鉛塩半導体レーザーのシングルモード化と波長域拡大

SURE: Shizuoka University REpository
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
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鉛塩半導体レーザーのシングルモード化と波長域拡大
西嶋, 由人
p. 1-92
1995-03-24
http://doi.org/10.11501/3101182
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電子科学研究科
0002515526 R
静岡大学博士論文
鉛塩半導体レーザのシンカレモーMヒ
と波長域拡大
辞周大学国書
1994年11月
西 嶋 由 人
概 要
Pb SnTeレーザは、中赤外領域で発振する鉛塩半導体レーザとして知られ
ている。本論文では、格子整合型Pb SnTeレーザを埋め込み構造とすること
によるシングルモード化に関する研究、そして格子整合型PbSnTeレーザの
発振波長域を10FLmより長波長域へ拡大する研究、またSnをEuで置き換え
ることによるPbTe系レーザの短波長化に関する研究を纏めた。
Pb SnTeやPbE uTeに代表される鉛塩半導体レーザは、発振波長域が
2∼30〝mの範囲の中赤外領域の波長で発振する半導体レーザである。この赤
外波長域には、SOx、NOx、CHx、CO2、0。等に代表される大気中の汚染
ガスや地球温暖化に影響を与えるガス等、各種気体の基本分子振動による固有の
吸収スペクトルがある。ガスによるレーザ光の吸収量を評価することにより、ガ
ス濃度などを評価できることから、鉛塩レーザは、大気中の汚染ガスやその他の
ガスセンサ用光源、ガスの高分解能分光用光源、ガスのヘテロダイン計測用の光
源として主に開発が進められている。
Pb SnTeレーザは、格子整合型ダブルヘテロ接合(DH)レーザが開発さ
れ、ガスの高分解能分光用やガスセンサ用の光源として、実用化の段階に入っい
る。このレーザは、通常、数本の波長で同時に発振するマルチモード状態で、発
振している。そのため、ガスの吸収スペクトルに一致する波長の光を選別するた
めに、測定用の光学系に、グレーティングを用いた分光器が用いられている。ガ
スセンサや高分解能分光装置は、小型化するため、グレーティングが不要で、軽
量な光学系とすることが望まれている。そのため、光源であるレーザには、シン
グルモード化が求められている。
Pb SnTeレーザは、格子整合型DHレーザとすることにより、格子不整で
発生する結晶欠陥を低減できるため、発振波長が6∼10〟mの領域では、動作
温度77KでCW動作するレーザが容易に得られる。しかし、10FLmより長波
長域では、発振する格子整合型DHレーザは得られない。また、Pb SnTe系
1
結晶でエネルギギャップが最大となるPbTeを活性層とした場合、77Kでの
発振波長が5.6pmあるため、Pb SnTeレーザにより、6FLmより短波長域
のレーザを得ることは、困難である。そのため、ガスの吸収スペクトルが多い4
〟m帯のレーザについては、別途検討する必要がある。
従って、前述した通り本研究では、格子整合型Pb SnTeをシングルモード
化すること、格子整合型Pb SnTeレーザの発振波長域を10FLmより長波長
域へ拡大すること、および6〝mより短波長域のレーザを得ることを検討した。
〔1〕シンルグモード化
ガスセンサ用光源として鉛塩レーザを動作させる場合、動作周波数は、DC∼
数KHzと、通信用レーザと比べ低い。半導体レーザでは、低周波動作の場合は
ゲインサブレッション効果があるため、構モードのシングルモード化により、縦
モードのシングルモード化が期待できる。横モードをシングルモード化するため
埋め込み構造を選び、格子整合用クラッド層として、PbTe S eを用い、マク
スウェルの式により活性層のサイズ(幅・厚)について理論検討した。
埋め込み構造は、格子整合型DH構造結晶を、クラッド層と同一の材料で埋め
込むことにより形成する。埋め込み構造を実現するために、結晶成長法としては
液相エピタキシャル法を用いた。活性層からクラッド層への成長時のS n拡散が
レーザ特性を劣化させることを明らかにし、Snが埋め込み成長時に拡散するこ
とを抑止する結晶成長条件を見出した。
波長域が7∼8〝mのレーザで、光出力が従来の値より10倍以上の1.7mW
で、シングルモード発振しているレーザを得た。
〔2〕長波長化
クラッド層に従来のPbT e S eを用いた格子整合型Pb S nT e DHレーザ
は、クラッド層にP b SnTeを用いる格子不整合型に比べ格子不整による結晶
欠陥が少ないため、前述した通り、6∼10〝mの発振波長領域では、閥値電流
2
密度が低減するとともに光出力が向上する。しかし、10〝mより長波長域の格
子整合型DHレーザは、CW動作はもちろんパルス動作すらしない。ところが、
本来特性が悪い筈のPbSnTeクラッド層の格子不整合型の場合、10/Jmよ
り長波長域で、パルス動作のみであるが、77Kの温度で動作するレーザが得ら
れるとともに、20KではCW発振するレーザも得られる。
長波長域の格子整合型レーザが発振しない原因を検討するため、従来と異なる
ヘテロ接合部のバンドモデルを考えた。そして、モデルを検証するために、クラ
ツド層のSn組成の異なる二種類の長波長PbSnTeDHレーザ用結晶を成長
し、電流一電圧特性を調べた。結晶成長法としては、バンド構造が明確になるよ
うに、結晶成長時に起こるヘテロ接合部でのSn拡散を低減できるホットウォー
ル法を用いた。その結果、①PbSnTeDHレーザは、活性層の伝導帯下端の
エネルギ準位E cがクラッド層のE cより高いためバンドオフセット△E cがポ
テンシャル障壁となる、いわゆるヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’で発振す
るレーザであること、②クラッド層にPbTe S eを用いた長波長域の格子整合
型レーザでは、活性層とクラッド層間のSn組成差が大きいため、活性層のE c
だけでなくに活性層の価電子帯上端のエネルギ準位Evも、クラッド層のE cよ
り高いタイプ2に近くなり、バンドオフセット△E cが拡大するため、レーザ発
振しなくなることが判明した。
長波長域の格子整合型DHレーザで、活性層とクラッド層間のSn組成差を小
さくし、ヘテロ接合部のバンド構造をタイプ1’とするため、クラッド層として、
PbTe S eのPbの一部をSnで置換した4元のPb SnTe S eを用いた。
その結果、動作温度77Kで、パルス動作では従来のレーザと比べ1.7〟m程度
長い13.7pmで、CW動作では、従来より3.5FLm程度長い13.5pmのレー
ザを得て、10〝mより長波長域で発振する格子整合型レーザを始めて得た。動
作温度が20Kでは、パルス動作、CW動作いずれも発振波長は18.5′∠mとな
り、従来より、2.5/Jm程度長波長化している。
さらに、今回判明したヘテロ接合部のバンド構造を基に、最高動作温度に関し
3
検討した。その結果、PbSnTeDHレーザで200K以上の動作温度の得る
ことが難しい原因は、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1,であり、活性層の伝
導帯下端のエネルギ準位Ecがクラッド層のEcより高いため、バンドオフセッ
ト△Ecがポテンシャル障壁となり、クラッド層からp型活性層にキャリアが注
入されにくくなるためであることが判明した。
〔短波長化〕
前述した通り、PbSnTeレーザで、4FLm帯で発振するレーザを得ること
は困難である。この波長域のレーザとして、PbTe系レーザでSnをEuで置
き換えたPbEuTeレーザがある。短波長化に対しては、動作温度向上も効果
がある。PbEuTeレーザは、バンド構造がPbSnTeレーザと異なるタイ
プ1であると考えられており、動作温度向上を期待できる。従って、短波長化の
ためPbEuTeレーザを検討した。尚PbEuTeレーザには、PbSnTe
レーザと同じ結晶性の良いPbTe基板や絶縁膜形成・電極形成などの素子化技
術を使用できる利点がある。
PbEuTe結晶は、PbSnTeレーザで用いた液相エピタキシャル法で結
晶成長できないため、ホットウォール法による成長技術を検討した。2種類ある
成長法のうち、比較的に結晶性の良いことから、PbEuTe混晶を成長する方
法を選んだ。結晶成長用ソースとして、PbTeと元素のEuと元素のTeを結
晶成長ソースとして用いる。このソースを使用できるよう、ホットウォール用の
ルツボの構造について検討を進め、Eu組成のⅩ値が0∼0.028と0.03近く
まで、PbトXEuxTe結晶の成長が可能となった。さらに、動作温度向上によ
る短波長化も進めるため、活性層とクラッド層間のEu組成差も検討した。
活性層がPbTeでクラッド層のⅩ値が0.017のレーザで、243Kの最高
動作温度のレーザを得て、PbSnTeDHレーザで得られない200K以上の
動作温度のレーザを得ることが可能になった。そして、活性層のEu組成がⅩ=
0∼0.015の範囲のレーザで、6.5∼3.5〝mの波長で発振を確認した。さら
に、闘値電流密度の温度依存性に関し理論と実験値との比較を行うことにより、
4
Pb EuTeDHレーザは、Pb SnTeDHレーザに比べ、活性層内にキャリ
アが閉じ込め易くなっていることを明らかにした。この原因として、ヘテロ接合
部のバンド構造がタイプ1であるため、活性層のEcよりクラッド層のEcの方
が高く、エネルギ準位の低い活性層にキャリアが溜り易いためと考えられる。
本研究により、埋め込み構造により、このPbSnTeレーザに代表される中
赤外領域の半導体レーザのシングルモード化が可能となるとともに、10/Jmよ
り長波長城および4JJmより短い領域への発振波長拡大のための要素技術開発を
行うことができたと結論できる。
5
目 次
ヽヾ
ペーソ
1
6
第1章 序論
8
1−1 開発の背景
8
1−2 本研究の目的
13
参考文献
16
第2章 PbSnTeレーザのシングルモード化
18
2−1 シングルモード化のための理論検討
18
2−1−1 埋め込み構造
18
2−1−2 活性層のサイズ
21
2−2 埋め込み構造実現のための結晶成長
24
2−2−1 Pb S nTe埋め込み構造
24
2−2−2 埋め込み成長
26
2−3 レーザ特性
32
2−4 まとめ
37
2−5 付録
38
参考文献
41
第3章 格子整合型PbSnTeDHレーザの長波長化
43
3−1長波長PbSnTeDHレーザの従来構造
43
3−2 ヘテロ接合部のエネルギバンド構造
47
3−2−1 結晶成長法
47
3−2−2 エネルギバンド構造モデル
50
3−2−3 エネルギバンド構造モデルの検証
51
3−3 長波長格子整合型Pb SnTeDHレーザの特性
6
56
ペーン
ヽナ
3−4 Pb SnTeDHレーザの動作温度の限界
60
3−4−1エネルギバンド構造による最高動作温度の差
60
3−4−2 闘値電流密度の温度依存性
64
3−5 まとめ
68
3−6 付録
70
参考文献
72
第4章 PbEuTeレーザによる短波長化
74
4−1 Pb E uT e結晶成長法
74
4−2 Pb EuTe DHレーザの特性
76
4−3 PbEuTeDHレーザの開値電流密度の温度依存性
82
4−4 まとめ
84
参考文献
85
第5章 結論
86
謝辞
研究業績目録
7
1章 序論
1 − 1 開発の背景
Pb S nTeやPbEuTeに代表される鉛塩半導体レーザは、発振波長域が
2∼30〟mの範囲の中赤外領域の波長で発振する半導体レーザである。鉛塩レ
ーザは、そのバンドエネルギギャップが、組成及び温度に強く依存しており、結
晶の組成比を変えることで、発振波長域を変えることができると伴に、動作温度
や動作電流を変えることにより発振波長をチューニングできるという大きな特徴
がある。図1−1に示すごとく、この波長域に、SOx、NOx、CHx、CO2、
03等に代表される大気中の汚染ガスや地球温暖化に影響を与えるガス等、各種
気体の基本分子振動による固有吸収スペクトルがある。レーザ光がこれらのガス
に吸収されることから、主に、大気中の汚染ガスやその他のガスセンサ用光源、
ガスの高分解能分光用光源、ガスのヘテロダイン計測用の光源として、鉛塩系レ
ーザは開発されている1)・2)。図1−2にガスセンサの概略図を示す。赤外レー
P b l−XE u xT e
l P b l−X Sn xT e
(本 l 研
究)
P b S l_X Se x HC I
CO
CH 4
C H 4 CO 2 0 3
I
P b l_XS n x S e
l
l
N O 2 l
N H 3 N H 2D
SO 2
0 3 SF 6
l
l
UF 6
C 2H 6
l
l
l
2 4 6 8 10 12 14 16 20
発振波長(〟m)
図1−1 鉛塩レーザの発振波長域
8
ザから出射した光は、放物面鏡で平行ビームとなり、大気中を伝播し、反射鏡に
より戻ってくる。レーザが、複数の波長で発振していることが多く、戻ってきた
光は、グレーティングにより、対象の波長の光のみが分光され、赤外線検知器に
到る0この大気中で伝播している間に、観測しているガスに吸収され、レーザ光
は減衰する。この減衰量により、ガス濃度を評価できる。
図1−2 ガスセンサシステムの概略図
図1−3により、光通信で使用される通常のGaAs系半導体レーザと比べつ
つ、PbSnTe半導体レーザの開発経緯を説明する。GaAs系半導体レーザ
に3年遅れること1965年に、J.0.Dimmock等によりPbSnTe
レーザの発振が液体ヘリウム温度で確認された3)。1970年、GaAs系レ∼
ザで、動作温度の大幅な向上により室温連続動作を実現させ、半導体レーザの基
本構造となったダブルヘテロ(DH)構造レーザが開発された。PbSnTeレ
ーザでも、Grove s等により1974年に、DH構造レーザが開発され、液
体窒素温度(77K)でのCW発振が可能となった4)。
PbSnTeレーザの開発当初の重要課題は、信頼性向上であった。このレー
ザは、通常77K以下の動作温度で使用されるため、動作温度時と保存している
9
年代
6 9年
鉛塩系 レーザ
G a A s 系 レーザ
1965 PbSnTeいザの発振を液体ヘリ 1962 GaAsいずの発振を液
以前
ウム温度で確認
体窒素温度で確認
1974 PbSnTe DH レー
ザで液体窒素
7 0∼
