記者会見要旨 日時:平成 28 年1月 20 日(水)午後2

記者会見要旨
日 時 : 平 成 28 年 1 月 20 日 ( 水 ) 午 後 2 時 30 分 ~ 午 後 3 時 00 分
場所:東京証券会館9階 第1・2会議室
出席者:稲野会長、森本副会長、岳野専務理事
冒 頭 、森 本 副 会 長 か ら 自 主 規 制 会 議 の 審 議 事 項 等 の 概 要 に つ い て 、
岳野専務理事から証券戦略会議の審議事項等の概要について、説明
が行われた後、大要、次のとおり質疑応答が行われた。
(記者)
本年最初の定例会見であるので、本年の抱負と日証協として重点
的に取り組む課題をお聞かせ願いたい。
(稲野会長)
今回は本年最初の定例会見ということである。本年もどうぞよろ
しくお願いしたい。
年 明 け 以 降 6 日 連 続 で 日 経 平 均 株 価 が 下 落 し 、「 申 酉( さ る と り )
騒ぐ」という相場の格言のような動きであり、マーケット関係者に
とって決して穏やかでない年明けとなっている。しかしながら、マ
ーケットは常に国内外の情勢に反応するものであり、今回の株価変
動に関して言えば、やや反応し過ぎている面もある。長い時間の中
での株価調整は往々にして起こり得るものであり、日本経済や日本
企業のファンダメンタルズに大きな変化がない以上、現状を過度に
悲観すべきではないと考えている。国内に目を向ければ、昨年は多
くの日本企業が業績を大きく伸長させており、本年はさらに業績を
拡大させるために、設備や人的投資を拡大し、本格的に利益を伸ば
していくことが期待されている。また、日本企業の真価が問われる
1年になると考えており、その動向には期待したいところである。
一方で、昨年の不正会計問題などの反省を踏まえ、信頼できる投
資環境や市場規律の維持は必要不可欠であり、本年も重要なテーマ
である。証券界にとって市場の活性化は継続的に重要な課題である
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が、その大前提は市場の公正性、透明性の確保であり、市場関係者
には信頼性の確保に引き続き尽力していただくとともに、日証協と
しても市場仲介者の機能、信頼性の向上に向け、昨年来掲げている
各課題に取り組んでいきたい。
日証協の重点テーマである個人投資家の裾野拡大という観点から
は、NISAの普及、推進をより力強く進めていかなければならな
い と 考 え て い る 。 本 年 か ら 非 課 税 枠 が 100 万 円 か ら 120 万 円 に 拡 大
し、使い勝手の良くなったNISAに加え、4月からはジュニアN
ISAがスタートする。本年はNISAの本格的な普及、推進の年
にしていきたい。ジュニアNISAの導入によって、NISAと合
わせ、人が生まれてから一生を終えるまで、非課税制度を活用して
シームレスに資産形成を行うことが可能になる。これを契機に、家
族や家計単位での資産形成について各家庭が考え、若年層の資産形
成と世代間の資産移転が、ジュニアNISAを通じてより一層促進
されることを期待している。
一方、投資を行うためには、金融商品や取引に関する知識、情報
を正しく理解し、自らが主体的に判断できる能力、いわゆる「金融
リテラシー」を身に付けることが必要不可欠である。NISA及び
ジュニアNISAを契機に国民全体の「金融リテラシー」の向上を
図るべく、金融証券知識の普及、推進も併せて積極的に進めていき
たい。
本年も金融資本市場の発展と、投資者の皆様がより一層信頼でき
る投資環境の整備、充実のために、全力を注いでいきたい。本年も
皆様のご理解、お力添えをいただきたい。
(記者)
年明け以降、中国経済の不安や原油の下落等を背景に、日経平均
株価が大きく下落しており、円高も進むという波乱の展開となって
いるが、この一連の金融市場の動揺について、所見と今後の見通し
は如何。
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(稲野会長)
昨 年 末 の 日 経 平 均 株 価 の 終 値 は 一 昨 年 末 に 比 べ て 1,582 円( 9 % )
高 い 1 万 9,033 円 と な り 、 年 末 の 終 値 と し て は 4 年 連 続 の 上 昇 と な
った。その時点ではマーケットへの期待感も非常に高い状態であっ
た が 、 本 年 の 日 経 平 均 株 価 は 大 発 会 に マ イ ナ ス 583 円 と 大 き く 下 落
してのスタートとなった。その後も、年明けとしては過去最長とな
る 6 日 間 連 続 下 落 と な り 、18 日 に は 終 値 が 1 万 6,000 円 台 と な っ た 。
本 日 も 600 円 以 上 の 下 落 と な り 、 年 初 来 芳 し く な い 状 況 で あ る 。 そ
の要因は中国の景気減速が大きいと言える。昨年の中国のGDPは
6.9% 増 と な っ て お り 、 成 長 ス ピ ー ド が 明 ら か に 鈍 化 し て い る 。 そ れ
に伴い、上海総合指数も大きく下落し、為替市場では人民元安とな
っている。加えて、原油先物価格の下落の継続、中東情勢の不安定
化といった地政学リスクも顕在化している。さらに、米国の利上げ
