先第四系陸域環境の解析ツールとしての古土壌

先第四系陸域環境の解析ツールとしての古土壌
Paleosols as analysis tools for pre-Quaternary terrestrial environments
草場 敬
*
Takashi KUSABA
*
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
National Agriculture and Food Research Organization, Kyushu Okinawa Agricultural Research Center
摘 要
陸域表層の大半を覆う土壌は、母材が堆積した後の比較的長く、景観が安定した期
間に形成される。そのため、地層から得られる情報以外に、気候や微地形などの情報
を土壌断面特性から直接得ることできる。一方、土壌は埋没に伴い変質を受け、有機
物の分解、脱水、鉄水和酸化物の再結晶などが生じ、元来有していた土壌特性がしば
しば失われる。そのため、先第四系での古土壌の認定には根の痕跡、土壌微細形態、
土壌層位など、埋没後変質しても判読可能な特徴が用いられる。認定された古土壌は、
結核や斑紋の有無とその形態、土壌層位の発達程度などによって分類、立地環境が推
定され、景観や気候の復元に活用されている。わが国の先第四系の地層群には、かつ
て地表面だったと判断される地層が数多く認められる。わが国は、陸域環境復元で不
明な点が多い東アジアに位置していること、さらに変動帯に位置していることから、
その特徴を生かした古土壌研究が望まれる。
キーワード:解析ツール、古土壌、先第四系、陸域環境
Key words:analysis tool, Paleosol, pre-Quaternary, terrestrial environment
1.はじめに
地質学(層序学や古生物学)
では、主に地層の堆積
学的な特徴や鉱物学的・地化学的な特性、また、地
層に含まれている生物化石や生痕化石などの特徴か
ら、過去の地球表層の環境復元やその進化が研究さ
れてきた。地層の堆積学的な特徴は堆積物の移動機
構や沈積過程など地層形成のイベント時の特性を、
また、鉱物学的・地化学的な特徴は、母岩(母材)の
特徴や風化環境など地層形成のイベント時、もしく
はイベント直前の特性を主に反映している。そのた
め、陸域環境については、地層が形成された場所の
景観
(ランドスケープ)
や、地層形成後の大半の時間
を占める静穏時の立地環境を直接反映しているとは
言い難い面があった。また、研究対象も沈積初期の
堆積構造がより明確な粗粒相の場合が多く、分布上
多くを占める細粒相は決して多いとは言えない。
一方、陸域表層の大部分を覆う土壌は、母材とな
る砕屑物などが堆積した後の比較的長く、かつ、景
観が安定した期間に形成される。そのため、母材の
供給パターンや母材の岩石学・鉱物学的な性質以外
に、気候や微地形
(地下水位)
、植生、土壌生成期間
の長短などに大きく影響され、これらの土壌生成因
子の有無や強弱を反映して形成時の立地環境特有の
土壌断面が形成される 。逆に、土壌断面の特徴を
読み解くことができれば、安定期での景観などを直
接復元することが可能となる。そのため、土壌形成
時の環境情報が土壌断面特性に保存されていること
が多い第四系では、古土壌を用いた気候や地形の復
2)
元、層序の解明などの研究がなされてきた 。
近年、欧米では、過去(地質時代)
の景観のもとに
形成された古土壌の認定法や研究法などが地質研究
者の間に定着するにつれ、第四系だけでなく先第四
系、中には先カンブリア系まで古土壌が数多く見出
されるようになった。特に、1990 年以降、風成環
3)
4)
5)
境 、内陸の湿性環境 、デルタ 、地域によって
6)
7)
は海域縁辺部 や海退時に露出する海成堆積物 な
ど様々な堆積環境から古土壌が見出されている。さ
らに、対象とする研究領域も、過去の気候区分の解
釈だけでなく、後述するように過去の降水量や気温
8)
9)
の推定 、堆積盆における景観の復元と変遷 、陸
10)
域でのシーケンス層序の構築や堆積システム復元
など様々で、多くの分野で古土壌は有用な地質時代
の陸域環境の解析ツールとなりつつある。
わが国の西南日本内帯には、先第四系の陸成層を
含む地層群に顕著な赤色岩層の発達が認められる。
これらの赤色岩層には炭酸カルシウム結核など、か
つての土壌生成作用が関わったと推定される地層が
1)
受付;2010 年 6 月 21 日,受理:2011 年 8 月 11 日