1970 GaAs DH レ
ーザで室温
温度で連続発振
1976
で発振連続
PbSnTe DH レー
ザで熱サイ川劣
1975
化の克服
1977
井戸構造レ
ーザ
PbSnTe DH いザの連続動作
試験
7 9年
1979
GaAs/GaAIAs で量子
1976
InGaAsP DH レー
ザの室
温連続発振
PbSnTe格子整合型いずの開
発
1980
コン〃 ト抵抗劣化の克服
1983
PbSnTe格子整合型レー
ザの高
8 0∼
出力化
8 5年
1984
狭メサ構造PbSnTe レーザで閥
値電流低減
1985
PbTe/PbEuTe 量子井戸レー
ザ
で
温度270Kで発振
図1−3 鉛塩レーザの開発の歴史
10
実用化へ
室温間での温度差が大きい。レーザ用結晶と絶縁膜間で膨張係数のミスマッチが
あるため、この動作時とレーザ保管時との間で繰り返される熱サイクルにより、
絶縁膜破壊が発生していた。絶縁膜材料として、吉河等により陽極酸化膜が開発
され、1976年にこの熱サイクル劣化は克服された5)。さらに、室温で長期間
保管している間にp型電極部のコンタクト抵抗が緩やかに劣化していく問題につ
いても、電極材料やハンダに用いているInが結晶中に拡散していかないように
する電極構造が1980年にLoにより開発され、この間題も克服された6)。ま
た、1977年に、動作温度77Kでのレーザの連続動作試験により閥値電流の
変化のないことも吉河等により確認され7)、レーザの信頼性向上が進められた。
レーザを実用的なデバイスとするには、信頼性以外に、動作電流を低下させる
閥値電流の減少や光出力の増加が必要であり、これらの面を向上させるために、
Pb SnTeDHレーザの開発が進められた。Pb SnTe DHレーザでは、光
を発生する活性層の結晶と、活性層の両側のクラッド層の結晶の格子定数の差が
大きく、この格子定数の不整合により、レーザ結晶に結晶欠陥が発生していた。
Ka s ems e t等は、この結晶欠陥が、活性層に注入されるキャリアの非発光
再結合センタとなり、量子効率を低下させ、閥値電流密度が増大し、光出力が低
下する原因となることを解明した。さらに、Ka s ems e t等は、1979年
にクラッド層にPbTe S eを用いた格子整合型DHレーザを開発し、77Kで
の閥値電流密度を2∼3KA/cm2 にまで低減した8)。また篠原等は、格子整
合による結晶欠陥の低減に加え、レーザのミラ一面形成時に発生する結晶欠陥の
低減も行い、1983年に、77Kでの光出力が10mWという高出力レーザを
開発した9)。さらに、篠原等は、1984年に電流の流れる活性部の構造を狭メ
サストライプ構造とすることにより、レーザの低閥値電流化も実現した10)。
鉛塩系レーザは、通常77K以下の動作温度で使用されている。動作温度向上
は、レーザ用の冷却器がヘリウム循環式冷却器から、液体窒素デュワーや電子冷
却などの冷却器の小型化を進めることが可能となるだけでなく、発振波長域を短
波長化できるために、重要な開発課題である。図1−1に示す通り、発振波長域
が6pmより短波長域には、Pb S nTeレーザと同じ鉛塩系のP b E uTeレ
11
−ザがある0このPbEuTeレーザで、1985年に、Par tinにより量
子井戸構造のレーザ開発が進められ、パルス動作であるが、270Kの動作温度
のレーザが報告された11)o Feit等が、1990年温度195KでのCW動
作を報告し12)、このPbEuTeレーザの電子冷却動作実現の可能性が増して
いる0動作温度が向上することも、短波長レーザを得るのに効果があるために、
PbEuTeレーザは、PbSnTeレーザで困難な6FLmより短波長域での発
振が得られるPbTe系レーザとして、有望な材料と考えられる。
12
1 − 2 本研究の目白勺
本研究の目的として、PbSnTeレーザをシングルモード化すること、格子
整合型PbSnTeDHレーザの発振波長域を10pmより長波長域へ拡大する
こと、および4FLm帯での発振のごとくPbTe系レーザの発振波長を短波長化
することを考えた。
現在、PbSnTeレーザは、ガスセンサやガスの高分解能分光用の光源とし
て、実用化の段階に入ってきている。このレーザは、通常、数本の波長で同時に
発振するマルチモード状態で、発振している。ガスの吸収スペクトルに一致する
波長の光を選別するため、図1−2で示したごとく、グレーティングを用いた分
光器が、測定用の光学系に用いられている。ガスセンサや高分解能分光装置は、
小型化するため、グレーティングが不要で、軽量な光学系とすることが望まれて
いる。そのため、光源であるレーザには、シングルモード化が求められている。
クラッド層にPbTe S eを用いた格子整合型PbSnTeDHレーザは、前
述したごとく結晶欠陥が低減するために、6∼10〝mの発振波長領域で、動作
温度77Kで容易にCW動作する。しかし、10FLmより長波長域の格子整合型
DHレーザは、CW動作はもちろんパルス動作すらしない。ところが、本来特性
が悪い筈のクラッド層にPbSnTeを用いた格子不整合型レーザの場合、10
〟mより長波長域で、パルス動作であるが77Kで発振するレーザが得られると
ともに、20Kでは出力は数FLWと低いがCW発振するレーザが得られる。この
格子整合型レーザの方が特性の悪くなる原因を明らかとして、長波長域で、特性
向上の期待できる格子整合型レーザを検討することは、シングルモードレーザを
得るために必要である。
また、PbSnTe結晶でエネルギギャップが最大のPbTeを活性層とした
場合、77Kでの発振波長が5.6FLmとなるため、PbSnTeレーザで、ガス
の吸収スペクトルの多い4/Jm帯で発振するレーザを得ることは、困難である。
この波長域には、図1−1に示す通りSnをEuで置き換えたPbTe系レーザ
13
としてPbEuTeレーザがある。このPbEuTeレーザは、前述した通り、
量子井戸構造のレーザで、200K以上の動作温度のレーザも報告されており、
動作温度向上を期待できる。動作温度向上は短波長化に対して効果があるため、
4J∠m帯のレーザとして、PbEuTeレーザは有望である。尚、同波長域で発
振するPbSS eレーザと比べ、PbEuTeレーザには、PbSnTeレーザ
と同じ結晶性の良い基板結晶や素子化技術(縁膜形成・電極形成など)を使用で
きる利点がある。
従って、前述したごとく、PbSnTeレーザのシングルモード化と、格子整
合型PbSnTeレーザの長波長化、およびPbEuTeレーザによる短波長化
を、本研究の目的とした。
2章で、PbSnTeレーザのシングルモード化について述べる。レーザ構造
として埋め込み構造を選び、マクスウェルの電磁波の式を解くことにより、シン
グルモード発振のための活性層の厚みと幅を求めた。埋め込み構造は、格子整合
型DH構造結晶を、クラッド層と同一の材料で埋め込むことにより形成する。埋
め込み構造を実現するために、結晶成長法としては液相エピタキシャル法を用い
た。活性層からクラッド層への成長時のSn拡散がレーザ特性を劣化させること
を明らかにし、Snが埋め込み成長時に拡散することを抑止する成長条件を見出
した。発振波長が7∼8〝m域のレーザで、従来例より10倍以上の1.7mWの
シングルモード出力の素子を得た13)・14)。このシングルモードレーザを光源に
用いることにより、グレーティングを光学系から除いた小型ガスセンサを製作で
きるようになった15)。
3章で、10〃mより長波長域への格子整合型DHレーザの波長拡大に関し述
べる。長波長域の格子整合型レーザが発振しない原因を説明するため、ヘテロ接
合部のバンド構造に関し、従来と異なるモデルを考えた。バンド構造が明確にな
るよう、成長時に起こるヘテロ接合部でのSn拡散を低減するホットウォール法
により結晶成長を行い、DHレーザの特性を調べた。その結果、①Pb SnTe
DHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’で発振するレーザであり、
14
②従来のPbTe S eクラッド層を用いた長波長域のDHレーザでは、活性層と
クラッド層間の大きなSn組成差により、バンド構造がタイプ2に近くなり、バ
ンド不連続(障壁)が拡大するため、レーザ発振しなくなることを見出した。
従って、活性層とクラッド層間のSn組成差を小さくし、ヘテロ接合部のバン
ド構造をタイプ1’とするため、クラッド層結晶として、PbTe S eのPbの一
部をSnで置換したPbSnTe S eを用いて、レーザを製作した。その結果、
動作温度77KのCW動作で、発振波長が13.5FLmのレーザを得て、10FLm
より長波長域で発振する格子整合型レーザを得ることが可能となった。動作温度
20Kでの波長は、18.5JJmとなり、2.5〝m長波長化した16)。
さらに、今回判明したヘテロ接合部のバンド構造を基にPb SnTeDHレー
ザの最高動作温度に関し検討した結果、200K以上の動作温度のPb SnTe
DHレーザを得ることが難しい原因は、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’で
あり、活性層の伝導帯下端のエネルギ準位E cがクラッド層のE cより高いため
に、バンドオフセット△E cがポテンシャル障壁となり、クラッド層からp型活
性層にキャリアが注入されにくくなるためであることを見出した16)。
4章では、短波長化のために検討したPbEuTe系レーザについて述べる。
PbEuTe結晶は、PbSnTeレーザで用いた液相エピタキシャル法では、
結晶成長できない。そのため、ホットウォール法により成長技術を検討し、Eu
組成が0∼0.028と0.03近くまで、PbEuTe結晶を得ることが可能とな
った。そして、動作温度向上による短波長化を進めるため、活性層とクラッド層
間のE u組成差も検討した。
最高動作温度は、活性層がPbTeでクラッド層のEu組成が0.017のレー
ザで、243Kの値を得て、PbSnTeDHレーザで得られない200K以上
の動作温度を得られるようになった。そして、活性層のEu組成が0∼0.015
の範囲のレーザで、6.5∼3.5〝mの波長でレーザ発振を確認できた16)・17)。
5章で結論を述べ、本論文をまとめる。
15
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reliability
studies
onlead−Salt
diode
lasers,”J.Electrochem.Soc,127,1372−1375(1980).
7)M.Yoshikawa,K.Shinohara,and
1500h
of
a
PbTe/PbSnTe
double
R.Ueda,”continous
heterostructurelaser
operation
over
at77K,’’Appl.
Phys.Lett.,31,699−701(1977).
8)D.Kasemset
DHlaser
and
diode
C.G.Fonstad,”Lattice一matChed
operating
to166K,”in
Pbl_.XSnxTe/PbTeト,Se,
Technical
digest,International
Electron Devices Metting(Washington D.C.,1979),p.130−132.
9)K.Shinohara,Y.Nishijima,and H.Fukuda,”pbトxSnxTelasers with
high
effiencies,”proc.spIE(Soc.Phot0−Opt.Instrum.Eng.),438,
2ト28(1983).
10)K.Shinohara,Y.Nishijima,H.Fukuda,and
lasers
withlow
threshold
currents,”in
H.Ebe,”pbl
Technical
xSnxTe
digest,9thInternat−
ional Conference onIR and tnm Waves,(Takarazuka,1984),P.71−72.
16
11)D.L.Partin,”Lead
salt
quantum
well
diodelasers,’’superlatt.and
Microstruct.,1,131−135(1985)
12)Z.Feit.D.Kostyk,R.J.Woods,and
P.Mak,”Molecular
beam
epitaxy
grown PbEuSeTe buried−heterostructurelasers with continuous wave
Operation
at195K,”Appl.Phys.Lett.,57,2891−2893(1990).
13)Y.Nishijima,H.Ebe,H.Fukuda,K.Shinohara,and K.Murase,
”pbSnTe
single一mOdelasers
Yith
buried
heterostructure,’’in
Technical
digest,Conference on Laser and Electr0−Optics,(BaltimOre,1985),
p.142−144.
14)Y.・Nishijitna
and
K.Shinohara,’’single−mOde
PbSnTelaser
with
a
buried
heterostructure,’’Appl.Opt.,32,4485−4490(1993).
15)M.Dohi,A.Sawada,Ⅰ.Sugiyama,K.Shinohara,and H.Ishizaki,
”A
highly
sensitive
and
compact
SO2gaS
SenSOr
uSing
a
PbSnTelaser,”
Proc.SPIE(International Society for Optial Engineering),819,
302−306,(1987).
16)Y.Nishijima,”pbSnTe
double−heterostructurelasers
double−heterostructurelasers
by
hot−Wall
and
PbEuTe
epitaxy,”J.Appl.Phys‥
65,935−940(1989).
17)H.Ebe,Y.Nishijima,and
K.Shinohara,”pbEuTelasers
with4−6 FLm
WaVelength made with ho卜Vall epitaxy,”IEEEJ.Quantum.Electron.,
0ト25,138ト1384(1989).
