SES(等価構造計算書)審査 目 次 1. SES作成にあたり 2. Sheetの要点 3. EV 4. モノコック 5. まとめ 2016年版SES Ver.1.1に基づく http://fsaeonline.com/page.aspx?pageid=5ade9b01-8903-4ae1-89e1-489a8a4f08d9 SES作成にあたり 1. 全てのチームは等価構造計算シート(SES)を提出しなければならない 判定にはローカルルールを適用する。 提出されたSESに不備がある場合は再提出や追加資料提出を要求する。 2. SESの主旨 基本構造(Primary Structure)は万一の際にドライバの命を守るための最後の砦である。 よって、適切な設計が要求される。FSAEルールのT3には基本構造が最低限満たすべき 要求が記載されており、SESは設計レベルでそれを証明するためのシートである。SES審 査をパスできないということは最低限の安全性も担保できない危険な車両を設計してい るということに他ならない。この点を十分肝に銘じておくこと。 3. A8.4 SESは極力早期に提出すること! SES上でルール違反が認められる場合は当然不受理であり、フレーム修正を含む是正を 要求する。よってSESが極力早期に承認され、フレーム構造を確定させることを強く推奨 する。 4. 提出遅延ペナルティについて A8.4に記載の通り-10pt/dayで最大-50ptのペナルティが科せられる 再提出・追加資料提出を要求された場合、再提出期限はSESに記載されている通り再提 出要求から1週間以内である SES作成にあたり 5. 提出ファイル形式はMicrosoft Exlcel Format (*.xls,*.xlsx) SESに明記されている。ファイルサイズは15MB以内であること。 6. RuleとSESの説明・注意書きをよく読むこと SESの各シートごとに必要記入事項が記載されているので注意すること。 特に寸法付き図面要求や強度証明など記入漏れ・間違いがない事 7. 判定基準 日本のローカルルールでは、基本構造の構成パイプについて断面2次モーメントを重視 したSES判定を行っている。 パイプの断面2次モーメントは基準材と同等以上、則ちEI 100%以上でなければならない。 また、パイプはT3.6(鉄), T3.7(アルミ)で指定された寸法以上でなければならない。基準 に満たないものは無いものとして扱う。 あくまでローカルルールであるため海外大会への参加を目指すチームは断面積や変 位・吸収エネルギまで考慮すること。 またmust指示されている項目は確実に記入すること。 8. JIS STKM11A(パイプの種類)について 学生フォーミュラの材料として最適な材料であるが、炭素含有量がMax. 0.12%で下限は 定められていない。そのためFSAEルールの炭素含有量Min. 0.1%を下回るものもありうる。 従って、引張強さ290MPa以上のJIS規格値をローカルルールにて定めている。 SES作成にあたり SESは下に示す標準構造に対して同等以上であることを証明するための計算シート このことを考慮して数値を記入する必要がある Main Hoop Shoulder Harness Bar Φ25.4 t2.4 Φ25.4 t2.4 Front Hoop Front Hoop Bracing Main Hoop Bracing Φ25.4 t2.4 Φ25.4 t1.6 Φ25.4 t1.6 Front Bulkhead Φ25.4 t1.6 Front Bulkhead Support Structure Φ25.4 t1.2 Main Hoop Bracing Supports Side Impact Structure Φ25.4 t1.2 Φ25.4 t1.6 基本構造の各部名称はルール(T3およびT5.4)に定義されている 間違えないように注意すること SES作成にあたり 等価構造計算の主旨(パイプフレームの場合) 使用しているパイプを1mスパン(m本)の単純梁で曲げ試験したときに 各要求がBaseline Materialsのパイプ(n本)と等価以上であるかを評価している よって、SESで計算すべきパイプの本数は荷重 伝達スパンの断面で考慮しなければならない。 構造として荷重伝達スパンでパイプ本数やパイ プ寸法が変わる場合は、最も弱い断面で評価 し、等価以上であればOK。 1m 本来は溶接部(ノード)が最も弱くなるが、上記で OKとする。 