平成 27 年度 第1回イキカツ応援講座 「地域活動 はじめの一歩 ∼楽しみながら地域に活かそう、私の力∼」 (1)基調講演 ■講師 有限会社アリア代表取締役、シニアライフアドバイザー 松本すみ子 さん 有限会社アリア代表取締役、NPO 法人シニアわーくす Ryoma21 理事長、シニアライフアドバイザー、産業カウンセラー、キャリア コンサルタント。早稲田大学第一文学部東洋史学科卒業後、20 数年 間、IT 企業で、広報、販促、マーケティングなどを担当。 2000 年 5 月に独立して、有限会社アリアを設立。 企業、行政・自治体、市民団体、研究機関、メディアなどで、団塊シニア世代の動 向研究や市場調査、シニア世代に関する講演や執筆などを行う。著書は、 『地域デビュ ー指南術∼再び輝く団塊シニア∼』(東京法令出版)など。 【激変する地域活動の背景と状況】 ① 未知の少子高齢社会 日本の高齢化率は今や 26%となりました。名古屋市は 23.5%で、全国平均よりは低 くなっていますが、世界の高齢化の推移と比較しても、日本はダントツとなっていま す。65 歳以上人口が 21%を超えると超高齢化社会といいますが、日本は超高齢化の真 っただ中で日本独自の施策を考えていかなければなりません。 ② 標準世帯は「おひとりさま」 日本のもう一つの特色は「おひとりさま」世帯が 32%となり、標準世帯の 28%を超 えて一番割合が多くなったことです。多世代同居が減り、夫婦に子どもが二人という 核家族(標準世帯)が増えたなどと言っていたのは過去の話で、単身世帯が最も多く なりました。それにより地域の形も変わってきています。単身世帯を特別視するので はなく、今や単身世帯の方が標準と捉えて施策を進めなければ、現実とのずれが生じ てしまうということです。 ③高齢化の最大課題:医療費 そして問題は医療費です。39 兆円という、想像もつかないような医療費が国家予算 の3分の 1 以上を占めています。医療費の仕組みと国家予算における位置づけを知り、 健康で、不必要な薬をもらわず、病院のサロン的利用をやめ、医療費を抑えていく努 力をすることが必要です。健康で長生きすることだけでも社会貢献につながるのです。 【期待されるシニア世代】 これからは、行政の人員も予算も厳しくなるなど、今までどおりの行政サービスは難 しくなります。そこで、豊富な経験と知恵を持ち、まだまだ元気なシニア世代の皆さん の活躍が期待されています。これからは、市民=サービスを受ける立場という枠を外し、 市民も供給する立場となり、行政は市民へ場を提供、信頼し、権限を移譲、地域の円滑 な運営と経済の活性化を図るという概念が、ここ5 6年の間に出てきました。 そこでは、会社での仕事を終えた私たちのようなシニア世代が最も活躍を期待される わけです。注意しなければならないのが、 「シニア」の中身も、年々変化しているという ことです。例えば「65 歳以上の人」といっても、経験してきたことも考えも全く違いま す。地域活動への参加を促進するにあたっても、どんな考え方を持つ世代かを的確に理 解して呼びかけなければ、上手くいかないのではないでしょうか。 内閣府が平成 24 年度に実施したアンケートで「いつまで働きたいか」を聞いた結果、 高齢になればなるほど、「働けるうちはいつまでも」を選択する人が多くなっています。 ただ、残念ながらその参加意欲と現状の地域活動内容がマッチングしていないことが問 題なのです。 また、平成 26 年の世論調査における社会への貢献意識を 70 歳以上で見てみると、53% が社会に貢献したいと考えています。さらに団塊の世代の傾向として、単なるボランテ ィアではなくお金が入ってくることをしたいと思っています。これは、地域社会での再 活動を、生きがいや起業など、収入に結びつくようにしたいと考えているということで す。しかし何をしたらいいか見つけられないでいるのです。そういう人たちがやりたい ことを見つけられたら、ものすごいパワーになるのではないでしょうか。 