで、くれないの⋮⋮ ﹁あの⋮⋮えっと⋮⋮その⋮⋮﹂ ? 121 ? ? ? 俺に向かってサムズアップしているのを見る限り、アレは飛鳥をから かっているのだろう。 ﹂ ﹁そ、そんなことないわ﹂ ﹁じゃぁ⋮⋮呼んで⋮⋮ ﹁うぅ⋮⋮っ ? ﹂ ﹁きゃ⋮⋮っ よ、耀さん ﹂ ! 見ていた。 ﹁│││││百合ってのも悪くねぇな ﹂ ﹂ ! ﹁│││││黒ウサギ ﹂ しかし当の本人はカラカラと笑っており、何のそのの様子である。 黒ウサギのハリセンによる激しいツッコミが十六夜に炸裂。 ﹁何変な事を抜かしているんですかこのお馬鹿様ッ ! そんな2人を十六夜は顎に手を当てながらうんうんと唸りながら 耀の抱きつきに耐えきれず尻餅をつく飛鳥。 ﹁名前で呼ばれただけだけど凄く嬉しい ﹂ 耀もそれに満足したのか、嬉しそうに飛鳥に抱きついていた。 顔を真っ赤にして少し俯きながら耀の名前を呼ぶ飛鳥。 ﹁よ、よ、よ、よ⋮⋮耀、さん⋮⋮﹂ ﹁よ⋮⋮ そ、その⋮⋮よ、よ、よ⋮⋮﹂ ! ?! ! 落ち着いた所で、俺たちが水樹の苗を植えるために巨大な貯水池へ !! 122 ? ﹂ と来ると、1人の少年が慌てながら黒ウサギの名前を呼びながら駆け 寄ってくる。 ﹁なんで自然が⋮⋮建物が元に戻ってるの あの死んだ土地を復活させたのですか ﹂ !? ﹁ありがとうございました その話を聞いた少年は俺に向かって深く頭を下げた。 ♪﹂ 復活させて下さったのでこのコミュニティの水問題は万事解決です ﹁それに、水樹の苗では補えない居住区の水も夜鶴さんが小川までも 黒ウサギは嬉しそうに話を続ける。 俺の方を見ながら目を見開いて驚く少年。 ﹁なっ ﹁ジン坊っちゃんそれは、夜鶴さんが戻してくれたのですよ♪﹂ 俺が理由を説明しようとすると、黒ウサギがご機嫌に答えた。 どうやら少年が慌てている原因は俺の行ったことらしい。 ?! ﹁良いよ。 がとうございました ﹂ このコミュニティを代表して御礼を申し上げます⋮⋮本当にあり ! ﹂ ? ﹁ジンくんだね 齢十一になったばかりの若輩ですが宜しくお願いします﹂ います。 僕はこのコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルと言 ﹁そう言えば自己紹介していませんでしたね⋮⋮。 そう言えば君は⋮⋮ 俺もこのコミュニティの一員だからね。 !! を見てるよ ﹂ さて、自己紹介もそこそこに⋮⋮ほら、子供たちが興味津々で此方 俺は不知火夜鶴だよ。 ? ﹁黒ウサギのおねーちゃんおかえり ﹂ 黒ウサギはそれに気がついたのか手招きをする。 供たちがいた。 俺が視線を移せば、そこには先程から木の影から此方を見ている子 ? !! 123 ?! ﹁ねぇねぇ 強いの ﹂ 新しい人たちって誰 ﹁かっこいいの ﹂ ?! ﹂ とても強くて可愛く、格好良い人たちですよ 黒ウサギの言葉でササッと並ぶ子供たち。 皆にも紹介しますから一列に並んで下さいね ﹁Yes ふふふ⋮⋮可愛いなぁ⋮⋮。 黒ウサギにキラキラとした瞳を向ける子供たち。 !? ﹁ココに居るのは子供達の年長組です。 確かに黒ウサギがここの中核なのだとわかる。 その風格は長年︻ノーネーム︼を支えて来たからだろう。 飛鳥の提案を一刀両断した黒ウサギ。 ﹁それでは組織は成り立ちません﹂ ﹁あら、私はフランクにしてくれてm﹁駄目です﹂⋮⋮﹂ ません﹂ 活を支え、励まし、時には彼らのために身を粉にして尽くさねばなり ギフトゲームに参加出来ない者はギフトゲームプレイヤーの私生 コミュニティを支えるのはこの御四方のような方々です。 この御四方は皆、強力な︻ギフト︼を持っていらっしゃいます。 さんです。 ﹁右から、逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、不知火夜鶴 すると、黒ウサギからわざとらしい咳払いが聞こえてくる。 三人とも子供が苦手なようだ。 そうにしていた。 十六夜は面倒臭そうに、飛鳥はその数に圧倒されたように、耀は嫌 い表情をしていた。 ふと、横にいる十六夜たちを見てみると│││││なんとも言えな か⋮⋮守ってあげたいという気持ちが湧いてくる。 こういった小さい子たちを見ていると保護欲と言うかなんという けた子供がいた。 その数は二十人程だ。その中には狐や狸、猫や犬といった獣耳をつ ! !? ! 皆、ゲームには出られませんが見ての通り獣のギフトを持っている 124 ! !! 子もいますから何か用事を言いつけるときにはこの子達を使ってく ださい。 ﹂ みんなもそれでいいですね ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁よろしくお願いします ﹁みんな無理はしないでね ﹂ 俺が子供たちに話し掛けると、 夜鶴お姉ちゃん !! ? を開く。 ﹁み、皆 ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ ﹂ !! ﹁大丈夫だよ黒ウサギ。 別に気にはしていないしね ⋮⋮みんなも呼びやすい呼び方で良いからね ﹂ 自己紹介も終りましたし、水樹の苗を植えましょう そして、柏手をひとつ打つと十六夜の方を向いた。 ﹁さてさてっ ! 俺が笑顔でそう言うと、安心したのか黒ウサギは胸をなでおろす。 ?? ? おそらく俺が不機嫌になったと思ったのだろう。 