ようちえんにいきたくない。 - livedoor Blog

おとなのための傾聴絵本
ようちえんにいきたくない。
さくしゃ
MUJIMUJI
子どもを
「自立的に育てたい。」
と思っているすべての
おとうさん、おかあさんに
贈ります。
あさ。
まーちゃんはようちえんの
ねんちょうさん。
でもきょうは、うかないかお。
どうしたの?
あ、ママ。
ようちえんにいきたくないの。
ようちえんにいきたくないの?
うん。
そんなあ。
園バスが来るまであと15分
しかないのに。
今そんなことを言われても!
そんなあ。
園バスが来るまであと15分
しかないのに。
今そんなことを言われても!
・・・って、そんな話を聞いたら
そう思うのって、
自然よね、ワタシ。
あわてるキモチを
味わってみる。
そう。
あわてるのも無理はない。
あわてるのが自然なこと。
それがふつうなこと。
誰でもそうなること。
そのカンジを
味わってみる。
じっくり
味わってみる。
・・・
・・・ふう。
んっ。
行きたくないのは、
なにか気になることがあるの?
うん。
おしえてくれる?
・・・たかしくんがいじめるの。
たかしくんがいじめるのかあ。
・・・うん。
そのとき、まーちゃんは
どんなきもちになるの。
いやなきもち。
いじめられて
いやなきもちを
おもいうかべて
味わってみる。
じっくり
味わってみる。
そりゃ、いやなきもちだわ。
ねえ
まーちゃんが
いじめられているとき、
助けてくれる人いないの?
いるよ。
せんせい。
せんせいだね。
うん。
ほかには?
りのちゃんとゆうきくんも
たすけてくれるよ。
せんせいと、
りのちゃんと、
ゆうきくんか。
うん。
まーちゃんの味方は
3人いるのね。
うん。3人いるの。
せんせいと、
りのちゃんと、
ゆうきくん、
その3にんが、たすけてくれると
どんなキモチ?
うれしいの。
うれしいのか!
うん!
そうしたら、
今日はその3人に
ありがとう!っていいにいこうか。
うん!いく!
いってらっしゃい!
うん!
ほっ。
園バスに間にあった。
おしまい。
いかがでしたでしょうか。
この物語には傾聴やカウンセリングの
技法が随所に盛り込まれています。
■沈黙
「どうしたの?」「あ、ママ」のあと、まーちゃんは少し言いよどんでいます。
そのとき、ママはせかすことなく、黙ってまーちゃんの言葉を待っています。
沈黙は、次の言葉を頭の中で組み立てている途中なので、待ってあげましょう。
実はママは、この4つの「S」に沿って点検をしていたのです。
まーちゃんにとってのsupportとして①せんせい、②りのちゃん ③ゆうきくんの3
人の名前が挙がりましたので、ママはこの3人に「お礼を言いにいこうか。」と提案
します。
まーちゃんは、ママのこの言葉で、いじめっ子のたかしくんではなく、味方である
3人の存在に意識を向けることができました。「味方がいるんだから安心だ!」と自
ら行動する勇気が出てきます。逆説的ですが、リスクにチャレンジするときには、
気持ちのどこかに安心感が必要なのです。
■自立を促す。
■自分の気持を“味わう”
まーちゃんが幼稚園に行きたくないと言った時にあわてるママの気持ち。その
気持ちから即座に行動してしまうと、おそらくママは「そんなこと言わないで、行
きなさい!あと15分しかないのよ!」と言ってしまうでしょう。
ここでは行動にうつす前に、いったん自分でその気持ちを”味わって”います。
たとえるなら、コーヒーを飲むとき、カフェインの効果でいきなり攻撃的な態度に
なるのではなく、まずコーヒーの苦味をよく味わう。というような感じでしょうか。
■他人の気持ちを”味わう”
自分の気持ちを味わったら、今度は他人の気持ちを味わってみます。これが”
共感(=共に感じる)”です。相手の気持ちを理解しようとしたときに、相手は、
「自分のことをわかってくれた。」「この人は信頼できる。」と感じます。
このときに「あ、それ私も経験あるある!」と思ったら、それは共感ではなく同感
です。同感を始めた瞬間から、自分の気持ちが抑えられなくなり、相手の話を聴
く事ができなくなることがありますので、注意が必要です。
■復唱/伝え返し
ママは「たかしくんがいじめるのかあ。」「せんせいだね。」「うれしいうのか!」と
まーちゃんの言葉を復唱し、本人に伝え返しています。これにより、まーちゃん
はママが話を聴いてくれていることを実感し、安心して続きを話すことができます。
この安心感がないと、本当のことをいくら聞き出そうとしてもなかな本音を話し
てはもらえません。「本当のことをいいなさい!」と詰め寄れば、ますます逆効果
です。
■4S点検
まーちゃんの気持ちを感じ取ったママは、次にまーちゃんにとっての”味方”が
いないかを聴き出します。実はこのママの行動には、「4S点検」というキャリアカ
ウンセリングの手法が背景にあります。
・situation:いまどんな状況で、どう感じているか。
・self:自分はどうしたいか。
・support:支援者、味方はいるか、使える資源はあるか。
・strategy:資源を生かして、どのように対策をしていくか。
まーちゃんはママの指図に従ってはいません。幼稚園にいくという判断は、最
終的に本人が自ら決断しています。誰かに言われて従うのではなく、自ら考えて
行動する。これが自立です。
他人に従って生きるだけでは、自分のためではなく他人のための人生を生きる
ことになり、自分が本当にlこの人生でやりたかったこと、実現したかったことをせ
ずに終わってしまいます。そして死ぬ間際になって「なぜあのときにやっておかな
かったんだろう。」と後悔することになってしまうかも。これではもったいない人生で
す。
自立と言っても、自分ひとりですべてやりなさい。ということではありません。4S
点検では「support」があるとおり、困ったときには自分の味方を探して、助けてもら
えばいいのです。どのような場面であっても、友人知人、自治体の支援制度や自
分の知識、経験、スキル、持ち物、道具など・・・自分に使える資源は必ずあるも
のです。
■さいごに
産業カウンセリングやキャリアコンサルティングは、自分が何をやりたいのか、を発
掘し、自分の中の「資源」を掘り起こすことができ、より豊かな生き方を描くために
有効な場です。自分の感情が整理できないときや、どうすればいいか迷っている
ときにぜひ、活用してみてください。
財)日本生産性本部認定キャリアコンサルタント
産業カウンセラー
MUJIMUJI