釜石市過疎地域自立促進計画(案)(544 KB pdfファイル)

釜石市過疎地域自立促進計画
案
(平成 28 年度~32 年度)
平成 28 年3月
岩手県釜石市
目
1
次
基本的な事項
⑴
⑵
釜石市の概況
………………………………………………………………………………
①
自然的、歴史的、社会的、経済的諸条件の概要
②
過疎の状況
③
産業構造の変化、地域の経済的な立地特性及び社会経済的発展の方向の概要
……………………………………
1
………………………………………………………………………………
2
…
3
………………………………………………………………
3
……………………………………………………………
3
………………………………………………………………
4
行財政の状況
………………………………………………………………………………
5
① 行政の状況
………………………………………………………………………………
5
② 財政の状況
………………………………………………………………………………
6
人口及び産業の推移と動向
① 人口の推移と今後の見通し
② 産業の現況と今後の動向
⑶
③ 公共施設の整備状況
⑷
計画期間
7
………………………………………………………………
7
………………………………………………………………………
7
…………………………………………………………………………………
8
………………………………………………………………………………………
8
② 基本方針
2
……………………………………………………………………
地域の自立促進の基本方針
① 目指すべき将来像
⑸
1
産業の振興
①農業
②林業
⑥ 起業促進
③水産業
⑦商業
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
3
④地場企業
⑧観光
⑨港湾
⑤企業誘致
⑩雇用
………………………………………………………………………………
9
……………………………………………………………………………………
13
…………………………………………………………………………………………
17
交通通信体系の整備、情報化及び地域間交流の促進
①道路
②公共交通
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
4
③地域情報化
④地域間交流
………………………………………………………………………………
18
……………………………………………………………………………………
20
…………………………………………………………………………………………
23
生活環境の整備
① 水道
②下水処理
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
③廃棄物処理
④消防防災
⑤住宅
⑥公園
⑦斎場
………………………………………………………………………………
24
……………………………………………………………………………………
27
…………………………………………………………………………………………
29
5
高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進
①高齢者福祉
②児童福祉
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
6
③地域福祉
④障がい者福祉
⑤保健
………………………………………………………………………………
30
……………………………………………………………………………………
32
…………………………………………………………………………………………
34
医療の確保
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
7
………………………………………………………………………………
35
……………………………………………………………………………………
35
…………………………………………………………………………………………
36
教育の振興
①学校教育
②就学前教育
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
8
③生涯学習
④生涯スポーツ
………………………………………………………………………………
37
……………………………………………………………………………………
39
…………………………………………………………………………………………
41
地域文化の振興等
⑴
現況と問題点
⑵
その対策
⑶
計画
9
………………………………………………………………………………
42
……………………………………………………………………………………
42
…………………………………………………………………………………………
43
集落の整備
⑴
現況と問題点
………………………………………………………………………………
44
⑵
その対策
……………………………………………………………………………………
44
⑶
計画
…………………………………………………………………………………………
45
10 その他地域の自立促進に関し必要な事項
① 少子化・男女共同参画、定住・移住
⑴
現況と問題点
………………………………………………………………………………
46
⑵
その対策
……………………………………………………………………………………
46
⑶
計画
…………………………………………………………………………………………
47
1
基本的な事項
⑴
釜石市の概況
①
自然的、歴史的、社会的、経済的諸条件の概要
〔自然的条件〕
本市は、岩手県の東南部、陸中海岸国立公園のほぼ中央に位置し、東は太平洋に、西は
遠野市と住田町に、南は大船渡市に、北は大槌町にそれぞれ接している。
市の総面積は 441.42 平方キロメートルで、市域は東西 29,551 メートル、南北 31,780 メ
ートルに及び、その約9割を森林が占めている。
西側が北上山地、東側がリアス式海岸のため、起伏が多く、急な傾斜の山地が海岸にま
で迫る平地が少ない地形となっている。
気候は、三陸沿岸に位置しているため、海洋の影響と地理的条件から四季を通じて比較
的温暖である。
〔歴史的条件〕
安政4年(1857 年)12 月1日、盛岡藩士大島高任が当市大橋において、わが国で初めて
の洋式高炉による出銑に成功し、これを機に日本の産業の近代化が進んだ。
これを記念して同日が社団法人日本鉄鋼連盟によって「鉄の記念日」に制定されるなど、
当市は「近代製鉄発祥の地」として知られる。
また、リアス式の海岸線による天然の良港と、黒潮と親潮が交わる豊かな漁場「三陸沖」
を有し、水産業も盛んであったことから、「鉄と魚のまち」として発展してきた。
しかしこうしたことは同時に、太平洋戦争時の艦砲射撃や明治、昭和の大津波による壊
滅的な被害をもたらす要因ともなったが、そのたびに復興を成し遂げた。
なお、釜石市の歩みを振り返ると、明治 22 年に釜石村と平田村が合併し釜石町、昭和
12 年に市制施行、昭和 30 年に釜石市、甲子村、鵜住居村、唐丹村、栗橋村の1市4村が
合併して現在の釜石市となっている。
〔社会的条件〕
本市の幹線交通網は、鉄道としては、西の花巻市に向かうJR釜石線、北の宮古市を経
由して盛岡市に向かうJR山田線、南の大船渡市に向かう三陸鉄道南リアス線がある。
道路としては、本市を南北に縦断する国道 45 号及び県内陸部と本市を結ぶ国道 283 号を
幹線に、これに県道や市道が連結し道路網を形成している。
また本市は、東北横断自動車道釜石秋田線及び三陸縦貫自動車道の結節点として位置付
けられており、仙人峠道路が開通し、釜石山田道路が一部供用開始と整備が進んでいる。
仙人峠道路の開通により、市役所から県庁まで約2時間、最寄りのインターチェンジま
で約 50 分と、以前より時間短縮が図られたものの、移動の時間距離は他の地域に比べまだ
まだ長い。早期の全線開通が望まれるところである。
1
こうした中、平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災により、多くの人的被害を受
け、中心市街地をはじめ沿岸部一帯は壊滅的な被害を被った。
震災後、復興道路、復興支援道路と位置付けられた高規格道路網の整備が急ピッチで進
められている。
〔経済的条件〕
本市は、豊富な資源と海の恵みを生かして発展の基礎を創り上げ、製鉄と水産を基幹と
する東北有数の産業都市として歩み、経済を発展させてきた。
しかし、製鉄業の生産設備の合理化や水産業の水揚げの不振などによって一時、市内経
済は落ち込みを見せていたが、震災前には、製造品出荷額等及び水揚高とも回復傾向にあ
る。
現在は、東日本大震災からの産業の再生に向けて取り組んでいるが、人口がピーク時の
半分以下になり、今後も減少が続くことが予想されるなど、地域を取り巻く経済環境は非
常に厳しい状況に置かれている。
②
過疎の状況
本市の人口は昭和 38 年の 92,123 人(3月末住民基本台帳)をピークに減少し続け、平
成 22 年国勢調査では 39,574 人とピーク時の半分以下に大幅に減少している。
国勢調査で見ると、昭和 40 年 82,104 人から昭和 45 年 72,923 人に(△9,181 人、△11.2%)、
及び昭和 60 年 60,007 人から平成2年 52,484 人に(△7,523 人、△12.5%)が2ケタの減
少率と特に大幅な減少となっている。これは、製鉄業の生産設備の相次ぐ合理化によって、
29 歳以下の若年層を中心に他地域に転出して行ったことが大きな要因と考えられ、他の期
間においても、5~8パーセント台の大幅な減少率となっている。
人口減少にあわせ少子高齢化も急激に進行しており、昭和 40 年に 20,350 人であった若
年者の数は、平成 22 年には 3,890 人に急激に減少するとともに、昭和 35 年に 2,971 人で
あった高齢者の数は 13,772 人と大幅に増加している。
こうした傾向は、農林水産業をはじめとして地場企業、商店の後継者不足や高齢化によ
る生産性の低下につながり、本市の産業の成長を阻害する要因となっている。
また、少子化は保育所や幼稚園、小中学校など子どもに関連する公共施設の効率的な利
用や維持管理に支障をきたしている。
このほか、過疎化の進行は公共交通や医療、福祉、日常生活の利便性の確保、集落の維
持活性化等市民生活に大きな影響を与え、地域社会の活力低下を招いている。
こうした中、平成 23 年3月の東日本大震災により、1000 人を超える犠牲者が生じ、そ
の後の若者世代を中心とした人口流出は、当市の持続可能な地域社会としての維持に深刻
な影響を及ぼしている。
2
③
産業構造の変化、地域の経済的な立地特性及び社会経済的発展の方向の概要
本市は「鉄と魚のまち」として、工業と水産業を基幹産業として発展してきたが、就業
人口の割合を見ると、平成 22 年国勢調査で第三次産業就業人口比率が 63.4 パーセントと
サービス産業分野が6割以上を占めている。これまでの推移を見ると、第三次産業は比率
が増加する傾向にあり、地域経済のサービス産業化は引き続き拡大している。
水産業については、公海の漁業規制や資源の減少、後継者不足、震災の影響による水揚
量の減少などにより厳しい環境に置かれている。
農業については、稲作、畜産、野菜、菌茸、花き等を組み合わせた複合経営が中心であ
るが、専業農家が少なく、担い手の高齢化、後継者の減少傾向が続いている。
林業については、本市は林材の育成に適した環境であるが、就業者の減少や高齢化が進
行している。
工業については、事業所数は減少傾向となっているが、従業者数は、震災により 3,000
人を割り込んだが、平成 25 年では 3,200 人程と震災前の数まで回復してきている。製造品
出荷額等も震災前の状況まで回復してきている。業種別には鉄鋼業、機械業の割合が多く
なっている。
商業については、震災で多くの事業者が被災を受け、再建に向けた取り組みが喫緊の課
題となっている。
観光については、観光客入り込み数は震災後、40 万人前後で推移している。
こうした本市の産業構造の変化、経済的な立地特性を踏まえ、ものづくりの基盤や地場
産業、それを支える歴史や人材、物流基盤など、本市が持つ資源と力を最大限活用しなが
ら産業全般を連携させた総合的な産業振興策及び人材育成に取り組み、活力ある産業の展
開と環境が調和した豊かなまちづくりを進める。
⑵
人口及び産業の推移と動向
① 人口の推移と今後の見通し
国勢調査による本市の人口は、昭和 35 年の 87,511 人をピークとして減少の一途をたど
り、平成 22 年には 39,574 人(△54.8%)となっている。世代別の人口を見ると、昭和 35
年の年少人口(0~14 歳)は 30,519 人(構成比率 34.9%)と市民の3人に1人が子どもで
あったが、平成 22 年には 4,436 人(同 11.2%)と大幅に減少している。