あわあわと、困ったかのように動き出した黒ウサギ。 ﹁え、えっと⋮⋮あのぅ⋮⋮﹂ 全員が心底驚いたような顔をした。 ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁ええっ 夜鶴さんは男の方ですよ すると、黒ウサギが慌てたように子供たちに言い聞かせるように口 つい乾いた声で笑ってしまった。 ﹁あ、あははは⋮⋮﹂ 俺の見た目からだとやっぱり女と間違われるんだね⋮⋮。 元気に俺の性別を間違えてくれた⋮⋮。 ﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁はいっ ﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂ その代わり飛鳥と耀が子供が苦手なことが確定したね⋮⋮。 おっと⋮⋮十六夜は子供が苦手な訳じゃ無いみたいだ⋮⋮。 ﹁そ、そうね⋮⋮﹂ ﹁ヤハハ、なかなか元気じゃねぇか﹂ とても元気で、きらきらとした目をしている。 子供たちが一斉に叫んだ。 ? ! 125 ! ! ?!! !! ﹂ 黒ウサギが台座に根を張らせるので十六夜さんの︻ギフトカード︼ から出していただけますか ﹁おう﹂ ﹂ 。 。 ?! なにソレ超欲しい ﹁︻龍の瞳︼ ﹁さて、何処でしょうか ﹂ その時、十六夜が瞳を輝かせて黒ウサギに言った。 耀の抱える三毛猫からの問いに黒ウサギがそう返す。 がそれも魔王に取り上げられてしまいましたから⋮⋮﹂ 元々は︻龍の瞳︼を水珠に加工したギフトが設置してあったのです ﹁はいな、最後に貯水池を使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。 ﹁にゃ∼ ﹁大きな貯水池だね⋮⋮ちょっとした湖ぐらいあるよ﹂ を出して黒ウサギに渡す。 十六夜は︻ギフトカード︼を取り出すと、そこから素早く水樹の苗 ? !! 何処に行けば手に入るんだ 黒ウサギ ? 龍と戦いたかったんだろうなぁ⋮⋮。 ﹂ ﹁それでは、苗の紐を解いて根をはります 十六夜さんは水門を開けてください ﹁あいよ﹂ ﹁ちょ 少しは待てって ! そのあと、黒ウサギは水量を見て嬉しそうに口を開いた。 あれには巻き込まれたく無いかな⋮⋮。 そのほんの数秒先に今まで十六夜の居た場所に激流が通過した。 叫びながら十六夜は貯水池から石垣まで跳躍した。 ⋮⋮今日はもう濡れたくねぇんだよっ ﹂ まさに激流のような水に襲われそうな十六夜。 すると、大波のような水が十六夜に向かって流れていく。 十六夜は軽く了解すると、貯水池に下りて水門を空ける。 ! ! そんな黒ウサギを子供のように恨めがましく睨む十六夜。 黒ウサギはツーンとそっぽを向いた。 もし知っていても十六夜さんだけには絶対に教えません﹂ ? ! 126 ? ! !! ﹂ ﹁凄いです よっ ﹁生活以外 ﹂ これなら水樹の水だけでも生活以外の水が使えるのです 水産業か何かか ﹁いえ、どちらかといえば農作業の方が近いかもしれません。 ⋮⋮例えばですが︻水仙卵華︼などの水面に自生する花のギフトを ﹂ 繁殖させればギフトゲームに参加せずともそれを売ればコミュニ ティの収入になります。 これなら皆にも出来ますし⋮⋮﹂ ﹁ふぅん⋮⋮おいその︻水仙卵華︼ってなんだ御チビ ﹁確かにそれは気になるね﹂ ばないぞ ﹁⋮⋮言っておくが、俺は俺自身が認めない限り︻リーダー︼なんて呼 よりも早く十六夜が口を開いた。 その説明のあと、ジンくんは十六夜に何かを言おうとしたが、それ 気持ちを切り替えたのか丁寧に説明してくれた。 ジンくんは十六夜の︻御チビ︼という呼び方に驚いたようだったが、 ? ﹂ ? ミュニティを抜けるぞ がつまらないことになってたら、迷いなく、そして躊躇いなく俺はコ │││││だが、もし俺が︻義理︼を果たした時にこのコミュニティ しな。 箱庭の世界なら退屈して暇の大安売りなんてしないで済みそうだ ともかく、俺は召喚された分の︻義理︼は返す。 か⋮⋮。 ﹁確か黒ウサギにも言ったと思うんだが│││││いや、言ってない そのあとも真剣な顔で話を続ける十六夜。 十六夜は鋭い目線をジンくんに向けた。 のためになんてつもりはこれっぽっちもないからな その水樹だって気が向いたから貰ってきただけで コミュニティ ? そして、ジンくんはそれに対して怯むことなく堂々と語った。 十六夜の言葉は冗談なんかという考えを消し去る迫力があった。 │││││最悪俺がコミュニティ事態を跡形も無く潰す⋮⋮﹂ ? 127 ? ! ? ! ﹁僕らは何時までも黒ウサギに頼るつもりはありません。 ⋮⋮次のギフトゲームでそれを証明します﹂ ﹁⋮⋮そうかい、頑張れよ御チビ﹂ 十六夜は眠たそうに呟いた。 ﹁ちなみに⋮⋮﹂ 俺は皆に聞こえるように口を開いた。 ﹁少なからず俺も十六夜に同意するよ﹂ 十六夜も眠そうながら俺の方を見る。 黒ウサギたちも静かに聞いている。 俺の話は静かに聞くって決まりでもあるのだろうか⋮⋮。 ﹁俺は確かに黒ウサギたちを助けるとは言ったけど⋮⋮黒ウサギたち にその価値が無いと判断したらすぐにでも俺はコミュニティを抜け るよ まぁ、俺は十六夜とは違ってコミュニティを潰したりはしないけど ね⋮⋮﹂ 俺の言葉には黒ウサギが答える。 ウサギ耳をピンと張り、髪を桃色に染めた。 