月刊 資産管理 2 2016 Vol.193 2016年1月26日発行 ●中期の投資シナリオ分析 シナリオの分析 メインシナリオ 今月の注目アセット 先進国株式 豪ドル 主要アセット市場の動向 1 ブラジルレアル 2 トルコリラ 主要国・アセット市場の動向 ●グローバル分散投資 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス 今後の所得税改革について ~政府税制調査会「論点整理(平成27年11月公表)」を みて~ CONTENTS 「中期の投資シナリオ分析」 主な出来事とマーケット動向・経済カレンダー 今月号の「中期の投資シナリオ分析」要約・結論 シナリオの分析 メインシナリオ 「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 野村マンスリー投資会議要約(2016年1月18日) <参考>株価・金利・為替の想定レンジ(2016年1月18日)、野村のマクロ経済予測表 主要国・アセット市場の動向 世界の株式・債券・為替市場 今月の注目アセット 先進国株式(「メインシナリオ」47~50ページをご参照ください) 豪ドル 主要アセット市場の動向 1 ブラジルレアル 2 トルコリラ 主要国・アセット市場の動向 インド、メキシコ、アセアン(インドネシア)、南アフリカ、ロシア、カナダ、 商品市況、J-REIT、ハイイールド債、MLP、欧米の連続増配株価指数 グローバル分散投資 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス 今後の所得税改革について ~政府税制調査会「論点整理(平成27年11月公表)」をみて~ 2 4 6 11 51 52 55 61 67 73 79 93 103 表紙 上:油田の掘削現場(サウジアラビア) 下:紫禁城(中国・北京) ご注意ください 印刷の都合により、このレポートは投資に際しての最新情報を保証しているものではないことをご了承ください。 最新情報のご確認はご自身でお願いいたします。 このレポートの内容に関するご質問、お問合せはお取引店まで、お申し付けください。 落丁・乱丁の場合にはお取替えいたしますので、お手数ですがお取引店までお知らせください。 Vol.193 2016年1月26日発行 月刊 資産管理 2016年2月号 1 主な出来事とマーケット動向 2015年11月 12月 (ドル) 18000 20000 19500 - - (円) 20500 11 ・ 原I 油E 供A ( 給国 過際 剰エ はネ 16 ル ギ 年ー も機 続関 く) とが の月 見報 通に しお 発い 表て 、 17700 17400 17100 18500 16800 11/2 18683 11/13 17245 11/2 120.76 日経平均株価(左軸) 22 ・ 前米 期7 比 年9 率月 2期 %実 質 増G とD 市P 場成 予長 想率 を確 上定 回値 るが 12/16 12/17 17749 122.56 12/11 120.01 NYダウ(左軸) 12/18 12/15 17128 18565 18000 17500 12/29 17720 12/17 19353 12/3 17477 19000 2016年1月 16 18 18 ・・・ 事米日日 実F経銀 上O平、 均量 のM 的 ゼC で株・ ロ 9 価質 金年の的 利半日金 解ぶ中融 除り値緩 利幅和 上がの げ8補 決8 6完 定円措 、 置 導 入 - + 2 4 4 6 9 10 13 16 20 24 26 27 30 30 1 3 4 9 ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 引 中 日 の F が 米 O 12 シ パ 2 日 量 E ト 感 閣 安 中 I 運 G 日 量 E O 元 中 き国本可R前国E月カリ四本的Cル謝議倍国M用P 経的CP安国 C ゴ に 半 15 緩 B コ 祭 決 首 人 F 損 I 平 金 B E 水 人 上人郵能B 議 月 10 D 利 がC ド軍 は F げ民政性長比月が上連て期年和ラ機 定相民S失は 均融中総準民 銀 グ を が 27 雇 15 げ 銀 同 連 7 拡 ギ に し は 元 D を 7 株 緩 銀 会 に 元 行 ル 示 議 用 年 開 総 時 続 大 総 よ 、 16 を R 発 価和預に設は 9 はー唆会万統の始裁多の 9 へ裁る 補年加( 特表月 が策金て定対 人 発 月 正 の 、 対プ 証 計世がボ マ 終の金原 ド ロ 予度え別 強 イ期期の ド3 値 6 利油 ル に界妥ステ 発シ 算予る引 の 言 と ロ 待 実 7 ナ ル社 に お成当ト発 言ア 編算こき 兆 でカを生 基 大い 質 が ス 基上 2月 産 準 編と 長とン に軍 準場 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■米国FRB議長半期議会証言(下院) 11 ■米国FRB議長半期議会証言(上院) 12 (独)10-12月期GDP、(ユーロ圏)10-12月期GDP、 (米)1月小売売上高、2月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報) 15 10-12月期GDP(速報) 15 (中)1月貿易収支 17 12月機械受注と1-3月期見通し 16 (独)2月ZEW景況感指数、(米)2月ニューヨーク連銀製造業景気指数 1月全国百貨店売上高(※17-22日のいずれか) 18 1月貿易収支 (22) 1月コンビニ売上高 22 2月製造業PMI 1月スーパー売上高(※22-25日のいずれか) 18 (豪)1月失業率、(中)1月消費者物価指数、(米)2月フィラデルフィア連銀景況感指数 19 (米)1月消費者物価指数、(ユーロ圏)2月消費者信頼感指数 22 (ユーロ圏)2月製造業PMI、(米)2月製造業PMI 23 (独)2月IFO企業景況感指数、(トルコ)金融政策委員会・政策金利発表 (米)12月S&P/ケース・シラー住宅価格指数、2月消費者信頼感指数、1月中古住宅販売件数 24 (米)1月新築住宅販売件数 25 (米)1月耐久財受注 26 1月全国消費者物価指数、2月東京都区部消費者物価指数 26 (米)10-12月期GDP(改定) 、1月個人支出・所得、2月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報) 29 1月鉱工業生産、1月小売業販売額 29 (ユーロ圏)2月消費者物価指数、(米)2月シカゴ製造業PMI ■G20財務相・中央銀行総裁会議(~27日、上海) 1月住宅着工戸数 (注)発表日時は現地時間。( )の日付は大まかな予定日。 (出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 今後の金融政策決定会合 17 (米)1月住宅着工件数、1月鉱工業生産 日本 16年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 米国 ユ ー ロ圏 14-15日 27-28日 15-16日 26-27日 10日 21日 15-16日 28-29日 14-15日 26-27日 2日 21日 20-21日 31日-1日 20-21日 19-20日 8日 20日 1-2日 13-14日 8日 (注)米国大統領選関連の予定は39ページをご参照下さい。 月刊 資産管理 2016年2月号 3 ~今月号の「中期の投資シナリオ分析」要約・結論~ 今月号の要約・結論 年初からグローバル市場は不安定な状況が続いてい 信用に関しては、流動性の乏しい債券などでストレスが るが、米国の利上げペースの不透明感が強い中で、4 高まっているが、ハイ・イールド債では石油などエネル つの「C」に集約される懸念材料が織り込まれる過程で ギー・資源セクターにリスクが集中しており、金融システ あると解釈している。 ム全般に波及する可能性は低いとみられる。 4つの「C」は、①「China」中国(株価、人民元、経済)、 一方、先進国経済は緩やかな景気回復が続くと見込 ②「Crude Oil」原油(同価格、産油国経済・通貨)、③ まれる。米国は堅調な消費、住宅投資に支えられ、ユ 「Currency」通貨(新興国通貨、ドル高の米国企業業績 ーロ圏はECB(欧州中央銀行)の緩和継続、難民問題 への悪影響)、④「Credit」信用(ハイ・イールド債等)。 から財政が景気の押し上げ要因となることから回復が 中国の景気減速は消費主導の経済への構造転換を 続こう。日本も米中経済が大きく悪化しない中では再 進めている結果であり、減速懸念が深まる場合には、 加速シナリオが想定される。また、日銀は景気、インフ 小刻みな財政・金融政策によるサポートが見込まれる。 レ率に下振れリスクが高まると判断される場合には量 景気減速は続こうが、中国悲観論は行き過ぎと考える。 的・質的金融緩和を強化しよう。 原油価格は、新興国の景気減速から需要が落ち込み、 4つの「C」が織り込まれる中で、緩やかな景気回復とイ 需給が更に悪化するとの見方から下落しているが、中 ンフレの低位安定の組み合わせが続きやすいとの見 国経済は減速しながらも、需要が減少することは考え 通しが浸透しよう。米国の利上げペースが、FOMC(米 にくい。イランの輸出再開が供給過剰のピークとなり、 連邦公開市場委員会)メンバーの想定する年4回より 価格は底入れ、小幅反発を見込んでおり、デフレ圧力 も緩やかなペースとの見方に今後収斂し、株式市場は の再燃は避けられよう。 安定を取り戻し、上昇トレンドに回帰すると予想する。 新興国では通貨下落から米ドル建て対外債務の返済 負担増が懸念されているが、対外債務の対GDP比を このような前提から、先進国株式と、中国悲観論の後 退から豪ドル資産に注目する。 見ると、一部の国々を除くと制御可能な水準と見られる。 月刊 資産管理 2016年2月号 4 ~今月の注目アセットとリスク要因~ 今月の注目アセット 今月の注目アセットは先進国株式、豪ドル。 リスクシナリオ インフレ上昇シナリオとしては、米国で内需回復から賃 先進国株式では、米国株では、10年債利回りと配当利 金が上昇し、インフレ率が押し上げられ、段階的な利上 回りが逆転しており、そのような状況では、中期的な株 げ実施、長期金利上昇を想定している。新興国は商品 価上昇につながっていたことから注目している。また、 市況回復の恩恵を得るが、米金利高が逆風となる。想 日欧株式も金融緩和強化が見込まれる上に、10年債 定資産としては、先進国株式・REIT(不動産投資信託) 利回りと配当利回りの差が拡大している点に着目して に、商品連動型資産を一部組み入れる。 いる(47ページご参照)。 デフレ再燃シナリオでは、米国で賃金上昇が加速しな 豪ドルは資源国通貨と位置付けられ、商品市況の下落、 い状況が続き、景気悪化懸念が払拭されずに世界的 中国景気の底割れ懸念から下落基調となっているが、 に景気下振れ、デフレ圧力が再燃する展開を想定して 中国経済の先行きに対する悲観論の修正、米国の緩 いる。米国は利上げが続けられず、中国は供給過剰の やかな利上げペースの確認、RBA(豪州準備銀行)に 調整が長引き、景気底割れリスクも。円高傾向が予想さ よる豪ドル安誘導姿勢や追加利下げ観測の後退がプ れ、想定資産群としては、先進国の連続増配株や円建 ラスに働くと想定する(61ページご参照)。 て債券などが挙げられる。 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 5 シナリオの分析(1)(極めて緩やかなインフレ上昇率の継続を軸に) 米国経済の想定 インフレ上昇シナリオ ・新興国の回復が出遅 れる中インフレ率上昇 • 内需回復が賃金上昇を通じて インフレ率を押し上げる。 • 利上げが段階的に実施され、 長期金利も上昇傾向となる。 インフレ率の想定 今後の金融市場を 考える上で最も重 要な要因は、米国 の利上げペースと その背景にあるイ ンフレ率と考える メインシナリオ ・世界的に景気回復は 非常に緩やかで、イン フレ率は低位安定 デフレ再燃シナリオ ・世界的に景気下振れ、 デフレ圧力の再燃 • 雇用と消費の好循環で、 内需主導の景気拡大。 • 米FRB(連邦準備制度理 事会)の金利引き上げは 「正常化」の範囲で、長 期金利上昇は緩慢。 • 賃金上昇加速せず、景気悪 化懸念。 • ディスインフレ傾向が強まり、 利上げは継続されない。 中国経済の想定 • 供給過剰の調整が十分に進 まない中、ドル金利の上昇が 実質的な金融引き締め効果 につながる。 • 漸進的な供給過剰の調 整で成長率は緩やかに 低下。 • 政策対応の支 え で 、株 価急変動に伴う景気下 押しリスクは限定的。 • 金融・財政政策発動も、供給 過剰状態の調整が長引き 、 景気底割れリスク強まる。 欧州経済の想定 • 欧州域内景気の自律回復は 続くが、新興国の回復の遅れ で成長率は加速しにくい。 • QE終了時期の前倒しが意識。 長期金利は上昇傾向に。 • 景気は消費主導で緩 やかに回復。 • 構造調整圧力が残る ためECB(欧州中央銀 行)はQE(量的緩和) を強化、長期金利は 緩やかな低下傾向。 • 賃金上昇広がらず、景気悪 化懸念。 • 長期金利は大きく下振れ。 QEは大幅に長期化。 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 6 シナリオの分析(1)(極めて緩やかなインフレ上昇率の継続を軸に) インフレ上昇シナリオ ・新興国の回復が出遅 れる中インフレ率上昇 日本経済の想定 資源・新興国経済の想定 • 好調な米国内需と国内の好循 環で景気回復継続も、新興国の 回復の遅れがやや重石に。 • 先進国の景気回復に支えられ、 商品市況も緩やかに回復。 • 脱デフレが明確化し、日銀の量 的・質的金融緩和の出口議論も。 メインシナリオ ・世界的に景気回復は 非常に緩やかで、イン フレ率は低位安定 • 原油安、円安の累積効果 を受け、緩やかな景気回 復。 • 脱デフレに向けた日銀の 政策的な後押しが続き、長 期金利の低位安定が続く。 デフレ再燃シナリオ ・世界的に景気下振れ、 デフレ圧力の再燃 • 世界経済の成長率下押しを受 け、日本のデフレリスク再燃。 • インフレ率低下で量的・質的金 融緩和は長期化、金利は超長 期まで低位に。 • 相対的には資源国に恩恵も、 米ドル金利の上昇が実質的な 金融引締めとなり成長率に悪 影響も。 • 商品価格は底打ち程度で、 上昇してもペースは緩や か。資源国の景気回復も 緩慢に。 • 資源輸入依存型の新興 国経済は成長率が押し上 げられる。 • 世界的な景気下振れとそれに 伴う資源安を通じたデフレリス クの高まりで、成長率は大きく 下振れ。 想定される資産群 • 先進国株式、REIT(不動産投資信託)、 流動性の高い米ドル建て資産。 • 商品連動型資産も一部組み入れ。 • 流動性の高い米ドル建て資産 を軸に、先進国(日米欧)株式の 比重を高めに。 • 新興国資産は、ファンダメンタ ルズの改善や方向転換が見込 まれる国を選好。 • 先進国の高配当利回り・連続増配株 や円建て債券。 • 資源国・新興国通貨は資本流出懸 念などを踏まえて選別的に。 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 7 シナリオの分析(2) ~メインシナリオでの金融市場の想定~ メインシナリオで想定される金融市場の天気図 米国 日本 欧州 (ユーロ圏) 資源国・新興国 中国 豪州 アセアン インド ブラジル メキシコ トルコ 南アフリカ ロシア 株価 債券 (価格) メインシナリオ ・世界的に景気 回復は緩やか で、インフレ率 は低位安定 為替 (対円レート) REIT ハイ・イールド (価格) (注)矢印は、前月号からの方向性の変化を示す。日本の債券(価格)は前回の「緩やかな下落基調」から「緩やかな上昇基調」に変更、欧州の株価は「緩やかな上昇基調」から「上昇基調」に変更。 (出所)野村證券投資情報部作成 今後3年間の 緩やかな下落基調 下落基調 上昇基調 緩やかな上昇基調 大幅調整 大まかな方向性 月刊 資産管理 2016年2月号 8 シナリオの分析(2) ~インフレ率上昇シナリオでの金融市場の想定~ インフレ率上昇シナリオで想定される金融市場の天気図 米国 日本 欧州 (ユーロ圏) 資源国・新興国 中国 豪州 アセアン インド ブラジル メキシコ トルコ 南アフリカ ロシア 株価 債券 (価格) インフレ上昇 シナリオ 為替 ・新興国の回復が (対円レート) 出遅れる中 インフレ率上昇 REIT ハイイールド (価格) (注)矢印は、前月号からの方向性の変化を示す。豪州、ブラジル、メキシコ、南ア、ロシアの株価は前回の「上昇基調」から「緩やかな上昇基調」に変更、中国、アセアン、インド、トルコの株価は前回の「上昇基調」か ら「緩やかな下落基調」に変更、アセアン、インド、ブラジル、南アの為替(対円レート)は前回の「上昇基調」から「緩やかな上昇基調」に変更、米日欧のREITは前回の「下落基調」から「緩やかな上昇基調」に変更。 (出所)野村證券投資情報部作成 今後3年間の 緩やかな下落基調 下落基調 上昇基調 緩やかな上昇基調 大幅調整 大まかな方向性 月刊 資産管理 2016年2月号 9 シナリオの分析(2) ~デフレ再燃シナリオでの金融市場の想定~ デフレ再燃シナリオで想定される金融市場の天気図 米国 日本 欧州 (ユーロ圏) 資源国・新興国 中国 豪州 アセアン インド ブラジル メキシコ トルコ 南アフリカ ロシア 株価 債券 (価格) デフレ再燃 シナリオ 為替 ・世界的に景気下 (対円レート) 振れ、デフレ圧力 の再燃 REIT ハイイールド (価格) (出所)野村證券投資情報部作成 今後3年間の 大まかな方向性 上昇基調 緩やかな上昇基調 緩やかな下落基調 下落基調 大幅調整 月刊 資産管理 2016年2月号 10 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 2016年初から世界的にリスク資産の価格下落が続いている 年初来の主要株価指数と商品市況の変化 年初来の主要通貨の対ドルレートの変化 豪ドル 金 トルコリラ センセックス(インド) NYダウ 4.3 英ポンド -9.5 -12.6 独DAX 5.2 4.3 -7.9 3.7 ブラジルレアル -13.2 3.5 インドルピー ボベスパ 2.7 -13.8 人民元(オフショア) 日経平均 上海総合 0.5 ユーロ -15.9 -0.3 -23.5 円 原油(WTI) (%) -25.0 -15.0 -5.0 (注)2015年末を基準に、2016年1月20日までの変化率を表記。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 5.0 (%) →米ドル高 -2.7 -4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 (注)2015年末を基準に、2016年1月20日までの変化率を表記。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 11 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 各国の政策を巡る不透明感がリスク回避の背景 VIX指数と米国株 (%) 90 4つの「C」への懸念は、米国の利上げペースと関連 (ドル) 22000 08/10/27 80.1 NYダウ(右軸) 80 20000 VIX指数(左軸) 70 18000 16016 60 10/5/20 45.8 50 11/8/8 48.0 16000 15/8/24 40.7 14000 40 12000 30 10000 26.05 20 8000 10 6000 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ①「China」中国(株価、人民元、経済) ②「Crude Oil」原油(価格、産油国の 経済・通貨) ③「Currency」通貨(新興国の資本・通 貨政策、ドル高の米国企業業績への悪 影響) ④「Credit」信用(ハイイールド債等) 米国の利上げペース(金融引締め 度合)と投資資金の落ち着きどころ に対する不透明さが根底に (年) (注)VIX指数は、S&P500指数のオプション価格を元に算出されるボラティリティ・イン デックスで、指数の上昇は株価変動が大きくなる予想を反映する。VIX指数は「恐怖 指数」とも呼ばれている。データは日次で、直近値は2016年1月19日。 (出所)CBOE及びS&Pデータより野村證券投資情報部作成 (出所)野村證券投資情報部作成 世界的にリスク回避的な動きが続いているが、「恐怖指数」と言われるVIX指数は、昨年8月ほどは上昇していない。 現状は、米国の利上げペースが不透明なうえに、4つの「C」とへの懸念が複合している状況と整理できる。 月刊 資産管理 2016年2月号 12 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ①Chinaへの懸念は「資本流出と景気底割れの悪循環」 人民元と上海株 人民元切り下げの周辺諸国のGDPへの影響 (人民元/1米ドル当たり) (ポイント) 5.9 6000 上海総合指数 15/6/12 (右軸) 6.0 5166 人民元高 5000 6.1 人民元/米ドル (左軸) 6.3 6.4 4000 人民元安 3000 6.5 15/8/11 16/1/18 人民元 2913 対米ドル1.9% 切り下げ 16/1/18 6.58 6.6 6.7 6.8 13 14 15 2000 1000 16 (年) (注)データは日次で、直近の値は16年1月18日。図中の値の上は(年/月/日)。15年 8月10日の1米ドル=6.21人民元から16年1月18日の同6.58人民元まで、約5ヶ月で 6.0%の元安となっている。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 16年 修正幅 修正幅 アジア諸国・地域等の実質GDP成長率への影響(%) アジア(除く中国) 6.2 15年 -0.1 -0.4 日本 0.0 -0.3 香港 0.2 -1.5 インドネシア 0.0 -0.3 タイ -0.1 -0.4 豪州 0.0 -0.2 インド 0.0 -0.1 (注1)人民元が15年8月11日に切り下げられる前から15年末までに対米ドルで20% 減価し、16年はその水準近辺で推移すると仮定した場合(人民元相場は15年8月10 日に1米ドル=6.21人民元、15年末1米ドル=7.45人民元と想定。16年1月18日現在、 1米ドル=6.58人民元)。 (注2)その場合、アジア主要国・地域の実質GDPが15年8月11日以前の野村證券 の予想(従来予想値)から修正される幅を示す。 (注3)原油価格の前提は、ブレント原油価格が15年末までに1バレル=35ドルとなり、 16年はその水準が続くと想定。 (出所)野村證券「アジアスペシャルレポート:中国元切り下げの影響」(15年8月24 日)より野村證券投資情報部作成 中国政府の為替政策の不透明感を背景に中国からの資金流出懸念が台頭し、株価下落と人民元安が連動した。 人民元が対米ドルで20%切り下げという極端な仮定を置いたとしても、香港を除いてアジア地域への景気への影響は大きくないと見込ま れる。 月刊 資産管理 2016年2月号 13 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 中国は経常収支黒字の中で資本流出懸念が生じている 中国の外貨準備と経常収支 人民元下落に対する中国人民銀行のスタンス 中国人民銀行声明(16年1月7日) (億ドル) (兆ドル) 4.0 15年8月11月の制度改革により、人民元の対ドルレー トはより市場実勢を反映したものになり、人民元レート 基準値の合理性が高まっている。 人民元の対ドルレート基準値は、前営業日の終値、市 場の需給動向、通貨バスケットを参考にして決定して おり、上下双方向に変動する。 16年初来の人民元安傾向は米追加利上げ期待や他 通貨の変動を反映したものであり、通貨バスケットでみ ると、合理的水準で安定している。 2,000 外貨準備 (左軸) 3.0 1,500 経常収支 (右軸) 2.0 1.0 1,000 500 0.0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 0 (年) (注)データは外貨準備が月次で、直近の値は15年12月末。経常収支が四半期で、 直近の値は15年7-9月期。 (出所)ブルームバーグ、中国人民銀行等より野村證券投資情報部作成 同行首席エコノミストの見解(16年1月11日) 人民元の対ドルレートは通貨バスケットを参考にする 程度を高めていく。 為替制度に対する透明性と信頼性が確立され、市場参 加者が通貨バスケットに順応するようになれば、為替 介入の規模と頻度は減少していく。 (注)中国人民銀行は人民元の対ドルレート基準値を発表し、中心値の±2%が当 日の許容変動範囲となる。 (出所)中国人民銀行より野村證券投資情報部作成 中国からの資本流出懸念が台頭しているが、中国の経常収支は黒字で自然体で資本流出を懸念する状況ではない。 通貨当局は人民元安(資本流出)を容認しているわけではなく、当局のスタンスが浸透すれば資本流出(懸念)にも歯止めがかかろう。 月刊 資産管理 2016年2月号 14 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 中国経済は投資主導から消費主導への構造転換を進め軟着陸へ 中国の実質GDP成長率見通し 中国の実質GDP成長率の寄与度別内訳 (前年比、%) 12 中国実質GDP成長率 11.2 (野村證券予想) (前年同期比、%ポイント) 12 純輸出 総固定資本形成 最終消費支出 実質GDP成長率 11 10.4 10.7 10 9.9 10 9.9 9.5 9 8 9.8 6 8.9 8 7.7 7 6 4 7.9 8.1 7.3 6.8 6.6 6.9 7.3 2 5.8 0 5.6 5 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) (注)データは暦年で、直近の実績値は15年。16年以降は野村国際(香港)による、 16年1月20日時点の予測。 (出所) 中国国家統計局、野村国際(香港)より野村證券投資情報部作成 -2 12 13 14 15 (年) (注)データは四半期ベースで、直近は15年10-12月期。GDP成長率および需要項目 別寄与度は年初来ベース。 (出所)中国国家統計局、CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 15年10-12月期の実質GDP成長率は前年比+6.8%と7-9月期の同+6.9%から僅かに減速したが、通年では+6.9%と政府目標の +7.0%前後をほぼ達成した。 経済構造調整に伴う景気下振れ圧力に対応して、追加的な財政政策を中心とする総需要刺激策の発動が期待される。野村では、17 年にかけて緩やかな景気減速基調が続くと予想している。 月刊 資産管理 2016年2月号 15 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 構造調整に伴う減速圧力は続く一方で、個人消費は堅調に推移 中国の主要月次経済指標 中国の固定資産投資の内訳 (年初来、前年同期比、%) 30 (前年比、%) 25 小売売上高 都市部固定資産投資 鉱工業生産 全体 製造業 不動産 インフラ関連 25 20 20 15 15/12 11.1 15/12 10.0 15/12 5.9 10 5 0 13 14 15 (年) (注1)データは月次の前年比伸び率で、直近値は15年12月。 (注2)都市部固定資産投資は年初来累積値。 (出所) 中国国家統計局、CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 15 10 5 0 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 (年/月) (注)データは年初来の前年同期比伸び率で、直近値は15年12月。 (出所)中国国家統計局、 CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 15年12月の小売売上高は前年同月比+11.1%と所得増加を背景に堅調に拡大している。一方、鉱工業生産は構造調整に伴う川上 部門の減産を主因に減速基調で推移。都市部固定資産投資も不動産投資の落ち込み等から緩やかな鈍化傾向にある。 中国政府は景気下振れリスクに対応して、既に財政出動による景気下支え策を発動している。固定資産投資の内訳をみると、不動 産投資の大幅な減速をインフラ関連投資が補う形が鮮明となっている。 