宮崎県TPP対応基本方針(案)(PDF:411KB)

宮崎県TPP対応基本方針(案)
平成28年1月27日
宮崎県TPP協定対策本部
目
次
(頁)
Ⅰ
基本的考え方
Ⅱ
TPP協定による影響
1
…………………………………………………………………
2
…………………………………………………………………………
6
1
想定される影響
2
影響試算
Ⅲ
……………………………………………………………………
分野別方針
1
農林水産業分野
…………………………………………………………………
9
2
商工業分野
…………………………………………………………………
13
…………………………………………………………………
16
…………………………………………………………………………
16
Ⅳ
今後の対応
1
対策の実施方針
2
推進体制
Ⅰ
基本的考え方
TPP協定は、世界のGDPの約4割を占める大規模な経済圏をカバーする経済連携
であり、協定の発効により、人口8億人という巨大なマーケットが創出されることにな
る。
域内で関税が撤廃・削減され貿易手続きの迅速化・加速化、投資ルールの明確化が図
られることで製品の輸出割合の高い企業や海外輸出に取り組もうとする企業、生産者に
とっては追い風となり、事業拡大も期待されるところである。
一方で、関税撤廃により海外から安価な製品が輸入されることにより価格競争が生じ
ることも予想され、特に本県の基幹産業である畜産をはじめとする農林水産業にとって
は県産品の価格下落などマイナスの影響が懸念される。
本県として、TPPのメリットを最大限に生かすとともに、デメリットを最小限に留
めることが重要である。
そのために、短期的な対策はもとより、中長期的な観点も持ちながら、海外から我が
国に入ってくる産品に勝ち抜くためにも、農業、商工業をはじめとした本県産業の競争
力確保、また、海外への展開も見据えた成長産業化に向け取り組んでいくこととする。
-1-
Ⅱ
1
TPP協定による影響
想定される影響
TPP協定における物品の市場アクセスに関し、本県の農林水産品、工業製品に与え
る影響、またルール分野に関し、本県の産業等に関わりのある分野における影響につい
ては以下のとおり想定される。
(1)物品市場アクセス関係
品目
米
想定される影響等
・新たに設定される国別枠による輸入量の増加に対し、備蓄米の運営を
含め、国産米に与える影響を回避する確実な措置が講じられない場合は、
国産米全体の価格下落が懸念
農産物
・加工用米限定SBSの運用や備蓄米の放出方法によっては、本県が推
進している加工用米の需給や価格に影響を与える懸念あり
牛肉
・和牛肉は競合の度合いは小さいと見込まれるが、長期的には品質的に
競合する交雑種・乳用種牛肉を中心に国内産牛肉全体の価格下落が懸念
・輸出に関しては、積極的な輸出促進が図られ牛肉輸出量の拡大が期待
豚肉
・当面輸入の急増は見込み難いが、長期的に国内産豚肉の価格下落が懸
念
乳製品
・安価な脱脂粉乳やバター等の輸入増加により牛乳を含めた乳製品全体
の国内需給への影響が懸念
・長期的には国内産の脱脂粉乳・チーズの価格下落等により加工原料乳
の価格下落、全体的な生乳価格への影響が懸念
鶏肉
・TPP 参加国からの輸入量は少量で国産品との競合もほとんどないため
影響は限定的。長期的には国産鶏肉の価格下落も懸念
鶏卵
・鶏卵の輸入量は少量で、かつTPP参加国からの輸入も極少量であり、
国産品との競合もほとんどないため影響は限定的。長期的には国産鶏卵