一方、昭和 35 年に 2,971 人(同 3.4%)であった老年人口(65 歳以上)は、平成 22 年
には 13,772 人(同 34.8%)と大幅に増加し、反対に3人に1人が高齢者となっている。
生産年齢人口(15~64 歳)については、年少人口と同様に減少し続けているが、そのう
ち若年者(15~29 歳)については、昭和 35 年から 40 年にかけて急激に増加し、その後急
激に減少している。
人口ピラミッドを見ると本市は 55~59 歳の人口が多く、高齢化比率の上昇は今後も続く
ものと予想される。
3
表1-1(1) 人口の推移(国勢調査)
昭和35年
実 数
区分
昭和40年
実 数 増減率
昭和45年
実 数 増減率
昭和50年
実 数 増減率
昭和55年
実 数 増減率
昭和60年
実 数
増減率
総数
87,511
82,104
△ 6.2
72,923
△ 11.2
68,981
△ 5.4
65,250
△ 5.4
60,007
△ 8.0
0歳~14歳
30,519
25,102
△ 17.7
18,868
△ 24.8
16,751
△ 11.2
14,797
△ 11.7
12,290
△ 16.9
15歳~64歳
54,021
53,497
△ 1.0
49,968
△ 6.6
47,152
△ 5.6
44,095
△ 6.5
40,148
△ 9.0
11,853
20,350
71.7
17,434
△ 14.3
14,667
△ 15.9
12,065
△ 17.7
9,383
△ 22.2
2,971
3,505
18.0
4,087
16.6
5,077
24.2
6,354
25.2
7,569
19.1
13.5
24.8
-
23.9
-
21.3
-
18.5
-
15.6
-
3.4
4.3
-
5.6
-
7.4
-
9.7
-
12.6
-
うち15歳~
29歳(a)
65歳以上
(b)
(a)/総数
若年者比率
(b)/総数
高齢者比率
平成2年
実 数 増減率
区分
平成7年
実 数 増減率
平成12年
実 数 増減率
平成17年
実 数 増減率
平成22年
実 数 増減率
総数
52,484
△ 12.5
49,447
△ 5.8
46,521
△ 5.9
42,987
△ 7.6
39,574
△ 7.9
0歳~14歳
9,085
△ 26.1
7,298
△ 19.7
6,111
△ 16.3
5,229
△ 14.4
4,436
△ 15.2
15歳~64歳
34,667
△ 13.7
31,581
△ 8.9
28,113
△ 11.0
24,347
△ 13.4
21,359
△ 12.3
7,582
△ 19.2
6,815
△ 10.1
5,953
△ 12.6
4,706
△ 20.9
3,890
△ 17.3
8,729
15.3
10,568
21.1
12,297
16.4
13,411
9.1
13,772
2.7
うち15歳~
29歳(a)
65歳以上
(b)
(a)/総数
若年者比率
(b)/総数
高齢者比率
14.4
-
13.8
-
12.8
-
10.9
-
9.8
-
16.6
-
21.4
-
26.4
-
31.2
-
34.8
-
表1-1(2) 人口の推移(住民基本台帳)
区分
平成12年3月31日
実数
構成比
総数
47,302
男
22,437
47.4
女
24,865
52.6
-
区分
総数
(外国人住民除く)
男
(外国人住民除く)
女
(外国人住民除く)
男(外国人住民)
参考
女(外国人住民)
②
平成17年3月31日
実数
構成比 増減率
44,008
平成22年3月31日
実数
構成比 増減率
-
△7.0
40,338
-
△8.3
20,772
47.2
△7.4
18,950
47.0
△8.8
23,236
52.8
△6.6
21,388
53.0
△8.0
平成26年3月31日
実数
構成比 増減率
平成27年3月31日
実数
構成比 増減率
36,584
-
△9.3
36,078
-
△1.4
17,327
47.4
△8.6
17,085
47.3
△1.4
19,257
52.6
△10.0
18,993
52.7
△1.4
-
-
-
-
-
-
-
-
41
69
40
98
産業の現況と今後の動向
昭和 35 年の産業別人口を見ると、第二次産業の就業人口比率が最も高く、また第一次産
4
業の比率も比較的多く、工業と水産業による「鉄と魚のまち」であったことがわかる。
しかしその後、第一次産業及び第二次産業が比率を減らし、その分第三次産業が比率を
増やしたことにより、昭和 40 年には第二次産業と第三次産業の比率が逆転し、第三次産業
の比率が最も高くなった。こうした傾向はその後も続き、昭和 35 年に4割弱であった第三
次産業の比率は、平成 17 年には6割を超えるまでに増加している。
本市の産業構造が、第一次・第二次から第三次へ移行していることを示している。
今後は、地場産品の加工・販売や、地元産材及び林内未利用資源の活用、農山漁村体験
など、各産業のいわゆる六次産業化を推進し、農林水産業や工業、商業、観光など各産業
間の連携による産業の活性化に向け取り組む。
表1-1(3) 産業別人口の動向(国勢調査)
昭和35年
実数
区分
総数
第一次産業
就業人口比率
第二次産業
就業人口比率
第三次産業
就業人口比率
23,850
総数
第一次産業
就業人口比率
第二次産業
就業人口比率
第三次産業
就業人口比率
-
14.9
-
12.6
-
10.7
-
10.1
-
42.3
39.6
-
37.7
-
35.9
-
34.5
-
32.0
-
39.5
44.4
-
47.4
-
51.0
-
54.7
-
57.9
-
△ 1.0
平成12年
実数
増減率
21,422
30,621
△ 5.5
平成17年
実数
増減率
△ 9.2
18,954
△ 11.5
29,354
△ 4.1
昭和60年
実数
増減率
16.0
23,605
△ 1.6
昭和55年
実数
増減率
18.1
平成7年
実数
増減率
32,394
昭和50年
実数
増減率
32,920
△10.6
△ 4.7
昭和45年
実数
増減率
34,546
平成2年
実数
増減率
区分
⑶
昭和40年
実数
増減率
26,690
△9.1
平成22年
実数
増減率
16,889
△10.9
10.3
-
9.7
-
8.0
-
8.4
-
7.1
-
31.4
-
33.1
-
33.8
-
30.3
-
29.5
-
58.4
-
57.1
-
58.2
-
61.1
-
63.4
-
行財政の状況
① 行政の状況
国・地方を通じる財政の悪化、人口減少・少子高齢化の進行など、市町村行政を取り巻
く情勢が非常に厳しい中にあって、各市町村は、各々の地域にふさわしい公共サービスを
提供し、住民が豊かさを実感できる地域社会を構築する必要がある。財政的にも政治的に
も国依存であった従来の地方のシステムを、分権型の社会システムに転換しなければなら
ない。
現在、本市は、人口減少や少子高齢化、地方分権、価値観や生活様式の多様化など、社
会経済情勢の大きな変化の中で、効率的で効果的な行政運営を行う自治体を創りあげ、地
域に活力がみなぎり、子どもから高齢者まで誰もが安心して元気に暮らせる地域の実現を
行政の使命と考え、まちづくりに取り組んでいる。
また、将来にわたって釜石市民が安心して希望をもって暮らせるように市政運営を行っ
ていくためには、
「住民主体の行政運営」と「財政の健全化」を強力に進め、職員一人ひと
5
りが高い意識と新しい感覚を持って行政改革に対応し、住民への説明責任を果たしながら、
真に優先すべき事務・事業への重点化を進めていかなければならない。
② 財政の状況
本市では復興関連事業により予算規模が大きくなり投資的経費が膨らんだ結果、普通会
計歳出総額は、震災の影響を全く受けていない平成 20 年度が 163.7 億円であったのに対し、
平成 25 年度には 756.3 億円に達している。
歳入では国庫支出金や復興交付金事業の財源となる震災復興特別交付税などが多く占め
ている。
財政状況を示す指数を震災の前後で比較すると、財政力指数は平成 20 年度が 0.52 に対
し平成 25 年度が 0.42、経常収支比率は平成 20 年度が 91.9 に対し平成 25 年度が 93.7 と
悪化している。
今後は復興に関連して整備された施設の維持管理が財政運営のうえで課題となることか
ら、人口減少下に見合った適正な公共施設の運営について議論を深め、健全財政の確立に
努めなければならない状況となっている。
表1-2(2) 市町村財政の状況
区分
歳入総額 A
一般財源
国庫支出金
都道府県支出金
地方債
うち過疎債
その他
歳出総額 B
義務的経費
投資的経費
うち普通建設事業
その他
過疎対策事業費
歳入歳出差引額 C(A-B)
翌年度へ繰越すべき財源 D
実質収支 C-D
財政力指数
公債費負担比率
実質公債費比率
起債制限比率
経常収支比率
将来負担比率
地方債現在高
平成12年度
平成17年度
20,758,438
13,491,051
1,667,075
1,003,595
1,619,700
2,977,017
20,325,608
7,741,239
3,855,848
3,813,136
8,728,521
432,830
314,177
118,653
0.45
13.8
14.7
11.6
83.1
17,535,212
19,703,023
12,126,368
2,075,202
942,804
2,085,800
2,472,849
19,323,949
7,813,539
2,741,374
2,547,092
8,769,036
379,074
2,155
376,919
0.47
15.2
14.2
10.2
90.3
21,252,302
6
平成20年度
17,355,738
12,497,101
2,687,938
925,017
946,900
298,782
16,376,776
8,283,895
1,431,011
1,364,472
6,661,870
978,962
633,185
345,777
0.52
16.7
13.7
10.6
91.9
141.2
20,840,506
(単位:千円)
平成25年度
89,650,331
33,441,067
38,613,348
5,750,022
1,425,604
258,400
10,420,290
75,636,478
8,507,533
35,273,958
30,066,491
31,545,405
309,582
14,013,853
10,832,437
3,181,416
0.42
6.0
13.7
9.6
93.7
35.9
19,556,628
③
公共施設の整備状況
市道の整備については、計画的に事業実施し改良率及び舗装率ともに改善が図られてい
るものの、区画整理未実施地区や地形条件から狭あいな道路も多く、産業の振興、利便性
の確保等の観点から広域路線及び生活道路網の整備が必要とされている。
農道・林道については、状況に応じての事業実施が想定される。
水道普及率については、計画に基づき未普及地区解消事業及び老朽施設の改修により普
及率向上に努める。
水洗化率は、着実に向上しており計画に基づき引き続き事業進捗を図る。
病院、診療所の病床数については、人口規模と比較して多くの病床を抱えているが、医
療の質の充実を図る必要がある。
東日本大震災で被災した公共施設については、復旧・復興事業で整備するが、これら施
設の維持管理費が、将来にわたって過度な財政負担にならないよう検討が求められる。
表1-2(3) 主要公共施設等の整備状況
区分
市道
改良率 (%)
舗装率 (%)
耕地1ha当たり農道延長 (m)
林野1ha当たり林道延長 (m)
水道普及率 (%)
水洗化率 (%)
人口千人当たりの病院、
診療所の病床数 (床)
昭和50
年度末
昭和55
年度末
平成2
年度末
平成12
年度末
平成20
年度末
平成25
年度末
34.0
31.5
35.9
4.1
82.9
0.0
37.6
38.2
46.9
5.2
78.1
3.5
55.9
50.9
40.8
4.6
87.1
22.7
58.9
52.8
52.9
4.9
92.2
41.8
59.9
53.8
55.3
5.2
91.5
57.4
59.9
54.2
55.3
5.2
97.5
77.9
13.1
15.0
18.7
18.0
23.8
25.8
⑷ 自立促進の基本方針
① 目指すべき将来像
本市では、総合計画に準じる役割をもつ計画となる釜石市復興まちづくり基本計画にお
いて将来像を掲げている。
当市は、製鉄業や漁業などを中心に、ほかの市や町にさきがけた先進的なまちづくりが
行なわれてきた歴史があります。また、津波や戦争による被害をのりこえてきた歴史もあ
ります。こうした歴史に学び、次世代に誇れる先駆的技術の導入や地域の絆を中心に据え
た美しいふるさとの再興は、多くの人の共通の願いです。
市民一人ひとりが手をとりあって、また私たちのまちを応援してくれる多くの人の力を
借りながら、