*
〒 861-1192 熊本県合志市須屋 2421,e-mail:[email protected]
2011 AIRIES
179
草場:古土壌を用いた先第四紀の陸域環境の復元
数多く認められる 。しかし、わが国では、地質と
土壌は別組織で教育・研究されることが多く、また、
研究成果の活用場面の違いなどもあり、古土壌の研
究やそれを用いた環境復元などの研究は、後述のよ
うにほとんど実施されていない。
そこで、ここでは、埋没後に土壌が被る続成作用、
古土壌の認定方法、古環境の復元に重要な古土壌の
分類、諸外国での古土壌の研究事例などについて述
べ、地質時代の環境解析ツールとしての古土壌の有
用性を紹介するとともに、わが国における古土壌研
究などについて触れ、地質学と土壌学の学際分野と
いうべき古土壌学、土壌地質学の発展の一助にした
い。
11)
2.埋没に伴う土壌の変質 土壌生成因子の影響を受け地表面で形成された土
壌は埋没に伴い変質を受け、有機物の分解、脱水、
鉄酸化物の再結晶、炭酸カルシウムの再結晶、圧密、
スメクタイトのイライト化、泥炭の石炭化などを生
じることが知られている。ここでは、埋没に伴う土
壌の変質について数多くの研究事例をとりまとめて
12)- 14)
15)
いる Retallack
や、Wright をもとに、埋没後
比較的短時間に生じる変質について紹介する。
北米での第四系の埋没土壌と現世の表層土壌の研
究などから、好気的な埋没環境では、有機物はすぐ
に分解することが明らかになっている。このような
有機物の分解は、通常、排水の良い現世の表層土壌
と同じような環境で形成された古土壌にのみ認めら
れ、泥炭に富み、水が停滞する環境の古土壌には認
められない。有機物の分解によって元来有していた
土壌の色は変化し、より鮮やかな色(マンセル表色
系では高彩度)を呈するようになる。また、有機物
が分解した土壌は、現世の不毛地帯で見られるよう
なポップコーン状の風化形態を呈するようになる傾
向がある。
埋没に伴って、ゲーサイトのような褐色の鉄水酸
化物は、脱水・再結晶化によってヘマタイトのよう
な鉄酸化物に変化すると考えられている(多くの研
究者は前述のプロセスがヘマタイト形成の有力なプ
16)
ロセスと考えているが 、現世の土壌ではフェリハ
イドライトからの形成や溶液からの沈殿などの中間
段階を経ないでゲーサイトからヘマタイトが直接形
17)
成された事例は知られていないこと や、ゲーサイ
トからヘマタイトへの変化に必要な温度を被ってい
ないと推測される第三系の赤色泥岩が存在すること
など、問題点も残されている)。鉄を含む鉱物はヘ
マタイトからなる風化殻に覆われるため、古土壌は
明るい赤色を呈すこと(埋没赤色化)が多い(マンセ
ル表色系の色相では 5YR もしくはそれより赤い)。
赤色の程度は主に鉄の酸化鉱物や水酸化鉱物の性質
や粒度に依存している。一方、赤色の古土壌層の中
180
には、青灰色や緑灰色の層位や斑紋、また、根の痕
跡の外縁部などがしばしば認められる(図 1)。これ
は、埋没後の嫌気的な条件下での有機物の分解など
に伴う鉄の酸化物や水酸化物の還元と、鉄の移動を
示すものと考えられている
(埋没グライ化)
。
埋没後、柔らかくてもろい土壌は、カルサイト、
ジプサム、ヘマタイト、シリカなどの膠着物の沈殿
により硬くなる。土壌の膠着物は通常ミクリティッ
ク
(微粒子)
状を呈し、低マグネシウムカルサイトで
あり、もともと存在した粒子を置換したと考えられ
ている。逆に、埋没中、地下水などによって形成さ
れたカルサイトの膠着物はスパリー
(透晶質)状で、
薄い平板状をなす傾向がある。
このような変質により、例えば、湿潤から半湿潤
(非寒冷)
気候下で排水の良い低地に形成された土壌
は、当初、暗灰色の A 層、褐色の B 層をもってい
た土壌断面が、緑灰色の表層、緑灰色の根の痕跡を
もった赤色の下層からなる土壌断面へと変化する
(図 2)。また、少し灰色から褐色がかった土壌は緑
~赤の斑紋の地層へと変化する。埋没し、続成作用
に続いて変成作用の領域になると、土壌断面はさら
に暗色となり、表層は暗緑灰色に、また、下層は紫
色に変化し、変質に伴うイライトやクロライトの形
成によって粒度は粘土質からシルト質へと粗粒化す
る。
以上のように、土色や粒度は変化するものの、土
壌層位や根の痕跡、土壌の結核など多くの古土壌の
特徴は緑色片岩の変成相まで維持され、古環境の復
元に利用される。
a
a
b
図 1 古 土壌の水平断面(次表層)に認められる根の
痕跡(天草,草場撮影).
