2016 年度税制改正大綱における組織再編 税制関連の改正

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2016 年度税制改正大綱における組織再編
税制関連の改正について
Issue 87, January 2016
In brief
自由民主党・公明党両党は、2015 年 12 月 16 日に、平成 28 年税制改正大綱(以下「2016 年度税制改正大
綱」)を決定しました(12 月 24 日閣議決定)。この中で、組織再編税制関連の改正として、適格要件の見直し
等の内容が盛り込まれています。従来制度から適格要件が緩和される、あるいは、変更される改正が見込ま
れるため、実際に適用対象となることが見込まれる組織再編を行う場合には、その詳細な影響および適用時
期について、実際の税制改正の法案の内容とともに、引き続き確認する必要が生じてくるものと考えられま
す。
In detail
1.
2016 年度税制改正大綱における組織再編税制関連の改正項目
2016 年度税制改正大綱において、組織再編税制について以下を含む見直しが行われます。
① 共同事業を行うための株式交換又は株式移転(以下「株式交換等」)に係る適格要件のうちの役員継続
要件の緩和
② 適格株式交換等により親法人が取得する子法人の取得価額の見直し
③ 共同事業を行うための新設合併、新設分割又は株式移転に係る適格要件のうち株式継続保有要件の
判定についての明確化
また、現物出資について次の見直しが行われます。
① 外国法人に対する現物出資について適格現物出資に含める対象の追加
② 内国法人が行う外国法人に対する現物出資について適格現物出資の対象の縮小
③ 外国法人が行う外国法人に対する現物出資について適格現物出資の対象の縮小
2.
2016 年度税制改正大綱における見直しが行われる組織再編税制の概要
2016 年度税制改正大綱における見直しが行われる組織再編税制の概要をまとめると以下になります。
(1) 組織再編税制についての見直し
① 共同事業を行うための株式交換等に係る適格要件のうちの役員継続要件の緩和について
共同事業を行うための株式交換等に係る適格要件のうち、いわゆる事業規模要件が満たせない場合には、
役員継続要件を満たすことが求められます。株式交換の場合、株式交換等の前の株式交換完全子法人の
特定役員(「特定役員」とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役等のいわ
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ゆる常務クラス以上の役員をいいます(法令 4 の 3④二カッコ書))のいずれかが株式交換に伴って退任する
ものではないことが原則として求められています(法令 4 の 3⑯二)。また、株式移転の場合、株式移転の前
の株式移転完全子法人の特定役員のいずれかが株式移転に伴って退任するものではないことが原則として
求められています(法令 4 の 3⑳二)。ただし、株式交換完全親法人あるいは株式移転完全親法人の役員へ
の就任に伴って退任する場合等、一定の要件に該当する場合は退任しても非適格とはなりません。
上述のような従来の役員継続要件について、2016 年度税制改正大綱においては、株式交換等前の特定役
員の全てがその株式交換等に伴って退任をする株式交換等でないこととして、従来の要件を緩和する見直し
とされています。
② 適格株式交換等により親法人が取得する子法人の取得価額の見直しについて
適格株式交換等により株式交換等完全親法人が取得する株式交換等完全子法人株式の取得価額につい
て、株主が 50 人以上である株式交換等完全子法人の場合には、その株式交換等子法人の直前の簿価純
資産価額(適格株式交換等の直前の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額をいう)に相当す
る金額に株式取得費用の額を加算した金額となります(法令 119①九ロ、十一ロ)。
2016 年度税制改正大綱においては、当該株式交換等完全子法人株式の取得価額については、株式交換
等子法人の直前の申告における簿価純資産価額にその後の資本金等の額等の増減を調整したものに見直
しするとされています。
その他、株式交換等に係る適格要件について、所要の措置を講じるとして、上述以外の適格要件の見直しを
するとされています。
③ 共同事業を行うための新設合併、新設分割または株式移転に係る適格要件の見直し
共同事業を行うための新設合併、新設分割または株式移転に係る適格要件のうち、株式継続保有要件の判
定について明確化を行うとされています。
たとえば新設合併の場合、被合併法人の株主が「50 人未満」である場合には、合併直前の被合併法人の株
主のうち、合併により交付される合併法人株式の全部を継続して保有することが見込まれる者等が有する被
合併法人株式数の合計が、被合併法人の発行済株式等の総数の 80%以上であることが求められています
(法令 4 の 3④五)。
上述の株式継続保有要件の判定について、従来の実務上、不明瞭であった点に関して一定の明確化を図
るため、適格要件の見直しがなされることになります。
(2) 現物出資についての見直し
① 外国法人に対する現物出資についての適格現物出資に含める対象の拡大
現行では、外国法人に対して、国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(国内にある不動
産、国内にある不動産上の権利、鉱業権、採石権、その他国内事業所帰属の資産(外国法人の 25%以上保
有株式を除きます)又は負債)の移転を行うものは非適格現物出資とされています(法法 2 十二の十四、法令
4 の 3⑨)。
当該現物出資について、2016 年度税制改正大綱によれば、移転する国内資産をすべて外国法人の国内事
業所(日本支店等の PE)に直接帰属させる場合には税制適格の対象に含まれることになります。ただし、現
物出資後、一定の国内資産について内部取引により国外本店等への移転がないことが見込まれる場合に限
ります。
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② 内国法人が行う外国法人に対する現物出資のうち、適格現物出資の対象の縮小
現行では、外国法人に対して、国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(国内にある不動
産、国内にある不動産上の権利、鉱業権、採石権、その他国内事業所帰属の資産(外国法人の 25%以上保
有株式を除きます)又は負債)以外の資産・負債を移転する場合、一定の要件を満たせば、適格現物出資に
なります。
2016 年度税制改正大綱によれば(内国法人から外国法人に対して行う現物出資において)、現物出資の日
以前 1 年以内に当該内国法人の本店等から内部取引により国外事業所(PE)の資産となった資産(現金、預
貯金、棚卸資産、有価証券を除きます)を、外国法人の国内 PE 以外に直接帰属させるものは、適格現物出
資の対象から除外されることになります。
③ 外国法人が外国法人に対して行う現物出資のうち、適格現物出資の対象の縮小
現行では、外国法人が内国法人に国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(国外事業所
に帰属する資産(国内にある不動産、国内にある不動産上の権利、鉱業権、採石権を除きます)又は負債)
の移転を行うものは、適格現物出資になりません(法法 2 十二の十四、法令 4 の 3⑨)。
2016 年度税制改正大綱によれば(外国法人から他の外国法人に対して行う現物出資において)、移転する
国外事業所帰属資産を他の外国法人の国内 PE に直接帰属させる場合は、適格現物出資の対象から除外
されることになります。
なお、その他の組織再編税制関連の改正項目としては、たとえば 2014 年度税制改正による国際課税原則
の帰属主義への変更を円滑に実施するため、外国法人(過去に恒久的施設を有していた外国法人に限る)
が適格合併等により恒久的施設を有することとなった場合には、その外国法人が過去に有していた恒久的施
設に係る欠損金の繰越控除は認めない旨を明確化する措置が講じられます。
3.
適用時期と対応策
2016 年度税制改正大綱の内容は、国会における法案審議を経て、その詳細が確定するとともに適用時期が
決まることになります。
従って、関連する組織再編行為の実施を検討している場合には、2016 年度税制改正の内容について引き
続き留意していく必要が生じているものと考えられます。また、今後も引き続きその改正動向にご留意の上、
組織再編税制に関連する改正に係る影響について詳細な検討を推奨いたします。
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