「三陸の大地に光輝き希望と笑顔があふれるまち釜石」の構築を目指します。
7
② 基本方針
(1) 災害に強い都市構造への抜本的転換
市民の生命・財産を災害から守るとともに、三陸の雄大な自然に抱かれた、暮らしの
安全と環境が調和した復興を目指す。
(2) この地で生き続けるための生活基盤の再建
産業の復旧、復興をはじめ、企業誘致などによる雇用創出に全力で取り組み、生活
の安心が確保できるよう努める。
住宅や商店、医療・福祉施設、生活関連公共施設、地域コミュニティなどの復旧・
復興を速やかに推進し、これまで以上に人やもの、情報の交流が活発となるよう取り
組む。
(3) 逆境をバネにした地域経済の再建
地域経済の再建を最優先に進め、釜石の未来を担う子どもたちが夢と希望を持てる、
ものづくり精神が息づくまちづくりを進める。
(4) 子どもたちの未来や希望の創造
釜石市の未来を担う子どもたちが自らの未来に光り輝く希望を持てるよう、歴史文化
やスポーツといった自らの成長過程に誇りを持つことができるまちづくりを強く推進
していく。
⑸
計画期間
計画期間は、平成 28 年4月1日から平成 33 年3月 31 日までの5か年間とする。
8
2
産業の振興
⑴
現況と問題点
①
農業
本市の農業は、稲作、畜産、野菜、菌茸、花き等を組み合わせた複合経営が中心である
が、専業農家が少ないうえ、震災後は内陸部の農地転用による宅地化が進み農地が減少、
経営耕地面積がさらに零細化していると考えられる。また、担い手の高齢化、後継者の減
少により、耕作放棄地が増加、農用地の管理水準が低下しており、将来の農業を支える人
材となる新規農業者を育成・確保することが重要な課題となっている。また、本市周辺で
生息するニホンジカやニホンザルの生息数増大による農作物への被害が深刻化している。
震災による被災農地の復旧については、区画整理事業や災害復興事業の取組により営農
再開した地区もあるが、担い手の不在により営農再開できない地区も存在し、さらに、土
地利用計画がまとまらず復旧計画も決まらない地区もある。
このような厳しい状況下で、産地直売の定着化と PR、学校と連携した農業教育体験や学
校給食への釜石市産食材の提供などを実施することにより地産地消の推進を図り、農業へ
の市民の関心を高める機会の創出に努めるほか、農商工連携による商品開発、生産販売や
販路の拡大の支援などについて官民協働で取り組み、これを推進し、農業振興を図る必要
がある。
畜産業については、福島第 1 原発事故による牧草地の汚染により、利用自粛がとられて
いたが、除染作業が進み、順次利用再開している。
しかし、放牧利用の自粛や TPP に伴う経営環境の不透明感等により、飼養の農家の高齢
化の進行に歯止めがかからない状況が続いている。
平成 27 年開業した道の駅「釜石仙人峠」は甲子地区の地域振興の要として賑わいを創出、
「甲子柿」をはじめ、地域特産品の PR と地域情報発信の場として一役を担うと期待される。
今後、活用のあり方等について地域・官民連携して取り組む必要がある。
②
林業
本市の市域面積 44,142 ヘクタールのうち 89.2 パーセントが森林であり、民有林率は 74.2
パーセントを占める。戦後の大規模造林で造成された人工林が伐採適期を迎えており、そ
の蓄積量は増大している。
しかし、保有規模5ヘクタール未満の零細な林家が多く、木材価格の低迷や経営コスト
の増高等の理由により、林家の経営意欲は減退し、林業活動が停滞している。結果、整備
遅れの森林は増加し、木材の質の低下のみならず、森林の公益的機能(山地災害予防・水
源かん養など)の低下が危惧されている。
また、農業と同様、従事者の高齢化・後継者不足により、マンパワー不足が懸念されて
いる。
9
一方では、地球温暖化や化石燃料の高騰などを背景に、間伐材や林地残材などの木質バ
イオマス資源の有効活用が、低炭素社会の実現や環境保全、さらには雇用創出や地域経済
の活性化を含めた効果も期待されることから、注目を集めている。
こうした状況の中、林業者、製造業者、行政の連携のもと、森林組合が中心となった森
林施業の集約化と作業の効率化による森林整備の推進や、地元企業による石炭火力発電所
での燃料混焼による木質バイオマスの有効活用が進められており、産業振興の重要施策の
一つと位置づけされた取り組みが進行している。
地場産木材の利用促進と震災被災者の住宅自力再建の推進を目的に、林業・材木産業、
建築関係事業者の連携による地場産木材を活用したリーズナブルな住宅供給の取組が展開
されている。また、復興事業における地域木材の活用も進められている。
特用林産物は、かつて原木椎茸の産地であったが、福島第 1 原発事故の影響により原木
が汚染され、全量廃棄という壊滅的な被害をこうむったが、生産再開に向けた取り組みが
展開されている。被災農地を利用した新規菌床しいたけ生産が開始された。
③
水産業
市内の純生産額約 1,100 億円のうち、水産業は約 40 億円で 4%である。
釜石市の養殖物は、ワカメ、ホタテ、コンブの 3 種類で全体の 9 割以上の生産量を占め
ている。養殖物は、魚市場にはほとんど荷揚げされず、漁港の荷捌き施設などから漁業協
同組合を経由して、流通加工業者などに出荷されている。
全体の生産量は、漁業者数の減少に比例して、震災前から大幅に減少しており、特にワ
カメの生産量の減少が著しく、昭和 60 年に約 1 万トンの生産量が、平成 21 年には半分以
下の約 4 千トンまで減少しております。この要因の一つが漁業者の減少によるものである。
ホタテガイについては、釜石市は県全体の 25%の生産量を占め、釜石市はホタテの有数
な産地である。震災年である平成 23 年のホタテガイ生産量はほぼ皆無の状態であったが、
各種補助事業により養殖施設が復旧され、生産機能は回帰傾向にあるものの、漁業者数は、
震災前から大きく減少し、大きな問題となっている。漁業者数は、平成 18 年に 1,831 人で
あったのに対して、平成 24 年は 15%減の 1,565 人まで落ち込んでいます。このままのペ
ースでは、平成 30 年台後半には 1,000 人以下にまで落ち込むことが予測され、併せて 65
歳以上が全体の半数を占める高齢化も進んでいるため、若者の新規着業者を増やすことが
必要となっている。震災により、さらに漁業者減少が加速することとなり、漁業者の確保
は大きな課題となっている。
日本一の生産量を誇る県産アワビやワカメは、価格形成で他の産地を引っ張る力を持っ
ておりブランド力があるものの、生産量の減少により価格形成ができなくなることはブラ
ンド化の衰退に繋がることとなり、ブランド力を保持するためにも、漁業者の確保は重要
な課題である。
釜石魚市場の取扱額は、昭和 56 年~63 年当時は 100 億円を越えていたが、平成に入っ
10
てからは減少傾向が続き、近年は 30 億円程度を保っている。岩手県内では宮古、大船渡に
次ぐ拠点産地市場となっている。震災により水揚の停滞が課題である中、平成 26 年度末時
点での回帰率として数量、金額共に約 9 割程度となっている。
東日本大震災で大きな被害を受けた水産加工業は、国の補助金等により衛生管理を強化
した工場を再建した企業が増えてきたものの、他の産業へ労働力が流出したことによる人
手不足や今までの取引先を失ったこと、原発事故の風評被害等により、経営状況が震災前
の状況に戻っておらず、借入金や固定資産税等の今後の支払い増に対する不安を持ってい
る企業が多い。加工内容は、冷凍物やフィレー加工など低次加工の割合が高く、焼き魚、
サケフレーク、イクラ、レトルト商品などの最終製品を製造する事業者がいるものの、大
手水産会社などの他社ブランドを製造しているところも多く、釜石地域の地元ブランドが
定着していないことが課題である。貿易の自由化を見据えて、輸出拡大を目指そうとして
いる企業も見られる。
④
地場企業
本市では、鉄鋼業中心の産業構造から複合的な産業構造への転換を進めてきたが、近年
の世界的な景気の落ち込みにより、本市の中小企業は受注が減少し、持続的な経営が困難
になっている。
本市の工業統計調査をみると、製造品出荷額等は近年増加傾向にあるものの事業所数及
び従業者数は微減傾向にあり、時代に対応した産業の高付加価値化や低炭素社会形成の視
点を取り入れた環境関連産業の構築等既存枠組みにとらわれない新しい産業の創造、コバ
ルト合金産業に代表される産学官連携による新たな事業の創出、中小企業の経営基盤強化
など、中小企業の持続的な経営を可能にする施策の展開が求められている。
⑤
企業誘致
本市の有効求人倍率は平成 27 年 9 月現在で 1.24 倍となっており、県 1.21 倍、全国 1.25
倍と同様に高い値となっているが、建設や販売といった復興需要関連の求人が多く、雇用
のミスマッチが課題となっている。
また、県内の市町村区域別立地件数をみると内陸部が立地総数の8割程度を占めており、
内陸部への企業進出が際立っていると言える。
このような状況の中、市民生活の基盤となる雇用の場を創出するため、さらなる企業誘
致の推進が求められている。
また、企業誘致を進める上においても、近年、燃料費等のエネルギーコスト上昇が課題
となっており、より安価なエネルギーの確保が望まれている。
⑥
起業促進
平成 26 年度の岩手県における開業率は 3.4%、廃業率は 3.1%となっており、復興の
11
影響もあり、わずかに開業率が上回っている状況にあるが、全国的には、中小企業数と
その従業員数は減少している。本市においても数年後にはこうした趨勢が想定される。
このような状況の中、民間活力を高めていくためには、地域の開業率を引き上げ、雇
用を生み出し、産業の新陳代謝を進めていくことが重要になっている。
⑦
商業
本市の中心市街地は、東日本大震災津波の被害による廃業などにより、会員の減少に伴
う商店街組織の体力低下や人材不足による活動の停滞が見られる。
また、多様化する消費者ニーズや消費動向の変化によって、全国的に郊外型の大型商業
施設を買い物先として選択する傾向にある。
本市では、震災以前からの課題であった地元購買率の低下(県内 13 市中 12 位)と震災
からの中心市街地再生のプロジェクトとして平成 26 年 3 月に大型商業施設を立地したが、
中心市街地の商店街においては、復興途上である個店の早期復興とともに、各種復興事業
に伴う営業環境の変化に対応した商業活動が求められている。
さらに、高齢化の進展に伴い、交通手段を持たない高齢者が増加傾向にあるため、いわ
ゆる「買い物弱者」の増加につながることが懸念される。
このような中で、商工会議所、商店街組織、商店経営者などの連携を強化し、地域に根
ざした商業活動を促進する必要がある。
⑧
観光
東日本大震災以降、本市の観客数は震災前と比べ半分程度に減少しており、大津波によ
り、根浜海岸、観光船はまゆり等海岸部の観光施設の大部分が甚大な被害を受け、重要な
観光資源を失ったことから、観光客減少の大きな一因となっている。
現在の観光資源として海・山の素晴らしい自然景観と新鮮な農水産物などのほかに、世
界文化遺産に登録された橋野鉄鉱山を含む近代製鉄発祥に関する史跡や、鉄の歴史館、釜
石大観音などを有しているが、これらが点在しているため、周遊するには時間的な制約が
ある。
漁業・農業などの様々な体験が味わえるグリーン・ツーリズムについて、震災直後は体
験者が大幅に減少したが、漁業の復興とともに徐々にではあるが増加しつつある。今後、
インストラクターの高齢化による減少が推測されることから、受け入れ態勢の整備が課題
となっている。
また、震災後から始まった防災教育を伴った教育旅行や被災地ツアー、世界文化遺産の
橋野鉄鉱山への来客は今後も継続されていくと考えられ、ボランティアガイドの養成、充
実が必要となるとともに、様々な来客者に対する観光情報の提供方法を整備する必要があ
る。
12
⑨
港湾
釜石港は、南北を結ぶ国道 45 号と東西を結ぶ国道 283 号、また、近年急速に整備が進め
られている東北横断自動車道と三陸縦貫自動車道の結節点にあるため、本市のみならず他
地域の産業活動を支える物流基盤であり、港湾機能の利便性が優れた地域には、経済産業
活動が躍動し、雇用の場が創出されるほか、商業振興、地域福祉向上など様々な波及効果
が期待されるなど、市民生活にとっても重要な位置づけである。
釜石港の港湾整備に関しては、須賀地区公共ふ頭の拡張、釜石港湾口防波堤、仙人峠道
路といった三大基盤の完成やコンテナ用荷役機械等の整備も進み、物流拠点港として高い
ポテンシャルを備えており、平成 23 年に開設された国際フィーダーコンテナ航路によりコ
ンテナ取扱量は順調に推移しているものの港湾取扱貨物量も頭打ちとなっているため、現
在休止している完成自動車物流の早期再開やリサイクルポートの活用など、釜石港のさら
なる利用拡大を目的とした港湾振興施策が必要とされる。
⑩
雇用
本市では、復旧・復興に伴う求人の増加とともに、労働力人口の減少が相まって、震災
後の有効求人倍率は1倍を超える水準で推移している。
また、震災による人口減と比して、雇用保険の被保険者数は震災前とほぼ同水準であり、