顔は真剣なものである。 ﹁私たちはそれぞれ︻誇り︼を持って行動しています。 ︻ノーネーム︼だからと言って他のコミュニティと変わりはしません。 ﹂ ︻ノーネーム︼というコミュニティに︻誇り︼を持ち、同士たちを思う。 だから、夜鶴さんを失望させることは決してありません 黒ウサギの熱弁に俺は頷く。 ﹂ ﹁黒ウサギが言うならそうなんだろうね⋮⋮ でも、俺と十六夜の話は忘れないでね !! │││││本館の明かりはもうすぐ傍だ。 確かに空には月が上がっている。 黒ウサギのその言葉で、俺たちは歩き始めた。 本館に行くとしましょう﹂ ﹁⋮⋮さぁ、もう夜も深くなって参りました。 俺がそういうと黒ウサギ、ジンくんはゆっくりと頷いてくれた。 ? 128 ? ∼ボーイズトークだそうですよ Side 夜鶴 ロ ノ ス いわね⋮⋮。 ∼ コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には 私たちは何処に泊まればいいの ﹂ ﹁遠目から見てもかなり大きかったのだけれど⋮⋮近づくと一層大き ニティだったのかが想像できるであろう。 立派な屋敷を見れば以前の︻ノーネーム︼がどれほど大きなコミュ まで時間が巻き戻っている。 ︻時を司りし者︼による時間操作はこの屋敷も例外に漏れず新築当然 ク 本館である屋敷にはすぐに着くことが出来た。 ? ﹁⋮⋮ねぇ黒ウサギ﹂ ﹁はい、なんでしょうか ﹂ ﹁この辺りで何処か使わない所って無いかな ﹂ ⋮⋮まぁ、とどのつまり、俺の趣味に合わないのである。 しているのだが、おそらく和室というモノは無いのだろう。 この︻ノーネーム︼の屋敷は見たところ洋館。確かに立派な造りを だからこそ、私服も和服を好んで着ているのだ。 │││││突然だが俺は、和風な物が好きである。 そして、ゆっくりと眼前の屋敷に視線を向け、溜息を吐く。 俺は顎に手を当てながら考える姿勢を見せる。 のか⋮⋮。 なるほど、コミュニティでは強さによる序列制度が設けられている ますが今は好きなところを使っていただいて結構でございますよ﹂ 序列を与え、上位の人からこの屋敷の最上階に住むことになっており ﹁はい ? 夜鶴さん﹂ ﹁あの場所であればお好きに使っても宜しいですよ ⋮⋮しかし何故ですか ? ちょうどいい広さに開けており、場所も悪くない。 黒ウサギは少し考えるようにすると、屋敷の横を指差した。 ? ? ? 129 ! ﹁あぁ⋮⋮俺にはこの屋敷が合わなくってね⋮⋮。 ﹂ ちょっと他の住居を創ろうかと思ったんだよ﹂ ﹁そ、そうでしたか⋮⋮ リ エ イ ﹂ 夜鶴さんはこのコミュニティ最強の実力者ですので、こ ター 俺の目の前では使う土地の部分が光を放ち始めた。 指定したものをしっかりと意識しつつ、行使する。 ﹁︻建 造︼﹂ コンストラクト ない︼というものだ。 俺が設定したのは、 ︻和風の家︼ ︻防音の部屋︼ ︻和の雰囲気︼ ︻壊れ て造ることができる。 家の外装、内装、大きさ、強度と言ったモノを自分の好みで設定し 今回創った能力は、ただ家を造る能力だ。 ︻拘りの我が家︼﹂ ホ ー ム・ メ イ カ ー ︻創 造︼│││││ クリエイト 作成能力内容指定⋮⋮⋮⋮。 ﹁︻創造者の娯楽︼発動。 ク す。 そしてなるべく日当たりの良さそうな所を予想して住居を創り出 俺は屋敷の隣にゆっくりと移動して場所を確かめる。 ﹁Yes♪﹂ ﹁じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うよ黒ウサギ﹂ りも楽なのですよ、と黒ウサギは微笑んだ。 むしろ自分で住居を造ると言って下さるのでただのお願いごとよ の程度のことは我が儘の内に入らないのですよ ﹁いえいえ 俺の我が儘で困らせちゃって⋮⋮﹂ ﹁ごめんね黒ウサギ。 程の場所をすすめてくれる。 黒ウサギは申し訳無さそうな顔をすると、俺にどうぞ、どうぞと先 どうぞ、あの場所をお好きにお使い下さいっ すみません気がつきませんでした⋮⋮。 ! その時間は僅か十秒程度であったが、光が止むと俺の設定した通り 130 ! ! ! であろう家が建っていた。 江戸時代を連想させるような古風な家、どことなく漂う古き良き日 なかなか良い家じゃねぇか夜鶴。 本の雰囲気が俺を包む。 ﹁ヤハハ ﹂ ﹁し、白夜叉様を ﹁と、とりあえず めてしまいましょう ﹂ ﹁それもそうだな⋮⋮。 確か、どの部屋でも良いんだよな どうぞ、お好きな部屋をお選び下さい﹂ ? !! ﹁私も飛鳥に賛成﹂ ﹁なら、私たちは少し中を探険してくるわ﹂ ﹁Yes 黒ウサギ﹂ 夜鶴さんの住む場所は決まりましたので、残りの御三方の部屋を決 !! ︻ノーネーム︼の屋敷を指差しながら話し始めた。 俺が溜息を吐いていると、黒ウサギが場の空気を変える為なのか、 らけらと笑う。 ジンくんまでもが俺を規格外だと言い始め、その発言に十六夜がけ 結させてもらいます⋮⋮﹂ ⋮⋮夜鶴さんには悪いですが﹃規格外﹄だからということで自己完 ?!! ⋮⋮なるほど、3人の俺の認識がよく分かった⋮⋮。 飛鳥に続き、十六夜と耀もそういった。 ﹁むしろ白夜叉を倒してる時点で夜鶴は﹃規格外﹄だよ﹂ ﹁ヤハハ。御チビ、夜鶴は﹃規格外﹄だと思っておけ﹂ ﹁で、ですが⋮⋮﹂ 飛鳥が何かを悟ったかのようにジンくんにそう告げた。 わよ ﹁ジン君。