第14回 全日本 学生フォーミュラ大会 車検ガイド SES

SES(等価構造計算書)審査
目
次
1. SES作成にあたり
2. Sheetの要点
3. EV
4. モノコック
5. まとめ
2016年版SES Ver.1.1に基づく
http://fsaeonline.com/page.aspx?pageid=5ade9b01-8903-4ae1-89e1-489a8a4f08d9
SES作成にあたり
1. 全てのチームは等価構造計算シート(SES)を提出しなければならない
判定にはローカルルールを適用する。
提出されたSESに不備がある場合は再提出や追加資料提出を要求する。
2. SESの主旨
基本構造(Primary Structure)は万一の際にドライバの命を守るための最後の砦である。
よって、適切な設計が要求される。FSAEルールのT3には基本構造が最低限満たすべき
要求が記載されており、SESは設計レベルでそれを証明するためのシートである。SES審
査をパスできないということは最低限の安全性も担保できない危険な車両を設計してい
るということに他ならない。この点を十分肝に銘じておくこと。
3. A8.4 SESは極力早期に提出すること!
SES上でルール違反が認められる場合は当然不受理であり、フレーム修正を含む是正を
要求する。よってSESが極力早期に承認され、フレーム構造を確定させることを強く推奨
する。
4. 提出遅延ペナルティについて
A8.4に記載の通り-10pt/dayで最大-50ptのペナルティが科せられる
再提出・追加資料提出を要求された場合、再提出期限はSESに記載されている通り再提
出要求から1週間以内である
SES作成にあたり
5. 提出ファイル形式はMicrosoft Exlcel Format (*.xls,*.xlsx)
SESに明記されている。ファイルサイズは15MB以内であること。
6. RuleとSESの説明・注意書きをよく読むこと
SESの各シートごとに必要記入事項が記載されているので注意すること。
特に寸法付き図面要求や強度証明など記入漏れ・間違いがない事
7. 判定基準
日本のローカルルールでは、基本構造の構成パイプについて断面2次モーメントを重視
したSES判定を行っている。
パイプの断面2次モーメントは基準材と同等以上、則ちEI 100%以上でなければならない。
また、パイプはT3.6(鉄), T3.7(アルミ)で指定された寸法以上でなければならない。基準
に満たないものは無いものとして扱う。
あくまでローカルルールであるため海外大会への参加を目指すチームは断面積や変
位・吸収エネルギまで考慮すること。
またmust指示されている項目は確実に記入すること。
8. JIS STKM11A(パイプの種類)について
学生フォーミュラの材料として最適な材料であるが、炭素含有量がMax. 0.12%で下限は
定められていない。そのためFSAEルールの炭素含有量Min. 0.1%を下回るものもありうる。
従って、引張強さ290MPa以上のJIS規格値をローカルルールにて定めている。
SES作成にあたり
SESは下に示す標準構造に対して同等以上であることを証明するための計算シート
このことを考慮して数値を記入する必要がある
Main Hoop
Shoulder Harness Bar
Φ25.4 t2.4
Φ25.4 t2.4
Front Hoop
Front Hoop Bracing
Main Hoop Bracing
Φ25.4 t2.4
Φ25.4 t1.6
Φ25.4 t1.6
Front Bulkhead
Φ25.4 t1.6
Front Bulkhead
Support Structure
Φ25.4 t1.2
Main Hoop Bracing Supports
Side Impact Structure
Φ25.4 t1.2
Φ25.4 t1.6
基本構造の各部名称はルール(T3およびT5.4)に定義されている
間違えないように注意すること
SES作成にあたり
等価構造計算の主旨(パイプフレームの場合)
使用しているパイプを1mスパン(m本)の単純梁で曲げ試験したときに
各要求がBaseline Materialsのパイプ(n本)と等価以上であるかを評価している
よって、SESで計算すべきパイプの本数は荷重
