論文紹介 携帯端末によるTV画面の位置と姿勢の推定方法 情報処理学会論文誌,コンシューマ・デバイス&システム,Vol.5,No.4,pp.61-69(2015) 川喜田裕之,中川俊夫,佐藤 誠※ ※ 東京工業大学 テレビ画面内の世界が画面手前の現実世界とつながっているかのように見える表現技術“Augmented TV”の研究を進めており,これまで に,テレビ映像に対してAR(Augmented Reality)の技術を適用したシステムを提案してきた。提案システムでは,スマートフォンやタブ レットなどの携帯端末のカメラでテレビを撮影しながら,「カメラを通して」テレビを見る。携帯端末のカメラから取り込んだ映像に対し て3DCG(3 Dimensional Computer Graphics)アニメーションを合成することにより,テレビ画面内のキャラクターがあたかもテレビ画面 の外に飛び出してくるように見える演出が可能である。このような演出を実現するためには,携帯端末でテレビ画面の位置と姿勢を常時高 精度に推定することが必要であり,我々はこれまでに携帯端末に内蔵されたカメラとジャイロセンサー(携帯端末の角速度を測るセンサー) を用いる推定方式を提案してきた。本論文では,この方式の詳細について議論するとともに,市販のタブレットに実装して処理速度の評価 を行い,方式の実用性を確認した結果について述べる。 Recording Characteristics of High-Density Thin Optical Disk Using NearField Optical Recording Optical Review,Vol.21,No.5,pp.541-544(2014) 小出大一,梶山岳士,佐藤龍二,徳丸春樹,高野善道 超高精細映像を収録可能な小型記録装置の実現を目指し,近接場光記録技術と薄型基板による大容量・高転送レートを可能とする高密度光 ディスクの開発を進めている。光記録装置の光ヘッドの対物レンズには現行ブルーレイディスクの2倍を超える開口数1.84の固体浸レンズ (Solid Immersion Lens)を用い,記録ビームスポット径を従来の約1/2とした。レーザー光の駆動波形は,低いパワーで記録可能なことか ら簡素な3値構成とした。信号再生には,高密度なビット再生時の減衰特性を考慮したPRML(Partial Response Maximum Likelihood)信 号処理技術を採用し,等化係数に最適なPR(1221) を選択して,ビタビ復号による最尤検出を行った。また,記録密度が従来比4倍となるトラッ クピッチ160nmの高密度な薄型光ディスクを試作した。これらの技術により,光ディスクへのデータ記録再生実験を行った結果,1記録層 あたりの容量が100GB相当の映像記録に必要な5×10−3の実用的なビット誤り率を実現した。 Privacy Preserving System for Integrated Broadcast-broadband Services using Attribute-Based Encryption IEEE Transactions on Consumer Electronics,Vol.61,No.3,pp.328-335(2015) 大竹 剛,小川一人,Reihaneh Safavi-Naini※ ※ University of Calgary 近年,ハイブリッドキャストなどの放送通信連携サービスが実用化され,放送番組をテレビで視聴しながら,インターネット経由で番組に 関連するさまざまな情報を受信できるようになった。この放送通信連携サービスにおいて,視聴履歴など個人の好みに関する情報が視聴者 から放送局またはサービスプロバイダーに提供されれば,さらに魅力的な個人向けサービスを実現することができる。しかし,視聴履歴は 視聴者のプライバシーに関わる情報であり,適切に保護した上で利活用しなければならない。本論文では,「属性ベース暗号」と呼ばれる暗 号方式を用いて視聴履歴を暗号化してクラウドサーバーで管理するとともに,視聴者が指定した属性を有するサービスプロバイダーのみが 視聴履歴を復号することができるプライバシー保護システムを提案する。また,HTML5(Hyper Text Markup Language 5)アプリ上で動 作するJavascript(プログラミング言語の一つ)を用いて試作したシステムにより,ユーザー端末において実用的な処理時間で視聴履歴デー タを暗号化できることを示す。本システムを用いると,視聴者はさまざまなサービスプロバイダーから個人向けサービスを安心・安全に受 信することができる。 Extraction of Trap Densities in Amorphous In-Ga-Zn-O Thin-Film Transistors by Using Efficient Surface Potential Calculations IEEE Electron Device Letters,Vol.36,No.10,pp.1044-1046(2015) 辻 博史,中田 充,中嶋宜樹,武井達哉,藤崎好英,山本敏裕 大画面シート型ディスプレーの実現を目指し,In-Ga-Zn-Oなどの酸化物半導体を用いた薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor) の研究を進めている。酸化物半導体TFTの場合,半導体層内に多数の欠陥(酸素欠損など)が存在し,それらがTFTの特性に大きな影響を 与えることが知られている。そこで今回,TFTの容量測定と高速なシミュレーションを組み合わせることで欠陥密度を評価する新たな手法 を開発した。半導体中の電位分布を近似し,1次元のポアソン方程式を解くことで,従来に比べてシミュレーションに必要な計算量を大幅 に削減するとともに,欠陥の状態密度を2種類の指数関数を用いてモデル化することで,シミュレーションの高精度化を図った。本手法を 用いることにより,TFTの欠陥密度の評価を短時間で高精度に実施することが可能となり,TFTのプロセス開発・デバイス開発の促進が期 待される。 NHK技研 R&D/No.155/2016.1 49
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