根の痕跡部 a)は灰白色,b)外縁部は灰色,根の周辺は暗赤灰色
を示す.埋没後,嫌気的条件下での有機物(根)の分解等のため,
根が存在した中央部は還元条件となり鉄が移動し暗灰緑色を呈す
と考えられる.移動した鉄は外縁部で酸化され新たに酸化物を形
成し灰色を呈したと推定される.一方周辺部の土壌部は埋没に伴
う鉄水酸化物の脱水・再結晶化によって形成されたヘマタイトな
ど鉄酸化物のため赤色を呈していると考えられる.根の周辺の土
壌部分には 0.2 ~ 0.8 cm(平均 0.5 cm)の粒状の土壌構造が認め
られる.
地球環境 Vol.16 No.2 179-188
(2011)
a
b
c
図 2 砂岩層の下位に認められる古土壌断面(天草,草
場撮影)
.
矢印が上位方向を示す.古土壌断面は上部が粘土質,下部に行く
につれシルト質であり,大きく最上部約 15 cm の灰色を呈す層
位(a),15~45 cm 深の生物擾乱に富む緑灰色~赤紫層位(b),
45 cm 深の赤色を呈す層位(c)よりなる.クレバススプレイもし
くは小チャネルと推定される上位の砂岩層より新たに水分等が供
給され,古土壌の最上部は埋没後も嫌気的条件下になりやすく,
さらに豊富であった有機物の分解等により還元条件となり鉄が移
動し,層位全体が暗灰緑色を呈すようになったと考えられる.生
物擾乱に富む層では有機物に富む生物の這い跡が暗灰緑色を呈し
ている.
3.古土壌の認定方法
このように土壌は地表面で形成された後、侵食・
埋没作用、それに引き続く続成作用などの過程によ
り、元来有していた土壌特性がしばしば失われてい
く。そこで、通常、古土壌の認定には、埋没後変質
しても判断可能な特徴をもとに行われる必要があ
り、根の痕跡、微細形態、土壌層位の 3 つが提案さ
13),18)
れている
。
根の痕跡はかつて堆積物に植物が生育していた証
拠であることから、古土壌の認定において最も有効
な認定手段である。高い還元的な状況下では根その
ものの有機物が保存されることはあるものの、その
ような事例は稀である。そこで、下記のような特徴
を持った斑紋や石灰質の結核を根の痕跡と判定して
いる。1)
層理面(地層面)に直交ないし斜交する不規
則な紐状の形態、下方に向かって細くなる(場合に
よっては中心部に有機物の痕跡が認められる)。2)
中央から下方および外側に枝割れをする。3)周辺の
堆積物の圧密のため同心円上の形態をもつ。このよ
うな特徴より、動物活動の痕跡や土壌の他の特徴と
区別される
(図 3)
。
地質学的な論文では、古土壌は塊状で、特徴がな
く、不明瞭な堆積構造や変成構造などとしばしば報
告されていた。しかし、古土壌は現世土壌と同様に、
斑紋や結核、粘土皮膜、微細土壌構造など特徴的な
微細な形態を有しており、他の地質学的な物質と区
別できる。特に、炭酸カルシウムからなる結核(カ
ルクリート)は、数 mm~数 10 cm で灰色~灰赤色
を呈し、長球状、柱状、紐状などを示し、容易に判
図 3 根の痕跡(矢印部分:天草,草場撮影).
上方が上位.オリーブ灰色を示す根はほぼ垂直に下方に向かって
枝分かれし,細くなるとともに,密度も減少する.根部の直径は 0.2
~1.5 cm,長さ 60~90 cm.断面は円状.周辺の土壌部は暗赤色
シルト質.ハンマーの大きさは約 30 cm.
図 4 角柱状構造(直径が 3~5 cm,長さが 10~20 cm)
を示す Calcic 層(天草,草場撮影).
場所によっては上下 2 段構造を示す.上方が上位.ハンマーの大
きさは約 30 cm.
