物体の特性測定方法及び装置 超音波で電気・磁気特性を評価する 新しい非侵襲計測技術 (音響誘起 音響誘起電磁法:ヒトからインフラまで) 音響誘起電磁法:ヒトからインフラまで) 東京農工大学 大学院工学研究院 大学院工学研究院 先端物理工学部門 准教授 生嶋 健司 1 1.研究背景 非侵襲(非破壊)計測 ・・・可視光が通らない物体内部の計測 工業 医療 MRI X線検査 X線検査 超音波検査 超音波検査 幾何学形状の診断は高度に発展したが 内在する物体の電気的、磁気的物性は発展途上。 2 問題意識 光の透過が困難なインフラや人体内部の 電気・磁気物性を非侵襲に計測できないか? 横浜ベイブリッジ From IHIインフラシステム HP From 大東建設 HP 鉄筋コンクリート100年の歴史の中で 鉄筋腐食の非破壊検査は実現していない。 従来の形状検査では無理。 鉄筋腐食(黒錆、赤錆の形成) =>異なる磁性体の発現 例:通常の磁気センシング 磁気センサーを近づける。 脳磁計・心磁計 磁気センサー 漏洩磁束法 MFM(磁気力顕微鏡) 磁場=>電流発生箇所を推定(数学的逆問題) 位置特定が推定的。 高い空間分解能を得るには *センサーを小さくする *対象物に隣接させる。 強磁性体から漏れた磁場の測定 =>飽和過程の試料内磁化は測定できない。 1mm分解能=> センサー距離0.5mm以下 (ほぼ接触させなくてはいけない) 例:通常の磁気センシング 磁気センサーを近づける。 脳磁計・心磁計 磁気センサー 漏洩磁束法 非侵襲な磁気センシングには 磁場=>電流発生箇所を推定(数学的逆問題) 発想の転換が必要ではないか? 位置特定が推定的。 MFM(磁気力顕微鏡) 高い空間分解能を得るには *センサーを小さくする *対象物に隣接させる。 強磁性体から漏れた磁場の測定 =>飽和過程の試料内磁化は測定できない。 1mm分解能=> センサー距離0.5mm以下 (ほぼ接触させなくてはいけない) 最初に考えたこと。 物体内部の電気的・磁気的情報を空間分解能をもって測定するため には、観測したい深部に“波”を使って電気・磁気量にリモート変調を ほどこし、復調技術を使って高感度に測定することができないか? もっとも容易に電気・磁気量に変調を施すことができる“波”は、 電磁波である。 しかし、光はコンクリートや人体を透過しないし、 電波は波長が長いため、空間分解能がでない。 そこで、“音波”に着目した。 音波は、人体においても比較的深部まで到達し、 しかも1mm以下の空間分解能を出せる。 電磁波 = 30m@10MHz 水中音波: = 150μm@10MHz 音波で電気分極や磁気分極をリモート変調し、 そこで誘起される交流電磁場を検出できないか? 音波による電磁波発生メカニズム 1. 圧電効果・磁歪効果 超音波 2. 溶液中電荷の双極子振動、流動電位(?) 電磁波 コロイド溶液やイオン電解水。 3. 人体内の電場勾配 (?) 神経・筋組織の活動状態の検知・断層画像化。 ρ = ∇ D ≈ ∇ εE E – – + + - - + + + -+ + + + -+ - + - + + + - + - - + + + + + +- + + - + – – – – – ++ + + + – + – – – – + + + + – – + – – + + – + – – – ++ + ++++ – – – – 流動電位 – – – – コロイド粒子 – – 2.音響誘起電磁法( 音響誘起電磁法(ASEM法)とは? 法)とは? 音響誘起電磁法( 従来の超音波測定 • 音響インピーダンス 音響誘起電磁法 (ASEM法) ASEM法) (Acoustically Stimulated EM Method) • 音速 • 質量密度 Sensor or • 弾性率 ܋܉ ۳ ۻ K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 89, 194103 (2006). 力学物性の評価・画像化 電磁気物性の評価・画像化 従来の超音波技術と本技術の違い 従来方法 (超音波エコー法等) 力学的情報: 質量密度分布、弾性率 分布、速度測定など。 本研究手法 (ASEM法) 電磁気学的情報: 電荷分布、磁化分布、核磁気共鳴分布 9 超音波により誘起される電磁応答(ASEM応答) 信号強度 超音波振動子 励起パルス sample 6 Standard echo 4 ASEM method Antenna 目的信号 sample 30~40µs 圧電体 GaAs : d14=2.6× ×10-12C/N time EM Intensity (arb. units) time 信号強度 振動子からの信号 約 60 mm エコー信号 振動子からの信号 2 目的信号(ASEM応答) 応答) 目的信号( ASEM method (heterodyne) Acoustic wave vector , k [110] 0 ΔX K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 89, 194103 (2006). 