夜鶴君の︻ギフト︼にいちいち驚いていたらこの先もたない くんは俺の︻ギフト︼の方に驚いていた。 その他に黒ウサギや飛鳥、耀も俺の家について驚いていたが、ジン 十六夜が笑いながらそういった。 お前ってやっぱり﹃和﹄が好きなんだな﹂ ! ! 131 ? ﹂ そういいながら、十六夜たち三人はジンくんを連れながら屋敷の中 黒ウサギは行かないの に入って行った。 ﹁あれ ﹁手伝おうか ﹂ ﹁は、はい。黒ウサギは湯殿の用意をしなければなりませんので⋮⋮﹂ ? た。 ﹁い、いえ 夜鶴さんに手伝わせる訳には参りません !! 俺が手伝いを申し出ると、黒ウサギは手を振りながら首まで振っ ? すから !! め、俺は黒ウサギに任せることにした。 黒ウサギ﹂ ⋮⋮Yes♪お任せ下さいっ ﹁⋮⋮じゃあ、頼んだよ ﹁ !! ? 黒ウサギが寂しそうに俺を見ながら聞いてくる。 ﹂ ﹂ ﹁そ う だ な ぁ ⋮⋮ ご 飯 と お 風 呂 は 黒 ウ サ ギ た ち の 屋 敷 で 貰 お う か な ? しかし、何でもやるというのは今後に悪影響が出る可能性もあるた いうイメージが強い。 そういう黒ウサギだったが、俺としては大したことはしていないと 後は、黒ウサギたちにお任せ下さい ﹂ 今日は夜鶴さんのおかげでコミュニティに自然が戻って来たので !! 俺がそういうと黒ウサギはパァッと明るい笑顔になった。 ﹁そ、そうで御座いますか 少々お待ち下さいね ﹂ 分 か り ま し た ♪ そ れ で は 早 速 湯 殿 の 方 を 用 意 し て 参 り ま す の で、 !! │││││︻月光庵︼は少しの間放置することにした。 ちなみに俺の建てた家│││││そうだな︻月光庵︼と名付けよう げっこうあん これからの暇潰しを考えながら屋敷の中に入って行った。 ﹁⋮⋮しばらく俺も屋敷の中を探険しようかな⋮⋮﹂ 黒ウサギは駆け足で屋敷の中に入って行った。 ! 132 ? !! ⋮⋮ところで夜鶴さんは食事などはどうなさるのですか⋮⋮ !! ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ﹁│││││御待たせいたしました 湯殿のご用意が整いましたので、女性の方からどうぞ ゆっくり入って来なよ三人とも﹂ ﹁俺も後からで良いよ ﹁俺は二番風呂好きだから大丈夫だぜ ﹂ ﹁それじゃあ先に入らせてもらうわよ、十六夜君﹂ どうやらお風呂の用意が終わったそうだ。 に黒ウサギが走ってやって来た。 ﹂ いつの間にか四人全員がひとつの部屋に集まっていたのだが、そこ !! !! ﹁⋮⋮何かな 十六夜﹂ ﹁⋮⋮なぁ夜鶴﹂ 見てきた。 │││││と、三人が部屋を出て行くと、十六夜が真剣な目で俺を 無意識でお風呂を楽しみにしているのだろう。 やはり三人とも女の子だ。 呂に向かって行った。 俺と十六夜がそういうと、黒ウサギ、飛鳥、耀は、嬉しそうにお風 ? ﹁⋮⋮覗くかっ ﹁うぉい ﹂ ﹂ それは洒落になんねぇぞ夜鶴 ﹂ 俺は黒ウサギばりの勢いで十六夜の頭を叩いた│││││机で。 !! !? 133 ? おそらく外にいる招かれざる客に対しての対応を│││││ ? ﹁自重しなよ十六夜っ !!! 机が当たる寸前に、十六夜はなんとかバックステップで躱す。 ?! ﹂ ﹁十六夜がふざけるからだよね ⋮⋮で、本題は 夜鶴﹂ ﹁⋮⋮そのことなら十六夜に任せて良いかな ﹁外の奴等、どうするよ 十六夜はヤレヤレと首を振ると今度は真剣な目をした。 ﹁全く⋮⋮冗談くらい言わせろよ⋮⋮﹂ ? ・ ・ たジンくんとともに外へと向かって行った。 ・ ﹁│││││さてと⋮⋮オーミ来てるんでしょ ? ・ オーミに笑いながら話し掛けた。 ﹁とりあえず⋮⋮きちんと説明してくれるんだよね ﹂ │││││私ではもう勝てそうにありませんね⋮⋮﹂ ﹁まさかそこまで強くなるとは思いませんでしたよ⋮⋮。 俺は︻ギフトカード︼を取り出しながらオーミに言った。 なってるんだから⋮⋮﹂ ⋮⋮ 君 の キス の せ い で 感 覚 か ら 能 力 ま で あ り 得 な い 位 ま で 強 く ・ ﹁当たり前でしょ らオーミが現れる。 俺の呟きに反応してか、目と鼻の先程の距離で空間が歪み、そこか ﹁⋮⋮良く分かりましたね⋮⋮﹂ ﹂ 俺がそういうと、十六夜はヤハハと笑い何処からともなく連れてき │││││俺はちょっとやることがあるから﹂ ? ? ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ オーミは真剣な顔でしかし何処か嬉しそうに口を開き始めた。 隠しごとなく全て話しますよ﹂ ﹁勿論です。 すると、オーミは指をパチンと鳴らし辺りの時を停めた。 ? 134 ? ? 初めての俺視点か Side 十六夜 ヤハハ どうかしましたか ﹂ ? ﹁別に何とも無いぜ ﹂ メタ発言もここまでにしておくかな。 おおっと御チビ様が呼んでるな。 ﹁十六夜さん 作者もいきなり粋な真似をするな ! ⋮⋮﹂ ⋮⋮茂みからの反応なし。 ⋮⋮あぁ、面倒くさいな⋮⋮。 それとも襲わねえのか どうせやるなら派手にやれよな、おい。 ﹁⋮⋮ここを襲うのか ? ⋮⋮やり過ぎたか ﹂ ほら﹂ いきなり喋り始めたかと思えば石を投げつけるな んて、一体何事ですか ﹁︻フォレス・ガロ︼から物騒なお使いみたいだぜ ⋮⋮がそれより気になったのがその姿だ。 