読できる(図 4)
。
また、古土壌では、1)
多くの場合、組織や色、構
成鉱物などが下方の母材に向かって漸変するのに対
し最上の層位の上面は通常上位の地層
(層理)によっ
て切り取られる、2)上下の層位に比べ粘土画分や炭
酸塩、有機物、根や生物活動の痕跡に富む層位が認
められる、3)表層から下層に向かって堆積時に形成
された堆積構造や母材そのものの性質が明瞭になっ
181
草場:古土壌を用いた先第四紀の陸域環境の復元
てくる、などの特徴を示す。
19)
,20)
4.環境復元ツールとしての古土壌
では、認定された土壌はどのように環境復元のツ
ールとして活用できるのであろうか?まず、利活用
の大元となる古土壌の分類システムについて述べ、
次に環境復元の指標となる土壌特性についていくつ
かの例を挙げて紹介する。
4.1 古土壌の分類
地層の対比、地質図の作成、古土壌の環境復元等
の点から、古土壌の類型化や分類は極めて重要であ
19),20)
る。現在、古土壌の分類には、Retallack
をはじ
めとする米国の Soil Taxonomy や WRB など現世土
壌の分類システムを適用するアプローチと、Mack
21)
22)
ら や Nettleton ほか の古土壌用に設計された土
壌分類システムを用いる大きくアプローチの 2 つの
23)
土壌分類が存在する 。
前者のシステムのもととなる米国の Soil Taxonomy では、粒度(土性)や土色、有機物の量、特定の
鉱物の有無、陽イオン交換容量(CEC)、pH などの
性質をもとに同定された土壌特徴層位といわれる土
層が分類の基礎となっている。特徴層位の判定基準
には、pH や塩基飽和度、有機炭素含量やその厚さ
など、埋没や変質によって容易に変化してしまう特
性を含んでいるため、前者のシステムでは特徴土層
が示す形態的な特徴など変化しづらい項目を分類基
準として数多く代用し、また、分類基準を緩和して
表 1 Mack ら
特徴土層や土壌タイプを推定・判読している
。
例えば、最高位の分類カテゴリ(目)
で、乾燥地の草
原に広く分布する Mollisol は、現世土壌では、黒色
で柔らかくて腐植に富み細かい土壌構造をもち、一
定の層厚をもった高腐植含量、高塩基飽和度(50%
以上)を示す Mollic 表層の有無などで判読される。
しかしながら、古土壌では、有機物は滅多に原状を
維持していることはないことから、埋没続成の影響
などを考慮してその層厚を推定しつつ、粒状構造を
もち、細根や生痕が豊富であること、分散もしくは
結核状の炭酸塩が存在すること、長石など易風化鉱
物の粒子が良く認められることなどから、Mollic 表
層は判読される。さらに、前述の Mollic 表層の特
徴に加え、次表層が粘土質もしくは Calcic、または
Gypsic であるなど現世土壌での特徴から Mollisol
と同定される。さらに、もしアイスウェッジなど凍
結した証拠が認められれば、1 つ下の分類カテゴリ
である亜目での冷帯から寒帯に分布する Mollisol の
一種である Boroll に分類される。一方、Mollic 表
層と似通った特徴表層に、高有機物含量であるもの
の、細かい土壌構造をもたず、50%以下の塩基飽和
度を示す Umbric 表層がある。この表層は易風化鉱
物が少なく Calcic でないことから Mollic 表層と区
14)
別される 。
後者のシステムの中でしばしば引用される Mack
21)
ら の分類システムについて、ここでは紹介する。
このシステムは有機物含量、土壌層位の発達程度、
酸化・還元条件、鉱物変質、不溶性化合物の溶出、
の土壌目の特徴と米国 Soil Taxonomy の土壌目との対応.
21)
土壌目
特徴
米国の Soil Taxonomy において,
ほぼ対応する土壌目
Calcisol
カルシソル
次表層に,水の不飽和帯(1 年を通じて地下水の存在する面より上位)
で形成された Caicic 層(炭酸カルシウムやドロマイトに富む層)をも
つ土壌.地中海性気候や半乾燥亜熱帯地域に主に分布.
Aridisol Mollisol・
Alfisol・Inceptisol の一部
Histosol
ヒストソル
炭層(重量で 50%,体積で 70%以上)を含む土壌.ただし,炭質頁岩
は含まない.泥炭土で湿地で形成.
Histosol
Spodosol
スポドソル
次表層に有機物や鉄酸化物の集積層をもつ土壌.湿潤~過湿潤気候に
分布.
Spodosol
Oxisol
オキシソル
化学的に不安定な鉱物が粘土や三二酸化物に変質した,最も風化が進
んだ成熟した土壌.熱帯・亜熱帯に分布.
Oxisol
Vertisol
バーティソル
膨張性粘土鉱物の膨張・収縮による土壌擾乱によって土壌断面が均一
となった土壌.数十 cm 長の貫裂,くさび形の土壌構造,凹凸に富ん
だ地表面,スリッケンサイド,砕屑性岩脈などの特徴をもつ.半乾燥
~半湿潤の粘土質平野や山麓斜面下部に分布.熱帯地域では石灰岩な
ど塩基に富んだ母材上にも発達.
