■ベンジャミン/3つのインヴェンション 今年 55 歳になるイギリスの作曲家、ジョージ・ベンジャミンは、野平氏と同じく、創作 をしながら、ピアニスト、指揮者としても活動してきた才人である。パリ音楽院でメシアン に学んだのち、ケンブリッジ大学キングズ・カレッジでアレクサンダー・ゲーアに学んだ。 20 歳のとき、プロムスで「平らな地平に囲まれて」という作品が演奏されてから、世界的 に名前が知られるところとなった。その後も色彩的な響きを用いながら、細部まで繊細に作 りこまれた作品の数々を世に送り出している。 3 つのインヴェンションは彼の審美眼がよくわかる小品である。1995 年、第 75 回ザル ツブルク音楽祭のためにベティ・フリーマンが委嘱し、モーツァルテウムで 7 月 27 日に初 演された。楽器編成は木管 7、⾦管 4、ハープ、ピアノ、打楽器 2、弦楽器 9 という 24 人 のアンサンブルで、作曲家の説明によると、 「3 つの楽章の⻑さと性格が⾷い違っているの は意図的なもので、より⻑く暗い結末の前に 2 つの比較的短く軽い楽章が置かれている」 。 ピアノがヴィブラフォンとハープ、弦楽器の光彩をまといながら静かに奏で始める第 1 曲モルト・トランクィロは短い序奏ののち、フリューゲル・ホルンが主要な旋律を奏でてい く。わずか 2,3 分の第 2 曲コン・ブリオは冒頭で再びピアノとヴィブラフォン、ハープが 響くのだが、3 小節目でコール・アングレの独奏が加わり音楽を活性化する。思いがけない テンポの変化を経て、クラリネットがアクロバティックな独奏を繰り返して終わる。第 3 曲 レントはコントラバスーンの独奏で低音域を強調した音楽が始まる。ゆっくりとしたバス のパルスの上で、ユーフォニウムやヴァイオリンとヴィオラが旋律を担う。音階を駆けめぐ る⾛句と浮遊するハーモニーなどが重ねられていき、バス・ドラムの⼀撃で終結する。 白石美雪 ※掲載された曲目解説の無断転載、転写、複写を禁じます。
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