管内において働く意欲とスキルを有する人は既に就業しているというような状況になって
いる。
労働力確保のためには、U・Iターンの推進に加え、新規学卒者の地元就職を図るとと
もに、事業所の採用力及び定着力強化を図っていく必要がある。
⑵
その対策
①
農業
農業の振興に向け、次の施策を展開する。
・農地集積等の生産及び経営体系の見直し
・生産基盤整備による経営基盤の強化、コストの縮減・生産の高効率化
・後継者又は新規担い手が参入しやすい環境の整備と支援体制の拡充
・生活様式の変化や宅地化の進展に対応した集落環境整備
・新規参入や農地集積による農地の利用拡大と耕作放棄地の縮減
・学校と連携した地産地消の推進
・甲子柿等特産品の安定した生産体制の構築と出荷量の確保
・農商工連携による商品開発、販路拡大等の支援
・グリーン・ツーリズムのメニューや農家民泊の受け入れ体制の充実
・地産地消を推進する産地直売所の新設及び運営体制の構築及び PR
13
・被災農地復旧に向けた他の土地利用計画との調整
・有害鳥獣の計画的かつ効率的な頭数調整と保護区域見直し等による狩猟捕獲数の増頭
・農家自らによる被害防止対策への支援(防護網・電気牧柵など)
・道の駅「釜石仙人峠」の活用
②
林業
林業の振興に向け、次の施策を展開する。
・低コストかつ高効率な森林整備・木材生産体系の確立により、山主への利益還元と整備
意欲の向上を図り、更なる森林整備を推進する。
(新たな森林施業の確立・林内路網整備・高性能林業機械の導入促進)
・生産した木材の消費先を確保するための安定した供給体制の構築
(分散している森林施業を集約化し、計画的に素材を生産し供給する。)
・素材生産時や木材加工時に発生する未利用資源を有効活用し、森林資源の循環利用体系
を構築する。
(木質バイオマスの燃料利用・発生エネルギーの地域内利用・低炭素社会への貢献・山
地災害の予防)
・天候等の外因に左右されない特用林産物生産基盤の整備とブランド化の推進
・後継者の育成と新規参入者の受入れ体制の整備
・地場産木材の利用促進と震災被災者の住宅再建支援
・菌床しいたけ生産への取組支援
③
水産業
釜石市水産業復興方針(平成 24 年 10 月 9 日策定)では、
「魚のまち」としての復興を遂げ
ていくための骨子となる統一的な方向性を定め、長年の課題となっている産地間競争への
対処、産地としての水揚から物流までの機能向上など、課題解消を含めて水産業の再生を
図ることを指針としている。
・水揚機能・衛生管理機能の強化(産地市場としての機能維持と強化)
・被災により消失している製品保管機能の確保及び物流販路の拡充
・流通加工業者の育成、支援、又は誘導による買受機能強化と水揚増強
・担い手の育成・誘致
④
地場企業
本市の産業支援機関である公益財団法人釜石・大槌地域産業育成センターの活動を通じ
て地域中小企業の経営基盤の強化を図るとともに、市内企業の受発注の増を目的とした異
業種交流の促進・販路開拓支援を推進するほか、市内中小企業者の振興育成と経営安定を
目的として、融資制度の一層の充実を図る。
14
また、低炭素社会形成の視点を取り入れた地域資源を最大限に活用しての環境関連産業
の創出や、コバルト合金産業のクラスター形成等産学官金連携による新事業の創出など、
新産業・新産業創出に向けた取り組みを一層推進する。
地域産業の振興を図るためには、優れた人材を育成することが必要不可欠であることか
ら、ものづくり人材育成の充実を図るとともに、首都圏などからの人材の確保を図る。
⑤
企業誘致
港湾や高規格幹線道路の整備推進による物流機能の向上や、企業ニーズを把握した上で
の地域内人材の育成など、本市における事業環境の整備を促進するとともに、各種企業支
援策の充実を図りながら、地域の特長を活かした企業誘致活動を展開する。
また、将来を見据えた持続かつ安定した雇用の場を確保するため、既存誘致企業の規模
拡張等に対する支援や、今後の展開が期待される海洋再生可能エネルギー産業への地場企
業の参画を図るとともに、地場企業の燃料費縮減や、新たな企業立地の優位性を高めるた
め、LNG受入基地の立地を推進していく。
⑥
起業促進
起業・創業の促進を目指し、関係機関と連携しながら、ワンストップ相談窓口の設置や
専門家によるハンズオン支援、インキュベーション事業等に取り組む。
また、起業家マインドを育むことを目的として、小・中・高校の段階に応じた人材育成
を一層推進する。
⑦
商業
商店街の早期の機能回復を図るため、個店の施設設備の復旧を支援するとともに、商店
街が行う施設整備やイベントなど、にぎわいの創出に繋がる事業や個店の魅力向上を目的
とする事業を支援し、まちづくりや商店会活動をリードしていく人材の発掘及び団体の育
成につなげる。
空き店舗での新規出店に係る改装工事費用等を助成することにより、にぎわいある商店
街を形成し、商店会会員の確保を支援する。
さらに、事業者の商品開発や商品PRを支援するとともに、事業者間の連携を図り、市
内の特産品を総合的にコーディネートできる人材を育成することで、地域ブランド化の推
進と地域特産品の販路拡大に努める。
大型商業施設の立地については、店舗開発を進める企業への法的手続き等を支援する。
「買い物弱者」への支援については、交通・情報・福祉施策と連携した各種サービスの確
保に努めるとともに、閉店した店舗への新たな出店等を促進する。
15
⑧
観光
市内周遊にかかる時間を逆に生かしたコース設定、広域での連携を図るなど内陸部や海
から釜石に来る観光客を迎え入れる観光コース設定を推進する。そして、市内を周遊する
観光客の利便性向上のために老朽化した観光施設の補修及び観光案内板などの新設・修繕
などの整備を行うとともに、観光情報を様々な媒体を活用し発信していく方法を整備する。
また、グリーン・ツーリズムの活動として、個人のみならず関係団体、地域団体等も取
り込んだインストラクター体制を推進し、地域間交流も図りながら充実した受け入れ態勢
を整備する。
ボランティアガイドについては新たな人員確保とガイド研修の充実を図り、教育旅行や
各種ツアー客に対応していくとともに、観光情報の発信については、パンフレットの他言
語化や電子媒体を活用し、外国人にも分かりやすい情報を提供できるよう努め、より多く
の誘客を目指していく。
観光DMO(※)の形成として、観光窓口の一本化、地域の魅力を体現するプログラム
開発・提供および戦略的マーケティング、観光産業の担い手育成など、官民一体となった
推進体制の構築を目指していく。
(※)Destination Marketing/Management Organization の略で、地域全体の着地型観光マネジメントを
一元的に統括する組織。
⑨
港湾
釜石港の利用拡大を目的として、釜石港の特徴や優勢性を PR し、国際フィーダーコン
テナ定期航路の拡充に関しては、荷主に対して船会社とともに強力なポートセールスを行
うほか、完成自動車物流の早期再開に向けたトップセールスやリサイクルポートの活用を
図る。
また、釜石港港湾計画の一部変更工事早期着工、東北横断自動車道や三陸縦貫自動車道
など高規格幹線道路の整備促進など、釜石港の物流拠点化を目指し、港湾整備促進にむけ
て関係機関への要望活動を行う。
⑩
雇用
首都圏で開催するU・Iターンフェアによる情報発信、高校生を対象にした企業や団体
による出前講座や事業所見学会の支援を行いつつ、釜石公共職業安定所や岩手県と連携し
た求人要請及び丁寧なマッチングに取り組み、地場企業の労働力確保と新規学卒者の地元
定着を図る。
離・転職者に対しては、多様化する企業ニーズに対応した職業訓練メニューを充実させ、
企業が求める人材の育成と技能技術の向上、ミスマッチの解消を図る。
さらに、事業主向けの各種助成金や国・県の雇用関係融資制度などの周知・普及に努め、
地元企業を支援する。
16
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
1 産業の振興
事業名
事業内容
事業主体
緑のシステム創造事業
森林組合
(施設名)
(1)基盤整備
林業
(5)企業誘致
工場用地取得事業
土地開発公社
(8)観光又はレクリエ
ーション
(9)過疎地域自立
促進特別事業
鉄の歴史館改修事業
市
釜石物産センター改修事業
市
橋野さわやかトイレ改修事業
市
緑のシステム創造事業
森林組合
釜石港利用促進事業
岩手県・市
地域人材確保・育成支援事業
市
研究開発推進事業
市
Webガイドマップシステム導入事
市
業
高校生のキャリアアップ構築支援
事業
17
市
備考
3
交通通信体系の整備、情報化及び地域間交流の促進
⑴
現況と問題点
① 道路
本市の道路網は、南北を結ぶ国道 45 号と東西を結ぶ国道 283 号を主要幹線とし、主要地
方道2路線と一般県道6路線に市道が連絡して形成されている。
主要地方道及び一般県道は国道とともに交通網の基幹をなす路線であり、広域道路として
の機能はもとより、国道を補完し日常生活や地域開発を図るうえで重要な役割を担っている。
しかし、一部区間において、急勾配、急カーブ及び幅員の狭い箇所がある。
沿岸部唯一の幹線道路である国道 45 号は、平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災に
よる津波において、鵜住居片岸地区、両石地区、東部地区、松原嬉石地区、平田地区、唐丹
地区で被災通行止めとなり、現在、市の復興事業と整合性を取りながら道路の嵩上げ等を実
施している状況にある。
これに加え、復興道路である三陸沿岸道路及び復興支援道路である東北横断自動車道釜石
秋田線は、国のリーディングプロジェクトとして事業化され、かつてないスピードで整備が
進められており、三陸沿岸都市間、内陸部との時間短縮や、災害時でも通行可能な道路の確
保、交通の分散化による渋滞解消などの効果が期待され、その波及効果が企業立地や釜石港
の利活用、内陸部の救急医療施設へのアクセス向上などが見込まれる。平成 30 年度の供用開
始の予定となっている。
さて、市道は、国道及び県道を補完する地域の道路網として、広域的な生活圏域を形成す
るとともに、各種地域振興策の実現や地域の生活環境の向上を図るうえで欠くことのできな
い重要な基盤をなしている。
しかしながら、豪雨や地震などの自然災害時において、落石や崩壊などの恐れがある道路
法面や、幅員狭小のため救急車などの緊急車両の通行に支障を来している生活道路がある。
また、改良から相当年数を経ているため、道路法面のモルタル吹き付けや側溝、舗装及び
街路灯の老朽化が著しく、住民の日常生活の安全や快適性を確保するため、道路維持や補修
などの環境整備を実施する必要がある。
加えて、東日本大震災後の復旧・復興事業を進めている中で、市内全域で工事車両等の通
行量が増加し、道路舗装面の劣化進行が加速し、かつ側溝等の道路付属物の損傷が多発して
いる現状である。
さらに、被災地区から市内陸部等に移転して自立再建される家屋や事務所等が多くあるこ
とから、移転先となった地区で、市道の改良等が必要となっている。
②
ア
公共交通
鉄道
18
本市の鉄道は、市内中心部に位置するJR釜石駅及び三陸鉄道釜石駅を起点とし、西側
にはJR釜石線、北側にはJR山田線、南側には三陸鉄道南リアス線が運行されていたが、
東日本大震災津波の影響によりJR山田線及び三陸鉄道南リアス線が甚大な被害を受ける
こととなった。
三陸鉄道南リアス線については、平成 26 年4月に全線復旧しているが、JR山田線につ
いては、現在、不通となっているものの復旧工事には着手しており、復旧後の三陸鉄道に
よる運営も決定している。
JR釜石線は、東北新幹線へのアクセスや観光客の市内への誘導など、本市と県内陸部
とを結ぶ交通手段として、JR山田線及び三陸鉄道南リアス線は、南北に連なる三陸沿岸
の都市とを結ぶ主要な交通手段であるとともに、旅客輸送の動脈として重要な役割を担っ
ていることから早期の復旧が求められる。
また、通学通勤など、市民の日常生活に欠かすことができない交通手段となっている。
しかし、人口の減少や少子高齢化の進展、マイカーの普及などにより、利用者が減少し
ている状況にある。
特にも、三陸鉄道南リアス線では、震災による運休期間があったことにより、定期利用
者が大幅に減少しており、利用促進に向けた取り組みや利便性の向上等を図っていく必要
がある。
イ
バス
バスは、市民に最も身近な交通手段であるが、人口の減少や少子高齢化の進展、マイカ
ーの普及などにより、利用者が大幅に減少し、バス事業者の自己努力だけでは路線の維持
が困難な状況となっている。
東日本大震災以降は、仮設住宅対応など被災地域のバス路線確保のための補助金を活用
しつつ、学生や高齢者など公共交通機関に頼らざるを得ない市民の日常的な交通手段の確
保と、バス路線の維持に努めている。
また、医療機関から遠い地域に居住している市民の通院手段を確保するへき地患者輸送
車の活用や新たにデマンドバスを導入するなどの方法により、交通手段の確保に努めてい
る。
しかし、バス事業に係る経費が年々増加する傾向にあることや路線バスと行政バスとの