Vertisol
Gypsisol
ジプシソル
表層や次表層に土壌生成起源の石膏や硬石膏をもつ土壌.石膏や硬石
膏で満たされた貫裂,石膏や硬石膏の毛管吸引と沈殿による複雑に侵
食された地表面,石膏や硬石膏からなる柱状の土壌構造や土壌皮膜な
どの特徴をもつ.乾燥地帯に主に分布.
Argillisol
アージリソル
次表層に洗脱された粘土が集積した土壌.土壌粘土皮膜,空隙などに
沿って並んだ配向粘土,砕屑粒子表面の粘土皮膜などが下層で増加.
Gleysol
グライソル
表層もしくは次表層が 1 年の大半の期間過湿な状態の土壌.地下水位
の高い地域に発達する土壌.
Protosol
プロトソル
河川周辺や山地斜面の層位分化が不十分な,若い土壌.
182
Alfisol,Ultisol
Enthisol,Inceptisol
地球環境 Vol.16 No.2 179-188
(2011)
不溶性化合物の集積など、6 つの古土壌で観察可能
な土壌生成的な特徴や過程に注目するもので、この
中の主要な特徴によって 9 つの中から最上位の分類
カテゴリである目が決まる(土壌目については表 1
を参照)。図 5 に示したように、いずれかの分類ボ
ックスより始めて古土壌の特徴が定義に適合するま
で矢印方向に進み続ける。主要な特徴以外に付随的
な特徴(表 2)も追加して亜目として表記することも
可能で、例えば、粘土集積層をもつ Calcisol は Argillic Calcisol となる。一方、Spodosol は低粘土含量、
低炭酸塩濃度の環境で形成されるため、間違えて分
類されたり、重複した特徴をもつ可能性がある。
図 5 Mack ら
前者のシステムでは混乱を避けるため新たな分類
単位を設けず既に確立した分類単位を使用し、かつ、
古環境推定を重要視したのに対し、後者のシステム
は推測や解釈を避け、記載の際の客観性を重視して
いる。古土壌研究者は、現世の土壌と同じ方法で比
較して古環境を推定する目的が多いことから、前者
の現世土壌の分類体系を導入したシステムを使用す
ることが多い。しかしながら、前者のシステムでは、
分類基準に変化しやすい特性の代わりに形態などが
採用されているものの、明確な分類基準が示されて
いないことなどから各研究者の解釈や推定等で同定
されることがあり、前者のシステムの使用に当たっ
による古土壌分類チャート.
19)
いずれかの分類ボックスより始めて古土壌の特徴が定義に適合するまで矢印
方向に進み続ける.
表 2 亜目として表記する際に用いる付随的な特徴
.
21)
付随的な特徴名
Albic
Allophanic
特徴
溶脱層(E 層)の存在
アロフェンもしくは他の非晶質アルミノケイ酸化合物の存在
Argillic
集積粘土の存在
Caicic
土壌生成起源の炭酸塩の存在
Carbonaceous
石炭ではない暗色有機物の存在
Concretionary
同心円構造をもった小球体(結核)の存在
Dystric
長石や火山岩片のような化学的に不安定な粒子が少量しか存在しないことで示唆される低塩基の状態
Eutric
長石や火山岩片のような化学的に不安定な粒子が豊富に存在していることで示唆される高塩基の状態
Ferric
鉄のかけらの存在
Fragic
根が棲息後この層位で終息したりまた側方に拡散したりするような,土壌形成時,既に硬かったことを示
す次表層
Gleyed
褐色や黄色,赤色などの斑紋など周期的に水が湛水する証拠,もしくは,土壌生成起源の黄鉄鉱や菱鉄鉱
の存在
Gypsic
水の不飽和帯(1 年を通じて地下水の存在する面より上位)で形成された石膏や硬石膏の存在
Nodular
分化した内部組織もたない小球体(結核)の存在
Ochric
淡色の A 層の存在
Salic
石膏よりさらに溶けやすい土壌生成起源の塩の存在
Silicic
土壌生成起源のシリカの存在
Vertic
10 cm スケールの乾裂,くさび状のペッド(土壌構造),上下に膨縮する構造,スリッケンサイド(鏡膚)や
砕屑岩脈の存在
Vitric
ガラスの破片や軽石の痕跡や存在
183
草場:古土壌を用いた先第四紀の陸域環境の復元
ては十分注意する必要がある。
4.2 環境復元の指標となる土壌特性
ここでは、土壌から得られる情報の中でユニーク
な情報である地下水位の指標と、景観の安定性の評
価等に関連する土壌の発達程度
(成熟度)
の指標とな
13),14)
る土壌特性について、Retallack
をもとに、紹介
する。
4.2.1 地下水位の指標となる土壌特性