Main Hoop Front Hoop 弱い方の断面の 構成パイプで計算する 注: ルールには最弱箇所であることの明記は無いが、 箇所を指定していないということは全域で満たす必要がある。 則ち、最弱部で満足していればルールを満たす。 SES作成にあたり T3.4 Minimum Material Requirements 基本はT3.4.1Baseline steel material 項目または適用 メインおよびフロントフープ、 ショルダーハーネス取り付けバー 外径 X 肉厚 円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.095 inch (2.4 mm) または 円形25.0 mm x 2.50 mm metric 円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.065 inch (1.65 mm) サイドインパクト構造、フロントバルクヘッ または 円形25.0 mm x 1.75 mm metric ド、ロールフープブレース&ドライバー拘 または 円形25.4 mm x 1.60 mm metric 束ハーネス取付け(上記を除き) または 正方形1.00 inch x 1.00 inch x 0.047 inch EV:アキュムレータ保護構造 または 正方形25.0 mm x 25.0 mm x 1.2 mm metric フロントバルクヘッド支持、メインフープブ 円形1.0 inch (25.4 mm) x 0.047 inch (1.2 mm) または 円形25.0 mm x 1.5 mm metric レースサポート または 円形26.0 mm x 1.2 mm metric EV:牽引システムコンポーネント 使用してよいパイプの寸法はT3.6(鉄)、T3.7(アルミ)に記載されている。 注4: SESで提出される計算に用いられる基本スチールの特性は、つぎ の値より小さくてはならない。 曲げおよび座屈強度計算: ヤング率(E) - 200 GPa(29,000 ksi) 降伏強さ(Sy) - 305 MPa(44.2 ksi) 極限強さ(Su) - 365 Mpa(52.9 ksi) 溶接モノコック取付け点または溶接パイプ結合計算 降伏強さ(Sy) - 180 MPa(26 ksi) 極限強さ(Su) - 300 MPa(43.5 ksi) SES作成にあたり 良くある間違い・指摘事項 ・記入漏れ Cover Sheetの設計記述(組成が分かる材質名・寸法)の記入漏れが多い 他のシートでも必要な寸法が図面に記入されていない等、不備が非常に多い ・要求図面添付不備 ChassiPicsでは3面図+アイソメ図が必須である。 また、図による証明が必要なシートに図が添付されていない不備が見受けられる。 ・ 構成パイプ間違い MHoop Brace SupportとしてMHoop Bracingを指定したり、適切なトラス構造が必要な箇 所で正しく指定していないといった構成パイプ間違いが散見される ・ 計算に用いる構成パイプの本数間違い 本数は片側(1面)で数える 等価構造計算の意味を理解していないものが非常に多い パイプにより構成される面に対し直交する断面で評価しな ければならない。 全てBaselineより強いパイプで正しくトラスが組まれて いれば初期値(最小本数)のままでも良い(SES ReadMe) 最も弱い断面の構成パイプで計算する SES作成にあたり Cover Sheetの完成 パイプの種類 (炭素含有量) ※納品書 判定OK ※EIが100%を超える事! 各シートでの規格内 サイズ記載結果 SES作成にあたり 鉄パイプの種類 http://www.toishi.info/sozai/stkm/stkm11a.html SES作成にあたり Chassis Picsの完成 パイプサイズ+色 記入が必要な寸法 Sハーネスバーの記載 直線か、曲がりあるのか? 