月刊 資産管理 2016年2月号 16 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 企業収益は二極化傾向にあるが、不良債権カバー率は依然十分な水準 中国本土A株企業の純利益伸び率の推移 不良債権と貸倒引当金カバー率の推移 (前年同期比,、%) 80 全業種(除く5業種) (兆元) 3.0 銀行 60 (比率) 292% 300% 263% 287% 構造調整4業種(鉄鋼、非鉄金属、石油化学、鉱業) 2.5 191% 貸倒引当金のカバー率(右軸) =[貸倒引当金/不良債権額] 40 2.1 21.1 20 2.0 2.2 2.3 250% 230% 貸倒引当金(左軸) 0 2.1 1.5 200% 不良債権額(左軸) -20 1.1 1.0 150% 1.0 1.0 -40 1.2 0.8 0.6 -60 -62.8 -80 10 11 12 13 14 15 (年) 100% 0.5 0.0 11 (注1)データは半期ベースで、上海と深セン上場の全A株企業が対象。15年は1-9月期。 (注2)全業種(除く5業種)の5業種は銀行と構造調整4業種。 (出所)Windより野村證券投資情報部作成 12 13 14 15 50% (年) (注)データは四半期ベースで、直近は15年7-9月期。 (出所) CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 中国で過剰供給能力の調整が進展し始める中、構造調整4業種の収益の落ち込みが鮮明となっている。また、景気減速や金利自由 化を背景に銀行セクターの増益率も鈍化傾向にある。一方で、その他の業種の増益率は比較的堅調に推移している。 他方、景気減速や構造調整を背景に不良債権額は増加傾向にあるものの、15年9月末時点で同債権額に対する貸倒引当金は1.9倍 と依然十分な水準にある。 月刊 資産管理 2016年2月号 17 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 シャドーバンキングが信用不安をもたらすリスクは限定的 シャドーバンキングの内訳と銀行融資との比較 中国のシャドーバンキングの構造 その他(左軸) 銀行融資(93.8兆元) 証券会社商品(左軸) 信託商品(左軸) 銀行預金(137.9兆元) 銀行理財商品(左軸) シャドーバンキング(GDP比、右軸) (兆元) 120 100 銀行融資(GDP比、右軸) 146.4 130.6 (%) 160 140 120 80 91.0 60 40 20 0 100 80 57.5 7.8 5.2 10.9 16.7 11.0 割引手形(2.9兆元) 社債(13.47兆元) 銀行理財商品(15.0兆元) 預 金 者 ・ 投 資 家 信託商品(15.6兆元) 証券会社資産管理商品(11.0元) 銀行引受手形(6.3兆 元) 信託貸付(5.4兆元) 基金会社理財商品等(9.1兆元) 60 委託貸付(10.4兆元) 40 企 業 ( 不 動 産 を 含 む ) ・ 地 方 融 資 平 台 15.6 20 10.0 15.0 13年末 直近 リース(4.0兆元)、信用保証会社(2.6兆元)、 小口貸付会社(1.0兆元)、等 0 シャドーバンキング (注)シャドーバンキングとは、銀行の預金・融資を経由しない、融資や投資資金の流れの 総称。直近のデータは、銀行理財商品は14年末、信託商品と証券会社資産管理商品は15 年9月末、その他のデータは概ね15年9月末、または12月末時点。 (出所)野村資本市場研究所、日本銀行より野村證券投資情報部作成 (注)時期は左図の(注)の「直近のデータ」を参照。 (出所) 野村資本市場研究所より野村證券投資情報部作成 金融機関を経由しない投融資であるシャドーバンキングは拡大傾向にあるとみられるが、銀行融資を依然下回っている。 シャドーバンキングの仕組み上、金融機関が負うリスクは極めて限定的である。また、返済満期が到来した地方融資平台の債務を地 方債に借り換えるスキームが15年から施行・促進されており、地方融資平台の当面のリスクも限定的とみられる。 月刊 資産管理 2016年2月号 18 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 中国の追加金融緩和余地は依然大きい 中国の預金準備率の推移 中国の政策金利とマネーサプライの推移 (%) 25 (前年比、%) 35 マネーサプライ(M2、左軸) (%) 8 1年物貸出基準金利(右軸) 20 野村 予想 17.5 30 7 25 6 20 5 15 4 10 3 15.5 15 5 10 10 11 12 13 14 15 16 (注)データは月次で、直近値は15年12月末時点。 (出所)中国人民銀行、 CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 (年) 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 2 16 (年) (注)データは月次で、直近は16年1月20日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 中国の預金準備率(大手行向け)は15年初から2.5%ポイント引き下げられた。野村では、16年も四半期毎に0.5%ポイントずつ追加 引き下げが実施されると予想している。 中国では14年11月以降、金融緩和局面入りしているが、川上部門を中心にデフレ圧力は依然根強い。中小企業や農業関連企業向 け融資の拡大を促す追加金融緩和策等が打ち出されると見込む。マネーサプライの前年比伸び率は足元で回復傾向をみせている。 月刊 資産管理 2016年2月号 19 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 財政政策の発動余力は十分にあり、中高速成長の維持は達成可能 中国の財政赤字の推移(GDP比) 中央経済工作会議で決定された主な目標 中央経済工作会議の主な決定事項 (%) 0 ① 積極的かつ段階的な過剰生産能力の解消 ② 企業コストの低減 法人関連減税 -1 社会保険関連負担の軽減 -1.5 ③ 住宅不動産在庫の解消 -2 -2.0 ④ 総需要刺激策 -2.1 積極財政政策を一段と強化する -3 -2.8 -3.0 -3.0 野村證券予想 ⑤ 金融リスクの防止・回避 -4 12 13 14 15 16 穏健な金融政策の機動性を高める 17 (年) 地方政府の債務問題の緩和(融資平台による銀行借入 の地方債への転換促進等) 違法な投資ファンド等の取り締まり強化 (注)15年は野村国際(香港)推定値、16年と17年は同予想値。 (出所)CEICデータベース、野村国際(香港)より野村證券投資情報部作成 (注)中央経済工作会議は16年の経済政策運営方針等について討議・決定する会議 で、15年12月18~21日に開催された。 (出所)中国国務院、各種報道より野村證券投資情報部作成 中国財政部は15年9月に「一連の積極財政策を強化し経済の安定的運行を促進する」との方針を打ち出しており、今後、政策効果の 顕在化が期待される。また、一般政府債務残高は他国と比較すると低水準にあり、財政余力は十分ある。 15年12月に開催された「中央経済工作会議」では、16年の主な政策目標として、構造改革の推進等とともに積極財政策を一段と強化 することおよび金融政策の機動性を高めることが盛り込まれた。 月刊 資産管理 2016年2月号 20 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ②原油価格は、イラン増産の影響への懸念もあったが底入れは遠くない 米国の稼働原油掘削施設数と原油価格 世界の原油需要、供給、原油価格の推移と予想 (基) (ドル/バレル) 1900 1800 1700 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 110 100 90 (米ドル/バレル) 150 125 100 75 50 25 0 (百万バレル/日) 100 80 70 原油価格(WTI) 野村證券予想 (百万バレル/日) 2.50 供給(左軸) 需要(左軸) 供給過剰 90 1.25 80 0.00 60 50 40 米国での原油掘削施設(リグ)数(左軸) 30 WTI先物価格(期近物、右軸) 20 10 11 12 13 14 (注)データは週次で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 15 16 (年) 予想 70 -1.25 需給較差 (右軸) 60 00 02 04 06 08 10 12 14 16 -2.50 (年) (注1)データは四半期(原油価格は四半期末)で、直近値は15年7-9月期(原油価 格は同期末)。 (注2)予想は、需要はIEA、供給は①OPEC(石油輸出国機構)以外の世界の原油 生産はIEA予想、②OPEC原油生産をIEA推定の15年7-9月平均の水準で横這い、 ③イランが2016年1-3月期に日量50万バレル、4-6月期に更に日量20万バレル増 産とした場合の合計。原油価格予想は野村證券経済調査部。 (出所)IEA(国際エネルギー機関)、ブルームバーグ、野村證券経済調査部より野 村證券投資情報部作成 原油価格は急落後に反発したが、それに伴って米国の稼働原油リグ数が一時上昇するなど供給も増加しやすく、加えて今後イラン 産原油が供給過剰を強めるのではないかとの懸念から、原油価格の下落に拍車がかかりやすかった。 イランの原油増産により需給均衡への時間はかかるが、供給過剰のピークは16年前半となる見込みで、価格底入れは遠くない。 月刊 資産管理 2016年2月号 21 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 エネルギー業界の投資削減の直接効果は限定的と見込まれる 世界の石油・天然ガス業界の設備投資動向 米国の原油価格の家計所得と設備投資への影響 (億ドル) 家計 8,000 野村證券予測 7,000 原油価格の所得効果 年率1520億ドル エネルギー消費の25%の節約 -17% 14年6月以降の原油価格下落による、消費の節約額 6,000 -20% 5,000 -4% 4,000 エネルギー産業関連設備投資 原油価格下落による設備投資の抑制 3,000 年率 2,000 -860億ドル 約50%の投資抑制 14年前半以降の原油価格下落による、設備投資の減少額 1,000 野村證券では追加で10%~20%の設備投資減少も あり得ると予測 0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) (注)予測の前提となる原油価格(北海ブレント)は、15年が55米ドル/バレル、16 年が60米ドル/バレル、17年以降が70米ドル/バレル。 (出所)ノムラ・インターナショナルplcより野村證券投資情報部作成 原油価格(1バレル当たり) 14年上半期平均 100.9ドル 15年下半期平均 44.2ドル (注)試算は一定の前提の元に計算されたものであり、変動もあり得る。上記節約効果、投 資抑制効果は、14年上半期時点と比較したもの。 (出所)ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野村證券投資情報部 作成 商品市況の下落で、業界は設備投資削減に動いている。世界の名目GDPは約77兆ドル(2014年)であり、1,000億ドル程度の同業 界の設備投資減額の直接的な影響は大きくない。 原油価格の下落により、エネルギー関連産業の設備投資は大きく落ち込んでいる。一方、家計のエネルギー消費を大きく節約させ る効果があり、金額で見れば、家計への恩恵が大きい。今後、こうした節約分が消費にあらわれることが期待される。 月刊 資産管理 2016年2月号 22 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 原油価格下落は、産油国の財政と経常収支を圧迫する環境 主要産油国の財政・経常収支の均衡財政価格 15年 イエメン リビア オマーン バーレーン イラク サウジアラビア カタール UAE イラン クウェート 一般政府財政収支 均衡 対GDP比 原油価格 % ドル -8.5 314.0 -79.1 269.0 -17.7 94.7 -14.2 107.0 -23.1 81.0 -21.6 105.6 4.5 55.5 -5.5 72.6 -2.9 87.2 1.2 49.1 経常収支 対GDP比 億ドル -18 -185 -102 -15 -209 -224 97 98 16 114 % -5.3 -62.2 -16.9 -4.8 -12.7 -3.5 5.0 2.9 0.4 9.3 外貨準備 均衡 原油価格 ドル 億ドル 時点 24 IMF 246.1 758 15/9 84.5 188 15/6 72.5 55 15/6 65.0 500 IMF 63.8 6421 15/9 46.1 385 15/3 44.8 775 15/10 42.7 1290 IMF 41.1 274 15/9 (注)外貨準備以外はIMFの15年10月時点のIMF(国際通貨基金)の見通し。外貨準備の時点は(年/月)で、「IMF」はIMFの見通し。 (出所)IMF、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 現状の原油価格では、主要産油国の一般政府財政収支や経常収支は赤字となり、長期間続くと産油国の財政状況及び経済への 悪影響が表面化する可能性がある。 通貨を米ドルとペッグ(連動)させている中東産油国は多く、サウジアラビア・リヤルなどに売り圧力が強まっているが、サウジアラビ アの外貨準備水準などを考慮すると、当面は通貨制度の維持に問題は無いと見込まれる。 月刊 資産管理 2016年2月号 23 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 中東の地政学リスクは、「減産への足並みの乱れ」と解釈されている 中東主要国:地政学リスクと宗派 中東地域に関連した出来事 ロシア 日時 (ロシア正教会) クルド人居住地 トルコ (スンニ派、世俗主義) イラン シリア (アサド政権) レバノン シーア派組織 「ヒズボラ」 (シーア派) (シーア派政権) 過激派組織 「イスラム国」(IS) エジプト (スンニ派) スンニ派 シーア派 その他 イラク サウジアラビア (スンニ派) 主な出来事 15年7月14日 イラン核開発協議最終合意 7月24日 トルコ、過激派組織「イスラム国」 (IS)を初空爆 9月30日 ロシア、シリア空爆開始 10月10日 トルコ首都アンカラで大規模な自爆 テロ 11月13日 パリ同時多発テロ 11月24日 トルコ、ロシア軍機撃墜 11月28日 ロシア、トルコに経済制裁発令 16年1月2日 サウジアラビア、国内シーア派指導 者処刑 1月3日 サウジアラビア、イランと断交 1月16日 欧米諸国、対イラン経済制裁解除 イエメン (政府と反政府勢力が対立) (注1)シリアのアサド政権はシーア派の系統と言われるアラウィー派の政権で、イランやロシアの支援を受けている。 (注2)シーア派組織「ヒズボラ」はレバノンで活動する政治・武装組織で、イランが支援していると言われている。 (注3)国名横の円グラフは宗派別人口構成。 (注4)すべてを網羅しているわけではない。 (出所)野村證券経済調査部、米国中央情報局(CIA)、各種資料より野村證券投資情報部作成 中東地域では、シリア内戦、過激派組織「イスラム国」(IS)、宗派対立などから地政学リスクが高まっている。 従来は、同地域の地政学リスクは原油価格の押し上げ要因であったが、サウジアラビアとイランの対立は産油国間の足並みの乱 れと見なされ、押し下げ要因となっている。しかし、両国間の直接的な戦闘勃発などのリスクは想定されていない。 月刊 資産管理 2016年2月号 24 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ③米国の利上げで新興国通貨への懸念が広がるが、通貨ごとに格差 新興国通貨の対ドルレートの推移 (2013年5月22日=100) 110 105 2013年5月22日 バーナンキ前FRB議長議会証言 100 95 90 85 インドルピー(82.1) 80 インドネシア ルピア(70.5) 75 70 65 メキシコペソ(68.0) トルコリラ(60.8) 南アランド(57.0) 各国通貨高・米ドル安 60 ブラジル レアル(50.4) 55 50 45 13/5 各国通貨安・米ドル高 13/8 13/11 14/2 14/5 14/8 14/11 15/2 15/5 15/8 15/11 (年/月) (注1)バーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、2013年5月22日の議会証言で「量的緩和」の減額の可能性について言及した。 (注2)データは日次で、直近値は16年1月19日。通貨名の後のカッコ内は、2013年5月22日を100としたときの各通貨の対ドルレートを示す。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 13年5月にバーナンキFRB議長(当時)が量的緩和の縮小に言及して以降、新興国通貨の対ドルレートは総じ て軟調に推移しているが、各国の経済・政治情勢の要因を反映してパフォーマンスに格差が生じている。 月刊 資産管理 2016年2月号 25 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 新興国の外貨建て債務に対する懸念 主要新興国における外貨建て債務の対GDP比推移 (対GDP比、%) 90 現状 14年3月時点 新興国のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ) 95年以降の変動幅 (ベーシスポイント) 700 80 600 70 60 500 ブラジル 400 南アフリカ 300 ロシア トルコ 50 40 30 20 10 200 タイ 中国 スペイン インド 中国 インドネシア タイ ロシア 南アフリカ ブラジル メキシコ マレーシア トルコ ウクライナ ベネズエラ 0 (注1)外貨建て債務は①外貨建て債券(当該新興国に所在すると考えられる発行体によ るオフショア発行を含む。ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)によ る集計)、②クロスボーダー(国境をまたぐ)与信(新興国にとっては銀行借入)の合計 (注2)①は15年11月時点、②は15年6月末時点。 (出所)BIS(国際決済銀行)、IMF(国際通貨基金)、ブルームバーグ、NSI「国際金融為 替フラッシュ:新興国の『隠れ外貨債務』」(16年1月7日)より野村證券投資情報部作成 100 0 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注1)1ベーシスポイント=0.01%。 (注2)データは週次で、直近値は16年1月第2週。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 主要新興国では、ベネズエラ、ウクライナのように外貨建て対外債務の対GDP比率が急上昇しているケースや、トルコのように同比 率が過去最高に達した例が見られるが、多くの国における同比率はなお制御可能にみえる。 ブラジルなどでは、その国固有の要因でCDSが上昇しているが、11年夏の米国格下げや欧州債務危機の拡大時とは異なり、すべ ての地域のCDSが拡大している訳ではない。 月刊 資産管理 2016年2月号 26 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 新興国企業はドル資金調達を増やしたが、償還時リスクを分散している 国際市場における新興国債券の純発行額 (億ドル) 1,200 国際市場で発行された債券の平均償還年限 (償還までの平均年数) その他 先進国 新興国 12 米ドル 1,000 10 ユーロ 800 8 600 6 400 200 4 0 2 -200 08 09 10 11 12 13 (注)対象は非金融企業。データは半期で、直近値は15年上半期。 (出所)BIS(国際決済銀行) 資料より野村證券投資情報部作成 14 15 (年) 0 08 09 10 11 12 13 14 15 (発行年) (注1)発行体は非金融企業本社。 (注2)15年は1-6月期が対象。 (出所)BIS(国際決済銀行) Quarterly Review September 2015より野村證券投資情 報部作成 09年以降の世界的な低金利環境の中で、新興国企業は主に米ドル建ての資金を積極的に調達してきた。新興国通貨の下落やド ル金利の上昇観測を背景に、新興国企業の資金繰りを問題視する見方がある。 しかし、新興国企業は年限を長期化させ、償還時のリスクを分散している。先進国と遜色ない年限で資金調達ができていること等を 勘案すれば、直ちに新興国企業が資金繰りに行き詰るリスクは低いと判断される。 月刊 資産管理 2016年2月号 27 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 米国利上げへの耐性を強める主要新興国 日米英ユーロ圏銀行の国際与信活動の推移 (前年差、兆米ドル) 輸入金額に対する外貨準備の比率 07年 +4兆4,544億ドル (ヵ月分) 5 英国 20 ユーロ圏 4 1996年 米国 3 2014年 16 日本 2 2003年 15年1-6月期 +7,169億ドル 合計 1 12 8 0 4 -1 0 13年 -1兆6,713億ドル -2 85 90 95 00 05 10 15 (年) (注)データは、当該国に親会社・本社を置く銀行の当該国からの対外与信残高 (海外向け与信)および、国外支店の非現地通貨建て現地向け与信残高の前年 差を示す。データは年次。直近の値は15年1-6月期。 (出所)国際決済銀行(BIS)資料より野村證券投資情報部作成 ブラ ロシア タイ インド インド マレー メキ 南アフ トルコ ネシア シア シコ リカ ジル (注)各年末時点の外貨準備が当該年の輸入金額の何ヶ月分にあたるのかをみたもの。IMF は過去に最低3ヵ月分以上の外貨準備の保有が必要と指摘したことがあり、2005年の通商 白書などでもこの目安が引用されている。 (出所)IMF(国際通貨基金)、Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 貸出しなどの銀行与信は、損失が拡大した場合、大規模な金融システム問題が生じるリスクがある。ただし、先進国の国際的な与 信活動はようやく拡大が定着するかという段階で、大きく与信が膨れ上がっている印象は無い。 新興国が輸入する際の支払い能力と考えられる外貨準備の残高については、一般的に輸入金額の3ヵ月分以上の保有が必要と言 われている。多くの新興国で、97年のアジア通貨危機や04年米利上げ時よりも、その水準は高い。これらの国々では米国の利上げ に対する耐性は高まっていると言えよう。 月刊 資産管理 2016年2月号 28 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ④ハイ・イールド債(1)スプレッドが拡大 ハイ・イールド社債の対ベンチマーク国債スプレッド推移 12 ハイ・イールド社債の市場規模推移 (億米ドル) (%) 米ドル建て ユーロ建て 新興国 16,000 11 新興国 ハイ・イールド 社債指数 10 9 米ドル建て ハイ・イールド 社債指数 8 7 ユーロ建て ハイ・イールド 社債指数 6 5 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 4 2,000 3 10 11 12 13 14 15 16 (年) 0 09 (注1)ハイ・イールド社債利回りの対ベンチマーク国債利回りとのスプレッド(ベン チマーク国債は米ドル建て、新興国市場は米国5年物国債、ユーロ建てはドイツ5 年物国債)。 (注2)ブルームバーグ・ハイ・イールド社債指数で、米ドル建ては新興国市場の債 券は除外、ユーロ建ては欧州債券市場発行が対象、新興国は新興国市場発行の 米ドル建て社債が対象。 (注3)データは日次で、直近値は16年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 10 11 12 13 14 15 (年末) (注1)ブルームバーグ・ハイ・イールド社債指数の時価総額規模。 (注2)米ドル建てハイ・イールド社債は新興国市場の債券は除外、ユーロ建てハイ・ イールド社債は欧州債券市場発行が対象、新興国ハイ・イールド市場社債は新興 国市場発行の米ドル建て社債が対象。 (注3)データは年末で、09年は10年1月29日時点。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ハイ・イールド社債の、安全資産である国債に対する利回りスプレッド(リスクを勘案した上乗せ金利)が急拡大している。クレジット (信用)に対する懸念が強まっている。 米国を中心にハイ・イールド社債の市場規模は近年急拡大した。米国が金融引き締めに向かうとの観測から企業が資金調達を急 いだためと推察される。また、欧州、新興国でも市場規模が拡大している。 月刊 資産管理 2016年2月号 29 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ハイ・イールド債(2)流動性の問題は表面化していない ハイ・イールド社債指数の業種別ウェイト 米国の主要ハイ・イールド債ETFの株価・時価総額の推移 (米ドル) (億米ドル) 業種名 通信 一般消費財・ サービス 米国 欧州 18.3 新興国 16.6 16.8 3.3 4.6 3.9 5.5 エネルギー 13.5 6.0 27.6 素材 17.6 24.1 35.3 ヘルスケア 8.2 3.6 0.1 工業 5.6 11.4 3.8 10.3 15.8 13.6 情報技術 4.2 1.0 0.6 公益 3.1 0.9 2.6 合計 100.0 100.0 100.0 生活必需品 50 時価総額(左軸) 7.6 14.5 金融 150 (注1)対象はブルームバーグ・ハイ・イールド社債指数。ブルームバーグ・新興国 ハイ・イールド社債指数は新興国市場発行の米ドル建て社債が対象。 (注2)ウェイトは時価総額の構成比。 (注3)データは16年1月15日時点。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 125 45 100 40 75 35 株価(右軸) 50 30 25 25 0 08 09 10 11 12 13 14 15 20 16 (年) (注1)スパイダー・バークレイズ・ハイ・イールド債ETF。 (注2)データは週次で、直近値は16年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 新興国、米国では、石油会社などを主要な発行体とするエネルギーセクターの存在感が大きい。原油価格の下落が信用リスクを高 めているが、リスクは主にエネルギー、資源セクターに集中しており、金融システム全般に波及する可能性は低いとみられる。 主要ハイ・イールド債ETFの価格も下落しているが、流動性の乏しい債券などでストレスが高まっているが、それ以外では市場の流 動性に問題は生じていない。また、時価総額は依然として高水準を維持している。 月刊 資産管理 2016年2月号 30 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 米国の政策金利引き上げでドル調達コスト上昇への懸念が高まっている 米ドル指数とLIBOR 今後の米国金融政策見通しと前回の利上げパターン (%) (ポイント) 100 0.7 米ドル指数 (左軸) (%) 6.0 5.5 5.0 95 0.6 米ドル高 4.5 15年末 16年末 17年末 18年末 長期 15年12月 0.25-0.50% 1.25-1.50% 2.25-2.50% 3.00-3.25% 3.50% 04年6月以降の 利上げ局面 FOMCメンバーの 見通し(中央値) 4.0 90 0.5 米ドル安 85 0.4 3.5 (レンジ) 3.0 2.5 80 0.3 2.0 野村見通し 17年末1.50-1.75% 1.5 75 0.2 0.1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16年末0.75-1.00% 0.5 米ドルLIBOR3ヶ月 (右軸) 70 13/1 1.0 16/1 (年/月) (注)LIBORはロンドン銀行間金利で、海外で取引されている通貨に関する金利の指標。 データは日次で、直近の値はLIBOR3ヶ月が16年1月19日、ドル指数が16年1月8日。ド ル指数はFRB(米連邦準備制度理事会)が公表する、米ドル名目実効為替レートのメ ジャーの値。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 0.0 15/12 (年/月)) 16/6 16/12 17/6 17/12 18/6 18/12 (注)政策金利はフェデラル・ファンドレートの誘導目標。FOMC(米連邦公開市場委員 会)メンバーによる年末時点の見通し(最新は15年12月16日)の中央値を線形補完して いる。FOMC見通しのレンジは、中央傾向値の考え方に基づき、最も高い・低い3人の 見通しを除いた範囲。04年6月以降の利上げパターンの表示にあたっては、最初の利 上げ(04年6月))のタイミングを15年12月に揃えて表示している。