の価格下落も懸念
野菜
・関税率が低い品目については、影響は限定的と見込まれる
・品目によっては、関税削減・撤廃による輸入相手国の変化等により、
価格の下落などの影響も懸念される
果実
・外国産とは品質や外観等で差別化ができており、価格差も既にあるこ
とから影響は限定的であるが、長期的には価格下落等の影響も懸念
花き
・輸入切花は大筋合意前から関税が無いため、特段の影響は見込み難い
・輸出については県産花きの主な輸出先である米国・カナダの関税が即
時撤廃となったため両国への輸出増が見込まれる
茶
・TPP 参加国からの輸入量は少量で国産品と棲み分けもできており、
影響は見込み難い
水産物
・まぐろ類については資源管理により漁獲や輸入の急増が発生しにく
-2-
く、その他も TPP 関係国からの輸入量は少量のため影響は限定的
・長期的には安価な輸入品の流通により、本県水産物の価格下落や消費
の減少が懸念
・輸出に関しては、伸びが著しいベトナム等への輸出拡大が期待
林産物
製材等
・関税撤廃となる針葉樹合板やSPF製材は、本県スギ製材品等と競合。
長期的に価格の低下、シェアの縮小が懸念
・安価な輸入製品流入による競合製品を生産する加工工場の経営への影
響、県産材の利用減少による経営意欲の減退・適切な森林整備の遅れな
どが懸念
・関税撤廃により新たに木材製品等の輸出拡大が期待される
合板等
・関税が半減・撤廃となったとしても、価格上昇等の可能性は少なく、
今後の公共工事の円滑な執行に大きな影響はなし
加工食品
全般的
・関税の撤廃や貿易規則の透明性の向上などにより、TPP 参加国への輸
事項
出拡大の可能性が高まるが、本県食品の大口輸出先の香港、中国が不参
加であること、参加国の中で最大の輸出先のアメリカは輸出実績の多く
が肉類で、また、その他参加国についても、容器・容量規制や高率な物
品税等の非関税障壁が存在するため、大きな効果があるかは不透明
焼酎
・アメリカの容量規制の撤廃により、1800ml及び900mlの容器での輸出
が可能となり、輸出コストの削減が期待される
・カナダ、オーストラリア、メキシコの関税の即時撤廃により、輸出拡
大に繋がることが期待される
工業製品
全般的
・製品輸出割合の高い企業や積極的に海外輸出に取り組もうとする企業
事項
においては追い風となり、県内での事業拡大に繋がることが期待
・内需関連企業は、関税撤廃により海外から安価な製品が輸入されるこ
とにより、県内企業から調達していた部品等を海外からの調達に切り替
えたり、原材料が高い国内生産を減らして海外に進出するおそれがある
ため、一概にプラスの影響のみとは言えない
・TPPでは、通関手続きなど貿易規則の透明性の向上、ビジネスに従
事するヒトの移動や滞在など、貿易の円滑化のためのルールの整備も併
せて合意
・輸出相手国の貿易手続や、ビジネスマンの入国・滞在手続が迅速化・
簡素化され、投資ルールが整備されることで、日本の優れた工業製品等
がアジア太平洋地域へ輸出しやすくなるなど好影響を与えることが期待
自動車
・関税撤廃により、TPP 域外国の製品と比較して競争力が高まることが
部品
期待される
・域内国の競合他社との競争が激化することで更なるコストダウンの要
-3-
求等が厳しくなり、売上高の減少につながる懸念あり
・関税撤廃により、TPP域内国からの資材等の調達コストの低減が図
られれば、製造コストの低減につながることが期待される
自動車
・近年、日本国内で生産される四輪車の半数以上が海外に輸出されてい
