プレス発表資料 - OKB総研

2016年1月20日
報道関係各位
株式会社OKB総研
(照会先) 調査部 主任研究員 中村 紘子
Tel:052‐564‐1520 (名古屋オフィス)
岐阜ならではのツーリズムとは
ー西美濃の宿泊滞在型観光を例に考えるー
OKB 大垣共立銀行グループのシンクタンク㈱OKB総研(大垣市郭町2‐25 社長 五藤 義徳)は、今般標記についてのレポートをまとめましたのでご案内
申し上げます。なお、レポート全文は2015年12月28日発刊の当社の機関誌
「レポート Vol.160」に掲載しています。
資料配布:大垣市政経済記者クラブ、名古屋金融記者クラブ
1.はじめに
➢岐阜県の観光施策の展開と現行数値目標 (図表1)
・「みんなでつくろう観光王国飛騨・美濃条例」(2007年10月施行)
→ 観光を県の基幹産業に発展させていくことを目指す
↓ 現在は第2ステージ(2013年度~2017年度)
:「岐阜県観光振興プラン」(2013年3月)に基づき、
「宿泊滞在型観光」の創出に向けた取り組みを進める
・「岐阜県成長・雇用戦略」(2014年3月)
→ 2020年に観光消費の経済波及効果額を5,000億円
(2014年:4,124億円)に増やすための各種数値目標を設定
・観光の基幹産業化方針は、「『清流の国ぎふ』創生総合戦略」
(岐阜県版まち・ひと・しごと創生総合戦略、2015年10月)にも引き継がれる
➢本稿では、岐阜県が「宿泊滞在型観光」を目指していることから、
「宿泊」の観点から近年の県の観光動向を考察
↓
その上で、県の観光戦略の第3ステージ「岐阜ならではの宿泊
滞在型観光の定番化」に向けた考え方について、岐阜県西部
の「西美濃地域」を例に提案を試みる
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2.宿泊関連統計から見る岐阜県の観光動向
(1)県内の宿泊客は増加傾向 (図表2)
・2014年は延べ609万人(観光庁「宿泊旅行統計調査」)
・2015年は1~8月の合計(速報ベース)で前年同期比約10%増の延べ442万人。年間合計も2014年実績を上回る可能性
(2)県内の旅館は減少傾向 (図表3)
・宿泊施設数(旅館業法に基づく4類型=旅館、ホテル、簡易宿所、下宿=の合計)は、2007年度~2014年度の8年間で、
ホテルが1割弱増えた一方、旅館が2割以上減り、全体では減少
→ 大型宿泊施設を中心に稼働率が改善する一方で、比較的小規模な旅館の廃業が相次いでいることが考えられる
・近年は、一般の農家が観光客を泊める「農家民宿」や、個人が住宅の空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」が
注目される。民泊は県内での普及も見込まれる
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宿泊関連統計から見る岐阜県の観光動向(その2)
(3)宿泊拠点となる自治体は限られている
①県内市町村の夜間滞在人口(午前4時時点、2014年平均)と
実際の人口(2010年国勢調査)との人数差 (図表4)
↓
・上位5市町村は、高山市、下呂市、岐阜市、大垣市、多治見市
→ 夜間滞在人口が実際の人口より多い市町村ほど、他地域から訪れて
宿泊している人が多い=上位自治体は相対的に宿泊の集客力がある
②県内市町村の「宿泊業・飲食サービス業」の産業別従業者数構成比による
特化係数比較 (図表5:略、レポート本文参照)
↓
・「宿泊業・飲食サービス業」は、観光関連業の代表格
・特化係数は、その業種が地域の主要産業になっているかどうかを示す指標
の一つ。本レポートでは全国平均を基準(=1)としており、特化係数が1より
も大きいほど全国と比べて当該産業の影響度が相対的に高いことを示す
↓
・特化係数が1より大きいのは15市町村にとどまる
(岐阜県全体=1.02より大きいのは14市町村)
:白川村、北方町、下呂市、高山市、郡上市、養老町、岐阜市、本巣市、
羽島市、恵那市、多治見市、飛騨市、大垣市、各務原市、岐南町
岐阜県内を訪れる観光客の宿泊拠点は、
観光地として知名度のある高山市、下呂市、
県内の中核的な自治体である岐阜市、大垣市
などに限られている
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宿泊関連統計から見る岐阜県の観光動向(その3)
(4)外国人の宿泊動向は「高山」が影響
・県内の外国人延べ宿泊者数は急増。2014年は延べ59万人
(観光庁「宿泊旅行統計調査」)
・2015年は1~8月の合計(速報ベース)で前年実績を上回る
延べ62万人
・「昇龍道プロジェクト」に参画する中部北陸9県の
外国人延べ宿泊者数の比較 (図表6:略、レポート本文参照)
→ 岐阜県は、直近5年の平均前年比増加率が9県中トップ
・岐阜県全体と、県内でも特に外国人観光客の訪問が多い
高山市の外国人延べ宿泊者数の推移を比較 (図表7)
→ 県全体に占める高山市の割合は
2010年~2013年は70~50%台、2014年も46.8%
