スキルアップの勧め 私は、臨海薬局および自分の薬局の薬剤師の採用のため、今までに多くの薬剤師を面接して きました。面接あるいは仕事を通して、この業界には勘違いをしている人が珍しくないなと思 うことが多々あります。まともな方も大勢いますし、私がまともと言うつもりはありません。 大きく2つに分けることができ、1つは社会常識です。大学を卒業し大企業に就職すると、 ほとんど必ず新入社員研修があり、社会人のイロハを叩き込まれるものです。残念ながら、薬 局薬剤師の多くは、薬学以外の社員研修を受けたことがなく、勤務している薬局の常識が会社 (組織)の一般常識として身についているのではないかと思います。中途採用の薬剤師から、 「以 前の職場は~だったのに・・・(ここの職場はおかしい)。」と言われたことが何度もあります。 その人が人生を通じて習得した常識が会社(組織)の一般常識とずれているとき、その軌道修 正は大変です。見抜くことができれば、最初から入社してもらわない方が賢明と考えています。 新聞や本を読み、何がスタンダードかを知り、自分がいかにあるべきかを、常に意識して欲し いと思います。特に新聞は、論説、解説、コメンテーターの意見を読み、判断力を養って欲し いです。薬局長あるいはその上の職位で要求されるのは、判断力とバランス感覚です。 もう一つは、薬剤師としてのスキルです。面接の際に簡単なスキルチェックをすると、でき の悪さにため息が漏れることが多々あります。今回処方されている薬と患者さんの他科の疾病、 あるいは患者さんが服用している他科の薬との相互作用についてきちんと鑑査できない薬剤師 を数多く見かけます。日頃、ザル鑑査をしていたのではないかと疑われても仕方がありません。 日々の仕事を通しての知識の吸収は行っているが、その他に勉強をしていない人が多いよう です。プロのスポーツ選手は、一流選手ほどオフタイムにトレーニングに励んでいます。大企 業で部長クラスまで職位が上がっていく人は、例外なく就業時間以外に仕事に関する勉強をし たり、仕事の資料に目を通したり、あるいは考え事をしています。薬剤師としてプロ意識があ るのならば、仕事以外の場で勉強することは当然と思います。薬剤師は、薬学、医学などのエ ビデンスに基づく調剤・鑑査・服薬指導を行わなければなりません。そのためには、暇な薬局 でない限り、就業時間内だけで職責上必要とされるスキルを維持することは、難しいはずです。 来春は、初の6年生の薬剤師が社会に出てきます。薬剤師過剰の時代がすぐそこに迫ってい ます。薬局経営者の中からは、この機会にできの悪い薬剤師を切り、まともな薬局にしたいと 言う期待のようなぼやきも聞こえます。 しかし、薬剤師が過剰になっても、優秀な薬剤師は重宝されます。まずは、どこに行っても 通用する薬剤師を目指し、社会人として、薬剤師としてスキルアップするべきではないでしょ うか。 この記事を読んでいるあなたが、 「自分には全く当てはまらない、多くの薬剤師が誤解を受け るじゃないか。」と憤慨していることを願っています。
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