17
2 章 P b S n T e レ−ザの
シ ン グルモ− ドイヒ1)・2)
埋め込み構造を実現し、PbSnTeシングルモードレーザを開発した。本章
では、まず、埋め込み構造によるシングルモード化のための理論検討について述
べる。続いて、埋め込み構造実現のため検討した結晶成長条件について述べる。
最後に、シングルモードレーザの特性について述べる。
2−1 シングルモード化のための理論検討
2−1−1 埋め込み構造
半導体レーザは、端面のミラー方向に光が半導体中を伝播し、ミラーからレー
ザ光が出射す・るものであり、光の導波路構造となっている。そのため、レーザ光
は、電磁波における導波管と同様、モードの概念で示される。
図2−1 シングルモードレーザのモードの制御要素
図2−1にレーザ光のモード制御の要素を示す。半導体レーザは、低周波動作
の場合、導波路の構造により横モードをシングルモード化すると、ゲインサブレ
ツションの効果により、他の縦モードが抑圧され、縦モードのシングルモード化
を行うことができる3)。しかし、GaAs系などの通信用レ∼ザのように、高速
18
動作させるレーザをシングルモード化する場合は、構モードのシングルモード化
に加えて、波長選択性を与える回折格子により縦モードをシングルモード化する
DFB(distributed feedback)構造などが用いられる4)。GHzオーダで動作
させるため、緩和振動周波数に近く、注入キャリア数の変化に誘導放出が追随し
なくなり、光と電子の変化が同期することで起こるゲインサブレッション効果が
小さくなるためである。
PbSnTeレーザなどの赤外半導体レーザの場合、主たる用途が赤外分光や
ガスセンサ用光源であり、動作周波数がDC∼数KHzと低い。従って、ゲイン
サブレッション効果を期待できるため、横モードシングルモード化のための構造
を検討することで、縦モードシングルモード化を進めた。光の発生する活性部と
周囲のクラッド部の結晶組成差や構造等により、活性部とクラッド部の実効的な
屈折率差を変えることで、横モード制御は行われる。構モード制御の機能では、
半導体レーザをゲイン導波路と屈折率導波路に分類できる。ゲイン導波路では、
活性部と周囲のクラッド部に作り付けの屈折率差が無い。一方、屈折率導波路で
は、構造や結晶の組成差により活性部とクラッド部に作り付けの屈折率差を設け
ている。動作電流により導波路の屈折率差が大きく変化しないため、屈折率導波
路は、構モード制御に優れると考えられている。屈折率導波路の中で、シングル
モードPbSnTeレーザの構造として、図2−2の埋め込み構造を選んだ。
クラッド層
図2−2 埋め込み構造
19
埋め込み構造は、光が発生する活性層の結晶が周囲のクラッド層の結晶で覆わ
れた構造である5)。活性層の屈折率がクラッド層の屈折率より高く、光は、主に
活性層に閉じ込められた状態で、レーザから光を出射するミラーに向かって伝播
する。活性層とクラッド層の屈折率差は、用いる結晶の組成により制御できる。
通常のGaAsレーザと同様、PbSnTeレーザも、レーザ発振し易くなるよ
うに、活性層のエネルギギャップよりもクラッド層のエネルギギャップが大きく
なるDH接合(double heterostructure)を形成する結晶組成を、クラッド層の
組成に選んでおり、組成差による屈折率差は10%程度である。動作電流により
組成差が小さくなるように、活性層の屈折率は変化するが、その変化量は活性層
屈折率の0.01%のオーダである。従って、埋め込み構造は、動作電流による屈
折率差の変化はほとんど無いと見なせ、光の閉じ込め状態は変化せず、構モード
制御を安定に行うことができる。
2 0
2−1−2 活性層のサイズ
前述したように、ゲインサブレッション効果を期待できるため、埋め込み構造
で横モードシングルモード化の構造を検討することにより、縦モードシングルモ
ード化を進めた。埋め込み構造では、構モードをシングルモード化する場合、基
本横モードのみが伝播するよう、光学的な活性層のサイズ(厚みや幅)を小さく
すれば良い。この活性層のサイズについて検討した。
埋め込み構造は、前述したごとく活性層の周囲がクラッド層で覆われた構造で
ある。レーザ光は、活性層中をミラー方向(紙面に垂直な方向)に伝播するため
に、横モードは、厚みとストライプ幅で決まる。構モードをシングルモード化す
るため、基本横モードのみで発振する活性層のストライプ幅と厚みの条件を計算
で求めた。計算のために単純化したモデルを図2−3に示す。
図2−3 埋め込み構造の光学的モデル
マクスウェルの電磁波の式を非対称の光矩形導波路に適応することにより、ミ
ラー方向(紙面に垂直な方向)に伝播する光の式が求まる。この伝播する光は、
Y方向に電界の強い光とⅩ方向に電界の強い光がある。このY方向に電界の強い
光が、Sl a b構造でのTEモードに相当し、Ⅹ方向に電界の強い光は、TMモ
ードに相当する。ミラーでの反射損失が小さいことから、TEモードの方がレー
ザ発振し易い。従って、伝播する光として、Y方向に電界の強い光のみに注目し
た。この光に対し、活性層とクラッド層の境界(Ⅹ=0,dとy=0,b)で接
21
線方向の電界成分と磁界成分を連続させることにより、伝播する光の固有関数を
求めた。モードの固有関数は、次のように表される6)。
t a nX=Ⅹ(Vx2−Ⅹ2)0・5/(Ⅹ2−0.5Vx2)
(2−1)
t anY=Y(VY2−Y2)0・5/2/((Nl/N2)2+(N2/Nl)21
/〔Y2−(Nl/N2)2/((Nl/N2)2+(N2/Nl)2†VY2〕
(2−2)
Ⅹ=k xd
(2−3)
Y=kYb
(2−4)
Vx=(N12−N22)0・5(2方/Å)d
(2−5)
VY=(NL2−N22)0・5(27T/ス)b
(2−6)
ここで、NlとN2は、活性層とクラッド層の屈折率、dとbは、活性層のスト
ライプ幅と厚み、久は光の波長であり、kxとkYはⅩ方向とY方向の伝播定
数である。
そして、活性層中をキャビティ方向へ伝播する光は、キャビティ方向の伝播定
数βがクラッド層と同じ屈折率媒質中での伝播速度より速く、β>2万N2/久を
満足しなければならないため、Ⅹ方向とY方向の伝播定数は、次式で示す伝播条
件を満足する必要がある。
(Ⅹ/Vx)2+(Y/VY)2<1
(2−7)
シングルモード発振のための条件は、(2−7)の条件を満たし、一組のkx
とkYのみが存在する条件を(2−1)∼(2−6)式により求められる。
計算に必要な活性層のPb SnTe結晶の屈折率としてG.Di onn e等の
データ7)を用いた。クラッド層結晶として、活性層と格子整合するPbTe S e
結晶を考えた。格子不整により活性層中に発生した結晶欠陥は、非発光再結合中
2 2
心となる。この非発光再結合中心による量子効率の低下を抑止する必要があるた
めである8)。Pb SnTe系結晶では屈折率がエネルギギャップE gの関数であ
らわされる7)。E gがPbTeとほぼ等しいことから、PbTeの屈折率の値を
P bT e S eの屈折率として用いた。
図2−4に、レーザ発振波長が8〝mの場合のシングルモード発振に必要な活
性層サイズの条件を示す。活性層厚が1.5′Jm以上となると、次のモードが現れ
る。そのため、活性層厚は、1.5/Jm以下でなければならない。シンルグモード
発振のための活性層のストライプ幅と厚みは、図中の曲線より下の領域である。
例えば、活性層厚が1〟mの場合には、シングルモード化のためのストライプ幅
は4〝m以下である必要がある。
︵∈こき
d(〃m)
図2−4 シングルモード発振のための活性層の条件
2 3
2−2 埋め込み構造実現のための結晶成長
2−2−1 Pb SnTe埋め込み構造
PbSnTe埋め込みレーザの目標の構造を、図2−5に示す。
(n−P bT e
n型クラッ
S
e
)
(
「■−
ド
埋
め込み層:n型クラッド
活性層
一′亨
p型クラッ
(p−PbTe
ド
S
(
e
n−P bT e S e)
)
基
p−P b S nT e)
板結晶
コ■
電極
p
−P bTe (100)面
図2−5 PbSnTe埋め込み構造
埋め込み構造は、格子不整転位が発生しないように、PbTeSeクラッド層
の格子整合型PbSnTeDH構造を、クラッド層と同材料のPbTeSeで覆
うことにより、形成する。基板結晶は、従来のDH接合レーザの場合と同様に、
p型の(100)面のPbTe結晶である。基板上のp型クラッド層は、アクセ
ブタのTlをドープしたPbTeSeである。活性層は、アンドープでp型のP
bSnTeである。この埋め込み構造形成には、図2−6に示すように、活性層
成長後、メサストライプを形成し、その後活性層を埋め込む成長を行う必要があ
るため、結晶成長を2回行う。一回目の成長時、活性層の上へドナーのBiをド
ープしたn型のPbTeSeクラッド層を成長する。このn型クラッド層は、埋
め込み成長工程前のメサストライプ形成工程で、活性層とクラッド層のpn接合
界面の汚染による量子効率低下を抑止するための保護層として機能する。埋め込
み層は、クラッド層と同じ結晶組成のBiドープしたn型PbTeSeであり、
クラッド層として機能する。この埋め込み構造は、ポテンシャル閉じ込め構造で
ある。活性層とn型クラッド層間のビルトイン電圧がp型クラッド層と埋め込み
層問のビルトイン電圧より小さいことを利用することにより、活性層メサストラ
2 4
イブの横側でp型クラッド層から直接埋め込み層へ流れる電流を、活性層から埋
め込み層へ流れる電流の数分の一に低減する機能がある。埋め込み構造には、レ
ーザ発振に不必要な電流を極力低減するために、埋め込み層中にp np接合を設
けることにより、p型クラッド層から直接埋め込み層へ流れる電流を遮断する構
造がある9)。どちらの構造でもシングルモード発振を確認でき、本研究では、構
造の単純なこのポテンシャル閉じ込め構造を選んだ。
結晶成長には、通常の液相エピタキシャル成長法を用いている。
(1)活性層形成
一回目の成長
(2)メサストライプ
形成
フォトリソグラフ
(3)埋め込み構造形成
二回目の成長
図2−6 埋め込み構造形成法
2 5
2−2−2 埋め込み成長
Pb SnTe活性層中のSnは拡散係数が大きく、成長温度が600℃付近の
DH接合(ダブルヘテロ)成長では、Pb SnTe活性層とSnの少ないクラッ
ド層結晶の界面で、10JJmオーダのSnの拡散領域が観察される10)。通常、
液相エピタキシャル法では、500℃付近の温度でDHレーザ用結晶を成長して
いる。埋め込み構造を形成する成長は、通常のDH構造結晶を得る場合と比べ、
結晶の温度履歴の点で大きく異なる。DH構造結晶の場合は、成長終了後、直ち
に冷却する。一方、埋め込み構造結晶の場合、一度冷却した結晶を再度温度に上
げて結晶成長するため、DH接合のみの場合と比べて結晶が成長温度にさらされ
る時間が長くなる。そのため、活性層中のSnが、Snの無いPbTe S eクラ
ッド層へ拡散していくことが予想される。Sn組成は、発振波長や屈折率制御の
重要なパラメータであり、埋め込み構造実現のため、Snの拡散を抑止できる結
晶成長の温度条件検討が重要である。
拡散方程式を解き、埋め込み成長によるSnの拡散プロファイルを近似的に推
定した。その計算結果を基に、Snの拡散プロファイルを調べる実験を行い、埋
め込み成長のための成長温度条件を決定した。
拡散方程式を次式で示す。
dn(Z,t)/d t=D*d2n(Z,t)/d z2−−−−−−−・(2−8)
D=Do*e x p(−EA/kT) (2−9)
nは、Snの濃度である。D。とEAは拡散係数と活性化エネルギであり、その
値として文献から、3×102cm2/Sと1.5eVを用いた川。Z、t、Tは、それ
ぞれ、場所、時間、温度であり、kはボルツマン定数である。
初期条件は、拡散が全く起こっていない理想状態を考え、1〟m幅の活性層中
のみにS nが存在するとして、次式で与える。
n(Z,t)=1, 0<Z<1 〝m
=0, Z>1,Z<0 〝m
2 6
(2−10)
境界条件は、活性層から遠く離れた所では、Snの濃度が変化しないと考え、
次式で与えている。
d n(∞,t)/d t=0
(2−11)
液相エピタキシャル成長では、エピタキシャル成長時、温度が下降する。その
ために、時間に対して温度を連続的に変えて計算する必要がある。計算の単純化
のため、時間に対し温度を階段的に下降させる温度プロファイルで近似した。
図2−7に、計算結果を示す。500℃∼460℃と連続的に変化する成長温
度プロファイルは、従来用いているn型クラッド層の成長温度で埋め込み成長す
る場合の温度プロファイルであり、500℃で900秒保持、480℃で900
秒保持、460℃で900秒保持の階段プロファイルで近似している。この場合
は、Sn組成のピーク値が1/2以下に減少し、Snの存在する領域の半値幅も
3〟m程度に広がる。一万、450℃∼410℃で連続的に成長する温度プロフ
ァイルは、従来のn型クラッド成長温度より50℃低い場合であり、450℃で
900秒保持、430℃で900秒保持、410℃で900秒保持の階段プロフ
ァイルで近似した。Sn組成のピーク値は、初期値の90%を維持しており、半
値幅も、約1/3の1.1JJmであることが分かった。相図では、この450℃∼
410℃の温度領域は、溶媒中に結晶となる溶質がほとんど溶けず、液相エピタ
キシャル成長の可能な領域のはば下限温度である12)。
計算結果を確認するために、活性層厚がlFLmのPbトXSnxTe/PbTe
DHウェハにPbTeを成長した。クラッド層にPbTeを用いた理由は、Ⅹ線
回折による格子定数評価によって、PbSnTe活性層のSn組成を求めるため
である。図2−8に、2回目の成長前後のDH接合結晶断面をエッチングした写
真を示す。図のa)は、2回目の成長前の断面を示す。Pb SnTe活性層は、
厚みがd=1FLmであり、Ⅹ線回折で評価したSn組成(Ⅹ値)は、Ⅹ=0.08
である。図のb)は、500℃∼460℃の降温プロファイルで成長したウェハ
の断面を示している。エッチピットは、S n拡散による組成変化で生ずる格子定
2 7
数の変化で発生しており、このエッチピットの広がりは、S nの拡散領域の幅に
等しい10)。この場合のエッチピット広がりは、d≒3JJmであり、Ⅹ線回折で
評価したⅩ値は、a)の約1/2のⅩ=0.03∼0.04である。幅や組成は、実
験結果と計算結果の間で大差がないと見なせる。C)は、450℃∼410℃の
降温プロファイルで成長したウェハ断面を示す。この温度範囲で成長した場合、
活性層は、Ⅹ値がⅩ=0.08で、活性層厚みもd=1〝mであり、成長前のa)
と比べ変化を観察できない。従って、S n拡散に関する実験検討と計算検討は、
ほぼ一致している考えるとともに、450℃∼410℃の温度プロファイルでの
成長により、活性層からクラッド層へのS n拡散を抑止できると結論づけた。
S n拡散を抑止できる成長温度プロファイルとして、従来の成長温度領域より
50℃低い450℃∼410℃を選び、液相エピタキシャル法により埋め込み成
長を行った。同時に、液相エピタキシャル成長固有の問題である未成長対策も施
している。この未成長対策の詳細は、付録で述べる。図2−9に、エッチングし
た埋め込み構造結晶の断面写真を示す。活性層サイズは、厚みとストライプ幅が
それぞれ1〟mと3J上mであり、波長8JJmのレーザのシングルモード条件を満
たしている。活性層中にS n拡散により現れるエッチピット転位は観察されず、
埋め込み成長時のS n拡散を抑止できていることを示している。
2 8
5
0.