地下水との関係から土壌(土層)
は、地下水面より
上位にあり排水良好な場合、季節によっては地下水
面より下位となり、地下水面の変動範囲にある場合
(氾濫源など)、地下水面より下位にある場合(常時
湛水している湿地など)の 3 つのケースに大きく区
分される。
土壌が地下水面より下位では、含鉄鉱物であるシ
デライト(菱鉄鉱)
やパイライト
(黄鉄鉱)
のような鉱
物が存在し、第一鉄の状態で褐色から灰色を示す。
また、有機物が分解しないため泥炭が集積する。土
壌が地下水面の変動範囲では酸化と還元の繰り返し
のため、グライ層の結核や斑紋が非常に発達するも
のの、この特徴は前述したように埋没変成による赤
色化やグライ化のため、多くの古土壌では一部しか
認められない。そのため、古土壌からもともとの土
壌の状態を推定するには注意を要する。一方、土壌
が地下水面より上位にある場合には、粘土集積層や
Calcic 層が形成される。
地下水面より上位にあり排水のよい土壌では土壌
構造や、また、土壌構造の表面に粘土皮膜が発達す
る。一方、湛水土壌では土壌構造はあまり発達しな
い。
4.2.2 土壌の発達程度
土壌の発達程度は、通常、根の集積程度や土壌層
位の分化程度などから判断される。特に、乾燥地域
では Calcic 層の発達程度が、湿潤地域では次表層
の粘土集積の程度が土壌の発達程度の指標となる。
乾燥地では鉱物の風化等によって炭酸カルシウム
が遊離する。降水量が少ないため土壌から流出する
ことなく、最初は細かく白いパウダー状、もしくは
礫などの表面に不連続状の皮膜が、細いチューブ状
構造として集積する(ステージⅠ:非常に弱く発
達)。時間とともに硬い結核、または礫の周辺や礫
の間をつなぐ皮膜となる
(ステージⅡ:弱く発達)
。
さらに時間がたつと結核はさらに大きくなり、カル
シウムが集積した層位の上部に、結核が合体して形
成された固化層が形成される(ステージⅢ:中程度
に発達)。固化層のため水は浸透せず固化層の表面
に沿って流れるため、その後、この固化層は上部に
葉理構造をもち上部面が切り取られた形態を示すよ
うになる(ステージⅣ:強く発達)
。さらに、この固
化層は非常に厚くなり、場所によっては角礫化、球
状粒子化する
(ステージⅤ:非常に強く発達)
。
湿潤地域では、母材の風化によって粘土が形成さ
184
れ、洗脱によって下層に移動する。カルシウムの集
積と同様、時間経過とともに次表層に粘土の集積が
生じる。当初は粘土質の次表層はほとんど認められ
ず、根が浸透した層理のみが認められる(ステージ
Ⅰ)。時間とともに、土壌は割れ目が出来、土壌構
造や粘土皮膜が形成される。層理はまだ認められる
(ステージⅡ)
。その後、土壌構造や粘土皮膜は顕著
となり、また、層理がかなり不鮮明になる(ステー
ジⅢ)。さらに発達すると、粘土や粘土皮膜の量は
増加し、層理は全く認められなくなる
(ステージⅣ)
。
粘土集積層は 1 m を越え、侵食のため表層は薄層
もしくは認められなくなる
(ステージⅤ)
。これらの
変化は薄片観察でも判読でき、当初は、配向し、ク
ロスニコル下で高い複屈折を示す粘土配向は不連続
で、まばらである
(ステージⅠ)。その後粘土集積層
はより配向粘土が多くなり、あみあわさったような
組織をもつようになる(ステージⅣ)
。
以上のような特徴などから、地下水面との関係や
土壌の発達程度を推定・認定していく。
5.古土壌の研究事例
このような特徴をもつ古土壌を用いた、過去の環
境復元など地球科学についての研究事例にはどのよ
うなものがあるのだろうか?ここでは、景観復元、
層序学、古気候推定などについて、土壌の活用例を
紹介する。
5.1 景観の復元
第四系同様、先第四系の古土壌の研究では、様々
な種類の古土壌の空間分布、古土壌を生み出す景観
要素とその形成過程などに焦点が当てられ、
氾濫源、
風成の砂堆など地域的なスケールから、集水域、砂
漠など堆積盆スケールまで様々なスケールで研究さ
れている。
5)
例えば地域的スケールでは、Arndorff は、ジュ
ラ系のデルタ堆積物の古土壌を対象に、比較的排水
良好で、黄色~オレンジの下層土をもつ淡褐色の古
土壌は砂質の自然堤防やクレバススプレイ上に、逆
に、暗色のシルト質粘土のグライ土は後背湿地に形
成されていることを示し、デルタ平野内での微地形
と古土壌の特性分布との関係を明らかにした。
また、
24)
Bown and Kraus は古チャネル周辺の古土壌を対象
に結核やスリッケンサイドの多少などから土壌の発