野村見通しは16年1 月22日時点のノムラ・セキュリテーズ・インターナショナル・インク(NSI)による予測。 (出所)米FRB(連邦準備制度理事会)資料より野村證券投資情報部作成 資源・新興国やハイ・イールド債への懸念の根底には、米国の利上げでドル資金調達が困難になるのではないかという懸念がある。 しかし、FRBは景気などを配慮しながら緩やかな政策金利の正常化を進める方針で、それが浸透すれば市場の視点はファンダメンタルズに回 帰しよう。 月刊 資産管理 2016年2月号 31 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 日本銀行の政策に対する不透明感も円買いを後押し シカゴ先物市場での投機筋の円買いポジション (10億ドル) 15 (円/ドル) 75 円高 ドル安 円買い ドル売り持ち超過 10 「量的・質的金融緩和」を導入して2年半が経過し ましたが、当初は、デフレからの脱却や2%の「物 価安定の目標」の実現について、多くの人が懐疑 的でした。今なお、懐疑的な方々もいらっしゃるか もしれません。しかし、「量的・質的金融緩和」のも とで、景気・物価のトレンドは明確に反転しました。 これは、疑問を挟む余地のない事実です。 ローマ時代に遡ることわざに、“Fortune favors the bold”、「幸運は勇者を好む」がありますが、転換期 を迎えた現下の日本経済に非常に相応しい金言で あると思います。 最後に、日本銀行として、デフレから脱却し、2%の 「物価安定の目標」を実現するために「できることは 何でもやる」ということを改めてお約束して、締めく くりとしたいと思います。 80 85 ドル円ポジション (左軸) 5 日本銀行黒田総裁講演(2015年12月24日)より 90 95 0 100 -5 105 -10 110 ドル円相場 (右軸) 115 -15 円売り(円キャリー) ドル買い持ち超過 -20 円安 ドル高 120 125 -25 06/1 07/1 08/1 09/1 10/01 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 130 16/1 (年/月) (注)非商業部門の建玉を投機ポジションと想定。データは週次で、ドル円ポジ ションは2016年1月12日、ドル円相場は1月19日。 (出所)Commodity Futures Trading Commission より野村證券投資情報部作成 (出所)日本銀行より野村證券投資情報部作成 15年12月の、日本銀行による「補完措置」が、量的・質的金融緩和の限界を示すものではないかという不透明感から、グローバ ルなリスク回避に際して円買いが強まった側面もある。 しかし、日本銀行は経済動向がデフレ脱却の道筋から外れると判断した場合には追加の措置を取る可能性が高く、市場の不 透明感も後退しよう。 月刊 資産管理 2016年2月号 32 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 世界経済の緩やかな成長は2017年にかけて続く 実質GDP成長率見通し(暦年ベース) 世界の主要地域における実質輸入 (2014年平均値=100) 110 (%) 9.0 2015年(予) 8.0 7.8 8.0 7.3 2016年(予) 7.0 6.9 2017年(予) 6.0 4.0 3.0 100 5.8 5.6 95 4.8 5.0 3.4 3.0 3.1 4.2 4.2 90 85 2.3 1.6 2.1 1.8 1.8 1.5 2.0 105 1.4 1.5 1.2 1.5 1.0 日本 新興国 80 ユーロ圏 0.6 0.5 その他先進国 75 0.0 米国 70 -1.0 全世界 先進国 新興国 米国 日本 ユーロ圏 中国 インド (注)野村證券の見通しは2016年1月22日時点の暦年ベース(中国の15年は実績)。 (出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 10 11 12 13 14 15 (年) (注)季節調整済み。実質輸入は数量面の動きを示す。データは月次で、直近値は 2015年10月。 (出所)オランダ経済政策分析局資料より野村證券経済調査部作成 世界経済全体は、きわめて緩やかではあるが景気回復傾向を続ける見通し。中国経済は減速見通しだがインドなど他の新興国が加速。 世界各地域の輸入が下げ止り、回復に向かいつつあることは世界的な需要の下げ止りを示唆している。 月刊 資産管理 2016年2月号 33 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 グローバルに企業の景況感は下げ止まりを模索 製造業の景況感(PMI)の推移 サービス業の景況感(PMI)の推移 (ポイント) 65 (ポイント) 60 15/12 52.1 55 60 50 55 15/12 49.3 45 15/12 54.1 50 15/12 49.6 45 40 先進国・製造業PMI指数 35 先進国・サービス業PMI指数 40 新興国・サービス業PMI指数 新興国・製造業PMI指数 35 30 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)製造業PMI指数は、定義上50%が製造業景気の好不況の分岐点。データは月次 で、直近値は2015年12月。 (出所)野村證券経済調査部作成 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)サービス業PMI指数は、定義上50%がサービス業景気の好不況の分岐点。デー タは月次で、直近値は2015年12月。 (出所)野村證券経済調査部作成 新興国の景況感は製造業で下げ止りつつあり、グローバル経済の下振れリスクが軽減されてきた。 背景は、堅調な米国内需の継続と中国国内景気の減速一服。 月刊 資産管理 2016年2月号 34 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 米国景気は内需主導で回復継続 米国の実質GDP成長率見通し 米国の製造業の景況感と消費者心理 (%) (前年比、%) 5 4.1 65 3.8 3.4 3 2.8 2 2.8 2.4 2.3 2.5 2.7 1.8 1.8 2.2 1.8 1 0 0.9 60 120 55 15/12 96.5 2.1 1.6 50 80 15/12 48.2 45 -0.3 -1 40 -2 35 -3 160 (野村證券予想) 米国実質GDP成長率 4 (1985年=100) 70 (注)データは暦年で、直近の実績値は2014年。2015年以降はノムラ・セキュリ ティーズ・インターナショナル・インク(NSI)による、2016年1月22日時点の予測。 (出所)米商務省、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野 村證券投資情報部作成 ISM製造業指数(左軸) 消費者信頼感指数(右軸) -2.8 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) 40 30 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(年) (注)ISM指数は、定義上50%が景気の好不況の分岐点。データは月次で、 直近値は2015年12月。直近の値の上は(年/月)。 (出所)米ISM、コンファレンス・ボードより野村證券投資情報部作成 野村證券では、米国の実質GDP成長率は15年末から16年前半にかけて一時的に減速した後、16年後半から17年前半にかけて年率 +2%前後での堅調推移を予想。 製造業の景況感にはやや陰りも見られるが、内需の主役である消費者心理は、堅調な景気回復基調と整合的。 月刊 資産管理 2016年2月号 35 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 雇用回復を背景に米国消費は堅調だが物足りなさも 米国の雇用者増加数と失業率 米国の家計貯蓄率と消費支出 (万人) (%) 60 09/10 10.0 05/7 37.5 11.0 10/5 51.8 40 15/12 29.2 20 9.0 (前年比、%) 7 6 実質消費支出 (前年比、左軸) 家計貯蓄率(右軸) 12/12 11.0 5 (%) 11 10 15/11 2.5 9 4 8 3 7 7.0 2 6 -40 15/12 5.0 1 5 -60 5.0 0 4 15/11 5.5 3 0 -20 03/6 6.3 失業率(右軸) -80 07/5 4.4 09/3 -82.4 -1 -2 非農業部門雇用者(前月差、左軸) -100 3.0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)データは月次で、直近値は2015年12月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)米労働省より野村證券投資情報部作成 -3 05/7 1.9 2 1 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)データは月次で、直近値は2015年11月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)米商務省、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 低水準の失業率が示すように米国の雇用情勢は堅調で、家計の所得環境は順調に改善している。 現状では原油価格の低下が貯蓄に回るなどの理由で家計貯蓄率が低下していないが、今後こうした資金が消費を押し上げると期待 される。 月刊 資産管理 2016年2月号 36 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 足元の賃金の伸びがインフレ率の押し上げにつながるかが注目点 米国の時間当たり賃金と個人消費デフレーター 米国の小売売上高と自動車販売 (前年比、%) (%) 4.0 10.0 07/06 3.8 8.0 3.5 (万台) 01/10 2180 06/1 7.9% 時間当たり賃金 (前年比) 3.0 15/12 2.5 07/2 2.4 2.5 11/7 6.3% 2400 05/7 2050 6.0 15/12 3.2% 4.0 2000 2.0 15/12 1722 0.0 1600 2.0 1.5 -2.0 1.0 12/10 1.5 10/12 0.9 0.5 15/11 1.3 -4.0 -6.0 個人消費支出デフレーター(前年比) 0.0 07 08 09 10 11 12 13 14 自動車販売(季調済 み年率、右軸) 09/7 -5.2% (年) 1200 09/2 904 -8.0 15 (注) データは月次で、時間当たり賃金の直近値は2015年12月、個人消 費デフレーターの直近値は2015年11月。時間当たり賃金は民間雇用者。 図中の値の上は(年/月)。 (出所)米労働省、商務省より野村證券投資情報部作成 小売売上高前年比 (除く自動車・ガソリ ン、左軸) 800 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)データは月次で、直近値は2015年12月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)米商務省、Ward’s Automotive Group、ブルームバーグより野村證券 投資情報部作成 12月の雇用統計では賃金上昇率の加速が市場予想を下回った。今後、インフレ期待の押し上げにつながるのであれば、結果的 に消費の後押しにもなると期待される。 月刊 資産管理 2016年2月号 37 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 住宅投資は堅調だが、設備投資には回復感がみられない 米国の中古住宅販売戸数と新築住宅着工戸数 (万戸) (万戸) 750 700 米国製造業の設備稼働率と資本財受注 05/9 725 270 06/1 227.3 650 中古住宅販売戸数(左軸、 季節調整済み年率、万戸) 600 13/7 538 550 13/11 110.5 500 350 300 00/4 設備稼働率(右軸) 82.4 08/4 690.4 700 650 150 600 15/12 114.9 00/6 685.0 450 80 15/12 76.5 15/11 693.4 550 10/7 345 (注)データは月次で、直近値は新築住宅着工が2015年12月、中古住宅販売 が2015年12月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 09/6 66.9 70 60 500 30 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 07/12 80.8 01/12 73.6 90 新築住宅着工戸数(右軸、 季節調整済み年率、万戸) 09/4 47.8 (%) 750 210 15/12 546 450 400 (億ドル) 800 02/1 471.9 09/4 463.2 国防および 航空機を除 く資本財受 注(左軸) 50 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)データは月次で、直近値は設備稼働率が2015年12月、資本財受注 が2015年11月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)FRB(米連邦準備制度理事会)および米商務省より野村證券投資 情報部作成 家計の所得環境の改善と低金利継続などを受けて、住宅投資の回復傾向は崩れていない。 設備稼働率は足元で頭打ちとなっており、設備投資の回復感は強まりにくい。 月刊 資産管理 2016年2月号 38 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 米大統領選挙に向けた政治的な動きが注目を集めやすくなる 米国の今後の主要日程~大統領選に向けて~ 16年 2月1日 月 米大統領選挙、予備選開始 2月中 予算教書演説 オバマ大統領が来年度(16年10月~17年9月)の予 算編成方針を発表。 3月1日 火 スーパー・チューズデー 民主党・共和党の大統領選に関する予備選挙や党 員集会の集中日。 3月15日 火 FOMC(連邦公開市場委員会:~16日) 経済見通し発表と議長記者会見が実施される。 4月26日 火 FOMC(連邦公開市場委員会:~27日) 6月14日 火 FOMC(連邦公開市場委員会:~15日) 経済見通し発表と議長記者会見が実施される。 共和党全国大会(クリーブランド:~21 日) 民主党全国大会(フィラデルフィア:~ 7月25日 月 28日) 7月26日 火 FOMC(連邦公開市場委員会:~27日) 9月20日 火 FOMC(連邦公開市場委員会:~21日) 7月18日 月 米大統領選挙に向けたNYダウ平均株価の動き 大統領選挙前年の 大統領選挙の前年末 A 大統領と所属政党 (年) B (ドル) 月 金 日 水 火 金 水 第1回大統領候補者討論会 2017年度予算成立期限 第2回大統領候補者討論会 第3回大統領候補者討論会 大統領選挙、議会選挙 次期大統領・次期副大統領の就任式 連邦政府債務残高の法定上限 A→B (年/月/日) (ドル) (%) 984.80 966.09 10.6 13.3 共和党 共和党 ニクソン フォード 1971 1975 890.20 1972/11/6 852.41 1976/11/1 民主党 共和党 カーター レーガン 1979 1983 838.74 1980/11/3 1258.64 1984/11/6 937.20 11.7 1244.15 ▲1.2 共和党 レーガン 1987 1938.83 1988/11/8 2127.49 9.7 共和党 民主党 ブッシュ クリントン 1991 1995 3168.83 1992/11/3 5117.12 1996/11/5 3252.48 6081.18 2.6 18.8 民主党 クリントン 共和党 ブッシュ(ジュニア) 1999 2003 11497.12 2000/11/7 10453.92 2004/11/2 10952.18 ▲4.7 10035.73 ▲4.0 共和党 ブッシュ(ジュニア) 民主党 オバマ 2007 2011 13264.82 2008/11/4 12217.56 2012/11/6 9625.28 ▲27.4 13245.68 8.4 民主党 オバマ 経済見通し発表と議長記者会見が実施される。 9月26日 9月30日 10月9日 10月19日 11月8日 17年 1月20日 3月15日 大統領選挙日 勝(回) 7 敗(回) 4 63.6 勝率(%) 平均騰落率 (%) 3.5 (注)選挙日は11月第1月曜日の次の火曜日、該当日が休場の場合は前日株価。 (出所)各種報道資料等より野村證券投資情報部作成 (注)すべてを網羅しているわけではない。 (出所)各種報道資料等より野村證券投資情報部作成 今後、FRBによる利上げペースの見極めと11月の大統領選挙に向けた政治の動きが注目される。 過去、大統領選挙に向けては株式市場は堅調となったケースが多かった。 月刊 資産管理 2016年2月号 39 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ユーロ圏経済は緩やかな回復基調が続く ユーロ圏主要国の実質GDP成長率見通し (前年比、%) 6 ユーロ圏主要国実質GDP成長率 3.9 3.9 4 ユーロ圏諸国の財政政策による名目GDPへの影響 (野村證券予想) (%ポイント) 0.4 景気押し上げ効果 0.2 0.0 2 0.2 0 -0.4 (15年→16年→17年) ドイツ(1.5%→1.3%→1.6%) フランス(1.1%→1.0%→1.2%) イタリア(0.7%→1.1%→1.0%) -6 -0.4 野村證券予測 -0.6 -2 -4 -0.2 スペイン(3.2%→2.9%→2.5%) -0.8 -1.0 -1.2 11 12 13 14 15 16 (年) 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) (注)データは暦年で、直近の実績値は2014年。2015年以降はノムラ・インター ナショナルplcによる、2016年1月15日時点の予測。 (出所)OECD、ノムラ・インターナショナルplcより、野村證券投資情報部作成 (注1)数字はユーロ圏諸国の財政政策による名目GDPへの影響。 (注2)野村證券金融市場調査部試算。ヒアリングに基づく。2013年は欧州委員会13年5 月発表春季経済見通し、2014年、2015年、2016年は予算案などにそれぞれ基づく。 2015年は独仏伊西蘭の財政措置による影響、2016年は独仏伊西蘭ベルギーの財政 措置による影響による。 (出所)欧州委員会より野村證券金融市場調査部作成 ユーロ圏全体としては緩やかな景気回復が続いている。2016年にかけ、難民流入対応などの財政支出の拡大がユーロ圏景気 を押し上げる可能性。 月刊 資産管理 2016年2月号 40 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 企業や消費者の景況感は安定、ユーロ圏内需は底堅く推移しよう ドイツの景況感と鉱工業生産 (前年比、%) 15.0 ドイツ鉱工業生産 (左軸) 06/12 10.0 113.9 ユーロ圏の消費者マインドと小売売上 10/4 07/3 14.4 9.0 (2005年=100) 120 11/2 114.9 115 5.0 110 0.0 105 -5.0 100 15/12 108.7 15/11 0.1 95 -15.0 90 10/11 消費者信頼感 -9.8 指数(右軸) 10/3 +1.1% 2 15/12 -5.7 -10 1 15/11 +1.6% 0 -20 小売売上 (左軸) -1 -10.0 (プラス-マイナス、%) 0 (前年同月比、%) 07/5 -1.3 4 07/3 +3.1% 3 -2 -30 -3 -20.0 -25.0 IFO景況感指数 (右軸) 09/03 84.4 09/04 -22.1 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 85 -4 80 (年) (注)データは月次で、直近値はドイツ鉱工業生産が2015年11月、IFO景況感指数が 2015年12月。IFO景況感指数は、ドイツのIFO経済研究所がドイツ企業約7000社を対 象に実施する景況感調査。図中の値の上は(年/月)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 12/4 12/11 -2.9% -26.4 09/2 -4.7% 09/3 -34.9 -5 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 -40 16 (年) (注1)消費者信頼感指数は欧州委員会による消費者サーベイ。 (注2)データは月次で、直近値は小売売上が2015年11月、消費者信頼感指数が 2015年12月。図中の値の上は(年/月)。 (出所)欧州委員会、Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 ユーロ圏経済の牽引役のドイツの鉱工業生産は、新興国景気の減速などで伸びが鈍化しているが、先行指標の景況感は堅調。 ユーロ圏の消費者マインドは比較的高水準で、消費全体が底堅い動きとなることが期待される。 月刊 資産管理 2016年2月号 41 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 経済面・政治面で国ごとにばらつきがある点には留意 ユーロ圏主要国の失業率 16年の欧州政治リスク (%) 30 英国、16年後半にEU(欧州連合)残留・ 離脱の国民投票実施の見通し。国民投 票で残留決定がメインシナリオ。 25 24.6 直近値 21.4 20 15 10 10.1 9.1 5 12.4 11.3 4.5 0 ユ ー ロ 圏 ド イ ツ フ ラ ン ス イ タ リ ア ギ リ シ ャ ス ペ イ ン ポ ル ト ガ ル (注)データのレンジは99年から直近までの月次の最大値と最小値の範囲を示し、直 近値はギリシャが15年9月、それ以外は同年11月。 (出所)欧州統計局資料より野村證券投資情報部 ポルトガル、15 年10月総選挙 を受けて、緊縮 財政緩和派の 政権に交代。 スペイン、15年 12月20日の総選挙で過 半数を確保した政党はなく、2大政党が 大連立を組まない場合は、16年春に再 選挙の可能性。 ギリシャ、当面の債務不履行リスクは後 退、同国向け債務の元本削減がカギ。 今後は①16年3月14日、IMFによる既存 の支援終了、②16年7月のギリシャ国債 の大量償還が注目。 スペイン、カタルーニャ州独立 のハードルは高い。15年12月2 日、同国憲法裁判所が同州の 独立手続き決議を違憲と判決。 (注)16年1月20日現在。すべての情報を網羅しているわけではない。 (出所)欧州統計局資料より野村證券投資情報部作成 ユーロ圏全体では失業率は低下も、国によって水準や方向感が異なり、バラつきがあることが示唆される。 16年の政治リスクとして、英国のEU(欧州連合)残留・離脱の国民投票、スペインの再選挙の可能性、ギリシャの国債大量償還 などが挙げられる。市場に一時的にインパクトを与える可能性があるが、欧州市場全体に与える悪影響は限定的であろう。 月刊 資産管理 2016年2月号 42 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 ECBの量的緩和継続でユーロ安傾向続く 欧州中央銀行(ECB)の総資産とドイツ株(DAX指数) (ポイント) 12/6 3102 11,000 9,000 3500 (%ポイント) 2.5 3000 2.0 (10億ユーロ) 15,000 13,000 米独金利差(10年国債)とドル/ユーロ 15/3 11966 ECB(欧州中央銀行) 総資産額(右軸) 07/12 8067 2500 11/4 7514 08/8 1449 14/9 2038 5,000 09/2 3843 1.1 米ドル/ユーロ(逆目盛、右軸) 1.5 1.2 16/1 9664 DAX指数(左軸) 7,000 16/1 1.09 ↑ ドル高ユーロ安 ドル安ユーロ高 ↓ 15/12 2767 08/12 11/4 2043 1894 (1ユーロ当たり米ドル) 1.0 1.0 1500 0.5 1.4 1000 0.0 1.5 500 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 1.3 米独金利差(10年国債、左軸) 11/9 5502 3,000 16/1 1.49 2000 (年) (注)データは月次で直近値はECBの総資産が2015年12月。DAX指数が2016 年1月19日。直近値の値の上は(年/月)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 -0.5 10 11 12 13 14 15 16 1.6 (年) (注)金利差は10年国債利回りの格差(米国-ドイツ)。データは週次で直近値 は2016年1月15日。直近値の値の上は(年/月)。 (出所)ブルームバーグデータより野村證券投資情報部作成 ECBのQE(量的緩和、15年3月開始)にも関わらず、物価上昇率が再度マイナスとなったことや、中国景気の下振れリスクが 意識されることで、ECBは16年前半にもQEの長期化やマイナス金利拡大を含む緩和策の強化を行う見通しに。 金融政策の方向感の違いから米独金利差は再度拡大すると見込まれ、ユーロ安・ドル高傾向は続きやすいと想定される。 月刊 資産管理 2016年2月号 43 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 日本経済は16年度にかけては回復軌道が明確化へ 製造業の景況感と鉱工業生産 日本の実質GDP成長率見通し (前年比、%) 4 日本実質GDP成長率 3.5 (野村證券予想) 3 2.3 2 1 2.0 (%) 65 (前年同月比、%) 30 鉱工業生産 (前年同月比、左軸) 20 60 2.1 1.9 1.8 1.8 15/12 55 52.6 10 1.5 1.5 0 1.1 1.0 0 0.4 -0.4 50 0.9 -0.2 15/11 45 1.7 -10 -20 -1 -1.0 -2 40 日本・製造業PMI(右軸) -30 35 -40 30 -2.0 -3 -4 -3.7 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年度) (注)データは年度で、直近の実績値は2014年度。2015年度以降は12月8日時点の予測。 (出所)内閣府、野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 -50 25 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注) 製造業PMI指数は、定義上50ポイントが製造業景気の好不況の分岐点。デ ータは月次で、製造業PMIの直近値は2015年12月、鉱工業生産は2015年11月。 (出所)経済産業省、野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 16年度にかけては設備投資や消費、輸出が景気のけん引役になり、日本経済の回復軌道が明確化すると予想される。デフレ 脱却が明確になれば、17年度の消費税率の再引き上げで14年度の二の舞になる事態は避けられよう。 新興国景気の下振れ懸念で鉱工業生産は一時足踏みしたが、景況感の改善に支えられて立ち直りの兆し。 月刊 資産管理 2016年2月号 44 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 設備投資と対米輸出が景気の牽引役となることが期待される 機械受注と民間企業設備投資 日本の地域別輸出入動向 (前年同期比%) (前年同期比%) 15 30 実質民間企業設備(左軸) 機械受注(船舶・電力を除く民需、右軸) 10 20 15/10-12 +6.8 5 10 0 0 -5 -10 15/7-9 -0.3 -20 -10 -15 -30 -20 構成比 前年比 前年同月比 2014年 2013年 2014年 2015年 9月 10月 (%) 11月 (%) (%) (%) (%) (%) 輸出総額 米国 中国 アジア(除く中国) EU その他 100.0 18.7 18.3 35.8 10.4 16.9 9.5 15.6 9.7 8.1 7.7 6.9 4.8 5.6 6.0 3.5 8.4 3.0 0.5 10.4 -3.5 0.4 5.1 -7.7 -2.2 6.3 -3.6 -3.7 5.4 -11.5 -3.3 2.0 -8.1 -9.0 9.5 1.1 輸入総額 米国 中国 アジア(除く中国) EU その他 100.0 8.8 22.3 22.6 9.5 36.8 14.9 12.0 17.4 12.6 15.2 15.6 5.7 10.7 8.6 6.2 6.8 2.5 -11.0 0.0 1.1 -3.0 -3.4 -29.2 -13.3 1.2 -5.1 -4.0 8.8 -34.9 -10.2 6.1 -5.7 -10.2 21.1 -26.7 -40 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)データは四半期で、実質民間企業設備の直近値は2015年7-9月期、機械受注の 実績の直近値は2015年7-9月期、点線は10-12月期の見通し調査の結果。 (出所)内閣府より野村證券投資情報部作成 (出所) 財務省より野村證券投資情報部作成 企業業績回復や人手不足を受け、更新投資や省力化投資のニーズが設備投資の回復を支えることになろう。 日本の輸出金額は、円安効果は剥落してきたものの、堅調な景気が続く米国や内需の底堅いEU向けが支える形が続いてい る。 月刊 資産管理 2016年2月号 45 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 所得環境の改善を背景に徐々に消費底上げが明確化へ GDPベースの雇用者所得と民間消費支出 日本銀行の消費者物価見通しと長期金利 (前年同期比%) 6 1 「 物% 価の 安 定 の メ ド 」 導 入 (%) 2.5 4 15/7-9 +1.6 2 2.0 1.5 15/7-9 +0.7 0 1.0 0.5 -2 2 % の 物 価 安 定 目 標 導 入 量 的 ・ 質 的 金 生鮮食品を除く 融 消費者物価指数 緩(コアCPI)ベースの 和 物価上昇率 開 始 日本銀行政策委員の コアCPI大勢見通し 17年度 1.8% 16年度 1.4% 0.9% 10年 国債 利回 り 1.0% 15年度 野村證券の 0.1% コアCPI見通し 0.1% 0.0 -4 15/11 -0.5 実質雇用者所得 (前年比) 0.1% 実質民間消費支出 16/1 0.21% (年) -1.0 -6 05 06 07 08 09 10 11 12 (注)データは四半期で、直近値は2015年7-9月期。 (出所)内閣府より野村證券投資情報部作成 13 14 15 (年) 11 12 13 14 15 16 17 18 (注)消費者物価上昇率の見通しは、消費税率引き上げの影響を除くベース。「大勢 見通し」は、9人の政策委員の見通しの中央値で、15年10月30日時点。野村證券の 見通しは15年12月8日時点。消費者物価の直近値は2015年11月、10年国債利回り の直近値は2016年1月19日。 (出所)総務省、日本銀行より野村證券投資情報部作成 労働市場のひっ迫は、企業業績の改善と相まって徐々に家計の所得環境を下支え、消費底上げにつながろう。 期待インフレ率の上昇、定着を後押しするために、当面日本銀行は現行の緩和姿勢を続けよう。市場の動向を受けてインフレ見通 しに変化があれば追加緩和も。 月刊 資産管理 2016年2月号 46 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 米国景気回復がドル堅調を通じて日本の株価上昇傾向を後押し 米日金利差(2年国債)とドル円レート (%ポイント、米国金利-日本金利) 1.2 日米金利差(左軸) 1.0 ↑ ドル高円安 ドル安円高 ↓ 中期的なEPS水準と日経平均株価の見通し (円/1米ドル当たり) 130 125 24000 120 22000 115 20000 117.0 0.8 0.87 ドル円レート(右軸) 110 105 0.6 100 95 0.4 (円) 26000 90 25000 23000 (円) 2,200 日経平均株価 (左軸) 2,000 18000 16000 17147 1506 14000 1393 75 09 10 11 12 13 14 15 16 1,600 1,400 10000 1,200 1株当り利益(EPS) 8000 (右軸) 12 13 14 15 16 1,000 800 80 0.0 1,800 12000 85 0.2 1650 17 600 (年) (年) (注)金利差は2年国債利回りの格差(米国-日本)。データは週次で直近値は 2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (注)日経平均株価の16年1月以降の数値は野村證券エクイティ・リサーチ部予想。1 株当たり利益(EPS)は12ヶ月の先行予想で、例えば16年1月の1,393円は16年1月か ら12ヶ月間の利益合計の見通し。16年末までは東洋経済新報社予想。中期的なEPS 水準(1,650円)は、年率10~15%程度で利益(EPS)が増加すると仮定して計算。 データは月末値で、直近は16年1月15日時点。 (出所)野村證券エクイティ・リサーチ部、日本経済新聞社、東洋経済新報社などより 野村證券投資情報部作成 日米の金融政策の先行きへの不透明感から、金利差の拡大に支えられた円安傾向が後戻りしたが、米国金融政策の見通しが 安定するにつれ、日本の金融緩和が継続する可能性を踏まえると、日米金利差は先行き拡大が見込まれ、円安・ドル高要因に。 企業業績の回復を受けて、中期的な株価の上昇基調が継続することが期待される。 月刊 資産管理 2016年2月号 47 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 企業業績回復に対して日本株にはまだ割安感も 日経平均株価のPER(株価収益率)の推移 (円) 27500 25000 12ヶ月後EPS基準 予想PER 22500 20000 日経平均株価 PBR(株価純資産倍率)とROE(自己資本利益率)の関係 +1σ 21.9倍 平均 16.5倍 -1σ 13.2倍 17500 (PBR、倍) 2.5 2.0 1.5 15000 12500 10000 7500 5000 2500 0 1.0 12.3倍 日経平均予想EPS(円) 16.3期 1,278 17.3期 1,416 12ヵ月後EPS 1,393 16/1/18 ROE 9.10% PBR 1.18倍 0.5 0.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(年末) (先行き12ヵ月予想ROE、%) (注)平均、±1σ(標準偏差)は00年以降のもの。統計的に±1σの範囲内に68%の確 率で収まると言われている。なおPERは、業績の変化により大きくレンジが変動するた め、数値のレンジが狭いPERの逆数である益利回りを使い、平均値や標準偏差を計算 し、その結果を再度PERに変換している。そのため、PERの±1標準偏差と平均値との 乖離幅は同一となっていない。直近値は16年1月15日時点。なお、12ヶ月後EPSは、今 期の残存期間に応じて、今期/来期の予想EPSを時間按分したもの。予想は東洋経済 新報社。 (出所)東京証券取引所、日本経済新聞社、東洋経済新報社、野村證券エクイティ・リ サーチ部より野村證券投資情報部作成 (注)各点が03年以降、毎月末時点のTOPIXの予想ROEとPBRを示し、直近の値の み16年1月18日。予想ROE=予想EPS(12か月先行)/実績BPS。予想EPSは野村予 想を東洋経済新報社予想で補完して作成。赤の領域はROEが7%以上、青は7%未 満の場合である。 (出所)東洋経済新報社資料より野村證券エクイティ・リサーチ部作成 企業業績の回復を受けて、中期的な株価の上昇基調が継続することが期待される。PER(株価収益率)は2000年以 降の平均値を大きく下回っており、今後の企業によるROE(自己資本利益率)改善意欲も後押しとなろう。 月刊 資産管理 2016年2月号 48 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 企業業績の下振れが限定的なら、配当利回りでみても株価には割安感 日米欧のEPS予想(ボトムアップ、コンセンサス) (%) (前年比または前年度比、%) 20 15 米国株の配当利回りと10年債利回り 2014 2015(予) 2016(予) 2017(予) (ポイント) 6.0 2200 S&P500(右軸) 米国10年国債利回り(左軸) 5.5 5.0 10 7.6 6.3 7.0 5 11/9/4w 利回り差 0.56% 4.5 1600 4.0 0 16/1/20 利回り差 0.50% 3.5 -5 2000 1859 1800 1000 2.5 800 2.49 600 1.98 400 2.0 米国 欧州 日本 09/3/1w 利回り差 0.68% 1.5 1.0 (注)米国:S&P500、日本:TOPIX、欧州:FTSEのインデックスベースのコンセンサス予想。 日本のEPS成長率は年度ベース、日本以外は暦年ベース。2015年12月23日時点。 (出所)東京証券取引所、S&P、FTSE、トムソン・ロイターより野村證券エクイティリサー チ部作成 1200 3.0 -10 -15 1400 06 07 08 09 10 S&P500配当利回り(左軸) 11 12 13 14 15 200 16 (年) (注)データは週次(図中の1wは第1週、4wは第4週)で、直近値は2016年1月20日。 配当利回りは予想ベース。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 市場の混乱が景気・業績に与える影響を見極める必要はあるが、2016年の企業業績は安定的な伸びが期待できる。 米国では、過去10年で2回、S&P500の配当利回りと10年債利回りの逆転が株価の反転とその後数年にわたる上昇につながった。 月刊 資産管理 2016年2月号 49 メインシナリオ「世界的に景気回復は緩やかで、インフレ率は低位安定」 欧州でも日本でも、配当利回り面での株価の割安感が際立つ ドイツ株の配当利回りと10年債利回り 日本株の配当利回りと10年債利回り (%) 6 (ポイント) 09/3/1w 利回り差 2.66% 5 11/9/1w 利回り差 3.06% 13000 DAX指数(右軸) 11000 4 3 (%) (ポイント) TOPIX(右軸) 3.5 1800 12/6/1w 利回り差 1.86% 09/3/1w 利回り差 1.55% 3.0 1600 9391 9000 2.5 1338 1400 3.52 2.0 2.12 1200 7000 1.5 2 16/1/20 利回り差 1.91% 5000 1.0 DAX指数 配当利回 り(左軸) 1 0 06 07 08 09 10 11 3000 16/1/20 利回り差 3.04% ドイツ10年国債 利回り(左軸) 12 13 14 0.48 1000 15 16 (年) (注)データは週次(1wは第1週)で、直近値は2016年1月20日。配当利回りは予想 ベース。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 TOPIX配当 利回り(左軸) 0.5 07 08 09 10 11 12 13 800 600 日本10年国債 利回り(左軸) 0.0 06 1000 14 15 0.21 400 16 (年) (注)データは週次(1wは第1週)で、直近値は2016年1月20日。配当利回りは予想 ベース。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ドイツ株でも、配当利回りと10年国債の利回り差が、過去に株価が反転・上昇に転じた時と同様の水準に。 日本株でも、リーマンショック後の安値時や、アベノミクス前の株価最安値時の利回り差を上回る状況に。 月刊 資産管理 2016年2月号 50 野村マンスリー投資会議要約(2016年1月18日) 先進国での低水準の長期金利と株高が続くというこれまでのメインシナリオを継続 年初来、グローバル市場の不安定な状況の背景は FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによる政策金 利引き上げペースの予想が市場にとってタカ派的に映 っている中で、4つのC(China(中国)、Crude Oil (原油)、 Currency(通貨)、Credit(信用))のリスクを織り込んでい ること。ただし、今後も緩やかな成長と落ち着いたイン フレ率の組み合わせが続きやすく、結果としてグロー バルに金融緩和環境が継続しやすいことで、先進国で の低水準の長期金利と株高が続くというこれまでのメ インシナリオを継続する。 FRB(米連邦準備制度理事会)はデータ次第という姿 勢で、データが弱含む局面では利上げ先送りや停止 の可能性があり、行き過ぎた金融引き締めのリスクは 極めて小さい。 中国悲観論はやや行き過ぎ。経済は緩やかな減速過 程の中、投資主導から消費主導に転換。すでに財政 支出は積極化して景気安定に寄与している。 ユーロ圏では難民受け入れに伴う財政出動の効果で 16年前半の成長率は上振れの可能性もあるが、イン フレ期待が低下していることなどを考慮すると、ECB( 欧州中央銀行)は追加金融緩和へ。 日本経済は今後、賃上げ浸透や設備投資回復などで 再加速するとみるが、市場の不安定な状況を反映して 景気、インフレ率、株価の下振れリスクが高まると判断 した場合、日銀はETFやJ-REITの買い増しに加え、買 入れ資産の対象を地方債、社債に拡大し、量的緩和 を強化するとみられる。2016年度にかけては緩やかな 業績回復が続く中、企業統治改革期待などを踏まえる と、日本株の反転が期待され、日経平均株価の1年後 目標値を22,000円とする。 イランへの経済制裁解除が決まり供給過剰懸念は16 年前半に出尽くし、16年末の原油価格(WTI)を40~60 ドル/バレルと予想。 信用不安については、米国ではリスクはエネルギーセ クターに集中しており、システミックリスクに波及する可 能性は小さい。 米国企業決算などから米国経済の堅調さが確認され 自然体で市場が反転する可能性もあるが、FRBが景 気に配慮して利上げペースを緩やかにしたり、日銀が 追加緩和に踏み切ることで市場は反転へ。米国金利 の緩やかな上昇を背景にドル高円安基調に戻り、16 年末130円との想定を継続する。 これらを踏まえ、米ドル建て資産や日本株などに投資 妙味があろう。 月刊 資産管理 2016年2月号 51 <参考>株価・金利・為替の想定レンジ(2016年1月18日)① 前回会議(12月21日)より変化した項目 【株価】 前回会議(2015年12月21日)より変化した項目 1月15日 TOPIX 日経平均株価 S&P500 FTSEオール・ワールド欧州先進国 香港H株 1,402.45 17,147.11 1,880.33 176.39 8,236.28 安値 1,350 16,500 1,785 175 8,000 ~ ~ ~ ~ ~ 1年間 高値 2,000 24,000 2,250 225 12,000 1年後目標 1,825 22,000 2,250 225 11,500 (ポイント) 前回 1年後目標 1,900 23,000 2,245 225 10,500 (%) 直近1ヶ月間 の騰落率 -6.7 -7.6 -8.0 -6.5 -11.9 (注1)TOPIX、日経平均株価は1/15(金)終値。S&P500、FTSEオール・ワールド欧州先進国指数、香港H株は1/15(金)現地終値。 (注2)直近1ヶ月間の騰落率は15年12月15日~16年1月15日の期間。 (出所)野村證券エクイティ・リサーチ部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 【為替】 (円) 1月18日 米ドル/円 カナダドル/円 ユーロ/円 ポンド/円 豪ドル/円 ニュージーランドドル/円 インドルピー/円 100インドネシアルピア/円 ブラジルレアル/円 メキシコペソ/円 南アフリカランド/円 トルコリラ/円 ロシアルーブル/円 116.8 80.0 127.5 166.5 80.0 75.1 1.72 0.84 28.8 6.4 6.9 38.3 1.50 1年間 安値 114.0 78.0 124.0 165.0 77.0 73.0 1.69 0.81 25.0 6.4 6.0 34.0 1.27 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 1年間(前回) 高値 133.0 98.0 144.0 205.0 94.0 84.0 1.98 0.92 33.0 7.7 10.2 46.0 2.09 安値 119.0 87.0 124.0 179.0 84.0 76.0 1.76 0.85 30.0 7.0 8.0 40.0 1.70 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 高値 133.0 98.0 144.0 205.0 94.0 85.0 1.98 0.92 33.0 7.7 10.5 46.0 2.09 (%) 直近1ヶ月間 の騰落率 -3.9 -9.2 -4.0 -8.9 -8.3 -8.3 -4.8 -2.9 -8.0 -9.9 -14.5 -6.4 -13.5 (注1)為替レートは、1/18(月)7:30時点ブルームバーグより。 (注2)直近1ヶ月間の騰落率は15年12月15日~16年1月15日の期間。 (出所)野村證券金融市場調査部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 52 <参考>株価・金利・為替の想定レンジ(2016年1月18日)② 前回会議(12月21日)より変化した項目 【10年国債利回り】 (%) 期末値 1月18日 日本 (5年) 米国 カナダ ユーロ圏(ドイツ) 英国 豪州 ニュージーランド インド インドネシア ブラジル メキシコ 南アフリカ トルコ 0.221 0.004 2.035 1.153 0.472 1.662 2.631 3.268 7.807 8.503 16.332 6.234 9.742 11.130 Q1/16 0.50 0.10 2.30 1.30 0.50 2.00 2.90 3.55 7.50 16.20 6.10 8.10 10.25 Q2/16 0.65 0.20 2.50 1.40 0.60 2.20 3.00 3.60 7.40 16.25 6.15 7.90 10.50 Q3/16 0.70 0.25 2.25 1.50 0.65 2.25 3.10 3.65 7.40 16.30 6.20 8.10 10.00 Q4/16 0.80 0.35 2.50 1.60 0.75 2.45 3.20 3.70 7.40 16.35 6.25 8.40 9.50 1年後目標 0.80 0.35 2.65 1.65 0.77 2.45 3.25 3.75 7.50 16.35 6.25 8.75 9.50 前回 1年後目標 0.80 0.35 2.50 1.95 0.75 2.50 3.20 3.70 7.50 16.00 6.20 8.75 9.50 (%) 直近1ヶ月間 の騰落率 (債券価格) 0.7 0.1 2.0 2.8 1.5 2.4 1.5 2.3 -0.1 -7.5 0.9 -1.4 -2.0 (注1)10年国債利回りは1/18(月)7:30時点ブルームバーグより。 (注2)直近1ヶ月間の騰落率は15年12月15日~16年1月15日の期間。 (注3)1年後目標は17年1-3月期となり、前回の1年後目標(16年10-12月期)と時期が異なることから、網掛けの対象外とする。 (出所)野村證券経済調査部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ・P52、P53は16年1月18日の野村マンスリー投資会議における予測です。 ・ 野 村 マン スリ ー投 資 会 議 は 、グ ロ ーバ ル ・ リ サ ーチ の 見 方 を参 考 に しなが ら 、 中 期 的 な投 資 シ ナ リ オ を検 討 する 会 議 で す 。 当会議では、1年から3年程度を想定した投資戦略や、具体的な資産の見方について議論致します。 ・注意:中期の投資シナリオ及び、主要資産の1年先の予想値、1年間の想定レンジ等は、特定のリターンを保証するものではありません。 月刊 資産管理 2016年2月号 53 <参考>野村のマクロ経済予測表 実質GDP成長率(前年比、%) (暦年) 消費者物価上昇率(前年比、%) 2014年 2015年 2016年 2017年 2014年 2015年 2016年 2017年 政策金利(年末値、%) 経常収支(対名目GDP比、%) 2014年 2015年 2016年 2017年 0-0.10 0-0.10 0-0.10 2014年 2015年 2016年 2017年 日本 -0.1 0.6 1.2 0.5 2.7 0.8 0.8 2.1 0-0.10 米国 2.4 2.3 1.6 2.1 1.6 0.1 0.7 2.1 0-0.25 ユ ー ロ圏 0.9 1.5 1.4 1.5 0.4 0.0 0.2 1.2 0.05 0.05 0.05 0.05 カナダ 2.5 1.2 1.4 2.3 1.9 1.2 1.3 1.8 1.00 0.50 0.50 1.50 中国 7.3 6.9 5.8 5.6 2.0 1.4 1.9 2.0 5.60 4.35 3.85 3.85 2.1 2.5 3.2 3.0 豪州 インドネシア 2.6 5.0 2.3 4.7 2.4 5.2 2.4 5.6 2.5 6.4 1.5 6.4 1.5 4.2 2.2 4.8 2.50 7.75 2.00 7.50 1.75 7.00 2.25 6.50 -2.8 -3.0 -4.1 -1.9 -4.0 -2.3 -3.3 -2.8 インド 7.1 7.3 7.8 8.0 5.9 4.9 5.4 5..8 8.00 6.75 6.50 6.50 -1.3 -0.7 -0.5 -1.1 ブ ラ ジル 0.1 -3.6 -2.8 1.0 6.4 10.7 6.8 5.5 11.75 14.25 14.25 - -4.2 -3.5 -3.0 -2.5 メ キ シコ 2.3 2.6 3.5 3.8 4.1 2.1 3.6 3.2 3.00 3.25 3.75 4.50 -1.8 -2.7 -2.5 -2.8 トルコ 2.9 4.2 3.3 3.0 8.9 7.6 7.6 7.0 8.25 7.50 8.50 8.50 -5.8 -5.1 -4.8 -4.5 南アフ リカ 1.5 1.3 0.9 1.8 6.1 4.6 6.5 6.5 5.75 6.25 8.00 8.50 -5.4 -4.1 -4.7 -5.1 ロシア 0.6 -3.8 -1.0 1.3 7.8 15.5 7.7 5.7 17.00 11.00 9.00 6.25 3.2 5.1 4.4 3.8 0.25-0.50 0.75-1.00 1.50-1.75 0.5 3.4 4.1 3.9 -2.2 -2.4 -2.8 -3.1 2.0 2.8 2.5 2.4 -2.2 -2.9 -2.5 -2.2 (注1)政策金利は、日本:無担保オーバーナイト物レート、米国:フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準、ユーロ圏:主要リファイナンス金利、中国:1年物貸出基準金利、豪州:オフィシャ ル・キャッシュレート、インドネシア:1年物インドネシア銀行証券(SBI)レートの誘導目標、インド:レポレート、ブラジル:Selic誘導目標、メキシコ:翌日物銀行調達金利、トルコ:1週間物レポ レート、南アフリカ:翌日物レポ金利、ロシア:ロシア中銀レート(注2)消費者物価上昇率:ブラジルは各年10-12月期、メキシコは各年12月時点。(注3)太字は実績、予想は野村證券で16年1 月11日時点(16年1月19日発表の中国の15年実質GDPは反映。ブラジルの政策金利予想は16年1月21日時点で、17年予想は示されていない。米国は16年1月22日時点)。 (出所)野村證券「グローバル・エコノミック・アウトルック(2016年1月号)」、IMF(国際通貨基金)より野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 54 主要国・アセット市場の動向 ~世界の主要株価指数チャート~ 日米欧の株価推移 主要新興国の株価推移 (ポイント) (ポイント) 2,500 35,000 13/1/3 63,472 2,300 (ポイント) 250 230 FTSEオールワールド 欧州先進国 210 (左軸) 米S&P500 15/4/10 15/5/20 (右軸) 216 2,134 2,100 16/1/15 1,857 25,000 1,900 16/1/15 1,700 176 20,000 15/8/11 1,702 150 130 13/1/2 1,426 13/6/24 156 110 1,500 15,000 1,300 15/9/29 16/1/14 1,371 1,382 1,100 10,000 東証株価指数 90 70 13 15 16 (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 15/3/4 30,024 16/1/13 24,387 60,000 13/8/28 17,448 インド: 15/5/26 センセックス指数 14,962 16/1/15 37,986 (年) 40,000 30,000 (左軸) 20,000 13/6/25 8,641 香港H株指数 (左軸) 16/1/15 8,222 10,000 0 700 14 70,000 14/9/3 62,304 50,000 5,000 900 (右軸) 13/1/9 862 (右軸) 30,000 190 170 (ポイント) ブラジル: ボベスパ指数 0 13 14 15 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場) 。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 55 主要国・アセット市場の動向 ~世界の主要国長期金利チャート~ 主要先進国の長期金利推移 主要新興国の長期金利推移 (%) (%) 6 18 ブラジル 16 5 14 4 トルコ 12 南アフリカ 10 3 豪州 インドネシア 8 米国 2 インド 6 メキシコ カナダ 4 1 ドイツ 日本 0 13 14 15 16 (年) (注)対象は国債10年物利回りで、データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 2 0 13 14 15 16 (年) (注1)対象は国債10年物利回りでデータは日次(終値)で、直近値は2016年1月15 日。 (注2)ブラジル10年国債利回りのチャートは2013年8月から2014年1月までの期間 に、償還期間に見合う銘柄が存在しないため途切れている。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 56 主要国・アセット市場の動向 ~世界の主要株式市場のバリュエーション比較~ 主要国・地域・新興国株式のPER(最高・最低・直近値) PER(株価収益率)(倍) 40 35 35.0 (09/3) 30 28.3 (15/10) (07/10) 25 25.0 (99/4) (15/10) 23.2 23.3 19.2 (07/10) 20 16.9 17.2 (15/2) 15 15.0 10 17.2 16.2 14.8 (06/4) (05/11) 11.6 (12/5) 8.6 18.6 (13/10) 17.0 14.3 13.0 11.3 6.4 6.4 (08/10) 5 0 18.1 (07/11) 15.1 14.2 9.3 (08/10) (07/5) 9.6 9.4 (08/10) (08/11) 7.0 (08/10) (15/1) 9.8 9.4 7.1 8.1 5.4 (09/2) (08/11) (08/11) 6.7 5.2 2.4 (08/10) (08/12) 米 国 欧 州 日 本 香 港 H 株 豪 州 イ ン ド ネ シ ア イ ン ド ブ ラ ジ ル メ キ シ コ ト ル コ (注1)対象の株価指数と対象期間は以下の通り(カッコ内は後者)。米国:S&P500(86年1月~)、欧州:ストックス・ヨーロッパ600(05年9月~)、日本: TOPIX(03年1月~)、香港H株(香港上場の中国本土株)(05年4月~)、豪州:ASX200(05年5月~)、インドネシア:ジャカルタ総合(05年5月~)、イン ド:センセックス(05年5月~)、ブラジル:ボベスパ(06年11月~)、メキシコ:ボルサ(05年7月~)、トルコ:イスタンブール100種(05年9月~)、南アフリ カ:FTSE/JSEアフリカトップ40 (05年4月~)、ロシア:RTSI(ドル建て)(05年8月~)。 (注2)PERは12ヶ月後予想ベース。 (注3)データは月次で、直近値は16年1月19日時点で取得可能な最新データ。 (出所)野村證券エクイティ・リサーチ部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 南 ア フ リ カ ロ シ ア 最高値 直近値 最低値 カッコ内は(年/月) 月刊 資産管理 2016年2月号 57 主要国・アセット市場の動向 ~世界の主要株式市場の騰落率比較~ 直近まで12ヵ月毎の世界主要株価指数の騰落率 (騰落率、%) 60 13/14 50 14/15 15/16 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 -50 米国 欧州 日本 中国 カナダ 豪州 インド ネシア インド ブラ ジル メキ シコ トルコ 南アフ リカ ロシア (注1)対象の株価指数は以下の通り。米国:S&P500、欧州:FTSE先進国欧州(現地通貨建て)、日本:TOPIX、中国:香港H株(香港上場の中国本土株)、カナダ:ト ロント総合、豪州:ASX200、インドネシア:ジャカルタ総合、インド:センセックス、ブラジル:ボベスパ、メキシコ:ボルサ、トルコ:イスタンブール100種、南アフリカ: FTSE/JSEアフリカトップ40 、ロシア:RTSI(ドル建て)。 (注2)対象期間は、13/14が13年1月15日から14年1月15日、14/15が14年1月15日から15年1月15日、15/16が15年1月15日から16年1月15日まで。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 58 主要国・アセット市場の動向 ~世界の主要通貨の騰落率比較~ 直近まで12ヵ月毎の世界主要通貨の対円騰落率 (騰落率、%) 12/13 13/14 14/15 30 円安 20 10 0 -10 -20 -30 円高 -40 -50 米ドル ユーロ 中国 人民元 カナダ ドル 豪ドル インドネシ インド アルピア ルピー ブラジル メキシコ レアル ペソ トルコ リラ 南アフリ ロシア カランド ルーブル (注)対象期間は、13/14が13年1月15日から14年1月15日、14/15が14年1月15日から15年1月15日、15/16が15年1月15日から16年1月15日まで。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 59 月刊資産管理 2015年度注目アセットのパフォーマンス 2015年度注目アセットのパフォーマンス 組入れ日と価格 1 5 年度 5月号 6月号 8月号 9月号 10月号 11月号 12月号 注目アセッ ト 対象指数・ 通貨( 単位) 組入日 価格 1,618.84 直近の価格 パフォーマンス 16年1月15日 直近までの騰落 率(%) 日本株 TOPIX 15年4月24日 1,402.45 -13.4 メキシコペソ 1メキシコペソ当たり円 15年4月24日 日本株 TOPIX 15年5月26日 7.73 6.41 -17.1 1,659.57 1,402.45 -15.5 ブラジルレアル 1ブラジルレアル当たり円 15年5月26日 39.04 J-REIT 東証REIT指数 15年7月28日 1,756.92 ブラジルレアル 1ブラジルレアル当たり円 15年7月28日 36.81 28.90 -21.5 インド株 S&P・BSEセンセックス 15年8月25日 26,032.38 24,455.04 -6.1 豪ドル/円 1豪ドル当たり円 15年8月25日 84.71 80.27 -5.2 インド株 S&P・BSEセンセックス 15年9月25日 25,863.50 24,455.04 -5.4 豪ドル/円 1豪ドル当たり円 15年9月25日 84.70 80.27 -5.2 インド株 S&P・BSEセンセックス 15年10月27日 27,253.44 24,455.04 -10.3 豪ドル/円 1豪ドル当たり円 15年10月27日 86.64 80.27 -7.3 米国REIT FTSE NAREIT全REIT指数 15年11月25日 185.83 176.03 -5.3 豪ドル/円 1豪ドル当たり円 15年11月25日 89.01 80.27 -9.8 28.90 1,663.48 -26.0 -5.3 (注)騰落率は、組入れ日(冊子発行日)引け値から発行日前々週の週末引け値までを対象とする。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 60 今月の注目アセット 【豪ドル① 】 豪州株式・国債利回り・政策金利の推移 豪ドル相場の推移 (ポイント) (%) 7,000 12 S&P/ASX200指数 15/3/3 5,996 (左軸) 6,000 10 5,000 13/12/6 4.43 3,000 1.10 120 13/1/10 1.0598 13/4/10 105.201 豪ドル・円相場 14/11/21 102.123 (右軸) 110 8 1.00 100 6 0.90 90 10年国債利回り (右軸) 2,000 政策金利:オフィシャルキャッシュレート (右軸) 1,000 13 (円/1豪ドル当たり) 1.20 16/1/14 4,865 13/6/25 4,632 4,000 (米ドル/1豪ドル当たり) 14 15 15/2/3 2.282 2.0 16/1/15 80.27 4 0.80 2 0.70 (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (年) 80 豪ドル・米ドル相場 16/1/15 0.6864 0.60 13 70 (左軸) 豪ドル高 ↑ 豪ドル安 ↓ 0 16 15/9/4 82.172 14 15 60 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 豪ドルは中国経済の底割れ懸念や国際商品市況の軟化を背景に、対米ドルで下落基調にある。足元では、原油安、中国経済の先行き懸念の再燃、 米国の利上げ開始などが悪材料視され、15年9月以来の1豪ドル=0.70米ドル割れを記録。対円では、年初来、円高米ドル安が進行したことを反映 して、1月15日にはザラ場で一時80円割れとなった。 豪州株式市場は、12年以降上昇局面が続き15年4月には約7年ぶりの高値圏に達した。その後、同年8月に大幅に軟化した後、9月以降は一進一退 の展開となっている。一方、長期金利は下げ止まり感がみられるものの安定推移が見込まれる。 月刊 資産管理 2016年2月号 61 今月の注目アセット 【豪ドル②】 これまでの豪ドル弱含みの背景 ① 中国経済の底割れ懸念および資源大手の増産を背景とした鉄鉱石など国際商品価格の下落 ② 豪州準備銀行(RBA)の豪ドル安志向および追加利下げ観測 ③ 米国の利上げ開始などの外部環境 今後の豪ドル相場にとってプラスと想定されるケース ① RBAによる豪ドル安誘導姿勢の後退および追加利下げ観測の払拭 ② 中国経済の先行きに対する悲観論の修正、米国の緩やかな利上げペースの確認 ③ 通貨安効果や国際商品市況の底入れにより、豪州の財・サービス輸出が拡大すること 円安米ドル高基調への回帰を想定すれば、中期的に、豪ドルの対円レートは反発 に転じる可能性が高いとみられる (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 62 今月の注目アセット 【豪ドル③】 豪州の実質GDP成長率見通し 豪州の四半期別実質GDP成長率の推移 (前期比、%) 3.0 (前年比、%) 6 在庫増減等 純輸出 (野村證券予想) 豪州実質GDP成長率 2.5 5 総固定資本形成 政府消費 2.0 4.5 4.0 4 3.1 4.0 3.0 3 2.6 1.5 3.6 1.0 3.2 2.7 2.7 2.7 民間消費 実質GDP成長率 2.3 2.3 2.7 2.4 2.4 0.5 0.0 2 1.6 2.1 -0.5 -1.0 1 -1.5 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) -2.0 10 11 12 13 14 15 (年) (注)データは暦年で、直近の実績値は14年。15年以降はノムラ・インターナショナルplcによる、 16年1月15日時点の予測。 (出所) IMF(国際通貨基金)、ノムラ・インターナショナルplcより、野村證券投資情報部作成 (注)データは四半期で、直近値は15年7-9月期。 (出所)豪州統計局より野村證券投資情報部作成 豪州の経済成長率は民間投資の不振が見込まれる一方で、堅調な住宅投資、底堅い個人消費、通貨安に伴う財・サービス輸出増を背景に、 17年にかけて2%台前半で緩やかに加速すると見込まれる。 豪州の15年7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.9%と、4-6月期の同+0.3%から加速した。4-6月期に悪天候の影響で低調だった資源輸出の 反発が成長率を押し上げた。 月刊 資産管理 2016年2月号 63 今月の注目アセット 【豪ドル④】 豪州の鉄鉱石輸出先の推移(数量ベース) 中国における鉄鉱石価格の推移 (100万トン) (人民元/トン) 80 1,200 その他 70 中国向け 1,000 60 800 50 600 価格差 国産鉄鉱石 輸入鉄鉱石 40 400 30 20 200 10 0 0 10 11 12 13 (注)データは月次で、直近値は15年11月。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 14 15 (年) -200 12 13 14 15 (年) (注)データは月次で、直近値は15年12月。価格差=輸入価格-国産価格。 (出所)中国鉄鉱協会、CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 資源大国である豪州は、最大の輸出先である中国の景気動向の影響を受けやすい経済構造にある。鉄鉱石価格は中国経済の減速と豪 州鉄鉱メーカー大手による生産拡大を主因に下落基調にある。 しかし、その半面、価格競争力の優位性を背景に数量ベースでみた豪州の対中国鉄鉱石輸出は拡大しており、グローバルにシェアを拡 大しつつある。 月刊 資産管理 2016年2月号 64 今月の注目アセット 【豪ドル⑤】 豪州の住宅価格の推移 豪州の雇用統計 (09年=100) 135 (前年比%) 20 (前月差、千人) 100 (%) 7.0 失業率(右軸) 80 130 6.0 15 住宅価格前年比伸び率(右軸) 125 60 120 10 5.0 40 4.0 115 5 20 110 3.0 0 105 0 100 2.0 -20 住宅価格指数(左軸) -5 95 1.0 -40 雇用者増減(左軸) 90 -10 10 11 12 13 (注)データは四半期で、直近は15年10-12月期。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 14 15 -60 08 09 10 11 12 13 14 (年/月) 15 0.0 (年) (注)データは月次で、直近値は15年12月。 (出所)オーストラリア統計局(ABS)より野村證券投資情報部作成 豪州の住宅市況は、既往の金融緩和政策、移民増・人口自然増および投資マネー流入による住宅需要の拡大を背景に、13年以降、 堅調に推移し、鉱業セクターを中心に民間投資の減速が継続する中で経済成長を下支えしている。 雇用統計をみると、失業率が低下傾向をみせる一方で、雇用者増加数(前月差) も過去6ヵ月平均ベースでみると回復基調にある。 月刊 資産管理 2016年2月号 65 今月の注目アセット 【豪ドル⑥】 最近のRBAの豪ドル・金融政策に対するスタンス 日付 豪ドル水準 ( 対米ドル) 15年7月7日 0.745 コメントなど 7月RBA政策理事会(声明文) 0.738 0.712 豪ドルに関して「主要商品価格の大幅下落に沿って 豪ドル相場は調整しつつある」と言及 9月議会証言 15年9月18日 0.719 スティーブンスRBA総裁、「現在の金利水準にとても 満足している」と発言 10月RBA政策理事会(声明文) 15年10月6日 0.716 豪ドルに関して「主要商品価格の大幅下落に沿って 豪ドル相場は調整しつつある」と言及 11月RBA政策理事会(声明文) 15年11月3日 0.718 豪ドルに関して「主要商品価格の大幅下落に沿って 豪ドル相場は調整しつつある」と言及 12月RBA政策理事会(声明文) 15年12月1日 0.732 消費者物価(CPI)上昇率 刈込み平均値 加重平均値 5 豪ドルに関して「主要商品価格の大幅下落に沿って 豪ドル相場は調整しつつある」と言及 9月RBA政策理事会(声明文) 15年9月1日 (前年同期比、%) 6 「主要商品市況の大幅下落を踏まえると更なる豪ドル 安の可能性が高く、またその必要がある」と言及 8月RBA政策理事会(声明文) 15年8月4日 豪州の消費者物価指数 豪ドルに関して「主要商品価格の大幅下落に沿って 豪ドル相場は調整しつつある」と言及 (注)全てを網羅している訳ではない(16年1月15日時点)。 (出所)各種報道、RBA(豪州準備銀行)より野村證券投資情報部作成 4 3 2 1 インフレ目標(前年比+2~3%) 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)刈り込み平均値はCPIの項目別変化率のうち、上位・下位15%ずつ除いた部分のCPIの平均 値。加重中央値は上位・下位15%ずつを除いた中央の品目の伸び率。両指標は豪州準備銀行が 公表している。データは四半期で、直近値は15年7-9月期。 (出所)豪州統計局(ABS)より野村證券投資情報部作成 豪州準備銀行(RBA:中央銀行)は、12月1日の金融政策決定委員会で政策金利を2.00%に据え置いた。声明文では前回(11月3日)と同様に 「国内景気の緩やかな拡大が続いている」と指摘する一方、「企業向け信用の伸びが上向いた」との文言が盛り込まれた。 豪ドルに関しては、「主要商品価格の大幅下落に沿って調整しつつある」との文言を踏襲、従来の豪ドル安誘導姿勢の後退を再確認。 消費者物価(CPI)上昇率は低位安定しており、刈込み平均値及び加重平均値はインフレターゲット(前年比+2~3%)内の水準にある。 月刊 資産管理 2016年2月号 66 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル① 】 ブラジルの株価・国債利回り・政策金利の推移 ブラジルレアル相場の推移 (ポイント) (%) 80,000 10年国債利回り 70,000 15/9/23 16.839 ボベスパ指数 17 米ドル・ブラジルレアル相場 15 14.25 13 ブラジルレアル高 ↑ ブラジルレアル安 ↓ 2.4 13/5/17 50.7137 2.6 40,000 13/1/2 9.13 15/8/24 42,749 16/1/16 37,986 2.8 50 20,000 14 9 3.4 40 ブラジルレアル・円相場 35 (右軸) 3.8 15/9/23 28.7925 4.0 7 15 45 3.2 3.6 政策金利:Selic誘導目標 (右軸) 13 11 16 (年) (注1)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (注2)Selic誘導目標は国債の翌日物レポ取引金利が対象。 (注3)ブラジル10年国債利回りのチャートは2011年8月から2012年3月まで、2013年8月 から2014年1月までの期間に、償還期間に見合う銘柄が存在しないため途切れている。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 60 55 3.0 13/7/5 44,107 65 (左軸) 2.2 14/9/3 62,304 50,000 30,000 1.8 70 13/3/8 1.9442 2.0 (左軸) 60,000 (円/1ブラジルレアル当たり) 1.6 (右軸) 13/1/3 63,472 (ブラジルレアル/1米ドル当たり、逆目盛) 4.2 13 14 15 15/9/23 4.1783 30 25 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 インフレ加速から14年10月以降利上げを再開、景気が落ち込む一方、資源価格の下落、政治的混乱などが加わり、株価の下落が続いている ブラジルレアルは景気不振、政治的混乱などが嫌気され、15年9月末に史上最安値を対米ドル、対円で更新した。レアル相場は悪材料を相当程 度織り込んでいるが、ルセフ大統領の弾劾手続き開始、財務相交代などから軟調推移が続いている。 月刊 資産管理 2016年2月号 67 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル②】 ブラジルレアルが大幅に下落した背景 ① インフレ加速を背景とした金融引き締めによる国内景気の悪化。 ② 景気悪化による税収低迷から財政が悪化、国債の格付けが投機的水準(※無登録格付け) に引き下げられた。 ③ 汚職問題を発端に政治的混乱が続き、政策決定能力に対する懸念が根強い。 ④ 中国経済の減速などに伴う資源価格の下落。 ブラジルレアル相場にとってプラスと想定されるケース ① 政府の財政健全化策が前進、更なる格下げ懸念が後退。 ② レアル安に伴い輸出数量が回復しており、景気の下支え効果が明らかになる。 ③ 米国の利上げペースが当初想定よりも緩やかになる。 ④ 中国景気に対する悲観論が後退する。 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 68 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル③】 ブラジルの実質GDP成長率の推移と予測 (前年比、%ポイント) 実質GDP成長率 6 4.1 2.8 2.8 2.5 3.2 4 2.5 2.4 1.7 1.0 2 ブラジルの消費者物価上昇率と政策金利の推移と予想 野村證券予測 -1.2 -2 在庫増減等 純輸出 -4 -0.8-1.1-0.7 -2.0 政策金利 14 0 -1.8 -3.0 -5.0 野村證券予想 (%) 16 (%) 16 14 12 12 10 10 8 8 6 6 固定資本形成 -6 政府最終消費 -5.0 -3.0 4 4 拡大全国消費者物価指数 民間最終消費 -8 12 13 14 15 -4.5 2 16 (年) (注1)実質GDPのみ前年比伸び率(%)。データは四半期で、直近値は15年7-9月期。 (注2)IBGEが公表する四半期ベースの実質GDPが95年を100とした指数で示されることか ら、実質GDP成長率の寄与度は95年の名目ベースの実額より計算した。 (出所)ブラジル地理統計院(IBGE)、Thomson Reuters Datastream、ノムラ・セキュリ ティーズ・インターナショナル・インクより野村證券投資情報部作成 08 09 10 11 12 13 14 15 16 2 (年) (注1)データは月次で、直近値は15年12月(政策金利は16年1月20日時点)。それ以 降は野村證券予想。 (注2)政策金利はSELIC(国債の翌日物レポ取引金利)誘導目標。 (出所)野村證券「グローバル・エコノミック・アウトルック」(2016年1月号)、ブルーム バーグより野村證券投資情報部作成 ブラジル経済は資源価格の下落、インフレ加速に伴う金融引き締めなどからマイナス成長が続いており、景気回復は17年と見込まれる。 電力料金など管理価格の値上げ、レアル安からインフレが加速しているが、16年1月20日にブラジル中央銀行は政策金利を据え置いた。景 気悪化に配慮したものと想定され、野村證券は16年中は政策金利を据え置くと見通しを変更した(従来は同年1-3月期に1%ポイント利上げ を予想)。 月刊 資産管理 2016年2月号 69 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル④】 ブラジルのプライマリー財政収支と社会保障収支 (対GDP比%) 5 プライマリー財政収支 社会保障収支 4 16年のブラジルにおける政治・財政などを巡る日程 月日 2月1日 財政健全化を巡る動向 議会再開 ルセフ大統領の弾劾を巡る審議・投票など(弾劾には3分の 数ヶ月間掛 2の賛成が必要であり、連立与党が過半数の議席を確保し かる見通し ていることから否決される見通しがメインシナリオ) 3 2 5月辺り CPMF(銀行小切手税)の議会での承認(バルボザ新財務相 の記者会見) 0 年前半 社会保障改革案の議会への提出(同)(ルセフ大統領の弾 劾問題が片付いた後と見込まれる) -1 8月5日 リオデジャネイロ五輪開幕(~8月21日まで) -2 年内 民間資本を導入するインフラ・プロジェクトにおける港湾、道 路、鉄道、空港の入札実施を計画 1 -3 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)CPMF税は金融取引時の為替取引に課税する。 (出所)野村證券金融市場調査部、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (注1)プライマリー(基礎的)財政収支は利払い前財政収支。 (注2)データは月次で、直近値は15年11月。12ヵ月累計値対GDP比を用いている。 (出所)ブラジル中央銀行、ブラジル財務局、ブルームバーグより野村證券金融市場 調査部作成 ルセフ政権のばらまき財政、景気悪化に伴う税収減少からプライマリー財政収支は赤字に転落している。悪化している社会保障収支の改善 が財政健全化には不可欠とみられる。年金改革などへの取り組みが始まれば、レアルに対する信認回復に寄与しよう。 ルセフ大統領の弾劾については、メインシナリオは弾劾否決である。否決後に財政健全化に向けた動きが本格化すると見込まれる。 月刊 資産管理 2016年2月号 70 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル⑤】 ブラジル:財輸出の推移(数量ベース) ブラジル:経常収支 (億米ドル) (前年同月比、3ヵ月移動平均、%) 20 第二次所得収支 第一次所得収支 サービス収支 貿易収支 60 40 20 10 0 -20 -40 0 -60 -80 -10 経常収支 -100 輸出 半製品 -20 13 14 -120 プライマリー製品 工業製品 15 -140 (年) (注1)データは月次で、直近値は15年11月。 (注2)①プライマリー製品(14年輸出金額に占める比率は48.7%)は大豆、コーヒー豆、鶏肉 などの農産物、鉄鋼石などの鉱物など、②半製品(同12.9%)は砂糖などの加工農産物、木 材パルプ、鉄鋼製品などの素材、③工業製品(同35.6%)は航空機、乗用車などの完成品か ら構成される。 (出所)ブラジル開発・商工省、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 -160 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 (年/月) (注)データは月次で、直近値は15年11月。第一次所得収支は、対外金融債権・ 債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。第二次所得収支は、居住者 と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。 (出所)CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 ブラジルの輸出は金額ベースでは前年比減少が続くが、レアル安効果から数量ベースではプラスの伸びを維持している。 ブラジルでは足元で貿易収支が黒字を計上しており、経常収支の赤字幅は前年に比べ縮小傾向にある点はポジティブである。 月刊 資産管理 2016年2月号 71 主要アセット市場の動向 1 【ブラジルレアル⑥】 ブラジルの外貨準備の推移 (億ドル) 4,000 ブラジルの対外債務、ペトロブラスの債務と返済予定 15年12月末時点:3,565億ドル (億米ドル) 4,000 ブラジル対外債務残高 3,500 3,500 3,000 3,000 2,500 2,500 2,000 2,000 ペトロブラス債務残高 ブラジル対外債務元本返済予定額 ペトロブラス債務満期到来額 1,500 1,500 1,000 1,000 500 500 0 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (注)データは月次で、直近は15年12月末。 (出所)Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 15年9月末 (年) 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 (注1)ブラジルの対外債務残高、ペトロブラス(ブラジル国営石油会社)の債務 残高は15年9月末時点。ペトロブラスの債務残高に占める外貨建て比率は 84.1%で、米ドル建ては74.4%を占める。 (注2)返済予定額は15年が同年10-12月期で、ペトロブラスの20年は20年以降 の返済予定額。 (出所)ブラジル中央銀行、ペトロブラス15年7-9月期決算レポートより野村證券 投資情報部作成 ブラジル外貨準備高は15年12月末時点で3,565億ドルと短期債務残高の約6倍の規模に達しており、一定の資金流出に十分に対 応できる規模といえる。 ブラジルの対外債務、エネルギー企業の債務が懸念されているが、今後の元本返済のスケジュールによれば、長期にわたって分 散されている点は安心材料と言えよう。 月刊 資産管理 2016年2月号 72 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ① 】 トルコの株価・国債利回り・政策金利の推移 トルコリラ相場の推移 (ポイント) 100,000 13/5/22 93,398 90,000 (左軸) 60 14 15/1/28 91,805 1.8 15/9/29 11.07 14/3/24 11.36 (円/1トルコリラ当たり) (%) (トルコリラ/1米ドル当たり、逆目盛) 1.6 13/2/1 1.749 13/5/10 イスタンブール100種指数 56.4103 12 16/1/11 11.31 80,000 10 70,000 14/12/5 53.7295 55 2.0 50 2.2 2.4 15/12/14 69,190 8 7.5 60,000 14/1/29 60,753 13/5/2 6.1 50,000 15/1/27 6.93 10年国債利回り 40,000 14 15 トルコリラ・円相場 (右軸) 4 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は16年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 15/4/24 43.837 2.8 40 16/1/15 38.3825 15/9/28 39.2053 3.0 政策金利:1週間物レポレート(右軸) 13 6 (右軸) 2.6 45 トルコリラ高 ↑ トルコリラ安 ↓ 米ドル・トルコリラ相場 (左軸) 3.2 13 35 14 15 15/9/14 3.0581 16 30 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は16年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 1月19日に政策金利の据え置きを決定したが、大統領による金融政策介入圧力が否定できず、中央銀行の独立性に対する信頼性が揺らい でいる。 加えて、シリアを含めた中東情勢の悪化や米利上げの影響により、トルコリラは安値圏での推移が続いている。 月刊 資産管理 2016年2月号 73 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ②】 トルコリラ安が大きく進んだ背景 ① 大統領の汚職や過激派組織「イスラム国」(IS)やクルド人労働党との交戦開始など、国内 外での地政学リスクが高まったこと ② トルコ中央銀行が政治的圧力を受けて利下げを実施したことにより、中央銀行の独立性に対 する懸念が高まったこと ③ 15年6月の議会選挙で与党・公正発展党(AKP)の議席数が過半数割れとなり、経済政策を 含めた今後の政策停滞リスクが高まったこと 今後のリラ相場にとってプラスと想定されるケース ① 大統領の強権的な姿勢が緩和するなど、政治的不透明感が払しょくされること ② トルコ中央銀行が通貨防衛のため、利上げに転じ、中銀の独立性に対する信頼が高まること ③ インフレ抑制、経常収支赤字の縮小など経済ファンダメンタルズの改善 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 74 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ③】 トルコ周辺での交戦状態 トルコとシリア、IS、PKKなどの過去および現在の関係 14年7月23日に トルコ軍とISが 初交戦 7月20日に 自爆テロ 対立 トルコ クルド労働者党 (PKK、トルコ) 停戦 (13年3月~15年7月) 関連組織 民主統一党 (PYD、シリア) トルコ クルド人居住地 14年10月10日に 大規模な 自爆テロ発生 15年1月12日に 観光地で 自爆テロ発生 イラン 14年11月24日 にトルコが ロシア機撃墜 シリア 従来は黙認 対立 対立 対立 イスラム国 インジルリク 空軍基地 米軍使用へ イラク 14年7月24日に トルコ軍が初空爆 ラッカ ISの本拠地 過激派組織 「イスラム国」(IS) 対立 シリア (アサド大統領) 支援 対立 警戒 ロシア 対立 サウジアラビア (出所)各種報道より野村證券投資情報部作成 イラン 対立 (注)ISは過激派組織「イスラム国」。 (出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 15年7月に発生した自爆テロを契機に、トルコ軍と過激派組織「イスラム国」(IS)、クルド労働者党(PKK)との間で本格的な交戦が始まり、国内 の治安は急速に悪化している。 15年11月13日にフランス・パリで発生した同時多発テロ、11月24日にトルコ軍によるロシア軍機撃墜、16年1月2日にサウジアラビアによるシー ア派指導者処刑で、事態はますます複雑・深刻化の様相を呈してきた。 月刊 資産管理 2016年2月号 75 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ④】 シリアを巡るトルコとロシアの思惑 ともにシリア国内のIS打倒を謳ってはいるが・・・ トルコ クルド人との対立関係を煽ることで、国内のクルド人政党の 支持率を抑えたい アサド大統領(アラウィー派、シーア派系)とは敵対関係 域内のライバルであるイラン(シーア派)の支援を受け ている(トルコはスンニ派が多数) 国内のトルクメン人(トルコ系)を迫害している トルコとロシアの歴史的確執 西暦 出来事 1475 クリミア・ハン国がオスマン帝国の従属国になったことによ り、黒海がオスマン帝国の支配下に入る。 1556 ロシア・ツァーリ国(のちのロシア帝国)がアストラハン・ハン 国(トルコ系の国家、カスピ海北岸)を征服。 1568~70 露土戦争 アストラハン国を巡り、最初の露土戦争勃発。以後、何度も オスマン帝国(トルコ)とロシアの間で戦争が勃発することに なる。 1676~81 露土戦争 オスマン帝国とロシアの国境がドニエプル川によって確定さ れ、左岸ウクライナがロシア領に、右岸ウクライナがオスマ ン領となる。 1768~74 露土戦争 クリミア・ハン領とザポロージャ領が合併させられ、ノヴォロ シアに改名、その後ロシア帝国に併合。 ロシア 欧米主要国の注目をウクライナから移したい 国内の経済的苦境からナショナリズムの高揚へと国民の関 心を移したい アサド大統領とは強いつながり アサド前大統領(現アサド大統領の父)の時代から長 年に亘り、支援を継続 ロシア海軍の海外拠点の一つであるタルトゥース港 を維持したい 地中海における一定の軍事プレゼンスを維持したい 戦争 1821~27 ギリシャ 独立戦争 オスマン帝国からギリシャが独立。独立戦争時に英、仏、 露が軍事介入。 1831~33 エジプト・ 1839~40 トルコ戦争 ギリシャ独立戦争時の支援の引換として、エジプトがオス マン帝国にシリア領有権を主張。黒海への航行権獲得の ため、ロシアはトルコを支援。 1853~56 クリミア戦争 ロシア帝国がオスマン帝国の支配下にあったモルダヴィア 公国などに侵入したことで勃発。 1877~78 露土戦争 バルカン半島のスラブ系諸民族がトルコ人の支配に対し反 乱を起こす。ロシアの勝利に終わり、セルビア、モンテネグ ロ、ルーマニアが独立。バルカン半島でのロシアの影響力 が高まる。 (出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 トルコとロシアはともに過激派組織「イスラム国」(IS)打倒を謳ってはいるが、思惑は全く異なっており、事態は予測不可能な展開に。 加えて、トルコとロシアの確執は、最近のものではなく、中世以降から現在まで続く歴史的なものである。 月刊 資産管理 2016年2月号 76 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ⑤】 トルコとロシアの地理関係 トルコの経常収支におけるロシア関連の外貨収入 (億米ドル) 200 ウクライナ ロシア クリミア半島 180 160 黒海 ボスポラス海峡 黒海とエーゲ海を結ぶ唯一の海峡 59 140 120 ギリシャ 輸出 70 67 携行荷物 100 トルコ エーゲ海 旅行収支 80 イラン 86 60 シリア 地中海 タルトゥース ロシア海軍の海外拠点 エジプト (出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 74 63 40 20 20 24 27 12 13 14 0 (年) (出所)トルコ中央銀行、トルコ統計局、CEICデータベースより野村證券投資情報部作成 トルコとロシアの長年に亘る確執は、トルコとロシアの地理的な関係によるところが大きい。両大統領のパーソナリティをも考慮すると、今後も ロシアとの関係は、中長期的な不安定材料となろう。 トルコによるロシア軍機撃墜事件を受け、ロシアはトルコに対する経済制裁措置を発動。観光客や旅行者の携行荷物を利用した非公式の貿 易取引を考慮すると、観光業全体として50~60億米ドル(対GDP比0.6~0.8%)程度の影響を受ける可能性があると野村證券は見ている。 月刊 資産管理 2016年2月号 77 主要アセット市場の動向 2 【トルコリラ⑥】 トルコの経常収支の推移 外貨準備の短期対外債務に対する比率(14年末時点) (億ドル) 60 (%) 700 40 600 20 500 0 400 -20 300 -40 200 -60 経常移転収支 所得収支 サービス収支 貿易収支 -80 -100 -120 08 09 10 100 0 経常収支 11 12 13 (注)データは月次で、直近値は15年11月。 (出所) Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 14 15 (年) ブ ラ ジ ル ロ シ ア イ ン ド 韓 国 ポ ー ラ ン ド イ ン ド ネ シ ア メ キ シ コ 南 ア フ リ カ ア ル ゼ ン チ ン ト ル コ ウ ク ラ イ ナ (出所) 世界銀行、IMFより野村證券金融市場調査部作成 原油価格の下落を主因とした貿易赤字の縮小により、経常収支は改善傾向にあるが、今後、ロシアの経済制裁やテロによる観光客減少の影 響が懸念される。 外貨準備と比較して高水準の短期対外債務も依然として大きな懸念材料。 月刊 資産管理 2016年2月号 78 主要国・アセット市場の動向 【インド 】 インドの株価・国債利回り・政策金利の推移 インドルピー相場の推移 (ポイント) (%) 35,000 12 センセックス指数 (左軸) 15/3/4 30,024 10年国債利回り 30,000 30.0 (右軸) 10 2.5 2.3 40.0 インドルピー・円相場 45.0 25,000 16/1/13 24,387 8 15/10/5 政策金利:レポレート 7.513 13/8/28 17,448 (右軸) 6.75 2.1 15/6/5 1.964 1.9 50.0 55.0 20,000 13/5/24 7.114 (円/1インドルピー当たり) インドルピー高 ↑ インドルピー安 ↓ 35.0 13/8/19 9.240 15,000 (インドルピー/1米ドル当たり、逆目盛) 60.0 6 13/2/5 53.135 13/8/28 1.449 14/5/22 58.460 1.7 16/1/15 1.730 1.5 1.3 65.0 米ドル・インドルピー相場 70.0 10,000 13 14 15 4 16 (年) (注)データは週次(週末値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (左軸) 13/8/28 68.825 16/1/15 67.605 75.0 13 14 15 1.1 0.9 16 (年) (注)データは週次(週末値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 海外ファンドへの最低代替税(MAT、注)課税問題、企業業績の下振れ懸念などから15年3月から5月にかけ株価、通貨とも軟調であった。 その後、政府は最低代替税課税を撤回したが、8月下旬には中国元切り下げ、10月下旬以降は米国利上げ観測と原油安から新興国不安が再燃。 原油の純輸入国であるインドでも資金流出が発生した。 (注)最低代替税(MAT)とは、インドで事業を行う企業に対して、会計上の利益に対する法人税率が18.5%を下回る場合に課される税金。MATの課税は、当初(1997 年)は国内企業対象に設定された。各種報道等によると、海外から投資ファンドに対して、過去に遡及して課税することをインド政府は検討していた模様。しかし、 海外投資家からの批判などを受け、9月1日に、インド政府は海外ファンドへのMAT課税を断念すると発表した。 月刊 資産管理 2016年2月号 79 主要国・アセット市場の動向 【メキシコ】 メキシコの株価・国債利回り・政策金利の推移 (ポイント) 13/1/29 46,075 メキシコペソ相場の推移 (%) 50,000 12 ボルサ指数 14/9/8 46,554 11.0 40,000 14/3/14 37,751 13/6/24 37,034 14/2/4 6.689 14/12/16 39,580 15/8/24 39,256 16/1/11 40,128 10年国債利回り 15/12/11 6.410 6 4 3.25 政策金利:翌日物銀行調達金利 (右軸) 10,000 13 14 13/5/8 11.9771 12.0 13/5/10 8.4085 14/11/19 8.6620 メキシコペソ・ 円相場 15 2 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 9.5 9.0 (右軸) 8.5 13.0 8.0 14.0 7.5 15.0 16.0 15/1/28 5.197 13/5/9 4.426 10.0 8 (右軸) 20,000 (円/1メキシコペソ当たり) 10.0 (左軸) 10 30,000 (メキシコペソ/1米ドル当たり、逆目盛) 7.0 13/1/1 6.7258 15/8/24 6.8848 6.5 16/1/15 6.0 6.4065 17.0 米ドル・メキシコペソ相場 18.0 メキシコペソ高 ↑ メキシコペソ安 ↓ (左軸) 19.0 13 14 5.5 16/1/15 18.2648 15 5.0 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 メキシコペソは原油価格下落、治安・汚職問題などを背景に軟化した後、米利上げ先送り観測を背景に15年11月初にかけて対米ドルで反発したが、 足元では原油価格の一段安を受けて最安値を更新している。一方、対円では円高米ドル安の進行もあり、年初来調整圧力が強まっている。原油価 格に底入れの兆しが見え始めれば、米国の景気拡大に伴う成長率加速や財政・エネルギー改革の進展が下支え材料になると期待される。 ボルサ指数は15年8月下旬に急落した後、7月の水準まで持ち直したが、同年12月以降は米国株の調整や原油安を受けて軟調な展開が続いている。 一方、金融政策については、メキシコ銀行(中央銀行)が12月に米国に追随して利上げを実施した。今後も、米国に追随して利上げをしていくと予想 される。 月刊 資産管理 2016年2月号 80 主要国・アセット市場の動向 【アセアン(インドネシア)】 インドネシア株式・国債利回り・政策金利の推移 (ポイント) インドネシアルピア相場の推移 (%) 6,000 25 15/4/1 5,524 ジャカルタ 総合指数(左軸) (インドネシアルピア/1米ドル当たり、逆目盛) 20 16/1/14 4,456 13/8/28 3,837 14/1/27 9.176 10年国債利回り (右軸) 15/9/29 9.807 15/9/29 4,033 14/12/5 0.988 6,000 8,000 15 4,000 1.2 13/5/17 1.058 5,000 (円/100インドネシアルピア当たり) 4,000 13/1/21 9,618 インドネシアルピア・円相場 (右軸) 10,000 1.0 15/9/29 0.815 10 0.8 0.6 12,000 7.25 3,000 政策金利:BIレート 13/1/8 5.08 (右軸) 米ドル・インドネシアルピア相場 14,000 14 15 0 16 (年) (注1)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (注2)政策金利はBI(インドネシア銀行)レートで、1ヵ月物インドネシア銀行証券レー トの誘導目標。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 0.4 (左軸) インドネシアルピア高 ↑ インドネシアルピア安 ↓ 2,000 13 5 15/9/25 14,693 16,000 13 14 15 0.2 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 インドネシアルピアは対米ドルで下落トレンドが続き、15年9月下旬にかけてアジア通貨危機以来、17年ぶりに安値を更新した。しかし、米利上げ先 送り観測から10月初より急反発。11月上旬から、12月の米利上げ開始に向けて再び弱含んだが、その後は一進一退の展開となっている。 ジャカルタ総合指数は、ジョコ新政権誕生による改革期待を背景に上昇し、15年4月1日には史上最高値を更新した(ザラ場)。しかし、景気減速や ジョコ政権への信任低下を背景に下落基調に転じ、同年9月末には13年12月来の安値を付けた。その後、米利上げ先送り観測から一時的に持ち直 した。米利上げ開始後も、同指数はインフラ整備計画の進捗期待などを背景に底堅く推移している。 月刊 資産管理 2016年2月号 81 主要国・アセット市場の動向 【南アフリカ】 南アフリカの株価・国債利回り・政策金利の推移 南アフリカランド相場の推移 (ポイント) (%) 55,000 20 15/11/4 49,228 FTSE/JSEアフリカトップ40指数 (左軸) 45,000 (南アフリカランド/1米ドル当たり、逆目盛) 8.0 14.0 13/1/1 8.458 14/1/31 8.917 35,000 13/4/18 33,156 16/1/15 15/12/11 41,941 10.381 10年国債利回り 10 南アフリカランド・円相場 10.0 25,000 10.0 12.0 13 8.0 米ドル・南アフリカランド相場 15 16/1/15 6.964 南アフリカランド高 ↑ 南アフリカランド安 ↓ 0 16 (年) (注1)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (注2)10年国債利回りのチャートは2011年11月から2012年5月まで償還期間に見合う 銘柄が存在しないため、2012年6月から開始。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 7.0 (左軸) 16.0 (右軸) 14 9.0 14.0 5 15,000 11.0 14/10/16 9.5657 政策金利:翌日物レポ金利 13.0 12.0 14/11/20 10.7800 (右軸) 6.25 13/5/9 6.032 (右軸) 13/4/10 11.2041 15 14/10/16 40,925 (円/1南アフリカランド当たり) 6.0 18.0 13 6.0 16/1/15 16.7853 14 15 5.0 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 南アフリカ株式は中国の景気減速懸念による商品価格の大幅な下落を受け、資源関連株中心に売りに拍車がかかり、軟調な推移となっている。 国内景気低迷や財政悪化に加えて、財務大臣の突然の更迭など政治的混乱により、格付けの引き下げリスクが台頭。 南アフリカランドは、1月11日に対米ドルや対円で史上最安値を更新した。ランド安やインフレ警戒感から南アフリカ準備銀行は15年11月に政策金利 を6.25%に引き上げたが、野村證券は今後も段階的に利上げを行い、16年末には政策金利を8%まで引き上げると予想する。 月刊 資産管理 2016年2月号 82 主要国・アセット市場の動向 【ロシア】 ロシアの株価・政策金利の推移 (ポイント) 政策金利(2013年9月以降): 1週間物レポレート 2,000 1,800 ロシアルーブル相場の推移 (右軸) 13/1/28 1,638 1,600 RTSI$指数 0.0 18 10.0 14 政策金利(2013年9月まで): リファイナンスレート(右軸) 600 14/12/16 578 400 14 30.0 13/2/1 29.8546 15 16 2.0 米ドル・ロシアルーブル相場 1.5 (左軸) 16/1/15 1.5049 1.0 15/1/30 69.4666 16/1/15 77.7049 ロシアルーブル高 ↑ ロシアルーブル安 ↓ 90.0 (年) (注1)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (注2)政策金利は2013年9月にリファイナンスレートからキーレート(1週間物レポレート) に変更された。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 2.5 50.0 80.0 4 13 15/5/18 2.4378 15/5/18 49.0955 70.0 16/1/15 6 647 3.5 (右軸) 3.0 60.0 8 ロシアルーブル・円相場 20.0 10 8.25 800 13/5/22 3.2844 12 11.0 (円/1ロシアルーブル当たり) 4.0 40.0 15/5/13 1,092 1,200 (ロシアルーブル/1米ドル当たり、逆目盛) 20 16 (左軸) 1,400 1,000 (%) 0.5 0.0 13 14 15 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 原油価格の大幅下落などにより、厳しいマクロ経済環境が続く。野村では16年には累計2.00%ポイントの利下げが実施されると予想。 原油価格の下落に歯止めがかからず、ロシアルーブルの対円、対米ドルは安値を更新。原油価格との連動性が強まっていることから、ロシアルー ブルの本格的な上昇には原油価格の回復が必要。 月刊 資産管理 2016年2月号 83 主要国・アセット市場の動向 【カナダ】 カナダの株価・国債利回り・政策金利の推移 カナダドル相場の推移 (ポイント) (%) 18,000 6 S&Pトロント総合指数 16,000 14/9/3 15,685 (加ドル/1米ドル当たり、逆目盛) (円/1加ドル当たり) 0.8 120 加ドル・円相場 5 (左軸) 0.9 14/12/5 106.232 13/1/10 0.9832 (右軸) 110 1.0 14,000 12,000 13/6/24 11,759 10,000 13/9/10 2.817 14/12/15 4 13,635 15/8/24 12,705 16/1/15 11,950 3 1.2 10年国債利回り (右軸) 8,000 2 6,000 100 1.1 1.3 13/1/1 87.267 16/1/15 1 1.153 0.5 政策金利:翌日物銀行間金利 (右軸) 2,000 13 14 15 0 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日(株価の高安はザラ場)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 16/1/15 80.475 80 1.4 4,000 90 15/1/30 92.278 米ドル・加ドル相場 (左軸) 1.5 加ドル高 ↑ 加ドル安 ↓ 16/1/15 70 1.4541 1.6 60 13 14 15 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 原油価格の下落を受けてカナダドルの対米ドルレートは、1米ドル=1.45カナダドルと、03年4月以来の水準へ下落している。 月刊 資産管理 2016年2月号 84 主要国・アセット市場の動向 【商品市況】 原油価格・鉄鉱石価格・銅価格の推移 金価格・プラチナ価格・とうもろこし価格の推移 (米ドル/1トン当たり) (米ドル/1バレル当たり) (米ドル/1トン当たり) 13/2/4 180 8305 13/2/18 160 160.82 (米ドル/1トロイオンス当たり) 9,000 LME銅相場 8,000 (右軸) 1,700 140 13/9/6 110.53 120 1,900 7,000 13/1/22 1693.2 6,000 1,500 (セント/ブッシェル) 700 13/1/2 568.75 13/2/6 1736.80 600 とうもろこし 500 (右軸) 400 5,000 1,300 100 15/11/13 358.25 16/1/15 4,000 4331 80 WTI 3,000 60 15/12/11 38.3 鉄鉱石 (左軸) (左軸) 1,100 NY金相場 200 (左軸) 2,000 20 13 14 15 16 (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。1バレル=158.987295リッ トル。鉄鉱石価格は中国青島港の輸入価格(鉄分62%)。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 0 (年) 100 (左軸) 1,000 16/1/15 29.42 15/12/17 1049.6 プラチナ相場 900 40 300 16/1/15 829.35 700 13 14 15 0 16 (年) (注)データは日次(終値)で、直近値は2016年1月15日。1トロイオンス=31.103535グラム。 1ブッシェル=約35.239リットル。1セント=0.01米ドル。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 商品市況は、供給増加、中国の景気減速に伴う需要低迷、ドル高などの要因から下落基調が続き、原油価格は13年ぶりの安値を 記録した。一方、農産物市況は比較的安定的に推移している。 月刊 資産管理 2016年2月号 85 主要国・アセット市場の動向 【REIT①】 J-REIT配当利回りとイールドスプレッド 東京のオフィス賃料と空室率の推移 (ポイント) (%) 10 3,000 東証REIT指数の 配当利回り(左軸) (前年比、%) 10 (%) 10 2,500 8 5 8 東証REIT指数(右軸) 2,000 6 東京都心5区ビジネス地区 オフィス空室率(右軸) 0 1,500 4 6 -5 1,000 2 イールドスプレッド (REIT-10年国債:左軸) 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (注)データは月次(月末値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)東京証券取引所、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 500 -10 0 -15 16 (年) 4 東京都心5区ビジネス地区 オフィスビル平均募集賃料変化率(左軸) 08 09 10 11 12 13 14 15 2 (年) (注)東京都心5区とは千代田、中央、港、新宿、渋谷を指す。直近値は15年12月。 (出所)三鬼商事より野村證券投資情報部作成 東証REIT指数は、米利上げペースの不透明感などから足元で軟化している。 15年12月の東京都心部のオフィス空室率は4.03%と低下基調が続いており、不動産市場の環境は良好。 月刊 資産管理 2016年2月号 86 主要国・アセット市場の動向 【REIT②】 米国REITの配当利回りとイールド・スプレッド (%) 12 米国のオフィス価格と空室率の推移 (ポイント) 220 米国REIT配当利回り(左軸) 200 米国REIT指数(右軸) 10 180 160 8 140 6 4 (%) 米国賃貸物件 の空室率 (右軸:逆目盛) ニューヨーク・マンハッタン のオフィス価格指数 (左軸) 120 110 90 100 80 6 7 100 120 80 2 (07年6月=100) 130 8 9 70 10 60 40 0 米国REIT指数と10年国債の イールドスプレッド(左軸) -2 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 11 20 50 0 40 16 (年/月) (注)米国REITの配当利回りはFTSE NAREIT ALL REIT INDEXを使用。 データは月次(月末値)で、直近値は2016年1月15日。 (出所)NAREIT、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 60 12 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)ニューヨーク・マンハッタンのオフィス価格指数は、 Green Street Advisers Manhattan Office Property Price Index – Midtown。月次データで直近値は15年 12月。米国賃貸物件の空室率は四半期データで、直近値は15年7-9月期。 (出所) Green Street Advisers、米商務省より野村證券投資情報部作成 米国REIT指数も今後の利上げペースの不透明感から、足もとで軟化している。 米国を代表する立地のオフィス価格は上昇基調を続け、賃貸物件の空室率も概ね低下している。 月刊 資産管理 2016年2月号 87 主要国・アセット市場の動向 【ハイ・イールド債①】 ハイ・イールド債指数の推移 ハイ・イールド債の対5年国債のスプレッド水準 (2001年12月末=100) 450 (%) 25.0 400 新興国 20.0 350 欧州 300 米国 15.0 250 新興国 10.0 200 米国10年国債 米国 150 5.0 欧州 100 50 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (注)データは月次(月末値)で、直近値は2015年12月。 (出所)各市場指数を基に野村アセットマネジメント作成 (年) 0.0 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)スプレッド(上乗せ金利)の計算において、米国ハイ・イールド債、新興国ハ イ・イールド債では米国債5年物、欧州ハイ・イールド債ではドイツ国債5年物を 使用。データは月次(月末値)で、直近値は2015年12月。 (出所)各市場指数を基に野村アセットマネジメント作成(国債利回りはブルーム バーグ) ※使用した市場指数については、92ページの【使用した指数について】をご参照ください。 月刊 資産管理 2016年2月号 88 主要国・アセット市場の動向 【ハイ・イールド債②】 ハイ・イールド社債指数の業種別ウェイト 業種名 米国 欧州 米国ハイ・イールド社債:業種別騰落率 新興国 (%) 10 通信 18.3 16.6 7.6 一般消費財・ サービス 14.5 16.8 3.3 0 4.6 3.9 5.5 -5 エネルギー 13.5 6.0 27.6 素材 17.6 24.1 35.3 ヘルスケア 8.2 3.6 0.1 工業 5.6 11.4 3.8 -20 10.3 15.8 13.6 -25 情報技術 4.2 1.0 0.6 公益 3.1 0.9 2.6 合計 100.0 100.0 100.0 金融 生活必需品 (注1)対象はブルームバーグ・ハイ・イールド社債指数。ブルームバーグ・新興国 ハイ・イールド社債指数は新興国市場発行の米ドル建て社債が対象。 (注2)ウェイトは時価総額の構成比。 (注3)データは16年1月15日時点。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 1年間 3ヶ月間 1ヶ月間 5 -10 -15 エネル 素材 工業 一般 生活 ヘルス 金融 テクノ 通信 公益 米国 ギー ロジー ハイ 消費 必需品 ケア イー 財・ ルド債 サービス (注1)対象は米国ブルームバーグ・ハイ・イールド社債指数。 (注2)直近値は16年1月15日時点。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 米国や新興国のハイ・イールド債市場では、石油などのエネルギーセクターのウェイトが高い。