完成品
る状況
・一方、日系メーカーは需要のあるところで生産するという考え方のも
と、現地生産が進んでおり、海外生産の比率は60%以上
・TPP協定の大筋合意により、大手メーカーに期待感はあるものの、
早々に日本国内での生産が大幅に増えることは考えにくく、国内へのメ
リットは小さいと推測
(2)ルール分野関係
分野
想定される影響等
原 産地規則及び原
・完全累積制度により、TPP域内国で生産される製品に日本の部品を
産地手続き
使用していても、当該国の原産品として認められるため、技術力のある
我が国の中堅中小企業が海外に移転せずに、日本国内にいながら海外展
開できる
税 関当局及び貿易
・通関手続きの迅速化により、特に農産物の鮮度の保持が期待できる
円滑化
・事前教示制度により、本県企業、特に初めて海外展開する中小企業に
とって輸出入の際のリスクを回避することができる
衛 生 植 物 検 疫
・食品の安全に関し日本の制度変更が必要なる規定は設けられておら
(SPS)措置
ず、国内における十分な水際防疫体制の確保が図られれば、日本の食品
の安全性が脅かされることはない
貿 易の技術的障害
・遺伝子組み換え食品の表示制度について制度変更が必要になる規定は
(TBT)
ないため、食の安全性について特段の影響なし
国 境を越えるサー
・国民皆保険制度、混合診療の解禁等制度の変更を求められることはな
ビスの貿易
し
金融サービス
・規制緩和を通じ、新興国における出資や事業展開の機会の拡充が見込
まれるものの、県内金融機関等に対する影響については現時点では特に
なし
・公的医療保険制度は適用除外であり、郵政事業に係る生命保険事業も
日本の制度変更が必要となる合意内容は設けられていないため、県民生
活への特段の影響はなし
電子商取引
・今後、拡大が見込まれる電子商取引市場において、ソフトウェアな
どをインターネットで無関税で輸出することができ、中小企業が国際展
開を図る際に有利となる
政府調達
・WTO 政府調達と変更点はなく、本県の物品の購入、業務委託、建設
工事等の発注への影響はなし
知的財産
・制度の大幅な変更を求める規定は見当たらないことから、影響はほと
-4-
んどなし
・WTO協定を上回る水準の規定内容となっており、本県産農水産品の
産地ブランド保護が強化される
・日本における新医薬品データの保護期間についても原則8年であり現
況と変更はないため特段の影響なし
労働
・日本では、各締約国が保証すべきこととされている労働者の権利に関
する国内法令を既に有しており、追加的な法的措置が必要となるものは
ないことから、特段の影響はなし
環境
・日本の漁業補助金については、禁止される補助金には該当しないため
引き続きその交付が可能であり、特段の影響なし
・環境保護については、日本は既に関係法令が整備され、高いレベルで
環境保護政策を講じていることから特段の影響なし。なお、他の締約国
も高水準の規律に服することが明確化されたため、違法に伐採された木
材の取引抑制・防止などにより健全な競争が確保される
-5-
2
影響試算
(1)経済効果
国が公表した「TPP協定の経済効果分析」によると、関税率の引き下げ・貿易手続
きの簡素化などに伴う貿易拡大による生産性の向上等により、TPP発効後その効果が
十分に出た段階において、TPPが無かった場合に比べて国全体の実質GDP水準を2.
59%押し上げるとしており、これを平成26年度のGDPを用いて換算すると13.