伝達スパンの断面で考慮しなければならない。
構造として荷重伝達スパンでパイプ本数やパイ
プ寸法が変わる場合は、最も弱い断面で評価
し、等価以上であればOK。
1m
本来は溶接部(ノード)が最も弱くなるが、上記で
OKとする。
Main Hoop
Front Hoop
弱い方の断面の
構成パイプで計算する
注:
ルールには最弱箇所であることの明記は無いが、
箇所を指定していないということは全域で満たす必要がある。
則ち、最弱部で満足していればルールを満たす。
SES作成にあたり
T3.4 Minimum Material Requirements
基本はT3.4.1Baseline steel material
項目または適用
メインおよびフロントフープ、
ショルダーハーネス取り付けバー
外径 X 肉厚
円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.095 inch (2.4 mm)
または 円形25.0 mm x 2.50 mm metric
円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.065 inch (1.65 mm)
サイドインパクト構造、フロントバルクヘッ または 円形25.0 mm x 1.75 mm metric
ド、ロールフープブレース&ドライバー拘
または 円形25.4 mm x 1.60 mm metric
束ハーネス取付け(上記を除き)
または 正方形1.00 inch x 1.00 inch x 0.047 inch
EV:アキュムレータ保護構造
または 正方形25.0 mm x 25.0 mm x 1.2 mm metric
フロントバルクヘッド支持、メインフープブ 円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.047 inch (1.2 mm)
または 円形25.0 mm x 1.5 mm metric
レースサポート
または 円形26.0 mm x 1.2 mm metric
EV:牽引システムコンポーネント
使用してよいパイプの寸法はT3.6(鉄)、T3.7(アルミ)に記載されている。
注4: SESで提出される計算に用いられる基本スチールの特性は、つぎ
の値より小さくてはならない。
曲げおよび座屈強度計算:
ヤング率(E) - 200 GPa(29,000 ksi)
降伏強さ(Sy) - 305 MPa(44.2 ksi)
極限強さ(Su) - 365 Mpa(52.9 ksi)
溶接モノコック取付け点または溶接パイプ結合計算
降伏強さ(Sy) - 180 MPa(26 ksi)
極限強さ(Su) - 300 MPa(43.5 ksi)
SES作成にあたり
良くある間違い・指摘事項
・記入漏れ
Cover Sheetの設計記述(組成が分かる材質名・寸法)の記入漏れが多い
他のシートでも必要な寸法が図面に記入されていない等、不備が非常に多い
・要求図面添付不備
ChassiPicsでは3面図+アイソメ図が必須である。
また、図による証明が必要なシートに図が添付されていない不備が見受けられる。
・ 構成パイプ間違い
MHoop Brace SupportとしてMHoop Bracingを指定したり、適切なトラス構造が必要な箇
所で正しく指定していないといった構成パイプ間違いが散見される
・ 計算に用いる構成パイプの本数間違い
本数は片側(1面)で数える
等価構造計算の意味を理解していないものが非常に多い
パイプにより構成される面に対し直交する断面で評価しな
ければならない。
全てBaselineより強いパイプで正しくトラスが組まれて
いれば初期値(最小本数)のままでも良い(SES ReadMe)
最も弱い断面の構成パイプで計算する
SES作成にあたり
Cover Sheetの完成
パイプの種類
(炭素含有量)
※納品書
判定OK
※EIが100%を超える事!
各シートでの規格内
サイズ記載結果
SES作成にあたり
鉄パイプの種類
http://www.toishi.info/sozai/stkm/stkm11a.html
SES作成にあたり
Chassis Picsの完成
パイプサイズ+色
記入が必要な寸法
Sハーネスバーの記載
直線か、曲がりあるのか?