競合区間があるなど、路線バスと行政バスの運行ルート等の調整を図っていく必要がある。
さらに、路線バスの市民への利用促進を働きかけるほか、公共交通が利用しやすい環境
の整備に取り組むとともに、路線バスの運行に適さない地域では、コミュニティバスやデ
マンドバスなどの導入、スクールバス・福祉バスの活用、及び自家用有償運送などの新た
な交通手段の確保に向け、事業者、地域住民、行政が協力して取り組んでいく必要がある。
③
地域情報化
ア
東日本大震災で被災した情報通信環境の復旧
19
平成 21 年度から整備を進めてきた情報通信環境は平成 23 年3月に完成し市内全
域で利用できる予定だったが、東日本大震災により一部施設が被災したことから高
台移転する場所での復旧が求められている。
イ
情報基盤を活用した各種行政サービスの提供(情報発信)
防災、保健・医療、福祉、教育や産業など、よりきめ細かな情報サービスの提供
が求められている。
ウ
地上デジタルテレビ放送難視エリアの早期解消
復興公営住宅や自力再建する高台移転場所が、地上デジタル波を受信できない難
視エリアなことから、地上デジタルテレビ放送の視聴手段について対策を検討する
必要がある。
④
地域間交流
主に首都圏に在住する釜石出身者等で構成される「釜石はまゆり会」が結成されており、
首都圏をはじめとする県外各地域との交流に重要な役割を担っている。また、多方面で活
躍中の釜石ゆかりの県外在住の人を「釜石応援ふるさと大使」に委嘱し、釜石の魅力を情
報発信してもらい市のイメージアップを図るとともに、市の発展につながる情報の提供及
び助言を得ている。
都市間交流については、配置転換により釜石製鐵所から東海製鐵所へ従業員やその家族
が移り住んだ愛知県東海市と平成 19 年3月に姉妹都市締結をしている。また、釜石地方の
漁場開拓のため明治から昭和にかけ当市に移り住んだ人が多い富山県朝日町と昭和 59 年
7月に友好親善都市提携をしており、両市町と相互に訪問交流活動を実施し、官民一体と
なった取り組みが継続されている。
国際交流については、平成4年に当市で三陸・海の博覧会が開催された際、
「アンモナイ
トの壁」剥離標本がディーニュ・レ・バン市を始めとするフランス技術団の協力により完
成され、この博覧会を記念して、当市の鉄の歴史館に「アンモナイトの壁剥離標本」を永
久保存することになったことを契機に両市の交流が始まり、平成6年4月に国際姉妹都市
の提携をした。
⑵
その対策
① 道路
ア
国道及び県道
北東北唯一の太平洋側と日本海側を結ぶ産業経済の発展を担う東北横断自動車道釜
石秋田線、特色ある海浜景観や魚介類などの観光資源が豊富な三陸沿岸地域と仙台
市・首都圏とを結ぶ復興道路及び復興支援道路は、地域間交流と地域経済活動の活性
化、災害時における緊急輸送や高次救急救命医療機関への確実な搬送の確保など、
「命
の道路」としても極めて重要な路線であり、平成 30 年度に予定どおり供用開始される
20
よう、予算の確保など関係機関に要望していく。
また、国道を補完し日常生活や地域開発を図るうえで重要な役割を担っている県道
についても、機能をより高めるための整備促進を関係機関に強く要望し、その実現を
めざす。
イ
市道
市民生活に身近な基盤であることから、定期点検を順守し、緊急度を勘案した優先
順位を決定し、年次的かつ計画的な道路整備を進めて、快適な環境整備に努める。
また、橋りょうについては、橋梁長寿命化修繕計画に基づき、適正な維持管理を進
めていく。
② 公共交通
ア
鉄道
JR釜石線は、本市と県内陸部とを結ぶ重要な交通手段となっており、釜石線沿線活性
化委員会を中心に利用の促進を図っていくほか、通勤通学や新幹線利用者などのニーズに
合った運行時間の設定等、利用者の利便性が高まるよう事業者及び関係機関に対し改善を
要請していく。
JR山田線は、平成 30 年度末の完成を目指して復旧工事が進められていることから、ス
ケジュールどおりの工事の進捗と、完成後の三陸鉄道による運営についてJR、三陸鉄道、
県及び沿線市町村が連携し取り組んでいく。
三陸鉄道南リアス線は、三陸沿岸の都市を結ぶ主要な交通手段となっており、岩手県三
陸鉄道強化促進協議会や三陸鉄道沿線地域等公共交通活性化協議会を中心に利用の促進や
利便性の向上等を図っていくほか、市民のアワーレール意識の醸成や、ローカル線として
の魅力を生かしたイベントの創出など、三陸鉄道南リアス線の持続的かつ安定的な運営の
確保に努めていく。また、山田線復旧後は、南北リアス線とともに山田線部分も含めた一
貫運営を予定していることから、より効率的な運行を目指していく。
イ
バス
バスは、市民にとって一番身近な交通手段であるとともに震災後一部の鉄道が運休
している中で、その重要度はより一層高まっていることから、路線バス及びデマンド
バス事業者に対する財源補填を行いながらバス路線の維持に努めていく。
また、平成 26 年度に策定した地域公共交通計画に基づき、路線バスと行政バスの競
合区間の解消による運行ルートの効率化や利用環境の改善を行い不採算路線の解消を
図るとともに、公共交通機関に頼らざるを得ない市民の日常的な移動手段を確保する
ため、コミュニティバスやデマンドバスの導入、スクールバス・福祉バスの活用、自
家用有償運送等の新たな交通手段の確保に努めていく。
21
③ 地域情報化
・情報通信基盤(光ファイバ網)の復旧整備
総務省が進める「情報通信基盤災害復旧事業」を活用し、被災した地域の光ファ
イバ網を復旧整備する。この整備により、携帯電話等不感地域へのサービスエリア
拡大の可能性も高まる。
・情報提供基盤(システム)の整備
情報提供を行う基盤的なシステムとして平成 26 年度に整備した情報配信基盤等
を活用すると同時に、インフラとして世界遺産橋野鉄鉱山見学やラグビーワールド
カップ開催に伴い訪れる観光客、主に外国人向けに Wi-Fi の整備充実を図り、利用
者がパソコンや携帯端末、テレビなど様々な端末で、場所ごとに必要な情報を手軽
に入手できるよう整備する。
・地上デジタルテレビ放送難視エリアの早期解消
復興公営住宅や自力再建する高台移転場所が、地上デジタル波を受信できない難
視エリアなことから、総務省が進める「復興まちづくりICT基盤整備事業」を活
用し、ケーブルテレビ等での視聴ができるよう整備を図る。
④ 地域間交流
全国に釜石の魅力を情報発信し釜石のイメージアップと市への情報の提供、助言をも
らうため、「釜石はまゆり会」や「釜石応援ふるさと大使」と市民との交流を推進すると
ともに、当市に縁のある人の人材活用とネットワークの構築を進める。
また、姉妹都市等の東海市及び朝日町と市民参加による各種の交流事業を更に推進し、
地域の情報を発信する。
自主事業等を積極的に展開し、市民参加の国際交流を行っている釜石市国際交流協会
の活動の促進を図り、多様な交流の拡大を推進するとともに、これまでのフランスや中
国の姉妹都市等との交流がより確実なものとなるよう取り組んでいく。
併せて、外国人への標識、案内板等は、市内中心部で英語表記が行われているが、世
界経済のグローバル化が進むことにより、今後もますます外国人の往来と居住の増加が
見込まれることから、外国人が釜石で生活しやすい環境を整える取り組みを進める。ま
た、市民が外国人と接する機会を増やし、他国の文化や歴史に触れ、理解を深めるとと
もに、自らの地域に誇りを持つ市民の育成を図る。次世代の育成に当たっては、世界規
模で活躍できるコミュニケーション能力を育むため、英会話能力はもとより国際理解教
育を充実させる。
22
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
事業名
自立促進施策区分
事業内容
(施設名)
事業主体
2 交通通信体系の (1)市道
整備、情報化及び地
道路
域間交流の促進
法面災害防除事業
市
生活道路整備事業
市
(6) 電 気 通 信 施 設
等情報化のための
施設
テ レ ビ 放 送 等 難 共聴施設等整備事業
三陸ブロードネッ
視聴解消のため
ト、尾崎白浜テレ
の施設
ビ共同受信施設
組合
その他
Wi-Fi 整備事業
23
市
備考
4
⑴
①
生活環境の整備
現況と問題点
水道
本市の水道事業は、平成 26 年度末において、普及率 98.0%に達し、大部分の市民が
水道を利用できる状況となっています。
しかしながら、水道施設の大半は、水需要が急速に高まった高度経済成長期に整備
されたものであることから、現在一斉に更新時期を向かえています。
また、今後も発生が懸念される多様な災害等に対応するため、基幹的施設を中心に、
耐震化を計画的に進めていく必要があります。
加えて、水道未普及地域においては、生活様式の変化、さらには飲用としている地下
水等の水質への不安等から地域住民の水道施設整備への要望が出されています。
人口減少に伴い、今後も水需要の減少基調が続くことが確実な状況にあることから、
水道施設の更新、耐震化、水道未普及地域の解消について、優先度に従って着実に実施
していく必要があります。
②
下水処理
本市の公共下水道事業は、生活環境の向上と公共水域の水質保全に資することを目的
として、昭和 32 年度事業認可を受け、大平処理区及び上平田処理区について事業を実施
している。
東日本大震災の津波で被災した釜石東地区については、平成 30 年度を目途に復興のま
ちづくりと併せた整備を行うこととしている。
また、鵜住居町・片岸町を処理区とした新たな処理場を鵜住居町に建設し、こちらに
ついても平成 30 年度を目途に復興のまちづくりと併せた整備を行うこととしている。
管渠整備については、各排水区を順次進めており、平成 26 年度末の汚水処理人口普及
率は、79.0 パーセントとなっており、今後も予算を調整しながら進めて行きたい。
公共下水道計画区域外の地域においても、衛生的で快適な生活環境づくりを進めるう
えで、合併処理浄化槽の導入促進を図っていく必要がある。
雨水整備については、大雨による市街地の浸水解消・軽減を図るため、汐立に雨水ポ
ンプ場を建設し排除を進めていく計画である。
③
廃棄物処理
本市では、ごみ及びし尿処理に係る収集区域を市内全域とし、廃棄物の適正処理を推
進し、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に努めている。
ごみ処理については、ごみ集積所に排出された家庭ごみの収集運搬を市内業者に委託
24
しており、収集ごみのうち、一般ごみ、粗大ごみは、岩手沿岸南部広域環境組合が運営す
る岩手沿岸南部クリーンセンターに搬入処理している。また、古紙、缶、びん等の資源物
は、容器包装リサイクル協会や地元資源物業者に搬出し、再資源化している。
この中、ごみ排出量及びごみ処理経費の削減が求められており、生ごみの堆肥化の促進、
集団資源回収の推進、ごみ集積所の集約化の取組に対する補助を行いながら、家庭用指定
ごみ袋制度の導入や分別区分の見直しを行い、リデュース・リュース・リサイクルの3R
を基本に、ごみ減量対策を推進している。平成 21 年度以降、減少傾向に転じた「市民一人
1日当たりのごみ排出量」は、東日本大震災発生後の復旧復興の進捗とともに、増加傾向
を示しており、より一層のごみ減量の取組みの推進が求められている。
また、浸水地域での自立再建住宅が増加する中で、巨大津波で流失したごみ集積所の復
旧支援が求められている。
し尿処理については、市が許可した市内業者がし尿及び浄化槽汚泥の収集運搬を行い、
釜石・大槌地区行政事務組合が運営する釜石・大槌汚泥再生処理センターに搬入処理して
いる。
近年、人口の減少や公共下水道等の普及により、し尿収集量が減少している一方、浄化
槽汚泥は増加してきたが、東日本大震災以降、公共下水道の未整備地域への自立再建住宅
の建設により一層増えるとともに、仮設住宅や仮設店舗からの油脂類の混入等により施設
の維持管理に支障をきたしており、今後、復興事業の進捗に伴う浄化槽設置住宅の増加が
予想されるなか、建設後 10 年を迎える当施設の改良による適正処理の維持が求められてい
る。
このため、自力再建等の状況を把握し、処理量等の予測を見極めながら、施設の長寿命
化計画を検討し、安定処理を確保することが必要となってくる。
④
消防防災
ア
消防救急
本市は、釜石市及び大槌町で構成する釜石大槌地区行政事務組合のもと、震災で被災
した釜石消防署が鈴子地区に平成 25 年度完成し平成 26 年 4 月 1 日から運用しており、
小佐野地区にある出張所とあわせ 1 署 1 出張所の常備消防体制と、市域を8つの分団に
管轄区分した釜石市消防団による非常備消防体制により、火災や自然災害等へ備えてい
る。
しかし、非常備消防の活動拠点となる消防屯所は津波により被災し、震災から4年半
経過という中、人口流出に伴う担い手の不足や団員の高齢化・サラリーマン化など活動
を取り巻く環境が著しく変化しており、組織の強化が必要となっているほか、団員の居
住地も含めまだ復旧していない消防屯所があることから計画的な整備が必要となってく
る。
また、消防施設・設備の近代化に伴い、今後、維持管理費用負担が増大することが当