6兆円の拡大効果が見込まれるとしている。県においては、国の試算による当該実質G
DP増加額及び本県の県内総生産額等に基づき、以下の2通りの計算を実施した。
①
国の実質GDPに占める本県の県内総生産額の割合を、TPP発効による国の実
質GDP増加額に乗じて算出 ⇒ 979億円
実質GDP
TPPにより
国の実質GDPに占める本
国
県
伸びる国の
(平成26年度)
(平成24年度)
実質GDP
(B/A)×100
524兆6643億円
3兆7584億円
13.6兆円
0.72%
(A)
(B)
(C)
(D)
②
県の県内総生産額の割合
C×D
979億円
国による「TPPの経済効果分析」は「輸出入の拡大」をベースに、国内消費や
投資、賃金の増加を計算していることから、平成25年における国の輸出・輸入
額に占める本県の割合を、TPP発効による国の実質GDP増加額に乗じて算出
⇒ 204億円
TPPにより
国
県
輸出
69兆7742億円
1400億円
輸入
81兆2425億円
939億円
合計
151兆167億円
2339億円
(A)
(B)
伸びる国の
国の輸出・輸入額に占める
C×D
本県の割合
実質GDP
(B/A)×100
13.6兆円
0.15%
(C)
(D)
※出典
国の輸出入額
204億円
:財務省の貿易統計資料
本県の輸出入額:宮崎県貿易企業実態調査
経済効果については、政府の試算はGTAPモデル(※)を用いたものであり、TPP
発効による経済効果の詳細な算出方法が明らかにされていないことから、やむなく按分
比率による推計を行った。このため、比率の基礎となる数値の置き方により、試算結果
には大きな開きが出ている。また、当該経済モデルは我が国全体の産業構造を前提とし
たものであることから、全国と比べて製造業の割合が低いなど産業構造が異なる本県に
おいては、試算結果のような経済効果が生じるかは不透明である。
※
GTAP モデル:ウルグアイ・ラウンド交渉、GATT といった各国間の貿易政策のインパクトを数量的に把握
することを目的にして、1992 年に設立された GTAP(Global Trade Analysis Project)により
構築された経済モデル。
-6-
(2)農林水産品の影響額
国は、「TPP協定の経済効果分析」の中で、農林水産物の生産額への影響について
は、個別品目毎に精査し積み上げた生産量及び生産額の見込みの試算を行っている。
試算の結果として、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、
体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策によ
り、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込み、農林
水産物の減少額を約1,300~2,100億円としている。
県における影響額を、国に準拠し、本県の主要品目について試算した結果は次のとお
りである。
ア
影響額の算出方法
国の試算方法に基づき、大筋合意内容や「総合的なTPP関連政策大綱」に基づ
く政策対応を考慮し、本県の主要品目について、個別品目毎に、下記を前提として、
合意内容の最終年における生産額への影響を算出。
①品目毎に輸入品と競合する部分と競合しない部分に二分。
②価格については、原則として競合する部分は関税削減相当分の価格が低下し、
競合しない部分は競合する部分の価格低下率(関税削減相当分÷国産品価格)
の1/2の割合で価格が低下すると見込む。(注)
③生産量については、国内対策の効果を考慮
注)価格について、品目によっては、国内対策により品質向上や高付加価値化等
を進める効果を勘案し、以下で見込む価格を上限とし、上記②で見込む価格を
下限値とする。
・競合する部分は、関税削減相当分の1/2の価格低下
・競合しない部分は、競合する部分の価格低下率の1/2の価格低下
イ
試算の結果
前提:関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化
対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策によ