uOJdhJuOUuOUuJUAでdtO出
0
3
−2 −1 0 1 2 3 4
Position(〃m)
図2−7 2回目の成長時の計算によるSn拡散プロファイル
2 9
Pbl_XSnJe
d=1/Jm
X=0.08
a)Beforesecondgrowth
d=3/∠m
X=0.03−0.04
b)Aftersecondgrowthfrom500℃to460℃
d=1′“111
X=0.08
C)Aftersecondgrowth h・Om450℃to410℃
図2−8 2回目の成長前後のDH接合結晶断面をエッチングした写真
3 0
Activelayer:1×3 Flm
図2−9 エッチングした埋め込み構造結晶の断面写真
31
2−3 レーザ特性
ここでは、動作波長域が7∼8/Jmの埋め込み構造レーザの、閥値電流、スペ
クトル、温度チューニング特性について述べる。
図2−10に閥値電流の動作温度依存性を示す。動作温度20∼40Kで、閥
値電流は40mA程度で飽和している。この40mAの電流は、温度依存性を示
していないことから、ミラー表面を流れるリーク電流やpn接合部での欠陥によ
るリーク電流等の抵抗性のリーク電流と考えている。レーザ発振時のバイアス電
圧は、活性層のエネルギギャップEgにはぼ等しく、20∼40K温度でEgの
変化は、Egの7.7%程度と小さい。そのため、抵抗性のリーク電流は、温度依
存性が小さいと考えられる。この程度の大きさのリーク電流は、DH接合レーザ
でもよく発生しており、レーザ構造の違いによらない。従って、通常使用される
動作温度80Kで、CW動作の閥値電流は、60mAであるが、40mAのリー
ク成分を除いた20mAが、pn接合部を流れる実際の閥値電流と考えられる。
液相エピタキシャル成長によるDH接合レーザの閥値電流密度は、80Kで、通
常3∼8KA/cm ̄2の範囲で得られており、埋め込みレーザと同サイズの活性
層のDHレーザ(ストライプ幅3FLm,キャビティ長200FLm)は、閥値電流
が18∼48mAとなり、埋め込み構造レーザの推定した20mAの閥値電流と
同等である。従って、動作温度80Kでは、リーク電流以外の埋め込み構造レー
ザを流れる電流は、ほとんど活性層中を流れるため、ポテンシャル閉じ込め機能
が動作していると考えられる。また、CW動作での最高動作温度は105K、パ
ルス動作での最高動作温度は144Kと、DHレーザでのそれぞれの値とほぼ等
しい。従って、埋め込み成長時のSn拡散に起因する結晶劣化による量子効率低
下も観察されないと考えている。
グレーティング分光で評価した埋め込みレーザのシングルモードスペクトルを
図2−11に示す。動作温度50K、60∼150mAの範囲の各バイアス電流
下で、一本の波長で発振しており、シングルモード動作していることを示してい
る。シングルモード動作での最大出力は、1.7mWである。この値は、ガスセン
3 2
サシステム13)等のアプリケーションに十分使用でき、Ka s ems e t等が報
告した値の10倍以上の値である14)・15)。このレーザのシングルモード出力が、
Ka s ems e t等15)のシングルモードレーザの値と比べて良好な理由を次の
ように考えている。閥値電流も、シングルモード発振している動作電流の幅も、
Ka s ems e t等のレーザとほぼ等しい。シングルモード出力の差は、微分量
子効率の違いで起こっている。彼らの場合、埋め込み成長前の結晶の活性層の上
に保護層が無く、埋め込み成長温度も480℃と高い。しかし、埋め込み成長時
に保護層へSn拡散が無いために、埋め込み成長時のSn拡散が減少し、シング
ルモード発振のための導波路構造を保てた可能性がある。しかし、彼らの構造で
は、保護層がないため、活性層とクラッド層間のpn接合部が埋め込み成長前に
汚染され、量子効率が低下した可能性がある。
レーザの温度チューニング特性を図2−12に示す。レーザの波長は、動作温
度により変えることができ、20Kで、閥値電流付近での波長は、8.6JJmであ
り、100Kで約7〝mである。ジュール熱によりレーザ温度が変わるため、バ
イアス電流によっても発振波長が変わる。図中の線幅は、バイアス電流を変える
ことで得たシングルモード動作の波長領域の幅を示している。50∼100Kの
動作温度の範囲で、シングルモード動作の波長幅は、0.1〝m程度であり、ガ
スセンサや赤外分光などのアプリケーションに十分使用できる値である13)。こ
の動作温度領域では、閥値の3倍程度の動作電流までシングルモード発振し、そ
れ以上の電流域でモード競合によるマルチモード発振状態となっている。現在特
定できないが、モード競合の原因として、レーザ素子から出射した光がレーザ用
容器の窓やその他外部の光学系表面で反射し、レーザ素子へ戻る「戻り光」が考
えられる。高電流動作領域では、出力が大きいため、種々の外部ミラーにより光
がレーザ素子内に戻る。戻り光は、レーザ発振に影響し、光出力を変化させ、発
振状態を不安定にさせる。この不安定状態では、定常状態で期待されるゲインサ
ブレッションが起こらなくなり、マルチモード発振すると考えている。
波長が7∼8/Jmでシングルモード動作する埋め込み構造レーザを示した。他
の波長域でも、シングルモード動作するレーザが得られると考えている。
3 3
0;t
ウ E
軋払猷削酎購如硝帽掴順睡庸一1苧射せ乎甲南 Ol−Z図
(H)3JnlでJ3du3エ
001 0;
●
●
Ol
50K
1.1mW
llOImA
l i u 一 n H u J は H 江 川 川 化 け 川
CWOperation
0.25mW
601mA
J」
8.00 7.95 7.90
Wavelength(Flm)
図2−11 埋め込みレーザのシングルモード発振スペクトル
3 5
7.85
.5
.
0
.
5
.〇
︵己や︶ 月毎岳lUAdき
50
Temperature(K)
図2−12 埋め込み構造レーザの温度チューニング特性
3 6
100
2−4 まとめ
Pb SnTe埋め込み構造レーザを実現することにより、赤外領域の波長で発
振する鉛塩半導体レーザのシングルモード化を行った。
半導体レーザでは、低周波動作の場合はゲインサブレッション効果があるため
に、横モードをシングルモード化することにより、縦モードをシングルモード化
することが期待できる。横モードをシングルモード化する構造として埋め込み構
造を選び、活性層と格子整合するクラッド層としてPbTe S eを用い、マクス
ウェルの電磁波の式を矩形の光導波路モデルに適応し、活性層の厚みと幅につい
て理論検討した。
埋め込み構造は、格子整合型DH構造結晶を、クラッド層と同一の材料である
PbTe S e層で埋め込むことにより形成する。埋め込み構造を実現するため、
結晶成長法としては液相エピタキシャル法を用いた。通常の液相エピタキシャル
成長条件では、埋め込み成長時に活性層からクラッド層へS n拡散が拡散し、レ
ーザ特性を劣化させることを明らかにするとともに、S nが埋め込み成長時に拡
散することを抑止する成長条件を見出した。
発振波長が7∼8〟mの埋め込み構造レーザを実現した。閥値電流から、試作
した埋め込みレーザは、通常使用される動作温度80Kでは、電流が、活性層の
横側の埋め込み層中を流れず、活性層に集中して流れると考えらることが分かっ
た。また、最高動作温度もDHレーザと同等であり、埋め込み成長で結晶が劣化
していないと考えられる。分光スペクトルで、シングルモード発振してことを確
認し、従来の値より10倍以上の1.7mWのシングルモード出力を得た。
結論として、発振波長が7∼8JJmで、埋め込み構造レーザを実現することに
より、シングルモード発振するP b S nTeレーザを得た。埋め込み構造は、活
性層からクラッド層へのS n拡散を抑止することにより実現できるため、他の波
長域でも、シングルモード発振レーザを得ることができると考えている。
3 7
2−5 付録 埋め込み成長時の末成長の抑止
図2−6に示したように、DH成長したウェハの表面に、フォトリソグラフイ
を用いてメサストライプを形成した後、埋め込み成長をする。液相エピタキシャ
ル法でこの埋め込み成長を行った場合、メサストライプの横の平坦部の表面上で
結晶が成長しない問題が発生した。図2−13に、発生した未成長を示す。
Activelayer:1×3ilm
図2−13 メサストライプのある表面での末成長
埋め込み層はメサストライプ斜面のみで成長し、平坦な表面に成長しない。平
坦部の結晶は、PbTeであり、PbTeと埋め込み層のPbTel_,S e,間と
の格子不整合皮△a/aは、0.13%である。基板面方位は(100)である。
図2−14に、考えた末成長の発生メカニズムを示す。PbTeト,S e,の結
晶構造は、PbSnTeと同様のNaCl構造である。原子レベルでは、メサス
トライプ斜面上でPbとTeの原子が階段状に並んでいると考えられる。成長す
る結晶と結合する原子のボンドの数が、平坦部に比べ階段の段差部では多く、メ
サストライプ斜面での結晶成長速度が、平坦部より速いと考えられる。従って、
メサストライプ形状のあるウェハ表面では、メサストライプ斜面で結晶成長が開
始すると考えられる。原子の階段を埋めるように結晶が(110)方向に成長す
るため、図中の点線で示すごとく、メサストライプは結晶で覆われる。メサスト
ライプが覆われた後は、結晶が成長する表面は、結晶方位が全て(100)面と
3 8
なる。成長する結晶は、PbTe._YS eYであり、メサストライプ表面での結晶
と当然格子整合しているが、平坦表面のPbTeと格子整合していない。格子不
整合の表面での結晶成長より、格子整合した表面での結晶成長の方が、歪みが少
なくエネルギ的に安定と考えられる。そのため、メサストライプを覆った表面で
の成長方が成長速度が速くなり、PbTe表面で析出すべき結晶も、メサストラ
イプを覆った表面で析出する。従って、メサストライプが結晶で覆われた後も、
結晶は、メサストライプ横側の平坦なPbTe表面で成長しないと考えられる。
P
b
T
el_YS
e
Y
l
(100)
レ
(110)
(100)
図2−14 メサストライプ表面での成長メカニズム
このメカニズムが正しいと、格子整合した基板を用いた場合、一度メサストラ
イプ表面がPbTe S eで覆われた後は、面方位と格子整合の両方に関して全て
の結晶表面が等価となるために、結晶が全ての面で成長し、未成長の発生が抑止
できる筈である。
この考えた成長メカニズムを実験確認するため、平坦部の結晶と成長する結晶
との間の格子不整合皮△a/aに対し、メサストライプ横側の平坦部で成長する
3 9
結晶厚さの依存性を調べた。図2−15に、その結果を示す。
3 2
︵≡エ 〓
0.05 0.10
0.15
Latticemismatch △扉a(%)
図2−15 平坦部に成長する埋め込み層の厚みの格子不整合皮依存性
不整合皮△a/aが0.08%に減少すると、メサストライプ周辺の平坦部の表面
で埋め込み層が成長開始し、末成長部が無くなる。不整合皮△a/aが0・02%
の場合、平坦表面での成長厚が約3〟mと素子化に十分な厚みまで増加する0
この検討から、メサストライプ横側の平坦部の結晶と埋め込み層結晶との間の
格子不整合が大きい場合、未成長が発生することが分かった。埋め込み層と接す
る面が基板表面となる場合、格子整合基板が必要となる。埋め込み結晶に対し格
子整合する結晶は三元結晶であるが、良好な結晶性の三元結晶の基板を入手する
ことは難しい。従って、図2−6に示すごとく、p−PbTel YSeYクラッド
層をPbTe基板上に厚く成長することで、メサストライプ形成後もPbTe基
板の表面が、p−PbTeトYSeYで覆われるようにした0このp型クラッド層
と格子不整合皮△a/aを0.02%を低減した埋め込み層を用い、図2−9にす
ごとく、未成長発生を抑止した埋め込み構造を実現した。
4 0
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4 2
3章 格子整合型P b S n T e レ−ザ
の長波長イヒ1)
埋め込み構造レーザにより、PbSnTeレーザのシングルモード化を実現で
きたため、埋め込む前の構造である格子整合型PbSnTeDH接合レーザで、
波長域拡大のための長波長化を進めた。ヘテロ接合部のバンド構造を解明し、格
子整合型DH接合レーザの新たなクラッド層として、PbSnTeSeを用いる
ことにより、10〟mより長波長域で、始めて動作温度77KでCW発振するレ
ーザを得ることができた。
本章では、まず、従来用いていたPbSnTeDHレーザのヘテロ接合部の構
造について述べ、10FLmより長波長域で、クラッド層に従来のPbTeSeを
用いた格子整合型PbSnTeDHレーザは、レーザ発振しないことを述べる。
次に、DHレーザのヘテロ接合部のエネルギバンド構造を検討した結果、判明し
たことを述べる。①PbSnTeDHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタ
イプ1’で発振するレーザであり、②10JLmより長波長域で従来のPbTeSe
クラッド層を用いた格子整合型では、活性層とクラッド層間の大きなSn組成差
により、バンド構造がタイプ2に近くなり、バンドオフセット(障壁)が大きく
なるため、レーザ発振しなくなる。続いて、格子整合型レーザで、Sn組成差を
近づけ、バンド構造がタイプ1’となるようするために、PbTeS eのPbの一
部をSnで置換したPbSnTeSeをクラッド層として用いた結果、動作温度
77Kで、10〟mより長波長域でCW動作を実現したことを述べる。また、今
回判明したヘテロ接合部のバンド構造を検討することにより、200K以上の温
度で動作するPbSnTeDHレーザを得難い原因を説明できることも述べる。
3−1 長波長PbSnTeDHレーザの従来構造
PbトXSnxTe結晶は、Sn組成(Ⅹ値)が大きくなるにつれ、エネルギギ
ャップEgが小さくなるとともに、格子定数も小さくなる半導体である。このレ
ーザの開発当初は、活性層のEgよりクラッド層のEgが大きいDH接合を形成
4 3
するため、図3−1−(a)に示すP bトXIS nxITe/P bトX2S nx2Te接
合が用いられてきた2)。
n 型 P b トX2 S n x 2T e ク ラ ッ ド層
n 型 P b T e ト Y 2 S e Y 2 ク ラ ッ ド層
p 型 P b l_X IS n x IT e 活 性 層
p 型 P b ._X I S n x IT e 活 性 層
p 型 P b l_X 2 S n x2T e ク ラ ッ ド層
p 型 P b T e .−Y 2 S e Y 2 ク ラ ッ ド層
(a)P
bl_XIS
nxIT
(b)P bトXIS nxIT e
e
/PbトX2S nx2Te接合(Il〉‡2)
格子不整合型
/P bT el_Y2S eY2接合
格子整合型
図3−1 Pb S nT eレーザに使われてきたDH接合
動作温度77Kで発振波長が10〝mより長波長域で発振するレーザを得る場
合、活性層のⅩ値は0.2以上となる。長波長域のPb S nT e DHレーザの構造
として、このP bトXIS nxITe/PbトX2S nx2T e接合を用いた場合、温度
が77K動作ではパルス発振の開値電流密度が5KA/cm2以上となり、発熱
量が大きくなるため、CW発振する素子を得ることが困難である。パルス発振で
得られる最長の発振波長は12〝m付近である。動作温度を20K程度にまで下
げると、CW発振する。発振波長は、閥値付近で16FLmであり、出力は数FLW
程度である。P bl_XIS nxITe/P bトX2S nx2T e接合のDHレーザで閥値
電流密度が高い理由は、S n組成差により活性層とクラッド層の結晶の格子定数
が異なるために、クラッド層と活性層のヘテロ境界部の結晶に格子不整合による
結晶欠陥が発生し、この結晶欠陥が非発光再結合中心となるためである3)。
図3−1−(b)に示す格子整合型P bl X.S nx.T e DHレーザは、活性層
4 4
と格子整合するクラッド層としてP bTel_Y2S eY2が用いられている。このレ
ーザは、Ka s ems e t等により開発され、10FLmより短波長域では、閥値
電流密度低減と出力向上が進められた4)。そして、篠原等5)により、ミラー面の
結晶欠陥も同時に低減することにより、レーザ出力の向上も進められた。また、
格子整合により結晶欠陥を低減できるため、活性層の厚さや幅を小さくしても効
率が下がらず、ストライプの幅を小さくすることによる動作電流の低減も、篠原
等により進められた。6)しかし、10〝mより長波長域の場合、格子不整による
結晶欠陥が減少し、本来特性が向上する筈の格子整合型レーザで、CW動作はも
ちろんパルス動作すらしない。
図3「2にPbl−XSnxTeおよびPbTel−YSeYのエネルギギャップと格
子定数の組成依存性を示す。Pbl_XSnxTeと比べ、PbTeト,S e,は、組
成により格子定数は大きく変化するが、組成に対するEgの変化は小さい。
エネルギギャップ(e V)
0.2 0.1 0 0.1 0.2
格子定数(Å)
0.2 0.1 0 0.1 0.2
PbTel_YS eYのY値 Pbl_XS nxTeのⅩ値
図3−2 PbトXS nxTe結晶およびPbTeト,S eYの結晶のエネル
ギギャップと格子定数
10FLmより長波長域のPb1−−XISnx.Te/PbTeトY2S eY2接合レーザ
4 5
では、活性層のⅩ値が0.2以上であり、活性層とクラッド層を格子整合させるた
め、クラッド層のS e組成のY値が0.08∼0.1である。この長波長域のレーザ
のY値は、発振波長が7∼8〝mで、格子整合により開値電流密度の低減や出力