爆発により打ち上げられ、落ちた人影は、何かを言っているようだ。 御チビ様は俺の言葉を聞くと、茂みに目を移した。 ? ?! ﹁い、十六夜さん ? 茂みに着石するとスガァンという音と共に爆発する。 た。 俺はイライラが溜まり、つい手に持っていた小石を投石してしまっ ⋮⋮やはり反応は無い。 いい加減飽きたぞ、おい﹂ やるならいい加減出てきてかかってこいよ⋮⋮ ? ﹁お ー い、そ ろ そ ろ 決 め て く れ ね ぇ と 俺 が 風 呂 に 入 れ ね え だ ろ う が 俺は屋敷をバックに仁王立ちすると、茂みを睨んだ。 けてやがるな⋮⋮。 全く⋮⋮こんなに綺麗な月の出る夜に仕掛けてくるとは⋮⋮ふざ 御チビ様にそういうと、俺は小石をひとつ拾い上げた。 ? ?! 135 ? ! ! 犬の耳だったり猫の耳だったりと、一部が獣である者ばかりだ。 おそらく︻獣のギフト︼を持ってはいるが格が低いため中途半端な 獣化になっているんだろう。 ﹂ ガルドのコミュニティ︻フォレス・ガロ︼を完膚な しばらくすると、その内の一人が口を開いた。 ﹁恥を忍んで頼む きまでに叩きのめして欲しい ﹁│││││嫌だね﹂ 俺が即答すると、御チビ様と侵入者は絶句した。 御チビ様にいたっては信じられないモノを見る目で俺を見詰めて いる。 ﹁どうせお前らもガルドから人質を取られてる連中だろ ﹂ ﹂ ﹁い、十六夜さんっ ﹂ はい、この話題終了∼﹂ ﹁⋮⋮ああ、その人質たちのならもう全員死んでっから。 何か喋り始めた侵入者に俺は被せながら言った。 ⋮⋮﹂ ⋮⋮我々も人質を取られている身分、ガルドに逆らうこともできず を⋮⋮。 ﹁は、はい。⋮⋮まさかそこまでお見通しだとは露知らず失礼な真似 たってところか 予想するに命令されて俺たちのコミュニティのガキを拉致しに来 ? ﹂ その目には相手をいたわるようなモノが見えるが⋮⋮コイツは分 かってんのかね⋮⋮ ﹁隠す必要なんかあるのかよ ﹂ お前らが明日のギフトゲームに勝ったら全部知れ渡るだろ ﹁そ、それにしたって言い方というものがあるでしょう ﹁ハッ、コイツらに気を使えってことか ⋮⋮冗談きついぞ御チビ様。 ! よく考えてもみろよ。殺された人質を攫ってきたのは誰だ ? ? ? ? 136 !! ! ? 御チビが慌てながら割り入ってくる。 !!! ﹁⋮⋮なっ ??!!!! ⋮⋮他でもないコイツらだろうが⋮⋮﹂ その言葉に今気がついたのか御チビの表情が変わった。 気づくのがあまりにも遅すぎる⋮⋮。 ﹁悪党狩りってのはカッコいいけどな⋮⋮。 ﹂ 同じ穴のムジナに頼まれてまでやろうとは思わねえよ、 俺は﹂ ﹁⋮⋮そ、それでは人質はっ⋮⋮ ﹁⋮⋮はい。 残念ですが、皆死んでいます。 ﹂ とを聞いたら駄目だろうに⋮⋮。 自業自得⋮⋮ん ちょっと待てよ⋮⋮魔王傘下のコミュニティ⋮⋮ ⋮⋮これは使えるかもしれねぇ⋮⋮ ﹂ ﹁お前達、︻フォレス・ガロ︼そしてガルドが憎いか いか ﹁あ、当たり前だ ﹂ ﹂ 叩き潰して欲し 俺達がアイツのせいでどんな目にあってきたかっ⋮⋮ ﹁そうかそうか。 ⋮⋮でもお前達にはそれをするだけの力が、勇気はないと 俺達がゲームを挑んでも勝てるはずがない かに上だ⋮⋮。 ﹁ア、アイツはあれでも魔王の配下、所持している︻ギフト︼の格も遥 ? !!!! ? ? 全く⋮⋮魔王傘下のコミュニティだからといってそいつの言うこ 悲しむ侵入者たち。 ﹁⋮⋮そんなっ⋮⋮ ガルドは人質を攫ったその日の内に全員殺していたそうです⋮⋮﹂ !! ⋮⋮だからこそ、だからこそいけるかもしれない。 ていることを認知した。 何処にでも付きまとうその名前に、再度︻魔王︼が強大な力を持っ │││││︻魔王︼。 ⋮⋮﹂ もし万が一にでも勝てたとしても︻魔王︼にでも目を付けられたら ! 137 !!! ? !! ? ﹂ いや、もし駄目ならこれからの俺たちに待っているのはかなり辛い 展開だ。 だが、今のコイツらの反応から確信した。 あとは御チビ様を説得すれば良いのだからなんとでもなる。 ﹁⋮⋮その︻魔王︼を倒すためのコミュニティがあるとしたら⋮⋮ 間の抜けたような声をあげる侵入者たち。 俺はスッと御チビの肩を抱き寄せて声高らかに宣言する。 ﹁このジン坊っちゃんが、 ︻魔王︼を倒すためのコミュニティを作ると 言ってるんだよ﹂ 俺のその言葉に再び絶句する侵入者たち。 困惑したような様子で聞き直して来るので、俺は再び口を開いた。 むしろこれで宣伝が出来るのなら安いモノだ。 ﹁│││││言葉通りの意味さ。 俺たちは︻魔王︼の脅威にさらされたコミュニティを守る。 守られたコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。 ﹃押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずは︻ジン=ラッセル︼に問い 合わせください﹄ってな﹂ ﹁じょ、⋮⋮﹂ 余計なことを言おうとした御チビの口を塞ぐ。 そもそもこの御チビは何も分かっていない。 俺は御チビの口を塞いだまま腕を広げてもう一度言う。 ここまでくればもう異論もないだろうし勢い任せでも承諾してく れるはずだ。 ﹁人質のことは残念だったな⋮⋮ だけど安心して良いぞ。 なぜなら、俺たちの︻ジン = ﹂ 138 ? 