り、引き続き国内生産量が維持されるものと見込む。
・ 本県農林水産業における影響額:
47億円~93億円
国全体における影響額
・農林水産業への影響額:約1,300億円~2,100億円
-7-
【 品目別の影響試算額 】
品目
影響試算額
農林水産物全体
47~
93
億円
0.8~
1.7
億円
牛肉
22.6~45.2
億円
豚肉
13.3~26.6
億円
かんきつ類
鶏肉
3.0~
5.9
億円
鶏卵
0.6~
1.3
億円
牛乳乳製品
0.6~
1.0
億円
林産物
1.7
水産物
4.8~
9.6
億円
億円
農林水産品の影響額について、国の算定に基づき試算を行ったが、国内生産量が維持
され、影響額を最小限に留めることができるかどうかは、国内対策の効果によるところ
が大きい。
(3)まとめ
本県としてはTPPによるプラス効果を最大限にし、マイナスの影響を最小限に留め
るよう、農林水産業への対策はもとより本県産業の競争力確保、成長産業化に向けて取
り組みを推進するとともに、国に対しては、「総合的なTPP関連政策大綱(平成27
年11月25日TPP総合対策本部決定)」の確実な実施や、協定のプラス効果が地方
にも十分波及するよう万全な対策の実施を求めていくことが必要である。
-8-
Ⅲ
分野別方針
1
農林水産業分野
農林水産業は本県の基幹産業であり、農山漁村の振興は地方創生の原点であることか
ら、今回のTPP大筋合意を踏まえ、本県の経済再生、地方創生を図るため、守るべき
は守りつつ、攻めに軸足を置いた総合的な対策を行っていくことが求められる。
また、TPPによる国際化の流れを、本県農林水産業の構造改革を推進する一つの機
会と捉え、TPPの影響を最小限に留めるとともに、効果を最大限に発現させるため、
世界市場を切り拓くグローバルな視点を持った産地の積極的な取組を促進していく必要
がある。
このため、国が示した「総合的なTPP関連政策大綱」を踏まえ、農業関係者とも連
携しながら以下の方針に基づく取組を進め、TPPによる新たな国際環境の下で、競争
力強化に向けた構造改革を加速させていくこととする。
(1)生産者が安定して農業に打ち込めるセーフティネットの強化
(2)新たな国際競争を勝ち抜く力強い攻めの生産体制の強化
(3)攻めの姿勢による輸出体制の強化と6次産業化による高付加価値化
(4)産地を支える担い手の確保・育成と地域サポート体制の強化
(5)多様な地域の発展を促す地域政策の強化
これらの取組を実現するためには、国における制度の創設、既存事業の予算の拡充が
伴うものもあることから、必要な措置については、国に対し積極的に働きかけていくこ
ととする。
(1)生産者が安定して農業に打ち込めるセーフティネットの強化
○ 農業の価格・経営安定対策の強化と経営安定に向けた融資制度の充実
TPP協定交渉の大筋合意による生産者の不安を払拭し、意欲を持って経営に
取り組めるよう、畜産をはじめ、米、野菜等の経営安定対策や価格安定対策等の、
効率的な運用により農家経営の安定を図るとともに、経営安定対策等の財源の確
保と制度の充実及び安定化、さらには農家経営の安定化を図るための融資制度の
創設・拡充等について国に働きかける。
○
国際物流の進展等に対応した防疫体制の強化
海外においては、口蹄疫等の家畜伝染病や我が国未発生の植物病害虫が発生す
る中、TPPの実施に伴う国際物流の進展等により、今後一層、国内への侵入リ
スクが高まることが懸念されることから、産地が安心して生産活動に取り組める
よう、海外の発生情報等の迅速な提供や消毒体制の継続など、家畜防疫及び植物
検疫体制の強化を図る。
-9-
(2)新たな国際競争を勝ち抜く力強い攻めの生産体制の強化
○
畜産クラスターの取組強化による高収益畜産へ転換
畜産・酪農の体質強化を図るためには、地域の畜産関係者が有機的に連携し、
地域ぐるみで高収益型生産体制を構築していくことが重要であることから、国の
畜産クラスター事業を活用し、連携・分業化による規模拡大や人材育成、ICT 等
を活用した飼養管理の効率化、施設整備等による生産性の向上や生産コストの低
減に向けた取組を進め、畜産経営の収益性向上と生産基盤の強化を図る。
○
水田のフル活用による、持続可能な水田農業の実現