達程度を判読し、古土壌の発達程度が土壌の生成時
間だけでなく堆積速度に依存し、さらに、未成熟な
土壌は自然堤防やクレバススプレイ上に、また、成
熟した土壌は氾濫源の末端に形成され、地形的な要
因にも関係していることを見出した。一方、堆積盆
9)
スケールの例では、Alonso Zarza ら は扇状地や湖
周辺、氾濫源の堆積物からなる中新統の古土壌の研
究から、発達程度など古土壌の特性は堆積盆内の場
所によって異なり、その違いは堆積盆内での地質変
地球環境 Vol.16 No.2 179-188
(2011)
動や気象、堆積物の給源の地質や大地形の違いなど
によることを明らかにし、古土壌が地域の地形進化
の制御要因や、気象変動のような外的要因の役割を
評価するのに使用できることを示した。
このように、土壌は小地域の景観や微地形の復元
に使用可能で、地域的な気象条件の違いや堆積盆内
での大地形の変遷などについて情報を提供する。
5.2 層序学的な活用
古土壌層はそれぞれ土壌層毎に形態的な特徴を有
しており、また、しばしば広範囲に分布することか
ら、古土壌を層序学的なマーカーとして使用し、第
四系の地層を細分したり、また、地層の対比に用い
25)
られてきた 。近年は、古土壌を用いて厚層の陸成
層を海水準変動と構造運動とに関連したシークエン
スに細分したり、地域的地層だけでなく地球規模の
対比などに対しても使用されるようになってきてい
る。また、陸成層の絶対年代計測対象として土壌中
の炭酸塩の有用性やシーケンス層序モデルの要素と
して古土壌の有効性が示されている
26)
例えば、Ye は色や根の痕跡、石灰質結核などを
もとに同定したコア中の中新統古土壌層が、地下の
石油の貯留岩の分布把握に有用であることを明らか
27)
にしている。Koch ら は古第三系河成層中の土壌
起源炭酸塩の炭素同位体比の変化を、地球全体での
海水温上昇を示す生物起源海成炭酸塩の炭素同位体
比の変化に対比し、この河成層中に見出された生物
相の変化が地球全体の変動と関係している事を示し
28)
た。Rusbury ら は石炭系~二畳系の土壌起源の炭
酸塩の年代を U/Pb 年代測定法によって求め、年代
測定法としての有効性を示すとともに、当時形成さ
れたサイクロセム(一堆積輪廻の間に堆積した一連
の地層で、いくつかの岩相が一定の順序で下から上
へ何回も繰り返し出現する堆積サイクルの 1 サイク
ル、石炭系に良く認められる)
の間隔が約 14 万年程
度であり、更新世の海進海退サイクルと同じ原因で
29)
生じたと推定している。また、McCarthy ら は浅
海成や海岸平野の地層ではシーケンス境界は開析谷
の埋設物の基底で容易に判読できるのに対し、今ま
で困難であった河川谷の間では、層序的な位置づけ
や厚さや色などに加え、生痕や粘土皮膜、鉄の結核
などの微細形態の特徴から地下水位の変動を明らか
にすることにより古土壌層を区分し、古土壌層中に
存在するシーケンス境界を判読できることを示し
た。
このように、特徴を詳細に明らかにすることによ
って古土壌層が地域的地層の対比だけでなく地球規
模の対比にとっても有用であることが示されてい
る。
5.3 古気候の推定
植物化石などに比べ比較的連続して出現する古土
壌は古気候の解釈や年平均降水量や年平均気温の推
定などに利用されるようになってきた。過去の気候
は古土壌タイプと現世土壌タイプの分布比較や、現
世土壌の研究から気候と密接な関係のある土壌生成
的な特性などを用いて解釈される。また、化学組成
や炭素や酸素の安定同位体比も古気候の解釈に用い
られている。
30)
例えば、Mack はニューメキシコの下部白亜系
を対象に、古土壌の土壌タイプの変化(石灰質 Aridisol から炭酸塩を有しない Inceptisol および Alfisol
へ変化)から気候変化
(半砂漠~砂漠環境から半湿潤
~湿潤気候へと変化)を推定している。また、Retal31)
lack は北米の現世土壌の炭酸塩結核の土壌層位と
気候との関係を調べ、炭酸塩結核の土壌層位上面ま
での深さが深くなるにつれ平均年降水量が大きくな
ことや、炭酸塩結核の土壌層位の厚さが厚くなるに
つれ年平均降水量較差(最大月降水量と最小月降水
量との差)が大きくなることなどを見出し、これを
北米の暁新統~始新統の古土壌に適応し、降水量の
32)
時代的な推移を推定している。一方、Sheldon ら
は現世土壌のデータベースから算出した、B 層の