向上が進んだ活性層のⅩ値が0.1付近のレーザのクラッド層のY値と比べ、2倍
程度となる。
格子整合型と格子不整合型の両レーザで異なる点は、クラッド層に含まれる元
素がS eかSnかの違いである。従って、10FLmより長波長域で、クラッド層
にPbTel_Y2S eY2を用いた格子整合型レーザが、レーザ発振しなくなる原因
として、①長波長域では、S eが多くなり短波長域のレーザでは問題とならなか
った不純物が増加すること、(診ヘテロ接合部のエネルギバンド構造が従来考えら
れていたモデルと異なっており、PbTel”Y2S eY2クラッド層を用いた格子整
合型PbトXIS nxITe DHレーザは、長波長域ではレーザ発振しなくなる構造
であることが考えられる。
4 6
3−2 ヘテロ接合部のエネルギバンド構造
ヘテロ接合部のエネルギバンド構造を検討することにより、格子不整による結
晶欠陥の少ないPbl_XIS nx.Te/PbTeトY2S eY2格子整合型DHレーザ
方が、10〝mより長波長域で、レーザ発振し難くなる原因を調べた。バンド構
造検討のために用いた結晶成長技術のホットウォール成長法について述べた後、
明らかとなったP b S nTe DHレーザのヘテロ接合部のバンド構造について述
べる。
3−2−1 結晶成長法
ホッ十ウォール法について説明した後、結晶成長法を液相エピタキシャル法か
らホットウォール法へ変更した理由を述べる。成長する結晶は、Pb S nT e、
PbT e S e、P b S nT e S eである。図3−3にホットウォール成長用ルツ
ボの構造と各ゾーンの温度を示す。
101p a
図3−3 ホットウォール成長用ルツボ
ホットウォール成長用ルツボは、真空度が10 ̄4p a程度の真空装置内に設置
した電気炉に挿入している。成長用のソースに、Pb S nT e、P bT e S e、
P b S nT e S eの合金を用いる。これらの合金は、秤量したP b、T eやS n
4 7
等の素材を石英アンプル中で1000℃程度の温度で溶融した後、急冷・固化し
た後、粉砕することで得る。結晶組成は、ソースの組成とほぼ等しく、秤量によ
りソース組成を変えることで制御できる。結晶にドープする不純物元素は、p型
でTl、n型でBiである。これらのドーパントを秤量し、成長用ソース中に加
ることで、クラッド層のキャリア濃度を制御している。活性層はノンドープ結晶
であり、通常、p=5×1017cm ̄3程度の値のキャリア濃度が得られる。p型ク
ラッド層のキャリア濃度はp=3×1018cm▲3、n型クラッド層のキャリア濃度
はn=3×1018cm ̄3と、通常の短波長域のレーザで用いる値である。結晶の
成長レートは、ソース温度によるソースの蒸発量で制御している。用いたソース
温度は540℃であり、結晶成長速度は2∼3/Jm/Hである。バッフルの温度
は、ソ「ス温度より10∼20℃高くし、蒸発したソースが壁面に付着しないよ
うにしている。基板ホルダとルツボ間に隙間があり、基板は、ルツボからの熱伝
導による熱を受けない。基板温度は、300℃であり、この温度で結晶が成長す
る。蒸気圧が高くT eが遊離し易いため、Teの補償用として、リザーバにT e
を充填しいる。用いているリザーバ温度は200∼300℃である。
p−PbTe(基板)
コンタクト
p型クラッド層
活性層
n型クラッド層
陽極酸化膜
コンタクト
図3−4 DHレーザの構造
図3−4に、DHレーザの構造を示す。ストライプ幅が30〝m、活性層厚さ
が4/∠mのメサストライプ構造であり、これまでの液相エピタキシャル成長によ
る素子と同じ構造である。ホットウォール成長装置内に、p型クラッド層用、活
性層用、n型クラッド層用の各ルツボを挿入した電気炉を並べ、ルツボの上を順
4 8
に基板を移動させ、結晶を所定厚み成長し、DHレーザ用結晶を得た。
ホットウォール法に結晶成長法を変更した理由について述べる。P b S nTe
系結晶では、S n組成の値が、結晶のエネルギバンド状態を決める。活性層とク
ラッド層のキャリア濃度等から、p nヘテロ接合部でエネルギバンドが曲がる距
離は、100nm程度と計算推定できる。前章で述べたごとく、液相エピタキシ
ャル成長法によるDHレーザは、成長温度が400℃以上であることから、活性
層からクラッド層へS nが数100nmの範囲で結晶成長時に拡散する。これに
応じヘテロ接合部でエネルギバンド状態が変化し、p nヘテロ接合部のバンドが
曲がる部分では、エネルギギャップやバンドオフセットの変化が緩やかとなる。
一方、ホットウォール法では、成長温度が300℃と低いため、井戸の厚さが
数10nmの量子井戸構造の超格子成長も可能である7)。結晶成長時のヘテロ接
合部でのS nの拡散距離は、液相エピタキシャル成長での結晶より、はるかに小
さい数nmである。p nヘテロ接合部で、バンドが曲がる距離よりS nの拡散距
離の方が小さいことから、バンドが曲がる部分では、エネルギギャップやバンド
オフセットの変化が、液相エピタキシャル法による結晶より、はるかに急峻とな
る。ヘテロ接合部のエネルギバンド構造のタイプの検討には、バンドオフセット
やエネルギギャップの変化による現象が明確になるようにS n拡散の小さい成長
法が適すると考え、結晶成長法としてホットウォール法を用いた。
4 9
3−2−2 エネルギバンド構造モデル
光通信用のGaAs系DHレーザと同様に、Pb SnTeレーザも、DH接合
の形成によりレーザ発振しやすくなる。図3−5に示すごとく、従来は、DH接
合のヘテロ接合部のエネルギバンド構造はタイプ1と考えられてきた8)。
△E c(伝導帯のバンドのオフセット)
クラッド層 活性層 クラッド層
△E v
図3−5 ヘテロ接合部のエネルギバンド構造の従来モデル(タイプ1)
タイプ1では、活性層のエネルギギャップEgがクラッド層のE gよりも小さ
い。伝導帯下端のエネルギ準位E cは、活性層よりクラッド層の方が高く、価電
子帯上端のエネルギ準位Evは、活性層よりクラッド層の方が低い。活性層の部
分でエネルギ準位が井戸型となるため、活性層中にキャリアを閉じ込め易い。こ
の構造では、活性層とクラッド層のE gの差が大きくなるにつれ、バンドオフセ
ットの△E cや△E vが大きくなり、キャリアを活性層に閉じ込め易くなる。
図3−6に、P bトXIS nxIT e DHレーザのヘテロ接合部のエネルギバンド
構造として、新たに考えたタイプ1’のモデルを示す。従来考えられてきた場合と
同様に、活性層のE gはクラッド層のE gより小さい。しかし、このタイプ1’で
は、伝導帯下端のエネルギ準位E cがクラッド層より活性層の方が高くなり、バ
ンドオフセット△E cがポテンシャル障壁となるため、タイプ1に比べ、活性層
にキャリアが注入されにくい。そして、活性層とクラッド層間のS n組成差が大
5 0
きくなるにともない、エネルギギャプEgの差が大きくなり、活性層とクラッド
層間のバンドオフセット量△E cが増す。
△E c:大
△E c:小
活性層とクラッド層間の
活性層とクラッド層間の
S n組成差が小の場合
S n組成差が大の場合
図3−6 ヘテロ接合部のエネルギバンド構造の新モデル(タイプ1’)
このエネルギバンドモデルを用いることにより、10〟mより長波長域で、格
子不整合型のPbトXISnx.Te/Pbl_X2Snx2TeDHレーザに比べて、格
子整合型PbトXISnxITe/PbTel_,2S e,2DHレーザの方がレーザ発振
し難い理由を説明できる。活性層とクラッド層間のSn組成差が大きいために、
クラッド層にPbTeト,2S eY2を用いる格子整合型レーザは、ポテンシャル障
壁の△E cが大きくなり、活性層にキャリアを注入し難くなると考えられる。ま
た、Pbl−XISnxITe/PbTe1.,2S eY2DHレーザで、長波長域より短波
長域の方がレーザ発振し易いことについても、短波長レーザの方が、活性層とク
ラッド層問のSn組成差が小さいことを考えると、説明できる。
3−2−3 エネルギバンド構造モデルの検証
Pb S nTe DHレーザのヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’であるという
新モデルを検証するため、3−2−1で述べたホットウォール法を用い、クラッ
ド層のS n組成を変え、活性層がPb。.76S n。.2。Teの長波長DH接合レーザ
を2種類形成し、電流一電圧特性を評価した。活性層とクラッド層間の格子不整
51
によりヘテロ接合部に発生する結晶欠陥の影響を避けるため、クラッド層結晶の
Teの一部をS eで置換し、活性層とクラッド層を格子整合させた。一種類は、
クラッド層結晶がPbTe。.。。S e。.1。であり、活性層とクラッド層間のSn組
成差△Ⅹが最大の素子である。もう一種類は、短波長域で良好なレーザ特性の得
られた場合と同じ△Ⅹ=0.1になるよう、Pb。.86Sn。.1.Te。.96S e。.。。を
クラッド層に用いた素子とした。
図3−7に長波長Pb SnTeDH接合の電流一電圧特性を示す。
1.0
︵<︶一u巴﹂コU
0.5
VoItage(V)
図3−7 長波長Pb S nT e DH接合の電流一電圧特性
P bo.76S no.2.Te/PbTe o.90S e o.10(活性層とクラッド層間のS n
組成差△Ⅹ=0.24のヘテロ接合)の場合、トンネル電流が流れ、レーザ発振し
ない。このトンネル電流は、液相エピタキシャルで成長した同じ構造のレーザで
は観察されず、ホットウォール法で成長したウェハで始めて観察できた。一方、
5 2
Pbo.76S no.24Te/Pbo.86S no.14Teo.96S e。.0.(△Ⅹ=0.1のヘテ
ロ接合)の場合、トンネル電流が流れず、レーザ発振した。
このトンネル電流の発生について、前節の3−2−2で考えたヘテロ接合部で
のエネルギバンドモデルを用い説明できる。図3−8に、メカニズムを示す。
活性層
クラッド層
n−P bl−XS nxT e
p−P bトXS nxT e
X=0.2 4
X=0
(A) △Ⅹ=0.24(トンネル電流発生,タイプ2)
活性層
クラッド層
p−P bトXS nxT e
n−P
X=0.2 4
bl▼XS
nxT
e
X=0.14
、−、
● ● ● E c
〇 〇 〇
(B) △Ⅹ=0.1(拡散電流のみ,タイプ1’)
図3−8 トンネル電流発生メカニズム
S e組成は、エネルギバンドへの影響は小さく、メカニズムと関係しないため
図中のクラッドでは、S e表記を省略した。(A)に示すごとく、活性層とクラ
ッド層問のⅩ値の差が△Ⅹ=0.24の場合は、バンドオフセット△E cが活性層
5 3
のエネルギギャップEgとほぼ等しくなる程、活性層のE cがクラッド層のE c
より高くなった結果、活性層のEvがクラッド層のE cとエネルギ準位が等しく
なる。この場合、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造はタイプ2に近くなり、ト
ンネル電流と拡散電流の両方が流れる。一方(B)に示すごとく、Ⅹ値の差が小
さい△Ⅹ=0.1の場合、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造は、活性層のE cが
クラッド層のE cより高いタイプ1’である。△E cが小さくなるため、トンネル
電流は流れず、拡散電流が流れる。その結果、活性層にキャリアが注入され、レ
ーザ発振したと考えられる。
以上の結果は、I nドープしたPb SnTeのフェルミ準位評価から邑瀬等9)
が提案・したPb SnTe結晶のエネルギバンド構造モデルと、一致する。提案さ
れたPb S nTe結晶エネルギバンドのS n組成依存性を、図3−9に示す。
0.2
0.1
l
0
︶hPOuu
■
■
2
0
−
●
0 0.1 0.2 0.3 0.4
X
図3−9 Pb SnTe結晶のエネルギバンド構造のSn組成依存性
提案されたモデルでは、Ⅹ値が高くなるにつれて、PbトXSnxTe結晶のエ
5 4
ネルギギャップEgは減少するが、伝導帯下端のエネルギ準位E cが増加する。
Ⅹ値が0.23付近では、Pbl−XSnxTeの価電子帯上端にエネルギ準位Evの
方が、Ⅹ=0であるPbTeのE cに比べエネルギ準位が高くなっている。その
ために、Sn組成差が0.23以上の活性層とクラッド層でヘテロ接合を形成する
と、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ2になる。
Ⅹ=0.24の活性層のエネルギギャップEg(E cx=。.24−Evx=。.2.)は、
動作温度77Kで、閥値付近のレーザ発振波長から96meVである。前述した
ごとく、△Ⅹ=0.24の特性でトンネル電流と拡散電流の両方の電流が観察され
ることから、0.24のⅩ値の結晶の価電子帯上端のエネルギ準位Evx‥=。.2。は、
Ⅹ値が・0のPbTeの伝導帯下端のエネルギ準位E cx=。とほぼ等しいと考えて
いる。そのため、バンドオフセット量△E cは、次式で表現できる。
△E
c=E
cx=0.24−E
=9 6m
e
cx=0=E
cx=。.24−Evx=。.24=E
V
gx=。.21
…………(3−1)
△E c/△Ⅹ=400±40meV ”−……−−−(3−2)
(精度は、Ⅹ値の測定精度による)
以上の検討から、Pb SnTeDHレーザは、①ヘテロ接合部のエネルギバン
ド構造が、タイプ1’で発振するレーザであり、活性層とクラッド層のSn組成差
が大きくなると、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ2となり、レーザ
発振しなくなる、②従って、長波長域の格子整合型Pb S nTeDHレーザは、
活性層とクラッド層間のⅩ値を近づけ、タイプ1’となるようにするため、クラッ
ド層に4元のPb SnTe S eを用いる必要があると結論した。
5 5
3−3 長波長格子整合型PbSnTeDHレーザの特性
ヘテロ接合部のバンド構造をタイプ1’とし、かつ活性層とクラッド層を格子整
合させるため、クラッド層に4元結晶のPbSnTeSeを用いることにより、
10FLmより長波長域で、始めて動作温度77KでCW発振するレーザを得た。
図3−10に、動作温度77KでCW動作の出力特性を示す。DH接合結晶は、
Pbo.76Sno.24Te/Pbo.86Sn。.14Te。.96S e。.。。である。閥値付近で
CW動作の波長は、12.7pm、パルス動作の発振波長は12.8FLmである。最
高出力は、短波長レーザの値と同等の1mWが得られた。閥値電流密度は、CW
動作、パルス動作とも値が1KA/cm2 と、同じである。従来構造のパルス動
作で得ていた値(5KA/cm2以上)と比べ、閥値電流密度は低減した。
図3−11に発振波長の温度チューニング特性を示す。このレーザの活性層の
Ⅹ値はⅩ=0.26であり、動作温度77Kで閥値付近での波長は、パルス動作で
13・7pm、CW動作で13.5FLmである。動作温度60K以下では、閥値付近
のパルス動作とCW動作の波長は等しくなり、動作温度を20Kまで下げると、
波長は18.5〝mまで長くなる。従来構造のレーザと比べると、パルス動作の波
長は、77K付近で1.7FLm、20K付近で2.5pm程度長波長化し、CW動作
では、77Kの温度で、発振波長域が3.5〝m程度長波長化した。
今回の検討により、PbトXSnxTe結晶のエネルギギャップEgを、結晶の
Ⅹ値が0−0.26の範囲で、レーザの発振波長により確認できるようになった。
図3−12に、動作温度77KでのⅩ値とフォトンエネルギの関係を示す。フォ
トンエネルギがエネルギギャップEgに等しいとみなせ、発振波長の温度依存性
を考慮し、E gは次式で表現できる。
E g=187−625Ⅹ+520Ⅹ2+0.55T2/(T+30)
……‥−…(3−3)
Egの単位はmeVで、絶対温度Tの単位はKである。
5 6
● ● ■ ■
8 6 4 2
0 0 0 0
︵き∈︶﹂OiPOd
200 400 600 800 1000
Current(mA)
図3−10 長波長格子整合型PbSnTeレーザの出力特性
5 7
●
︵∈︺こ阜ぎ虐聖局≡
●
● CW
●
O Pulsed
aroundthreshold
0peratingTemperature(K)
図3−11長波長PbSnTeレーザの温度チュrニング特性
5 8
︵∈ミ︶王ぎむ一聖薫き
1 1 1 1 1
5 9
8 0 2468
図3−12 Pb.一XSnxTe結晶の組成とフォトンエネルギの関係
3−4 P b S nT e DHレーザの動作温度の限界
ここでは、長波長化の検討で判明したPb S nTe DHレ∼ザのヘテロ接合部
のバンド構造がタイプ1’であることを用いて、最高動作温度について検討した結
果、Pb S nTe DHレーザでは200K以上の動作温度のレーザを得ることが
困難であることが判明したことを述べる。
3−4−1 エネルギバンド構造による最高動作温度の差
前節で述べたように、Pb S nTe DHレーザの活性層とクラッド層のヘテロ
接合部のエネルギバンド構造はタイプ1’であることが分かった。バンド構造がタ
イプ1とタイプ1’では、活性層へ注入できるキャリアの密度の上限値が異なる。
図3−14に、ヘテロ接合部のバンド構造の違いにより生ずる活性層に注入可能
なキャリア密度の差を示す。
(A)タイプ1’ (B)タイプ1
注入キャリアの擬フェルミ準位 n型フェルミ準位
「∴●●■≡●≡
p型の擬フェルミ準位
図3−14 ヘテロバンド構造の違いによる注入できるキャリア密度の差
活性層へキャリアの注入が最大となる状態は、図3−14に示したバンドペン
ディングが0の状態である。タイプ1’の場合、活性層にキャリアを最も多く注入