持続可能な水田農業の実現に向け、主食用米やWCS用稲、加工用米、飼料用
米等を組み合わせた計画的・効率的な米生産や地域振興作物の定着等を促進する
ことにより、水田をフルに活用した水田経営の確立を図る。
※WCS用稲:繊維の多い茎葉部分と栄養価の高い子実部分を一緒に収穫し、サイレージ
に供給する稲。
○
担い手への農地の集積・集約の加速及び耕地利用率の向上
農業の担い手の減少や高齢化の進行が一層加速すると見込まれる中、意欲ある
担い手に経営資源を継承していくため、農地中間管理機構の活用により、担い手
等への農地の集積・集約の加速化を図るとともに、水田裏作の有効活用や農地の
区画拡大、汎用化等の基盤整備を一体的に推進し、国際競争を勝ち抜く生産体制
の構築を図る。
○
産地パワーアップ事業の取組による活力ある野菜・果樹等産地の形成
水田・畑作・野菜・果樹等の産地の競争力を強化し、収益性を向上させていく
ため、国が制度化した産地パワーアップ事業等を活用して、産地の営農ビジョン
に基づき、地域一体となって取り組む施設整備等の取り組みを促進し、高収益な
作物・栽培体系への転換を図るとともに、産地基盤の強化に向け取り組みを進め
ている次世代施設園芸の県内への拡大など、産地の生産力の強化を図る。
また、多様な加工・業務用ニーズに的確に対応できる産地の育成や産地が連携
した販売力や生産力の向上に向けた取組の強化を図る。
○
強い産地づくりに向けた農業生産基盤整備の推進
国際競争を勝ち抜く生産体制を構築するためには、生産性の向上が急務である
ことから、計画的かつ戦略的な生産を可能とする畑地かんがい施設の整備や水田
の汎用化、農地の区画拡大等の農業生産基盤の整備を推進し、収益性の高い営農
への転換や担い手への農地集積を図る。
- 10 -
○
林業・木材産業の成長産業化を図り、国際競争力を高めていくための取組の強化
地域材の競争力強化に向けて、製材工場等の施設整備とそれらに対し原木を安
定的に供給するための木材の生産及び路網整備等を推進する。さらに、木材製品
等の輸出拡大を図る。
○
漁業構造改革と輸出を含めた販売対策強化による水産業の高収益型産業への転換
TPP協定交渉の大筋合意を契機として、水産業の成長産業化を図るため、漁
船の小型化等による省コスト操業への転換など漁業の構造改革とともに、輸出も
含め生産から流通・販売までの体制強化等、水産業の高収益型産業への転換を図
る。
○
フードビジネスを支える生産力の強化
生活スタイルの変化や国際化の進展等に伴い、利便性や経済性、健康や安全志
向など、多様化する消費・販売ニーズに対応するため、みやざきブランド戦略に
基づき、マーケットインの視点に立った商品づくりや安全・安心を強みとした産
地づくりなどによる本県農産物の付加価値の創出と生産力の強化を推進し、安定
的な取引の実現を図る。
(3)攻めの姿勢による輸出体制の強化と6次産業化による高付加価値化
○
農林水産物の輸出対策の強化
TPP協定における各国の農林水産物の関税撤廃等をチャンスと捉え、本県農
林水産物の輸出拡大を図るため、香港を核とした東アジアへの販路開拓の取組強
化に加え、北米やEUなどの新たな市場の開拓やキャビアなどの新たな輸出品目
の拡大、国際衛生基準に対応した最新鋭食肉処理施設の整備等を推進するととも
に、産地の輸出に向けた取組を支援することにより、農林水産物の輸出拡大を図
る。
○
6次産業化による高付加価値化と新たな産業の創出
地域の農水産物に着目した6次産業化の取組を促進するため、6次産業化を担
う企業的経営感覚を持った農業経営者の育成に取り組むとともに、観光や福祉分
野との連携や輸出企業との連携による輸出を視野に入れた取組など多様な連携に
よる新たなビジネスへの展開を支援し、農村地域の所得の向上と雇用の確保を図
る。
- 11 -
○
農林水産業の成長産業化に向けたイノベーションの促進
国際競争力のある産地の強化やフードビジネスの創出を図るため、産学官連携
による研究・技術開発を促進する環境整備を進め、生産性や品質向上につながる
新品種の育成やICT技術、ロボティクス技術の開発や農水産物の輸出拡大や付
加価値向上につながる残留農薬や機能性成分分析技術の高度化などの本県の強み
