装置利用支援 H21-005 マイクロマシン用 GaAs 系多層構造における 層厚精密決定のための断面 TEM 観察 Ⅱ X-TEM estimation of layer thicknesses in GaAs-related multilayer structures for micro-machine applications Ⅱ 山田省二、岩瀬比宇麻 Syoji Yamada, Hiuma Iwase 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター CNMT, JAIST 多様な化合物半導体をエピタキシャル成長した多層構造は適切な化合物の選定によって多層構造中 の特定層に任意の歪みを与える事か可能であり, これを利用して歪み駆動自己変形プロセスを実現でき る.GaAs 系半導体多層構造はその組成・膜厚の精密制御が可能であるが、歪み層(の臨界膜厚)が薄 く採用した結晶成長法の膜厚制御精度と同程度かそれ以下のとき、歪みが緩和してしまい自己変形プロ セスによる立体構造が設計通りに作製できない場合がある.本研究では、分子線エピタキシーを用いて 歪み層厚が上記精度に比べ十分大きい試料を作製し、その膜厚を、TEM を用いて精密評価すると共に、 それに元づく計算結果と実際に作製した立体構造=微小カンチレバーの曲率半径を比較した結果を示 す. Epitaxially-grown multi-layer structure can include designed strained layers by a proper selection of the layer material compounds. The multi-layer structure including the strained layers can serve as a base material for the strain-driven self bending process. Composition and thickness of GaAs-related materials are able to be precisely controlled, but the strain in the strained layer could sometimes relax when the thickness of the layer is small enough and comparable to the thickness resolution controlled in the adopted growth techniques. In this study, we have grown multi-layer samples, the thickness of the strained layer of which is much thicker than the thickness resolution by standard molecular beam epitaxy (MBE) and estimated the accurate thickness of the layers by X-sectional TEM. 背景: 前回、平成19年度の装置利用支援報告 では、歪み層の臨界膜厚が、薄膜成長に用いた方 法(Molecular beam epitaxy, MBE法)の膜厚制御精 度(数nm)程度の試料につきTEM観察を行い、 歪み層が厳密に形成されておらず、その場合は歪 み層がその役割を果たしていない場合が有るこ とを見いだしている.その場合作製される構造の 曲率半径等が計算による予想と著しく相違して いた. 作製した.ここでAlGaAs層は最後に部分的に除去 する犠牲層である.歪み層InGaAsのIn組成を小さ く(0.5Æ0.1)することにより臨界膜厚より大き い膜厚を容易に精度良く実現することが可能に なっている. 目的: これに対し本研究では、歪み層膜厚が臨 界膜厚に比べ十分厚い試料を作製し、TEMでその 膜厚を精密計測することにより、作製するカンチ レバー様構造の曲率が計算による予測とどれ位 異なるかを定量的に評価することを目的として いる. 実験方法: 通常の固体ソースMBE法により、 GaAs(001)基板上にFig. 1に示すような多層構造を Fig. 1. Designed and grown multilayer structures for making strain-driven miniature cantilever-like products. 結果と考察:Fig. 1の多層構造に対し本支援で得ら れた断面TEM像の例をFig. 2に示す.図からも解 るように、ほぼ設計通りの膜厚が得られているこ とがわかる.また、X線回折によりInGaAs層のIn 組成は厳密には0.8であることも判明した.これら により、本多層構造に歪み駆動プロセスを適用し て作成できるカンチレバー構造の曲率に付き実 験と計算の比較が可能になる. GaAs InGaAs GaAs 10 nm AlGaAs Fig. 3 Roll-radius dependency on cantilever aspect ratio (length/width). Comparison of calculation (lines) and experiment. Fig. 2 X-TEM image of multi-layered structure shown in Fig. 1. これを実際に試みた結果がFig. 3である.計算は最 大値と最小値を2本の線で示しているが、実験結 果はこれら2本の線の範囲にほぼ収まっている ことがわかる.このことは、カンチレバー様構造 物の曲率に関する限り、歪み駆動プロセスの結果 はほぼ計算で予測することが可能であることが 解る. 結論: 本支援による断面TEM測定により、歪み 層の厚みが比較厚い化合物半導体多層構造では、 各層の厚みを正確に評価することが可能であり、 その結果、歪み駆動プロセスを適用して作製でき る立体構造の寸法・形状をより正確に予測できる 可能性がはっきりと確認された.
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