明日︻ジン=ラッセル︼率いる俺たち︻ノーネーム︼メンバーが仇 を取ってくれる 倒した後の心配もしなくていいぞ ラッセル︼が︻魔王︼を倒すために立ち上がったのだからな !!! ! ! ﹁おお⋮⋮ ﹂ 俺たちを希望の光を見たかのように見詰めてくる侵入者たち。 その表情に俺の選択は間違っていなかったと確信した。 そして歓喜しろ これならもう大丈夫だ。明日のゲームの勝敗次第で現状は大きく 変わる筈だ。 ﹁さあ、コミュニティに帰って仲間に言いふらせ ! ﹂ 俺たちの︻ジン=ラッセル︼が︻ノーネーム︼が︻魔王︼を倒して ! 明日は頑張ってくれよなジン坊ちゃん ﹂ ! くれると ﹁わ、わかった ﹂ ⋮⋮待っ⋮⋮ 俺たちは応援してるぜ ﹁ちょ、まっ ! ! ! べた夜鶴がいた。 ﹁あぁ、お帰り十六夜。お疲れ様 なんだよ夜鶴。 ⋮⋮ジン君も大変だったみたいだね﹂ ﹁ヤハハ お前俺の考え知ってて送り出したんだろ なに他人事みたいにしてんだよ﹂ あれじゃあまるで⋮⋮﹂ !? ﹁ふざけないでください十六夜さん ﹂ ? ﹂ ! なんて最高じゃねえか ﹂ ﹁おお、そいつは大歓迎だ。あんな面白そうな奴らとゲームで戦える 王にも目をつけられるかもしれないのにっ そんな宣告が流布されたら僕たちの倒すべき︻魔王︼以外の他の魔 ! で﹄⋮⋮キャッチフレーズはこんなところか ﹁﹃打倒全ての魔王とその関係者。お困りの方は︻ジン=ラッセル︼ま ﹁さっきのは一体どういうことですか 俺と夜鶴が会話していると、御チビが大声をあげた。 ? 屋敷の最上階にある大広間に着くとそこには真面目な表情を浮か ら抱えて夜鶴のいる部屋に駆けていく。 侵入者たちが全員帰ったのを確認して俺は御チビの口を塞ぎなが ! 俺が楽しむように笑ってやれば御チビの表情が変わった。 ! 139 !!!!! ! ! ⋮⋮へえ⋮⋮ちょっとはリーダーしてんだな⋮⋮。 ﹁お、面白そう⋮⋮ ﹂ !? ﹂ ? ﹂ ﹁でもジン君。それには大きな見落としがあるよ﹂ ﹁なるほどねぇ⋮⋮期待一杯、胸一杯だったわけだ⋮⋮﹂ も対抗できたはずです﹂ ⋮⋮ましてや、これほど才の有る方々が揃えばどんなギフトゲームに ﹁ギフトゲームを堅実にクリアし、コミュニティを大きくしていけば ﹁俺は出来ることをしただけだよ﹂ ﹁おう、存分に感謝しやがれ﹂ 鶴さんが想像以上の成果を上げてくださったので感謝していま す﹂ も水を確保する方法は十分ありましたが⋮⋮そこは十六夜さんと夜 新しい人材と作戦を的確に組みさえすれば︻神格クラス︼は無理で ﹁まず⋮⋮水源を確保するつもりでした。 その表情には思い悩んでいるという色がみえた。 と口を開いた。 夜鶴と俺の言葉に御チビは少し黙り込むと、しばらくしてゆっくり ﹁その考えは俺も気になるよ﹂ 呼んだんだ ︻白夜叉︼みたいな強力な︻ギフト︼を持つ奴に勝とうと思って俺達を まず最初に聞いておくが⋮⋮お前はどうやって︻魔王︼に⋮⋮あの ﹁あぁそうだよ。俺にはある考えがあった。 全く⋮⋮折角驚かしてやろうと思ったのによ⋮⋮。 御チビは俺の方を興味深げに見つめて来た。 ﹁か、考えですか⋮⋮ 十六夜には考えがあってやったんだよ﹂ ﹁いや、ジン君それは誤解だよ。 が入って来た。 俺がそれについて語ってやろうかと思っていたのだが、そこに夜鶴 追いやるおつもりなんですか ⋮⋮では十六夜さんは、自分の趣味のためにコミュニティを滅亡に ? 俺の言葉を代弁してくれたかのような夜鶴の言葉。 140 ? 十六夜さんは自分の考えの為だけにコミュニティを危 しかし、それに対して御チビは大声をあげた。 ﹁何故ですか 険に陥れるような真似をした まだ成長も何もしていないのにです そのことを貴方方は分かっているのですか ・ ﹂ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 前のコミュニティはゲーム参加して力をつける事を していなかったのか 夜鶴が俺を援護するように言葉を繋いだ。 んだよ﹂ ﹁そして、俺たち︻ノーネーム︼が何をしようとも覚えてすら貰えない い﹂ それはとんでもないハンデだ、これじゃぁ口コミで広がりすらしな 存在していない状況だ。 ﹁今俺達には︻名︼も︻旗印︼も組織を主張する旗頭はなに1つとして 俺の言葉に黙り込む御チビに畳み掛けるように口を開いた。 ? じゃあ何か ﹁それは大前提だと散々言ってるだろうが。 ﹁だ、だからそれはギフトゲームに参加して⋮⋮﹂ 俺が聞いてるのはどうやって魔王に勝つかだ﹂ ・ ﹁ギフトゲームに参加して力をつける、なんてのは大前提だろうが。 俺と夜鶴の容赦無い言葉に顔を歪める御チビ。 ﹁十六夜違うよ。このコミュニティはリーダーが悪い﹂ ・ やっぱりこのコミュニティに入ったのは失敗だったかもな⋮⋮﹂ てたとは⋮⋮ ﹁呆れた奴だな、そんな机上の空論で再建がどうの誇りがどうの言っ ⋮⋮。 しかし、夜鶴の言葉と意味が分からないとは⋮⋮あまりにも残念だ 壁を強く叩いた御チビ。 ﹂ もしあの宣誓が流布されれば最後、魔王とのゲームは不可避になる ! !! ? 141 !? !! !! ﹁│││││︻ノーネーム︼ってのは所詮その他大勢という認知でしか ない。 そんな奴らを信用すると危険と判断されるのが普通だ。 ﹂ ⋮⋮だがな、お前はそのハンデを背負ったままで︻先代︼を超えな きゃならないんだよ﹂ ﹁先代を⋮⋮超える⋮⋮っ 理解はしていたはずだ。 