25
面の課題となってくる。
さらに、常備消防における車両等の設備整備については、梯子車をはじめ、更新基準
を経過した車両の計画的な更新整備が必要となっている。
イ
防災
三陸沿岸は津波の常襲地帯であり、今後も発生が見込まれる地震・津波並びに近年増
加している洪水、土砂災害等豪雨災害の被害軽減のため、地域防災力の強化が求められ
るが、自主防災組織の組織率は岩手県内でも低く、コミュニティを基本とした災害初動
対応の確立のため、自主防災組織の設置促進と市民の防災意識の啓発や訓練、災害危険
箇所の把握と共有が必要となっている。
また、平成 23 年に発生した東北地方太平洋沖地震や平成 26 年の両石町での林野火災
等での災害経験から、自衛隊等の受入れが可能な施設やヘリポート等の受援施設が必要
となっているほか、東日本大震災規模の巨大地震が発生した場合、災害対策の重要拠点
となる市庁舎が倒壊する危険性が高いため、防災拠点となる施設整備が必要となってい
る。
災害時における市民への情報提供手段としてデジタル防災行政無線を整備しているが、
復興事業が進行中の被災地区にはまだまだ屋外子局の整備が必要であり、また、平成 26
年広島市土砂災害の際、豪雨時に屋外子局の放送聴取が困難とされた事例から、土砂災
害警戒地域を中心として戸別受信機をはじめとした災害情報伝達手段の整備拡充が必要
となっている。
⑤
住宅
本市の住宅事情は、住宅の量的充足が進んでいることもあり、人口や世帯数の減少に伴
い空き家が増加し、地域のコミュニティや周辺景観への影響が考えられる状況となってい
る。
市営住宅に関しては、高齢者や障害者に配慮したバリアフリー化が進んでいないため、
良好な住環境の提供が求められている。
⑥
公園
本市の公園・広場については、整備から相当年を経過した公園を抱えていることもあり、
施設の老朽化が進み、バリアフリー化などの要望に応えたものとはなっていない状況とな
っている。
⑦
斎場
釜石斎場は、市民の安全・安心な生活に必要不可欠な施設であるとともに、災害時の対
26
応などを考慮し、常に万全の態勢を整えておく必要がある。しかし、平成 10 年2月の供
用開始以来 15 年が経過し、施設の老朽化が進行しており、計画的な改修が必要となって
いる。今後、老朽化がさらに進行し、大規模な改修が必要となった場合、火葬の受け入れ
に制限をかけざるをえない事態も想定され、市民への多大な負担を強いることとなる。ま
た、斎場は故人との最後の別れの場所であることから、利用者に不快感を与えないよう、
外側も常に奇麗な状態に保つことが望まれる。
⑶
その対策
①
水道
適切な資産管理に基づき、中長期的な視点で、財源の裏付けのある更新計画を策定し、
水道施設の更新と耐震化を効果的に進める。
また、日常の維持管理、保守の適切な継続実施により、施設の健全度の維持に努めます。
地域から要望されている未普及地域への水道施設整備については、地域住民と協議を進め
ながら、調査・検討を行ったうえで対応を図る。
②
下水処理
住民の生活環境の向上と公共水域の水質保全のため、未整備地区の管渠の整備を行い、
普及率の向上を図る。
また、東日本大震災からの復興まちづくり計画に併せた、管渠整備を進めるとともに、
下水道計画区域外の地域での水洗化を促進するために、合併処理浄化槽の普及を図る。
③
廃棄物処理
ごみ処理については、引き続き、ごみの分別徹底、及びリサイクルを推進し、ごみ減
量を目指す。このため、広報誌やホームページを活用した情報の提供やごみ座談会をご
み減量に対する市民の意識醸成に努めながら、集団資源回収活動を促す。また、平成 28
年度に整備する資源物ストックヤードと併せ、ペットボトルの効率的な収集運搬及び処
理方法等を検討し、分別回収に努める。なお、大きく増加している事業系ごみについて
は、搬入先の岩手沿岸南部クリーンセンターや許可収集事業者と連携し、チラシの配布
等により、ごみの分別徹底、リサイクルの啓発に努める。
し尿処理については、引き続き、許可業者に計画的な収集を指導するとともに、広報
誌及び復興新聞等を活用し、し尿・浄化槽汚泥の収集に対する理解と協力を市民に周知
しながら、処理施設への搬入量の平準化に努める。
④
消防防災
ア
消防救急
27
被災している非常備消防活動拠点施設消防屯所の整備を計画的に進める。消防団員の
確保のため、若年層の団員加入の増進に向けた啓発活動等を行う。
また、老朽化した梯子付消防自動車等の消防車両及び救急業務高度化に伴う高度救命
処置用資機材等の整備を計画的に進めるほか、高機能通信指令施設等の機能継続を図る。
イ
防災
平成 23 年東北地方太平洋沖地震クラスの地震と津波に備えるため、災害対策機能を確
保し、自衛隊等の受け入れ態勢を確保するとともに、平常時は消防団員や自主防災組織
の講習や訓練を行うことにより、災害時に即応できるよう市の危機管理体制の充実と地
域住民の防災意識の高揚に努める。
また、大規模災害時には自主防災組織の活動が重要であることから、新規組織の結成
や既存組織の運営強化に努める。
さらに、減災と防災力向上のために必要な意識・知識・技能を有する防災士(NPO
法人日本防災士機構が認定)を育成し、自主的な地域防災力の向上を図る。
既存施設を活用した避難施設充実と防災行政無線をはじめとした情報伝達の機能強化
を図り地域の防災力を強化する。
⑤
住宅
住宅については、空き家の有効活用や周辺環境に配慮した除却事業などの展開を図る必
要がある。
市営住宅については、高齢化社会に対応した住環境の創出が図れるよう市営住宅に関す
る長寿命化計画を策定し、計画的な整備に努める。
⑥
公園
老朽化した施設の更新を行うことで利用者の快適性と安全性の確保を図り、バリアフリ
ー化などによる高齢化社会に対応した整備に努める。
⑦
斎場
火葬炉の延命策として、1日の受け入れ件数を制限し、3基の火葬炉を順番に稼働させ
るほか、毎年計画的に修繕を行っている。
また、毎年各種の保守点検業務を行い問題が最小限に留まるよう配慮している。
28
⑷
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
3 生活環境の整備
事業名
事業内容
(施設名)
事業主体
(4)火葬場
釜石斎場修繕事業
市
(5)消防施設
消防屯所建設事業
市
消防車両購入事業
市
防火水槽建設事業
市
消火栓整備事業
市
資機材搬送車購入事業
事務組合
高規格救急自動車購入事業
事務組合
高度救命処置用資機材購入事業
事務組合
梯子付消防自動車購入事業
事務組合
(7)過疎地域自立 洪水・土砂災害ハザードマップ整備
促進特別事業
市
事業
防災資機材整備事業
市
ペットボトル収集試行事業
市
防災士養成研修講座事業
市
29
備考
5
高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進
⑴
現況と問題点
① 高齢者福祉
本市の人口の高齢化は、国・県を大きく上回る速度で進展しており、老年者人口(65 歳
以上)は、平成 26 年度末現在で 12,899 人(27 年3月末住民基本台帳)
、高齢化率は 35.8
パーセントとなっており、この傾向は今後さらに進むことが推測される。
高齢化の進展とともに、ひとり暮らしの高齢者や高齢者夫婦世帯が増加しており、平均
寿命の延びに伴って認知症高齢者も増加しているため、高齢者福祉対策は急務である。
また、東日本大震災で被災した高齢者に対しては、復興公営住宅への入居や住宅再建等
により新たなコミュニティの形成が必要となるため、支援の取組みは重要である。
このような高齢化に対応するため、市内には特別養護老人ホーム3か所、老人保健施設
2か所、地域密着型介護老人福祉施設2か所があり、施設介護サービスを行っている。
また、9か所のグループホーム、3か所の小規模多機能型居宅介護施設、15 か所の居宅
介護支援事業所があるほか、釜石市保健福祉センター内に釜石地域包括支援センターを設
置して、65 歳以上の高齢者の、介護サービス、介護予防サービス、日常生活支援などの相
談業務を行っており、市内3地区の生活応援センターには地域包括支援センターの保健師
を配置して、事業所と連携を図りながら居宅介護サービスの充実に努めている。
介護保険制度以外の高齢者在宅福祉サービスとして、緊急通報装置貸与、外出支援サー
ビス、寝具洗濯乾燥消毒サービス、福祉用具貸与、訪問理美容サービスなどの事業を実施
している。
介護予防事業では、いきいき運動教室、歯つらつ健口教室、介護予防活動を行う地域住
民グループへの支援、生活支援を行うヘルパー派遣などの事業を行い、認知症高齢者対策
では、認知症高齢者家族介護支援事業、認知症高齢者徘徊SOSネットワーク事業、一人
暮らし老人の閉じこもり予防事業を実施している。
高齢者の社会参加や生きがい対策として、シルバー人材センターへの就業支援を行うほ
か、老人クラブ等による創作活動、奉仕活動への活動支援や、敬老会、特定年齢者への敬
老祝金の贈呈、老人福祉センター滝の家を拠点とした活動の支援等に努めている。
高齢者の健康増進や教育の向上、各種レクリエーション等の便宜を総合的に提供する施
設である「老人福祉センター〔送迎用バスを含む。〕
」、及びふれあい交流センター清風園は
築後 43 年を経過しており老朽化が問題となっている。
②
児童福祉
急速な少子化進行、共働き世帯やひとり親家庭の増加により、仕事と家庭の両立が難し
いことや子育ての孤立感と負担感が増加している。
30
また、隣近所の連帯意識の希薄化が進む中で、東日本大震災で被災した沿岸部において
は震災前の地域コミュニティが崩壊していることも加わり、子育てに対する不安や負担を
感じる家庭が増えてきている。
地域の宝である子ども達が健全に育つよう、多様なニーズに合わせたより質の高い保育
サービスの提供や、施設整備、放課後児童の居場所確保、子育てにやさしい環境を整えて
いくほか、発達障害の早期発見、地域全体で子育てを支援する体制の充実に努めている。
また、将来の社会的自立に向けて、障がい等をもつ子どもとその家庭へ一貫して継続し
た支援体制を整備する必要がある。
③
地域福祉
高齢者比率が高まる中、ますます老人世帯が増加し、地域全体が高齢者という状況も顕
在化しており、こうした高齢化が顕著な地域においては、生活環境が一段と厳しくなって
来ている。しかし、このような状況においても、住み慣れた地域や家で暮らしたいと願う
気持ちは、人々が望む共通のことである。
住み慣れた地域で、安全に快適な生活を実現するためには、支援を必要とする者の求め
に応じた福祉サービスが身近なところで迅速に受けられることが必要である。
また、自立生活を支援し、その多様な生活を支える観点から、保健・福祉・医療機関の
もとに各種サービスが総合的・一体的・効率的、かつ、継続的に提供できるよう県・市・
社会福祉協議会・ボランティア団体・民生委員・地域協力員等とのネットワークの構築が
急務である。
地域の生活状況から生じる様々な物的要望・制度的要望に対し、きめ細やかな環境改善
事業を行うとともに、みんなで支え合う福祉の土壌づくりに向けた組織化活動を積極的に
推進しなければならない。
地域福祉を推進するために民間組織活動が欠かせないが、とりわけ、社会福祉協議会の
役割が重要である。しかし、最近の急激な福祉制度の変革に対応する体勢が、極めて脆弱
であり、必要とする要求が複雑多様化し、公的事業と民間事業との重層的な推進が望まれ
る。
地域において、きめ細かい福祉サービスを提供していくためには、民生児童委員や地域
での協力者による日常の活動が重要であり、相談指導や助言の出来る福祉教育の推進と関
係機関・団体・住民の力による相互連携活動の出来る条件整備を行わなければならない。
なお、支え合いに基づく訪問・給食サービス・家庭介護等の個別的ニーズには、自発性
に支えられたボランティア活動が欠かせないため、組織と人材の育成を図っていくことが
必要である。
④
障がい者福祉
障がいのある人がいきいきと安心して普通に暮らせるまちづくりを基本理念とし、その
31
実現のためにさまざまな施策の展開を図ってきた。しかし、障がいがある人に対する理解
や、就労を含めた社会参加など、障がい者福祉の充実はまだ十分とは言えない状況にある。
障害者総合支援法では、障がいのある人が、地域で自分らしく生活するため、当事者の
ニーズに応えた適切なサービス利用をきめ細かく支援するための計画相談支援が創設され
たものの、受け皿となる相談支援事業所、各サービス事業者・人材等の不足が課題となっ
ている。
また、地域での生活を希望する施設入所者や精神科系病院の長期入院者などの地域生活
への移行を進めることが大きな課題となっているが、そのために必要となる居住・就労環
境やサービスが不足している。
⑤
保健
本市では、生活習慣病予備群が増加傾向にあり、生活習慣病が死因の6割を占める状況
となっている。第 2 次釜石市健康増進計画(平成 26 年度~平成 35 年度)を策定し、健康
づくり活動を推進しているところである。当計画の理念として、一次予防に重点を置き、
健康寿命の延伸を図ることを目指している。