【人生の四大重要素「医・職・住・楽」】 私が第二第三の人生に提案したいのは、「医職住」です。「医」は医療です。まずは健 康を確保します。 「職」は職業で、働く機会、活動する機会を得ること、そして「住」に は家だけでなく地域も入ります。地域社会の中で自分の居場所を確保するということで す。さらにここに「楽」を加えて、生きがいや充足感を得ます。第二の人生は自分自身 が充実して楽しくなければ、何も続かないでしょう。 【生きがい活動の種類】 地域活動において、多くの方はボランテ ィアで活動されていると思います。このボ ランティアですが、交通費やちょっとした 謝金などを支給する有償ボランティアも 出てきました。今、無償ボランティアであ るべきか有償ボランティアであるべきか の議論がとても高まっています。私は、サ ービスを提供する以上、途中でやめないこ とが重要であると考えます。世の中は持ち つ持たれつであり、もらえるところからは もらったらよいと思います。活動の内容によって、無償でやるべきか有償で継続を保つ べきかを見極めることが必要ではないでしょうか。 有償、つまり1円でももらえば、それは「社会貢献的起業」です。ソーシャルビジネ ス、コミュニティビジネスという、地域で役立つ行動で収入を得て社会を支える活動で す。これをシニア世代にしていただきたいと思います。働く世帯の子どもを預かること や介護など、地域には様々なニーズがあります。 そうした地域活動のスタイルとして、4つご紹介します。出資方法や組織規模は様々 で、規模や方向性によって、やりやすいスタイルを選ぶことができます。 ① NPO(特定非営利活動)法人:全国で 45,000 組織(名古屋市では 800 組織)以上 ② 一般社団法人:所轄庁の認証なしで登記が可能 ③ ワーカーズコレクティブ、ワーカーズコープ:働き手自らが出資し、経営を行う グループや事業体 ④ パブリックビジネス:自治体との協働事業 コミュニティビジネスの定義は「近くの人も自分も幸せになる活動」だと私は考えま す。上手くいけば起業化にもつながり、これは大きな地域貢献となります。自分がした ことがどれだけ地域に貢献したか、そして自分がどれだけ楽しめるか、幸せになったか、 これが重要なのです。 【地域デビュー心得 10 カ条】 地域デビューに際し、心得たい 10 カ条をご紹介します。 第1条 まず自分から行動する。"きょういく"と"きょうよう"を心掛ける 第2条 地域社会を知る 第3条 自治会や町内会のイベント・行事に顔を出し、マンション管理組合の 運営などにも参加する 第4条 好きなこと・やりたいことを考える 第5条 最初から難しいことはしない 第6条 仕事も役職もいったんリセット。素の自分で勝負 第7条 自分の意見を言い、相手を否定しない 第8条 セカンドライフ用の名刺を作る 第9条 IT活用能力を高める 第10条 自分に合わないと思ったらやめる この中で、コミュニティビジネス始動にも関係する第8条にまず触れておきたいと思 います。それは自分で役職も仕事内容も宣言して、セカンドライフ用の名刺を持つこと です。オモテには名前を真ん中に大きく!そして連絡先を添えます。左上の役職欄には、 これからやりたいことを書きましょう。 もう一つ、第9条の「IT活用能力を高める」についてですが、皆さん市報などの広 報はご覧になっていますか?皆さんの側からも情報を集める努力が必要です。重要なこ とがいっぱい書いてあって、見ないと損することがたくさんあります。これからはIT 能力を高めないと、情報も入らなくなります。今のシニア世代は、IT機器を使いこな すチャンスに間に合った大変貴重な世代です。ぜひ使いこなしていただきたいと思いま す。 最後に第 10 条について触れておきます。自分に合わないと思ったらやめること。さっ さとやめて、次に自分が楽しめること、気の合う仲間を見つけましょう。それを繰り返 していくと、自分が何を好きか、何ができるかを自分でも発見することができるように なります。趣味や好きなことから始めることをお勧めします。