証券代行コンサルティング部

第47号(2015年11月発行)
マイナンバー制度に伴う株式実務
<目
次>
マイナンバー制度に伴う株式実務 ……………………………
1
コーポレートガバナンス・コードに関する開示状況 ………
7
コラム-ワンポイント会社法実務(第 42 回)
…………… 10
※本ファイルは、内容を抜粋して掲載しております。
証券代行コンサルティング部
証券代行ニュース第 47 号(2015 年 11 月)
Ⅰ.マイナンバー制度に伴う株式実務
1.はじめに
平成25年5⽉31⽇に公布された「⾏政⼿続における特定の個⼈を識別するた
めの番号の利⽤等に関する法律(平成25年法律第27号)」(以下、「マイナン
バ ー 法 」と い い ま す )に よ り 、社 会 保 障・税 番 号 制 度( 以 下 、「 マ イ ナ ン バ ー 制 度 」
といいます)が創設されます。
本稿では、マイナンバー制度導⼊に伴う株式実務対応スケジュールおよび株主の
個⼈番号の利⽤・取得・管理について解説いたします。
2.マイナンバー制度の導⼊とスケジュール
マイナンバー法の施⾏は段階的に⾏われ、⼀部は公布⽇である平成25年5⽉3
1 ⽇ か ら 施 ⾏ さ れ て い ま す が ( マ イ ナ ン バ ー 法 附 則 1 条 1 号 )、 個 ⼈ 番 号 の 指 定 ・ 通
知に関する規定は平成27年10⽉5⽇、個⼈番号の利⽤に関する規定は平成28
年1⽉1⽇から施⾏となります(マイナンバー法の施⾏⽇を定める政令(平成27
年 政 令 第 1 7 1 号 ))。 ま た 、 ⾏ 政 機 関 間 で の 情 報 連 携 に 関 す る 規 定 は 平 成 2 9 年 1
⽉、地⽅公共団体等も含めた情報連携については平成29年7⽉を⽬途に施⾏され
る 予 定 と な っ て い ま す ( マ イ ナ ン バ ー 法 附 則 1 条 5 号 )。
株式実務においては、個⼈番号の利⽤が開始される平成28年1⽉が実務のスタ
ートとなりますが、それに向けての事前準備等も考慮する必要があります。
■マイナンバー制度導⼊スケジュール
平 成 27 年 10 月 ~
導入
スケ
ジュ
ール
個人番号の
通知開始
株式
実務
対応
事前準備期間
平 成 28 年 1 月 ~
個人番号の
利用開始
平 成 29 年 1 月 ~
行政機関
間で情報
連携開始
(予定)
平 成 29 年 7 月 ~
地方公共団
体等も含め
た情報連携
開 始( 予 定 )
法定調書への記載等
3.株式実務における個⼈番号の利⽤
(1)個⼈番号の利⽤範囲
マイナンバー制度における個⼈番号の利⽤範囲については、マイナンバー法第9
条に限定列挙されています。そのうち株式実務に関連する部分としては、同条第3
(注)無断転写を禁じます。
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証券代行ニュース第 47 号(2015 年 11 月)
項に「所得税法第225条から第228条の3の2までの規定により、事務の処理
に関して必要とされる他⼈の個⼈番号を記載した書⾯の提出その他の他⼈の個⼈番
号を利⽤した事務を⾏うとされた者は、当該事務を⾏うために必要な限度で個⼈番
号 を 利 ⽤ す る こ と が で き る 。( 抜 粋 )」 と 規 定 さ れ て い ま す 。
この点、所得税法等の規定により、⼀定の⾦銭の⽀払をする者は、⽀払調書を作
成し税務署へ提出することが義務付けられており(所得税法225条・228条・
2 2 8 条 の 2 ・ 2 2 8 条 の 3 )、 ま た 、 マ イ ナ ン バ ー 法 の 施 ⾏ に 伴 い 所 得 税 施 ⾏ 規 則
等の関連法令が改正され、⽀払調書に⽀払を受ける者の個⼈番号の記載が義務付け
ら れ る こ と と な り ま す ( 所 得 税 施 ⾏ 規 則 8 3 等 )。
これにより、会社は、平成28年1⽉1⽇以降に⽀払が⽣ずる株式配当⾦や単元
未満株式の買取請求に係る⽀払調書(所得税法225条1項2号・8号・10号)
等に株主の個⼈番号を記載し税務署に提出する義務を負うことから、他⼈の個⼈番
号を必要な限度で利⽤して処理する事務(以下、当該事務を「個⼈番号関係事務」
と い い ま す ) を 処 理 す る 者 ( 以 下 、「 個 ⼈ 番 号 関 係 事 務 実 施 者 」 と い い ま す ) に 該 当