6 0
した場合でも、ポテンシャル障壁により、注入キャリアの擬フェルミ準位は活性
層の伝導帯下端のエネルギ準位E cより低くなる。一方、タイプ1の場合、注入
キャリアの擬フェルミ準位は、活性層の伝導帯下端のエネルギ準位Ecより高く
なる。そのため、他のパラメータが全て同じ場合は、タイプ1に比べ、タイプ1,
の注入できる最大キャリア密度は小さい。最大のキャリア密度を活性層に注入し
ても、レーザ発振に必要な反転分布が得られない場合、レーザ発振しない。従っ
て、他のパラメータが同じ場合、活性層のE cがクラッド層のE cより高いタイ
プ1’の方が、レーザ発振が起こりにくくなる。
ヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ1’であることを考慮し、レーザの
最高動作温度として、反転分布が得られる状態の最高温度を理論検討した。反転
分布の得られる条件を示す10)。
0<hJJ−E
gA<En−E
p−E
gA=qVa−E
gA −−−”−−−‥−−(3−4)
ここで、E gA、E c、Evは活性層のエネルギギャップ、伝導帯下端のエネ
ルギ準位、価電子帯上端のエネルギ準位、EnとEpは、活性層中の電子とホ
ールの擬フェルミ準位、Vaはpn接合にかかる電圧、qは電子電荷である。
pn接合に印加できる最大の電圧Va,maXが、Eg/qより小さいと反転分布
が得られない。従って、レーザ発振条件は次式を満足しなければならない。
qV a.max−E gA>0
………−‥(3−5)
qVa,maX=E gAとなる温度が、反転分布の得られる最高温度であり、レー
ザの最高動作温度と考えることができる。図3−15に示すバンドペンディング
が0の状態のpn接合部のエネルギバンド状態が、Va,maXを印加された状態で
あり、qVa,maXは次式で表される。
qV
a.max=E
gA+F
n+F
p−AE
c 一一……‥−−(3−6)
ここで、FnとFpは、電子とホールの擬フェルミエネルギ、△E cはp n接
61
合境界でのE cのバンドオフセット量である。
qVa=E
n−E
p
E gA+F p−qV a,maX=△E c−F n
△E c
図3−15 ヘテロp n接合部のエネルギバンド構造
FnとF pは、活性層に注入される注入キャリア6nおよび、電荷中性別から次
の3式で関連づけられる。
nB=J
S(E,EB)f(E−F
6n+pA=J
S(E,E
n)d
E 一一一−−−−−−(3−7)
gA)f(E−Fp)dE 一−−・一一−一一(3−8)
6n=J S(E,E gA)f(E+(△E c−Fn))dE …−”(3−9)
ここで、Sは状態密度、fはF e rmi−Di r a c関数であり、pAとnBは
活性層とn型クラッド層のキャリア濃度であり、E gAとEBは活性層とn型ク
ラッド層のエネルギギャップである。
(3−2)式と(3−3)式に、活性層とクラッド層のⅩ値を代入することに
より、△E cとE gAとE。を求めることができる。そして、活性層とn型クラッ
ド層のキャリア濃度の値から、(3−7)∼(3−9)式を用いて、FnとF p
を求めることができる。qVa.maxは、FnとFpを(3−6)式に代入するこ
とで求めることができるため、qVa.m”=E g^となる最高動作温度を計算に
6 2
より求めることがで可能である。
ホットウォール法で試作したレーザで得た最も良好なDHレーザの最高動作温
度(パルス動作での最高動作温度188K)と、計算により理論的に求めた最高
動作温度を比較した。DHレーザは、活性層の厚みが1JJm、メサストライプ型
であり、活性層のⅩ値が0.12の格子整合型Pb SnTe/PbTe S eレーザ
である。活性層とn型クラッド層のキャリア濃度は、温度77Kのホール測定に
より求めた値であり、pA=6×1017cm−3、nB=5×1018cm ̄ ̄3である。
図3−16に結果を示す。△Ⅹ=0.12として(3−2)式により求めた値であ
るAE c=48meVに対し、理論的上の最高動作温度は、206Kと試算でき
る。△E cの誤差が±5meVあり、最高動作温度の誤差は±20Kと見積もれ
るため、理論値は、実際の最高動作温度の値188Kと誤差の範囲で一致すると
みなせる。また、△E c=0と仮定しヘテロ接合部のバンド構造をタイプ1へ近
づけた場合、理論的な最高動作温度は300K以上となる。
従って、Pb S nTe DHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’で
あり、ポテンシャル障壁AE cにより、200K以上の温度でレーザ発振に必要
なキャリアが活性層に注入されにくく、動作温度向上が難しいと考えられる。一
方、次章の短波長域で発振するPbEuTeDHレーザは、バンド構造がタイプ
1と考えられていることから、200K以上の最高動作温度が期待できる。
尚、計算で用いた状態密度S(E,Eg)は、次式で与えている。
S(E,Eg)=〔87TN(2R)1/2mt。3/2h.3〕(1+2E/Eg)
×〔E(1+E/Eg)〕1/2 …−−−(3−10)
Nは谷の数でありN=4、mt。は横方向有効質量であり、Rは有効質量m.。と
mtoの比であり、EoはO KでのPbTeのエネルギギャップである。そして、
Rとmtoは文献値を用いた11)・12)。
R=m10/mto=10
mto/mo=0.024E
……(3−11)
g/Eo
……(3−12)
6 3
Temperature(K)
図3−16 qVa,maXとEgAの温度依存正
3−4−2 閥値電流密度の温度依存性
ここでは、閥値電流密度の温度依存性について行った理論値と実験値の比較を
行った。
閥値電流密度Jthは、活性層の厚みdに比べて注入キャリアの拡散長が十分長
い場合、活性層内で均一に分布していると考えられ、次のように表される13)。
J
th=q6n
d/T
一…一一(3−13)
T■1=T radll+Taug−1+TEX−1
6 4
…−‥(3−14)
ここで、qは電子電荷、∂nと丁は活性層に注入されるキャリアの密度と再結
合時間、そして、T ra。とT。Ugは、発光再結合時間とオージェ再結合時間であ
り、TEXは、その他の再結合時間である。
He r rma nnのゲイン関数12)を用い6nとT radを求めた。具体的な手法
は、本章の付録で述べる。レーザ発振状態の注入キャリア密度がボルツマン分布
を示さないため、Ta。gについては、ボルツマン分布を用いるEmt a g eの方
法14)ではなく、フェルミ分布で計算されるRo sma n等の方法15)を用い、計
算した。Em t a r g eの方法では、オージェ再結合割合をオーバーエスティメ
ートしてしまうためである。
活性層とクラッド層のヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ1’であるた
めに、e X t ri n si cな電流として、マルチパストンネル電流に注目した。
p型活性層のE vとn型クラッド層のE cのエネルギ準位が近いと、マルチパス
トンネル電流が流れ易いと考えたためである。このトンネル電流のメカニズムを
図3−17に示す。このトンネル電流は、Ri b e nとF e u c h tがG a A s
−Geヘテロ接合対し提案したリーク電流であり16)、Z emelとEg e rが、
P b S nT e DHレーザのヘテロ接合で流れると推定している17)。この電流は、
p nヘテロ接合部を順バイアスで流れるトンネル電流であり、欠陥等によるトラッ
プレベルを介し、電子がn型クラッド層の伝導帯からp型活性層の価電子帯へ直
接流れる電流であり、次式で表される。
J
tu。nC.=B
e
x
p
t−a
O(Vd−K.Va)1 −”−‥(3−15)
α=8方/3h(m*eA/p)1/2
……(3−16)
qVd=E gA−AE c+F pA+F nB
……(3−17)
qVa=E gA+F pA+F n^
−…一一(3−18)
Kl=nRe B/(p eA+nBe B)
……(3−19)
ここで、m書は有効質量、eAとe吊ま、活性層とクラッド層の誘電率、pは活
性層の全ホール密度、F p∧とF n^は、活性層の電子とキャリアの擬フェルミ
エネルギ、F nBとn一与は、クラッド層の電子密度と擬フェルミエネルギ、V a
6 5
は、p n接合部の電圧である。Bと∂は、フィッティングパラメータである。
図3−17 マルチパストンネル電流
活性層厚が1FLmでキャリア濃度がp=6×1017cmN3、Ⅹ値が0.12で、
最高動作温度が188KのP b S nT e/PbT e S e DHレーザに対し、閥値
電流密度の計算を行い、実際の値と比較した。図3−18に、結果を示す。
理論的に求めた発光電流J,a。と非発光電流であるオージェ電流J a。gの和によ
る閥値電流密度は、i n t ri si cな電流密度である。150K付近の温度域
で、実際の値より一桁以上小さい。Bと∂を適当に選んだマルチパストンネル電
流により、計算値を実際の値に近づけることができる。尚、次章のP b E uT e
レーザでは、閥値電流密度をJ radとJ a。gの和のみで説明できる。
P b S nT e DHレーザでは、これまで、非発光再結合電流であるオージェ電
流が大きく、量子効率が小さくなるため、200K以上の動作温度が得難いと考
えられてきた。しかし、今回の検討では、オージェ電流で、閥値電流密度の温度
依存性を解釈することができず、マルチパストンネル電流のようなリーク電流を
考える必要のあることが分かった。
以上の検討から、200K以上の動作温度のP b S nT e DHレーザを得難い
理由は、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’であるためであり、オージェ電流
が大きいためとは考えられないと結論する。
6 6
exp(−α0(Vd−KIVa))
40
1
写、、
J=Jtun+Jint
Xad=0・12
Gth=40cm−l
20
1
Pact=6×1017cm−3
Nclad=5×1018cm−3
d=1〟m
AEc=48meV
1
10
︵N∈0≧︶倉su名lu空し⊃OPtOエSp王ト
Jtun=BX
O=0.0048
B=4×106A/cm2
100 200
300
0peratingTemperature(K)
図3−18 PbSnTe/PbTe S eDHレーザの閥値電流密度の依存性
6 7
3−5 まとめ
シングルモードレーザの発振波長域拡大を目指し、格子整合型DHレーザで、
Pb SnTeレーザの長波長化を進めた。10FLmより短波長域では、クラッド
層にPbTe S eを用いた格子整合型Pb SnTeDHレーザは、格子不整によ
る結晶欠陥が減少するため、クラッド層にPbSnTeを用いた格子不整合型に
比べ、閥値電流密度が低減するとともに出力が増加する。しかし、10/Jmより
長波長域では、パルス動作のみであるが77Kの温度で動作するレーザが得られ
る格子不整合型レーザに対し、本来レーザ発振し易くなる筈のPbTe S eクラ
ッド層を用いた格子整合型レーザは、CW動作はもちろんパルス動作する素子す
ら得られない。この格子整合型レーザの長波長化を妨げる原因を検討した。
従来考えられていたモデルでは、Pb SnTeDHレーザのヘテロ接合部のバ
ンド構造は、クラッド層の伝導帯下端のエネルギ準位E cの方が、活性層より高
いタイプ1の構造であり、活性層にキャリアを注入し易い構造である。一方、新
たに考えたモデルでは、バンド構造は,クラッド層のE cより活性層のE c方が
高いタイプ1’であり、バンドオフセットAE cがポテンシャル障壁となるため、
タイプ1に比べ活性層にキャリアが注入され難い。そして、活性層とクラッド層
間のS n組成差に比例し、△E cが大きくなると考えた。このモデルでは、活性
層とクラッド層間のS n組成差の大きくなると活性層にキャリアが注入され難く
なるため、10FLmより長波長領域で、クラッド層にPb S nTeを用いた場合
に比べ、PbTe S eを用いるとレーザ発振し難くなることを説明できる。
ヘテロ接合部のエネルギバンド構造について考えた新モデルを実験検証するた
めに、クラッド層のS n組成の異なる二種類の長波長Pb S nTe DHレーザ用
結晶を成長し、電流一電圧特性を調べた。低温成長可能なホットウォール法を用
い、結晶成長時のS n拡散により起こるヘテロ接合部のエネルギバンド状態の変
化を小さくしている。その結果、①活性層とクラッド層問のS nの組成差が小さ
い場合、P b S nT e DHレーザは、クラッド層のE cが活性層のE cよりエネ
ルギ準位の高いタイプ1’で発振するレーザであること、②S nの組成差が大きく
6 8
なると、活性層のE cだけでなく価電子帯上端のエネルギ準位Evも、クラッド
層のE cより高いタイプ2に近くなるため、バンドオフセット△E c(障壁)が
拡大し、レーザ発振しなくなることが判明した。このモデルは、Ⅹ値の増加と伴
にエネルギギャップEgは減少するが、E cのエネルギが高くなる邑瀬等のモデ
ルと一致する。
PbT e S eのP bの一部をS nで置換した4元のPb S nTe S eをクラッ
ド層に用い、活性層と格子整合させかつヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’と
することにより、10FLmより長波長域で、温度77KでCW動作するレーザを
始めて得た。77Kでの波長は、パルス動作で従来のレーザと比べ1.7〝m程度
長い13.7FLm、CW動作で、従来より3.5J上m程度長い13.5FLmである。出
力は、77KのCW動作で、短波長レーザと同等の1mWである。20Kに動作
温度を下げると、パルス動作、CW動作いずれも発振波長は18.5〝mとなり、
従来よ・りも、2.5〝m程度長波長化した。
また、今回の長波長化の検討で判明したヘテロ接合部のバンド構造を用いるこ
とにより、200K以上の温度で動作するPb SnTe DHレーザを得難い理由
が判明した。レーザ発振に必要な反転状態となる最高温度を理論検討した結果、
Pb S nTe DHレーザは、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ1’であ
るため、200K以上の温度では、反転条件を得るのに必要なキャリアが活性層
に注入されにくい。そして、200K以上の動作温度のレーザが得難い理由とし
て、従来考えられてきた非発光再結合電流であるオージェ電流が大きいことで、
閲値電流密度の温度依存性を説明できず、マルチパストンネル電流など他のリー
ク電流を考える必要がある。
今回の検討から、ヘテロ接合部のバンド構造がPb S nT e DHレーザの動作
決める重要な要素であり、長波長化に対しては、クラッド層にP b S nTe S e
を用いることにより、活性層とクラッド層を格子整合させ、かつヘテロ接合部の
バンド構造をタイプ1’とすることが重要であると判明した。
6 9
3−6 付録 注入キャリア密度∂nと発光再結合時間T ra。について
① 注入キャリア密度∂n
6nは、ゲイン関数g(hレ)の最大値が、導波路の損失gLhに等しくなる時
のフェルミエネルギより求まる。導波路損失gthの変化に対する∂nの変化は、
10%程度であり、gth=40cmlとして5)、He r rmannのゲイン関数
を用い12)、(3−20)∼(3−24)を数値計算で解くことで求めた。
g(hJJ)=K.EgAl/2(h
LJ−EgA)1/2/RA
X〔1−e Xp f(h L/−EgA−Fn−Fp)/kTI〕
/〔1+e xp t(2(hシーEgA)−Fn)/2/kTl〕
/〔1+e xp((2(hシーEgA)−Fp)/2/kTl〕
……(3−20)
6n=J
S(E,E
6n+pA=J
gA)f(E−Fn)dE ……(3−21)
S(E,E
gA)f(E−Fp)dE …−−−(3−24)
ここで、h z/はフォトンエネルギ、K.は定数で6.5×105ev cm ̄1、R^
とE gAは、活性層の屈折率とエネルギギャップ、kはボルツマン定数、Tは
温度、pAは、活性層のキャリア濃度(p型)FnとFpは電子とホールの擬
フェルミエネルギである。f(E−Fn)、fとS(E,EgA)は、フェル
ミ関数と状態密度である。
(診 再結合時間丁
注入状態の発光再結合する全割合Rs。(hレ,∂n)から注入されていない場
合の再結合割合Rs。(hン,0)との差が、注入キャリアが再結合する割合であ
ることから、T ra。は次のように表される。
T,ad、1=†Rs,(h
LJ,6n)−Rsp(hJJ,0))/6n
・−‥‥(3−2 5)
7 0
Rsp(hレ,6n)は、アインシュタインの関係から、ゲインg(hlJ)を用
いて、次式で表される18)。
Rs。(h L/,6n)=87TRA2/h3/C2×
J(Z)2/〔1−e
Xp
t(hレーFn−Fp)/kTl〕g(hレ)d
zJ
……(3−26)
ここで、Cは光速である。
①で求めたキャリア注入状態のフェルミエネルギFnとF pをゲイン関数に代
入し、(3−26)式の積分を実行することで、Rs。(hレ,∂n)が求まる。
Rs。(hレ,0)はキャリアが注入されていない時の値であり、この時のフェル
ミエネルギをゲイン関数に代入し、(3−26)式から求まる。そして、∂nと
(3−25)式からT ra。を求めることができる。
71
第3章の参考文献
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up
to204K,”Appl.Phys.Lett.,47,1184−1186(1986).
