A7 海域(有明海湾口部)の問題点と原因・要因の整理 資料4-7

資料4-7
A7 海域(有明海湾口部)の問題点と原因・要因の整理
1
この海域の特性
A7 海域(有明海湾口部)は図 1 に示すように、
有明海の中央から湾口にかけての海域で
ある。潮流は、湾の形状に沿っておおむね南北方向が卓越している 1)。平均流は島原半島
沖の表層は、夏季は南東方向、冬季は南西方向が卓越しており、底層では夏季、冬季とも
に島原半島に沿って湾口方向となっている 1)。底質は湾央よりでは粘土シルト含有率及び
強熱減量が高い。
図 1
A7 海域位置
当該海域の問題点とその原因・要因に関する調査研究結果、文献、報告等を整理し、問
題点及び問題点に関連する可能性が指摘されている要因を図 2 に示す。
1
A-3
A-7
日照、風・降雨(台風)・淡水流入
栄養塩の
不足
ノリの色落ち
感潮域の縮小
長期的な
水温の上昇
魚類等の漁獲量(資源量)
の減少、種組成の変化
河川を通じた
陸域からの
土砂供給の減少※
干潟・藻場の減少※
干拓・埋立て※
浄化能力の低下
透明度の上昇
潮流の低下
シャットネラ
珪藻類
赤潮の発生件数
の増大・大規模化
潮位差の減少・
平均潮位の上昇
外海の潮位の上昇、
潮位差の減少※
ノリの生産
活動
栄養塩の流入
有機物の流入※
成層化
富栄養化
貧酸素水塊の発生件数
の増大・大規模化
底質中の
有機物の増加
ベントスの減少
種組成の変化
底質中の
硫化物の増加
二枚貝の減少
(浮遊 幼生期 ・着床 稚
底質の泥化
貝の生残 率の低下 )
タイラギ
ナルトビエイ
等による食害
サルボウ
海底地形
の変化
:直接的な原因・要因
:生物、水産資源
:海域環境
:陸域・河川の影響
※図中、枠内の語尾に※を付した原因・要因は当該海域への影響が他海域を経由するものを示す。
図 2 A7 海域(有明海湾口部)における問題点と原因・要因との関連の可能性
2
:気象、海象の影響
2 ベントスの減少
① 現状と問題点の特定
A7 海域では、
1970 年からのベントスのモニタリング結果がないため、
ここでは 2005
年以降のモニタリング結果を確認した。図 4 に示すように、2005 年以降は Ang-3 では
その他の動物の種類数に増加傾向がみられた。これ以外の動物の種類数、個体数に明
瞭な増減傾向はみられなかった。
Akm-3 では種類数は総種類数及び節足動物門に減少傾向がみられ、個体数は節足動
物門に減少傾向がみられた。これら以外の動物の種類数、個体数に明瞭な増減傾向は
みられなかった。
Akm-4 では、種類数は全ての動物で増加傾向がみられた。個体数では軟体動物門で
増加傾向がみられ、これら以外の動物では明瞭な増減傾向はみられなかった。
主要種の出現状況は節足動物がみられなくなり、環形動物がみられる頻度が高く
なってきた。
Ang-3
Akm-3
Akm-4
図 3 A7海域調査地点図
3
(種)
250
200
150
100
50
0
2005/05
2006/05
2007/05
総種類数
2008/04
2009/05
軟体動物門
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
2013/05
節足動物門
2014/05
そ の 他
2
(個体数/m )
15000
12500
10000
7500
5000
2500
0
2005/05
2006/05
2007/05
総個体数
図 4(1)
2008/04
2009/05
軟体動物門
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
2013/05
節足動物門
A7 海域におけるベントスの推移(Ang-3)
4
2014/05
そ の 他
(種)
250
200
150
100
50
0
2005/05
2006/05
2007/05
2008/04
総種類数
2009/05
軟体動物門
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
2013/05
節足動物門
2014/05
そ の 他
2
(個体数/m )
15000
12500
10000
7500
5000
2500
0
2005/05
2006/05
2007/05
総個体数
図 4(2)
2008/04
2009/05
軟体動物門
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
2013/05
節足動物門
A7 海域におけるベントスの推移(Akm-3)
5
2014/05
そ の 他
(種)
250
200
150
100
50
0
2005/05
2006/05
2007/05
総種類数
2008/04
2009/05
軟体動物門
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
節足動物門
2013/05
2014/05
そ の 他
2
(個体数/m )
15000
12500
10000
7500
5000
2500
0
2005/05
2006/05
2007/05
総個体数
2008/04
2009/05
軟体動物門
図 4 (3)
2010/05
環形動物門
2011/05
2012/04
節足動物門
2013/05
そ の 他
A7 海域におけるベントスの推移(Akm-4)
6
2014/05
表 1
A7 海域におけるベントスの主要種の推移
A-7
Akm-3・Akm-4・Ang-3
節足動物門
2005/05 節足動物門
節足動物門
軟体動物門 二枚貝類
2005/08 節足動物門
環形動物門
環形動物門
2005/11 棘皮動物門
環形動物門
節足動物門
2006/02 節足動物門
環形動物門
節足動物門
2006/05 節足動物門
環形動物門
節足動物門
2006/08 節足動物門
節足動物門
環形動物門
2006/11 節足動物門
環形動物門
節足動物門
2007/02 節足動物門
節足動物門
紐形動物門
2007/05 環形動物門
環形動物門
環形動物門
2007/08 環形動物門
環形動物門
節足動物門
2007/11 環形動物門
棘皮動物門
環形動物門
2008/02 環形動物門
環形動物門
紐形動物門
2008/07 節足動物門
環形動物門
環形動物門
2008/11 節足動物門
環形動物門
節足動物門
2009/07 節足動物門
節足動物門
軟体動物門 二枚貝類
2009/10 環形動物門
環形動物門
棘皮動物門
2011/07 環形動物門
環形動物門
環形動物門
2012/02 節足動物門
節足動物門
環形動物門
2012/07 節足動物門
環形動物門
環形動物門
2013/02 節足動物門
環形動物門
【採取方法】
スミスマッキンタイヤ型採泥器にて 10 回採泥
Photis sp.