健康づくりを推進するためには、一人ひとりが主体的に健康づくりに取り組み、行政の
ほか、関係機関や関係団体など、地域社会が一丸となって健康づくりを推進して行くこと
が重要となる。
平成 25 年度の状況としては、生活習慣病予防の第一歩となるがん検診、特定健康診査、
特定保健指導を受ける人の割合が低い状況である。また、釜石地域は 75 歳未満のがん、脳
血管疾患、心疾患の年齢調整死亡率が岩手県の中でも高い状況となっている。更に、男女
ともに肥満者の割合が増加しており、男性では 30 歳代、40 歳代が最も多く5割が肥満と
いう状況である。
こころの健康に関する状況としては、平成 25 年度以降は自殺者数が減少傾向となってい
るものの、「気分障害、不安障害に相当する心理的苦痛を感じている人」の割合が県平均
を上回る状況となっている。
釜石市民病院と岩手県立釜石病院との統合に伴い、平成 19 年に、釜石市民病院を活用し
設置した保健福祉センターは、市の保健福祉部門のほか、民間公益団体、民間病院及び民
間診療所などが混在する、市民にとって、極めて重要且つ利便性の高い施設となっている。
しかし、建物本体は、昭和 56 年完成の老朽建物であり、この間、耐震補強や一部設備の
更新を行ったものの、屋上防水や壁面などの躯体や排水管等の設備の経年劣化が顕著であ
り、中期的な営繕計画を策定し、これに基づいた対応が求められる。
⑵
その対策
32
①
高齢者福祉
高齢者保健福祉対策として、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活し続けることがで
きる環境づくりのため、高齢者の生きがいづくり、社会参加への支援、介護予防や認知症
対策の推進、介護サービスの充実などを目指す。
その実現のために個々のニーズに応じた医療・介護・福祉サービス提供の仕組みづくり
や、住まいや就労の場の確保、福祉活動を担う人づくりに取り組む。
また、地域全体で高齢者の安心・安全で活力ある生活を支えるため、高齢者世帯及び一
人暮らし高齢者等の見守りや生活支援、老人クラブの育成強化を図り学習やスポーツ・趣
味活動などの活動の場を提供するとともに、支え合いによる日常生活支援活動を促進する。
②
児童福祉
少子化は進行しているが、働き方や家族形態の変化から保育需要はむしろ増加傾向で、
待機児童数についても増加傾向にある。
安心して子育てできる環境づくりのため、民間の保育所、認定子ども園、小規模保育事
業所、児童館、学童育成クラブ等施設の整備更新を推進する。
公立保育所については、老朽化、東日本大震災による耐震性能の更なる低下のため施設
整備が急がれており、併せて待機児童の解消と多様な保育ニーズに対応するため、認定こ
ども園へと移行し、被災した障害児通所支援事業所及び児童館との併設により子育て環境
の充実、利便を図る。
また、地域全体で子育てを支援する体制の充実、子育て支援員等人材の育成・確保、障
がい等をもつ子とその家庭への途切れない支援の充実強化など施策の充実に努める。
③
地域福祉
各地域において災害時避難行動要支援者対策を進めることにより、地域を支える支援団
体・組織・ボランティアの育成を図り、ネットワークの構築を進め地域の連帯強化を図る。
民生児童委員・町内会等関係者・地域協力団体関係者・郵便局配達員・新聞配達員・水道
検針員等による独居老人への見守りや生活支援を行う見守りネットワークの構築を進める。
④
障がい者福祉
障がいやその特性に対する理解不足解消のため、市広報紙や市ホームページによる啓発
活動を行い、障がいのある人が抱える問題を市民一人ひとりが身近な問題として考えるよ
う取り組む。
釜石大槌圏域の障がい福祉関係者で組織する釜石大槌地域障がい者自立支援協議会で地
域に不足しているサービスについて協議を行い、地域の社会資源の開発に努めるとともに、
サービス事業者のさらなる参入の促進、質の高いサービス提供に努める。
障がい者施設入所者や精神科系病院長期入院者の地域移行を実現するため、グループホ
33
ームの整備や障がい者就労支援施設のさらなる充実を図る。
⑤
保健
健康づくりを推進していくためには、市民一人ひとりの意識の向上が必要であり、生活
習慣病予防に関する普及啓発、保健指導等の充実、健康づくりを推進する自主グループ活
動の支援にも継続して取り組んでいくことが必要である。
さらに、脳卒中予防対策、がん検診受診率向上対策として、これまで実施してきた休日
検診(健診)、追加検診、追加申込み等の実施に加え、生活応援センターと連携した検診(健
診)未受診者への受診勧奨の強化、特定検診結果説明会や生活習慣の改善を目的とした教
室等の開催に取り組んでいくことが重要となる。
また、こころ・休養に関する健康づくりでは、ゲートキーパーを養成するなど、こころ
に関する身近な相談窓口の強化に取り組んでいく必要がある。
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
4
自立促進
事業名
施策区分
(施設名)
事業内容
実施主体
高齢者等の保 (3)児童福祉施設
健及び福祉の向上
保育所
こども園移転整備事業
市
及び増進
児童館
栗林児童館改築整備事業
市
(4)認定こども園
正福寺幼稚園舎耐震改修事業
学校法人
(5) 障害者福祉施設
福祉ホーム
施設整備事業
34
市
備考
6
医療の確保
⑴
現況と問題点
本市の医療環境は、保健医療圏域の限られた医療資源の中で、基幹病院である県立釜
石病院を中心として、急性期から慢性期、更には在宅や介護福祉施設などが機能分担す
る取り組みが進められている。
地域包括ケアの構築を念頭に、保健、医療、福祉介護のネットワークの構築をめざし
た取り組みが進められており、県、市・町、医師会、歯科医師会、薬剤師会など医療関
係機関、介護施設と医療情報を共有する仕組みづくりを更に進めることが求められてい
る。
本市のみならず全国的に医師や看護師などの医療従事者が不足しており、医療機関、
行政機関、市民がそれぞれの立場で連携した取り組みが必要である。少ない医療資源を
活用するために、市民がかかりつけ医を持つことや救急診療の適切な受診を心がけるこ
とのほか、病気に関する知識を理解してもらう取り組みも必要である。
また、病院及び診療所とも、その多くは市街地周辺に位置しており、郊外からの通院
手段を確保するため、継続して、へき地患者輸送バスの運行が必要である。
乳幼児、小学生、妊産婦、重度心身障害者、ひとり親家庭、身体障害者3級、就学前
心身障害児への医療費助成を実施している。この中で、市が単独で実施している身体障
害者3級医療費助成制度、就学前心身障害児医療費助成整備について、継続した助成と
ともに、制度の内容について検討する必要がある。
⑵
その対策
保健、医療、福祉介護のネットワークの構築を目指し、現在進められている釜石・大槌
医療情報ネットワークに対し、関係機関や関係団体と連携し、積極的な取り組みを行う。
医療従事者の確保に向け、研修医の学会や研修会への参加支援を行う。
医療資源を有効に機能するため、小児救急医療や医学・健康に関する知識を普及する活
動を行う。
現在実施している医療費助成制度の継続と内容を検討する。
35
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
5 医療の確保
事業名
事業内容
(施設名)
(3) 過 疎 地 域 自 立 市単独医療費助成事業
促進特別事業
36
事業主体
市
備考
7
教育の振興
⑴
現況と問題点
① 学校教育
将来のまちづくりを担う子どもたちが、震災を乗り越え、未来の夢と希望を実現できる
ように、基礎的・基本的な知識・技能とこれらを活用するための思考力・判断力・表現力
等のバランスを重視していくことが必要である。
本市においても、過疎化、少子高齢化により児童生徒数が減少していく状況にあるが、
今後復興住宅等の整備や自力再建が進むにつれ各学校の生徒数に変化が生じることが予想
されるため、教室数の確保など適正な学習環境の整備が必要である。
このような状況を踏まえ、家庭や地域社会との連携を深め、創意工夫を生かした教育課
程の編成・実施により、特色ある学校経営を進め、児童生徒一人一人の能力に応じた教育
を図ることが重要であるとともに、小中学校施設の老朽化による学習環境の悪化や旧耐震
基準校の耐震性の不足、経年劣化したスクールバスの更新が課題となっており、これらの
対応が急務である。
学校給食センターは、供用開始から約 25 年が経過し、これまで施設の改修及び設備更新
等を行いながら、震災を契機に、鵜住居地区と唐丹地区の仮設校舎に併設した仮設調理場
を整備。平成 24 年度からは三施設による小中学校の完全給食を開始し、安全でおいしい学
校給食を推進してきた。しかしながら、現学校給食センターの敷地の賃貸借期限が平成 32
年 7 月に迫ってきていることや施設・設備の老朽化により二つの仮設調理場の機能を現給
食センターへ集約することは不可能であり、環境への配慮と安全管理を徹底するためにも、
施設・設備を見直すとともに、新たな学校給食センター整備の検討が必要である。
②
就学前教育
幼児期は、人間形成の基礎をつくる重要な時期であり、子どもの発達の特性に応じた教
育の充実を図る必要がある。
本市においても、保育所を希望する保護者が増える一方で、幼稚園は定員割れが続いて
おり、発達に適した子ども集団の確保が難しい状況である。また、特別な支援を要する子
どもの受入れ体制の充実や東日本大震災で被災した施設の復旧が待たれる。
保育への保護者のニーズも高まる中、保護者の就労に関わらず利用できるこども園への
移行や民営化について検討を進める必要がある。
③
生涯学習
地方分権が一層進み、新しい公共に向けた取り組みが始まっている中で、生涯学習にお
いても地域住民が主体となり、行政は必要な支援をしていく形態に変化していきますが、
37
本市では民間による学習の場が限定されており、ボランティアや指導者、リーダーの養成
に一層力を入れると同時に、各地区、分野で取り組まれている生涯学習の活動団体やその
リーダーについてもネットワーク化するなど、住民が主体的に生涯学習に取り組むような
環境を整えていかなければならない。また、社会教育関連施設の老朽化などが課題となっ
ている。
本市では、公民館と連携して、地域の特性を生かしながら乳幼児から高齢者に至るそれ
ぞれのライフステージに応じた学習機会の提供に努めてきたが、現代的な課題に対応した
生涯学習を進めるとともに、人材の発掘に努め、公民館事業を拡大するなど、より一層充
実させる必要がある。
また、市立図書館は少子高齢化・情報化社会において、生涯学習等の拠点として重
要な役割を持ち、多様化・高度化する地域住民の学習要求に応える施設としての整備
が必要である。
④
生涯スポーツ
生涯スポーツの推進に際しては、余暇時間の増大も考慮した幼児から高齢者に至るまで
の体育・スポーツの振興施策が重要であることから、これまで、スポーツ推進委員を中心
とした各種スポーツの浸透のほか競技スポーツの推進にも取り組んでいる。
その結果、学校や公民館、各地区の行事に際してスポーツ推進委員の派遣要請が年々増
加する傾向にあるが、東日本大震災による、スポーツ活動の拠点となる社会体育施設の減
少や、学校体育施設が学校の統廃合などによって減少し活動場所が不十分な状況にある。
特にも、社会体育施設については、市民体育館、陸上競技場の廃止や、市営プールなど
の既存施設の老朽化により、市民スポーツの推進や各種大会の開催にあたっても支障をき
たしている。
このことから、市民の健康増進やニュースポーツの普及促進、にぎわい創出に寄与する
各種スポーツ大会の開催、誘致、各専門競技の競技力向上を目的とした合宿等を誘致でき
るような社会体育施設の改修及び整備が課題となっている。
また、新日鐵釜石ラグビー部が伝説のラグビー日本選手権 7 連覇を果たし、同部を母体
に全国初の地域共生型クラブチームとして生まれ変わった釜石シーウェイブス RFC が存在
するラグビーのまち・当市は、日本で開催されるラグビーワールドカップ 2019 の会場地に、
東北で唯一選定された。
ラグビーワールドカップ 2019 開催を契機として、震災復興を加速し、子どもたちに夢と
希望を与え、支援に対する感謝を表す機会としながら、次世代に誇れるまちづくりを行っ
ていく必要がある。
38
(2)
その対策
①
学校教育
知・徳・体の調和のとれた「生き抜く力」を育成するため、保護者や地域との連携・協
働による学校経営を推進し、幼児・児童生徒の発達段階や地域の実態を踏まえ、創意工夫
を生かした特色のある教育活動の一層の充実に向けて取り組む。
また、施設・設備については、年次計画で進めてきたところであるが、まだ、未整
備の学校施設があり、今後も耐震化や環境対策を、十分に検討して計画的に整備を進
めていく。
学校給食センターについては、安全衛生管理をより一層強化するため、施設・設備の適
正な管理のための改善、改修を図りながら、三施設の機能集約可能な新しい学校給食セン
ターについて、安全衛生管理対策や災害時対策を十分に検討し、計画的な集約及び学校給