や特徴を生かした技術開発の促進を図る。
(4)産地を支える担い手の確保・育成と地域サポート体制の強化
○
地域農業の核となる実践力を備えた担い手の育成・確保
競争力のある産地を牽引する経営感覚に優れた認定農業者や農業法人を育成す
るため、就農相談から定着までの一貫した支援体制の整備や大都市圏・他分野か
らの新規就農促進、農業高校・県立農業大学校・農業法人等が連携した人材育成
プログラムの充実などによる新規就農者の確保を図るとともに、担い手農家の経
営発展ステージに応じた研修(リカレント教育等)の充実や農業大学校の次世代
型農場チャレンジファームを活用した最新技術や先駆的農業経営を実践できる研
修環境の整備、さらには他分野からの企業参入等を促進し、地域農業の核となる
担い手の育成・確保を図る。
○
農を起点とした地域活性化に向けた支援体制の強化と作業受託・雇用労働力調整
等の取組強化
個々の農家毎の生産活動のみでは、地域農業を守り、競争力を高めていくこと
が難しくなってきていることから、行政・関係団体・民間等が連携した宮崎方式
営農支援体制の構築によりマーケットニーズに対応した産地の育成や産地間連携
を促進するとともに、集落営農組織の育成・法人化や年間を通じて多品目の農作
業を受託するアグリクラスターの組織化、大規模繁殖センターやコントラクター
組織の強化等による畜産経営基盤強化等を推進し、地域農業の発展を支える仕組
みづくりと組織力の強化を図る。
(5)多様な地域の発展を促す地域政策の強化
○
中山間地域等における多様な地域の発展を促す地域政策の強化
規模拡大による競争力強化に限界がある中山間地域については、農業・商工業
が連携した雇用の確保、地域資源を生かした6次産業化の取組等による新たなビ
ジネスの創出、さらには地域が一体となった地域資源の維持・保全の取組など、
地域が主体的に取り組む多様な地域活性化の取組を重点的に支援し、魅力ある農
村地域の創造と地域の活性化を図る。
- 12 -
2
商工業分野
地域経済の活性化なくして、地方創生の実現はないことから、今般の大筋合意を踏ま
え、関税撤廃や貿易ルールの環境整備をはじめとするTPPのメリットを、より大きく
実効性の高いものとするよう対策を講じ、県内企業の海外展開を後押ししていくことが
求められる。
TPPの活用による貿易・投資の拡大を通じ、生産性を向上させ、県内企業全体の競
争力・経営力の強化や雇用創出に繋げ、本県経済・産業の活性化を図るため、以下の方
針に基づく取組を進めていくこととする。
(1)県内生産品の国際競争力強化
(2)県内企業の海外進出支援
(3)海外からの投資等の呼び込み
(4)企業人材の育成・確保
(5)中小企業・小規模企業の経営基盤の強化
なお、取組を進めるにあたっては、昨年10月に開設したジェトロ宮崎貿易情報セン
ターとの連携はもとより、産学金官が一体となって、本県の強みやポテンシャルを最大
限に発揮しうるよう努めるとともに、国の予算や事業の活用が不可欠であることから、
今後、国に対して、関連する予算等の拡充を積極的に働きかけることとする。
(1)県内生産品の国際競争力強化
○ 県内企業の技術力強化
関税の撤廃によって、原材料の値下がりや、輸出の拡大といった効果が期待で
きる一方、海外からの安価な製品の輸入増加等により競争が激化することが予測
される。このため、県内企業のブランド力の確立や技術開発、農商工連携による
新たな商品開発を推進する等、県内企業の生産性向上・競争力の強化を図る。
○
輸出に取り組みやすい環境づくり
TPPを輸出拡大に向けたチャンスとして捉え、加工食品や工業製品をはじめ
とする県内生産品の輸出拡大を図るため、JETRO等の関係支援機関との連携
により、マーケット情報の提供や相談窓口の設置、さらには、貿易に関するセミ
ナー開催など、輸出に取り組みやすい環境づくりを進め、意欲ある事業者の発掘
・育成を図る。
○
現地ニーズを踏まえた商品力の強化
プロダクトアウトではなく、マーケットインの視点に立った競争力の高い商品
づくりを促進し、販路の開拓や生産性の向上に繋げるため、海外でのテストマー
ケティング機会の提供、フード・オープンラボの活用等による商品開発、さらに