しかし、それを無意識に避けていたのだろう。 まだ11歳の子供だというのは重々承知している。だが、コミュニ ・ ・ ・ ・ ・ ﹂ ティのリーダーとして判断する立場なのだからそんなことはして欲 しくない。 ・ ﹁でだ⋮⋮︻名︼も︻旗印︼も無い。 ・ となると後はもうリーダーの名前を売り込むしか無いだろう その言葉にハッとした表情になる。 やっと俺の意図に気づいたようだ。 全く⋮⋮もっと早く気づいてくれても良いのにな⋮⋮。 か ﹂ ﹁僕を担ぎ上げて、コミュニティの存在をアピールするおつもりです コイツはリーダーなんだからちった勉強させねぇといけねぇな。 ? │││││︻打倒魔王︼を掲げたコミュニティのリーダーだ。 そいつが明日のゲームに勝てば良い宣伝になる﹂ ﹁少なくともこの辺りの人達には必ず伝わるよ きいだろうが│││││魔王を倒した前例がないわけじゃないだろ ﹁⋮⋮ま、御チビが懸念するように他の魔王を引き寄せる可能性は大 な気がしてならない。 ⋮⋮いや、先読み所か俺はコイツの手の平の上で踊らされてるよう 流石は夜鶴だ⋮⋮俺の考えを先読みしてきやがる。 そして、その波はいずれ箱庭全土に広がっていく⋮⋮﹂ ? 142 !!? それもただのリーダーじゃねえぞ。 ﹁あぁそうだ。 ? しかも、夜鶴にいたっては既に︻元・魔王︼だが、白夜叉を軽く捻っ たことがあると来た﹂ │││││﹃魔王を倒せばその魔王を隷属させられる﹄│││││ コイツは黒ウサギに聞いた話の内のひとつだ。 ⋮⋮つまり、 ︻魔王︼を倒した者は過去にもいてその魔王を倒せば強 力な駒としてコミュニティに引き入れられる。 ︻魔王︼の襲来は︻最悪のピンチ︼と︻最高のチャンス︼が同時に巡っ てくるようなものだ。 ・ ・ ・ ・ ﹁今のコミュニティに足りないのは人材だ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 夜鶴並みなんて贅沢は言わねぇ⋮⋮。 ・ ・ ・ ・ ・ 俺並み⋮⋮少なくとも俺の足下並みの奴が欲しい﹂ ﹁確かに⋮⋮十六夜並みの仲間は欲しいところだね﹂ 俺がニヤリと笑いながら言った言葉に夜鶴も笑いながらそういっ た。 ﹂ そして、俺は夜鶴をチラリと見ると、再び御チビに話し始める。 ﹁乗るか反るかは御チビ次第 他にカッコイイ作戦があるってんなら協力は惜しまないぜ 他に作戦が有るのならそれに乗ってもいい。 何せ俺は箱庭に来たばかりだ。 もしかしたら俺の知らない方法があるかもしれない。 ・ ・ ・ 今度行われる︻サウザントアイズ︼傘下のコミュニティが開催する ﹁⋮⋮1つ条件があります。 │││リーダーだ。 ・ ⋮⋮なんだ、少しは良い顔になったじゃないか。 それでこそ││ てくる。 御チビを見てみるとグッと手を握り締め此方を真っ直ぐと見据え はコレぐらいしか思い浮かばなかった。 だが1番手っ取り早くて1番即戦力を手に入れられる方法は俺に ? ! 143 ? 俺の実力でも見せろってか ギフトゲームに参加してください﹂ ﹁⋮⋮なんだ ﹁⋮⋮昔の仲間、か ﹂ ない大事なものが出品されるのです⋮⋮﹂ ﹂ ﹁それもありますが⋮⋮このゲームには僕らが取り戻さなければなら ? 魔王︼とも呼べる奴らもいる⋮⋮か⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮そして魔王を隷属させたコミュニティすらも滅ぼせる︻仮称・超 た経験があります﹂ ﹁御二人のお察しの通り、先代コミュニティは︻魔王︼と戦って勝利し ように見えたのだが、それは御チビの言葉にかき消される。 夜鶴ですら目を細めて興味深そうに⋮⋮そして何かを呟いていた 俺の笑みは無意識に深くなった。 ││元・魔王だった仲間です﹂ ﹁はい。⋮⋮それもただの仲間ではなく││ ? !!! 俺が楽しさで震えていると、突然その場の空気が│││││凍りつ く。 │││││ゾクッ 144 ? 背後⋮⋮夜鶴から殺気が滲み出してくる。 ﹂ その濃密な殺気は⋮⋮明確な死をイメージさせた。 ﹁ジン君⋮⋮ここに再度聞くよ 君は│││││︻打倒魔王︼を掲げるんだね⋮⋮ ﹁は⋮⋮⋮⋮ぃ⋮⋮﹂ や、ヤバい俺もこの殺気に飲まれそうだ⋮⋮。 ﹁⋮⋮そうかい⋮⋮。 ? ﹂ ・ ・ 俺の言葉は夜鶴の仕草で止められた。 ﹁よ、夜鶴⋮⋮お前は⋮⋮吸血鬼⋮⋮ッ ﹂ 夜鶴の瞳が紅く光り、鋭い八重歯が見える。 ちょっと生き血が啜りたくなったんだ﹂ ・ 俺は今日、強力な︻ギフト︼の行使で些か疲れていてね ﹁︻生贄︼とでも言えば良いのかな ﹃魔王﹄という呼称は今の夜鶴にピッタリではないだろうか。 そう言った夜鶴の風格は絶対的支配者のそれ。 ﹁なっ⋮⋮ せ⋮⋮生命を﹂ いのち ﹁キミか十六夜いや、その他の誰でもいいから│││││俺に差し出 御チビはゆっくりと頷き、次の言葉を待つ。 そう言った夜鶴はその場にあるソファーに腰掛けて足を組む。 じゃあ1つ俺からのお願いごとを聞いてくれないかな ﹂ 御チビはその殺気に圧されながらも掠れる声で答えた。 ? ? るほど、御チビがリーダーとしてやっていけるかを試しているんだな 黒ウサギの時とは比べ物にならないこの気合の入った試練⋮⋮な 放すだろう。 もし御チビが下手な選択をすれば⋮⋮夜鶴は容赦なく俺たちを見 │││││が、しかし、俺の冷や汗は止まらない。 ⋮⋮なるほど⋮⋮夜鶴は御チビを試してるのか⋮⋮。 