Al2O3/(Al2O3+CaO+Na2O)
(ただし各組成はモル量
に換算。Al2O3/(Al2O3+CaO+Na2O+K2O)で表され
る chemical index of altenation の略称である CIA の
分母より K2O を差し引いたという意味で CIA-K と
略称されている。以下、CIA-K と略)の値と土壌の
採取近辺の気象条件から、CIA-K と気象条件の関係
を求め、これを埋没変成などをほとんど受けていな
いと判断されたオレゴンの始新統~漸新統の古土壌
の B 層の CIA-K に適応し、古降水量や古気温を推
定している。
6.わが国における古土壌研究
以上述べてきたように、先第四紀の陸域環境の復
元にとって、古土壌は極めて有用なツールとなりう
る。一方で、自然堤防などチャネル周辺と氾濫原で
33)
は、粒度組成だけでなく、鉱物組成も異なり 、ま
たさらに、鉱物組成の違いが化学組成にも影響する
34)
場合も見出されている 。また、古土壌の成熟度
(発
達程度)
も母材の堆積速度や地形などだけでなく、気
14)
候によっても異なってくることも報告されている 。
前述したように、埋没直前の土壌表面の侵食などに
よって、次表層など存在する特徴にある土壌層位
(例
えば炭酸塩)は形成された時よりもしばしばより浅
くなると考えられる。また、Calcic 層は土壌生成作
用以外にも地下水から形成されるものも報告されて
35)
いる 。ここでは十分触れることが出来なかったが、
河成層では異なった時期の土壌生成作用を受け、異
なった時期に形成された特徴が重複された複雑な断
36)
面特性を示す古土壌がしばしば報告されている 。
そのため、古土壌を地質時代の環境解析ツールとし
て活用していくには、母材、土壌層位の判読、土壌
の発達程度の判定、また土壌が形成されている堆積
185
草場:古土壌を用いた先第四紀の陸域環境の復元
物の堆積相の認定など注意深い土壌観察や堆積相解
析が必要となろう。さらに、同一試料に対して 1 つ
の解析手法だけでなく別の手法も試みること、得ら
れた結果をクロスチェックするなど十分な注意が必
要であろう。
わが国の西南日本内帯には、先第四系(白亜系~
古第三系)
の手取層群、関門層群、御所浦、御船層群、
西九州含炭層などの陸成層を含む地層群に顕著な赤
色岩層の発達が見られる。これらの地層群には根の
痕跡などかつての地表面と判断される地層が数多く
認められる。近年、これらの地層を対象に、古土壌
37),38)
タイプの時代変遷からの古気候変化の推定
や
39)
古土壌の特徴の記載 、土壌起源の炭酸塩の安定同
40)
位体比からの古植生や古大気組成の推定 、また炭
酸塩結核の形成過程の推定と堆積物供給量との関係
41)
解明 など、古土壌の研究が行われるようになった。
しかし、研究対象が露頭単位であったり、また、古
土壌の認定に主眼が置かれており、古土壌の地理的
な分布特性や地層群全体にわたる時代変遷の把握等
に関する研究は極めて少ない。
わが国は変動帯に位置し、地層が断片化し変形・
変成傾向が著しいことなどから、地層の対比や変
成・変質以前の事象判読が困難なことが多い。
逆に、
地理的・時間的に環境変化が著しく環境変化に富
み、異なった環境が近接して分布するなど、土壌・
地質形成と立地環境との関係解析には好適な場所と
も言うことも出来る。
近年、気候変動が過去の様々な時期に起こったこ
とが海洋だけでなく陸域環境からも報告されるよう
42)
になった 。しかし、これらの報告は欧米が主で東
アジアでは極めて少ない。また、研究が先行してい
る大陸地域は安定地域が主であり、古火山灰土壌の
報告も多いとは言い難い。そのため、東アジアとい
うだけでなく、立地環境の変動に伴う古土壌特性の
変化など、古火山灰土壌の研究も含め変動帯に位置
するというわが国の立地条件を活かした研究が重要
と思われる。
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草場:古土壌を用いた先第四紀の陸域環境の復元
草場 敬
Takashi KUSABA
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター 生産環境
研究領域 上席研究員。大学院修了後、
主に土壌の調査法や肥沃度評価など農業
における土壌資源に関する研究に従事。
現在は農耕地での微量元素などの動態や評価の研究に関わる
一方、土壌を用いた環境復元も試みている。
188