それが結果として、いざ というときにお互いが助け合い、だれもが安心・安全で快適に暮らせる地域づくり、地 域貢献にもつながると思います。 【「わがよき人生」のために】 地域には、住む人が自主的に組織する町内会や自治会があり、親睦を深める交流イベ ントを企画したり、個人や家族だけでは解決できない様々な課題について、みんなで協 力して対策を考えたりもしています。地域活動への参加のきっかけはいろいろあります。 「地域貢献のために!」と堅苦しくならず、 「わがよき人生のために」何ができるかをき っかけに、自分に合ったやりかたで始めたほうが、上手くいくし長続きします。ぜひ、 それを念頭に皆さんもはじめの一歩を踏み出していただきたいと思います。ありがとう ございました。 <質疑応答> ・ 「地域活動における“地域”の範囲を、私は限定的に居住地と捉えていましたが、先生の お考えはどうですか?」 名古屋市内あるいは町内など、どこまでを地域と考えるか。自分のやりたいことを進 める上で、対象とする範囲や仲間のいる範囲としてどの規模が相応しいかをそれぞれが 考えるべきだと思います。結果として全国に、さらに世界にまで広がるかもしれません。 ・ 「医療費の問題についてですが、自己負担分も含めて経済的に循環していて一概に無駄と は言えないのではないでしょうか?」 基本的には、循環の程度は低いのではないでしょうか。要は、病気になった人を治す のではない不必要な薬、待合室のサロン化、こ こを見直すべきだと考えます。その分の人やお 金の動きを違う活動に回したいのです。個人個 人が医療についてもっと真剣に学ぶべきです。 ・「NPOの作り方を具体的に知りたい」 自治体が提供する講座を受講してはどうで しょうか。NPOは、なんでも対象になり、や っていけないことはありません。お年寄りや子 どもの世話だけではなく、音楽・料理・温泉・ 居酒屋、自由に好きなことと地域を結びつけてください。 (2)車座トーク 「これからの地域活動を元気にするための方策」に関連する6つのテーマを提示し、 参加者の皆さんに、興味のあるテーマごとに分かれてトーク・検討していただきました。 【進め方・ルール】 ① 好きなテーマのテーブルに移動 ② 簡単に自己紹介 ③ テーマについて自由におしゃべり ★全員が発言できるよう、発言はコンパクトに。 ★まずは「傾聴」。批判・非難・否定は厳禁。 ④ おしゃべりしたことを、付箋や模造紙に「落書き」して記録 ⑤ 1 回目と違うテーマにテーブルチェンジ ⑥ 1 回目のトークの様子を進行役から聞き、自由におしゃべり。 前のグループの落書き(記録)の上に、さらに落書きを楽しみましょう。 【テーマと主な意見】 (※ ○…現状・課題・問題点、●…解決策等のアイデア・提案) <テーマ1> 地域活動への参加促進について どうして、地域活動に参加しようとしないのでしょう。 どうすれば参加しやすいと思いますか。 ○自分には関係ないと思っている ○活動の内容がよくわからない(PR不足) ○前例にこだわって新しい取組がみられない面がある (マンネリ感) ○現代のニーズに合わず、参加したくなるメニューがない ○区を超えた横のつながりがない ○1∼2回は参加するが続かない ●情報を得るためのツールが欲しい ●新しい人や若い世代など、世代交代のシステム化も必要 ●メニューの多様化、入退出の自由 ●16 区の各委員の横のつながりが必要 ●ニーズと「やりたいこと」をマッチングさせる仲人役が必要 ●活性化するには、楽しめる内容をやるのがよい <テーマ2> 地域活動の情報提供について 地域活動の情報を見たことがありますか。それは何ですか。 どうしたら、もっとみんなに理解してもらえると思いますか。 ○どうやったら興味をもってもらえるか ○回覧板は置いておくだけになりがちで、なかなか見ない ○地域の関係が薄くなり、隣の人がいるのかどう かもわからない状況がある ○行政もウェブに頼りすぎるのはよくない ●どういう地域活動の内容を、誰をターゲットに して出したいかで異なってくる ●口コミなど、人から人へのコミュニケーション がやはり強い ●広報なごや・区からのお知らせの作成に、地域も関わる ●働いている人も参加できるような夜間・休日のセミナー等の開催 ●企業の協賛による広報 ●SNS、地域の掲示板、区からのお知らせを活用する、飲食店などにチラシを置く <テーマ3> 地域活動の担い手(役員のなり手)の確保について どうして担い手(役員)になってくれる人が少ないのでしょう。 どうしたら、担い手をやってみたいと思いますか。 ○一度役員になると抜けられない。自分の仕事もある中、負担が大きい ○特定の人に多くの仕事と責任が集中している状況がある ○仕事をうまく分担できるかどうか ○新しい意見が受け入れられないなど、仲間の輪に入りにくいと感じることがある ○集合住宅の人をどうやって取り込むか ○地域に貢献できればと思っているが、真のニーズ(期待)がつかめていない ●一人に役割を与えすぎないようにする ●経験を積んだ人と新人の組み合わせが大事で、役職が長くならないようにする ●楽しく活動できることがわかれば担い手になる人はいるのではないか ●定年した人をうまく取り込む必要がある ●子ども会・PTAが重要(各団体の中でその後につながる次期役員を育てていく) ●年数を決めて交代制にしたり、マニュアルを作って引き継ぎできるようにする ●自分の団体の中だけでなく、他団体と連携を図ることを考える ●自分の地域で個別の支援が出来る担い手のシステムをつくる(見守り、サロン) <テーマ4> 地域団体と多様な主体との連携・協力について 地域団体がボランティアやNPO、学生などと連携すると どんなことができるでしょうか。 ○地域は、まだ環境の変化に対応できていない面がある ○地域の日常の行事やサロンなどには、まだ企業の参加はあまり見られない ○地域によって企業のありなし等、エリア的な偏りがある ○継続性の点から、学生は卒業してしまうと難しい ●協力する企業や大学側に、ニュース性、イメージ向上等のメリットが必要 ●地域と企業、学生、NPOなどとのコーディネート、橋渡し役が必要 ●専門性や新しいアイデアなど、やりたい人の熱意を形にしていくことが必要 ●現場における行政、企業、NPO等の連携・協力による地域課題解決 <テーマ5> 町内会・自治会への加入促進について なぜ町内会や自治会に加入する人が減っているのでしょう。 どうしたら加入率が高まるでしょうか。 ○マンション(アパート、賃貸)はわがまち意識が低く、町内会に入ってくれない ○加入しなくても生活に影響がない(加入する意義・メリットがわかりにくい) ○情報不足で、町内会や地域活動で何をやっているか見えない ○地域のみんなで一緒に何かやるという機会が減っている ○交流が進まないため、いざというときの支援が難しい ○お世話をする人の負担が大きくなって、やれなくなってきている ●役員の研修が必要ではないか(町内会も住民も学んで変わるべき、進歩すべき) ●最低限のルールを共有し、ゆるやかに連携していくことも必要 ●子育て世代や高齢者世代は地域の支え合いが必要 ●管理会社の指導により加入する場合もあるので、管理会社の関わり方も大切 ●新住民の歓迎会を開催する <テーマ6> コミュニティセンター(コミセン)の利用促進について コミュニティセンターを利用したことがありますか。 どうしたら、もっと利用したいと思いますか。 ○コミセンの状況がよくわからない ○利用したいがなかなかルールが厳しくて、気軽に利用できないことがある ○管理人が不在のときもあり、申込手続きなど時間に厳しい面もある ○若い人があまり利用していないイメージがある ●コミセンの利用方法や活動内容などについて、情報を得る方法がほしい ●町内会役員以外にもコミセン管理業務の一部を任せてみてはどうか ●利用内容によって料金に差があってもよいのではないか ●囲碁、将棋などの備品が充実していると、利用も増えるのではないか
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