3面図+アイソメ図 90° 規格内寸法 ①メイン&フロントフープの角度 ③メインフープとブレースの距離 ②メインフープとブレースの角度 ④フロントフープとブレースの距離 SES作成にあたり フレーム基本構造 基本パイプサイズ 赤 D25.4 × t2.4 青 D25.4 × t1.6 緑 D25.4 × t1.2 ①トラス構造 ②規格内パイプ 最も背の高いドライバーおよび パーシーに対して50mm以上 オフセットのあるSハーネスバー 補強はT3.5.5を満たす事 それ以外は要強度計算 ガセット補強は不可 250mm以下 50mm以下 Upper Sideのノードに対し-50~100mm 傾き10度以下 160mm以下 フロントフープはステアリングより高いこと 傾き20度以下 ③規格内寸法 傾き30度以上 300~350mm Sheetの要点 ・Cover Sheet 設計記述(組成が分かる材質名・寸法)を明記する こと(STKM11A …など) ・Chassis Pics 3面図及びアイソメ図が必須 フレーム色分け、指示された寸法を明記すること ・ T3.13 T3.36 MHoop Brace S’pt 本数は片側で数える(左右で異なる場合は弱い側) 複数のトラスで構成される場合はMHoopBrace下端 -MHoop間のノードを含まない断面でもっとも弱くな る断面の構成パイプで計算する(右上図参照) トラスを構成するパイプは全てT3.4.1を満足すること。 曲げや複数パイプを繋ぐなどで、途中で曲がる場合 はT3.5.5を満たす必要がある。側面視に限らず、ど の方向に曲がる場合も全てT3.5.5を満たす必要が ある。 最も弱い断面の構成パイプで計算する 黒線のパイプは全てMHoop Brace S’ptの 構成パイプである Sheetの要点 上面 ・T3.13 T3.36 Front Hoop Brace 本数は片側で数える。(左右で異なる場合は弱い側) 左右に加えて同サイズの1本の対角パイプがある場 合は1.5本として計算してよい(右図参照) 側面 ・T3.18 T3.31 Front Bulkhead 本数は面に直交する断面で最も弱くなる構成パイプ で計算する。(下図参照) Front Bulkhead 日型形状の場合 同一パイプであれば 右図の断面が最も弱くなる 赤線と交差する2本で計算する この場合は1.5本で計算しても良い 弱い方の3本で計算する Sheetの要点 ・T3.19 T3.32 FBH S‘pt Structure 間違いが多い箇所 最も弱い断面の構成パイプで計算する T3.19の定義に従って構成すること 本数は片側で数える (左右で異なる場合は弱い側) 3つ以上のトラスで構成される場合、Front BulkheadFront Hoop間のノードを含まない断面で最も弱くな る断面の構成パイプで計算する トラスを構成するパイプは全てT3.4.1を満足すること Upper MemberがFront Bulkheadの最上部に取り付 けられていない場合、規定内のズレ量であることを 証明すること(T3.19.2) Upper2 Upper1 Diagonal2 Diagonal1 Lower1 Lower2 規定内のズレであることを明示すること 同様にUpper MemberがUpper SIS-Front Hoopの ノードからずれて取り付けられている場合、規定内 のズレ量であることを証明すること(T3.19.2) 曲げや複数パイプを繋ぐなどで、途中で曲がる場合 はT3.5.5を満たす必要がある。側面視に限らず、ど の方向に曲がる場合も全てT3.5.5を満たす必要が ある。 黄線パイプは全て FBH S’pt Structure構成パイプである Sheetの要点 ・T3.24 T3.33 Side Impact Structure T3.24の定義に従って構成すること 弱い方の断面の構成パイプで計算する Main Hoop Main Hoop この場合4本で計算する Front Hoop 3つ以上のトラスで構成される場合、FHoop-MHoop間 のノードを含まない断面で最も弱くなる断面の構成パ イプで計算すること Front Hoop 本数は片側で数える (左右で異なる場合は弱い側) Sheetの要点 ・T5.4 Shoulder Harness Bar & Bracing Offsetなく直線的にPrimary Structure同等のフ レーム構造に取り付けられている場合のみ Straightとみなす Offsetがある場合、T5.4.2に従ってBracingを追加 し強度計算を行わなければならない T3.5.5の要件を満たす場合は強度証明は不要だ が、T3.5.5を満たすことを証明しなければならな い 文句無しのStraight Sheetの要点 ・Welded Tube Insert Primary Structureを構成するパイプにφ4 より大きい孔をあける場合はインサートを 溶接し、断面積とEIが元のパイプ比で 100%以上とならなければならない。 T3.4.1 NOTE3 主軸まわりの最小断面二次モーメントで 評価すること。 