3面図+アイソメ図
90°
規格内寸法
①メイン&フロントフープの角度
③メインフープとブレースの距離
②メインフープとブレースの角度
④フロントフープとブレースの距離
SES作成にあたり
フレーム基本構造
基本パイプサイズ
赤 D25.4 × t2.4
青 D25.4 × t1.6
緑 D25.4 × t1.2
①トラス構造
②規格内パイプ
最も背の高いドライバーおよび
パーシーに対して50mm以上
オフセットのあるSハーネスバー
補強はT3.5.5を満たす事
それ以外は要強度計算
ガセット補強は不可
250mm以下
50mm以下
Upper Sideのノードに対し-50~100mm
傾き10度以下
160mm以下
フロントフープはステアリングより高いこと
傾き20度以下
③規格内寸法
傾き30度以上
300~350mm
Sheetの要点
・Cover Sheet
設計記述(組成が分かる材質名・寸法)を明記する
こと(STKM11A …など)
・Chassis Pics
3面図及びアイソメ図が必須
フレーム色分け、指示された寸法を明記すること
・ T3.13 T3.36 MHoop Brace S’pt
本数は片側で数える(左右で異なる場合は弱い側)
複数のトラスで構成される場合はMHoopBrace下端
-MHoop間のノードを含まない断面でもっとも弱くな
る断面の構成パイプで計算する(右上図参照)
トラスを構成するパイプは全てT3.4.1を満足すること。
曲げや複数パイプを繋ぐなどで、途中で曲がる場合
はT3.5.5を満たす必要がある。側面視に限らず、ど
の方向に曲がる場合も全てT3.5.5を満たす必要が
ある。
最も弱い断面の構成パイプで計算する
黒線のパイプは全てMHoop Brace S’ptの
構成パイプである
Sheetの要点
上面
・T3.13 T3.36 Front Hoop Brace
本数は片側で数える。(左右で異なる場合は弱い側)
左右に加えて同サイズの1本の対角パイプがある場
合は1.5本として計算してよい(右図参照)
側面
・T3.18 T3.31 Front Bulkhead
本数は面に直交する断面で最も弱くなる構成パイプ
で計算する。(下図参照)
Front Bulkhead
日型形状の場合
同一パイプであれば
右図の断面が最も弱くなる
赤線と交差する2本で計算する
この場合は1.5本で計算しても良い
弱い方の3本で計算する
Sheetの要点
・T3.19 T3.32 FBH S‘pt Structure
間違いが多い箇所
最も弱い断面の構成パイプで計算する
T3.19の定義に従って構成すること
本数は片側で数える (左右で異なる場合は弱い側)
3つ以上のトラスで構成される場合、Front BulkheadFront Hoop間のノードを含まない断面で最も弱くな
る断面の構成パイプで計算する
トラスを構成するパイプは全てT3.4.1を満足すること
Upper MemberがFront Bulkheadの最上部に取り付
けられていない場合、規定内のズレ量であることを
証明すること(T3.19.2)
Upper2
Upper1
Diagonal2
Diagonal1
Lower1
Lower2
規定内のズレであることを明示すること
同様にUpper MemberがUpper SIS-Front Hoopの
ノードからずれて取り付けられている場合、規定内
のズレ量であることを証明すること(T3.19.2)
曲げや複数パイプを繋ぐなどで、途中で曲がる場合
はT3.5.5を満たす必要がある。側面視に限らず、ど
の方向に曲がる場合も全てT3.5.5を満たす必要が
ある。
黄線パイプは全て
FBH S’pt Structure構成パイプである
Sheetの要点
・T3.24 T3.33 Side Impact Structure
T3.24の定義に従って構成すること
弱い方の断面の構成パイプで計算する
Main Hoop
Main Hoop
この場合4本で計算する
Front Hoop
3つ以上のトラスで構成される場合、FHoop-MHoop間
のノードを含まない断面で最も弱くなる断面の構成パ
イプで計算すること
Front Hoop
本数は片側で数える (左右で異なる場合は弱い側)
Sheetの要点
・T5.4 Shoulder Harness Bar & Bracing
Offsetなく直線的にPrimary Structure同等のフ
レーム構造に取り付けられている場合のみ
Straightとみなす
Offsetがある場合、T5.4.2に従ってBracingを追加
し強度計算を行わなければならない
T3.5.5の要件を満たす場合は強度証明は不要だ
が、T3.5.5を満たすことを証明しなければならな
い
文句無しのStraight
Sheetの要点
・Welded Tube Insert