指を立てた。 ⋮⋮御チビには見えていない⋮⋮が、夜鶴は俺に向かって唇の前で ! ? ? 145 ?!!!! ⋮⋮。 ﹁さぁ⋮⋮早く選びなよ⋮⋮ジン君 ﹁僕は⋮⋮誰も犠牲にしない ﹂ 御チビはキュッと口を結び目を開くと決意の眼差しを見せた。 しかし、目には強い意思があった。 御チビの体はガクガクと震えている。 ﹁⋮⋮ぼ⋮くは⋮⋮ぼく⋮⋮は⋮⋮﹂ ? になりませんっ ﹂ ・ ・ 御チビはそう叫んだ。 ﹁│││││僕は戦う。 今までのような流されるままの自分は止めます。 ・ これからは│││││みんなと戦って切り開いていきます ・ ・ </rp><ダー その案に乗ってやる ﹂ ー</rb><rp>︵</rp><rt>・</rt><rp>︶ ﹁⋮⋮良いぜ御チビ⋮⋮いやリ<rb ﹂ 挑むと決意したのに、今の夜鶴さんの言葉に屈してしまったのでは話 本当なら僕がこの身を差し出すところですが⋮⋮今まさに魔王に ! リーダーの顔である。 ﹁│││││へぇ ? 俺は御チビの⋮⋮いや、ジンの頭に手を置いて笑う。 │││││僕たちはだ﹂ ﹁僕はじゃねぇよ御チビ。 僕は夜鶴さんに挑みます﹂ ﹁はい。 しかし、御チビは一歩も引かずに口を開く。 そうして、夜鶴からの重圧が増す。 俺に挑もうって言うのかい ﹂ ジンの表情は申し訳なさそうだったがキリッとしており、これぞ のに⋮⋮﹂ ﹁すみません十六夜さん⋮⋮本当は僕が貴方を護らなければならない ! ! 146 !!! !! ? ﹂ ﹂ 今のコイツにならついて行ってもいい、そう思わせる ﹁行くぜ夜鶴っ ﹁行きます夜鶴さんっ 合格だよジン君 ﹂ ﹁│││││ふふふ。 いつの間にか殺気が止んでいるのにも気がつかないままに⋮⋮。 俺とジンは夜鶴に向かって走りだした。 !!! ﹁⋮⋮えっ ﹂ 俺たちは夜鶴に抱き止められていた。 ? ⋮⋮まだ呼び名は御チビでいいな⋮⋮。 ﹁だから、合格だよジン君﹂ 俺は夜鶴の真意を御チビに告げる。 ﹁⋮⋮夜鶴はお前を試したんだよ御チビ﹂ ﹂ 君がリーダーに相応しいか試したんだよ。 ﹁そ、それってどういう⋮⋮ ﹁俺はね ? 折れてしまう﹂ 夜鶴は俺と御チビを話してまた口を開く。 147 !!! 何がなんだが分かっていないふうのジン。 ??? 魔王という強大な力に挑戦するんだから、生半可な覚悟じゃ直ぐに ? ﹁リーダーというのは時に︻優しく︼時に︻厳しく︼そして時に︻傲慢︼ でなければならない。 目的を達成させるのに必要なのは︻傲慢さ︼と︻打ち勝つ勇気︼だ。 俺という強大な力の前に屈さず、立ち向かうその姿は俺の求めてい るもの通り⋮⋮﹂ ﹂ 夜鶴はにっこりと笑って御チビを見詰める。 ﹁故に君は合格だよジン君。 これからは全力で君の力になろう 高らかとそう宣言した。 Side Out ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Side 夜鶴 ﹁それにしても夜鶴は不器用だな⋮⋮﹂ ﹂ 普通。 ﹂ 俺がジン君を試したあと、十六夜がそういった。 ﹁なんでだい ﹁あんなことするか 俺は分かってたのに死ぬかと思ったぞ だから俺はいつもこうするんだ﹂ 確かに十六夜は途中で気がついたようだったけど何であんなに必 ﹂ 死だったのかと不思議だったね⋮⋮。 ﹁御チビも怖かっただろ ﹁む⋮⋮それは心外だなぁ⋮⋮。 ? それを見ていると、俺も頬が緩み終いには俺、十六夜、ジン君で笑っ ジン君の言葉に十六夜が笑い始めた。 俺は︻魔王︼なんかじゃないぞ ﹂ ﹁は、はい⋮⋮三年前の魔王襲来の比ではないくらい怖かったです﹂ ? 148 !! ﹁人間、死を間近に感じたら本心がでるんだよ。 ? ? ? ていたのだった。 ﹁あら、何か楽しそうね三人とも﹂ パチッと音がすると、部屋に明かりが灯った。 そこにいたのは先程までお風呂に入っていた黒ウサギたちだった。 ﹁まぁな。 なぁにちょっとばかり御チビと夜鶴と俺で語りあってたんだよ﹂ 十六夜はそういうと、俺とジン君の肩を引っ張り寄せた。 ﹁明日のギフトゲーム、勝てよ。 ﹂ そしたら俺が、昔の仲間を取り戻してやる﹂ ﹁えっ⋮⋮ ﹁だから、明日は絶対に勝て﹂ ﹁十六夜さん⋮⋮﹂ 俺とジン君にしか聞こえない位の声で十六夜は言った。 ﹁さて⋮⋮俺もいい加減風呂にでも行くかな﹂ ﹁あ、俺も行くよ﹂ そういいながら俺と十六夜はお風呂に向かっていく。 十六夜は部屋を出る寸前にくるりとターンしてジン君の方を向き 口を開く。 ﹁あ、明日負けたら俺コミュニティ抜けるから宜しく。 んで、ついでに夜鶴も連れていく﹂ 俺も巻き込まれた形になったが⋮⋮まぁ、気にしても仕方がないだ ろう⋮⋮。 それよりもお風呂だお風呂♪ 俺はスキップ気味にお風呂場に向かっていった。 149 ? ││﹁⋮⋮夜鶴やっぱりお前産まれた性別間違えてるだろ⋮⋮﹂│ │ ││﹁十六夜煩いよ⋮⋮﹂││ ﹂││ ││﹁何か女と風呂入ってるみてぇだわ﹂││ 十六夜君の変態っ !!! ﹂││ ﹂││ それは洒落に⋮⋮﹂││ ││﹁夜鶴止めろぉぉぉぉお 150 ││﹁キャー おい夜鶴 ?! ││﹁十六夜君に襲われる∼っ ││﹁ちょ !!! ∼﹃お風呂場での出来事﹄から抜粋∼ !!!! !!!! !!
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