平成27 年度 長野県教育委員会と長野県PTA連合会による教育懇談会

平成 27 年度
長野県教育委員会と長野県PTA連合会による教育懇談会について(報告)
長野県PTA連合会 会長 青木 十郎
教育問題検討委員会委員長 藤森 一俊
Ⅰ.はじめに
私たち長野県PTA連合会では、例年、長野
県教育委員会様と教育問題に関する懇談会を開
催しております。平成 27 年度も 11 月 13 日(金)
に信濃教育会館に於いて開催し、活発な意見交
換を致しました。
懇談会で取り上げるテーマについては、教育
問題検討委員会を中心に年度当初より検討をし
てきました。懇談テーマの選定にあたっては、
①広く長野県全体に渡って共通する今日的な教
育課題であること、②懇談会を通じて県教委、長野県 PTA 相互の意思疎通や強固なパ
ートナーシップの構築を図れるものであること、の 2 点に特に留意し検討を重ねてまい
りました。
また、個別テーマに対する意見集約の方法
として9月に県下15郡市PTA連合会へ教育
問題アンケートを実施し、
同じく9月14日
(月)
には長野県小・中学校校長会の代表者の皆様
との懇談会も開催致しました。特に校長会様
との懇談会では学校・教師の代表である小・
中学校の校長先生との様々な意見交換を通じ
て、保護者側の意見だけに偏ることなく、長
野県 PTA 連合会としての意見集約に幅を持
たせることが出来ました。この場をお借りして長野県小・中学校校長会の皆様へ御礼申
し上げます。
以下が今年度の懇談会のテーマです。
1.信州型コミュニティスクールの目的とPTAとしての関わり方について
2.「長野県中学生期のスポーツ活動指針」策定後の現状と健全なスポーツ活動のあ
り方について
3.長野県の特別支援教育の現状と課題、今後のPTAとしての関わり方について
4.信州教育の信頼回復に向けた取り組みについて
以上のテーマについて論点をあらかじめ質問書として県教委様へ提示させていただき、
それに対する回答を受けて懇談を行うという形式で進めさせていただきました。
以下、懇談内容についてご報告させていただきます。
Ⅱ.懇談内容の報告
1.信州型コミュニティスクールの目的とPTAとしての関わり方について
信州型コミュニティスクールについては平成29年度までに県内すべての小中学校に設置を
進めるとして取り組みがされております。信州型コミュニティスクールの設置についてはPTA
内部のアンケートや懇談等でも概ね肯定的な意見が占めておりますが、中には「説明が十分でな
いまま取り組まれてきたこともあり、保護者が内容を良く理解するまでに至っていない」また、
「現状の認識が浅く、地域でどんな子どもに育てていきたいのかなど活動の目的がないまま、た
だやっているというところもある」といった理解不足を指摘する意見や「概念、願いは理解し、
良い活動だと思うが、毎年入れ替わってしまうPTA役員が組織を担い、率先した行動を取るの
は難しい」「PTAが参画して上手くいった具体例がいくつかあるとPTA全体の気持ちを盛り
上げていくことができるかもしれないが、現在は単なる“願い”であって、結実していくゴール
も過程も想像が付かない」「何からどうして行くのか?手が付けられない」などといったPTA
の関わり合い方についての意見もあり、とりわけそれぞれの単位PTAにおいては信州型コミュ
ニティスクールとの関わりの持ち方について、とまどいや温度差が存在していることも事実のよ
うです。
そうした状況を踏まえて、次の質問を致しました。
(1)「信州型コミュニティスクール」を通じて、長野県の子どもたちをどのような子どもに育て
て行きたいのでしょうか、また、従来の学校形態と比べて具体的にどのような部分の改善を願
っているのか、そもそもの目的とそれを進めるための長野県教育委員会の方針(方策)について
ご教示下さい。
(2)「信州型コミュニティスクール」における、保護者・教職員の組織体としてのPTAの関わ
り方について、長野県教育委員会としてどのようなことを望み、期待されているかをご教示下
さい。
これらの質問に対して以下の回答をいただきました。
【長野県教育委員会からの回答】
(1)信州型コミュニティスクールは、学校と地域が「こんな子どもを育てたい」という願いを
共有しながら、一体となって子どもを育てる仕組みを持った地域と共にある学校です。信州
型コミュニティスクールの核となる会議(運営委員会等)に学校支援のボランティアの代表
の方やコーディネーターに参加していただき、子どもの育成に関わっている経験をもとに、
子どもの育ちについてご意見をいただき学校運営に生かすこと、
話し合いの中で子どもへの
願いや課題を共有して共に何ができるのかを考え、
学校と地域が一体となって子どもを育て
ることを目指しています。
(2)信州型コミュニティスクールは、ボランティアの組織化による持続的な学校支援を考えて
おり、PTAの皆様には「できる人が・できる時に・できること」を、ボランティアとして
学校支援に参加していただくことや、
運営委員会等にボランティアやPTAの代表として参
加していただくことで、協力をお願いします。
(文化財・生涯学習課)
2.