原油価格が下落しており、同セクターを 中心にデフォルト率の上昇が見込まれている。 ハイ・イールド債の信用リスクは石油などのエネルギー、資源セクターに集中しており、金融システム全般に波及する可能性は低いとみ られる。 月刊 資産管理 2016年2月号 89 主要国・アセット市場の動向 【MLP】 原油価格とMLP指数の推移 (ポイント) S&P 500 指数とMLP指数の推移 (ドル/バレル) 3500 3000 (ポイント) (ポイント) 2500 500 2000 400 160 S&P MLP指数 (左軸) 140 120 2500 100 2000 1500 S&P 500 指数(左軸) 300 80 1500 WTI(右軸) 1000 60 40 500 1000 500 200 MLP指数(右軸) 100 20 0 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)MLPはS&P MLP指数。WTIは米国の代表的な原油。週足。直近値は 2016年1月15日。 (出所)トムソン・ロイターより野村證券投資情報部作成。 0 0 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 主要MLP指数とは、1999年1月2日を基準日とし、以下の主要10MLPの株価の月 間騰落率を基に指数化したもの。直近値は2016年1月15日。主要10MPLとは、1998年以 前に上場し、現在も上場している以下:ONEOKパートナーズ、アメリガス・パートナーズ、 エナジー・トランスファー・パートナーズ、エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ、エ ンブリッジ・エナジー・パートナーズ、サバーバン・プロパン・パートナーズ、スター・ガス・ パートナーズ、バックアイ・パートナーズ、フェレルガス・パートナーズ、プレーンズ・オー ルアメリカン・パイプライン。 (出所)トムソン・ロイターより野村證券投資情報部作成。 シェールガス関連のインフラファンドであるMLP指数(マスター・リミテッド・パートナーシップ)は原油価格との連動性が強い。 株価(S&P 500 指数)とも概ね連動する傾向にあるが、ITバブルとその崩壊があった2000年近辺、原油価格が大幅下落した2014年後半以降のよう に、局面によっては動きが異なる。 月刊 資産管理 2016年2月号 90 主要国・アセット市場の動向 【欧米の連続増配株価指数】 米国 欧州 00年1月3日=100とする指数 日足(00年1月3日~16年1月15日) (03年初=100) 350 240 S&P 500 配当貴族指数(価格指数) 300 200 S&P 500 指数(価格指数) S&Pヨーロッパ350配当 貴族指数(価格指数) S&Pヨーロッパ350指数 (価格指数) 250 160 200 150 120 100 80 50 40 0 00年 05年 10年 15年 (注)データは日次で直近値は16年1月15日。 (出所)S&P、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)データは週次で直近値は16年1月15日。 (出所)S&P、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 91 MSCIについて ■分析に利用したデータ 国内短期資産:有担保コール翌日物 国内債券:NOMURA-BPI指数(総合) 国内株式:TOPIX(配当込み)(1989年1月以前は、TOPIXと東証1部平均利 回りから計算) 外国債券(為替ヘッジなし):シティ・グループ世界国債指数(除く日本:円 ベース) 外国債券(為替ヘッジあり):シティ・グループ世界国債指数(除く日本:円ヘッ ジベース) 外国株式(為替ヘッジなし):MSCI-KOKUSAI(配当込み:円ベース) 外国株式(為替ヘッジあり):MSCI-KOKUSAI(配当込み:円ヘッジベース) ■MSCIデータの利用に関する注意事項 本資料中に含まれるMSCIから得た情報はMSCI Inc.(「MSCI」)の独占的財産で す。MSCIによる事前の書面での許可がない限り、当該情報および他のMSCIの 知的財産の複製、再配布あるいは指数などのいかなる金融商品の作成におけ る利用は認められません。当該情報は現状の形で提供されています。利用者は 当該情報の利用に関わるすべてのリスクを負います。これにより、MSCI、その関 連会社または当該情報の計算あるいは編集に関与あるいは関係する第三者は 当該情報のすべての部分について、独創性、正確性、完全性、譲渡可能性、特 定の目的に対する適性に関する保証を明確に放棄いたします。前述の内容に 限定することなく、MSCI、その関連会社、または当該情報の計算あるいは編集 に関与あるいは関係する第三者はいかなる種類の損失に対する責任をいかな る場合にも一切負いません。MSCIおよびMSCI指数はMSCIおよびその関連会 社のサービス商標です。 使用した指数について 米国ハイ・イールド債券:BofA・メリルリンチ・USハイ・イールド・コンストレインド・インデックス。1996 年12月末までは、BofA・メリルリンチ・USハイ・イールド・インデックスを使用。 欧州ハイ・イールド債券:BofA・メリルリンチ・ユーロ・ハイ・イールド・コンストレインド・インデックスを 使用。 新興国ハイ・イールド債券:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバ ル(BB格以下)、JPモルガン・コーポレート・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・ブロー ド(BB格以下)を50%ずつ合成した指数を使用。 米国10年国債:BofA・メリルリンチ米国10年国債インデックスを使用。 ●BofA・メリルリンチ・USハイ・イールド・コンストレインド・インデックス(BofA Merrill Lynch US High Yield Constrained Index)、BofA・メリルリンチ・USハイ・イールド・インデックス(BofA Merrill Lynch US High Yield Index)、BofA・メリルリンチ・ユーロ・ハイ・イールド・コンストレインド・インデックス (BofA Merrill Lynch EURO High Yield Constrained Index)、BofA・メリルリンチ米国10年国債イン デックス(BofA Merrill Lynch Current 10-Year US Treasury Index)は、バンクオブアメリカ・メリル リンチが算出する指数です。当該指数に関する一切の知的財産権その他一切の権利はバンクオ ブアメリカ・メリルリンチに帰属しております。 ●JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル(JP Morgan Emerging Market Bond Index Global)は、J.P. Morgan Securities LLCが公表しているエマージング・マー ケット国債を対象としたインデックスであり、その著作権および知的財産権は同社に帰属します。 JPモルガン・コーポレート・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・ブロード(JP Morgan Corporate Emerging Market Bond Index Broad)は、J.P. Morgan Securities LLCが公表している エマージング・マーケット社債を対象としたインデックスであり、その著作権および知的財産権は 同社に帰属します。 野村アセットマネジメントの情報を基に野村證券投資情報部作成 ハイ・イールド債券について 格付機関によって投資適格よりも低い格付けが付与されている債券で、投資適格債と比較して、 発行体の財務内容の悪化などから債券の元金や利払いの支払が滞ったり、支払われなくなる信 用リスクが高い一方、利回りが高い特徴があります。 月刊 資産管理 2016年2月号 92 グローバル分散投資① 主要通貨(対円)の年別リターンの推移 (%) 順位 2000年 2001 2002 2003 1 ドル 11.8 メキシコペソ 21.3 南アランド 26.4 豪ドル 21.1 2 メキシコペソ 9.8 ドル 15.2 NZドル 13.5 南アランド 15.7 3 カナダドル 7.9 英ポンド 12.0 ユーロ 6.3 NZドル 12.9 4 ユーロ 4.6 インドルピー インドルピー ユーロ 8.9 5 6 4.3 11.5 2004 ブラジルレアル カナダドル カナダドル 3.5 8.4 -8.7 NZドル 4.7 メキシコペソ 20.6 ユーロ 12.5 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 トルコリラ 13.6 ドル -18.6 ブラジルレアル 36.1 豪ドル -0.7 豪ドル -5.0 メキシコペソ 22.2 ユーロ 26.5 ドル 13.7 ドル 0.5 ユーロ -2.2 ブラジルレアル 12.3 ユーロ -22.0 南アランド 南アランド 31.0 -2.2 ドル -5.2 NZドル 20.0 英ポンド 23.7 インドルピー インドルピー 11.4 -4.3 ドル -2.7 ブラジルレアル カナダドル ブラジルレアル カナダドル カナダドル 3.9 19.1 10.5 9.4 -33.3 ドル 15.1 豪ドル 8.6 インドルピー インドルピー 4.8 -34.0 カナダドル 9.6 ユーロ 2.8 トルコリラ 14.7 NZドル 4.1 豪ドル 3.8 豪ドル -34.3 ユーロ 8.4 英ポンド 2.6 インドルピー インドルピー 10.6 2.9 ユーロ 3.4 メキシコペソ -35.1 NZドル 9.4 ドル 0.9 NZドル 1.9 7 英ポンド 3.4 NZドル 8.2 インドルピー -9.3 トルコリラ インドルピー 6.8 0.7 8 豪ドル -4.9 豪ドル 5.3 ドル -9.8 英ポンド 0.2 トルコリラ -0.6 豪ドル 7.9 9 NZドル -5.3 インドルピー -5.0 豪ドル -0.7 英ポンド 3.3 ドル -9.6 メキシコペソ -3.7 ブラジルレアル メキシコペソ -2.8 -20.3 2006 南アランド ブラジルレアル 英ポンド 13.0 30.8 14.9 英ポンド ブラジルレアル カナダドル -0.1 10.6 2.9 豪ドル -0.9 2005 2016 (~1月) 10 南アランド 南アランド トルコリラ -9.5 -27.0 -21.5 11 トルコリラ トルコリラ ブラジルレアル メキシコペソ -9.5 -46.4 -41.1 -16.6 ドル -4.5 カナダドル 南アランド 0.7 -4.4 メキシコペソ -0.7 南アランド トルコリラ 2.9 -3.7 ユーロ 0.5 英ポンド -5.2 ドル -6.5 南アランド メキシコペソ -8.9 -7.3 豪ドル 30.1 NZドル -6.0 NZドル -5.3 トルコリラ 19.2 ドル 21.4 NZドル 8.0 NZドル 27.3 メキシコペソ -7.7 英ポンド -5.6 英ポンド 17.9 NZドル 20.3 英ポンド 6.9 ユーロ -9.8 インドルピー トルコリラ 4.5 豪ドル -10.5 英ポンド -5.9 豪ドル 4.2 NZドル -12.0 トルコリラ -6.8 メキシコペソ -13.7 カナダドル -7.4 カナダドル カナダドル カナダドル カナダドル メキシコペソ 18.6 -7.8 -7.3 15.8 19.8 英ポンド ブラジルレアル 13.3 -8.3 ブラジルレアル インドルピー -37.4 7.4 NZドル -38.1 メキシコペソ 7.2 ユーロ -8.2 インドルピー ブラジルレアル -15.5 -9.3 ドル -12.6 メキシコペソ -16.0 トルコリラ トルコリラ トルコリラ インドルピー -38.4 5.6 -15.0 -20.1 ユーロ 14.9 カナダドル 13.4 豪ドル 14.6 インドルピー カナダドル 3.9 8.0 ドル 12.7 インドルピー 8.7 英ポンド ブラジルレアル -4.9 -4.8 ブラジルレアル 南アランド カナダドル 5.2 2.7 -15.6 豪ドル 4.1 ブラジルレアル トルコリラ 1.0 -19.6 英ポンド -40.0 ユーロ 5.0 英ポンド -15.6 南アランド 南アランド トルコリラ -22.4 7.6 0.8 メキシコペソ 0.5 南アランド -41.0 ドル 2.5 ユーロ -18.4 トルコリラ ブラジルレアル 南アランド -22.7 2.6 -1.8 ユーロ 0.0 南アランド -24.8 -5.0 NZドル -7.9 豪ドル -8.2 メキシコペソ -8.5 ブラジルレアル 南アランド -32.5 -10.5 (注)各年末値比でのリターン。16年は1月15日時点。 (出所)Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 93 グローバル分散投資② 主要資産の年別リターンの推移 (%) 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 ロシア 原油 81.5 56.4 香港H株 8.2 2008 2009 香港H株 原油 ロシア 上海A株 上海A株 金 ロシア 152.2 33.4 83.3 130.6 96.1 5.4 128.6 ロシア ブラジル ブラジル 日本 香港H株 香港レッドチップ 英国 ブラジル 38.1 97.3 17.8 43.5 94.0 83.5 -31.3 82.7 金 金 インド インド インド 香港レッドチップ 原油 商品 2.4 24.4 72.9 13.1 42.3 72.1 57.7 ブラジル 商品 ロシア 商品 原油 ロシア -11.0 18.4 58.0 12.5 40.8 70.7 2010 2011 2012 金 金 29.5 10.2 ロシア 原油 22.5 8.2 インド 商品 -35.0 81.0 17.6 香港H株 米国 上海A株 インド 英国 55.9 -38.5 79.8 17.4 -5.6 2016 (~1月) 2013 2014 2015 ドイツ 日本 上海A株 日本 金 29.1 51.5 53.1 2.6 2.6 インド 米国 インド ドイツ インド 25.7 29.6 29.9 -6.4 -6.4 米国 香港レッドチップ ドイツ 米国 上海A株 英国 0.0 23.1 25.5 11.4 -7.0 -7.0 日本 英国 香港H株 米国 米国 18.0 14.4 10.8 -8.0 -8.0 米国 香港H株 香港レッドチップ 日本 ブラジル インド インド ドイツ 原油 ドイツ 商品 香港H株 インド 日本 ロシア 商品 -13.0 13.2 41.2 10.2 27.7 46.7 47.1 -40.4 78.0 16.1 -8.2 15.1 9.0 8.1 -9.2 -9.2 英国 インド ドイツ 香港レッドチップ ドイツ ブラジル ブラジル ブラジル 香港H株 原油 香港レッドチップ 米国 原油 ドイツ 英国 日本 -16.2 3.5 37.1 9.0 27.1 32.9 43.6 -41.2 62.1 15.1 -11.7 13.4 6.9 2.7 -9.4 -9.4 商品 ブラジル 米国 米国 香港レッドチップ 金 金 日本 金 米国 ドイツ ロシア 香港レッドチップ 金 インド ブラジル -17.2 -17.0 26.4 9.0 24.3 23.0 30.9 -41.8 24.8 12.8 -14.7 10.7 0.5 -1.8 -11.0 -11.0 インド 上海A株 日本 ロシア 商品 ドイツ ドイツ 香港レッドチップ ドイツ 英国 ブラジル ブラジル 商品 英国 香港レッドチップ ドイツ -17.9 -17.1 23.8 8.3 18.9 22.0 22.3 -46.1 23.8 9.0 -18.1 7.4 -4.9 -2.7 -11.1 -11.1 香港レッドチップ 日本 金 英国 金 米国 商品 香港H株 商品 香港レッドチップ 日本 金 香港H株 ブラジル 金 ロシア -18.3 -18.3 19.6 7.5 18.1 13.6 22.2 -51.1 23.6 2.7 -18.9 7.1 -5.4 -2.9 -13.7 -13.7 日本 米国 英国 ドイツ 英国 英国 ロシア インド 米国 ブラジル 上海A株 英国 ロシア 香港レッドチップ ブラジル 香港H株 -19.6 -23.4 13.6 7.3 16.7 10.7 19.2 -52.4 23.5 1.0 -21.6 5.8 -5.5 -4.5 -14.7 -14.7 香港レッドチップ ドイツ 英国 商品 金 香港H株 日本 英国 原油 香港レッドチップ 香港H株 香港H株 上海A株 上海A株 商品 香港H株 -19.8 -24.5 11.3 5.6 12.4 1.9 3.8 -53.5 23.3 -0.8 -21.7 3.1 -6.8 -17.9 -14.9 -14.9 上海A株 香港レッドチップ 上海A株 香港H株 米国 原油 米国 上海A株 英国 日本 ロシア 商品 ブラジル ロシア 商品 上海A株 -21.9 -24.6 10.6 -5.6 3.0 -0.3 3.5 -65.4 22.1 -1.0 -21.9 -3.3 -15.5 -45.3 -18.0 -18.0 原油 ドイツ 原油 上海A株 上海A株 商品 日本 ロシア 日本 上海A株 インド 原油 金 原油 原油 原油 -25.3 -43.9 4.0 -15.2 -8.2 -2.9 -12.2 -72.4 5.6 -14.5 -24.6 -7.1 -28.0 -45.6 -20.7 -20.7 (注)日本:TOPIX 米国:S&P500 英国:FTSE100 インド:SENSEX30種指数、ロシア:RTSIドル指数、ブラジル:ボベスパ指数、ドイツ:DAX指数、 原油:WTI 金:NY金 商品:ロイター・ジェフリーズCRB指数。各年末値比でのリターン。16年は1月15日時点。 (出所)Thomson Reuters Datastreamより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 94 グローバル分散投資③ 日本の実質預金金利の推移 (%) 5 4 1997年4月、 消費税増税 (3%→5%) 日本の年代別・資産価格の実質リターン 原油価格高騰 2014年4月、 消費税増税 (5%→8%) (%) 20 17.6 15 預金 債券 株式 土地 3 2 10 8.8 5.5 1 5 0 -1 -2 -3 -4 2.1 0.9 6.3 2.6 5.1 2.1 1.9 0.4 1.1 0 1年物名目預金金利 1年物実質預金金利 消費者物価(前年同月比) 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 (年) (注)データは月次で直近値は2015年11月。 (出所)日銀、総務省、野村総合研究所より野村證券投資情報部作成 -5 -0.3 -0.5 -2.9 -1.9 -3.2 -3.7 -6.2 -5.9 -10 1970-79 1980-89 1990-99 2000-09 2010-14 (年) (注) 各年代別にリターンを累積して年平均(幾何平均による)を計測。実質化は消 費者物価の前年比を用いている。預金は1年物定期預金金利、債券はNOMURABPI指数(総合)、株式はTOPIX、不動産は公示地価(住宅地)。 (出所)各種資料・データより野村證券投資情報部作成 インフレ率の上昇を受け、2013年6月以降、実質預金金利(1年名目預金金利-物価上昇率)がマイナスへ転じたが、2014年の消費税 増税の影響が一巡した2015年4月以降はゼロ近辺に戻っている。 物価変動を考慮した国内の各資産の実質リターンを求めてみると、1970年代の極端なインフレ期の預金と債券、1990年代から2000年 代のデフレ期における株式と不動産のパフォーマンスが良くなかったことが確認できる。 一方、緩やかなインフレ期であった1980年代は、各資産ともインフレ抵抗力を備えていたことがわかる。 月刊 資産管理 2016年2月号 95 グローバル分散投資④ 公的・準公的資金の運用収益率の推移 日本の公的年金運用資産の構成と今後予想される変化 (02年=100) 180 160 2013年6月ま での基本ポー ト フ ォ リオ GPIF 国共連 地共連 私学事業団 基本ポートフォリオ 乖離許容幅 140 外国株式 短期資産 9% 5% ±5% - 2013年6月~2014年10月の基本ポー ト フ ォ リオ 120 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 12 12 (年度) 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 GPIF 7.6% 2.9% 9.6% 3.5% ▲4.7% ▲7.6% 7.9% ▲0.3% 2.3% 10.2% 8.6% 12.2% 国共連 3.8% 2.7% 5.4% 2.8% ▲0.5% ▲3.9% 5.5% 1.2% 2.1% 5.1% 4.6% 7.5% 地共連 9.6% 3.8% 12.3% 4.0% ▲4.4% ▲8.9% 8.0% ▲0.2% 2.5% 9.8% 8.4% 11.4% 私学事業団 2.6% 3.4% 5.8% 4.1% ▲2.8% ▲7.6% 8.3% 0.2% 1.8% 9.2% 7.3% 9.0% 100 国内債券 国内株式 外国債券 67% 11% 8% ±8% ±6% ±5% (注1)折れ線グラフは累積収益率。 (注2)運用利回り(収益率)のデータ元は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)はGPIF、国共 連(国家公務員共済組合連合会)、地共連(地方公務員共済組合連合会)、私学事業団(日本私立学 校振興・共済事業団)は03-12年度が「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する 有識者会議報告書」、13、14年度がそれぞれ国共連、地共連、私学事業団。 (出所)「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」(平成25年 11月20日公表) 、GPIF、国共連、地共連、私学事業団より野村證券投資情報部作成 基本ポートフォリオ 乖離許容幅 国内債券 国内株式 外国債券 60% 12% 11% ±8% ±6% ±5% 外国株式 短期資産 12% 5% ±5% - 2014年10月31日公表の新基本ポー ト フ ォ リオ 基本ポートフォリオ 乖離許容幅 国内債券 国内株式 外国債券 35% 25% 15% ±10% ±9% ±4% 外国株式 25% ±8% (出所)GPIFより野村資本市場研究所作成 国民の年金資産の運用は、一定水準の国際分散投資が行なわれてきていたが、他の先進国の公的年金の運用に比較し、分散の度 合いが低いと言われている。 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は14年10月に株式運用の比率を5割に高めることを柱とする新たな方針を発表し、運用の 積極化に着手した。 月刊 資産管理 2016年2月号 96 グローバル分散投資⑤ GPIFの資産構成の推移 3共済年金の資産構成の推移 基本ポートフォリオ (%) の資産配分比率の中心値 80 30 20 70 60 60 40 の資産配分比率の中心値 国内債券 70 50 基本ポートフォリオ (%) 基本ポートフォリオの資産配分比率 (%) 下限 中心値 上限 国内債券 25 35 45 国内株式 16 25 34 外国債券 11 15 19 外国株式 17 25 33 短期資産 0 - 50 15/9末 実績 39.0 21.4 13.6 21.6 4.5 国内債券 40 10 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 国内株式 30 外国株式 20 外国債券 10 15 (年)短期資産 (注)基本ポートフォリオの資産配分比率の表は、14年10月31日に公表された新しい 目標値。直近の値は15年9月末。 (出所)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)より野村證券投資情報部作成 基本ポートフォリオの資産配分比率 (%) 下限 中心値 上限 国内債券 25 35 45 国内株式 16 25 34 外国債券 11 15 19 外国株式 17 25 33 短期資産 0 - 15/3末 実績 54.3 18.7 9.6 14.3 2.3 国内株式 外国株式 外国債券 短期資産 0 13/3 14/3 15/3 (年/月) (注)3共済の運用資産合計に対する各資産の比率の推移を示した。ただし、地共連の13 年3月末については基本ポートフォリオの比率を用いた。基本ポートフォリオの資産配分 比率の表は、14年10月31日に公表されたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の 新しい目標値。直近の値は15年3月末。 (出所)地方公務員共済組合連合会(地共連)、国家公務員共済組合連合会(国共連)、 日本私立学校振興・共済事業団(私学共済)より野村證券投資情報部作成 14年10月に発表された新しい基本ポートフォリオに向けて、GPIFの資産構成は変化している。15年9月末の国内株式比率は 21.4%となった。 地共連、国共連、私学共済の3共済年金(合計運用金額は約33兆円)も、本年10月からGPIFの基本ポートフォリオを目指した 資産構成に移行していく予定である。 月刊 資産管理 2016年2月号 97 グローバル分散投資⑥ 日本郵政グループの運用資産 貸出金 1.3% 預け金等 23.9% 金銭の信託 1.8% ゆうちょ銀行 運用資産合計 205兆円 (15年9月末) 外国証券 20.0% 国債 45.3% 金銭の信託 その他 2.0% 貸付金 8.7% 11.1% 外国証券 4.2% 社債 5.1% 社債 7.4% 地方債 2.7% かんぽ生命 運用資産合計 85兆円 (15年9月末) 国債 55.2% 地方債 11.2% (注)15年4月発表の「日本郵政グループ中期経営計画」によれば、ゆうちょ銀行のサテライト・ポートフォリオ(14年度末、残高46兆円)のうち、 金銭の信託(株式)は2兆円程度であることが示されている。このサテライト・ポートフォリオとは主に信用・市場リスクテイクによる収益確保を 目的としたポートフォリオで、14年度末の46兆円から17年度末には60兆円へ拡大する計画である。 (出所)日本郵政グループより野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 98 グローバル分散投資⑦ グローバル分散投資効果 (1987年度末=100) 500 450 97~98年 87年10月19日 91年 350 300 92年 99~00年 94~95年 バブル崩壊と 不良債権問題 08年9月 リーマンショック LTCMショック ソロス対英国中銀 89年~ 日本の金融危機 98年 ロシア危機 98年 共産圏の崩壊 400 国内株式・国内債券・外国株式(為替 ヘッジなし)・外国債券(為替ヘッジなし)に 25%ずつ 03年 アジア通貨危機 ブラックマンデー ITバブル メキシコ通貨危機 国内株式・外国債券(為替ヘッジなし)に 50%ずつ 250 01年 200 国内株式・国内債券に50%ずつ アルゼンチン 危機 150 100 国内株式100% 50 0 87 90 93 96 99 02 05 08 11 14 (年度) (参考) 年度 国内債券 国内株式 外国債券(為替ヘッジなし) 外国債券(為替ヘッジあり) 外国株式(為替ヘッジなし) 外国株式(為替ヘッジあり) 1987 100 100 100 100 100 100 90 107 94 143 116 173 139 95 2000 161 198 81 66 174 242 161 185 251 516 231 348 05 206 94 363 209 673 380 10 229 52 346 229 562 389 11 235 52 363 247 565 398 12 244 64 428 258 728 455 13 246 76 493 262 965 544 (%) 14 253 100 554 287 1,192 614 (注1)算出期間は1988年3月末から2015年3月末まで。 (注2)各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとし て算出している。リバランスにかかるコストは考慮していない。 (注3)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡 易な手法にて行われている。 当該結果は前提条件の異なるもの、 より精緻な手法によるもの等とは異なる結果になることがある。また 当該結果は将来の結果を保証するものではない。 (出所) 各データより野村證券投資情報部作成 1987年以降、数多くのリスク局面を経ても、国際分散投資の効果が高かったことが示されている。 月刊 資産管理 2016年2月号 99 グローバル分散投資⑧ 国内株式・国内債券・外国株式(ヘッジなし)・外国債券(ヘッジなし)に 25%ずつ継続投資した場合の、投資期間別リターン (%) 30 10 -10 - 3年継続投資の場合 - 19.8 8.8 8.5 3.9 12.0 2.0 1.6 0.6 -0.5 17.5 15.5 11.8 9.5 7.2 -0.6 2.2 12.3 5.7 5.5 5.2 5.0 -5.4 -3.0 -8.6 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 -3.5 (年度) (%) 20 10 - 5年継続投資の場合 - 7.8 12.8 10.810.3 4.9 5.0 3.1 10.3 10.0 6.7 8.5 8.3 6.8 4.1 2.4 2.8 2.1 1.9 0 -0.2 -0.9 -0.9 -10 -2.5 -3.5 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年度) (%) 10 7.9 - 10年継続投資の場合 - 6.7 7.7 5.7 5.8 5.9 5 6.3 6.8 6.3 4.8 5.1 5.0 3.6 1.1 5.9 2.4 2.0 2.3 0 97 (注1)算出期間は1988年3月末から2015年3月末まで。 (注2)各リターンは、資産期間の各年度のリターンを累積し、平均(幾何平均によ る)を求めている。 (注3)各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとして算出している。 リバランスにかかるコストは考慮していない。 (注4)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行 われている。 当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等と は異なる結果になることがある。また当該結果は将来の結果を保証するものでは ない。 (出所) 各データより野村證券投資情報部作成 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 海外証券投資には為替変動リスクが伴うが、「時間」を分散す ることで相当程度対応が可能と考えられる。 国際分散ポートフォリオでの投資では、リーマン・ショックを含 む時期でも、10年間の投資では、マイナスのリターンとなった 年はなく、運用時間がもたらす効果にも注目すべきであろう。 (年度) 月刊 資産管理 2016年2月号 100 グローバル分散投資⑨ 野村の「資産設計」におけるポートフォリオ(ご参考) 野村の「資産設計」(資産配分シミュレーション) お客さまの投資に対する考え方や現在の 資産の状況をお伺いし、資産の持ち方な どをご提案するサービスです。 保守的 2.0% 3.0% やや保守的 普通 3.0% 6.0% 2.5% やや積極的 9.0% 23.5 % 21.0% 2.5% 2.0% 2.0% 6.0% 積極的 12.0% 6.5% 10.5% 10.5% 14.0% 9.0% 12.0% 5.5% 15.0% 33.5% 64.5% 11.5% 6.5% 60.5% 50.5% 期待 リ ターン 1.6% 期待 リ ターン 3.1% 期待 リ ターン 3.9% 期待 リ ターン 予想 リ スク 4.0% 予想 リ スク 7.4% 予想 リ スク 9.4% 予想 リ スク 国内株式 … NISAを通じた ・インデックスファンドA ・B銘柄 ・C銘柄 など 国内債券 … ・個人向け国債 など 外国株式(ヘッジなし) … ・外国株式ファンドF ・G銘柄 など 61.5% 34.0% 外国債券(ヘッジなし) … ・外国債券ファンドD ・E銘柄 など REIT(ヘッジなし) オルタナ 4.2% 11.3% 期待 リ ターン 予想 リ スク 4.6% 14.5% (注1)期待リターン、予想リスクは年率。リスクは標準偏差。 (注2) 15年11月の試算であり、実際の運用とは異なります。 (注3)オルタナとは、オルタナティブの略で、「代替資産」とも 呼ばれ、株式や債券などの伝統的な資産とは異なる資産。 (出所)野村證券投資情報部作成 月刊 資産管理 2016年2月号 101 グローバル分散投資⑩ リスク水準ごとのパフォーマンスイメージ 08年4月1日~15年12月30日 ※実際の運用とは異なります (08年4月1日=100) 170 160 08/4/1 10/4/26 日経平均:12656円 日経平均:11165円 円・ドル:101.85円 円・ドル:93.96円 11/10/4 日経平均:8456円 円・ドル:76.81円 150 15/12/30 日経平均:19,033円 円・ドル:120.52円 140 130 リーマン ショック 120 110 100 90 80 70 09/3/10 日経平均:7055円 円・ドル:98.67円 60 50 08/04 09/04 保守的 10/04 やや保守的 欧州債務 問題 11/04 普通 12/04 やや積極的 13/04 14/04 15/04 (年/月) 積極的 (注)上の図は、野村ファンドラップ(バリュー・プログラム)のサービスが開始された翌月月初の08年4月1日を基準として、 15年12月30日までの期 間、5段階のリスク水準ごとに、「REIT資産を組入れる」という投資制約条件で計算しております。契約更新時の資産配分の見直しは考慮しており ますが、簡便的に計算しております。ファンドの運用管理費用(信託報酬)等は、含んでいますが、野村ファンドラップの料金や税金等のコストは含 んでおりません。したがって実際の運用とは異なります。 (出所)野村證券投資顧問事業部作成(日経平均、円・ドル相場はブルームバーグ) 月刊 資産管理 2016年2月号 102 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス 今後の所得税改革について ~政府税制調査会「論点整理(平成27年11月公表)」をみて~ はじめに ❶ 平成28年度税制改正大綱が昨年12月に公表されました。消費税の軽減税率に関する議論がマスコミを賑わしましたが、個 人に関して特に大きな目玉改正はありません。 ❷ 新聞紙上で「先送りされた所得税改革」と書かれていましたが、個人所得課税に関しては従来にないような抜本的な改正が 政府税制調査会で検討されています。 山田コンサルティンググループ 山田FAS㈱ 税理士・CFP認定者 布施 麻記子 ❸ 今月号では、政府税制調査会から平成27年11月に公表された「論点整理」を一部紹介し、イ)私たちがおかれている現状 (人口動態・家族のあり方の変化・働き方の多様化等)、ロ)その観点からの所得税の課題と今後の所得税改革の方向性をみ ていきます。 ❹ イ)会社のセーフティーネット機能・家庭のセーフティーネット機能が低下している今日、社会のセーフティーネット機能を充 実させ、社会の安定性を維持するために、所得の再分配機能が重要であること、ロ)働き方の多様化により働き方の違いで有 利不利がないように所得税の仕組みを見直すこと、ハ)現役世代が老後の生活等に備えるための自助努力を税制面からも支 援すること、等々です。 ❺ 所得税改革は、政府税制調査会での検討がさらに続き、今年夏~秋に「中期答申」としてまとめられ、これを受けて与党税 制調査会での検討、そして、今年12月の「平成29年度税制改正大綱」と進んでいく予定です。 ❻ なお、この所得税改革の次に、「金融所得課税」と「相続税・贈与税」についての検討が続く予定です。 1.所得税抜本改革を検討中 平成27年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の とあり、これを受けて行われた検討の論点整理(経済社会の構 基本方針(骨太方針)2015」において、「低所得若年層・子育て 造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理)が平成27年 世代の活力維持と格差の固定化防止のための見直し、働き方・ 11月に政府税制調査会から公表されました。 稼ぎ方への中立性・公平性の確保、世代間・世代内の公平の この「論点整理」では、人口減少、家族のあり方の変化、働き 確保など、経済社会の構造変化を踏まえた税制の構造的な見 方の多様化、格差の拡大、産業・経済構造の変化、グローバル 直しを計画期間中のできるだけ早期に行うこととし、政府税制調 化等の個人を取り巻く社会・経済の構造変化から、あるべき所 査会を中心に具体的な制度設計の検討に速やかに着手する」 得税を幅広い視点から検討を進める必要があるとしています。 月刊 資産管理 2016年2月号 103 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス 2.現状を把握 平均理想子ども数と平均予定子ども数(1977年~2010年) 「論点整理」には様々な資料が紹介されています。その一部を 紹介しましょう(資料・数値は、すべて政府税制調査会「論点整 理」から)。 (1)少子化・晩婚化(未婚率アップ) ①1949年(昭24)の出生数は269.7万人、いわゆる戦後の第一 次ベビーブームです。これが、2014年(平26)は100.4万人。 ②一人の女性が2.07人子どもを産むと人口規模を維持できる のですが、今の現実は1.42人。ということで、人口減少が叫 ばれているのです。 ③「夫婦が理想とする子どもの数」は2.42人。「予定している子 ども数」は2.07人。「現在いる子どもの数」は1.71人。というの が2010年(平22)(右グラフ参照)。ということで、状況が許せ ば子どもを2人以上欲しいと考えているわけです。 ④ですが、年々、未婚率が増加しており、2010年(平22)では 35~39歳男性の1/3以上の人が未婚です(右表参照)。 ⑤年収と結婚は大きな関係があるようです。20~30歳代の男 性は年収が300万円未満の場合未婚率が90%以上(平成22 男女別、未婚率(2010年) 25~29歳 30~34歳 35~39歳 男性の未婚率 71.8% 47.3% 35.6% 女性の未婚率 60.3% 34.5% 23.1% 年度報告)。そして、結婚生活をスタートさせるにあたり必要 だと思う夫婦の年収について、20~30歳代の9割以上が「年 収300万円以上」と回答しています(平成26年度報告)。 月刊 資産管理 2016年2月号 104 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス (2)働き方(正規雇用と非正規雇用) ①非正規雇用が増加していることはよく報道されていますが、 非正規割合は、1995年(平7)20.9%であったのに対して、 2014年(平26)37.4%。近年の非正規雇用者数の増加のほ とんどは、60歳以上の男女と、59歳以下の女性ですが、15~ 59歳の男性でも増加しています。 雇用形態別の年齢別賃金水準(2014年) 月刊 資産管理 2016年2月号 105 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス ②正規雇用者は長期雇用を前提とした年功賃金により勤続年 ③非正社員は正社員と比べ結婚している割合が低く(左下の 数に応じて賃金が上昇するのに対して、非正規雇用者は年 グラフ参照)、また、希望する子どもの数・実際の子どもの数 齢などによらない賃金体系です(前ページグラフ参照)。 ともに、男女双方とも正社員の場合が最も多く、男性が非正 社員の場合実際の子どもの数が少なくなっています(下のグ 雇用形態別結婚状況(2002年~2010年) ラフ参照)。 希望する子ども数、実際の平均子ども数(2010年) 月刊 資産管理 2016年2月号 106 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス (3)高齢化 世帯」がそれぞれ大きく増加しています。 ①総人口は2008年(平20)の1億2808万人をピークに減少して なお、平成28年度税制改正で、三世代同居のためのマイ おり、2015年(平27)は1億2660万人。そして、生産年齢人口 ホームリフォームを行った場合の住宅ローン控除等が創設さ (15~64歳)はそれより速いスピードで減少する見込みです。 れる予定です。 ②生産年齢人口(15~64歳)の割合は1990年代前半をピーク に減少、2065年には50.6%まで低下する見込み。 ③一方、高齢者(65歳以上)の割合は上昇を続け、2015年(平 高齢者がいる世帯構成の推移 1975年(昭50) 1995年(平7) 2014年(平26) 三世代世帯 54.4% 33.3% 13.2% 一人世帯 8.6% 17.3% 25.3% 夫婦のみ世帯 13.1% 24.2% 30.7% 27)に26.8%に達し、2065年には40.4%となる見込み。 (5)女性の就業 (4)世帯の構成の変化 2016年4月にいわゆる「女性活躍推進法」が施行されます。 ①1985年(昭60)までは「夫婦と子ども世帯」が4割を超えてい 301人以上の労働者を雇用する事業主は、4月1日までに、自社 ましたが、その後減少し、「一人世帯」「夫婦のみ世帯」など の女性の活躍状況の把握を行い、課題を分析し、今後の行動 の割合が増加し、2010年(平22)には「一人世帯」が「夫婦と 計画を策定し労働局に届出、公表することになります。女性の 子ども世帯」を抜いて最も多い世帯類型となりました。 就業についてみていきましょう。 世帯の構成の推移 1970年(昭45) 1995年(平7) 2010年(平22) 平均世帯人員 3.41人 2.82人 2.42人 ①1990年代に共働き世帯(男性雇用者と無職の妻からなる世 夫婦と子ども世帯 41.2% 34.2% 27.9% 一人世帯 20.3% 25.6% 32.4% 夫婦のみ世帯 9.8% 17.3% 19.8% 帯)数と専業主婦世帯数は拮抗し、その後も共働き世帯数 が増加し、2014年(平26)では共働き世帯が60%を占めてい ます。 ②高齢者がいる世帯に着目してみましょう。 1970年代には「三世代世帯」が5割以上を占めていましたが、 2014年(平26)には1割強まで低下。「一人世帯」「夫婦のみ 専業主婦世帯数・共働き世帯の推移 1980年(昭55) 1995年(平7) 2014年(平26) 専業主婦世帯 1114万世帯 955万世帯 720万世帯 共働き世帯 614万世帯 908万世帯 1077万世帯 共働き世帯の割合(*) 36% ― 60% (*)男性雇用者がいる世帯に占める共働き世帯の割合 月刊 資産管理 2016年2月号 107 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス ②女性の労働参加の状況グラフです。1970年代~1990年代 等により就業を諦めている女性のうち、可能であれば就業し は、20~24歳で働き始め、その後結婚して退職、子育て後 たいと考えている女性を含めた「潜在的労働力率」は25~54 (35歳以降)に再就職しており、グラフは「M字カーブ」を描 歳において80%を超えています。状況が許せばずっと仕事 いていました。これに対して、2014年(平26)は、離職する人 をしたいと考えている女性が多いことがわかります。 が減り「M字カーブ」が緩やかになっています。また、子育て 女性の労働参加の状況 月刊 資産管理 2016年2月号 108 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス (6)自営業者の変化 ーネット機能が低下)。 いわゆる自営業者の数は年とともに減っています。1985年(昭 ・家族を形成する経済的余裕のない若年層が増加し、家族が 60)に885万人であった自営業者数は、2010年(平22)には551 いても十分な経済力がなくお互いの生活を支えることができ 万人です。そして、「伝統的自営業(農林漁業従事者、生産工 ない場合が増加(家族のセーフティネット機能が低下) 程従事者、小売・卸売店主、飲食店主・旅館主、大工、理容師・ これらを受けて、 美容師等)と士業等」以外の自営業者について、1985年(昭60) ①若年層・低所得層が意欲を持って働き、安心して結婚し子 は14.4%であったのが、2010年(平22)には28.7%に増えていま どもを産み育てることができるように す。これは、建築技術者、SE、保険代理人・外交員など使用従 ⇒○社会全体のセーフティーネット機能を充実させ、社会の 属性が高く雇用者に近い働き方である「雇用的自営等」と呼ば 安定性を維持するために、所得の再分配機能を充実さ れる人たちです。 せる。特に、所得控除方式は所得の高い人ほど税負担 が軽減されるため、これに代わる仕組みを検討する。ま 3.経済社会の構造変化を受けて、個人所得課税改革を た、従来、「所得計算上の控除(給与所得控除等)」に 「少子高齢化」「非正規雇用の拡大」等と言われて理解はして 比べ、「人的控除(基礎控除等)」の拡充があまり行われ いるつもりでしたが、具体的数字を見ますと、その現実にあらた てこなかったことを踏まえ、これら控除のあり方を全体と めてびっくりすることも少なくありません。 して検討する。 「論点整理」では以下のように「社会全体のセーフティーネッ ○働きたい女性が就業調整を行うことを意識しなくて済む ような仕組みづくり。具体的には、「配偶者控除」・「配偶 ト機能が低下してきている」と述べられています。 者特別控除」の見直し。 ・年功賃金・終身雇用の正社員を核とする日本型雇用システ ムが維持できなくなっており、また、若い世代において非正 ②働き方の多様化により働き方の違いで有利不利がないよう 規雇用が拡大し勤続年数に応じた賃金上昇を享受できない に 人が増えている(会社が提供してきた従来のようなセーフティ ⇒ 所得税の仕組みの見直し。例えば、増加している「雇用 月刊 資産管理 2016年2月号 109 特集 ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス 的自営等」の人たちは給与所得者と同じような状態であ れる支援が異なっているが、これらに影響されない公平 りながら「事業所得者」であるため所得計算上「必要経 な制度を幅広く検討する必要があります。その際、拠 費(実額)」を控除することになり、「給与所得控除(みな 出・運用・給付の各段階を通じた体系的な課税のあり方 し必要経費)」を控除できる「給与所得者」に比べ税負 を考え、また、給与・退職一時金・年金給付の間の税負 担が重くなっている実態があるようです。給与所得と事 担のバランス等も検討が必要です。 業所得を明確に分ける意義が薄れてきているとの課題 があります。 ここ20~30年の大きな変化を受けて、そして、これからの日本 ③現役世代が老後の生活等に備えるための自助努力を行う の元気のためにどうあるべきかを私たちも真剣に考える必要が ための支援が重要 ありそうです。今後、新聞・テレビ等で検討状況が報道されると ⇒ 企業年金・個人年金・貯蓄・投資・保険等に関する税制 思います。是非、興味を持ってご覧ください。 について、個人の働き方やライフコースによって受けら (注)この情報は、一般的な説明を目的としております。 実際の質問及び対策などは専門家にご相談ください。 月刊 資産管理 2016年2月号 110 Fund Lineup 野村證券 ファンドラインナップ 野村證券で取扱いのあるファンドをご紹介します。 <先進国株式> グローバル・ストック 愛称:世界樹 Aコース(為替ヘッジあり 年2回決算型) Bコース(為替ヘッジなし 年2回決算型) Cコース(為替ヘッジあり 毎月分配型) Dコース(為替ヘッジなし 毎月分配型) 先進国株式 豪ドル <豪ドル> 短期豪ドル債オープン (毎月分配型) 追加型投信/海外/債券 運用会社:大和住銀投信投資顧問 野村豪ドル債オープン・プレミアム 毎月分配型/年2回決算型 追加型投信/内外/株式 追加型投信/海外/債券 運用会社:野村アセットマネジメント 運用会社:野村アセットマネジメント ノムラ外貨MMF 豪ドル マネー マーケット ファンド(豪ドル建て) ルクセンブルグ籍/契約型/追加型外国投資信託 管理会社:グローバル・ファンズ・マネジメント・エス・エー 詳しくは各ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 ●ファンドは、値動きのある有価証券等に投資します(また、外貨建資産に投資する場合には、為替変動リスクがあります。)ので、基準価額は変動します。したがって、元金が保証されているものではありません。ファンドに生 じた利益および損失は、すべて受益者に帰属します。なお、投資信託は預貯金と異なります。 ●当資料は、ファンド紹介を目的として野村證券が作成した資料であり、金融商品取引法にもとづく開示書類ではありません。お申込みにあたっては、野村證券よりお渡しする投資信託説明書(交付目論見書)の内容をご確 認のうえ、ご自身でご判断ください。 ●各投資信託説明書(交付目論見書)のご請求・お申込みは野村證券へ。 ライフプラン① ライフプラン② ライフプラン③ 第14弾紹介キャンペーン広告 NISA① NISA② NISA③ NISA④ ジュニアNISA ファンドるいとう① ファンドるいとう② 無登録格付に関する説明書 格付会社に対し、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されております。 これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録の格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合、金融商品取引法により、無登録の格付業者が付与した格付(以下 「無登録格付」といいます)である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。 ○登録の意義について 登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対象の証券を保有している場合の格 付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の 監督を受けることとなりますが、無登録の格付業者は、これらの規制・監督を受けておりません。 ○格付業者について スタンダード&プアーズ ・格付業者グループの呼称等について 格付業者グループの呼称: スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」といいます。) グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号: スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号) ・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関連」の「無登録格付け情報」 (http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。 ・信用格付の前提、意義及び限界について S&Pの信用格付は、発行体または特定の債務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確率を示した指標で はなく、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流動性や流通市場での価格を示すも のでもありません。 信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変動する可能性があります。 S&Pは、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達することができるだけの十分な品質および量の情報が備わって いると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、S&Pは、発行体やその他の第三者から提供された情報について、監査、デュー・デリジェンスまたは独 自の検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証するものではありません。さらに、 信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが存在する場合もあることに留意する必要があります。 この情報は、平成26年1月31日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものではありません。詳しくは上 記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。 ご投資にあたっての注意点 弊社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.404%(税込み)(20万円以下の場合は、2,808円(税込 み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。 また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券 等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETNを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.404%(税込み)(20万円以下の場合は2,808円(税込み))の売買手数料をいただきま す。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、 別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.026%(税込み)(売買代金が75 万円以下の場合は最大7,668円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引 (募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくこ とがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 債券を募集・売出し等その他、当社との相対取引によってご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。債券の価格は市場の金利水準の変化に対応して変動し ますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがあります。加えて、外貨 建て債券は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 投資信託のお申込み(一部の投資信託はご換金)にあたっては、お申込み金額に対して最大5.4%(税込み)の購入時手数料(換金時手数料)をいただきます。また、換金時に直 接ご負担いただく費用として、換金時の基準価額に対して最大2.0%の信託財産留保額をご負担いただく場合があります。投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 として、国内投資信託の場合には、信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大5.4%(税込み・年率))のほか、運用成績に応じた成功報酬をご負担いただく 場合があります。また、その他の費用を間接的にご負担いただく場合があります。外国投資信託の場合も同様に、運用会社報酬等の名目で、保有期間中に間接的にご負担いた だく費用があります。 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動します。 従って損失が生じるおそれがあります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。また、上記記載の手数料等の費 用の最大値は今後変更される場合がありますので、ご投資にあたっては目論見書や契約締結前交付書面をよくお読みください。(2016年1月26日時点) 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、 一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 本資料は投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で 行ってください。なお、使用するデータ及び表現等の欠落・誤謬等につきましては当社はその責を負いかねますのでご了承ください。 また、本資料はご提供させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
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