食衛生管理基準に適合した施設整備を進めていく。
②
就学前教育
幼児期の教育は、基本的生活習慣や基礎的な体力、人と関わり合う力などを育て、小学
校以降の生活や学習の基盤や生涯にわたる人間形成の基礎を培う重要な役割を担っている
ことから、就学前の子どもが等しく幼児教育を受けられるよう、幼稚園、保育所、認定こ
ども園、児童館を一体的に捉え、教育内容や教育・保育環境を整えるとともに、特別支援
教育の充実、小学校との連携、子育て支援の充実に努める。
③
生涯学習
地域の将来を担う心豊かな子ども達を育むため、これまで以上に家庭・地域・学校との
連携を推進していく。また、すべての人々が生涯にわたり生きがいのある生活のため、ラ
イフステージに応じた自主的な学習を支援するため学習機会と社会参加活動の充実に努め、
いつでもどこでもだれでもが学ぶことができる環境をつくるとともに、生涯学習情報の共
有化や人材(リーダー・ボランティア)の確保に努め、行政だけでなく教育機関や各種団
体などとともにネットワークの形成に努め、生涯学習の効果が一段と発揮されるように努
める。
これらの人・地域づくりにおいて、公民館活動はますます重要性を増してきており、み
んなが参加・協力・実践し、自らを高めていく活動を推進し、併せて計画的に施設の維持
補修及び整備を進めていく。
また、地域住民の学習要求に応えられるよう、図書資料や情報の収集整備を進めるとと
もに、図書館情報システムの改善や老朽化している本館建物・諸設備の改修を行い、図書
館のサービス向上を図る。
39
④
生涯スポーツ
生涯スポーツの普及、健康寿命の延伸のため、スポーツ推進委員等の指導体制の強化
と市民のスポーツに対するニーズの把握に努め、既存施設を有効活用しながら市民の健
康増進に向けた意識の高揚を図る。
また、平成 31 年のラグビーワールドカップの開催及びその後の大規模な各種大会の開
催、誘致を展望し、ラグビースタジアムのほか陸上競技場、体育館の新設、さらには、
老朽化が進む既存施設の修繕等整備及び統廃合された市内学校の跡地利用についても広
く市民及び関係団体等の意見を集約しながら、今後のスポーツ施設の整備を進める。
同時に、当市における象徴的な競技スポーツであるラグビーやトライアスロンについ
ても、市民の関心を高めつつ競技力を向上させるため、小中学校などにおける普及活動
を行うほか、これらの競技に対する支援も継続する。
また、ラグビーワールドカップ 2019 に対応した施設を、壊滅的な被害を受けた鵜住居地
区に整備することにより、地域コミュニティ再生及び市民の健康保持、にぎわいや交流人口
の増大につなげ、併せて、ラグビーワールドカップの成功と気運醸成を図り、
震災復興のシンボルとして、スポーツの力とラグビー文化を広げ、沿岸被災地の活性化、
岩手スポーツ界のさらなる飛躍発展の一助とする。
40
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
事業名
自立促進施策区分
6
教育の振興
事業内容
(施設名)
実施主体
(1)学校教育関連施設
校舎
小中学校大規模改修事業
市
屋外運動場
散水設備設置事業
市
防球ネット設置事業
市
スクールバス・ボー スクールバス購入事業
ト
給食施設
市
学校給食センター整備検討事業
市
学校給食センター大規模改修事業
市
唐丹小学校天体望遠鏡ドーム建設工
事
その他
大平中学校屋外倉庫設置工事
市
釜石中学校駐輪場サイクルポート設
置工事
(3)集会施設、体育施
設等
公民館
分館整備事業
市
体育施設
平田公園野球場改修事業
市
市営プール改修事業
市
図書館管理運営事業
市
図書館
(4)過疎地域自立促進 かまいしコミュニティスクール推進
特別事業
事業
41
市
備考
8
⑴
地域文化の振興等
現況と問題点
市民一人ひとりが豊かな心と郷土愛を育むためには、質の高い芸術・文化の体験や鑑賞
ができる機会の提供が重要である。
本市では、市民劇場、かまいしの第九演奏会、市民芸術文化祭の開催など市民グループ
の活動が行われているほか、芸術・文化活動の振興に努め、郷土芸能祭などの取り組みを
行っているが、東日本大震災で市民文化会館が被災し使用できなくなったことから、平成
29 年度後半に市民ホールが開館するまでの間の活動拠点の確保、開館後の市民ホールの活
用が課題である。
ふるさとに伝わる文化財については、指定の推進、既存の指定文化財の維持・保存に引
続き取り組む必要がある。また、地域の伝統の象徴である郷土芸能は後継者不足や震災後
の道具等の保管や活動場所など、その保存、伝承が厳しい状況にある。
現存する日本最古の洋式高炉跡である国史跡橋野高炉跡と、その関連遺跡である鉄鉱石
採掘場跡及び運搬路跡は、
「橋野鉄鉱山」の名称で「明治日本の産業革命遺産
製鉄・製鋼、
造船、石炭産業」の 23 の構成資産の1つとして、2015 年7月にユネスコ世界遺産に登録
され、また、
「橋野鉄鉱山」の来訪者に世界遺産価値を伝えるとともに、休憩などの便益を
図るための施設として、2013 年 11 月にインフォメーションセンターを整備した。今後は、
橋野鉄鉱山の適切な保存・管理はもとより、世界遺産価値の理解増進・情報発信を図ると
ともに、関連施設である鉄の歴史館、郷土資料館及び旧釜石鉱山事務所や、国から認定さ
れた近代化産業遺産群などと関連付けた周遊観光の促進が課題となっている。
⑵
その対策
市民が心豊かでうるおいとゆとりのある暮らしを目指し、薫り高い文化創造の助長を図
り、市民と共に芸術文化活動の一層の振興と向上を図るためには、団体等の育成指導や事
業提案などを図るとともに、これまで芸術文化に触れる機会の少なかった市民等に対しワ
ークショップ等参加型、育成型事業の拡充による、芸術文化層の拡大を図る必要がある。
中核施設となる市民ホールは、芸術文化活動の拠点としての活動が期待されるが、指定
管理者制度等を活用した比較的長期間にわたる専門的スタッフの計画的な養成の必要があ
る。
また、本市の持つ豊かな有形・無形文化財の周知を図り、その適正保存を図ることや、
祭りや郷土芸能などの伝承活動に対しては、後継者の確保と育成を図るとともに、鉄づく
り体験など通じて、地域の特性や個性、歴史・文化を次世代に伝え、郷土愛や誇りを育ん
でいく。
世界遺産「明治日本の産業革命遺産
製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産である
「橋野鉄鉱山」の価値を保全し次世代へ継承するため、関係機関・団体の協力を得て適切
42
な保存・管理を行うとともに、世界遺産価値の理解増進・情報発信のため、説明案内を担
う人材の育成や、デジタルコンテンツ機器を導入した解説など、ガイダンス機能の充実を
図る。また、世界遺産登録により急増した来訪客を、関連施設である鉄の歴史館、郷土資
料館及び旧釜石鉱山事務所や、国から認定された近代化産業遺産群などに周遊させるべく、
周遊ルートの整備や、案内板・解説板の設置など受入態勢を整備して、平泉に次ぐ県内2
つ目の世界遺産として広くPRしながら観光資源としても活用する。
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
7
興等
事業名
事業内容
(施設名)
実施主体
地域文化の振 (1)地域文化振興施策等
地域文化振興施設
(2)過疎地域自立促進
旧釜石鉱山事務所活用事業
橋野鉄鉱山保全活用事業
特別事業
市
市
橋野鉄鉱山誘客推進事業
市
鉄づくり体験事業
市
43
備考
9
集落の整備
⑴
現況と問題点
本市は、人口減少とともに少子高齢化が急速に進んでおり、高齢者世帯の増加など家族形
態の変化や生活意識の多様化により、地域社会のつながりが希薄となり地域で支え合う体制
が弱くなっている。
また、東日本大震災で、沿岸部の集落は壊滅的な被害を受け、内陸部の仮設住宅等への移
動により、町内会の解散や活動停止など地域コミュニティが崩壊しているところもある。被
災地域では、復興住宅の建設により、被災住民が戻る地域も出てきているが、嵩上げ工事が
終わり自宅再建し住民が戻ってくるまでにはさらに時間がかかることや、どのように地域を
復興させるか等、地域コミュニティの再生が大きな課題となっている。
平成 19 年、市民病院と県立釜石病院の統合を契機に、地域における保健、医療、福祉の分
野での課題解決に向けて、市内の公民館等に保健師等を配置し、
「生活応援センター」を設置
した。現在、市内8か所のセンターで保健・医療・福祉・生涯学習(公民館事業)及び出張所窓
口業務が一体となったサービスを展開している。今回の東日本大震災では、各センターが避
難所や仮設住宅の運営、さらに復興住宅の自治会づくり支援など、被災者支援の最前線で活
動している。
平成 20 年、地域と行政が一体となって地域の問題を考え、解決策を見出し、自ら実践する
とともに、地域住民の意見要望を行政施策に反映させることを目的に、センターごとに町内
会や各種団体の代表による「地域会議」を設置した。現在、市内8か所のセンターごとに「地
域会議」が設立され、地域住民と行政との協働でのまちづくりに取り組むとともに、被災者
と周辺住民との交流事業に参画するなど、被災者支援の活動も推進している。
⑵
その対策
生活応援センターを拠点に「地域会議」の活動を支援するとともに、被災地域の地域
コミュニティの再生を図る。
ア
みんなで創る地域会議交付金
地域のことは地域住民自らが決定し責任を持って実施する、自己決定、自己責任、
自己実現による自主・自立のまちづくりを目指し、各地域会議に交付金を交付する。
イ
地域会議活動発表会
地域会議間の情報交換とモチベーションアップのため、地域会議活動発表会(地域づ
くりフォーラム)を開催する。
44
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
8
集落の整備
事業名
事業内容
(施設名)
(2)過疎地域自立促 みんなで創る地域会議事業
進特別事業
45
実施主体
市
備考
10
その他地域の自立促進に関し必要な事項
(1)
現況と問題点
①少子化・男女共同参画、定住・移住
平成 24 年度の人口動態統計によると、釜石市の出生率 6.0%と全国(8.2%)
・県(7.1%)
の水準を下回っているが、合計特殊出生率は人口維持の水準(2.08%)を下回りながらも
1.79%と全国(1.41%)・県(1.44%)の水準を上回っている。女性の出生力は相対的に高い
が、少子化は進行している。
出生率の低下の主な要因は、男女ともに未婚率の上昇、晩婚化の進行がある。平成 22 年
度の国勢調査によると、未婚率は男性では、25~29 歳で 63.0%、30~34 歳で 46.0%、女性
では 25~29 歳で 49.3%、30~34 歳で 32.1%となっている。同時に、晩婚化の進行による
未婚率の上昇が進んでいる。
また、共働き世帯が上昇しているものの、平成 25 年度実施の釜石市男女共同参画推進プ
ラン改定に関する市民意識調査によると、既婚の女性で、過去に就業経験があり、現在職
業をもっていない人の仕事を辞めた時の理由に「家事や育児への専念のため」
(29.5%)、
「家
事や育児との両立が困難なため」(20.5%)が挙がっている。家事や育児に関することを理
由に退職する割合が高く、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進のため
の環境づくりをより一層推し進める必要がある。
さらに、自らがまちづくりの参画する仕組みや、魅力あるまちづくりを進めるなど、U・
Iターンの促進や若者定住につながる取り組みを推進する必要がある。
(2)
その対策
①少子化・男女共同参画、定住・移住
本市では、これまでいきいき子育てプラン(平成 17~21 年度)
、えがお輝きプラン(平
成 22~26 年度)を策定し、子どもと子育ての家庭への支援の推進、さらには、誰もが安心
して産み育てることができるまちづくりを目指し取り組んできた。しかし、少子化の進行
は続き、子育ての負担感が強まっていることから、子ども・子育て支援について質・量と
もに充実を図るため、平成 26 年度に「釜石市子ども・子育て支援事業計画(釜石市子ども・
子育て応援プラン)」を策定した。質の高い幼児期の教育・保育の総合的な提供や、待機児
童の解消、地域での子ども・子育て支援の充実を図ることを目的としている。
また、平成 25 年度には、ともに認め、支えい、みんなが輝くまちづくりを基本理念とし、
釜石市としては第 4 次計画となる「釜石市男女共同参画推進プラン」を策定している。
この2つの計画を推進し、さらに、定住・移住を進めることで、安心して暮らしていけ
るまちの実現につなげる。
46
⑶
計画
事業計画(平成 28 年度~32 年度)
自立促進施策区分
9
事業名
事業内容
(施設名)
その他地域の自 (1)過疎地域自立 男女共同参画推進事業
実施主体
市
立促進に関し必要な 促進特別事業
婚活支援事業
市
事項
心豊かな子ども育成事業
市
くろがね・ぎゃざりんぐ・ぷれーす事
市
業
47
備考