8)L.R.Tomasetta
junctionlaser
and
C.G.Fonstad,”Lead−tin
diodes:theory
and
telluride
double
hetero−
experiment,’’IEEEJ.Quantum
Electron.,OE−11,384−390(1975).
9)K.Murase,S.Shimomura,S.Takaoka,A.Ishida,and H.Fujiyasu,
”On
the
type
of
superlatticesinlead−tin−telluride
system,”superlatt.
Microstruct.,1,177−182(1985).
10)W.W.Anderson,”Gain−frequency−Current
7 2
relation
for
Pbl
xSnxTe
double
heterostructurelasers,”IEEEJ.Quantum
Electron‥ OE−13,532−
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11)C.R.Hews,M.S.Adler,and
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K・P
band
parameters
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magnetic
hyperfine
constants,’’phys.Rev.B,
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12)K.H.Hermann,”Recombinationin smalトgap Pb.−JSnxTe,”solid−State
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13)R.Roaman
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A.Katzir,’’optimal
design
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15)R.Rosman
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A.Katzir,’’Lifetime
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17)A.Zetnel
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18)M.B.Panish,”Heterostructureinjectionlasers,”procIEEE,64,
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7 3
4 章 P b E u T e レ−ザ
iこよ る短波長イヒ1)・2)・3)
シングルモード発振波長域を短波長域に拡大するため、短波長域のP bT e系
レーザとして、P bl_XE uxT e DHレーザについて検討した。ホットウォール
法により、結晶成長技術を開発するとともに、動作温度向上による短波長化を進
めた。200K以上の温度での動作が可能となるとともに、活性層のX値の範囲
が0∼0.015の範囲で、6.5∼3.5〟mの波長のレーザ発振を確認できた。
本章では、まず、Pb._XE uxT e結晶のE u組成(X値)のウェハ面内で均
一化や、得た結晶性について等、ホットウォール法による結晶成長技術について
述べる。続いて、レーザの発振波長特性や、動作温度とクラッド層組成との関係
など、得たレーザの特性について述べる。さらに、レーザの最高動作温度や聞値
電流密度の温度依存性について延べ、P bS nT e DHレーザで不可能であった
200K以上の動作温度のレーザを得た理由にも触れる。
4−1 P b E uT e結晶成長法
液相エピタキシャル法で結晶成長できないことから、成長法としてホットウォ
ール法を開発した。Pb E uTe結晶のホットウォール成長法は、前章で述べた
Pb SnTe結晶の成長技術と異なる。Pb SnTe結晶の場合、同じ蒸発温度
でS nTeとPbTeの蒸気圧が近いため、成長用ソースとしてPb S nTe合
金を使用し、合金の組成を変えることにより、結晶の組成制御を行うことができ
る。しかし、PbEuTe結晶の場合、成長用ソースとして、Pb EuTe合金
を使用することができない。同じ温度では、EuTeの蒸気圧がPbTeと比べ
非常に低いため、PbEuTe合金を成長用ソースに用いても、PbEuTe結
晶が成長しないためである。比較的蒸発温度を近くすることができる結晶成長用
ソースとしてPbTe合金と元素のE uと元素のTeが使われる。ホットウォー
ル法を用いPbEuTe結晶を成長する方法には、一つの成長用ルツボを用いて
Pb E uTe混晶を成長する方法4)・5)と、二つの成長用ルツボを用いPbTe
7 4
結晶層とEuTe結晶層を交互に成長することでPbTe−EuTe短周期超格
子を形成する方法がある4)。結晶性が良いことから、PbEuTe混晶を成長す
る方法を選んだ。
一基板(300℃)
PbTeソース溜め開口部
P bT e(540℃)
E u(460∼500℃)
T e(380℃)
図4−1 Pb EuT e結晶成長用ルツボ
図4−1に、Pb EuTe結晶成長用ルツボを示す。Teは、リザーバに充填
している。この成長用ルツボは、真空度が10 ̄4p aの真空装置内の電気炉に設
置してある。成長温度は、300℃と、Pb SnTe結晶の成長温度と同じであ
る。成長レートは、PbTeソースの蒸発温度で変えることができ、540℃の
温度で2∼3FLm/Hである。PblMXEuxTe結晶のⅩ値は、E uの蒸発温度
を460℃から500℃と変えることにより、0から0.03近くまで変えること
ができる。Ⅹ線回折により結晶の格子定数aを評価して、P a r ti nの式によ
り、Ⅹ値を評価した6)。
Ⅹ=A(a−apbT。)2+B(a−apbTe) −‥…(4−1)
ここで、Aは37.3Å ̄2、Bは2.0Å ̄1、aPbTcは6.462Åである。
図4−1のルツボでは、次の点について検討を進めた。ルツボ内部に存在する
E u蒸発分子は、T e蒸発分子と反応し、蒸気圧の低いE uT eが形成されるた
7 5
め、P bT eソース表面やE uソース表面がこのE uTeで皮膜され易い。その
ため、成長ロット間での成長速度の低下やEu組成変化が起こり易くなる。これ
を避けるために、PbTeソース溜めやEuソース溜めの開口部を細く絞ること
で、EuTeの混入を防ぐようにした。また、E uソース溜めの開口形状が、ウ
ェハ面内のE u組成の分布に影響することも分かり、この開口形状についても検
討した。図4−2に、開口形状のE u組成分布に対する影響を示す。
E u組成
0.015
0.010
0.005
−4 −2 0 2 4
中心からの距離(mm)
図4−2 E uソース溜め開口形状のE u組成分布に対する影響
開口形状が長い細管状である場合、この部分を通過するE u蒸発分子流がビー
ム状となり、ルツボ内のT eリザーバ管に遮られ、E u分子がウェハの中心部に
届かない。しかし、この細管部の長さを短くすると、分子流が広がり、リザーバ
管に遮られなくなるため、ウェハ面内に均一にE uが到達するようになり、ウェ
ハ面内でE u組成が均一になる。このルツボ構造により、Ⅹ値が0.03近くまで
P bl_XE uxT e結晶が得られるようになった。
7 6
図4−3に、ホール測定で調べたE u組成(Ⅹ値)と電子の移動度の関係を示
す。0から0.028近まで、Ⅹ値が増加するにつれ、移動度は104 cm2/V/Sか
ら102 cm2/V/Sのオーダへと減少する。Ⅹ値が増加するにつれ移動度が減少す
る理由として、酸化Euの増加やE uインクルージョンの増加が考えられるが、
明確ではない。
︵S>雫。︶哩扁蛤叶印
口
0.01 0.02 0.03
X
図4−3 Pb E uTe結晶の電子の移動度
尚、PbEuTe結晶のp型とn型のキャリア濃度制御については、PbTe
ソースへの不純物ドーピングにより行っている。p型にTl、n型にBiを用い
ており、キャリア濃度は、p n共に5×1018cm ̄3であり、Pb S nTeレー
ザと同等とした。
7 7
4−2 P b E uT e DHレーザの特性
Pb E uTe DHレーザは、活性層のE u組成(Ⅹ値)を多くすることで発振
波長が短くなるとともに、動作温度が高くなると発振波長が短くなるレーザであ
る。P b E uT e DHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1と考えら
れており6)、タイプ1’のPb S nTe DHレーザより動作温度の向上が期待でき
る。そのため、活性層のE u組成の増加に加え、動作温度向上によっても短波長
化を進めた。特性評価に用いたレーザの素子構造は、Pb S nTe DHレーザと
同じメサストライプ構造であり、ストライプ幅が30JJm、活性層の厚が1J∠m
程度である。活性層は、Pb S nTeレーザと同じアンドープであり、キャリア
濃度もp=1∼2×1017cm ̄3と、通常得られる値である。
図4−4に、短波長化のために検討した、P bトXE uxT e DHレーザの最高
動作温度に対する活性層とクラッド層間のE u組成差関係を示す。簡単化のため
に活性層はPbTeとした。クラッド層のE u組成が0.01付近で最高動作温度
は、220Kである。E u組成が0.017と増加すると、243Kまで最高動作
温度は上昇する。このE u組成値を越えると最高動作温度は下降する。E u組成
の増加により動作温度が向上する原因については、E u組成の増加に伴い、活性
層とクラッド層間のエネルギギャップの差が大きくなり、活性層へのキャリアの
閉じ込め効果が増し、レーザの発光効率が向上することが考えられる。一方、ク
ラッド層のE u組成が0.017を越えると動作温度が下降する原因については、
E u組成の増加に伴い、活性層とクラッド層問の格子不整合で発生する結晶欠陥
が増加する(活性層とクラッド層の組成差が△Ⅹ=0.017の場合、格子不整合
△a/a=0.12%)、ことやクラッド層の結晶性の低下による活性層の結晶欠
陥の増加が考えられるが、原因は明確でない。
図4−5にPbl__XE uxT e DHレーザの発振波長の動作温度依存性を示す。
発振波長は、パルス動作の閲値付近での値である。活性層のⅩ値が0のレーザで
は、クラッド層のⅩ値が0.017である。活性層のⅩ値が0.011と0.015の
レーザについては、クラッド層と活性層間のE u組成差は0.01程度である。い
7 8
ずれのレーザも、最高動作温度がPb S nT e DHレーザで得られない200K
を越えた。活性層のEu組成がⅩ=0∼0.015の範囲のレーザで、6.5JJm∼
3.5FLmの波長域でレーザ発振を確認できた。この発振波長は、P a r ti n等
が実験的に求めたPbトXEuxTe結晶のエネルギギャップE g7)による発振波
長と良く一致している。
E g=187+0.55T2(1−9Ⅹ)/(T+30)+6000Ⅹ
………(5−18)
ここで、E gは単位がmeV、Tは動作温度で単位がKである。
尚、活性層Ⅹ値が0のレーザと他のレーザの最高動作温度の違いについては、
活性層とクラッド層間のE u組成差に加え、活性層のE uが高くなると結晶性が
悪くなることも影響している可能性があると考えている。
最も動作温度が向上したP b E uT e DHレーザは、活性層がP bT eで、ク
ラッド層のE uTe組成が0.017のDHレーザであり、パルス動作の最高動作
温度は243K、CW動作の最高動作温度が170Kである。前章で述べた最高
動作温度の最も良好なP b S nTe DHレーザと比べて、パルス動作で55K、
CW動作で34K向上した。これらの最高動作温度の値が、P a r ti n等が報
告した量子井戸型レーザの値とほぼ同じである7)。彼らが初めて200K以上の
動作温度のレーザを得た理由は、量子井戸構造よりも、むしろPb E uTe結晶
を採用したためと考えられる。
このように、Pb E uTe DHレーザにより、PbT e系レーザで、最高動作
温度のトップデータが243Kと、200K以上の動作温度のレーザが得ること
が可能となるとともに、活性層のEu組成を選ぶことにより、最短の発振波長が
3.5〝mのレーザを得られるようになった。
7 9
︵ヒ︶聖⊃︸空乳∈むトぎ焉﹂乳○∈コ∈欄×再三
240
220
200
0 0.01 0.02 0.03 0.04
Eu composition(X)incIad
図4−4 最高動作温度に対する活性層とクラッド層間のEu組成差
8 0
一、400
0
∈
ゝ≠
4
>、
P300
5
6 7
0
0
︵‘
u010‘d
0
⊂
0
100 200
Temperature(K)
300
図4−5 PbトXEuxTeDHレーザの発振波長の動作温度依存性
81
︵∈斗︶三muOlO>巾き
>
4−3 P b E uT e DHレーザの閥値電流密度の温度依存性
P b E uTe DHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1と考えられ
ている。前章の3−4と同じ方法を用い△E c=0と仮定して計算すると、反転
条件の得られる最高温度は、400K程度となる。従って、Pb E uT e DHレ
ーザで200K以上の最高動作温度が得られた理由として、Pb S nT e DHレ
ーザと異なり、ヘテロ接合部のバンド構造が、動作温度向上を抑止する要因とな
らなかったことが考えられる。
最高動作温度が243Kと最も良好なレーザの閥値電流密度の温度依存性を、
図4−6に示す。活性層はPbTeで、クラッド層のE uTe組成は0.017で
ある。同図に、前章の3−4と同じ方法で計算した開値電流密度の温度依存性も
示す。閥値電流密度は、50∼180Kの温度範囲で、I n t ri n si c電流
である発光再結合電流J,adとオージェ最結合電流J a。gのみで計算した値と良く
一致している。同図に、計算推定したマルチパストンネル電流を示す。フィッテ
ィングパラメータは、P b S nT eレーザの場合と同じであるが、P b E uT e
DHレーザのヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1であるため、マルチパストン
ネル電流は、I n t ri n si c電流より二桁近く小さい。この50∼180K
の温度領域で、Pb S nT eレーザの場合と異なり、閥値電流密度の温度依存性
が、活性層内で電子とホールが再結合するI n t ri n si cな電流のみで説明
できることは、トンネル電流の小さいことも含め、ヘテロ接合部のバンド構造が
タイプ1であるため、キャリアが活性層内に効率良く閉じ込められ、レーザ発振
していることを示していると考えられる。一万、180K以上の温度では、計算
値と実際の値がずれてくる。この原因は現在不明である。このDHレーザの更な
る動作温度向上には、ヘテロ障壁からのキャリア漏れ等8)、他の閥値電流密度の
増大原因を検討する必要がある。一万、50K以下の温度領域で、閥値電流密度
の実際の値と計算値がずれることについては、p n接合部での欠陥などの温度依
存の小さい抵抗性のリーク電流を20A/cm2 と見積もると、説明できる。
8 2
︵NEU邑倉su名lu聖﹂⊃OP一〇二S聖芦
Xa。t=O
○
X。Iad=0.017
Pa。=1×101もm ̄3
N血=5×1018cm−3
d=1.3〟m
AEc=OmeV
B=4×106A/cm2
0=0.0048
Jtun =BX
exp(−α0(Vd−KIVa))
0peratingTemperature(K)
図4−6 PbEuTeレーザの閥値電流密度の温度依存性
8 3
4−4 まとめ
シングルモードレーザの発振波長を短波長域へ拡大するために、本研究では、
Pb E uT eDHレーザを検討をした。このPb EuTe DHレーザは、活性層
のE u組成を高くすることで発振波長が短くなるとともに、動作温度が高くなる
と発振波長が短くなるレーザである。Pb EuTe DHレーザは、ヘテロ接合部
のバンド構造が、Pb S nT eDHレーザと異なるタイプ1と考えられており、
動作温度向上が期待できる。従って、Pb EuTe結晶成長技術開発とともに、
短波長化のために、活性層のEu組成の増加に加え、最高動作温度向上について
も検討した。
液相エピタキシャル法で成長できないために、Pb E uTe結晶の成長法とし
て、ホットウォール成長技術を検討した。結晶成長用ソースとしてP bT eと元
素のE uと元素のTeを結晶成長のソースとして用い、Pb EuTe混晶を成長
する方法を選んだ。このソースを使用できるよう、ホットウォール用のルツボの
構造について検討を進め、Eu組成(Ⅹ値)が0∼0.028と0.03近くまで、
Pbl_XE uxTe結晶の成長が可能となった。
動作温度向上のため活性層とクラッド層間のE u組成差を検討し、最高動作温
度については、最も良いものは243Kと、Pb S nTeレーザでは得られない
200K以上の最高動作温度が得られるようになった。そして、活性層のE u組
成がⅩ=0∼0.015のレーザで、6.5∼3.5〟mの波長でレーザ発振を確認で
きた。さらに、閥値電流密度の温度依存性についても検討した。50∼180K
の動作温度範囲で、閥値電流密度が発光再結合電流とオージェ再結合電流の和で
説明できることから、Pb E uTe DHレーザは、Pb S nT e DHレーザに比
べ、活性層内にキャリアを閉じ込め易くなっていることが分かった。この原因と
して、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1であるため、活性層のE cよりクラ
ッド層のE cの方が高く、エネルギ準位の低い活性層にキャリアが溜り易いため
と考えられる。
8 4
第4章の参考文献
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8 5
5 章 結論
本研究では、中赤外領域で発振するシングルモードレーザを得るため、格子整
合型DH構造を埋め込むことによるPb S nT eレーザのシングルモード化を進
めた。そして、埋め込む前の構造である格子整合型Pb S nT e DHレーザの発
振波長域を10/Jmより長波長域へ拡大することを検討した。また、短波長域へ
も発振波長域を拡大するため、Pb E uT e DHレーザの研究を進めた。
(9シングルモード化
シングルモード化が求められる鉛塩赤外レーザの用途は、ガスセンサ用の光源
などであり、動作周波数は、通信用レーザに比べ遥かに低いDC∼数KH zであ
る。半導体レーザでは、低周波動作の場合ゲインサブレッション効果があり、横
モードをシングルモード化することにより、縦モードをシングルモード化するこ
とを期待できる。横モードをシングルモード化するため、埋め込み構造を選び、
マクスウェルの電磁波の式を矩形の光導波路モデルに適応し、P b SnTe活性
層の厚みと幅の理論検討を行った。
埋め込み構造は、格子整合型DH構造結晶を、クラッド層と同一の材料で埋め
込むことにより形成する。埋め込み構造を実現するために、結晶成長法としては
液相エピタキシャル法を用いた。活性層からクラッド層への成長時のS n拡散が
レーザ特性を劣化させることを明らかにし、S nが埋め込み成長時に拡散するこ
とを抑止する結晶成長条件を見出し、通常の液相エピタキシャル法による埋め込
み構造を実現するための結晶成長技術を開発した。
発振波長が7∼8FLmで、Pb S nTe埋め込み構造レーザを実現し、従来報
告された値より10倍以上の1.7mWのシングルモード出力を得た。
②長波長化
クラッド層にPbTe S eを用いた従来の格子整合型DHレpザは、クラッド
層にPb SnTeを用いた格子不整合型DHレーザと比べ、格子不整により発生
8 6
する結晶欠陥が少ないにもかかわらず、10JJmより長波長域で、発振しない。
この格子整合型レーザが発振しない原因を説明するため、ヘテロ接合部のエネル
ギバンド構造に関し、従来と異なるモデルを考えた。バンド構造が明確になるよ
う、結晶成長時に起こるヘテロ接合部でのSn拡散を低減できるホットウォール
法により結晶成長を行い、レーザ特性を調べた。
その結果、(1)Pb SnTeDHレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造が、活性
層の伝導帯最下端の準位E cがクラッド層のE cより高いタイプ1’であることが
判明した。(2)そして、10FLmより長波長域では、従来のPbTe S eクラッド
層を用いた格子整合型Pb S nTeDHレーザは、活性層とクラッド層のSn組
成差が大きくなり、ヘテロ接合部のエネルギバンド構造がタイプ2に近くなり、
バンドオフセット△E c(障壁)が大きくなるため、レーザ発振しなくなること
が判明した。このバンド構造は、従来考えられていた構造と異なる。
10〝mより長波長域でもヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1’となるように
活性層とクラッド層のS n組成差を小さくするため、格子整合型DHレーザのク
ラッド層として、P bT e S eのP bの一部をS nで置換したPb S nT e S e
を用いた。動作温度77Kで、CW動作で従来より3.5FLm程度長い13.5FLm
の発振波長のレーザを得て、10〟mより長波長域でCW動作するレーザを得る
ことが可能となった。動作温度20Kで、発振波長は18.5〟mとなり、従来よ
り、2.5/Jm程度長波長化している。
さらに、今回判明したヘテロ接合部のバンド構造を基に、Pb S nTe DHレ
ーザの動作温度限界について調べた結果、Pb SnTe DHレーザのヘテロ接合
部のバンド構造がタイプ1’であり、バンドオフセット△E cがポテンシャル障壁
となるため、クラッド層から型活性層にキャリアが注入されにくくなり200K
以上の温度で動作するDHレーザを得ることが困難であることも見出した。
今回の検討から、ヘテロ接合部のバンド構造がPb S nTe DHレーザの動作
決める重要な要素であり、格子整合型DHレーザの長波長化の鍵は、クラッド層
8 7
にPb S nTe S eを用い、ヘテロ接合部のバンド構造をタイプ1’とすることで
あると結論できる。
(診短波長化
Pb SnTeレーザで、4FLm帯で発振するレーザを得ることは困難である。
この波長域に、SnをEuで置き換えたPbTe系レーザとしてPbEuTeレ
ーザがある。このPbEuTeレーザは、ヘテロ接合部のバンド構造がタイプ1
と考えられており、動作温度向上を期待できる。動作温度向上は短波長化に対し
ても効果があるために、本研究では、短波長化のためPbEuTeレーザを検討
した。尚、このレーザには、Pb SnTeレーザと同じ結晶性の良い基板結晶や
素子化技術(縁膜形成・電極形成など)を使用できる利点がある。
液相エピタキシャル法で結晶成長できないために、ホットウォール法により、
Pb E uTe結晶の成長技術を開発し、E u組成が0∼0.028と0.03近くま
で、PbEuTe結晶を得ることが可能となった。そして、動作温度向上による
短波長化を進めるため、活性層とクラッド層間のE u組成差も検討した。
最高動作温度は、活性層がPbTeでクラッド層のE u組成が0.017のレー
ザで、243Kの値を得て、Pb S nTe DHレーザで得られない200K以上
の動作温度を得られるようになった。そして、活性層のEu組成が0∼0.015
の範囲のレーザで、6.5∼3.5〝mの波長でレーザ発振を確認できた。
本研究により、埋め込み構造により、このPb S nTeレーザに代表される中
赤外領域の半導体レーザのシングルモード化が可能となるとともに、10〝mよ
り長波長域および4〝mより短い領域への発振波長拡大のための要素技術開発を
行うことができたと結論できる。
8 8
謝辞
本研究を進めるにあたり、ご指導、ご激励下さいました新機能素子研究開発協
会企画部篠原宏爾部長殿、富士通研究所企画調査室石崎洋之主席部長殿、光産業
技術振興協会開発部瀧川宏主幹殿に心から感謝します。また、結晶成長およびデ
バイス製作に協力を頂いた富士通研究所基盤技術研究所光エレクトロニクス研究
部門赤外デバイス研究部江部広治研究員に心から感謝します。
本論文を纏めるにあたり、適切なご意見とご助言を頂きました静岡大学工学部
藤安洋教授、石田明広助教授、篠原茂信教授、静岡大学電子工学研究所助川徳三
教授に深く感謝いたします。
8 9
研究業績目録
(A)本論文に関する研究論文
1)Y.Nishiji皿a,H.Ebe,H.Fukuda,K.Shinohara,and K.Murase,
”pbSnTe
single−mOdelasers
with
buried
heterostructure,,,in
Technical
digest,Conference on Laser and Electr0−Optics,(Baltimore,1985),
p.142−144.
2)Y.Nishijima
and
K.Shinohara,”single−mOde
PbSnTelaser
Yith
a
buried
heterostructure,”Appl.Opt.,32,4485−4490(1993).
3)Y.Nishijima,’’pbSnTe
double−heterostructurelasers
and
PbEuTe
double−heterostructurelasers by hot−Wall epitaxy,,,J.Appl.Phys.,
65,935−940(1989).
4)K.Shinohara,Y.Nishijima,and
high
H.Fukuda,”pbl_XSnxTelasers
with
effiencies,”proc.spIE(Soc.Phot0−Opt.Instrum.Eng.),438,
2ト28(1983).
5)K.Shinohara,Y.Nishijima,H.Fukuda,and H.Ebe,”pbトxSnxTe
lasers
withlow
threshold
currents,”in
Technical
digest,9thInternat−
ional Conference onIR and mmWaves,(Takarazuka,1984),p.71−72.
6)K.Shinohara,Y.Nishijima,H.Ebe,A.Ishida,and H.Fujiyasu,
”pbSnTe
multiple
quantum
welllasers
for
pulsed
operation
at6FLmuP
to204K,”Appl.Phys.Lett.,47,1184−1186(1986).
7)H.Ebe,Y.Nishijima,and
K.Shinohara,”pbEuTelasers
9 0
with4−6FLm
VaVelength
tnade
with
hot−Wall
epitaxy,”IEEEJ.Quantum.Electron.,
OE−25,1381−1384(1989).
8)A.Ishida,Y.Sase,T.Okatnura,N.Nakanura,H.Fujiyasu,Y.Nishijima,
K.Shinohara,”Lead−eurOpium−Chalcogenide
films
and
superlattices
for
3fLmlaser,”superlatt.,6,27−30(1989).
(C)研究会および学術講演会発表
1)西嶋由人 篠原宏爾 村瀬賢二 福田広和 江部広治
”埋め込み型Pbl−XS nxTeレーザ”
第45回応用物理学会学術講演会(岡山大学),14a−R−2(1984)
2)西嶋由人 篠原宏爾
”埋め込み型PbトxS nxT eシングルモードレーザ”
信学技報,Vol.85,ED85−95,45−49(1985)
3)西嶋由入 江部広治 篠原宏爾
”HWE法による格子整合型長波長Pb SnTeレーザ”
第48回応用物理学会学術講演会(名古屋大学),19a−ZR−9(1987)
4)西嶋由入 江部広治 篠原宏爾
”HWE法による鉛カルコゲナイドレーザ”
信学技報,Vol.87,ED87−103,45−50(1987)
5)西嶋由入 江部広治 篠原宏爾
”HWE法によるP bトxE uxT eレーザ”
第35回応用物理学関係連合講演会(法政大学),29p−ZP−3(1988)
91
6)西嶋由入 江部広治 澤田亮 篠原宏爾
”p b S nT e DHレーザの最高動作温度”
第49回応用物理学会学術講演会(富山大学),6p−ZC−10(1988)
7)江部広治 西嶋由人 篠原宏爾
”HWE法による赤外レーザ”
信学技報,Vol.88,ED88−106,37−42(1988)
9 2