し、これらの事務処理に関して個⼈番号を利⽤することができるということになり
ま す ( マ イ ナ ン バ ー 法 2 条 1 1 項 ・ 1 3 項 )。 な お 、 株 主 あ て に 送 付 し て い る ⽀ 払 通
知書(配当⾦計算書・配当⾦⽀払明細書)についても、個⼈番号を記載することが
予定されておりましたが、法令の改正により⽀払通知書には個⼈番号の記載が不要
となりました。
したがって、会社が株式事務において個⼈番号を利⽤することができるのは、⽀
払調書に個⼈番号を記載する場合ということになります。ただし、株式に係る⽀払
調書への個⼈番号の記載は、実際には会社に代わって当該事務の委託を受け株主名
簿管理⼈が⾏います。株主名簿管理⼈は、会社から個⼈番号関係事務の⼀部の委託
を受けた者として「個⼈番号関係事務実施者」に該当することになります(マイナ
ン バ ー 法 2 条 1 3 項 )。
(2)経過措置
⽀払調書への個⼈番号の記載は、前記のとおり平成28年1⽉1⽇からとなって
いますが、税法上告知義務が規定されている調書(配当⾦の⽀払調書等)について
は、平成28年1⽉1⽇から3年を経過した⽇以後の最初の⾦銭等の⽀払等の時ま
での間に⾏うことができるという猶予規定が設けられています(マイナンバー整備
令 1 6 条 5 項 )。す な わ ち 、マ イ ナ ン バ ー 法 の 施 ⾏ 前 に み な し 告 知 を ⾏ っ て い る 株 主
については、後記「4.個⼈番号の取得」で解説する、⽀払を受ける者(株主)か
ら個⼈番号の告知(提供・届出)を受けるまでは、⽀払調書への個⼈番号の記載を
3年間猶予されることとなります。なお、新規に証券会社に⼝座開設する場合は猶
(注)無断転写を禁じます。
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証券代行ニュース第 47 号(2015 年 11 月)
予規定の適⽤はなく、個⼈番号等の告知は義務とされます。
会社は、この猶予期間中、株主に対し個⼈番号を届出てもらうように株主宛通知
物に利⽤⽬的等を明⽰したリーフレットを同封する等、周知を⾏うことが考えられ
ます。
4.個⼈番号の取得
(1)上場会社の場合
個⼈番号は、国⺠⼀⼈ひとりに通知されるため、会社は基本的には株主の個⼈番
号は知り得ません。そこで、株主1⼈ひとりに通知等を⾏って個⼈番号を取得する
ことも考えられますが、多数の株主が存する上場会社の場合、⼿間やコスト等を考
えると現実的ではありません。そこで、上場会社については、以下のスキームで取
得することが想定されています。
①株主による個⼈番号の告知
上 場 会 社 の 株 式 は 、 振 替 制 度 に お け る ⼝ 座 管 理 機 関 ( 以 下 、「 証 券 会 社 等 」 と い い
ます)に開設する振替⼝座簿への振替により売買等が⾏われることから、前記のと
おり、平成28年1⽉以降、株主は証券会社等への⼝座開設時に⽒名、住所ととも
に、マイナンバー法に規定された⽀払調書(マイナンバー法19条10号)に記載
されるべき告知事項として⾃⼰の個⼈番号を告知します(このような株主を本稿で
は 「 ⼀ 般 ⼝ 座 株 主 」 と い い ま す )。
②証券会社等から機構への通知
⼀般⼝座株主から個⼈番号の告知を受けた証券会社等は、株式会社証券保管振替
機 構 ( 以 下 、「 機 構 」 と い い ま す ) に 対 し 、 当 該 ⼀ 般 ⼝ 座 株 主 の ⽒ 名 ・ 住 所 等 の 加 ⼊
者情報の通知に併せて告知された個⼈番号を通知します。
③機構による個⼈番号の保持
証券会社等から通知を受けた機構は、後記⑤の会社に提供する⽬的のみために個
⼈番号を保持します。
④会社から機構への個⼈番号の請求
会社(株主名簿管理⼈)は、機構から総株主通知または単元未満株式の買取請求
等の各種請求取次ぎにより通知された株主に対して、配当⾦や買取代⾦を⽀払うこ
とが確定し、マイナンバー法に規定された⽀払調書を作成する場合、機構に対して
株主の個⼈番号の提供を請求します。
会社(株主名簿管理⼈)が機構に個⼈番号の提供を請求する時期としては、配当
⾦に係る⽀払調書作成に関しては株主名簿管理⼈にて配当計算をするとき、単元未
満株式の買取請求に係る⽀払調書作成に関しては当該事務が発⽣したときが考えら
(注)無断転写を禁じます。
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