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たなか醫院診聞 178 号
24 時間自宅で生活をされています。私の往診は、
「いかがですか」の声かけの代わ
2016.1.27 発行
復刊
りに、彼女の鼻に自分の鼻をつけ、彼女がにっこり笑う、
「今日も元気だ」と、こ
の確認が状態を知る唯一の診察方法です。ご長男からの手紙『トックリランをお
引き取りいただきありがとうございました。
(中略)トックリランも皆さんに観て
いただき、少しでも癒しになってもらえれば喜ぶと思いますので宜しくお願いし
ます』
ずいぶんご無沙汰をいたしました。昨年 9 月「突然の休刊、そして廃刊」。以来
5 カ月が経ちました。8 月下旬、ここ数年温め心血を注いで準備してきたものが音
を立てて壊れ、心も体も消耗し切り、書くことを休みました。そして、2 か月ほど
経ち「さあ、もう一度」と立ち直りかけた所、古いメンバー3 人の突然の退職。再
び崖の上に立たされましたが、幸い新しい方の応募があり、ようやく新年を迎え
る事ができました。「これまで通りはいかない」と、夕方 30 分閉院の時間を繰り
上げ、第三土曜日を休日とし、在宅の方も無理を言って訪問の回数を減らしまし
た。そうこうして、ようやく今月 21 日、こうして 5 カ月遅れの 178 号に取りかか
ることができました。色々ご心配をおかけし、
「これを楽しみにしていたのに」
「「今
度いつ出るのですか」等々激励の言葉をいただきました。1月に入って、
「また始
めるか」、しかし「作家でもない自分が書くこととは何だろう」と自問しながら、
ようやく単純な結論に至りました。「伝えたいことがある」。医師として外来、往
診をし、多くの患者、スタッフに囲まれ、そうした日常の中で自分の中にあるも
のを伝える、このことがこの『診聞』のおおもとであると、改めて思います。不
安定で混とんとし始めた世界のこと、観たり読んだりした映画や本のこと。上手
くいったりまずかったりする料理のこと。また、ゆっくりと毎月とはいかないま
でも、これからも書いてゆこうと思います。
立派な 2m近くの鉢植えと、お手紙をいただきました。難病で長年終日ベッド上
の生活を強いられている、豊川トシさんのご長男からのものです。丸々とした木
の根っこがまるでどこかの国の女性のお尻のような「トックリラン」の鉢植えと
映画の話。『幸せの経済学』
。
監督;ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーゴリック、ジ
ョンページ
一緒に。最近トシさんは、ほとんど何かを訴えることができなくなっています。
この映画の主題は、グローバリゼーションと、それがもたらした弊害解決の一
それでも夫の孫次郎さんをはじめご家族の協力で、痰とり、おしめ替え、清拭と
つ「ローカリゼーション」。グローバリゼーションとは、『ヒト、モノ、カネ、
情報」などの移動が国境を越えて地球規模で盛んになり、政治的・経済的・文
化的な境界線、障壁がボーダレス化することで社会の同質化と多様化が同時に
進行するような「世界規模化」のこと。地球規模での情報ネットワークや市場
が形成され、情報や資本などが自由に移動し、その影響を世界各地が同時に受
けるようになることを意味する』。もっと直截にいえば、金融資本主義が極度
に発達し、「金・利益を生む」事の追及が、まるでイナゴの大群が大地のあら
ゆる作物を食い散らし、地の果てまで襲い掛かる姿に似ています。国境・人種・
宗教・生活様式の違いを破壊し超え広がっている。今やコカ・コーラは世界の
どんな小さな村でも飲め、アフリカの奥地ではマクドナルドの味を知った原住
民が、塩分過剰になり脳卒中が激発した、ことなど。西欧発の文明、モノが世
界各地に画一的に広がり、その結果固有の生活・文化を壊し、格差と貧困を生
み、激しい宗教の対立や、虐殺を伴う人種間の争い、ロシアや中国の膨張・拡
張政策に見られるような「新秩序の形成」する動き。あるいは、「イスラム国」
に見られるような「発展・成長」から取り残され、打ちひしがれたものの中か
ら生まれた、絶望と暴力。混とんとした世界の問題の根源が、このグローバリ
ズムにあると思います。モノとカネだけの繋がりでなく、切り離された人や自
然との繋がりを取り戻そうと提唱されているのが「ローカリゼーション」。人
間の根源的な欲望に根差したグローバリゼーションに、果たしてこのローカ
ル・地域化の提唱が、この地球が抱えている根本的解決になりうるか。輸送に
かかる膨大なエネルギーや、自由競争の名のもとの中小企業の淘汰、フランチ
ャイズ制による大型チェーン店による地元の小さい店の圧迫、多国籍企業の資
本の軍需産業への流入と戦争ビジネス化。これらから、「元に戻そう」「地域
での循環」
「資源の有効活用と持続可能な社会の創設」
「過去への回帰でなく、
適正技術を駆使した未来型の社会の創設」。要はヒトを、ヒトとヒトとの関係
を、地域文化さらには自然を大事にすることで人間らしい社会を取り戻そうと
いうことらしい。しかし、核分裂のように広がってゆくグロ-バルな波をこの
ローカリゼーションは、防ぎきれるのか、これがこの映画を観終わっての感想
です。
私の一工夫 おでんのあとのカレーうどん
里芋が好きで、福地村のプールの帰り、隣の産直「ジャックドハウス」よるの
が楽しみになっています。ここの里芋は、美味い。イカと煮ても、豚汁にしても
飽きない。そういえば、弘前大学に来た秋、
「芋煮会やります」と、医局の張り紙
に魅せられ、近くの滝のふもとに出かけたことを覚えています。芋鍋はどうやっ
て作るのか、調べた所牛肉、こんにゃく、ネギと芋。そこまでは想像通り。しか
し、世の中知らないことがあるもので、山形ではこの鍋のあと、残った御汁に、
カレールーを入れ、うどんを入れて最後の締めとするとのこと。これにヒントを
得て、おでんの翌日、そのだし汁にハウスバーモントカレーを入れ、茹でたうど
ん、出来上がったら、ネギを散らす。カレーうどんの出来上がり。2 日分の献立出
来上がり。