凍結保存した受精卵を生産現場で移植し

平成 28 年 2 月 5 日
佐賀県畜産試験場 中小家畜研究担当
担当者 和田、永渕
内線 14 直通 0954-45-2030
E-mail:[email protected]
国内で初めて、凍結保存した受精卵を生産現場で移植し、
将来種豚となる子豚を分娩させることに成功しました
佐賀県畜産試験場は、凍結保存した受精卵を県内の養豚農場の母豚に移植し、将来種豚
となる子豚を分娩させることに成功しました。一般の養豚農場で凍結受精卵を移植し、分
娩に至ったケースは国内初となります。
【研究成果の概要】
豚での受精卵移植技術は、雌豚の生殖器官(子宮頚管・子宮)が複雑な構造をしている
ことから、受胎するには、外科的手法(開腹手術)により、子宮内に確実に移植する必要
がありました。
このため、特殊な器具や施設のない、一般的な養豚農場で移植することは非常に難しく、
さらには、豚の受精卵が他の家畜に比べて凍結や温度変化に弱いという欠点もあり、すで
に産業として確立している牛の受精卵移植と比べて、大きく遅れをとっています。
今回、「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」を活用して、国立研究開発法人
農研機構動物衛生研究所(茨城県つくば市)など5つの研究機関で共同研究に取り組み、
当試験場で凍結保存(ガラス化保存)した受精卵を、武雄市若木町の養豚農場に持ち込ん
で、外科的手法によらない移植手法により、農場内の母豚5頭に移植した結果、2頭が受
胎し、平成 28 年 1 月 26 日と同年 2 月 4 日に、それぞれ6頭と5頭の子豚が生まれました。
【期待される効果】
一般的な養豚農場では、定期的に種豚(繁殖用として用いる雄豚や雌豚)を種豚生産農
場から購入(導入)しますが、農場間で豚を移動させる際に、伝染病を侵入させる危険性
が伴います。一方、種豚の基となる受精卵を流通させることが出来れば、伝染病侵入の危
険性が最も少ない形で豚(受精卵)を移動させることが可能となります。
当試験場では、平成 22 年度、国内で初めてその実証に成功していますが、これを一般
の養豚農場で実現するためには、受精卵の輸送や移植手法等の改良が必要でした。
今回の成果により、一般的な養豚農場レベルでも、受精卵移植により子豚を生産可能で
あることを証明することができました。また、協力していただいた農家の方からは、「病
気を持ち込む心配なく種豚を導入できる技術の発展に期待している」との声を聞いており
ます。
一方で、受胎する確率や生まれる子豚の頭数が少ないなどの課題が浮き彫りとなったこ
とから、今後の研究課題としてさらに検討することにしております。
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