「長野県中学生期のスポーツ活動指針」策定後の現状と健全なスポーツ活動のあり方
について
「長野県中学生期のスポーツ活動指針」が策定されて約1年半が経過しました。
この指針については策定当初より「朝部活動の原則廃止」という方針がマスコミ等にも取り上
げられ、その賛否についての議論がフォーカスされてきたという経過があります。
PTAとしては、この指針のそもそもの趣旨である『心身の成長過程にある中学生期にとって
のスポーツ活動が、
「スチューデント・ファースト」
(学習者本位)の精神に基づく、適切で効果
的な活動となることを目指して』という部分に立ち返って、本来の目的に対する成果と課題につ
いて現状を把握し議論して行くことが重要であると考えます。
そのような観点に基づき、次の質問を致しました。
(1) 生徒の生活の改善を含む本指針の目的・成果について、現状をどのように把握されていま
すか。
(2) 本指針の目的・成果について各学校、保護者に対して十分な説明はされていますでしょう
か。また今後更に説明をしていくような予定はありますか。
これらの質問に対して以下の回答をいただきました。
【長野県教育委員会からの回答】
(1)運動部活動の現状については、平成 26 年度 2 月と平成 27 年度 8 月に公立全中学校に対し
調査を実施したところです。多くの学校においては、今年度から新しい活動基準で実施して
いると認識しており、今後、学校現場を訪問するとともに、寄せられる「成果」や「課題」
の声について検証し、必要に応じた支援をしてまいりたいと思います。また、生徒一人ひと
りに応じた適切な活動となるよう、
「不断の見直し」を市町村教育委員会や各校に求めてま
いりたいと思います。
(2)平成 26 年度においては、各校のスポーツ活動運営委員会や市町村教育委員会担当者会等
にのべ 70 回(参加者 2,791 名)にわたり、指針の趣旨等について説明をしてきました。な
かでも、6 月 20 日に行われた松本市PTA連合会主催の「部活動・社会体育に関する公開
委員会」では、多くの保護者に参加いただきました。今後も要請があれば、説明をしてまい
りたいと思います。
(スポーツ課)
3.長野県の特別支援教育の現状と課題、今後のPTAとしての関わり方について
長野県の特別支援教育の充実につきましては、多種多様な教育的ニーズに対してすべての子ど
もが輝く教育を目指して日々ご尽力をいただいているものと拝察致します。
PTA内部でも特別支援教育の充実に対して要望をする声が多くある一方で、特別支援教育に
対する理解不足や知識不足を指摘する声も聞かれております。
長野県が基本方向とする、
「特別な支援を必要とする子どもが、自立と社会参加に向けて、出
来る限り身近な地域で必要な支援が受けられ、すべての子どもが共に学び共に育つことができる
教育」のためには、今後我々PTAも特別支援教育についてより高い意識を持ち、学んでいくこ
とにより、支援・協力体制を構築していくことが必要であると認識しております。
以上の観点より、次の質問を致しました。
(1) 長野県の障がいを持つ子どもたちがニーズに応じた教育を受けられるための施策としての
特別支援教育の充実度について、現状と課題のご教示をお願いします。
(2) これからの共生の社会を考え、現在、特別支援教育に子どもが直接関わっていない保護者
への理解・啓発を進めていくためにPTAとしてどのような協力ができるのか、どのよう
に支援していったら良いかアドバイスをお願いします。
これらの質問に対して以下の回答をいただきました。
【長野県教育委員会からの回答】
(1) 発達障がいの診断のある児童生徒の増加、特別支援学級への在籍者の増加、中学校特別
支援学級卒業生の約 66%が高等学校へ進学している現状から、全ての学校、通常学級を含
む全ての学級において、特別支援教育を推進していく必要性があります。
今年度、小学校へLD等通級指導教室を 10 教室増設するなど多様な学びの場の保障を図
ったり、高等学校を含め特別支援教育に関わる研修を充実させているところです。
これらに加え、一度、決定した教育対応は固定ではなく、適時に子どもの成長を保護者の
方を含め、関係者が共通理解を図り、見直しを図っていくことの重要性について理解啓発
を図ってまいります。
(2) 現在、我が国は、障がいのある子どもと障がいのない子どもが共に育ち共に学ぶ「イン
クルーシブ教育システム」を構築し、共生社会の実現を目指しています。この実現に向け
ては、多様な学びの場の保障といった環境の整備とともに、周囲の者(児童生徒、保護者
