50 オレオサイエンス 第 16 巻第 2 号(2016) 特集序言 「コロイド分散安定の界面科学」の 企画と編集にあたって 茂 木 和 之・山 本 靖 (株式会社 ADEKA・名古屋工業大学) コロイド分散は我々の日常生活と密接に関係した存在です。細胞や鉱物もコロイド分散系であり,コロイド 抜きに地球や生命を語ることはできないと言っても過言ではありません。気相・液相・固相すべてがコロイド 分散系の連続相(分散媒)と分散相(分散質)になり得ることから,コロイド科学の研究領域は非常に広く, 実験と理論の両面から様々にアプローチされてきています。 それらの中でも,連続相が液相のコロイド分散系は,医薬品・食品・生活用品のほか,多くの工業製品に利 用され,生化学などの基礎科学分野でも重要な領域です。この領域に絞っても最新動向や全体状況をご紹介す ることは出来ませんが,コロイド界面をクローズアップし,様々な手法で研究されている 5 名の先生方に執筆 頂きました。内容は,固液分散(サスペンション)安定化における界面活性剤や表面構造設計に関する研究, 液液分散(エマルション)安定化に対する高分子や固体粒子の影響に関する研究,細胞などの剛性を持たない 生体コロイド粒子間の相互作用に対する理論的研究,超臨界水という特殊な状態の水相中におけるコロイド分 散に関する研究としました。 様々な相や状態のコロイドを応用した製品の品質や機能を制御する上で,その界面を制御することは非常に 重要で,分散安定化に対して様々な方法,視点で理解することは有用です。また,連続相が相変化した特殊状 態でのコロイド分散は,通常とは異なる界面挙動を示し,新規の分散手法や材料開発において無限の可能性を 秘めているとも言えます。このような視点からもう一度コロイド科学に接することで,更なる理解の一助にな れば幸いです。 最後に,大変お忙しい中,本企画にご賛同頂き,快く執筆頂きました先生方に心より深く感謝申し上げます。 ― 2 ―
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