は、新たな技術・製品・サービスの開発への支援などにより、本県中小企業の商
品力の強化を図る。
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○
県内生産品の認知度向上と販路の開拓・拡大
海外においては、他国産のみならず、日本産同士の産地間競争が激化している
ことから、知事のトップセールス等によるプロモーションやフェアの開催、現地
メディアを活用した効果的なPRの実施等により、県内生産品の認知度向上を図
るとともに、海外事務所等による営業活動やJETROとの連携による見本市・
展示会への出展及び現地キーパーソンとの関係構築等に努め、県内生産品の認知
度向上、多様な販売ルートの開拓や現地パートナーの拡充を図る。
(2)県内企業の海外進出支援
県内企業の海外進出に当たっては、現地情報が乏しく、また、多大な資本の投
入を要する上、知的財産や労務管理等の経営上対応するべきリスクや、政情不安
・為替変動のように、個々の企業の取組では回避が困難な事象もあることから、
JETRO等との連携により、現地の投資環境等に関する情報提供、マーケティ
ング活動や事業計画の策定支援等を行うとともに、進出後のフォローアップなど、
海外進出に向けた環境の整備を図る。
(3)海外からの投資等の呼び込み
世界から優れた技術や資金等を受け入れるための対内投資の促進に向けては、
首都圏からのアクセスの良さや人材の魅力、豊富な農林水産資源など優れた立地
環境を国内外で幅広くアピールすることが重要であるため、JETROと十分に
連携し、投資意欲のある外国企業の情報収集に努めるとともに、外国企業への情
報発信や、外資系企業の二次的な地方展開の誘致及び本社機能の地方移転・拡充
に力点を置いた企業立地セミナーの開催等、海外からの投資呼込みを推進する。
また、海外との人の交流の活発化により、県内経済の活性化を図る。
(4)企業人材の育成・確保
中小企業の海外展開に向けては、海外の経済事情や商習慣、貿易や投資に関す
る知識、経験等を備えた国際ビジネスに対応できるグローバル人材の育成・確保
が不可欠であることから、産学金官の連携により、実践的で専門性の高い体系的
な人材養成セミナーの実施や、留学生の活用のための企業と留学生のマッチング
機会の創出等に取り組み、企業内人材の育成・外国人材の活用によるグローバル
人材の育成・確保に努める。
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(5)中小企業・小規模企業の経営基盤の強化
県内企業の99.9%を占める中小企業・小規模企業は、地域経済の循環や雇
用を支える重要な役割を果たしているが、経営基盤が脆弱であるため、TPPに
よる輸入拡大などの影響を受ける可能性がある。このため、行政や中小企業団体
によるきめ細かなサポートを行うほか、産学金官の連携により地域経済をけん引
する中核企業を育成することにより、県内企業の取引拡大を図るなど、中小企業
・小規模企業の経営基盤の強化を図る。
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Ⅳ
今後の対応
1
対策の実施方針
農業をはじめとした本県産業の競争力確保、成長産業化については、即時に効果が出
るものではないことから、将来のTPP発効に備え中長期的な取組が必要である。
まず、国に対し、「総合的なTPP関連政策大綱」の確実な実施や、協定のプラス効果
が地方においても十分波及するよう万全の対策の実施を求めていくこととする。
県においては、本県への影響も踏まえ、県として重点的な取組が必要なものについて
は、国の予算も活用しながら必要な対策を講ずることとする。
なお、具体的な事業の構築や予算措置に当たっては、優先順位を考慮しながら、選択
と集中により最大の効果が出るよう努めるものとする。
2
推進体制
TPP協定は、本県の農林水産業、商工業を中心に幅広く県内産業、県民生活に影響
を与えることが想定されるため、庁内の「宮崎県TPP協定対策本部会議」を中心に各
部局連携して対策を講じることとする。
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