40µs 0 40 80 time(µs) 120 パルス測定系 *水浸式とプローブ式 *1点集束型振動子 *直接検出 or ヘテロダイン検出 面内分解能: 0.7 mm @ 10 MHz 深さ分解能: ∆~0.2mm ∆ @ 10 MHz 対象: 圧電体, 強磁性体 etc. 特徴: エコー検査と同時測定が可能 AM変調CW測定系 振動子の 信号(ノイズ) 目的信号 (ASEM信号) ୫୭ୢ ASEM信号 ଵ ୫୭ୢ 周波数ドメイン測定 ASEM信号最大値、 振動子ノイズ最小値である条件 f n mod 2n − 1 = v 4d パルス法に比べ振幅変調法ではSN比が約170倍改善。 S2011-0936-C0 初期実験 様々な物質からASEM応答が検出される ポリプロピレン 15mm Ferrite K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 89, 194103 (2006). 13 超音波による圧電性の評価・イメージング EM Intensity (arb. units) プラスチック材料 結晶均一性・配向性検査 圧電効果: 非対称な結晶構造をもつ多くの物質 で生じる。 生き物は圧電体でできている。 コラーゲン繊維(線維) セルロース繊維 骨組織 植物繊維 単結晶 ~ 結晶グレインが小さく、 ランダムに配列していると 信号は小さい。 N. Ohno et al., Proceeding of Symposium on Ultrasonic Electronics, 32 211 (2011) . N. Ohno, et al., 2012 IEEE IUS Proceedings 487 (2012). K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 89, 194103 (2006). 超音波による圧電性の評価・イメージング EM Intensity (arb. units) プラスチック材料 ASEM強度 単結晶 健足 患足 ~ 結晶グレインが小さく、 ランダムに配列していると 信号は小さい。 ラット骨粗鬆症モデルと相関! N. Ohno et al., Proceeding of Symposium on Ultrasonic Electronics, 32 211 (2011) . N. Ohno, et al., 2012 IEEE IUS Proceedings 487 (2012). 超音波による圧電性の評価・イメージング EM Intensity (arb. units) プラスチック材料 単結晶 ~ 結晶グレインが小さく、 ランダムに配列していると 信号は小さい。 N. Ohno et al., Proceeding of Symposium on Ultrasonic Electronics, 32 211 (2011) . N. Ohno, et al., 2012 IEEE IUS Proceedings 487 (2012). 超音波による磁気イメージング 純鉄の薄板 10 MHz 集束振動子 Water 焦点スポット < 1 mm H. Yamada et al., Rev. Sci. Instrum. 84, 044903 (2013) . 超音波による磁気トモグラフィー Echo imaging X ASEM imaging Transducer Z Gel Al Ferrite Loop antenna 深さ分解能: ∆~0.2mm ∆ 強磁性体を 選択的に画像化 エコー検査と 同時測定が可能 H. Yamada et al., Rev. Sci. Instrum. 84, 044903 (2013) . まとめ:超音波による磁気センシング 残留応力・金属脆化検査 ステンレス鋼材 鉄の薄板 探傷検査 欠陥無し 鉄鋼材 欠陥有り 穴 H. Yamada et al., Rev. Sci. Instrum. 84, 044903 (2013) . H. Yamada, K. Watanabe, K. Ikushima, JJAP 54, 086601 (2015). コンクリート内鉄筋の磁気測定 (鉄筋腐食検査) 10 Intensity (µV) Healthy specimen Health 8 6 4 2 0 -4 -2 10 Intensity (µV) Earlier-stage corrosion specimen 0 2 Current (A) 4 8 6 4 2 0 Earlier-stage corrosion -4 -2 0 2 Current (A) to electromagnet 4 20 20 新技術の特徴・従来技術との比較 超音波で電気・磁気イメージングが可能となった ことにより、各分野において、従来測定技術では 困難であった問題が解決する可能性がある。 (例) • 従来骨診断では不可能であった“骨質”を評価できる。 • 従来インフラ診断では不可能であったコンクリート内の “鉄筋腐食”を検査できる。 • 従来の非破壊検査(漏洩磁束法や超音波エコー法)の それぞれの利点を融合した検査が可能になる。 21 想定される用途 ◆工業材料・部品 圧延鋼鈑の探傷検査、残留応力検査 電磁鋼鈑検査 ステンレス鋼の脆化検査(原子炉圧力容器など) CFRPの非破壊検査、多結晶セラミック、多結晶ポリマーの均一性評価 ◆医療 骨質定量画像診断(骨粗鬆症) 骨折治癒過程診断(リハビリ負荷の指標確立) 靭帯組織検査 生体信号検知(心臓・筋肉) ◆インフラ RC構造の鉄筋腐食検査 ◆その他 バッテリー・燃料電池の非破壊検査(動作時正常チェック) 固体のNMRイメージング 22 実用化に向けた課題 • ニーズ・対象物に応じて装置の最適化をする必 要がある。 • 新規ニーズの場合、ASEM応答との相関データ を蓄積し、検証する必要がある。 23 産学連携の実績 “骨質”診断 医療 自動車 生体信号 鉄鋼 探傷検査・鋼材評価 インフラ 鉄筋腐食検査 ASEM法などを利用した 非侵襲計測 デバイス 磁性薄膜 水産 解凍状態検査 企業への期待 • 超音波・電波計測の技術をもつ企業 装置開発として共同研究を希望。将来的に、広く 利用される汎用装置としての販売を視野に入れる。 • 新規ニーズをもつ企業 検証段階から共同研究を希望。 サンプルを提供するだけでなく、企業側の研究開 発担当者がしっかり参画してくれることが重要。 25 本技術に関する知的財産権 (1)発明の名称:音波誘起電磁波による物体の特性測定方法及び装置 出願番号 :特許第4919967 号 出願人 :JST 発明者 :生嶋健司、小宮山進 (2)発明の名称:音波誘起電磁波による物体の特性測定方法及び装置 出願番号 :特許第5460668号 出願人 :JST 発明者 :生嶋健司、小宮山進 (3)発明の名称:音波誘起電磁波による物体の特性測定方法及び装置 出願番号 :特許第5460669号 出願人 :JST 発明者 :生嶋健司、小宮山進 (4)発明の名称:被測定対象の特性測定装置及びその方法、並びに被測定対象の特性測定 プログラム 出願番号 :特願2011-158637 出願人 :東京農工大学(2015年12月現在) 発明者 :生嶋健司 (すべてPCT出願中) 26 ASEM利用異業種交流研究会 【趣旨】 近年、計測技術の開発現場において、情報技術を駆使した高度な画像処理やネットワーク化が 盛んに開発されています。一方で、原理的に新しい計測技術を追求するリスクのある研究開発を目にす る機会が少なくなっているようにも思えます。 X線や核磁気共鳴は、1世紀ほど前、物理学者らによりその現象が見つかりました。その後、化学、生 物、医療、工学の専門家と物理学者らとの共同研究により、今では多様な分野・業界で利用されていま す。自然現象をうまく利用した新しい計測技術を開発するためには、「ニーズをもった各業界の研究開発 者」と 「原理がとても気になる物理系研究者」が常に交流できる環境が必要と感じています。 音響誘起電磁(ASEM)法は、「ほとんどの物質は超音波伝搬時に微弱ながらも電磁波を発生している のではないか?」、「もしそうなら、広い用途に使える非侵襲検査方法になるのではないか?」という素朴 な疑問と気になる原理の追求からスタートしました。まだ、計測技術としてはヒヨコですが、お蔭様で少し ずつ各業界の方々に興味をもっていただくようになりました。 ASEM利用をきっかけとした異業種間の交 流は、ASEM法における共通問題の解決に留まらず、異業種間の技術交流が次のイノベーションを生み 出すきっかけとなり、新しい事業創出へとつながることを期待しています。ぜひとも本研究会にご参加く ださいますようお願い申し上げます。 時期:年1~2回 内容:講演(2件)、フリーディスカッション・懇親会 開催場所:東京農工大学(小金井キャンパス) 次回12/18(金)。興味のある方はご連絡ください。 [email protected] お問い合わせ先 【ライセンスについて】 科学技術振興機構 知的財産戦略センター 田中 史祥 TEL 03-5214 - 8293 e-mail ftanaka@jst.go.jp 【技術内容について】 東京農工大学 先端産学連携研究推進センター リサーチ・アドミニストレーター 石川 文雄 TEL 03-388 - 7550 e-mail f-ishi@cc.tuat.ac.jp 28
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