タンパク質によるキラル金ナノロッド組織 体の創製とバイオセンサへの応用 山梨大学 生命環境学域 生命農学系 新森 英之,望月 ちひろ 従来技術とその問題点 ナノテク技術において、ビルディングブロック材料と して近年注目を集めているものに金属ナノ粒子が ある。中でも金(Au)をコアとする金ナノ粒子は合成 法が比較的容易であり、確立されてきている。 バイオセンサ 表面プラズモン共鳴から 局在化表面プラズモン共鳴(LSPR; Localized Surface Plasmon Resonance)の利用へ 生体関連物質の検出、屈折率や膜厚測定 etc. 2 従来技術とその問題点 しかしながら、 高感度で多様性を有するナノデバイスの開発には、 金ナノ粒子のパターニングや規則的組織化 金ナノ粒子自体の物性における付加的特性 バイオセンサでは生体適合性 3 様々なナノ材料 4 Absorbance 短軸 transverse 金ナノロッドの光学的性質 400 橙 長軸 longitudinal 赤 青 緑 600 800 Wavelength [nm] 5 Ref.: Y. Qiu et al. Biomaterials 2010, 31, 7606‐7619. 研究の目的 ① 異方性の金ナノロッドとタンパク質と の相互作用による超構造な組織体の 創製 End-to-end型 組織化 単分散の金ナノロッド Side-by-side型 ② 金ナノロッド組織体のセンサ素子とし ての機能 6 金ナノロッド(AuNRs)の合成 55±10 nm AuNRs : 金ナノロッド CTAB : 臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム AA : アスコルビン酸 22±5 nm シード媒介法 Fig. 金ナノロッドのア スペクト比分布図 金ナノロッド溶液の精製法 CTAB 遠心分離 at 2℃ 蒸留水で再分散 金ナノロッド分散液 Fig. 金ナノロッドのSEM像 7 金ナノロッドへのタンパク質添加 タンパク質 AuNR • 金ナノロッド組 織体の形成? • キラリティーの 反映? 8 タンパク質添加伴う金ナノロッドの円二色性変化 ヒト血清アルブミン (HSA) アルブミン鶏卵由来, カゼイン, ペプシン, トリプシン, リゾチーム, グルタチオン CD 100 80 60 40 20 0 -20 -40 -60 -80 -100 牛血清アルブミン (BSA) γ‐グロブリン オボアルブミン アルブミン牛乳由来 BSA (グロブリンフリー) 400 600 800 1000 Wavelength [nm] 600 700 800 900 Fig. AuNRsへの10 μM タンパク質添加に伴う円二色性(CD)スペクトル 9 の変化 (20 % MeCN aq.) ; [AuNRs] = 64 pM, , [CTAB] = 4 mM, 1 mm cell AuNRs‐HSA組織体のpHによる影響 ヒト血清アルブミン (HSA) α‐helix : ~70% PI : 4.8 直径 : 7‐8 nm S原子 : 35個 Protein Eng 1999, 12, 439‐446. 金ナノロッド分散液 ・pH 3.2 1 mM ギ酸buffer ・pH 4.8 1 mM 酢酸buffer ・pH 7.2 1 mM リン酸buffer in 20 % MeCN aq. 10 pHによるAuNRs‐HSA組織体の吸収スペクトル変化 1 0.8 Absorbance pH 4.8 pH 3.2 pH 7.2 0.6 0.4 0.2 0 300 600 900 Wavelength [nm] 300 600 900 300 600 900 Wavelength [nm] Fig. 各pHにおけるAuNRs‐HSA組織体の吸収 スペクトル変化 (pH 3.2 : [HSA] = 1 μM, pH 4.8 : [HSA] = 5 μM, pH 7.2 : [HSA] = 1 μM ) 11 pHによるAuNRs‐HSA組織体の円二色性変化 150 CD [mdeg] 100 50 0 pH 4.8 pH 3.2 -50 pH 7.2 -100 -150 400 600 800 Wavelength [nm] 1000 Fig. 各pHにおけるAuNRs‐HSA組織体のCDスペクトル変化(pH 3.2 : [HSA] = 1 μM, pH 4.8 : [HSA] = 1 μM, pH 7.2 : [HSA] = 1 μM, ) 12 AuNRs‐HSA組織体の電子顕微鏡観察 End‐to‐end型 Fig. pH4.8におけるAuNRs‐HSA組織体 のTEM,STEM像及びEDS分析 Side‐by‐side型 Fig. pH7.2におけるAuNRs‐HSA組織体 13 のTEM,STEM像及びEDS分析 AuNRs‐HSA組織体へのシステイン添加 150 0.8 100 [Cys]/ μM 0 50 100 CD [mdeg] Absorbance 0.6 0.4 0 -50 0.2 -100 0 -150 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのシステイン(Cys) 添加に伴うUV‐visスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのCys添加に伴う CDスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) 14 AuNRs‐HSA組織体へのアスパラギン酸添加 0.8 200 150 100 CD [mdeg] Absorbance 0.6 0.4 50 [Asp]/ μM 0 150 0 -50 -100 0.2 -150 -200 0 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのアスパラギン酸 (Asp)添加に伴うUV‐visスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのAsp 添加に伴 うCDスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) 15 AuNRs‐HSA組織体へのグルタミン酸添加 150 0.8 100 [Glu]/ μM 0 50 150 CD [mdeg] Absorbance 0.6 0.4 0.2 0 -50 -100 0 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのグルタミン酸 (Glu)添加に伴うUV‐visスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) -150 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Wavelength [nm] AuNR‐HSA組織体へのGlu 添加に伴 うCDスペクトル変化 (20 % MeCN aq.) 16 AuNRs‐HSA組織体へのアミノ酸添加 Lys 0 Arg Lys 40 Arg His His 0 Asp Glu Ser -0.2 Asn Gln -0.3 Ala Phe Try -0.4 Asp Glu ∆CD (701 nm) ∆Abs. (745 nm) -0.1 Ser -40 Asn Gln -80 Ala Phe -120 Try Trp Met -0.5 0 50 100 Concentration [μM] 150 各種アミノ酸添加に伴うAuNR‐HSA 組織体の745 nmの吸光度変化(20 % MeCN aq.) Cys Pro Trp Met -160 0 50 100 Concentration [μM] 150 Cys Pro 各種アミノ酸添加に伴うAuNR‐HSA 組織体の701 nmのCD値変化(20 % MeCN aq.) 17 新技術の特徴・従来技術との比較 キラル金ナノロッド組織体の創製 生体に重要なキラリティーを反映した金ナノロッド 組織体 タンパク質を混ぜるだけで組織化 コントロールできる異方性の組織体 従来法では、組織体を形成させるために綿密な 分子設計が必要であり、外部環境による組織体 の制御は不可能 18 新技術の特徴・従来技術との比較 金ナノロッド組織体のセンサへの応用 一定のアミノ酸に対しての選択的な光学特性 変化 酸性アミノ酸に有効 近赤外領域での検出が可能 従来法では、被検体の煩雑な前処理やセンサ 設計が必要であり、コストがかかる 19 想定される用途・業界 • 生体成分検査キット • バイオセンサチップ 医薬品業界 食品業界 • 診断薬 • キラル触媒 製薬業界 化成品業界 20 実用化に向けた課題 • 現在、アルブミンタンパク質を用いた金ナノロッドの組 織化が可能なところまで開発済み。また、アミノ酸に 対する選択的センサ機能は確認済み。しかし、他の タンパク質を用いた組織化やアミノ酸への相互作用メ カニズムが未解決である。 • 今後、様々なタンパク質での組織化形成について実 験データを取得し、センサ素材としてのライブラリー 化を目指す。 • 実用化に向けて、検出限界の低濃度化ができるよう な技術を確立する必要もあり。 21 企業への期待 • 組織体ライブラリーの構築は多様なタンパク質 を試験していくことで克服できると考えている。 • センサチップ製造のパターニング技術を持つ、 企業との共同研究を希望。 • また、疾病診断法を開発中の企業、医薬品分 野や食品成分分析への展開を考えている企業 には、本技術の導入が有効と思われる。 22 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :血清タンパク質を用いたキラル金ナノロッド組織体の創製 :特願2014‐030436 :山梨大学 :新森 英之、望月 ちひろ • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :キラル金ナノロッド組織体を用いたアミノ酸の検出方法 :特願2015‐020817 :山梨大学 :新森 英之、望月 ちひろ 23 お問い合わせ先 国立大学法人 山梨大学 社会連携・研究支援機構 社会連携・知財管理センター 統括コーディネータ 還田 隆 TEL:055-220-8758 産 FAX:055-220-8757 Industry E-mail:[email protected] 官 学 University Administration 24
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