水砕スラグが膨張しない理由

水砕スラグが膨張しない理由
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鉄鋼の製造工程と鉄鋼スラグ
製銑工程
製鋼工程
鉄鋼スラグとは?
高
炉
鉄鋼生産工程で、鉄鉱石等の原
料に含まれる鉄以外の成分を分
別・冷却して製造される副産物。
転
炉
溶銑予備処理
水砕スラグ
徐冷スラグ
製鋼スラグ
高炉スラグ(水砕・徐冷)
転炉系製鋼スラグ
鉄鉱石(
鉄鉱石(焼結鉱)
焼結鉱)とコークスを高炉に投入
し銑鉄をつくる工程で生成
転炉や予備処理炉で銑鉄から不要分を取り
除き鋼片を製造する工程で生成
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鉄鋼の製造工程の概要
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高炉スラグが膨張しない理由
【膨張しない理由】
・高炉スラグは石灰石(CaCO3)を原料としている(水和膨張する生石灰CaOではない)
・粉状にした石灰石と鉄鉱石で焼結鉱にする際に低融点化(液体になりやすい)する
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高炉スラグ(水砕スラグ)が膨張しない理由
【膨張しない理由】
・水砕スラグはガラス化したスラグで必ず液体→固体となる
・水砕スラグとして蒸気の中で冷却されるため水和反応が一気に進行する
・高炉操業上CaO-SiO2-Al2O3が一定の配合で調整されるため化学成分的に安定
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製鋼スラグに膨張対策が必要な理由
【製鋼の精錬反応】
①溶鋼の不純物を酸化し
溶融酸化物が上部に浮く
Si+O2⇒SiO2
P+O2⇒P2O5
②溶融状態の酸化物を
酸性とアルカリ性で中和
2CaO +SiO2⇒2CaO・SiO2
5CaO+P2O5=5CaO・P2O5
純酸素
生石灰
【膨張のメカニズム】
酸素が溶鋼と反応する部分は2000℃
を超え、石灰石が液体になるが
酸素に触れなかった一部は液体に
ならず溶け残る。
この部分が後で常温で水と接触した
時に水酸化カルシウムとなり膨張
CaO +H2O⇒Ca(OH)2
構内で蒸気エージングを
実施し膨張を完了させ出荷
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製鋼スラグの膨張対策設備 (蒸気エージング設備)
残存した遊離石灰CaO
残存した遊離石灰CaOと蒸気を約
CaOと蒸気を約3
と蒸気を約3日間反応させ膨張を完了させる。
・CaO(s)
CaO(s)+
(s)+H2O(g)⇒
O(g)⇒Ca(OH)
Ca(OH)2(s) 全製鋼スラグに適用
製鋼スラグ
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鉄鋼スラグの種類と特徴
種類
水砕スラグ
徐冷スラグ
製鋼スラグ
1cm
1cm
1cm
概 観
粒子密度g/cm
粒子密度g/cm3
2.6~
2.6~2.8
2.6~
2.6~2.8
3.2~
3.2~3.6
単位体積重量kg/l
単位体積重量kg/l
1.3
1.5~
1.5~1.7
2.1~
2.1~2.4
水硬性*1
水硬性*1
大
中~小
中
溶出水のpH
溶出水のpH
弱アルカリ
pH=10程度
pH=10程度
アルカリ
pH=10~
pH=10~11
強アルカリ
pH=12程度
pH=12程度
化学的
性質
その他
膨張性あり
化学成分
CaO
SiO2
Al2O3
T-Fe
MgO
S
P2O
MnO
高炉スラグ
41.7
33.8
13.4
0.4
7.4
0.8
<0.1
0.3
製鋼スラグ
45.8
11.0
1.9
17.4
6.5
0.06
1.7
5.3
普通セメント
64.2
21.2
5.2
2.0
1.5
-
0.3
0.1
安山岩(参考)
5.8
59.6
17.3
3.1
2.8
-
-
0.2
(鐵鋼スラグ協会パンフレットより)
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