が今後の国際資金フローに与える影響等、多数の懸念材料が挙げら
れる。それらが複合的に重なることで世界的にリスクオフ・モード
となっており、その結果、相対的にパフォーマンスの良かった日本
株も売られる状況となった。また、安全資産とされる円にお金が集
まり、円高をもたらす状況となっている。円や日本国債に買いが入
る こ と で 、14 日 に は 新 発 10 年 物 国 債 の 利 回 り が 過 去 最 低 水 準 を 更 新
している。
先ほどの本年の抱負の際にも申し上げたが、マーケットは常に国
内外の情勢に反応するものであり、今回の株価変動に関してはやや
反応し過ぎているのではないかという面がある。長い時間の中での
株価調整は往々にして起こり得るものであり、日本経済や日本企業
のファンダメンタルズに大きな変化がない以上、過度に悲観すべき
ではないと考えている
今週から来週にかけて第3四半期の決算発表が行われる。これま
での全面安という流れから、企業の選別の中で評価され株価が上昇
に転じる企業も出てくるのではないかと期待している。
また、昨年と同様に、コーポレートガバナンス・コード等をきっ
かけとしたROEの向上や株主還元に積極的に取り組む企業は、マ
ーケットにおいて引き続き積極的に評価されるであろう。法人税減
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税など企業の競争力を強化するための「レール」は既に敷かれてお
り、今後は本格的に利益を生み出す力を持つ企業が多く出てくるこ
とを期待したい。
(記者)
アメリカの日本証券サミットにおいて日本市場の魅力等どういう
ところをPRしていくつもりか。
(稲野会長)
アベノミクスの成長戦略等にもあるとおり、日本企業の稼ぐ力を
高めるという明確な政策が存在している。法人税率の引き下げ、ス
チュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの
策定、さらにそれらの実行とモニタリング、GPIFのポートフォ
リオの見直し等、具体的な施策が実行に移されているため、日本企
業の実力、収益ベースがさらに上がっていく可能性があるというポ
ジティブな点は説明しなければいけないと思っている。一方で、日
本が抱える財政問題、特に国債管理政策等については海外投資家の
関心が高いところでもあり、その点についても財政再建に向けた道
筋など現在の状況及び将来の方向性についてきちんとしたコメント
をしていく必要があると考えている。そのうえで、海外の有識者の
方々も含め、日本経済あるいは日本企業、世界のマーケット等につ
いて、様々な意見交換が出来ればいいのではないかと考えている。
(記者)
現在のマーケットの状況は企業業績に悪影響を与える水準にまで
達しているのか否か会長の見解如何。
(稲野会長)
直接大きな影響があるのは為替であると思う。民間調査機関等の
分析によれば、為替が円高になるという要因だけで企業が減益にな
る ラ イ ン は 110 円 程 度 と 計 算 さ れ て お り 、 現 行 の 水 準 と は ま だ 差 が
あ る 。 し た が っ て 、 昨 年 で あ れ ば 120 円 程 度 を ベ ー ス に 企 業 業 績 予
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測を立てていたものが若干円高方向へ修正となり、それが増益予想
の幅を圧縮することにはなったとしても、一転して減益までは至ら
ないということである。また、第3四半期の決算発表の内容を見な
ければわからないが、全体として売上が減少し、その結果として企
業業績が大きく低迷するような可能性は非常に少ないと見ている。
ただし、注意しなければいけないのは、マーケットが実態経済に対
して大きな影響を与えるような極端な動きをした場合、それはすな
わち「ショック」ということになり、要注意であると思っている。
(記者)
昨今の株価の影響を天気に例えると、「もうすぐ晴れ間が見える
夕立」か、「雨が長引く秋雨」か、「風まで強い土砂降り」か、ど
のような感じか。
(稲野会長)
需給関係だけで考えると「土砂降り」であろうが、企業業績によ
って株価水準が決まってくるので、最終的には企業業績を見るべき
であると思う。需給関係で見ると、外国人投資家の日本株の売買は
ア ベ ノ ミ ク ス の 開 始 後 で は 21 兆 円 程 度 の 買 い 越 し に な っ て い る が 、
昨年は約3兆円の売り越しとなっている。外国人投資家は、相対的
に各国の金融資本市場を眺めた時に日本株のパフォーマンスが良か
ったのでポジション調整にも使えたという面は否めないし、現在で
もその側面はあると思う。外国人投資家の平均買付コストは日経平
均 株 価 に 置 き 換 え る と 概 ね 1 万 5,000 円 程 度 で あ る と 推 定 さ れ る の
で、現金化したい場合はまだ売れる余地があると思うが、バリュエ
ーションを無視してどこまで売るかという問題もあるし、売れば一
方で買い需要も出てくる。それは個人投資家、または年金のリバラ
ンスに伴う買いも当然想定されるので、需給関係がここから極端に
悪くなることはあまり想定していない。
以
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上