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石の丘
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景色
敷地と
坂道
この場所を訪れた時、まず何よりも、ここには美しい景色が必要だと感じました。この敷地に至る木漏れ日の落ちる森の坂道と、展望台あたりから広がる美しい瀬戸内の多島海への空間とをつなぐちょうど中間
に位置するこの場所には、まず、これらを結びつける美しい景色が必要だと思ったのです。敷地そのものは、森の方から展望台に向けて緩やかに登るような形を取っているので、その傾斜を登りきると、突然、
大きな空と海が目の前に開けてるような体験になります。私たちは、既存の景色と地形から導かれる体験とをできるだけ壊さず、それでいて、それらを少し拡張するようなかたちで建物を考えようと思いました。
既存の
石垣
広大な
風景
散策をするように
建物は建ぺい率を最大で計画し、内部空間は敷地内をゆったりと回遊できるように配
置します。坂道の延長で敷地東側の建物入り口に入り、北側の石垣に沿う木立を横手に、
そのまま進んで斜面を登りきると広い眺望が広がる空間にたどり着きます。そこから、
ぐるりと敷地にそって歩いて行くと、南側の森があらわれてきて、ゆったりとした静
かな空間にたどり着きます。このように、このビジターセンターそのものが敷地の回
屋内から海を眺めるベンチ 遊する散策路のようなものになるように計画します。
観光情報の閲覧コーナーと、ゆるやかにつながるテラス。
レストランのテラス
屋外広場
既存展望台
旧旅館の石畳を残したアプローチ
レストラン
メインエントランス
さまざまなアクティビティが連続的につながっていきます。
風景に溶け込む素材によって
できる限り工業的な素材は用いずに、既存の景色に溶け込むような素材で建築を計画しようと考えました。できる限り、建築と敷地全体と
が同化し、周りの風景につながってゆくような建築の作り方が考えられないかと思っています。具体的には、敷地周辺の石垣で用いられて
いるような石を使い、全体を計画しようと考えています。これらの石は屋島の近辺で採石可能なものとします。綺麗な石を丁寧に積み上げ
てゆき、敷地全体を美しい石の丘のようなもにつくりかえていきます。
石の丘
風景をつくるかのように
このような空間は、敷地内に平面形状がリングの形をした擁壁を計画することでつくられます。リング状の擁壁は、リングの内側の地面から緩やかに立ち上がり外側に向かって弧を描くように開く断
面形状をしているので、全体としては、周囲に向かって解放されたキャノピーのような空間が敷地を回遊するように配置されます。リングの内側は石で満たされ、屋根型の丘が形成され、敷地内の高
低差も、石を敷き詰めることで、緩やかに均してゆくような計画とします。その結果、リングの内側の傾斜と外側の傾斜は自然と結びつき、また、それぞれの石は、既存の石垣のものと同じ程度の大
きさとするので、周囲の石垣とも連続するなだらかな丘陵のような景観が敷地全体に広がることになります。
石は、階段状に積み上げられ、緩やかな美しい石の丘ができあがります。この敷地全体が広場のようになります。ここを訪れる人々は、丘を登り、また、回遊路のような空間を散策し、思い思いの場所で腰を下ろし、たたずみ、遠くを眺め、淡く広大に柔らかく広がる景色の中に身を委ね、時間を忘れ、のんびりとしばらくの間を過ごすことになります。敷地のどの場所もが人々を受け入
れる場所となるのです。わたくしたちの提案は、美しいランドスケープそのものであり、同時に、周辺の美しい景色を体感し眺めるための空間でもあります。構造体は最小限に抑えられ、敷地全体が一体的な石のボリュームとしての景観となり、周辺の景色とともに広がってゆく新しい風景となっていきます。