ゾウが倒れた場合を想定した訓練について 古田 洋,佐藤英雄,栗原幹尚

ゾウが倒れた場合を想定した訓練について
○古田 洋,佐藤英雄,栗原幹尚,太田真琴,藤澤加悦,山本香織理
(公益財団法人横浜市緑の協会 よこはま動物園)
【背景と目的】 横浜市内の動物園ではこれまでゾウが起立不能となる事例が起きていない.今後
起立不能のゾウを起こす必要が生じた場合に備え訓練を実施した.訓練の目的は重両物の吊り上げ
に要する時間を調査することである.
【訓練内容】 2 種類の訓練を実施した.訓練1は重量物の吊り上げ訓練で,ホイールローダー(日
立建機 LX15-3,車両重両 2,480kg)を吊り上げた.場所はインドゾウ舎の寝室1部屋(縦 6.5m×
横 7.2m×高さ 8.9m)で,事前に天井部のフックに設置しておいたチェーンブロック 4 台(象印
H-100 手動型,定格荷重 3.5t×2 台,定格荷重 2t×2 台)を利用して吊り上げた.各チェーンブ
ロックにスリングベルト(巨象印ナイロン製,幅 5cm)をかけ,ホイールローダーに届くまでベル
トを追加した.吊り上げの際,ゾウの四肢それぞれを吊り上げることを想定して車両の 4 本のタイ
ヤ軸にスリングベルト(同型,幅 30cm)を回し,チェーンブロック 4 台を同時に動かした.訓練
2 として,可動式スクイズケージ(ステンレス製,縦 235cm×横 150cm×高さ 200cm,重量 907kg)
の寝室間の移動および吊り上げを実施した.これは,倒れたゾウを所定の位置まで移動させてから
吊り上げることを想定した.寝室間移動の際,床面のフックと格子にチェーンブロック(同型,定
格荷重 1t×2 台)を固定させて使用し,スリングベルトで長さを調節した.吊り上げ時にはケージ
上部のフックとスリングベルトをシャックルでつないで持ち上げた.
【結果】 訓練1では車両を吊り上げるまでに要した時間は約 40 分であった.訓練 2 ではスクイ
ズケージを所定の位置に移動させるまでが 42 分,その後吊り上げるまでが 33 分であった.
【所感】 スリングベルトだけでは長さの調節が不便であった.
チェーンを併用するのが望ましい.
訓練を通して,スタッフが事前に使用する道具に精通しておくことの重要性を再確認できた.