等)が障がいに対する正しい理解を進めていくことも大切な基礎的な環境整備と位置付け
られています。現在、県では、
「発達障がい支援力アップ出前研修」を行っており、これは
各校のPTA単位でも実施可能でありますので、活用いただければと思います。
(特別支援教育課)
4.信州教育の信頼回復に向けた取り組みについて
ここ数年、残念なことに長野県の教職員による不祥事案が何件か発生してしまい、マスコミ等
にも取り上げられるような事態になってしまったケースもございます。
不祥事そのものについてはひとりの大人、社会人としての資質に依る部分に原因の大半がある
と考えますが、こうした場面において一番心を痛めているのは子どもたちであり、
「スチューデ
ント・ファースト」の観点からも絶対あってはならないことだと考えます。
私たちPTAもその活動の趣旨からして、このようなことが起きないために、日頃から学校・
教職員と家庭・保護者との信頼関係、協力関係をより強固にしていくことが必要不可欠であると
考えています。
このような考え方のもと、次の質問を致しました。
(1) 長野県教育委員会として、長野県の教職員のあるべき姿についてどのように考え、今後ど
のようなことを期待しますか。また、そのためにPTAとしてはどのような協力ができる
とお考えでしょうか。
(2) 「信州教育の信頼回復に向けた行動計画」が策定され2年あまりが経過しました。教職員
の不祥事再発防止に向けた取り組みの現状・成果についてお聞かせください。
これらの質問に対して以下の回答をいただきました。
【長野県教育委員会からの回答】
(1) 長野県では、子どもの命と安全を守り、夢や可能性を育む専門性を磨き、人間力を高め
るために学び続けることを教員の使命・任務としており、教員採用においても、平成 26 年
度採用選考の受験者募集から、同僚や保護者、地域の方々と協働できるという点を県が求め
る教師像の観点の1つとして設定したところです。
教員としての使命感と倫理観を基盤に、子ども、保護者、同僚、地域の方々の思いを受け
止め、よりよい関係を築くことにより、信州教育への信頼回復が可能だと考えます。
地域に根ざした教育を推進するため、それぞれの学校の教育活動に、一層の協力をお願い
します。
(義務教育課)
(2) 長野県では、子どもの命と安全を守り、夢や可能性を育む専門性を磨き、人間力を高める
ために学び続けることを教員の使命・任務としており、長野県の教員に求められる資質能力
を踏まえ、ライフステージに応じた教員研修を実施しているところです。地域に根ざした教
育を推進するため、それぞれの学校の教育活動に一層の協力をお願いします。
(教学指導課)
(3)今年度、平成 28 年度の教職員の人事異動の方針を改訂し、教職員が地域に根ざした教育
を実践できることに配慮するなど「信州教育の信頼回復に向けた行動計画」に基づいた取組
を進め、引き続き県民の長野県教育への信頼回復に努めているところです。
教職員の懲戒処分件数も取組以降、減少傾向にあり、一定の成果があがっていると捉えて
いますが、今年度においても飲酒運転等といった教育公務員としての自覚に欠ける行為が理
由の免職が3件も発生しており、大変憂慮すべき状況であり、今後も市町村教育委員会や学
校現場の理解と協力を得ながら、引き続き不祥事根絶に向けた取組を粘り強く行ってまいり
たいと思います。
(教育政策課)
Ⅲ.おわりに
以上が懇談テーマとそれに対する県教委様からの回答要旨です。
当日はこの回答要旨に関して、県教委の担当者様から詳細の説明がなされました。ま
た、県P参加者からも積極的な質問・意見が出され、大変有意義な懇談会となりました。
また、伊藤教育長様にも公務ご多忙の中、終始ご出席をいただき、貴重なご意見を賜る
ことが出来ました。教育行政に関して知識の浅い私たちに対し、丁寧かつわかりやすく
ご対応を頂きました長野県教育委員会の皆様に厚く御礼を申し上げます。
今回は 4 つのテーマを取り上げて懇談会を行いましたが、一言で教育問題と言っても
本当に様々なものがあることを痛感致しました。
今回の懇談会では様々な課題に対して、
行政機関である教育委員会に「何かをしてもらう」のではなく、PTAとして「どのよ
うな協力をしていけるか」といった視点で取り組めたことは大変意義深かったと思いま
す。
長野県PTA連合会は、長野県の児童・生徒の健全育成のために県内教育関係団体と
協力して本県教育の一層の向上に努める団体として、これからも教育諸問題に対して積
極的に取り組んで参りたいと思います。