Gammaropsis sp.
Gammaropsis sp.
キヌタレガイ
ニッポンスガメ
カザリゴカイ科
パラオニス科
クモヒトデ綱
Polygordius sp.
ク-マ目
ホソヨコエビ
Polygordius sp.
Photis sp.
Gammaropsis sp.
Scolelepis sp.
クダオソコエビ
Lembos sp.
Photis sp.
Sigambra tentaculata
ユンボソコエビ科
Sosane sp.
Caprella sp.
Ampelisca sp.
カイムシ目
紐形動物門
カンザシゴカイ科
Scolelepis sp.
Sigambra tentaculata
カザリゴカイ科
パラオニス科
カドソコシラエビ
Lanice sp.
カキクモヒトデ
モロテゴカイ
アシビキツバサゴカイ
Scolelepis sp.
紐形動物門
ミサキスガメ
Scolelepis sp.
モロテゴカイ
ミサキスガメ
ケンサキスピオ
ク-マ目
ホソヨコエビ
Corophium sp.
ヤマホトトギスガイ
Lanice sp.
ケンサキスピオ
イカリナマコ科
カザリゴカイ科
パラオニス科
モロテゴカイ
ミサキスガメ
クダオソコエビ
モロテゴカイ
ミサキスガメ
ケンサキスピオ
モロテゴカイ
ミサキスガメ
パラオニス科
【主要種の選定方法】
年ごとに、Akm-3, Akm-4, Ang-3 の各地点で個体数が
最も多い種を抽出した。
【出典】
H17~H25 環境省調査結果より取りまとめ
7
②
要因の考察
底質の泥化については、細粒化の観点から整理を行うこととした。前節と同様に、
1970 年頃からの底質のモニタリング結果がないため、ここでは 2003 年以降の調査結
果から要因の考察を行うこととした。図 5 に示すように、粘土シルト含有率について
は各地点とも一様な増加・減少傾向はみられず、泥化傾向はみられないと考えられる。
COD については Akm-3 で増加傾向がみられ、その他の地点では一様な増加・減少傾向
はみられなかった。強熱減量については、各地点とも一様な増加・減少傾向はみられ
なかった。
硫化物については Ang-3 及び Akm-3 で増加傾向がみられ、Akm-4 では一様な増加・
減少傾向はみられなかった。
8
T-N (mg/g・dry)
4
3
Akm-3
2
Akm-4
Ang-3
1
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
年
T-P (mg/g・dry)
1.5
1.0
Akm-3
Akm-4
Ang-3
0.5
0.0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007 2008
年
2009
2010
2011
2012
2013
COD (mg/g・dry)
30
20
Akm-3
Akm-4
Ang-3
10
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
年
強熱減量 (%)
15
10
Akm-3
Akm-4
Ang-3
5
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007 2008
年
2009
2010
2011
2012
2013
T-S (mg/g・dry)
1.5
1.0
Akm-3
Akm-4
Ang-3
0.5
0.0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
年
Ang-3
粘土シルト含有率 (%)
100
80
Akm-4
Akm-3
60
Akm-4
40
Ang-3
20
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
年
2008
図 5
2009
2010
2011
2012
2013
A7 海域における底質の推移
9
Akm-3
(まとめ)
ベントス調査結果については、2004 年以前のデータがない。
調査結果データがある期間においては、A7 海域は、種類数は、Ang-3 ではその他の動
物の種類数に増加傾向がみられた。これ以外の動物の種類数、個体数に明瞭な増減傾
向はみられなかった。
Akm-3 では種類数は総種類数及び節足動物門に減少傾向がみられ、個体数は節足動物
門に減少傾向がみられた。これら以外の動物の種類数、個体数に明瞭な増減傾向はみ
られなかった。
Akm-4 では、種類数は全ての動物で増加傾向がみられた。個体数では軟体動物門で増
加傾向がみられ、これら以外の動物では明瞭な増減傾向はみられなかった。
底質の調査結果については、2002 年以前のデータがない。
調査結果データがある 2003 年から 2013 年においては、
粘土シルト含有率については
各地点とも一様な増加・減少傾向はみられず、泥化傾向はみられないと考えられる。
COD については Akm-3 で増加傾向がみられ、その他の地点では一様な増加・減少傾向は
みられなかった。強熱減量については、各地点とも一様な増加・減少傾向はみられな
かった。
硫化物については Ang-3 及び Akm-3 で増加傾向がみられ、Akm-4 では一様な増加・減
少傾向はみられなかった。
10