・中部北陸9県と高山市の外国人延べ宿泊者の国籍(出身地)別
構成比(2014年) (次ページ図表8)
→ 岐阜県は、上位5国・地域に「欧州」(独、英、仏の3カ国合計)
がランクイン(5位)
↓
構成比にも高山市の状況が影響
:高山市は欧州、北米からの宿泊客が多い。2014年は豪州、
マレーシアなどからの宿泊客も多く、中国は全体の2%弱
岐阜県は「高山(飛騨高山)」という強力なアピール要素があり、欧米などから長期滞在客・リピーター客を取り込める可能性
一方で、「高山頼み」の状況も
→ 県は飛騨高山のブランド活用を含めた外国人観光客誘致とともに、他地域の受け入れ態勢整備を支援すべき
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3.岐阜ならではのツーリズムとは~西美濃の宿泊滞在型観光を例に考える~
➢岐阜県が2018年度以降の観光戦略(第3ステージ)で掲げる「岐阜ならではの宿泊滞在型観光の定番化」に向けた考え方に
ついて、西美濃地域(大垣市、海津市及び養老郡、不破郡、安八郡、揖斐郡の計2市9町)を例に提案する
(1)「道の駅」から新しいツーリズムをつくる
・西美濃の特徴の一つ:伊吹山から木曽三川まで変化に富んだ自然環境と、個性的なスポーツイベント
(例)2市9町を自転車で一周する「ツール・ド・西美濃」
100m以上の高低差があるコースが特徴の「いびがわマラソン」
↓
・「環境」「自然」「健康」などに注目した「新しい観光(ツーリズム)」を創出すべき
一例は、自転車愛好家をターゲットとしたサイクル・ツーリズム(自転車観光)
【推進策としては…】
➢大野町に2018年度開業予定の道の駅「(仮称)大野」を、新しいツーリズムの推進拠点として活用
↓
道の駅の敷地内や隣接地に、自分の自転車を組み立て・解体できる場所や、シャワー、荷物用ロッカー、レンタル
自転車などを備えた「サイクルステーション」、道路・宿泊情報の提供窓口、自転車の修理施設などを集約
→ 「自転車観光のターミナル」的な機能を持たせ、高速道路網(東海環状自動車道)を活用して県内外の広域から
自転車愛好家を呼び込み、西美濃地域内の様々な場所へ送り出す
➢西美濃地域の観光資源を巡るサイクリング・ツーリングコースの開発・整備
➢自転車観光対応のガイド養成
➢既存イベントの発展・深化(「ツール・ド・西美濃」の完走に向けた事前サイクリング企画など)
・新しいツーリズムを創出する際に望ましいのは
① 広域な観光エリアの中で核となる観光資源や観光施設、自治体などが、観光客を呼び込むと同時に周辺地域へ送り出す
拠点として機能すること
② 観光の波及効果を高める仕掛けがあること
→ 自転車観光の場合は、拠点が「道の駅」、仕掛けが「自転車」
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岐阜ならではのツーリズムとは(その2)
(2)「湖北との連携」で関西から誘客する
・西美濃2市9町における休日の県外者の滞在人口構成比(2014年) (図表9)
→ 愛知県のみならず、滋賀県からの訪問も多い
:名神高速道路、北陸自動車道などで滋賀県湖北地域(長浜市、米原市)と行き来しやすい環境
:名神高速道路に養老、安八の各スマートICが開設予定。東海環状自動車道西回りルートの整備も進む
↓
・滋賀県湖北地域との連携を通じて、関西地方からの観光客誘致を一層進めるべき(=地域特性に応じた連携)
【推進策としては…】
➢湖北地域での西美濃観光キャンペーン ➢「戦国」をテーマにした湖北地域との連携イベント
→既存の観光資源の活性化
(西美濃地域は大垣城、関ケ原古戦場など戦国時代の歴史・文化を伝える観光資源が豊富。この点は湖北地域も共通)
・新しいツーリズムと既存の観光資源の相互活用と相乗効果
→ 新旧の魅力がつながることで、西美濃ならではの、ひいては岐阜ならではの宿泊滞在型観光を生み出せる可能性
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岐阜ならではのツーリズムとは(その3)
(3)宿泊滞在型観光を支える基盤の整備
・道路インフラ
→ 岐阜県内は、マイカーによる観光が定着
:「自家用車」で訪れる観光客が県全体で77.8%、西美濃に限ると87.3%(2014年岐阜県観光入込客統計調査)
→ 東海環状自動車道、東海北陸自動車道白鳥IC~飛騨清見IC間の4車線化、新東名高速道路などの整備が進む
→ 2027年開業予定のリニア岐阜県駅(仮称、中津川市)も、高速道路との接続を重視
・宿泊拠点
→ 県内宿泊動向の考察から、
西美濃では大垣市が中心
↓
外国語案内表示の整備、
飲食店情報の提供、
周遊型旅行商品の開発
などに力を入れるべき
➢まとめ (図表10)
4.おわりに
➢観光戦略も、地域や人が
様々なかたちで連携し、
アイデアを生み出すこと
が、自立した持続可能性
のある、人口減少社会へ
立ち向かうふるさとづくり
への一歩となる
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