Primary Structureを構成するパイプにφ4
より大きい孔をあける場合はインサートを
溶接し、断面積とEIが元のパイプ比で
100%以上とならなければならない。
T3.4.1 NOTE3
主軸まわりの最小断面二次モーメントで
評価すること。
y
材料力学のおさらい
主軸まわりの断面2次モーメント:
図芯を原点とする直交座標(XY)の内、
断面相乗モーメントIxy = 0となる軸が主軸である。
Ixx及びIyyがそれぞれ最大最小をとる
x
2.Sheetの要点
・Steering Rack Collars
2016Ver.1.1にて新規追加
Front Bulkhead SupportのLower Membarに
ステアリングラックバーを通のためのカラー
を溶接する場合、Welded Steering Rack
Collar in Bulkhead Support Tubeのシートに
必要事項を記入し、耐力が100%以上となる
ことを示さなければならない。
論拠となるCAD図面の添付を忘れないこと
120kN / 6
A-A’
Collar OD
Collar Wall
Collar OD
A
A’
SES計算式は図の条件における最大応力を求めている
最大応力が降伏応力を超えてはならない
Sheetの要点
・IA Anti-Intrusion Plate (AIP:貫通防止板)
鉄t1.5以上、アルミt4以上であれば以降の記入は不要
Composite AIPはSESでも強度証明の追加が必須 (T3.38新規追加)
証明方法は2通り
1. T3.21.2及びT3.21.3の試験を行い強度を証明する(IAD test)
テストデータ・試験の写真証明をSESにも添付すること
2. T3.30.3(3点曲げ)とT3.30.5(せん断)に定める試験を行い、T3.38.3に定められた条件
に対して強度を証明する
SESの3 Point Bending Comp AIP、 Shear Test Comp AIPを正しく記入すること。
テストデータ写真証明のSESへの添付も必須である。
金属パイプフレームであってもAIPがコンポジットの場合は本ルールが適用される
いずれの場合もSESでの証明が必須である(T3.38.1)
IADに記載されている場合でも省略はしない事!
Sheetの要点
・IA Anti-Intrusion Plate (AIP:貫通防止板)
Composite AIP
IAD試験結果で証明する際の記入例
EV
・EVのAccumulator 及びTractive System Protectionについて
基本的な考え方はSide Impact Structureと同じ
最も弱い1面の最も弱い垂直断面の構成パイプで計算すること
最も弱い断面の構成パイプで計算すること
モノコック
モノコック車両に関しての記述 T3.27~T3.40
※サイドインパクト
代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載 試験片は車検で提示
※サイドインパクト以外の代表部位
代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載 試験片は車検で提示
※バルクヘッドサポート
代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載
※フロントフープ&メインフープ&メインフープブレース
取り付け&締結をSESへ記載。結合点は30kNの荷重を支えられること!
※ドライバーハーネスの取り付けポイント
ショルダーベルトとラップベルト 13kNを支えられること!
アンチサブマリンベルト
6.5kNを支えられること!
※ラップベルトとアンチサブマリンベルトが同じ取付けポイント 19.5kN
※製作過程のエビデンスを必ず持つこと!!
モノコックは2台作成し、1台は強度試験に使うくらいにしないといけない!!
EI100%未満はモノコックフレーム再設計と作り直しを要求する
まとめ
1. SESはドライバの安全を担保するエビデンス
基本構造(Primary Structure)は万一の際にドライバの命を守るための最後の砦
である。SESはその基本構造の安全性を担保するエビデンスに他ならない。よっ
て基準を満たせない車両の走行は一切認められない。
2. 確実な設計
基本構造の設計段階からSESに記入・確認し確実にSES要件を満たすこと。
(フレーム完成後に不適合箇所が見つかると修正が大変)
3. 早期の提出
SESに不備があれば再提出を要求する。SESが受理されるまで基本構造が確定
しないことを意味するので、極力早期に提出し受理されることを強く推奨する。
4. RulesやSESの数式・Guidanceをよく読み理解する
基本的な部分は全てRulesやSESの数式・Guidanceに書かれている。
よく読んで理解すること。