2016年度大学入試センター試験(本試験)分析詳細 ■ベネッセ・駿台共催/データネット実行委員会 政治・経済 1.総評 【2016年度センター試験の特徴】 4大問構成に変更、現代的な課題も含め幅広い知識が求められた。昨年より易化 基礎的かつ重要な事項の定着を問う出題のなかで、考察力を試す出題がみられた。組合せの問題が昨年に比べ大 幅に増加したが、問われている事項は基礎的知識が中心であるため、学習を積み上げてきた受験生には取り組み やすい内容であった。昨年より易化。 2.全体概況 【大問数・解答数】 大問数(5→4)、解答数(36→34)ともに昨年から減少。第1問・第3問・第4 問の一部は「倫理、政治・経済」との共通問題。 【出題形式】 文章選択問題中心の出題は昨年から変更なし。1行の文章選択問題(10→4)と 語句選択問題(9→2)は減少し、2行の文章選択問題(12→15)と組合せ問題 (5→12)は増加した。6択の問題が増加(3→8)した。また、統計資料や図表 を用いた問題が昨年に引き続き6問出題された。 【出題分野】 政治分野・経済分野・国際経済分野が2大問、政治分野・経済分野・国際政治 分野が1大問、政治分野・経済分野が1大問出題された。すべての大問におい て、複数の分野を融合した出題がみられた。 【問題量】 昨年並。 【難易】 昨年より易化。 3.大問構成 大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど) 第1問 「国家と国際機関、中央政府と 地方政府」 28点 標準 政治分野・経済分野・国際経済分野 第2問 「環境問題と経済活動」 24点 標準 政治分野・経済分野・国際経済分野 第3問 「民族問題と人権」 24点 第4問 「市場の役割と政府の役割」 24点 やや易 政治分野・経済分野・国際政治分野 標準 政治分野・経済分野 4.大問別分析 第1問「国家と国際機関、中央政府と地方政府」 ●以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。 ●政治・経済・国際経済分野の融合問題で、ギリシア危機なども含めて幅広く出題された。 ●【共通】問2は、1990年代に発足した地域経済統合の加盟国数、人口、GDPの表から、AFTA、MERCOSUR、NAFTA の判断が求められた。加盟国数とGDPの規模からまずNAFTAが導き出され、次にAFTAが判断できる。 ●【共通】問3は、中央銀行が実施する政策や業務について正確な知識と理解が問われた。自国通貨の為替レー トを切り下げるために、外国為替市場で自国通貨の売り介入を行うことの判断に苦戦した受験生は多かった であろう。 ●【共通】問4は、日本とギリシアの政府債務残高と経常収支のGDP比を比較した統計資料の分析を通じて、日 本の財政状況を考察する力が求められた。解答に際して、両国の国際収支構造に注目させる点など工夫され た出題であった。表について分析した文章の空欄補充の形式は目新しいものであるが、文章に即して表を読 み取っていけば、難しくない。 ●【共通】問5は、自由権、社会権、参政権について、日本国憲法での権利や自由との組合せが問われた。基本 的人権についての理解が求められ、平易であった。 ●【共通】問7は、日本国憲法が定めている民主的な意思決定の方法についての理解が問われた。3分の2以上 か、過半数かの判断は、憲法の条文を丁寧に読んでおけば難しくない。 ●【共通】問9は、1980年代と2000年代の日本の行政改革について、その改革の内容や時期の判断が求められ た。国家戦略特区が設けられた時期の判断に迷った受験生が多かったであろう。 ●問10は、地域にある資源を活用して地域経済の発展や農村の再生をめざす活動について問われた。用語だけ でなく、その意味を理解し、具体例と結び付ける力が求められた。グリーン・ツーリズムや六次産業化など 現代の環境や農業問題に関心をもって学習できた受験生は取り組みやすかったであろう。 第2問「環境問題と経済活動」 ●政治分野・経済分野・国際経済分野からの出題。環境問題の模擬授業の会話文から、経済活動や行政の制 度、エネルギー問題などさまざまな分野の知識が幅広く問われた。 ●問2は、市場での取引とGDPとの関係について問われた。GDPに計上されるものとして適当なものを選ぶという 典型的な出題ではなかったため、苦戦した受験生も多かったであろう。 ●問3は、総選挙の結果をうけた衆議院の政党別議席数のグラフから、公害国会の直前に行われた総選挙の結果 が問われた。まず、リード文を読むことで公害国会の時期が高度経済成長期であることに気づくことと、高 度経済成長期が1950年代半ばから1970年代半ばまでであるという知識が必要である。次に、戦後日本の政党 政治の変遷から、当該時期が55年体制のもと民社党や公明党などが議席を有するDと判断できる。 ●問5は、国際的な環境保全の取組みや日本の公害対策について問われた。足尾銅山鉱毒事件が戦前であるとい う知識があれば容易に判断できる問題であった。 ●問7は、経済活動を規制・保護する法律の制定目的が問われた。