太公望 ・・ 可逆反応と不可逆反応 太公望と言えば、⽼⼈になってから、釣りをしていたら当時の周と言う中国の小国の王様に話しか けられて、軍師になってほしいと頼まれ、周の国を中国統一させたってことが有名ですが、「覆水盆 に返らず」 と言う言葉を作ったのも太公望です。 太公望は、紀元前 1000 年くらいの中国の⼈であり、今から 3000 年くらい前にいた⼈です。 若い頃から学問が好きで、本ばかり読んでいてあまり働かないので、奥さんは愛想を尽かして逃げ たそうです。 しかし、太公望には強い理想があり、自分の能⼒を決して妥協をせず、くだらない小役⼈の仕事 は自分には向いていないと言う強い信念があったため、貧乏暮らしであったようです。 また、軍師になりある程度⾦持ちになった太公望の元へ、逃げた奥さんが戻ってきて、復縁を迫り ましたが、太公望は茶碗に⼊った水を床に撒いて、 「この床に撒かれた水を茶碗に戻せたら復縁してもいい」 と言ったそうです。 これが、いわゆる 「覆水盆に返らず」 と言う言葉になりました。 化学の用語で、「可逆反応」 と 「不可逆反応」 と言う言葉があります。 文字通り、「可逆反応」 とは何事もなかったように元に戻せることで、反対に 「不可逆反応」 とは 元に戻せないことを言います。 ここで言う 「反応」 とは、何らかの変化が起こることですが、良く、「失敗したら元に戻せばいい」 と 言う⼈がいます。 これは可逆反応を前提としたことであり、自然界ではそのほとんどは不可逆反応なのです。 つまり、何かが起こっても元には戻らないということです。 例えば、⽣卵を茹でて、ゆで卵になったら、元の⽣卵には戻りませんよね。 肉を焼いて、焼き肉とした後で、やっぱりしゃぶしゃぶにしたいと思ってもできませんよね。 これと同じで、⼈間の心もそうだと思います。 例えば、誰かに暴言を吐いたり、不愉快な思いをさせた場合、言った本⼈は可逆反応のつもりで も、言われた方は不可逆反応ってことが多いです。 つまり、絶対に忘れないし、この時点で⼈間関係と言うか、信頼関係が破綻した場合に、元には 戻らない。 太公望は、これを「覆水盆に返らず」 と表現し、自分の奥さんの⾏為は不可逆反応だったと表現 しました。 オフィス後方支援 p. 1/2 但し、自然界での反応では、何でも不可逆反応になる訳ではなく、ある臨界点を超えると不可逆 反応となるが、臨界点の⼿前では可逆反応となることがほとんどです。 例えば、ばねは、あるところまでは伸ばしても元の姿に戻りますが、あまり伸ばし過ぎると、元の姿に 戻らなくなりますよね。 先程の例の⽣卵でも、茹でる時間が 1 秒とか 10 秒とか短ければ、⽣卵のままでしょうし。 どこまでが臨界点かは、全く⼈それぞれで、対象となる⾏いによっても違うでしょうし。 つまり、⼈⽣において、やり直しが利くとか、裏切った相⼿と元通りの関係を修復するということは、 自然界の法則から考えると、基本的に無理だと考えるのが当然だと思われます。 自分としては、裏切った相⼿を許してあげられるような度量の⼤きい⼈間になりたいとは思いますが、 決して心のきれいな神様ではないので、裏切った⼈を許してあげられるかどうかは自信がありません。 但し、相⼿に対して、臨界点を超える(=不可逆反応になってしまう)怒りや不信感を与えない ようにすることは、自分だけの努⼒でできることなので、他⼈を裏切らす、不快な思いを与えず、 臨界点を超える失敗をしないようにしたいと常々思っております。 オフィス後方支援 p. 2/2
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