y 材料力学のおさらい 主軸まわりの断面2次モーメント: 図芯を原点とする直交座標(XY)の内、 断面相乗モーメントIxy = 0となる軸が主軸である。 Ixx及びIyyがそれぞれ最大最小をとる x 2.Sheetの要点 ・Steering Rack Collars 2016Ver.1.1にて新規追加 Front Bulkhead SupportのLower Membarに ステアリングラックバーを通のためのカラー を溶接する場合、Welded Steering Rack Collar in Bulkhead Support Tubeのシートに 必要事項を記入し、耐力が100%以上となる ことを示さなければならない。 論拠となるCAD図面の添付を忘れないこと 120kN / 6 A-A’ Collar OD Collar Wall Collar OD A A’ SES計算式は図の条件における最大応力を求めている 最大応力が降伏応力を超えてはならない Sheetの要点 ・IA Anti-Intrusion Plate (AIP:貫通防止板) 鉄t1.5以上、アルミt4以上であれば以降の記入は不要 Composite AIPはSESでも強度証明の追加が必須 (T3.38新規追加) 証明方法は2通り 1. T3.21.2及びT3.21.3の試験を行い強度を証明する(IAD test) テストデータ・試験の写真証明をSESにも添付すること 2. T3.30.3(3点曲げ)とT3.30.5(せん断)に定める試験を行い、T3.38.3に定められた条件 に対して強度を証明する SESの3 Point Bending Comp AIP、 Shear Test Comp AIPを正しく記入すること。 テストデータ写真証明のSESへの添付も必須である。 金属パイプフレームであってもAIPがコンポジットの場合は本ルールが適用される いずれの場合もSESでの証明が必須である(T3.38.1) IADに記載されている場合でも省略はしない事! Sheetの要点 ・IA Anti-Intrusion Plate (AIP:貫通防止板) Composite AIP IAD試験結果で証明する際の記入例 EV ・EVのAccumulator 及びTractive System Protectionについて 基本的な考え方はSide Impact Structureと同じ 最も弱い1面の最も弱い垂直断面の構成パイプで計算すること 最も弱い断面の構成パイプで計算すること モノコック モノコック車両に関しての記述 T3.27~T3.40 ※サイドインパクト 代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載 試験片は車検で提示 ※サイドインパクト以外の代表部位 代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載 試験片は車検で提示 ※バルクヘッドサポート 代表部位の3点曲げ試験 データ&写真をSESに記載 ※フロントフープ&メインフープ&メインフープブレース 取り付け&締結をSESへ記載。結合点は30kNの荷重を支えられること! ※ドライバーハーネスの取り付けポイント ショルダーベルトとラップベルト 13kNを支えられること! アンチサブマリンベルト 6.5kNを支えられること! ※ラップベルトとアンチサブマリンベルトが同じ取付けポイント 19.5kN ※製作過程のエビデンスを必ず持つこと!! モノコックは2台作成し、1台は強度試験に使うくらいにしないといけない!! EI100%未満はモノコックフレーム再設計と作り直しを要求する まとめ 1. SESはドライバの安全を担保するエビデンス 基本構造(Primary Structure)は万一の際にドライバの命を守るための最後の砦 である。SESはその基本構造の安全性を担保するエビデンスに他ならない。よっ て基準を満たせない車両の走行は一切認められない。 2. 確実な設計 基本構造の設計段階からSESに記入・確認し確実にSES要件を満たすこと。 (フレーム完成後に不適合箇所が見つかると修正が大変) 3. 早期の提出 SESに不備があれば再提出を要求する。SESが受理されるまで基本構造が確定 しないことを意味するので、極力早期に提出し受理されることを強く推奨する。 4. RulesやSESの数式・Guidanceをよく読み理解する 基本的な部分は全てRulesやSESの数式・Guidanceに書かれている。 よく読んで理解すること。
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