法律名とその内容だけでなく、法律が制定さ れた理由や背景の理解が必要であった。 ●問8は、再生可能エネルギーについて問われた。日本とドイツの太陽光発電の年間発電量に関する知識がなく ても、再生可能エネルギーという用語の意味を理解していれば、消去法で正答を導き出せたであろう。 第3問「民族問題と人権」 ●政治分野・経済分野・国際政治分野からの出題。現代の社会情勢も踏まえた民族紛争の背景や課題をテーマ に、国際政治を中心として幅広く出題された。 ●【共通】問1は、リード文の空欄補充の組合せで、少数派の民族が抱える不満を解消する方法の元となる考え 方を表す語句が問われた。多文化主義と民族自決について理解していれば容易に判断できる。 ●問2は、国家間協調のゲーム理論について問われた。ゲーム理論は、2011年度以来の出題。新課程で重視され ている論理的思考力が求められた。過去の問題演習などを行っていれば、取り組みやすかったであろう。 ●【共通】問3は、コソボ紛争、パレスチナ問題、チェチェン紛争とその説明の組合せが問われた。それぞれの 説明から、該当する民族、紛争の発生した場所などを想起できるかがポイントであった。各紛争や問題に関 わる深い理解が求められた。 ●【共通】問4は、難民条約について問われた。国内避難民が保護の対象となるのか判断に迷った受験生は多か ったであろう。また、難民条約の締結時期の理解も求められた。正答は「ノン・ルフールマンの原則」の語 句が用いられていない文であったため、判断に迷ったかもしれない。 ●【共通】問5は、日本でみられる現実の労働問題が多面的に問われた。不法就労の状態にある外国人労働者や 非正規労働者にも労働基準法が適用されることなど、労働基準法についての正確な理解があれば正答を導け る。 ●問6は、国際的な人権保障について問われた。子どもの権利条約が18歳未満の者に適用されることがポイント であった。 ●【共通】問8は、マスメディアによるメディア・スクラムとアクセス権について問われた。メディア・スクラ ムは受験生にはあまりなじみのない語句であるが、メディア・リテラシーを理解してれば消去法で正答を導 くことができた。 第4問「市場の役割と政府の役割」 ●政治分野・経済分野からの出題。市場や社会保障について広く問われた。 ●【共通】問2は、需給曲線について、原材料の価格が低下した場合によって生じる変化が問われた。供給曲線 が右下にシフトすることは、市場での需要と供給を考える際の基本であり、容易に判断できる。 ●【共通】問3は、社会保障の発展に影響を与えた法律や報告として、エリザベス救貧法、社会保障法、ベバリ ッジ報告とその内容の組合せが問われた。ナショナル・ミニマムの保障とベバリッジ報告を結びつけること に迷った受験生がいたかもしれない。 ●【共通】問4は、公共財の非競合性について問われた。非競合性とはどのようなことか、読解する力が求めら れた。 ●問7は、プライマリーバランスの赤字を歳入と歳出の両面から縮小させる政策の組合せが問われた。プライマ リーバランスについての知識を前提とした思考力が問われた。歳出に関する政策の判断に迷った受験生も多 かったであろう。 ●【共通】問8は、2001年度から2012年度の地方財政の歳出の推移を示したグラフから近年の日本の社会状況に ついての理解が問われた。設問文には、各費目が何に充てられるか具体的に説明されているため、丁寧に読 み取って手がかりとしたい。増加傾向にあって2009年度を境に大幅に増加しているAが生活保護などを含む扶 助費、微減が続くBが人件費、減少し続けているが2010年に微増し再び減少、2012年度に微増しているCが普 通建設事業費である。ただ数値の変化を読み取るだけでなく、リーマン・ショックや行政改革の動きなど、 その背景となった社会状況を想起する力が求められた。 5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) 年度 2015 2014 2013 2012 2011 平均点 54.79 53.85 55.46 57.99 58.97 6.センター試験攻略のポイント ●問われている内容は、各分野の用語の理解と、原理・原則が中心である。まずは、基本的な知識を確実にお さえたうえで、論理的に考察する力を身につけておきたい。実際の事例にあてはめて考察する力も求められ るため、原理・原則を暗記するのではなく、根本的な考え方や仕組みの理解が必要である。 ●教科書だけではなく、資料集の知識や、国際的、時事的な事項についての知識も求められるため、新聞・テ レビの特集記事・報道には十分な関心をもっておく必要がある。時事的な事項と教科書で習った知識を関連 させて理解しておきたい。 ●近年、資料問題は、統計資料やグラフ等含め6~8題出題されている。単純な読み取り問題だけではなく、背 景となる知識と関連付けて考察する問題も出題されているため、日頃から多くの問題にあたり、教科書で習 った知識を応用できるようにしておきたい。
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